説明

貨物自動車の荷台、および貨物自動車の荷台作業用安全装置、並びにこれらを用いて形成した貨物自動車

【課題】 トラックの荷台上においても、高所作業となる場合にのみ使用でき、高所作業とならない場合には、普通のトラックとして使用できるようにした貨物自動車の荷台、および貨物自動車の荷台作業用安全装置、並びにこれらを用いて形成した貨物自動車の提供。
【解決手段】 貨物自動車における荷台であって、当該荷台に対して、長尺なパイプ又は柱を用いて形成された長尺部材を立設させて着脱自在に保持する基礎部材を設けた貨物自動車の荷台を提供し、更にパイプまたは柱を用いて形成されると共に、貨物自動車の荷台に対して着脱自在に立設される2つ以上の長尺部材と、当該2つの長尺部材の一端に接続されると共に、長尺部材間に連架される親綱と、一端が当該親綱に対してスライド可能であると共に、他端側に作業者に連結される連結具を設けたロープ部材とからなる貨物自動車の荷台作業用安全装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貨物自動車の荷台上における作業者の落下の安全性を確保するこののできる貨物自動車の荷台、および貨物自動車の荷台作業用安全装置、並びにこれらを用いて形成した貨物自動車に関し、特に必要に応じて設置することができると共に、高所作業を伴わない場合には、荷積みや荷卸し作業時に支障を来たすことの無い様に形成された貨物自動車の荷台、および貨物自動車の荷台作業用安全装置、並びにこれらを用いて形成した貨物自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
労働安全衛生規則第519条には高所作業についての規定が設けられており、当該規定では、事業者に対して、高さが2メートル以上の作業床の端、開口部等で墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある箇所には、囲い、手すり、覆い等を設けなければならない事が義務付けられている。
【0003】
一方、トラックの荷台上で作業者が荷物の積み下ろし等の作業を行う際には、通常、トラックの荷台は地表からの高さが2メートル以下であるので防綱は張られていないのが通常である。しかし、トラックの荷台上に鉄骨等の荷物を積み重ねて置いた場合には、その積荷の上に作業員が乗って玉掛け作業等の作業を行う際に、地表からの高さが2メートル以上になる場合もある。
【0004】
そして前記の労働安全衛生規則第519条における高所作業に関する規定は、当該トラックの荷台上における作業であっても例外ではないことから、結果として、このようなトラック荷台上の作業においても、事業者に対して囲い、手すり、覆い等の安全策を講じなければならない義務が存在する。
【0005】
そこで従前においては、このようなトラック荷台上での作業の安全性を考慮して、特許文献1〜3の技術が提案されている。
【0006】
特許文献1(実用新案登録第3102725号公報)には、通常のトラックの運用、車両保安基準及び道路交通法の遵守を妨げることなく、作業者用安全帯用の親綱を張設できるようにするべく、安全帯用支柱を、伸展、収縮及び折りたたみ可能な構造とし、いかなる場合も安全帯支柱がトラック荷台床面を占拠したり、車外(荷台あおりの外側)に突出しないようにすることで、法で定める安全帯用設備の利用を実現するトラック高所作業用安全帯取付支柱が提案されている。
【0007】
また特許文献2(特開2006−167263号公報)には、台の上方に親綱を張り渡すための親綱支持装置として、保持台に保持された後方側親綱支柱を荷台側面の外側まで引き出し、2本の伸縮支柱を支柱本体から前進限位置である突出位置まで引き伸ばし、支柱本体を回転軸を中心としてほぼ垂直となる起立位置まで回転させ、一方で、前方側親綱支柱の出没支柱を前進限位置である突出位置まで引き伸ばし、伸縮支柱の先端に設けられたフックと出没支柱の先端に設けられた回転ローラとにより親綱を支持することにより、荷台の上方に親綱を張り渡すことが提案されている。
【0008】
更に特許文献3(特開2006−320693号公報)には、車両荷台上や車両屋根上で作業を行う時の作業者の転落防止措置及び転落時の傷害軽減措置を講ずるべく、大径の支柱外管をトラック荷台等に固定取付し、上先端部に安全帯係留部を備えた小径の安全帯係留用支柱内管を上下可変に収納し、常時身長と最適な高さに安全帯係止部を容易且つ迅速に、上下可変させて使用する作業員転落時傷害軽減装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実用新案登録第3102725号公報
【特許文献2】特開2006−167263号公報
【特許文献3】特開2006−320693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の通り、従来からトラック荷台上で作業を行うに際に安全性を確保する手段ないし装置は各種提案されている。しかしながら、これほど様々な安全装置が提案されていながら、未だにトラック荷台上での高所作業者のための安全装置が使用されていないのも事実である。
【0011】
その要因として考えられるのは、車両に対して固定するタイプの作業者安全用の設備が、高所作業時以外におけるトラック運用(すなわち搬送時の運行および地上から2メートル未満の積載時の積み下ろし等)において障害となることが挙げられる。また、従来提案されている作業者安全用の設備では、作業者における設置作業自体が複雑で面倒であったり、或いはを当該設備を使用した場合には作業者における移動の自由が制限され、作業能率の低下をもたらすことも考えられる。更に従来提案されている作業者安全用の設備は、比較的複雑な構造であることから、コスト上の問題もある。
【0012】
そこで本発明は、トラックの荷台上においても、高所作業となる場合にのみ使用でき、高所作業とならない場合には、普通のトラックとして使用できるようにした貨物自動車の荷台、および貨物自動車の荷台作業用安全装置、並びにこれらを用いて形成した貨物自動車を提供することを第一の課題とする。
【0013】
また本発明では、実際にトラックの荷台上で高所作業を開始するに先立ち、作業者が簡易に使用することのできる貨物自動車の荷台、および貨物自動車の荷台作業用安全装置、並びにこれらを用いて形成した貨物自動車を提供することを第二の課題とする。
【0014】
また、実際に当該安全設備を使用した場合でも、作業者における移動の自由が制限されることなく、作業能率の低下を生じさせない貨物自動車の荷台、および貨物自動車の荷台作業用安全装置、並びにこれらを用いて形成した貨物自動車を提供することを第三の課題とする。
【0015】
そして本発明では、簡易な構造とすることにより、使用に際しての煩雑さをなくし、かつコストを抑えた貨物自動車の荷台、および貨物自動車の荷台作業用安全装置、並びにこれらを用いて形成した貨物自動車を提供することを第四の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題の少なくとも何れかを解決する為、本発明では作業者の安全を確保することのできる荷台作業用安全装置を設置することのできる貨物自動車の荷台を提供するものである。
【0017】
即ち本発明に係る貨物自動車の荷台は、貨物自動車における荷台であって、当該荷台に対して、長尺なパイプ又は柱を用いて形成された長尺部材を立設させて着脱自在に保持する基礎部材を設けたことを特徴とする貨物自動車の荷台を提供する。
【0018】
かかる基礎部材は、荷台上で作業する作業者に架けられる安全ベルトを直接的又は親綱などを介して間接的に吊り下げる為の長尺部材を保持するものである。かかる長尺部材は親綱支柱として使用するものであり、少なくとも長く形成され、且つ作業者が落下した場合でもこれを支えることのできる強度を有すればよく、これは湾曲又は曲折して形成されていても良い。例えば、金属製のパイプやH鋼、L字鋼、或いは木製の角材などを用いて、直線状に形成する他、上端側を曲折させて、全体略上下逆向き「L」字状に形成することもできる。
【0019】
このような基礎部材としては、例えば円筒の他、三角筒、四角筒など多角形状の筒に形成することができる。またこの筒は、底方向に内径を狭めたり、水平断面積を狭めて形成することができる。そしてこのように形成された筒状の基礎部材の内部空間内には、前記長尺部材が挿入され、当該長尺部材を支持することから、この筒状に形成された基礎部材の内部空間は、前記長尺部材を内挿して支持する大きさおよび形状に形成されていることが望ましい。
【0020】
またこの基礎部材は、作業差の安全ベルトを1つの長尺部材で保持する場合には、荷台上で1つ設ければよい。しかしながら荷台上に2つの長尺部材を立設し、両者間に親綱を連架させて安全ベルトを支承する場合には、当該2つの長尺部材を保持する為に、この基礎部材は荷台に2つ以上設ける必要がある。
【0021】
上記基礎部材は、貨物車の荷台におけるアオリ部分に対して、これに沿うように設ける他、荷台の平坦な面(ベッド面)に設けることもできる。特に荷台のベッド面に設ける場合は、少なくとも何れか又は全ての基礎部材は、各種筒状であって、これを当該荷台のベッド面に埋め込んで設ける事が望ましい。更に基礎部材を荷台のベッド面に埋め込んで設ける場合には、その開口が荷台と面一になっている事が望ましい。荷台の上に余計な突起を設けないことで、従前と同じようにして荷物を積み込むことができるようにする為である。
【0022】
更に、筒状に形成されて中空部(内部空間)を有する基礎部材は、その上端側の開口を塞ぐことのできる蓋部材を伴うことができる。かかる蓋部材を設けた場合には、例えば土砂等の粒状物を荷台に積載する場合でも、当該基礎部材の内部空間に詰まってしまうことをなくすことができる。そしてこの基礎部材の下端側の開口は、少なくとも基礎部材の内部空間に入り込んだゴミや粒状物が通過できる程度の大きさ以上で開口していることが望ましい。基礎部材の内部空間にゴミや粒状物等が詰まってしまうことを阻止する為である。
【0023】
そして本発明では上記課題の少なくとも何れかを解決する為に、上記のような貨物車の荷台等で使用することのできる貨物自動車の荷台作業用安全装置を提供する。
【0024】
即ち、パイプまたは柱を用いて形成されると共に、貨物自動車の荷台に対して着脱自在に立設される2つ以上の長尺部材と、当該2つの長尺部材の一端に接続されると共に、長尺部材間に連架される親綱と、一端が当該親綱に対してスライド可能であると共に、他端側に作業者に連結される連結具を設けたロープ部材とからなることを特徴とする、貨物自動車の荷台作業用安全装置である。
【0025】
かかる荷台作業用安全装置に使用される長尺部材の大凡の構造は前述の通りであるが、当該長尺部材の上端側には、少なくとも親綱を保持する為の親綱固定部が形成されることが必要になる。例えば親綱の両端側にスナップフックなどの各種のフック設けた場合には、当該フックを保持するリング状の部材で親綱固定部を形成することができる。なお親綱とは、所作業に用いる安全帯のフックを掛けるロープであり、本明細書においては必ずしもロープに限らず、ワイヤーや鉄筋などを用いることもできる。
【0026】
また、ロープ部材は、安全ベルトとして機能し、一端が当該親綱に対してスライド可能であると共に、他端側に作業者に連結される連結具が設けられる。このロープ部材の一旦側は、少なくとも親綱に対してスライド自在であれば良く、フックのみならず親綱を通したリング状に形成されていても良い。
【0027】
かかる荷台作業用安全装置は、望ましくは親綱支柱として機能する長尺部材の下端を、上記本発明に係る荷台に設けられた基礎部材で固定して使用することが望ましいが、その他にも長尺部材の下端を予め貨物自動車の荷台に固定しておくこともできる。この場合、貨物自動車の荷台に対しては基礎部材を設けることを要しない。
【0028】
そして本発明では、前記課題の少なくとも何れかを解決する為に、上記貨物自動車の荷台に上記本発明に係る荷台作業用安全装置を設けた貨物自動車を提供する。
【0029】
即ち上記本発明に係る貨物自動車の荷台と、上記本発明に係る貨物自動車の荷台作業用安全装置とからなり、当該荷台作業用安全装置を構成する長尺部材の下端は、前記貨物自動車の荷台に設けられた基礎部材に内挿可能または外挿可能であり、荷台上に立設された少なくとも2つ以上の長尺部材の上部には、親綱が連架されて、当該親綱に対して前記ロープ部材がスライド可能に設けられる貨物自動車である。
【0030】
かかる貨物自動車によれば、作業者が荷台上に積み重ねた荷物の上に載って作業する場合に、長尺部材を基礎部材に係合させて、長尺部材間に親綱を掛け渡し、そしてこの親綱にロープ部材をつなげると共にその先端を作業者自身に繋げる事で、作業者の高所作業時における安全を確保することができる。しかも、高所作業を伴わない場合、具体的にはフォークリフトなどで荷積みや荷卸ろしを行う場合、或いは作業者が荷台のベッド面上に立って作業する場合などには、かかる荷台作業用安全装置を設置しないで作業することができる。よって、必要に応じて作業者の安全を確保することができ、不要時には通常の荷台として使用することのできる貨物自動車が提供される。
【0031】
また前記ロープ部材は、セルフロック機構を具備する巻取り器を伴って構成することもできる。かかる巻取り器は、ロープ部材を巻取り又は繰出すことができ、作業者の転落を感知して前記ロープ部材の繰出しを禁止するセルフロック機構を備えるものである。
【0032】
更に本発明においては、長尺部材に安全ブロックを固定した構成とすることもできる。かかる安全ブロックとは、ブロック本体を長尺部材の上端側等に取り付ける一方、ブロック本体に巻き取られているワイヤロープ先端のフックを、作業者の身に着けた安全帯に連結して使用されるものであり、作業員の移動に伴って、ワイヤロープをゆっくり引き出すことができ、逆に、作業員がブロック本体に近づくことにより、余分なワイヤロープがスプリング力によって自動的に巻き取られるようになっている。そして、落下等によりワイヤロープが一定速度以上で引き出されようとすると、ブロック本体に内蔵されたロック機構が自動的に働いて、それ以上の引出しが阻止され、墜落事故を防止できるようになっているものである。
【0033】
そして本発明に係る長尺部材は、貨物自動車の荷台における幅方向の一方寄り又は後端寄りに設置できるように形成することが望ましい。通常貨物自動車からの荷卸しは、左右どちらか一方、或いは後端から行われるが、その際に作業者に連架されるロープ部材が作業者の動作に支障をきたすことが無いようにするためである。
【0034】
さらに、この長尺部材を保持する為の基礎部材は、荷台内に設けられる事が望ましい。荷台の外に設置した場合には、確かに積載した荷物によって隠れてしまうおそれはなくなるが、その反面、車両の長さの変更を伴ってしまい、道路走行時における安全性の確保が困難になってしまうためである。そして基礎部材が積載した荷物に隠れてしまう課題については、荷物の積載時において、荷卸時の作業面の高さや荷卸の方法等を考慮し、予め長尺部材を設置しておけば何らの問題も生じないためである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施の形態にかかる貨物自動車の荷台作業用安全装置を設置した荷台を具備する貨物自動車を示す斜視図
【図2】本実施の形態にかかる貨物自動車での作業状態を示す側面図
【図3】貨物自動車の荷台の前方に設置する基礎部材の設置状態を示す要部拡大斜視図
【図4】貨物自動車の荷台の後方に設置する基礎部材の(A)設置状態を示す要部拡大斜視図、(B)下方から見た斜視図
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照しながら、本発明にかかる貨物自動車10の荷台と貨物自動車の荷台作業用安全装置の具体的な実施の形態を説明する。図1は本実施の形態にかかる荷台作業用安全装置を設置した荷台を具備する貨物自動車10を示す斜視図であり、図2は本実施の形態にかかる貨物自動車10での作業状態を示す側面図であり、図3は貨物自動車10の荷台の前方に設置する基礎部材50aの設置状態を示す要部拡大斜視図であり、図4は貨物自動車10の荷台の後方に設置する基礎部材50bの(A)設置状態を示す要部拡大斜視図、(B)下方から見た斜視図である。
【0037】
先ず図1に示す様に、この実施の形態にかかる貨物自動車10の荷台には、車両の進行方向左側の前端側と後端側に合計2本の長尺部材20a,20bが設置されている。特に、この実施の形態では、水平断面形状が四角形のパイプで形成された長尺部材20a,20bが使用されており、その上端には、2本の長尺部材20a,20b間に連架される親綱30を保持する取り付け部21が形成されている。この取り付け部21は、親綱30を結びつけることができるような円環状に形成することができる。また取り付け部21を円環状に形成した場合には、親綱30の両端側にスナップフック(図示せず)を設けて、円環状の取り付け部21にスナップフックをかけて親綱30を保持することができる。
【0038】
なお、この長尺部材20a,20b間に連架する親綱30の連結方法は各種の構造に形成することができ、例えば前方に設置する基礎部材50aの上端には親綱30のスナップフックを保持する環状体を設け、後方に設置する基礎部材50bの上端にはU字状の部材を設ける。そして前方の基礎部材50a上端の環状体に対して親綱30のスナップフックを連結し、親綱30の後端側は、後方の基礎部材50b上端のU字状部材を通して車両における荷台に設けられたフックに、南京締めその他の方法で連結することができる。これにより、親綱30に負荷がかかった場合には自らの弾性を発現させてU字状部材部材をスライドすることが可能になる。
【0039】
そしてこの親綱30には、その長さ方向にスライド自在なロープ部材40が設けられている。この実施の形態では、リング状の連結具41に親綱30を通し、当該リング状の連結具41に対してロープ部材40を設けることで、当該ロープ部材40が親綱30の長さ方向、即ち架設された方向にスライド自在になっている。そしてこのロープ部材40の先端側には、作業者に連結されるスナップフック42が設けられている。なお、このリング状の連結具41を設けたロープ部材に代えて、スナップフックを使用したもの、即ちロープの一端側にスナップフックを他端側に作業者への装着部を設けた所謂「安全帯」を使用することも当然に可能である。
【0040】
上記のように親綱30を保持する長尺部材20a,20bは、図2〜4に示す様に、荷台に設けられた基礎部材50a,50bに保持されている。図2に示す様に、この基礎部材50a,50bは荷台に於ける前方側(車両のキャビン側)と、後方側に設けられており、何れも長尺部材20a,20bを収容し、収容する穴を有する構造に形成されている。特に本実施の形態においては、荷台の前方側に設置される基礎部材50aは、荷台の上に載るように設置されており、荷台のキャビン側の壁と側面のアオリ11との間の角部分に設置されている。このように荷台の上に突起して形成された前方側の基礎部材50aには、前記長尺部材20aが差し込まれ、当該長尺部材20aの下端側を保持して荷台上に立設させることができる。特に前方側の基礎部材50aを荷台上に設けているのは、そもそも荷台におけるキャビン側(運転席側)には鳥居と称される壁又はフレーム12があり、この壁又はフレーム12を倒して使用されることは無いから、荷台上に突起させて設けても作業上特段の弊害は無く、むしろ突起していることで、その設置場所を容易に確認できるためである。
【0041】
なお、荷台の前方側に設置する基礎部材50aはその他にも鳥居の上方寄りの内側に設置することもできる。即ち、荷台よりも高い位置に設置することで、長尺部材20aの長さを短くすることができ、その結果、長尺部材20aの軽量化を図ることができる。そして当該長尺部材20aの軽量化は、この貨物自動車10の荷台作業用安全装置の設置容易性を向上させることができる。
【0042】
一方、荷台の後方側に設けられる基礎部材50bは、図2及び4に示す様に、荷台よりも下方に突起するように形成される。この後方側の基礎部材50bも、前記長尺部材20bが内挿される大きさで、且つ挿入された長尺部材20bを保持する大きさの穴部を有するものとして形成されており、望ましくは図4(B)に示す様に、その底面は、長尺部材20bの落下を抑えることができる限りにおいて開口している事が望ましい。このように底面が開口していることで、仮に基礎部材50b内の中空部に土砂などの異物が入り込んでしまっても、当該異物によって穴が塞がってしまうことは無く、確実に長尺部材20bを保持できるようにするためである。このように、後方側の基礎部材50bを荷台の下方に突起するように設けているのは、荷台の側方および後方側のアオリ11は開放されることがあり、その際に基礎部材50bだけが突起して荷台上の作業に支障を来たす事が無いようにするためである。
【0043】
本実施の形態において、上記長尺部材20a,20bは、例えば荷台よりも2mほどの高さに先端が存在する長さに形成することができ、また基礎部材50a,50bは、長尺部材20a,20bの下方約50cm程度が挿入されるように形成することができる。また荷台の後方側に設置される基礎部材50bは、揺れ動くことなく確実に長尺部材20bを保持できるように、荷台下面との間に筋交いを設けて補強してあることが望ましい。
【0044】
以上のように構成された荷台と、この荷台に設置された貨物自動車10の荷台作業用安全装置とを具備する車両によれば、例えば図2に示す様に、荷台上に積載物が高く積み込まれ、作業者が高く積み込まれた荷台上で作業する場合、即ち高所作業になってしまう場合であっても、作業者には親綱30に保持されたロープ部材40がつなげられており、その結果、仮にバランスを崩した場合であっても、高所からの脱落事故を阻止することができる。
【0045】
なお、本実施の形態では、特に車両の進行方向における左側に長尺部材20a,20b等の貨物自動車10の荷台作業用安全装置を設置した例を示しているが、当然に車両の進行方向における右側に貨物自動車10の荷台作業用安全装置を設置することもでき、更に車両の左右両方に、任意に貨物自動車10の荷台作業用安全装置を設置できるように構成することもできる。この場合、貨物車両の荷台の四隅に基礎部材50a,50bを設置することができる。
【0046】
また更に貨物車両の荷台が長い場合、例えば5mを超える場合などには、2m間隔など、任意の間隔で長尺部材20a,20bを設けることができるようにするのも望ましい。
【0047】
そして、上記のように構成された貨物自動車10の荷台においては、荷台の積載物の荷降ろしが完了した時には、この長尺部材20a,20bを基礎部材50a,50bから引き抜いて、平床の状態にして移動することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
上記本発明にかかる貨物自動車10の荷台、および貨物自動車10の荷台作業用安全装置、並びにこれらを用いて形成した貨物自動車10によれば、トラックなどの貨物車両における荷卸や荷積み作業時における安全性の向上を図ることができ、更には、作業者の安全性の向上による安心により、貨物車両における荷卸や荷積み作業を効率的に行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0049】
10 貨物自動車
11 アオリ
20a,20b 長尺部材
30 親綱
40 ロープ部材
41 連結具
42 スナップフック
50a,50b 基礎部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨物自動車における荷台であって、当該荷台に対して、長尺なパイプ又は柱を用いて形成された長尺部材を立設させて着脱自在に保持する基礎部材を設けたことを特徴とする貨物自動車の荷台。
【請求項2】
前記基礎部材は荷台に2つ以上設けられ、少なくとも何れかの基礎部材は筒状に形成されると共に、当該筒状に形成された基礎部材の内部空間は、前記長尺部材を内挿して支持する大きさおよび形状に形成されている、請求項1に記載の貨物自動車の荷台。
【請求項3】
前記基礎部材は筒状であって、少なくとも何れかの基礎部材は荷台に埋め込まれており、当該荷台に埋め込まれた基礎部材は、その開口が荷台と面一になっている請求項1に記載の貨物自動車の荷台。
【請求項4】
パイプまたは柱を用いて形成されると共に、貨物自動車の荷台に対して着脱自在に立設される2つ以上の長尺部材と、
当該2つの長尺部材の一端に接続されると共に、長尺部材間に連架される親綱と、
一端が当該親綱に対してスライド可能であると共に、他端側に作業者に連結される連結具を設けたロープ部材とからなることを特徴とする、貨物自動車の荷台作業用安全装置。
【請求項5】
請求項1〜3の何れか一項に記載の貨物自動車の荷台と、
請求項4に記載の貨物自動車の荷台作業用安全装置とからなり、
当該荷台作業用安全装置を構成する長尺部材の下端は、前記貨物自動車の荷台に設けられた基礎部材に内挿可能または外挿可能であり、
荷台上に立設された少なくとも2つ以上の長尺部材の上部には、親綱が連架されて、当該親綱に対して前記ロープ部材がスライド可能に設けられることを特徴とする、貨物自動車。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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