説明

負荷予測装置、空調システム、負荷予測プログラムおよび負荷予測方法

【課題】 空調システムなどのシステム運用において、中長期的な負荷の予測を精度よく行う。
【解決手段】 所定の周期で計測された計測対象の負荷を時系列データとして格納する時系列データベースと、負荷の時系列データのうち、現時点までの第1,2の期間分(第1の期間>第2の期間)である第1,2のデータ系列を取得し、第1および第2のデータ系列からそれぞれ第1のデータ系列のトレンドを除去した第3および第4のデータ系列を生成するトレンド除去部と、第3のデータ系列のうち、第4のデータ系列に類似する第5のデータ系列および第5のデータ系列に続く第6のデータ系列を抽出する系列抽出部と、第6のデータ系列を第1のデータ系列の次に結合してトレンドを付加した第7のデータ系列を生成し、第7のデータ系列に基づいて負荷の予測値を時系列データとして出力する予測値出力部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷予測装置、空調システム、負荷予測プログラム、および負荷予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空調システムを運用する場合、省エネルギーや温室効果ガス削減のため、運用コストを最小化するように作成された運転スケジュールに基づいて、熱源機器などの運転制御が行われている。また、空調システムをより効率的に運用するため、将来の空調負荷を予測しながら、当該空調負荷の予測値に基づいた運転制御も行われている。例えば、特許文献1では、各サーバへの分配処理量に基づいて次タイムスパンにおける消費電力を予測し、当該消費電力の予測値に基づいて必要となる空調負荷(冷房出力)を算出して、空調機の冷房能力や風量を制御する空調システムの制御方法が開示されている。
【0003】
このようにして、空調システムなどのシステム運用において、将来の負荷を予測しながら効率的な運用を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−293851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の消費電力の予測方法では、各サーバの稼働状況を把握するタイムスパンごとに予測を行うため、空調システムを精度よく制御するためにタイムスパンを短くするほど、短期の予測となる。したがって、例えば、現時点から次タイムスパンまでの数秒ないし数分程度の短期の予測となる。
【0006】
そのため、例えば、サーバ室の空調を行う空調装置が起動に数時間程度を要する熱源機器を用いる場合など、より中長期の予測を必要とするシステムには利用することができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決する主たる本発明は、所定の周期で計測された計測対象の負荷を時系列データとして格納する時系列データベースと、前記負荷の時系列データのうち、現時点までの第1の期間分である第1のデータ系列および前記第1の期間より短い現時点までの第2の期間分である第2のデータ系列を取得し、前記第1のデータ系列のトレンドを算出して、前記第1および第2のデータ系列からそれぞれ前記トレンドを除去した第3および第4のデータ系列を生成するトレンド除去部と、前記第4のデータ系列を除く前記第3のデータ系列のうち、前記第4のデータ系列に類似する第5のデータ系列を抽出するとともに、前記第3のデータ系列のうち、前記第5のデータ系列に続く第6のデータ系列を抽出する系列抽出部と、前記第6のデータ系列を前記第1のデータ系列の次に結合して前記トレンドを付加した第7のデータ系列を生成し、前記第7のデータ系列に基づいて前記負荷の予測値を時系列データとして出力する予測値出力部と、を有することを特徴とする負荷予測装置である。
【0008】
本発明の他の特徴については、添付図面及び本明細書の記載により明らかとなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、空調システムなどのシステム運用において、中長期的な負荷の予測を精度よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態における空調システム全体の構成の概略および負荷予測装置の構成を示すブロック図である。
【図2】トレンド除去部12、系列抽出部13、および予測値出力部14の機能をコンピュータに実現させるためのプログラムの動作を説明するフローチャートである。
【図3】時系列データベース11から元データ系列Aおよび要求系列Xを取得する処理の一例を説明する図である。
【図4】元データ系列Aを線形近似してトレンドTrを算出する処理の一例を説明する図である。
【図5】トレンドTrを除去してトレンド除去系列Bおよびトレンド除去要求系列X’を生成する処理の一例を説明する図である。
【図6】トレンド除去系列Bを長さHごとに分割して分割系列Ciを生成する処理の一例を説明する図である。
【図7】分割系列Ciから類似系列Cjおよび次系列Dを選択する処理の一例を説明する図である。
【図8】次系列Dをトレンド除去系列Bの次に結合する処理の一例を説明する図である。
【図9】トレンド除去系列Bおよび次系列DにトレンドTrを付加して、次系列Dからトレンド付加系列D’を生成する処理の一例を説明する図である。
【図10】トレンド付加系列D’が元データ系列Aと連続するように補正して予測データ系列Yを生成する処理の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0012】
===空調システム全体の構成の概略および負荷予測装置の構成===
以下、図1を参照して、本発明の一実施形態における空調システム全体の構成の概略および負荷予測装置の構成について説明する。
【0013】
図1に示されている空調システムは、例えば、消費電力の一層の削減が求められているサーバ室で用いられ、サーバ室の空調を行う空調装置の熱源機器3の運転制御を行って、室内の温度・湿度などの環境を調整するシステムである。また、当該空調システムは、熱源機器3以外に、負荷予測装置1、熱源制御装置2、および表示装置4を含んで構成され、熱源制御装置2からは、熱源機器3の制御信号CNT、および負荷予測装置1に予測データ系列Yの出力を要求する要求信号Rqが出力されている。
【0014】
負荷予測装置1は、時系列データベース11、トレンド除去部12、系列抽出部13、および予測値出力部14を含んで構成されている。
【0015】
時系列データベース11には、熱源機器3から、現時点におけるサーバ室の空調負荷yが入力されている。なお、時系列データベース11には、所定の周期で計測された空調負荷が時系列データとして格納されている。
【0016】
トレンド除去部12には、熱源制御装置2から要求信号Rqが入力されるとともに、時系列データベース11から、空調負荷の時系列データのうち元データ系列Aおよび要求系列Xが適宜読み出されている。また、トレンド除去部12からは、トレンド除去部12によって生成されたトレンド除去系列Bおよびトレンド除去要求系列X’が出力され、これらは系列抽出部13に入力されている。さらに、系列抽出部13からは、系列抽出部13によって抽出された次系列Dが出力され、当該次系列Dは、予測値出力部14に入力されている。そして、予測値出力部14からは、予測値出力部14によって生成された予測データ系列Yが出力され、当該予測データ系列Yは、熱源制御装置2および表示装置4に入力されている。
【0017】
なお、本実施形態において、負荷予測装置1内の時系列データベース11、トレンド除去部12、系列抽出部13、および予測値出力部14は、必要機能(生成手順)に関して記載(図示)されており、それらの入出力関係は図1の例に限られない。例えば、トレンドTrは、後述の如くトレンド除去部12で算出されて用いられるが、トレンド除去部12で算出されたトレンドTrを不図示の記憶部に格納し、当該記憶部に格納されているトレンドTrを予測値出力部14で用いても構わない。また、負荷予測装置1は、各構成部で抽出や計算されたデータを図1の入出力経路に関わらず共有することができる構成であっても構わない。
【0018】
===空調システム全体の動作の概略===
次に、本実施形態における空調システム全体の動作の概略について説明する。
負荷予測装置1には、熱源機器3から現時点におけるサーバ室の空調負荷yが入力され、時系列データベース11は、当該空調負荷を所定の計測周期(サンプリング周期)Tsの時系列データとして格納する。また、負荷予測装置1は、熱源制御装置2から入力される要求信号Rqに応じて、予測データ系列Yを生成して出力する。そして、熱源制御装置2は、予測データ系列Yに基づいて制御信号CNTを出力し、熱源機器3の運転制御を行う。さらに、表示装置4は、予測データ系列Yの表示を行う。
【0019】
===負荷予測装置の動作===
以下、図2ないし図10を適宜参照して、本実施形態における負荷予測装置の動作について説明する。
【0020】
負荷予測装置1のうち、トレンド除去部12、系列抽出部13、および予測値出力部14の機能は、例えば、時系列データベース11を格納する記憶部を備えるコンピュータによって実現することができる。図2は、トレンド除去部12、系列抽出部13、および予測値出力部14に相当する機能をコンピュータに実現させるためのプログラムの動作を示している。
【0021】
まず、熱源制御装置2からの要求信号Rqに応じてプログラムの処理が開始され(S1)、記憶部に格納された時系列データベース11から、元データ系列A(第1のデータ系列)および要求系列X(第2のデータ系列)を取得する(S2)。
【0022】
ここで、元データ系列Aは、時系列データベース11に格納されている空調負荷の時系列データのうち、開始時(以下において時刻t=0とする)から現時点までの長さHaの期間(第1の期間)である。また、Haは、後述するトレンドTrを算出するのに適当な長さ(時間)として、計測・予測対象の負荷に応じて、例えば1週間や1ヶ月などと予め定められている。
【0023】
一方、要求系列Xは、空調負荷の時系列データのうち、現時点までの長さH(<Ha)の期間(第2の期間)である。また、Hは、時系列データに周期的な相関が見られる長さ(時間)として、計測・予測対象の負荷に応じて、例えば1時間や1日などと予め定めることができる。さらに、本実施形態では、長さHaは、長さHのN倍(Nは2以上の整数)であるものとする。
【0024】
このように取得された元データ系列Aおよび要求系列Xの一例を図3に示す。図3において、横軸は時刻tを示し、計測・予測対象の負荷がサーバ室の空調負荷である場合、時系列データに例えば24時間周期の相関が見られるため、一例として、H=1日(24時間)とする。このとき、図3の例ではN=8であり、元データ系列Aは、現時点(t=Ha=8H)までの8日分の空調負荷の時系列データであり、要求系列Xは、元データ系列Aのうち直近1日分である。また、縦軸は負荷の大きさを示し、一例として、L=100kWとする。なお、要求系列Xは元データ系列Aの一部であるため、元データ系列Aのみを時系列データベース11から取得し、要求系列Xを元データ系列Aから抽出して取得するようにしてもよい。
【0025】
次に、元データ系列AのトレンドTrを算出する(S3)。より具体的には、図4に示すように、元データ系列Aを線形近似して、近似された一次関数をトレンドTrとする。ここで、元データ系列Aの各サンプリング点の時刻をTk=Ts×k(1≦k≦Ka=Ha/Ts)として、時刻Tkにおける空調負荷をy(k)と表すこととすると、トレンドTrは、

と表すことができる。
【0026】
なお、図4の例では、トレンドTrが現時点(t=8H)を超えて算出(図示)されているが、この現時点を超える部分は、上記式(1)に基づいて、トレンドTrを現時点から長さHだけ未来分求めたものである。ここで説明するトレンド除去処理に関しては、現時点までの長さHaのトレンドTrがあれば良い。
【0027】
次に、元データ系列Aおよび要求系列XからそれぞれトレンドTrを除去して、トレンド除去系列B(第3のデータ系列)およびトレンド除去要求系列X’(第4のデータ系列)を生成する(S4)。より具体的には、元データ系列Aおよび要求系列Xから、それぞれ式(1)の一次関数の関数値を減算して、トレンド除去系列Bおよびトレンド除去要求系列X’とする。
【0028】
ここで、図3に示した元データ系列Aおよび要求系列Xからそれぞれ生成されたトレンド除去系列Bおよびトレンド除去要求系列X’の一例を図5において実線で示す。図5に示すように、トレンド除去系列Bおよびトレンド除去要求系列X’の長さは、それぞれ元データ系列Aの長さHaおよび要求系列Xの長さHに等しい。なお、トレンド除去要求系列X’はトレンド除去系列Bの一部であるため、トレンド除去系列Bのみを元データ系列Aから生成し、トレンド除去要求系列X’をトレンド除去系列Bと長さHとから抽出して生成するようにしてもよい。
【0029】
以上のように、時系列データベース11から取得した元データ系列Aおよび要求系列Xから、それぞれトレンドTrを除去することができる。したがって、S2ないしS4の処理は、トレンド除去部12に相当する機能(トレンド除去処理)を実現する。
【0030】
次に、図6示すように、トレンド除去系列Bを長さHごとに分割すると、N(=8)個の分割系列C1ないしC8(C1〜C8それぞれが、第8のデータ系列)を生成する(S5)。ここで、分割系列C8はトレンド除去要求系列X’と同一であり、一般に、分割系列CNは、時系列的に最新の分割系列となるので、トレンド除去要求系列X’と同一になる。なお、本実施形態では、長さHaが長さHの整数倍であるため、トレンド除去系列Bを過不足なく分割することができるが、余りが出る場合には、現時点から過去に向かって長さHごとに分割していくことによって、分割系列CNをトレンド除去要求系列X’と同一にする。
【0031】
次に、分割系列Ciから、トレンド除去要求系列X’に類似し、j番目に位置する類似系列Cj(第5のデータ系列)、および次系列D(第6のデータ系列)を選択する(S6)。より具体的には、まず、最小二乗法を用いて、トレンド除去要求系列X’と同一であるものを除く分割系列Ci(1≦i≦N−1)のうち、トレンド除去要求系列X’との差の二乗和が最小となるものを類似系列Cjとして選択する。そして、分割系列Ci(1≦i≦N)のうち、類似系列Cjの次のものを次系列Dとして選択する。すなわち、次系列Dは、分割系列Cj’(j’=j+1)である。
【0032】
ここで、図6に示した分割系列Ciから選択された、トレンド除去要求系列X’に類似する類似系列Cjの一例を図7において実線で示す。図7に示すように、分割系列C6が類似系列Cj(j=6)として選択されている。したがって、(6+1=)7番目の分割系列C7が次系列Dとして選択される。
【0033】
以上のように、トレンド除去系列Bから、トレンド除去要求系列X’に類似する類似系列Cjと、それに続く次系列Dとを抽出することができる。したがって、S5およびS6の処理は、系列抽出部13に相当する機能(系列抽出処理)を実現する。
【0034】
次に、図8に示すように、次系列Dをトレンド除去系列B(またはトレンド除去要求系列X’)の次に結合し(S7)、さらに、トレンドTrを付加してトレンド付加系列D’(第7のデータ系列)を生成する(S8)。より具体的には、トレンド除去系列Bの次に結合された次系列Dに、式(1)の一次関数の関数値を加算して、トレンド付加系列D’とする。
【0035】
なお、ここで用いるトレンドTrは、上記の式(1)より求めても構わないし、前述した図4における“現時点を超える部分”、すなわち、現時点(t=8H)から長さHに相当する部分を用いても良い。
【0036】
このように生成されたトレンド付加系列D’の一例を図9に示す。ここで、トレンド除去系列Bと次系列Dとは、結合点(現時点)において通常連続していないため、トレンド付加系列D’も元データ系列A(または要求系列X)と連続していない場合が多い。そのため、トレンド付加系列D’をそのまま空調負荷の予測値の時系列データとして用いた場合、空調負荷の急激な変動を予測したこととなり、熱源機器3の急激な起動/停止の切り替えを引き起こす場合もあり得る。そこで、本実施形態では、図10に示すように、トレンド付加系列D’が元データ系列Aと連続するように補正して、予測データ系列Y(第9のデータ系列)を生成している(S9)。
【0037】
より具体的には、元データ系列Aの最後のサンプリング点およびトレンド付加系列D’の最初のサンプリング点におけるデータ値の差eを求め、当該空調負荷の差eを徐々に補正する。ここで、トレンド付加系列D’および予測データ系列Yの各サンプリング点の現時点(t=Ts×Ka)からの時刻をTk’=Ts×k’(1≦k’≦K=H/Ts)として、時刻Tk’におけるそれぞれのデータ値をD’(k’)およびY(k’)と表すこととすると、Y(k’)は、

と表すことができる。なお、図10においては、一例として、Kc=Kとした場合を示している。
【0038】
以上のように、元データ系列Aに続く、現時点から長さHの期間分の予測データ系列Yを生成することができる。したがって、S7ないしS9の処理は、予測値出力部14に相当する機能(予測値出力処理)を実現する。そして、予測データ系列Yを空調負荷の予測値の時系列データとして出力し、処理を終了する(S10)。
【0039】
前述したように、負荷予測装置1において、負荷の時系列データが格納された時系列データベース11から元データ系列Aおよび要求系列Xを取得し、元データ系列AからトレンドTrを除去したトレンド除去系列Bのうち、要求系列XからトレンドTrを除去したトレンド除去要求系列X’に類似する類似系列Cjと、それに続く次系列Dとを抽出し、次系列Dをトレンド除去系列Bの次に結合してトレンドTrを付加したトレンド付加系列D’に基づいて負荷の予測値を時系列データとして求めることによって、1週間や1ヶ月などの中長期的な増加傾向や減少傾向などのトレンドを考慮した予測値を求めることができ、空調システムなどのシステム運用において、中長期的な負荷の予測を精度よく行うことができる。
【0040】
また、元データ系列Aを線形近似して、近似された一次関数をトレンドTrとすることによって、当該一次関数の関数値を、元データ系列Aおよび要求系列Xからそれぞれ減算してトレンド除去系列Bおよびトレンド除去要求系列X’を生成するとともに、次系列Dに加算してトレンド付加系列D’生成することができる。
【0041】
また、トレンド除去系列Bを要求系列Xの長さHごとに分割して、N個の分割系列C1ないしCNを生成することによって、分割系列Ci(1≦i≦N−1)のうち、トレンド除去要求系列X’との差の二乗和が最小となるものを類似系列Cjとして選択するとともに、分割系列Ci(1≦i≦N)のうち、類似系列Cjの次のものを次系列Dとして選択することができる。
【0042】
また、トレンド付加系列D’を元データ系列Aと連続するように補正することによって、元データ系列Aに続く、現時点から長さHの期間分の予測データ系列Yを生成することができる。そして、当該予測データ系列Yを空調負荷の予測値の時系列データとして用いた場合には、熱源機器3の急激な起動/停止の切り替えを抑制することができる。
【0043】
また、負荷予測装置1をサーバ室の空調負荷の予測に用いることによって、空調負荷のトレンドを考慮して、中長期的な予測を精度よく行うことができる。
【0044】
また、図1に示した空調システムにおいて、熱源機器3から現時点におけるサーバ室の空調負荷yを負荷予測装置1に入力し、熱源制御装置2から入力される要求信号Rqに応じて、負荷予測装置1から予測データ系列Yを生成して出力することによって、空調負荷の中長期的なトレンドを考慮した予測データ系列Yに基づいて熱源機器3の運転制御を行うことができる。
【0045】
また、負荷予測装置1のトレンド除去部12、系列抽出部13、および予測値出力部14に相当する機能をコンピュータに実現させるためのプログラムにおいて、記憶部に格納された負荷の時系列データのうち、元データ系列Aおよび要求系列Xを取得し、元データ系列AからトレンドTrを除去したトレンド除去系列Bのうち、要求系列XからトレンドTrを除去したトレンド除去要求系列X’に類似する類似系列Cjと、それに続く次系列Dとを抽出し、次系列Dをトレンド除去系列Bの次に結合してトレンドTrを付加したトレンド付加系列D’に基づいて負荷の予測値を時系列データとして求めることによって、中長期的なトレンドを考慮した予測値を求めることができ、空調システムなどのシステム運用において、中長期的な負荷の予測を精度よく行うことができる。
【0046】
また、負荷の時系列データのうち、元データ系列Aおよび要求系列Xを取得し、それぞれトレンドTrを除去したトレンド除去系列Bおよびトレンド除去要求系列X’を生成し、トレンド除去系列Bのうち、トレンド除去要求系列X’に類似する類似系列Cjと、それに続く次系列Dとを抽出し、次系列Dをトレンド除去系列Bの次に結合してトレンドTrを付加したトレンド付加系列D’を生成し、トレンド付加系列D’に基づいて負荷の予測値を時系列データとして求めることによって、中長期的なトレンドを考慮した予測値を求めることができ、空調システムなどのシステム運用において、中長期的な負荷の予測を精度よく行うことができる。
【0047】
なお、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0048】
上記実施形態では、負荷予測装置1から出力される予測データ系列Yは、熱源制御装置2に入力され、熱源機器3の運転制御に用いられているが、これに限定されるものではなく、例えば、表示装置4に表示させて用いることもできる。予測データ系列Yを表示装置4に表示させることによって、例えば、負荷の予測値が予め設定された許容範囲内に収まっていることを作業者が確認したり、負荷が許容範囲を逸脱する可能性を作業者に事前に報知したりすることができる。
【0049】
上記実施形態では、計測・予測対象の負荷がサーバ室の空調負荷である場合について説明したが、これに限定されるものではない。負荷予測装置1は、例えば特許文献1と同様のサーバ消費電力の予測などにも用いることができ、特に、1週間や1ヶ月などの中長期的な増加傾向や減少傾向などのトレンドを示す負荷に対して、精度よく予測を行うことができる。
【符号の説明】
【0050】
1 負荷予測装置
2 熱源制御装置
3 熱源機器(空調装置)
4 表示装置
11 時系列データベース
12 トレンド除去部
13 系列抽出部
14 予測値出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周期で計測された計測対象の負荷を時系列データとして格納する時系列データベースと、
前記負荷の時系列データのうち、現時点までの第1の期間分である第1のデータ系列および前記第1の期間より短い現時点までの第2の期間分である第2のデータ系列を取得し、前記第1のデータ系列のトレンドを算出して、前記第1および第2のデータ系列からそれぞれ前記トレンドを除去した第3および第4のデータ系列を生成するトレンド除去部と、
前記第4のデータ系列を除く前記第3のデータ系列のうち、前記第4のデータ系列に類似する第5のデータ系列を抽出するとともに、前記第3のデータ系列のうち、前記第5のデータ系列に続く第6のデータ系列を抽出する系列抽出部と、
前記第6のデータ系列を前記第1のデータ系列の次に結合して前記トレンドを付加した第7のデータ系列を生成し、前記第7のデータ系列に基づいて前記負荷の予測値を時系列データとして出力する予測値出力部と、
を有することを特徴とする負荷予測装置。
【請求項2】
前記トレンド除去部は、前記第1のデータ系列を一次関数で近似して前記トレンドを算出し、前記第1および第2のデータ系列からそれぞれ前記一次関数の関数値を減算して前記第3および第4のデータ系列を生成し、
前記予測値出力部は、前記第6のデータ系列を前記第1のデータ系列の次に結合し、前記一次関数の関数値を加算して前記第7のデータ系列を生成することを特徴とする請求項1に記載の負荷予測装置。
【請求項3】
前記第1の期間の長さは、前記第2の期間の長さのN倍(Nは2以上の整数)であり、
前記系列抽出部は、前記第3のデータ系列を前記第2の期間の長さごとに分割して複数の第8のデータ系列を生成し、前記第4のデータ系列を除く前記複数の第8のデータ系列のうち、前記第4のデータ系列との差の二乗和が最小となるデータ系列を前記第5のデータ系列として選択するとともに、前記複数の第8のデータ系列のうち、前記第5のデータ系列の次のデータ系列を前記第6のデータ系列として選択することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の負荷予測装置。
【請求項4】
前記予測値出力部は、前記第7のデータ系列が前記第1のデータ系列と連続するように補正して第9のデータ系列を生成し、前記第9のデータ系列を前記負荷の予測値の時系列データとして出力することを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載の負荷予測装置。
【請求項5】
前記負荷は、サーバ室の空調負荷であることを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れかに記載の負荷予測装置。
【請求項6】
請求項5に記載の負荷予測装置と、
前記サーバ室の空調を行う空調装置と、
前記負荷の予測値に基づいて前記空調装置の熱源機器の運転を制御する熱源制御装置と、
を備えることを特徴とする空調システム。
【請求項7】
所定の周期で計測された計測対象の負荷を時系列データとして格納する記憶部を備えるコンピュータに、
前記負荷の時系列データのうち、現時点までの第1の期間分である第1のデータ系列および前記第1の期間より短い現時点までの第2の期間分である第2のデータ系列を取得し、前記第1のデータ系列のトレンドを算出して、前記第1および第2のデータ系列からそれぞれ前記トレンドを除去した第3および第4のデータ系列を生成するトレンド除去処理と、
前記第4のデータ系列を除く前記第3のデータ系列のうち、前記第4のデータ系列に類似する第5のデータ系列を抽出するとともに、前記第3のデータ系列のうち、前記第5のデータ系列に続く第6のデータ系列を抽出する系列抽出処理と、
前記第6のデータ系列を前記第1のデータ系列の次に結合して前記トレンドを付加した第7のデータ系列を生成し、前記第7のデータ系列に基づいて前記負荷の予測値を時系列データとして求めて出力する予測値出力処理と、
を実行させることを特徴とする負荷予測プログラム。
【請求項8】
所定の周期で計測された計測対象の負荷の時系列データのうち、現時点までの第1の期間分である第1のデータ系列および前記第1の期間より短い現時点までの第2の期間分である第2のデータ系列を取得し、
前記第1のデータ系列のトレンドを算出して、前記第1および第2のデータ系列からそれぞれ前記トレンドを除去した第3および第4のデータ系列を生成し、
前記第4のデータ系列を除く前記第3のデータ系列のうち、前記第4のデータ系列に類似する第5のデータ系列を抽出するとともに、前記第3のデータ系列のうち、前記第5のデータ系列に続く第6のデータ系列を抽出し、
前記第6のデータ系列を前記第1のデータ系列の次に結合して前記トレンドを付加した第7のデータ系列を生成し、
前記第7のデータ系列に基づいて前記負荷の予測値を時系列データとして求めることを特徴とする負荷予測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−87992(P2013−87992A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227124(P2011−227124)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】