説明

貨幣処理装置

【課題】第1種及び第2種の2種類の収納部15,16を備えた貨幣処理装置1において、それらの収納部15,16についてのアクセス権限を遵守し得る運用を実現する。
【解決手段】第1種の収納部(リサイクル収納部)15を格納する本体2と、第1アクセス口22を開閉する第1開閉体3とを含む防護筐体9を備え、第1開閉体3は、扉部31と、第2種の収納部(回収カセット)16を格納する格納部32と、第2アクセス口33を開閉する第2開閉体34と、を含む。防護筐体9は、第1及び第2アクセス口22,33を共に閉塞することにより、収納部15,16を水平のアクセス方向に並んで配置させる第1状態と、第1アクセス口22を開放することにより、第1種の収納部15に対してのみアクセスを許容する第2状態と、第2アクセス口33を開放することにより、第2種の収納部16に対してのみアクセスを許容する第3状態とに切り替わる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、各々貨幣を収納する第1種及び第2種の収納部を備えた貨幣処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、例えば店舗等のバックオフィスに設置され、店舗の売上金等を入金(収納)することが可能であると共に、収納している紙幣(入金した紙幣を含む)を、例えば釣銭準備金として出金可能な、いわゆる循環式の紙幣入出金機を開示している。こうした入出金機に入金した売上金は、契約した警送会社等の集配業者が回収するように運用される場合があり、この運用を可能にするために、前記特許文献1に記載されている入出金機は、紙幣を収納する収納部として2種類の収納部を備えている。つまり、紙幣を繰り出し可能に収納するリサイクル収納部と、入出金機に対して着脱可能に取り付けられる回収カセットとの2種類である。集配業者は、回収カセットを入出金機から取り外すことによって、その回収カセットごと内部に収納している紙幣を回収する。特許文献1に記載された入出金機では、このリサイクル収納部及び回収カセットの2種類の収納部を、回収カセットが手前側、リサイクル収納部が奥側となるように、装置の奥行き方向に並べて、共に金庫内に格納するようにしており、これによって、紙幣が収容されるリサイクル収納部及び回収カセットを防護している。
【0003】
特許文献2は、金庫構造を有するATM(Automated Teller Machine)を開示しており、このATMの内部は、紙幣の取り扱いを行わないユニット(例えばカードを取り扱うカードユニット等)を収容する上部空間と、紙幣の取り扱いを行うユニット(例えば紙幣の収納部等)を収容する、上部空間とは独立した金庫構造の下部空間とを、上下に重ねて配置した構造を有している。そうして、ATMの背面側において、上部空間及び下部空間は、ATMの背面全体を覆う化粧扉によって開閉されると共に、金庫構造の下部空間には、金庫扉がさらに設けられて二重扉構造とされており、この構成のATMは、化粧扉を開けたときには上部空間のみが開放される一方、化粧扉と金庫扉との双方を開けることによって、上部空間と共に、下部空間が開放されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−236546号公報
【特許文献2】特開2005−267130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献1に記載されている入出金機において、リサイクル収納部に収納されている貨幣は釣銭準備金としても出金可能であるため、リサイクル収納部乃至そこに収納されている貨幣は店舗側が管理することになる。そのため、例えばリサイクル収納部において紙幣の詰まり等のエラーが生じたときには、店舗の担当者が、それを解消することになる。
【0006】
一方、店舗の担当者が、入出金機において所定の引渡操作を行うことにより、リサイクル収納部から回収カセット内に移された貨幣は、その回収カセットが入出金機に取り付けられていて集配業者が実際に回収していなくても、店舗側から集配業者側へと既に引き渡された貨幣として運用することが一般的である。従って、店舗の担当者は、回収カセットが入出金機に取り付けられていたとしても、その回収カセット乃至そこに収容されている貨幣を取り扱うことはできない。ここで、回収カセットの取り扱いとは、例えば回収カセットに触れて、これを取り外したり、これを開けたりする行為を含み、前述したリサイクル収納部の紙幣の詰まりを解消する等のメンテナンス作業も含め、収納部に対して行う種々な行為を総称して、以下においては「アクセス」という場合がある。また、前述のように、店舗の担当者がリサイクル収納部にアクセスできることは、「店舗の担当者は、リサイクル収納部に対するアクセス権限を有している」と表現する。前記の運用では、集配業者の担当者は、リサイクル収納部に対するアクセス権限を有していない。また、店舗の担当者は回収カセットに対するアクセス権限を有していない一方で、集配業者の担当者は、回収カセットに対するアクセス権限を有している。
【0007】
前記特許文献1に記載されている入出金機のように、リサイクル収納部と回収カセットとを共に、金庫内に奥行き方向に並べて格納している構成では、回収カセットは金庫内の手前側に配置されているため、集配業者の担当者が、金庫を開けて、リサイクル収納部にアクセスすることなく回収カセットのみを取り出すことは、一応は可能である。しかしながらこの場合、金庫を開けた時点で、リサイクル収納部は何ら防護されていないことになる。このことは、リサイクル収納部のセキュリティを解除したことと等価であるから、アクセス権限の無い集配業者の担当者がリサイクル収納部にアクセスすることを、物理的に阻止することができない。
【0008】
これに対し、リサイクル収納部において紙幣の詰まり等が発生した場合のように、店舗の担当者がリサイクル収納部にアクセスしようとしたときには、金庫を開けた後、手前側に配置されている回収カセットを動かさなければ、リサイクル収納部にアクセスすることができない。この場合、回収カセットのセキュリティが解除されることは勿論のこと、店舗の担当者は、アクセス権限が無いとしても回収カセットにアクセスしなければならない。
【0009】
従って、特許文献1に記載されている入出金機のように、アクセス権限が互いに相違する2種類の収納部を、一つの金庫内に奥行き方向に並べて格納している構成は、そのアクセス権限を守りながら運用することは到底できず、これは運用上問題である。
【0010】
アクセス権限が相異なる2種類の収納部は、互いに独立して金庫に格納することが好ましく、例えば特許文献2に記載されているATMのように上部空間及び下部空間の2つの空間を備えると共に、上部空間に一方の収納部を、下部空間に他方の収納部をそれぞれ格納する構成を採用することが考えられる。しかしながら、特許文献2に記載されているような二重扉構造では、前述したように化粧扉を開けたときには、上部空間及び下部空間の内の上部空間のみのセキュリティが解除されて、上部空間内の収納部にはアクセス可能で、下部空間内の収納部にはアクセスすることはできないものの、下部空間内の収納部にアクセスすべく化粧扉と金庫扉とを開けたときには、上部空間及び下部空間の双方のセキュリティが解除されて、上部空間内の収納部にもアクセス可能となってしまうため、アクセス権限を遵守することができない。
【0011】
そこでさらに、特許文献2に記載されているATMの化粧扉に代えて、上部空間と下部空間とのそれぞれを、互いに独立した別の金庫扉で開閉するように構成することが考えられる。しかしながら、そもそも2つの空間を上下に重ねて配置するような特許文献2の構成は、装置が嵩高になってしまうという問題を有している。
【0012】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、第1種及び第2種の2種類の収納部を備えた貨幣処理装置において、第1種及び第2種の収納部についてのアクセス権限を遵守し得る運用を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
ここに開示する貨幣処理装置は、各々貨幣を収納する第1種の収納部及び第2種の収納部を備えた貨幣処理装置であって、前記第1種の収納部を格納すると共に、当該第1種の収納部に対し、第1アクセス口を通じてアクセスすることが可能な本体と、前記第1アクセス口を開閉する第1開閉体と、を含んで構成される防護筐体を備える。
【0014】
前記第1開閉体は、前記第1アクセス口を閉塞する扉部と、前記扉部に一体的に設けられかつ、前記第2種の収納部を格納する格納部と、前記扉部に形成された第2アクセス口を開閉するように当該扉部に取り付けられた第2開閉体と、を含んで構成され、前記防護筐体は、前記第1開閉体が前記第1アクセス口を閉塞すると共に、前記第2開閉体が前記第2アクセス口を閉塞することによって、前記第1種の収納部が、前記第1開閉体に対しアクセス方向の奥側、前記第2種の収納部が、前記第1開閉体に対し前記アクセス方向の手前側となるように、前記第1種及び第2種の収納部を前記アクセス方向に並んで配置させる第1状態と、前記第1開閉体を動かして前記第1アクセス口を開放すると共に、前記第2開閉体が前記第2アクセス口を閉塞することによって、前記第2種の収納部を前記格納部内に格納したままで、前記本体内の前記第1種の収納部に対して、前記第1アクセス口を通じてアクセスすることを許容する第2状態と、前記第1開閉体が前記第1アクセス口を閉塞すると共に、前記第2開閉体を開けて前記第2アクセス口を開放することによって、前記第1種の収納部を前記本体内に格納したままで、前記格納部内の前記第2種の収納部に対して、前記第2アクセス口を通じてアクセスすることを許容する第3状態と、に切り替わるように構成されている。
【0015】
ここで、貨幣処理装置のいわゆる正面及び、その正面に対して逆側の面である背面の方向を前後方向(奥行き方向)とし、正面及び背面に対し直交する面である左右の側面の方向を左右方向(幅方向)と定義したときに、防護筐体の第1アクセス口は、貨幣処理装置における正面側、背面側及び側面側のいずれの方向に開口していてもよい。また、「アクセス方向」は、前述した第1アクセス方向の開口の向きに対応するように設定してもよく、例えば第1アクセス口を装置の正面側で前向きに開口させたときや、第1アクセス口を装置の背面側で後向きに開口させたときには、「アクセス方向」は装置の前後方向(奥行き方向)としてもよい。また、第1アクセス口を装置の側面側で、右又は左向きに開口させたときには、「アクセス方向」は装置の左右方向(幅方向)としてもよい。
【0016】
さらに、「防護筐体」は、第1種の収納部及び第2種の収納部の外周囲を囲って、これら第1種及び第2種の収納部を格納するための格納空間を区画形成する壁部を備えて構成される筐体とすればよく、第1種及び第2種の収納部を囲む壁部が、第1種及び第2種の収納部へのアクセスを物理的に阻害する。ここで、防護筐体の構造については特に限定されるものではないが、後述するように、所定以上のセキュリティレベルを有していることが、貨幣を収納する第1種及び第2種の収納部のセキュリティ性を高める上で、より好ましい。
【0017】
前記の構成によると、第1開閉体が第1アクセス口を閉塞すると共に、第2開閉体が第2アクセス口を閉塞した第1状態、すなわち、貨幣処理装置の通常の使用状態では、各々貨幣を収納する第1及び第2種の収納部は、アクセス方向に水平に並んで配置されると共に、第1種の収納部は、第1開閉体によって閉塞された本体内に、第2種の収納部は、第2開閉体によって閉塞された格納部内にそれぞれ格納されるため、それらにアクセスすることは物理的に阻止される。
【0018】
これに対し、第1開閉体を動かして第1アクセス口を開放すると共に、第2開閉体が第2アクセス口を閉塞した第2状態では、第1開閉体を動かすことに伴い第2種の収納部を格納した格納部が動くため、第2種の収納部にアクセスしなくてもこの第2種の収納部を動かすことができる。そうして第1アクセス口を開放することによって、本体内の奥側に配置される第1種の収納部に対し、第1アクセス口を通じてアクセスすることが許容される。一方、第2種の収納部は、第2開閉体に閉塞された格納部内に格納されたままであるため、第2種の収納部にアクセスすることは物理的に阻止される。従って、第1種の収納部に対するアクセス権限を有する担当者が、防護筐体を第1状態から第2状態へと移行させることによって、当該担当者が、第1種の収納部にアクセスすることを許容する一方、第2種の収納部にアクセスすることを禁止することが実現する。
【0019】
また、第1開閉体が第1アクセス口を閉塞すると共に、第2開閉体を開けて第2アクセス口を開放した第3状態では、第1種の収納部は、第1開閉体によって閉塞された本体内に格納されているため、この第1格納部にアクセスすることは物理的に阻止される。一方、第2アクセス口が開放されることによって、この第2アクセス口を通じて第2種の収納部にアクセスすることは許容される。従って、第2種の収納部に対するアクセス権限を有する担当者が、防護筐体を第1状態から第3状態へと移行させることによって、当該担当者が、第2種の収納部にアクセスすることを許容する一方、第1種の収納部にアクセスすることを禁止することが実現する。
【0020】
こうして、前記の構成では、防護筐体が第1、第2及び第3状態を切り替えることによって、アクセス権限が互いに異なる第1種及び第2種の収納部に対する、アクセスの許可及び禁止を物理的に制御することが可能になり、第1種及び第2種の収納部についてのアクセス権限を遵守し得る運用を実現することができる。
【0021】
また、第1状態(通常状態)では、前述の通り、第1種の収納部と第2種の収納部とは水平のアクセス方向に並んで配置されるため、装置が嵩高になることが回避される。そしてそのように、第1種の収納部と第2種の収納部とをアクセス方向に並べていても、第1状態から、第1開閉体を開けて第2状態にしたときには、前述の通り、手前に配置されている第2種の収納部が動くことで、第1種の収納部へのアクセスが可能な状態に自動的に移行するため、高い操作性が得られる。
【0022】
前記防護筐体は、前記第1開閉体が前記第1アクセス口を閉塞した状態で、格納している第1種の収納部を所定以上のセキュリティレベルで防護するように構成され、前記第1開閉体は、前記第2開閉体が前記第2アクセス口を閉塞した状態で、前記格納部に格納している第2種の収納部を、前記所定以上のセキュリティレベルで防護するように構成され、前記防護筐体は、前記第1状態では、前記第1種及び第2種の収納部を前記所定以上のセキュリティレベルで防護し、前記第2状態では、前記格納部内の前記第2種の収納部を前記所定以上のセキュリティレベルで防護しつつ、前記本体内の前記第1種の収納部へのアクセスを許容し、前記第3状態では、前記本体内の前記第1種の収納部を前記所定以上のセキュリティレベルで防護しつつ、前記格納部内の前記第2種の収納部へのアクセスを許容する、としてもよい。
【0023】
ここで、「所定以上のセキュリティレベル」とは、例えば、セキュリティに関する所定の規格(例えばUL291)を満足している、と定義してもよく、防護筐体は、所定の規格を満足するように、例えば強度等について、必要な構成を具備している、とすればよい。
【0024】
前記の構成によると、第1状態では、第1種及び第2種の収納部双方に対するセキュリティが維持され、第2状態では、第1種の収納部に対するセキュリティが解除される一方、第2種の収納部に対するセキュリティが維持され、第3状態では、第1種の収納部に対するセキュリティが維持される一方、第2種の収納部に対するセキュリティが解除される。こうして、防護筐体を所定以上のセキュリティレベルを有するように構成することは、第1、第2及び第3状態のいずれの状態においても、第1種及び/又は第2種の収納部を十分なセキュリティレベルで防護することを可能にし、少なくとも貨幣を収納する貨幣処理装置のセキュリティ性を大幅に高めることができる。
【0025】
前記格納部は、前記第1開閉体が前記第1アクセス口を閉塞した状態では、前記本体内に格納されるように構成されている、としてもよい。
【0026】
こうすることで、第1状態におけるセキュリティ性の向上に、より有利になる。
【0027】
前記第2種の収納部は、前記防護筐体が前記第3状態にあるときには、前記第2アクセス口を通じて、前記格納部に対し着脱されるように構成されている、としてもよい。
【0028】
前述したように第2種の収納部は、第1開閉体が第1アクセス口を閉塞している第3状態においてはアクセス方向の手前側に配置され、第2アクセス口を通じて容易にアクセスし得るから、アクセス頻度が相対的に高い、例えば集配業者が回収する回収カセットとして構成することが好ましい。つまり、第2種の収納部(回収カセット)は、回収作業の容易化及び効率化の観点から、格納部に対し着脱されるように構成することが好ましい。尚、第2種の収納部が回収カセットである場合、第1種の収納部は、例えばリサイクル収納部となるため、定期メンテナンスやエラー発生時にのみアクセスされ、そのアクセス頻度はあまり高くない。このことから第1種の収納部(リサイクル収納部)を、アクセス方向の奥側に配置していても何ら不都合はない。
【0029】
前記第1種の収納部は、前記防護筐体が前記第2状態にあるときには、前記第1アクセス口を通じて前記本体の外に引き出されるように構成されている、としてもよい。
【0030】
アクセス方向の奥側に配置される第1種の収納部を手前側に引き出すことで、その第1種の収納部に対する、例えばメンテナンス作業の作業性が高まる。
【0031】
前記第1開閉体は、前記本体に対し相対的に、所定の軸を中心として正転及び逆転方向に回動する、としてもよい。
【0032】
第1開閉体が正転及び逆転方向に回動して第1アクセス口を開閉すると共に、第2状態では、その第1開閉体の回動と共に格納部も回動して第1アクセス口を開放することで、第1種の収納部へのアクセスが容易になる。これは、操作性の向上及び作業性の向上に有利になる。
【0033】
前記第1開閉体は、前記本体に対し相対的に、前記アクセスの方向に往復移動する、としてもよい。
【0034】
第1開閉体がアクセスの方向に往復移動して第1アクセス口を開閉すると共に、第2状態では、その第1開閉体の移動と共に格納部も移動して第1アクセス口を開放することで、第1種の収納部へのアクセスが容易になる。これは、前記の構成と同様に、操作性の向上及び作業性の向上に有利になる。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように、前記の貨幣処理装置は、防護筐体が第1、第2及び第3状態を切り替えることによって、アクセス権限が互いに異なる第1種及び第2種の収納部のそれぞれに対する、アクセスの許可及び禁止を、個別かつ物理的に制御することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】売上金入出金機の内部構成を示す図である。
【図2】売上金入出金機の金庫部分の構成を概略的に示す図である。
【図3】売上金入出金機の金庫部分において、第1開閉体を開けた状態(第2状態)を示す斜視図である。
【図4】売上金入出金機の金庫部分において、第2開閉体を開けた状態(第3状態)を示す斜視図である。
【図5】図2〜4とは異なる構成の金庫部分において、第1開閉体を開けた状態を示す図3対応図である。
【図6】図2とは異なる金庫部分の構成を概略的に示す図2対応図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、貨幣処理装置の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。図1は、貨幣処理装置の例としての、売上金入出金機(以下、単に入出金機という)1の概略構成を示している。入出金機1は、スーパーマーケット等の小売店舗(以下、単に店舗という)におけるリテールシステムの一部を構成する装置であり、店舗のバックオフィスに設置される。尚、入出金機1は、紙幣及び硬貨の入出金処理等が可能であるが、以下では主として紙幣の処理について述べる。
【0038】
入出金機1は、店舗の売上金を入金(収納)する装置であると共に、そこに収納している貨幣を、釣銭準備金として出金する装置であり、この入出金機1は特に、入金された売上金を釣銭準備金として払い出すことが可能な、いわゆるリサイクル式に構成されている。入出金機1に入金した売上金は、契約した警送会社等の集配業者が回収する運用となっている。
【0039】
入出金機1は、相対的に上側の部分が制御部分101、相対的に下側の部分が金庫部分102として構成されており、図1に示すように、制御部分101を構成する筐体11の内部に、入金部12、出金部13及び識別部14が内蔵され、金庫部分102を構成する防護筐体9内に、第1種の収納部としてのリサイクル収納部15、及び、第2種の収納部としての回収カセット16が格納されており、紙幣を一枚ずつ搬送する搬送路17によって、これらの各部及びカセット12〜16を互いに連結することによって、入出金機1は構成されている。尚、図1に示す防護筐体9は、その構成を、単に概念的に示しているに過ぎず、以下において図2〜6を参照しながら説明する防護筐体9の、具体的な各構成とは、必ずしも対応しない。また、以下においては説明の便宜上、図1の左側を前側、右側を後側と呼ぶ。ここで「前側」は、店舗又は警送会社の担当者が各種の操作等を行う、入出金機1の正面側に対応し、「後側」は、入出金機1の背面側に対応する。前後方向はまた、入出金機1の奥行き方向と言い換えることが可能である。
【0040】
入金部12は、詳細な図示は省略するが、入出金機1の前側において、筐体11外に開口すると共に、複数枚の紙幣を一度に受け入れ可能な入金口と、入金口に投入された複数枚の紙幣を一枚ずつ繰り出す繰り出し機構とを備えている。
【0041】
識別部14は、入金部12に対し、図1に実線の矢印で示す紙幣の搬送方向の下流側の搬送路17上に配置されており、入金部12から繰り出された紙幣の一枚一枚について、その真偽、金種及び正損を識別するように構成されている。
【0042】
リサイクル収納部15は、識別部14に対し紙幣搬送方向の下流側に配置されており、より詳細には、搬送路17上に設けた第1分岐171において分岐し、上下に延びる分岐搬送路に接続されている。リサイクル収納部15は、図例では8個のテープ巻き取り方式の収納ユニット151を含んで構成されているが、収納ユニット151の数は特に限定されず、1個以上で、適宜の数を設定すればよい。8個の収納ユニット151は、この例では、上下に4個並んで1列を構成すると共に、その列が前後方向に2列並んでおり、その各々の収納ユニット151が、分岐機構を介して上下に延びる分岐搬送路に接続されている。各分岐機構は、図示は省略する制御部によって駆動制御されることにより、紙幣が、識別部14によって識別された金種及び/又は正損に応じて複数の収納ユニット151に振り分けられて収納されることになる。
【0043】
出金部13は、入出金機1の前側において筐体11外に開口すると共に、複数枚の紙幣を一度に保持可能な出金口を備えており、搬送路17において、実線の矢印で示される紙幣搬送方向の下流端が接続されている。これにより、出金部13には、識別部14を通過した紙幣がそのまま搬送されて、それを筐体11の外に払い出すか、又は、いずれかのテープ巻き取り方式の収納ユニット151から繰り出された紙幣が搬送されて、それを筐体11の外に払い出す。前者は、例えば入金処理において、入金部12に投入された紙幣の内、識別不可であった紙幣がリジェクトされる場合に相当し、後者は、例えば出金処理において紙幣を払い出す場合に相当する。
【0044】
回収カセット16は、第1分岐171と出金部13との間の搬送路17上に設けられた第2分岐172において分岐した分岐搬送路に接続されている。これにより、回収カセット16には、出金部13と同様に、識別部14を通過した紙幣がそのまま搬送されるか、又は、いずれかのテープ巻き取り方式の収納ユニット151から繰り出された紙幣が搬送される。回収カセット16は、詳しくは後述するが、入出金機1の防護筐体9に対し着脱可能に取り付けられる。警送会社が売上金を回収する回収処理時には、その売上金は回収カセット16に収納されており、警送会社の担当者が防護筐体9から回収カセット16を取り外すことによって、売上金が回収されることになる。尚、回収カセット16を取り外した後は、別の回収カセット16が防護筐体9に取り付けられることになる。
【0045】
回収カセット16は、詳細な図示は省略するが、テープ巻き取り式の収納ユニットとは異なり、その内部に昇降する集積台を備えており、この集積台上に紙幣を重ねて収納するように構成されている。尚、この例では回収カセット16を採用しているが、これに代えて、例えばパウチと呼ばれる、樹脂製や布製の、防護筐体9に対し着脱可能に取り付けられる袋等を採用してもよい。
【0046】
この入出金機1では、店舗の担当者又は警送会社の担当者が入出金機1の操作を行うことに応じて、前述した制御部が各部等12〜16を駆動制御することにより、入金処理、引渡処理、補充処理、回収処理及び出金処理を含む各種処理を実行する。
【0047】
ここで、入金処理は、店舗の売上金を、入出金機1に入金(収納)する処理であり、入出金機1は、入金部12に投入された売上金(紙幣)を、識別部14における識別結果に応じて、所定の収納ユニット151又は回収カセット16に収納する。尚、識別部14において識別不可の紙幣等、入出金機1がそのまま受け入れることができない紙幣は、例えば出金部13を通じてリジェクトされる。
【0048】
引渡処理は、店舗の売上金を警送会社に引き渡すための処理であり、店舗の担当者の操作に従って、入出金機1は、リサイクル収納部15に収納されている紙幣の全て又は一部を繰り出して、それを回収カセット16に収納し直す。
【0049】
補充処理は、入出金機1内に紙幣を補充するための処理であり、入出金機1は、入金部12に投入された補充用の紙幣をリサイクル収納部15に収納する。この補充処理は、店舗の担当者が行う場合、及び、警送会社の担当者が行う場合がある。
【0050】
回収処理は、警送会社が店舗の売上金を回収するために、警送会社の担当者が入出金機1の回収カセット16を取り外す処理である。入出金機1は、詳しくは後述するが、警送会社の担当者の操作に従って、通常は施錠されている防護筐体9を解錠し、回収カセット16の取り外しを許容する。
【0051】
出金処理は、入出金機1に収納されている紙幣を、例えば釣銭準備金として払い出す処理であり、入出金機1は、リサイクル収納部15に収納されている紙幣を繰り出して、それを出金部13を通じて払い出す。
【0052】
この入出金機1では、リサイクル収納部15に収納されている紙幣は、釣銭準備金として払い出されるため、店舗側が管理する紙幣となり、このリサイクル収納部15乃至そこに収納している紙幣については、店舗の担当者が取り扱い(アクセス)することが可能である。つまり、店舗の担当者はリサイクル収納部15に対するアクセス権限を有している。これに対し、前述した引渡処理を実行することによって、リサイクル収納部15から回収カセット16に紙幣を移した場合、この回収カセット16が入出金機1に取り付けられたままであって実際には回収されていなくても、そこに収容されている紙幣は、警送会社に引き渡されたとして運用される。つまり、回収カセット16に収納されている紙幣は、回収カセット16が入出金機1の防護筐体9に格納された状態でも、警送会社側が管理する紙幣となる。このため、回収カセット16に対するアクセス権限は、警送会社の担当者が有しており、店舗の担当者は回収カセット16に対するアクセス権限を有していない。
【0053】
このように入出金機1の防護筐体9には、リサイクル収納部15と回収カセット16との、アクセス権限が相異なる2種類の収納部が格納されているが、この防護筐体9は、そのリサイクル収納部15に対するアクセス権限と、回収カセット16に対するアクセス権限とを遵守しつつ、リサイクル収納部15へのアクセスと、回収カセット16へのアクセスとを、それぞれ個別に実現し得る点が特徴的であり、以下、図2〜4を参照しながら、防護筐体9の構成について詳細に説明する。
【0054】
防護筐体9は、前述したように入出金機1の下部を構成して、リサイクル収納部15及び回収カセット16を格納する筐体であり、格納したリサイクル収納部15及び回収カセット16を、所定以上のセキュリティレベルで防護する。尚、図2〜4においては、リサイクル収納部15を概略的に図示している。
【0055】
図2に端的に示すように、防護筐体9は、本体2と、第1開閉体3と、を含んで構成されている。本体2は、略矩形箱状であって、その内部にリサイクル収納部15及び回収カセット16を格納可能な格納空間20を有している。本体2は、その上下、左右、及び後部がそれぞれ、所定以上の厚みを有しかつ、所定以上の強度を有する防護壁21によって区画されている一方、その前部には、前方に向かって開口する第1アクセス口22が形成されている(図3も参照)。この第1アクセス口22は、後述するように、格納空間20に格納しているリサイクル収納部15にアクセスするための開口である。そうして本体2は、図例では、左右方向(幅方向)に対し、前後方向(奥行き方向)が相対的に長い形状を有しており、これによりこの本体2は、その格納空間20内に、入出金機1の前側に対しリサイクル収納部15が奥側、回収カセット16が手前側となるように、リサイクル収納部15及び回収カセット16を奥行き方向に並べて格納するように構成されている。
【0056】
第1開閉体3は、本体2の第1アクセス口22を開閉するものであって、第1アクセス口22に嵌り込んでこの第1アクセス口22を閉塞する扉部31と、扉部31の背面側に一体的に取り付けられた格納部32と、を備えている。
【0057】
扉部31は、本体2を構成する防護壁21と同様に、所定以上の厚みを有しかつ、所定以上の強度を有する矩形平板状であって(図3,4も参照)、左右方向の一側(図例では、入出金機1の正面向かって右側)において、本体2に対しヒンジ結合されている。これにより扉部31は、上下方向に伸びる軸回りに正転方向及び逆転方向の双方に回動をして、第1アクセス口22を閉塞する状態と、第1アクセス口22を開放する状態とに切り替わる。また、この扉部31の回動に伴い、この扉部31に一体的に取り付けられた格納部32も、軸を中心として正転方向及び逆転方向に回動をし、扉部31が第1アクセス口22を閉塞した状態では、格納部32は本体2内に格納される(図2の実線、及び、図4参照)一方、扉部31が第1アクセス口22を開放した状態では、格納部32は本体2の外に出されることになる(図2の一点鎖線、及び、図3参照)。
【0058】
格納部32は、詳細な図示は省略するが、その内部に回収カセット16が着脱可能に取り付けられることにより、この回収カセット16を格納しており、格納部32は、前記本体2の防護壁21や扉部31と同様に、所定以上の厚みを有しかつ、所定以上の強度を有する防護壁321によって区画形成されている。格納部32は、扉部31と一体となって回動する際に、本体2を構成する防護壁21との干渉を回避し得るように、その形状及びその配置が決定されている。尚、格納部32の防護壁321には、内部に格納した回収カセット16に対して紙幣を搬送可能となるように、紙幣が通過可能なスリット322が、厚み方向に貫通して形成されている(図3参照)。
【0059】
そうして、第1開閉体3の扉部31には、その板厚方向に貫通形成されかつ、格納部32の内部空間(回収カセット16を格納する空間)に連通する第2アクセス口33が設けられており(図2,4参照)、扉部31にはまた、第2アクセス口33を開閉する第2開閉体34が取り付けられている。
【0060】
第2開閉体34は、矩形状に開口する第2アクセス口33に対応するように、矩形平板状の扉であり、扉部31に対し、左右方向の一側(図例では、入出金機1の正面向かって左側)においてヒンジ結合されている。これにより、第2開閉体34は、上下方向に延びる軸を中心として正転方向及び逆転方向の双方に回動し、それによって、第2アクセス口33を閉塞する状態と、第2アクセス口33を開放する状態とに切り替わる(図2の二点鎖線及び図4参照)。
【0061】
尚、符号35は、第1開閉体3を開閉するためのハンドルであり、このハンドル35は、後述するように、リサイクル収納部15に対するアクセス権限を有する店舗の担当者が操作をするのに対し、符号36は、第2開閉体34を開閉するためのハンドルであり、このハンドル36は、回収カセット16に対するアクセス権限を有する警送会社の担当者が操作をする。
【0062】
そうして図2に実線で示すように、第1開閉体3が本体2の第1アクセス口22を閉塞すると共に、第2開閉体34が扉部31の第2アクセス口33を閉塞した状態では、防護筐体9は、本体2の格納空間20内に、リサイクル収納部15と、格納部32に格納された回収カセット16とを奥行き方向(前後方向)に並べて格納するように構成されている。ここで前述したように、本体2を区画形成する防護壁21、第1開閉体3の扉部31、格納部32を区画形成する防護壁321はそれぞれ、所定以上の厚みを有しかつ、所定以上の強度を有していると共に、本体2と第1開閉体3との間のヒンジ結合や、扉部31と第2開閉体との間のヒンジ結合部分もまた、所定以上の強度を有するように構成されており、これにより、防護筐体9は、内部に格納しているリサイクル収納部15や回収カセット16を、所定以上のセキュリティレベルで防護するように構成されている。具体的に、一例として、セキュリティに関するUL291(Underwriters Laboratories(登録商標))規格を満足する構成としてもよい。こうして第1開閉体3が本体2の第1アクセス口22を閉塞すると共に、第2開閉体34が扉部31の第2アクセス口33を閉塞することにより、リサイクル収納部15や回収カセット16を所定以上のセキュリティレベルで防護した状態は、入出金機1の通常の使用状態に相当する(第1状態)。尚、図示は省略するが、この第1状態では、第1開閉体3及び第2開閉体34は共に、例えばUL規格を満足するように施錠されていることは言うまでもない。
【0063】
この第1状態に対し、図3に示すように、第2開閉体34は閉じたままで、第1開閉体3を開けたときには、図2に一点鎖線でも示すように第1アクセス口22が装置1の前方に向かって開放される。これによって、本体2内に格納しているリサイクル収納部15に、第1アクセス口22を通じてアクセスすることが可能になる。例えば図3に一点鎖線で示すように、スライドレール4を利用して奥行き方向に往復移動可能に、リサイクル収納部15を本体2内に格納しているような構成においては、本体2内の奥側に配置されているリサイクル収納部15を、手前側に移動させて、本体2の外にまで引き出すことが可能になる。
【0064】
これは、リサイクル収納部15における紙幣の詰まりの解消や、リサイクル収納部15のメンテナンスを行う状態に相当し(第2状態)、第1状態から第2状態への移行は、リサイクル収納部15に対するアクセス権限を有する、例えば店舗の担当者が、入出金機1において、ユーザ認証を含む所定の操作を行って第1開閉体3を解錠することによってのみ行うことができる。尚、第1開閉体3に、それを施錠及び解錠するキーシリンダを設け、店舗の担当者がキーシリンダに、自身が管理するキーを差し込むことによって第1開閉体3を解錠する構成を採用してもよい。従って、リサイクル収納部15に対するアクセス権限を有しない者、例えば警送会社の担当者は、第1状態から第2状態への移行を行うことができない。
【0065】
この第2状態では、第2開閉体34が第2アクセス口33を閉塞したままであるため、格納部32内に格納された回収カセット16は、その格納部32及び扉部31を含む防護筐体9によって、所定のセキュリティレベルを維持した状態で防護される。言い換えると、この防護筐体9は、回収カセット16を所定以上のセキュリティレベルで防護したままで、リサイクル収納部15のセキュリティのみを解除して、そのリサイクル収納部15へのアクセスを可能にしている。このことはまた、リサイクル収納部15のメンテナンス等を行う者は回収カセット16にアクセスできないことを保証する。
【0066】
また、第1及び第2状態に対し、図4に示すように、第1開閉体3は閉じたままで、第2開閉体34を開けたときには、図2に二点鎖線でも示すように第2アクセス口33が装置1の前方に向かって開放されるため、格納部32内に格納している回収カセット16を、第2アクセス口33を通じて取り出すことが可能になる。これは、前記の回収処理時の状態に相当し(第3状態)、第1状態から第3状態への移行は、回収カセット16に対するアクセス権限を有する警送会社の担当者が、入出金機1において、ユーザ認証を含む所定の操作を行って第2開閉体34を解錠することによってのみ行うことができる。尚、第2開閉体34に、それを施錠及び解錠するキーシリンダを設け、警送会社の担当者がキーシリンダに、自身が管理するキーを差し込むことによって第2開閉体34を解錠する構成を採用してもよい。従って、回収カセット16に対するアクセス権限を有しない者、例えば店舗の担当者は、第1状態から第3状態への移行を行うことができない。
【0067】
この第3状態では、第1開閉体3が第1アクセス口22を閉塞したままであるため、本体2内に格納されたリサイクル収納部15は、その本体2及び第1開閉体3を含む防護筐体9によって、所定のセキュリティレベルを維持した状態で防護される。言い換えると、この防護筐体9は、リサイクル収納部15を所定以上のセキュリティレベルで防護したままで、回収カセット16のセキュリティのみを解除して、その回収カセット16の取り外し及び取り付けを可能にしている。このことはまた、回収カセット16の回収処理を行う警送会社の担当者はリサイクル収納部15にアクセスできないことを保証する。
【0068】
こうして、この入出金機1が備える防護筐体9は、第1、第2及び第3状態が切り替わることによって、アクセス権限が互いに異なるリサイクル収納部15及び回収カセット16に対するアクセスの許可及び禁止を、個別かつ物理的に制御することが可能になる。従って、前述したように、この入出金機1においては、リサイクル収納部15及び回収カセット16についてのアクセス権限を遵守し得る運用が実現し得る。
【0069】
また、第1状態から第2状態(図3)への移行に際しては、第1開閉体3を開ける操作を行うことだけで、その扉部31と共に、回収カセット16を格納する格納部32が移動をして、第1アクセス口22が開放されかつ、その第1アクセス口22とリサイクル収納部15との間の空間が開放される。そうしてそのまま、リサイクル収納部15へのアクセスが可能になる。同様に第1状態から第3状態(図4)への移行に際しても、第2開閉体34を開ける操作を行うことだけで、回収カセット16へのアクセスが可能になる。つまり、前述した防護筐体9の構成は、第1開閉体3及び第2開閉体34の一方を開ける操作を行うことだけで、リサイクル収納部15又は回収カセット16にアクセスすることが可能であり、入出金機1の高い操作性が得られる。
【0070】
また、そうして、アクセス権限の遵守を実現しつつも、入出金機1の通常の使用状態である第1状態では、リサイクル収納部15と回収カセット16とが、入出金機1の奥行き方向に並んで配置されるため、入出金機1が嵩高になったり幅広になったりすることが回避される。つまり、アクセス権限の遵守を実現すべく、リサイクル収納部15を格納する空間と、この格納空間とは独立した回収カセット16用の別の格納空間とを上下に重ねると共に、それらの開閉扉を上下に重ねて配置した場合と比較して、入出金機1は、高さ方向にコンパクトになり得る。これは、入出金機1の設置場所の制約を少なくする上で有利になり得る。
【0071】
さらに、リサイクル収納部15へのアクセスは、前述の通り、紙幣の詰まりの解消や、メンテナンス時に限られ、そのアクセス頻度は比較的低いのに対し、回収カセット16は、例えば定期的に回収されるため、そのアクセス頻度は、リサイクル収納部15へのアクセス頻度よりも高い。そのため、相対的にアクセス頻度の高い回収カセット16を、少なくとも第3状態では入出金機1の正面に対し手前側に配置する一方で、相対的にアクセス頻度の低いリサイクル収納部15を、入出金機1の正面に対し奥側に配置することで、回収処理時の操作性が向上し、入出金機1の運用がスムースになり得る。
【0072】
(その他の構成例)
ここで、図2〜4に示す構成例では、第1開閉体3の扉部31を本体2にヒンジ結合することにより、上下に伸びる軸回りに回動させているが、第1開閉体3は、例えば図5に示すように引き出し式の構成を採用することも可能である。
【0073】
すなわち、第1開閉体3の扉部31を、本体2に固定されたスライドレール4の前端に取り付けることで、この扉部31を本体2に対し相対的に、前後方向に往復移動するようにし、このことにより、扉部31が本体2の第1アクセス口22に嵌め込まれて、この第1アクセス口22を閉塞した状態と、扉部31が前方に移動して、第1アクセス口22を開放した状態とに切り替わるようにしてもよい。
【0074】
この構成においても、回収カセット16を着脱可能に格納する格納部32は、前記と同様に、扉部31に対して一体的に設けるようにすればよく、この構成は、扉部31に形成された第2アクセス口33を通じて、この回収カセット16を格納部32に対し着脱することを可能にする。尚、第2アクセス口33は、図例のように、上下方向に伸びる軸回りに回動するよう扉部31に取り付けた第2開閉体34によって開閉してもよい。
【0075】
また、この引き出し式の構成では、扉部31が取り付けられたスライドレール4に対し、リサイクル収納部15を結合しておくことにより、第1アクセス口22を開放すると同時に、リサイクル収納部15を、本体2の外に引き出すことが可能になる。図5は、防護筐体9の第2状態を示しており、前述したように、リサイクル収納部15に対するアクセス権限を有する、例えば店舗の担当者が、入出金機1において所定の操作を行い第1開閉体3を解錠することにより、第1開閉体3を前方へと移動させて、リサイクル収納部15を本体2の外に引き出すことが可能になる。このときに、回収カセット16は格納部32内に格納されたままであるため、所定以上のセキュリティレベルが維持されることになる。
【0076】
尚、図示は省略するが、この引き出し式の第1開閉体3を備えた防護筐体9において、第1状態は、第1開閉体3を閉じると共に、第2開閉体34を閉じた状態であり、第3状態は、第1開閉体3を閉じると共に、第2開閉体34を開けた状態であり、それぞれ前述した構成例における第1状態及び第3状態と同じである。また、図5に示す防護筐体9おいて、図2〜4に示す防護筐体9と実質的に同じ構成の部分については、同じ符号を付している。
【0077】
また、図2〜図5に示す構成例では、第1開閉体3の平板状の扉部31が、本体2に形成された第1アクセス口22に嵌り込んで、これを直接的に開閉しているが、例えば図6に示すように、第1開閉体3の扉部31と格納部32とを実質的に一つにして、格納部32の背面側で、本体2の第1アクセス口22を開閉するような構成を採用してもよい(図6の実線及び一点鎖線参照)。この構成では、第1開閉体3が第1アクセス口22を閉塞したときに、格納部32が本体2内に格納されないものの、扉部31、格納部32及び第2開閉体34を含んで構成される第1開閉体3が、それ単独で、所定以上のセキュリティレベルを確保するように構成することによって、本体2内に格納されたリサイクル収納部15を、所定以上のセキュリティレベルで防護することは勿論のこと、格納部32内に格納している回収カセット16を、所定以上のセキュリティレベルで防護することが可能になる。尚、図6に示す防護筐体9おいて、図2〜4に示す防護筐体9と実質的に同じ構成の部分については、同じ符号を付している。
【0078】
尚、リサイクル収納部15の数や、回収カセット16の数には制約はなく、複数のリサイクル収納部15、及び/又は、複数の回収カセット16を備えるようにしてもよい。
【0079】
また、前記の説明では、第1アクセス口22及び第2アクセス口33はそれぞれ、入出金機1の正面に開口しているが、第1及び第2アクセス口22,33はそれぞれ、入出金機1の背面に開口していてもよい。この場合も前記と同様に、第1アクセス口22を通じたリサイクル収納部15へのアクセス方向、及び第2アクセス口33を通じた回収カセット16へのアクセス方向はそれぞれ、前後方向(奥行き方向)にすればよい。また、第1アクセス口22及び第2アクセス口33はそれぞれ、入出金機1の左右いずれかの側面に開口していてもよい。この場合は、第1アクセス口22を通じたリサイクル収納部15へのアクセス方向、及び第2アクセス口33を通じた回収カセット16へのアクセス方向はそれぞれ、左右方向(幅方向)にすればよい。
【0080】
さらに、前述した説明では、紙幣及び硬貨の双方の処理を行う売上金入出金機1を例示しているが、例えば紙幣のみを処理する紙幣入出金機や、硬貨のみを処理する硬貨入出金機に、ここに開示する防護筐体9を適用してもよい。
【0081】
さらに、店舗等に設置される売上金入出金機1に限定されず、ここに開示する防護筐体9は、銀行等に設置される入出金機に適用することも可能である。また、入出金機に限定されず、貨幣を収納する収納部として、アクセス権限が相異なる2種類の収納部を備えた貨幣処理装置に広く適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上説明したように、ここに開示した貨幣処理装置は、互いに異なるアクセス権限が設定された第1種及び第2種の2種類の収納部を備えた貨幣処理装置において、第1種及び第2種の収納部についてのアクセス権限を遵守し得る運用が可能になるため、入金機、出金機及び入出金機等を含む、各種の紙幣処理装置に有用である。
【符号の説明】
【0083】
1 入出金機(貨幣処理装置)
2 本体
3 第1開閉体
9 防護筐体
15 リサイクル収納部(第1種の収納部)
16 回収カセット(第2種の収納部)
22 第1アクセス口
31 扉部
32 格納部
33 第2アクセス口
34 第2開閉体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々貨幣を収納する第1種の収納部及び第2種の収納部を備えた貨幣処理装置であって、
前記第1種の収納部を格納すると共に、当該第1種の収納部に対し、第1アクセス口を通じてアクセスすることが可能な本体と、前記第1アクセス口を開閉する第1開閉体と、を含んで構成される防護筐体を備え、
前記第1開閉体は、前記第1アクセス口を閉塞する扉部と、前記扉部に一体的に設けられかつ、前記第2種の収納部を格納する格納部と、前記扉部に形成された第2アクセス口を開閉するように当該扉部に取り付けられた第2開閉体と、を含んで構成され、
前記防護筐体は、
前記第1開閉体が前記第1アクセス口を閉塞すると共に、前記第2開閉体が前記第2アクセス口を閉塞することによって、前記第1種の収納部が、前記第1開閉体に対しアクセス方向の奥側、前記第2種の収納部が、前記第1開閉体に対し前記アクセス方向の手前側となるように、前記第1種及び第2種の収納部を前記アクセス方向に並んで配置させる第1状態と、
前記第1開閉体を動かして前記第1アクセス口を開放すると共に、前記第2開閉体が前記第2アクセス口を閉塞することによって、前記第2種の収納部を前記格納部内に格納したままで、前記本体内の前記第1種の収納部に対して、前記第1アクセス口を通じてアクセスすることを許容する第2状態と、
前記第1開閉体が前記第1アクセス口を閉塞すると共に、前記第2開閉体を開けて前記第2アクセス口を開放することによって、前記第1種の収納部を前記本体内に格納したままで、前記格納部内の前記第2種の収納部に対して、前記第2アクセス口を通じてアクセスすることを許容する第3状態と、
に切り替わるように構成されている貨幣処理装置。
【請求項2】
前記防護筐体は、前記第1開閉体が前記第1アクセス口を閉塞した状態で、格納している第1種の収納部を所定以上のセキュリティレベルで防護するように構成され、
前記第1開閉体は、前記第2開閉体が前記第2アクセス口を閉塞した状態で、前記格納部に格納している第2種の収納部を、前記所定以上のセキュリティレベルで防護するように構成され、
前記防護筐体は、
前記第1状態では、前記第1種及び第2種の収納部を前記所定以上のセキュリティレベルで防護し、
前記第2状態では、前記格納部内の前記第2種の収納部を前記所定以上のセキュリティレベルで防護しつつ、前記本体内の前記第1種の収納部へのアクセスを許容し、
前記第3状態では、前記本体内の前記第1種の収納部を前記所定以上のセキュリティレベルで防護しつつ、前記格納部内の前記第2種の収納部へのアクセスを許容する請求項1に記載の貨幣処理装置。
【請求項3】
前記格納部は、前記第1開閉体が前記第1アクセス口を閉塞した状態では、前記本体内に格納されるように構成されている請求項1又は2に記載の貨幣処理装置。
【請求項4】
前記第2種の収納部は、前記防護筐体が前記第3状態にあるときには、前記第2アクセス口を通じて、前記格納部に対し着脱されるように構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の貨幣処理装置。
【請求項5】
前記第1種の収納部は、前記防護筐体が前記第2状態にあるときには、前記第1アクセス口を通じて前記本体の外に引き出されるように構成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の貨幣処理装置。
【請求項6】
前記第1開閉体は、前記本体に対し相対的に、所定の軸を中心として正転及び逆転方向に回動する請求項1〜5のいずれか1項に記載の貨幣処理装置。
【請求項7】
前記第1開閉体は、前記本体に対し相対的に、前記アクセスの方向に往復移動する請求項1〜5のいずれか1項に記載の貨幣処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−108640(P2012−108640A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255746(P2010−255746)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000001432)グローリー株式会社 (1,344)
【Fターム(参考)】