説明

貝類、藻類などの付着を防止する方法および装置

【課題】 汽力発電所にあって、特に臨海発電所においては、多量の海水が海洋より取水され、復水器冷却用水として使用されている。この取水された海水には、貝類や藻類が多量に含まれており、従来の取水設備にあっては、稚貝などのように微小な生物の浸入を阻止することは容易ではなく、貝類や藻類などの付着あるいは固着し、復水器の冷却効率を低下させている。
【解決手段】 化石燃料の燃焼等により発生するCO2ガス、一酸化炭素などの気体成分が、燃焼ガスに含まれた状態もしくは燃焼ガスより単離あるいは分離して抽出され、微細な気泡の状態で水中に送出される。気泡は、加圧された数十μm程度に微細な気泡であり、極めて効率よく海水に融合し、貝類や藻類などの付着生物の弱体化が図られ、汽力発電所における復水器冷却用水域および取水口、放出口並びにその周囲水域における、貝や藻などの付着が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臨海の汽力発電所において、復水器冷却を目的として実施される海洋からの取水にともない、施設内の水域に浸入し、付着あるいは固着する、貝や藻などの付着生物を排除する方法と、その装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、海水を海洋より取水する場合においては、異物の浸入を妨げることを目的とし、櫛状のバリヤ、各種のフィルタ等が取水口に設置されている。しかし、貝や藻などの浸入を防止することは容易ではなく、浸入し付着あるいは固着した貝や藻などは、定期的に掻き出し取り除かれる。
【特許文献1】特開2003‐102325号公報
【非特許文献1】火力発電総論 2002年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
汽力発電所にあって、特に臨海発電所においては、多量の海水が海洋より取水され、復水器冷却用水として使用されている。この取水された海水には、貝や藻などが多く含まれており、従来の取水設備にあっては、稚貝などのように微小な生物の浸入を阻止することは容易ではなく、復水器の冷却水域に付着あるいは固着した貝や藻などは、復水器の冷却効率を低下させている。
【0004】
また、汽力発電所においては暖められた冷却水が大量に放出されることにより、取水口、放出口並びにこれら周囲水域に、貝類、藻類などが多量に付着あるいは固着する要因とななっている。これらの貝類、藻類などを排除するには、多くの時間と多額の経費が費やされる。本発明はこの貝類、藻類などの付着を防止する方法とその装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、上記目的を達成するため、化石燃料の燃焼等により発生するCO2ガス、一酸化炭素などの気体成分が、燃焼ガスに含まれた状態、もしくは燃焼ガスより単離あるいは分離して抽出され、加圧された数十μm程度の微細な気泡の状態で水中へ送出される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の水中へ送出される気泡は、貝や藻などの生物にとって嫌気性をもつCO2ガス、一酸化炭素などの気体成分からなるもので、加圧された数十μm程度の微細な気泡の状態で水中へ送出することにより、極めて効率よく海水にも融合し、取水口、放水口、あるいは施設内の水域において、長期に亘り貝や藻などの弱体化が図られ、付着が抑制されることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
汽力発電所にあって、特に臨海発電所においては、多量の海水が海洋より取水され復水器冷却用として使用されている。しかし、この取水された海水には貝類や藻類が多量に含まれており、従来の取水設備にあって、特に稚貝などのように微小な生物の侵入を阻止することが容易ではなく、復水器冷却用水域に貝類や藻類などの生物が大量に付着あるいは固着し、復水器の冷却効率を低下させている。
【0008】
さらに貝類や藻類などの付着生物は、取水口や放水口並びにその周辺にも集積して付着あるいは固着し、取水、放水効率をも低下させており、これを排除することが技術的にも経済的にも重要な課題となっている。
【0009】
本発明の一つは、主に化石燃料の燃焼等により発生し、人為的に大気中へ排出され、大気中に蓄積されるCO2ガス、一酸化炭素等の気体成分を、取水口、放水口並びにその周囲水域に溶入し、貝や藻などの弱体化を図り付着あるいは固着を抑制することにある。
【0010】
これは、取水口、放水口並びにその周囲水域から、貝や藻などのように付着する生物を排除することにより、取水による施設内への浸入を阻止することと、浸入にいたっても生物の弱体化により付着並びに固着が防止されることである。
【0011】
CO2ガス、一酸化炭素等の気体成分は、燃焼ガスに含まれた状態でも水域に溶入することが可能であるが、特定の気体成分を燃焼ガスより単離あるいは分離して抽出し、用途に応じて、水域に溶入することにより、周囲環境への影響を少なくすることができる。
【0012】
本発明では、CO2ガス、一酸化炭素等の気体成分が、加圧された数十μm程度の微細な気泡の状態で水中へ送出される。加圧された微細な気泡は、水中にあって目視できるものは、20μm〜500μm程度で水中を漂いながら上昇するが、視認できない程度に極めて微細な気泡にあっては、融合され、水中に長期にわたり滞留することになる。
【0013】
加圧された微細な気泡が容易に液中に融合されることは、次式により表される。
w=kP
この式においてwは液体に溶ける気体の質量、Pは気体の圧力であり、kは比例定数である。このことから、溶ける気体の質量は気体の圧力に正比例することが解る。つまり液体に気体が溶けるときには、その液体に接触している気体の圧力が高くなるほど多くの気体が液体に溶けることになるのである。
【実施例】
【0014】
本発明は実施例を以下に図示しながらさらに詳しく説明するが、これは代表的なものを示したものであり、この実施例により本発明が限定されるものではない。
【0015】
図1は本発明の1実施例を示す概略図である。主に、化石燃料の燃焼等により発生した燃焼ガスは、CO2等の気体成分が含まれた状態、もしくはCO2等の気体成分が燃焼ガスより単離あるいは分離された状態で、コンプレッサー4を用いて0.9MPa程度に圧縮して耐圧タンク6内に収容され、さらに、レギュレータ(減圧弁)を介して、0.3MPa程度に減圧され、微細泡発生装置10に送気される。
【0016】
この微細泡発生装置は、本発明者が特開2003‐102325号公報に於いて、既に開示したものと同様に、微細泡発生装置の気体透過部には、クレーズを生成してなる通気性フィルムが装着されている。
【0017】
この通気性フィルムは、クレージング処理を施すことにより樹脂フィルムにクレーズを生成させ、通気性をもたせたものであり、微細泡発生装置10に加圧状態で送気された気体成分は、この通気性フィルムに生成されたクレーズ領域を加圧して、強制的に透過し微細な泡の状態で水中に放出される。
【0018】
気体透過材として装着された、クレーズを生成してなる通気性フィルムを加圧することにより、クレーズを構成するボイド(微細な連通孔)が拡張されて強制的に透過され、海水中へ加圧された数十μm程度の微細な気泡の状態で放出される。
【0019】
図2は、微細泡発生装置10の概略図であり、微細泡発生装置の開口部12にパッキング18、気体透過材としてクレーズ生成通気性フィルム16を装着し、その表面に加圧による気体透過材の変形を防ぐ目的の補強材20が載置されて、気体透過材固定枠22により開口部に固着される。耐圧タンクには0.9MPa程度に圧縮して収容されたCO2等の気体は、気体透過材に透過量を制限され徐々に水中へ噴出される。
【0020】
高分子樹脂フィルムに生成させるクレーズを、図3に示したクレーズの模式図により説明する。なおこの模式図はボイドが拡張された状態を示している。クレーズ28を構成するボイド30は、通常の状態では気体も透過されることのない微細な連通孔であり、加圧されることにより拡張してフィルムに通気性をもたせるものである。ここでいうクレーズとは、高分子樹脂フィルムの表面に現れる表面クレーズと、その内部に発生するクレーズの両方を含むものであって、細かなひび状の模様を有する領域をいう。
【0021】
そしてこのクレーズ28は、分子束(フィブリル)32とボイド30から構成されており、ボイドは、フィルムの表面だけでなくその厚さ方向に殆ど連通しているが、一部において連通せずに厚さ方向の途中で止まっている。クレーズは、全体としてスポンジの構造に似たものとなっている。
【0022】
気体透過材に用いる高分子樹脂フィルムとしては、ポリプロピレンを採用するのが望ましいが、クレーズが形成され得るものであればこれ以外に、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、スチレン系樹脂、ポリカーボネート、ハロゲン含有熱可塑性樹脂、ニトリル樹脂等を採用しても良い。ポリッフ化ビニリデンは、低温から高温まで広い使用温度範囲をもち、可撓性を有すると共に力学的に優れ、また耐候性も極めて良く、可撓性が変わらず、耐薬品性にも優れる。従って、これらの条件が要求される場合には、さらに使用に適したものといえる。
【0023】
これらの熱可塑性樹脂の中でも、フィルムやシートへの成形性や経済性の観点から、ポリオレフィン、ポリエステル、スチレン系樹脂、ハロゲン含有熱可塑性樹脂を使用することが好ましく、中でもポリオレフィン、スチレン系樹脂、ハロゲン含有熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。これらの熱可塑性樹脂は、単独でも用いても、複合して組成物として用いても、或いは、別の高分子樹脂をブレンドしたりしても良く、更には2種類以上の樹脂を多層化して用いても良い。
【0024】
上記熱可塑性樹脂を用いて得られる高分子樹脂フィルム又はシートは、その製造方法に於いて特別な制約はなく、各種の成形方法を適用することにより得ることができるが、一般に広く行われているTダイ押出成形方法や、ブローアップを行うインフレーション成形法を適用して得られたものが、工業的には有利である。
【0025】
気体透過材に用いる通気性フィルムには、縞状のクレーズが設けられている。該縞状のクレーズは、基本的に、高分子樹脂フィルムの分子配合の方向と略平行に、幅が一般的に0.5〜100μm、好ましくは1〜50μmのものである。フィルム厚み方向に貫通しているクレーズの数の割合は、全クレーズの数に対して10%以上、好ましくは20%以上、特に好ましくは40%以上必要であり、貫通している割合が上記範囲未満であると十分な通気性が得られ難くなる。
【0026】
該クレーズを分子配向の方向と略平行の方向に形成するのは、分子鎖の配向の方向と直角の方向に引っ張ることによってクレーズが形成され、分子鎖の配向の方向と直角の方向にクレーズを形成することが難しいからである。
【0027】
上記の様な通気性フィルムは、用いる樹脂の種類により異なるが、例えばポリ弗化ビニリデンのホモ重合体を用いると、酸素及び窒素ガスのガス透過度で一般に、0.3〜100,000×10−4cm/m・24hr・atmの範囲内のものに、引張強度で一般に5〜50MPa、好ましくは6〜50MPa、特に好ましくは7.5〜50MPaの範囲内のものにすることができる。
【0028】
気体透過材に用いる通気性フィルムの通気性の程度は、高分子樹脂フィルム中に形成されたクレーズの幅、クレーズ間の隔たり、クレーズの貫通された数の割合を変えることで調節することができる。具体的には、高分子樹脂フィルムの分子配向の度合いやクレーズを形成させる時の温度、高分子樹脂フィルムの緊張度(緊張状態における張力)、フィルムの折り曲げ角度等を調節することで、容易に通気性をコントロールすることができ、使用目的に応じた通気性フィルムを提供することができる。
【0029】
例えば、クレーズを形成させる時の緊張度を増大させたり、折り曲げ角度を小さくすると、生成するクレーズの間隔は小さくなり、クレーズの貫通された数の割合が増大し、その結果、通気性は増大する。この様なクレーズの幅、クレーズ間の隔たり、貫通されたクレーズの割合を変えることで調節された通気性フィルムは、CO2ガスのガス透過度、透湿度、引張強度等をコントロールすることができる。
【0030】
微細な気泡を発生させる透過材としては前記、通気性フィルムの他にも、弾性、復元力を有するポリウレタン、合成ゴム(ウレタンゴム)等も用いられる。この場合、微細泡発生装置10に加圧状態で送気された気体成分は、このポリウレタン、合成ゴム(ウレタンゴム)等に穿孔により施された無数の貫通孔を拡張して強制的に透過し微細な泡の状態で水中に送出され、無圧状態では収縮して貫通孔が閉鎖状態となる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の活用例として、特に溶存酸素濃度の低下が見られる水域にあっては、酸素やエアー等を溶入することにより、溶存酸素濃度が高められる。この場合生息する動植物が、それぞれに必要とする気体養分を考慮して適宜供給することにより、水域の活性化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】貝類、藻類などの付着を防止する方法の概略図
【図2】微細泡発生装置の概略図
【図3】クレーズの模式図
【符号の説明】
【0033】
2 汽力発電所
4 コンプレッサー
6 耐圧タンク
10 微細泡発生装置
12 開口部
16 通気性フィルム
18 パッキング
20 補強材
22 気体透過材固定枠
28 クレーズ
30 ボイド(微細な連通孔)
32 分子束(フィブリル)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
化石燃料の燃焼等により発生する燃焼ガス、もしくは、燃焼ガスより単離あるいは分離して抽出されたCO2ガス、一酸化炭素などの気体成分を、微細な気泡の状態で水中へ送出し融合させたことを特徴とする、貝や藻などの付着を防止する方法。
【請求項2】
水中へ送出される気泡が加圧された数十μm程度に微細な気泡であることを特徴とする請求項1に記載の貝や藻などの付着を防止する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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