説明

貝類付着防止塗料

【課題】付着貝の除去作業をより大幅に低減でき、しかも人体に無害で海洋の生態系を破壊しないような、船舶外壁や海水搬送パイプ内壁などに用いる塗料を提供する。
【解決手段】
塗料原料としてカプサイシンを、全固形成分重量比率において1/100000以上含有させるか或いは、カプサイシンを含む植物材料粉末を、それに含まれるカプサイシンが全塗料固形成分重量比率において1/100000以上になるように含有させて、貝類付着防止用塗料とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主に船舶の外壁や発電所の冷却用海水搬送パイプの内壁などにおいてフジツボ等貝類が付着するのを防止する塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶における水面下の外壁にフジツボ等の貝類が付着し、これが多数に及ぶと水抵抗が増大するなどの弊害があるので、定期的にその除去作業を余儀なくされている場合が多い。その負担を軽減させるために、貝類が付着ないし定着しなくなるような船舶外壁用の塗料が要望されているが、毒性の強いものは海洋汚染や海産物汚染による人体への害も懸念され、現状ではかかる塗料はいずれも甚だ不十分な貝類付着防止機能を有するにすぎない程度のものに留まっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような現状において、付着貝の除去作業をより大幅に低減でき、しかも人体に無害で海洋の生態系を破壊しないような船舶外壁用などの塗料の実現が強く要望されている。本発明はかかる課題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために本発明者は、事実上人体や生態系に対し無害に等しい食材、とりわけ香辛料類を中心にこれの各種を塗料に混合して貝類の付着防止を試みた結果、意外にもトウガラシ類の粉末が甚だ少量にもかかわらず顕著な作用効果を奏することを見出し、またその原因物質がカプサイシン(カプサンチンともいう)であることも判明して、本発明に至った。
【0005】
すなわちそのカプサイシンを塗料原料として、全固形成分重量比率において1/100000以上含有させ、貝類付着防止塗料とするものである。
【0006】
この際、純粋な化学物質としてのカプサイシンを用いても良いが、これを豊富に含有するトウガラシの実などを粉末化したものを用いても良い。ちなみにトウガラシといっても種類により含有量にかなり差があり、国産の神出雲唐辛子で凡そ0.2%、韓国産又は中国産で0.01〜0.75%、メキシコ産のハバネロで2%前後含まれるものとされる。なお、同種のものであってもピーマンやパプリカ等は辛味が無くカプサイシンを含まないので、本発明には用いられない。上記のカプサイシンを含む植物材料粉末を用いる場合は、その混入量はそれに含まれるカプサイシンが全塗料固形成分重量比率において1/100000以上になるように含有させれば良い。従って含有量2%のハバネロを用いる場合は0.2%のものの1/10で済むが、それでも全塗料固形成分の1/2000以上は要することになる。
【0007】
カプサイシンの含有量が上記数値に満たないと、貝類に対し若干の忌避作用はあるにしても実用上、その付着防止の目的達成のためには不十分である。また塗料としての物性を損なわない限り上限を設ける必要はないが、経済性も加味すれば約1/1000〜1/2000(0.1%〜0.05%)程度が好ましい。これをカプサイシン0.3%含有の唐辛子粉末で換算すれば約20%程度、同2%含有のハバネロ粉末で換算すれば約3%、又はそれ以上の混入が目安となる。
【0008】
また植物材料粉末を用いる場合は、できるだけ余分な夾雑物の混入を避けるためにもハバネロのような含有量の多いものを用い、更にその粉末度をできるだけ細かくして塗装仕上げが粗雑にならないようにすることが好ましい。更に非水性塗料中に混合する場合はその粉末を絶乾状体にすべきことは勿論である。
【0009】
適用させる塗料は、例えばラッカー型の場合は溶媒の蒸発により乾燥後に目減りするから、これを予め考慮に入れてカプサイシンの混入量を計量する。なお、通常使われる事実上全ての船舶外壁用塗料において、その塗膜は微量ずつカプサイシンを透過し外部に向けて放出し得ることが認められ、その結果、例えばハバネロの微粉末を約10%加えるのみで、従来の船舶用塗料(一応防貝塗料)に比べてフジツボの付着数を数十分の1にまで減少させ得ることが判明した。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、船舶の水面下に相当する外壁や発電所の冷却用海水搬送用パイプの内壁に塗布する塗料として使用することにより、フジツボなどの貝類の付着ないし定着を甚だ顕著に防止できるから、それの除去作業を著しく軽減することができ、同時にかかる壁面の耐久性を向上させ、環境汚染などの防止にもつながるなどの効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
在来通りの船舶外壁用塗料中に、平均粒径10μ程度に微粉化したハバネロ又はこれから抽出したカプサイシンをカプサイシン重量換算で約0.1%混合する。但し最良の粒径や混入パーセンテージはこれに限るものではなく、要求される塗膜の種類、耐久性や経済性などを加味して適宜選定する。
【実験例】
【0012】
約200平方cmのFRP板を3枚用意し、その1枚には在来の船舶用防貝塗料(商品名ライトレット:中国塗料(株)製、キシレン20〜30%含む)を約30μ厚塗布し、もう1枚には同じ塗料に中国産天鷹唐辛子粉末を30W%混合したものを同厚塗布し、更にもう1枚には同じ塗料にメキシコ産ハバネロ粉末を15W%混合したものを同厚塗布して試供品とした。これらを三河湾の海中に同一環境条件で同時に侵漬し、3ケ月後に引き上げて表面に付着しているフジツボの数を数えたところ、在来塗料の面には97個、天鷹唐辛子混合の面には3個、ハバネロ混合の面には1個(及び板のコグチ面に1個)のみという結果であった。ちなみに無塗装の裏面には200個以上のフジツボが付着していた。
【産業上の利用可能性】
【0012】
本発明の塗料は在来のものにカプサイシン又はこれを含む植物粉末を少量混合するのみで得られ、事実上の二次弊害もなく、これによって付着貝の除去作業が省けるなどというメリットは甚大であるから、産業上の利用可能性は十分にあるといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料原料としてカプサイシンを、全固形成分重量比率において1/100000以上含有させたことを特徴とする貝類付着防止塗料。
【請求項2】
塗料原料としてカプサイシンを含む植物材料粉末を、それに含まれるカプサイシンが全塗料固形成分重量比率において1/100000以上になるように含有させたことを特徴とする貝類付着防止塗料。