説明

貨物車

【課題】荷台に積載された積載物を荷台上で搬送するときの効率を向上させる貨物車を提供する。
【解決手段】荷台111に積載された積載物を荷台111上で搬送することができる貨物車100であって、前記荷台111上で、前記積載物の搬送方向に沿って並べて配置される複数のスライド荷受部材14と、前記複数のスライド荷受部材14を搬送方向に移動する駆動装置21とが設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷台に積載された積載物を荷台上で搬送することができる貨物車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、貨物車の荷台に積載された積載物を荷台外に搬出する場合、又は積載物を荷台内に搬入する場合、様々な方法により行われている。例えば、積載物を荷台外に搬出する場合、荷台の下側に設けられた油圧式シリンダ等により、荷台のうち一方側端部を上昇させることによって、荷台を傾斜させ、重力で積載物を落下させる、いわゆるダンプアップという方法が知られている。ダンプアップの方法によれば、荷台に積載されている積載物を簡単に荷台外に搬出することができる。
【0003】
また、特許文献1には、積載物が載置され、並行に配置されている複数の床部材が複数の床板部材群に分割され、かつ各板部材群ごとに床板部材を前方に動かすことにより積載物を搬送する搬送装置が開示されている。特許文献1に開示されている技術では、積載物を搬送したい方向では、複数の床部材を同時に移動させることで、荷台に積載されている積載物を確実に搬送することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2008−195467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したダンプアップの方法による搬送方法では、ダンプアップの機構自体が高額であるため、貨物車に搭載した場合、貨物車が高額になってしまう。また、ダンプアップの機構が設けられた貨物車は、ダンプアップの機能を設けるスペースが必要になるため、その分重心が高くなり、横転し易い構造になる。また、ダンプアップすると、さらに重心は高くなり後方になることから、貨物車自体が後方に倒れる可能性がある。また、建屋内で荷台をダンプアップする場合には、建屋内の高さが低いとダンプアップすることができないという問題がある。
【0006】
また、特許文献1に開示された搬送装置では、上述したようなダンプアップの機能による問題は生じないものの、積載物が搬送したい方向に、複数の床部材を同時に移動させた後、複数の床部材のうち床板部材群ごとに、上述した床部材の移動を戻し、その後、再び複数の床部材を同時に移動させる動作を繰り返して、積載物を搬送する。したがって、積載物を搬送させる効率が悪いという問題がある。
本発明は上述したような問題点に鑑みてなされたものであって、荷台に積載された積載物を荷台上で搬送するときの効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、荷台に積載された積載物を荷台上で搬送することができる貨物車であって、前記荷台上で、前記積載物の搬送方向に沿って並べて配置される複数のスライド荷受部材と、前記複数のスライド荷受部材を搬送方向に移動する駆動装置とが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、荷台に積載された積載物を荷台上で搬送するときの効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る貨物車100の構成について説明する。本実施形態では、貨物車100として、いわゆるバン型車を取り上げて説明する。
図1は、貨物車100の全体の構成を示す側面図である。図1では、貨物車100の進行方向をFrで示し、後退方向をRrで示している。
貨物車100は、運転部101と、荷台部110とを含んで構成されている。
運転部101には、フロントピラーやルーフ等に囲まれた運転室102が形成されている。運転室102内には、運転席の他、ハンドル103、ブレーキペダル、アクセルペダル等が配設されている。また、運転部101の下側には、フロントタイヤ104が軸支されている。フロントタイヤ104の近傍には、エンジン、クラッチ、トランスミッション等の走行用駆動機構が配設されている。また、運転部101から後方に向かってフレーム105が延設されている。このフレーム105の下側には、複数のリアタイヤ106が軸支されている。
【0010】
フレーム105の上部には、荷台部110が配設されている。本実施形態に係る荷台部110は、荷台111と荷台111全体を覆う箱状部材112とから構成されている。箱状部材112が荷台111を覆うことにより、箱状部材112と荷台111とによって囲まれる荷室が形成される。また、箱状部材112のうち、後方の後板113は、観音扉式に開閉することができるようになっている。したがって、作業者は、後板113が開かれた開口部を通して、積載物を荷台111から荷卸をしたり、積載物を荷台111に荷積みをしたりする。一般的に、本実施形態のようなバン型車は、荷台111全体が覆われているために、荷台111に積載された積載物を荷台111上で搬送する場合、フォークリスト等の運搬機を用いることが困難であり、搬送効率が悪くなってしまう。なお、本実施形態では、後板113を観音扉式に開閉する場合についてのみ説明したが、他の開閉方式であってよく、天板中央から左右に開く、いわゆるウイング車であってもよい。また、本実施形態では、荷台111全体を覆う箱状部材112が設けられた荷台部110について説明したが、荷台部110は荷台111のみから構成されている、いわゆる平ボディ車であってもよい。
【0011】
次に、図2〜図6を参照して、本実施形態に係る荷台部110及び周辺の構成について説明する。図2は、荷台部110の側面図である。なお、図2では、荷台部110の中間を省略して示している。また、図2では、荷台111から積載物を荷台111外に搬出する方向をRrで示し、積載物を荷台111に搬入する方向をFrで示す。なお、図2は、荷台111に最大量の積載物が積載できるような状態である。
また、図3及び図4は、荷台部110内部の構成の一部を示す斜視図である。図3では、ローラベアリング及び駆動機構を示している。図4では、スライド荷受板及びL字状スライド荷受板を取り付けた状態を示している。
また、図5は、荷台部110の背面図であって、後板113を開いた状態を示している。
【0012】
図2及び図3に示すように、荷台111上には、搬送補助装置としてのローラコンベア12が、荷台111の略前端から略後端までに亘って、複数設けられている。ローラコンベア12は、後述するスライド荷受板14が移動するときの摩擦を低減させる役割を担っている。本実施形態に係る荷台111には、3本のローラコンベア12が、所定間隔、離間した状態で設けられている。ローラコンベア12には、複数のローラ13が軸線方向を前後方向と直交させる態様で回転自在に軸支されている。
【0013】
次に、駆動機構20について図2及び図3を参照して説明する。本実施形態に係る駆動機構20は、駆動装置としてのエンドレスウインチやモータ等を含んで構成されている。ここでは、駆動装置としてモータ21を取り上げる。図2及び図3に示すように、モータ21は、荷台部110に固定されている。具体的には、モータ21は、出力軸の軸線方向が荷台111の幅方向に沿う態様で、荷室の前方を覆う前板114に固定されている。モータ21の動力は、貨物車100のエンジンから動力を取り出す、いわゆるPTO機構を介して駆動する。また、モータ21の出力は、チェーン22を介して、荷台111上に軸支されている第一の回転シャフト23に減速して伝達される。このように、モータ21から第一の回転シャフト23までは、減速機の役割を有している。次に、第一の回転シャフト23の回転は、チェーン24を介して、荷台111上に軸支されている第二の回転シャフト25に伝達される。
【0014】
第二の回転シャフト25の両方の端部側には、歯車としてのスプロケット26a、26bが固定されている。また、スプロケット26a、26bには、それぞれ無端状調帯としてのチェーン27a、27bが巻回されている。図3に示すように、チェーン27a、27bは、それぞれ隣り合うローラコンベア12の間に位置するように配設されている。そして、チェーン27a、27bは、それぞれ荷台111の後方に軸支されている第三の回転シャフト28の両方の端部側に固定されている歯車としてのスプロケット29a、29bに巻回されている。
したがって、第二の回転シャフト25が回転することにより、スプロケット26a、26bに巻回されているチェーン27a、27bは、図3に示す矢印方向、すなわち荷台111の前後方向に同期して移動することができる。
【0015】
更に、第三の回転シャフト28には、上述したスプロケット29aとスプロケット29bとの間にピニオンギア30a、30bが固定されている。ピニオンギア30aとピニオンギア30bとは、所定距離離間して配設され、第三の回転シャフト28の回転と同期して回転する。
なお、駆動機構20は、上述した構成に限られない。例えば、第二の回転シャフト25をモータ21等の駆動装置により直接、回転させるように構成してもよい。この場合、例えば、駆動装置21に減速機を組み込んで構成する。また、チェーン27は1つのみ設けるように構成してもよい。このように、駆動機構20は、駆動機構20を構成する何れかの部材が連続的に前後方向に移動できるような構成であれば、どのような構成であってもよい。
【0016】
次に、図2及び図4に示すように、ローラコンベア12上には、スライド荷受部材としてのスライド荷受板14が前後方向に沿って複数、並べて配置されている。なお、図4では、いくつかのスライド荷受板14を一部、切断して示している。スライド荷受板14上に積載物を載置することで、荷台111上に積載物を積載することができる。また、スライド荷受板14がローラコンベア12に沿って、前後方向に移動することにより、荷台111に積載された積載物を前後方向に搬送することができる。
スライド荷受板14は、図4に示すように、幅寸法Wを荷台111の幅寸法と略同一寸法とし、長さ寸法Lを例えば300mm〜400mmとする矩形形状に形成されている。図2に示すように隣接するスライド荷受板14は、隙間がないように配置されている。
【0017】
また、図5に示すように、スライド荷受板14の両側の端部であって、荷室を形成する両側板115には、荷台111の略前端から略後端までに亘って、ホイールコンベア40a、bが配設されている。ホイールコンベア40a、bには、複数のローラ41が軸線方向を垂直方向とする態様で回転自在に軸支されている。したがって、スライド荷受板14は、ホイールコンベア40に案内されて移動することから、前後方向に対して傾くことなく円滑に移動することができる。
また、図5に示すように、ホイールコンベア40a、bの上側には、荷台111の略前端から略後端までに亘って、カバー42a、42bが配設されている。カバー42a、42bは、両側板115から中央側に向かって略20mm〜30mm張り出し、スライド荷受板14の端部を覆っている。また、カバー42a、42bの上面は荷台111の中央側に向かって傾斜するテーパが形成されている。したがって、カバー42a、42bは、各スライド荷受板14が浮き上がるのを防止することができるので、隣り合うスライド荷受板14同士が上下に重なり合うことがない。また、カバー42a、42bは、積載物等がホイールコンベア40a、bに接触して損傷することを防止することができる。
【0018】
次に、図2及び図4に示すように、複数のスライド荷受板14のうち、最も前側に配置されているスライド荷受板14aの前方には、壁状荷受部材としてのL字状スライド荷受板15が配置されている。図2に示すように、L字状スライド荷受板15は、側面視において、略L字状に形成されていて、荷台111面に対して垂直状に立設する壁部16と、滑り台形状に傾斜する傾斜部17と、凹み部18とが形成されている。壁部16は、その高さが荷室の天井部分に至るまでの高さ寸法を有している。壁部16は、積載物を搬出方向、すなわち荷台111の後方に押し出す役割及び積載物が前板114に接触して破損するのを防止する役割がある。
【0019】
また、傾斜部17は、壁部16の途中から後方下側に向かって傾斜している。また、凹み部18は、L字状スライド荷受板15の前方下側に配置されていて、L字状スライド荷受板15が前方に移動したときに、駆動機構20と干渉しないための逃げ部を形成している。
L字状スライド荷受板15の下面は、図2に示すようにローラコンベア12上に、配置しているので、スライド荷受板14と同様、ローラコンベア12に沿って前後方向に移動することができる。また、L字状スライド荷受板15の下面の一部が上述したチェーン27a、27bの一部と連結されている。したがって、L字状スライド荷受板15は、チェーン27a、27bの移動と連動して、前後方向に移動することができる。
【0020】
次に、スライド荷受板14を下側からみた図6を参照して、スライド荷受板14及びL字状スライド荷受板15の裏面について説明する。図6では、スライド荷受板14及びL字状スライド荷受板15の他、上述したローラコンベア12のローラ13や駆動機構等が示されている。
図6に示すように、隣り合うスライド荷受板14同士は、スライド荷受板14の幅方向における両方の端部側に取り付けられた、連結部材としての連結ゴム31a、31bによって連結されている。連結ゴム31a、31bは、隣り合うスライド荷受板14間に遊びを持たせるために、伸縮することができる。なお、隣り合うスライド荷受板14同士の連結は、連結ゴムに限られず、隣り合うスライド荷受板14間に遊びを持たせたナイロン製の紐にしたり、ヒンジ等にしたりしてもよい。
【0021】
また、図6に示すように、各スライド荷受板14の裏側には、第三の回転シャフト28に固定されたピニオンギア30a、30bに噛合するラック32a、32bが前後方向に沿って設けられている。ラック32a、32bは、スライド荷受板14の幅方向における中央側であって、ローラ13を挟むような態様で、離間した位置に2つ固定されている。
更に、各スライド荷受板14の裏側には、巻取部材としての巻き取り線33a、33bが、前後方向に沿わせて配設されている。巻き取り線33a、33bは、各スライド荷受板14の裏面に取り付けられたフック34a、34bの開口内を通過するようになっている。なお、図6に示すスライド荷受板14aには、フック34a、34bがスライド荷受板14の前方に取り付けられ、次のスライド荷受板14bには、フック34a、34bがスライド荷受板14の後方に取り付けられている。このように、フック34a、34bは、スライド荷受板14の配置された順に、長さ方向の前方及び後方の交互に取り付けられている。なお、巻き取り線33a、33bは、図2に示すように荷台111の後端部から下側を通って、フレーム105の後方の下側に設けられた巻取装置45に接続されている。
巻取装置45は、巻き取り線33a、33bを巻き取ることができる。
【0022】
また、図2及び図5に示すように各スライド荷受板14上には、保護シート46が配設されている。図2に示すように、保護シート46は、L字状スライド荷受板15の壁部16の上端から、後方のスライド荷受板14までを覆い、さらに荷台111の後端部から下側を通って、フレーム105の後方の下側に設けられた保護シート巻取装置47にまで至っている。また、図5に示すように、保護シート46は、荷台111の幅方向よりやや幅広に形成されていて、両端が荷台111の側板115に沿って立ち上がっている。このように、保護シート46は、全てのスライド荷受板14上を覆うように配設されていることから、隣り合うスライド荷受板14の隙間に、微小な積載物や塵等が侵入することを防止し、スライド荷受板14を常に円滑に移動させることができる。また、保護シート46は、荷台111の後端部から下側を通っていることから、積載物を荷台111から搬出するときに、フレーム105の後端部に配設されたブレーキランプやナンバープレート等を保護する役割を有している。
【0023】
また、図3及び図4に示すように、荷台111上であって、荷台111の後端には、破線で示す係止部材50a、50bが配設されている。係止部材50a、50bは、荷台111内に収容されていて、必要に応じて破線で示す位置まで上昇させることができる。係止部材50a、50bを上昇させる機構は、ウォームギアやシリンダ等、どのような機構を用いてもよい。
係止部材50a、50bが上昇した位置では、後方のスライド荷受板14は、係止部材50a、50bによって係止されることから、図2に示す位置から後方に移動することができない。すなわち、係止部材50a、50bは、スライド荷受板14のストッパの役割を有している。これは、特に、貨物車100を上り坂で停車させた場合において、スライド荷受板14が重力によって、荷台111から滑り落ちないようにすることができる。
なお、スライド荷受板14を後方に移動させないように係止する方法は、上述した係止部材50a、50bを荷台111から上昇させる方法に限られず、例えば、係止部材50a、50bが配設された位置と同位置に角孔、丸孔を穿設し、その孔に角鋼、丸パイプ等を差し込むようにしてもよい。
【0024】
次に、荷台111に積載物が積載された図2に示す状態から、荷台111上で積載物を移動させる動作について説明する。ここでは、荷台111に積載された積載物を荷台111外に搬出する場合について説明する。
まず、各スライド荷受板14が移動できるように、上述した係止部材50a、50bを荷台111内に下降させておく。次に、駆動機構20のモータ21を駆動させることで、チェーン22、第一の回転シャフト23及びチェーン24を介して、第二の回転シャフト25が回転する。すると、第二の回転シャフト25に固定されているスプロケット26a、26bが回転し、チェーン27a、27bが図2に示す矢印方向に移動する。チェーン27a、27bの一部には、L字状スライド荷受板15が連結されているので、L字状スライド荷受板15は、図7に示す矢印A方向、すなわち荷台111の後方に向かって移動する。
【0025】
L字状スライド荷受板15が移動することに伴い、隣接するスライド荷受板14aが前方からL字状スライド荷受板15に押されて、移動する。スライド荷受板14aが移動することにより、更に隣接するスライド荷受板14bも移動する。このように、L字状スライド荷受板15が移動することにより、スライド荷受板14全体が荷台111の後方に移動する。したがって、保護シート46を介してスライド荷受板14上に積載されている積載物を、荷台111上で搬出方向に搬送することができる。なお、このとき、L字状スライド荷受板15及び各スライド荷受板14を覆っている保護シート46も、L字状スライド荷受板15及び各スライド荷受板14と共に、荷台111の後方に移動する。
【0026】
さらに継続して、L字状スライド荷受板15が移動することにより、後方のスライド荷受板14は、荷台111の後方から荷台111外に押し出されるが、このとき、図4に示すように、スライド荷受板14の裏面に固定されているラック32a、32bが、第三の回転シャフト28に固定されたピニオンギア30a、30bと噛合する。したがって、スライド荷受板14は、第三の回転シャフト28の回転により、ピニオンギア30a、30bと噛合しながら、荷台111外に移動する。このように、ピニオンギア30a、30bとラック32a、32bとを噛合させながら、スライド荷受板14を移動させることで、スライド荷受板14の荷台111外への飛び出しを防止することができる。すなわち、上述したように、隣り合うスライド荷受板14間は、遊びが持たせるために、伸縮できる連結ゴム31a、31bにより連結されている。したがって、例えば、貨物車100を上り坂で停車させた場合等では、L字状スライド荷受板15を移動させなくとも、各スライド荷受板14は、重力によって、遊びの距離分だけ、荷台111から滑り落ち、荷台111外へ飛び出してしまう。しかしながら、ピニオンギア30a、30bとラック32a、32bとを噛合させることで、スライド荷受板14は、確実にL字状スライド荷受板15の移動速度に合った速度で荷台111外に移動する。
【0027】
その後、荷台111外に至ったスライド荷受板14は、巻き取り線33a、33bに誘導されて、荷台111の後方下側に移動する。このとき、巻取装置45は、巻き取り線33a、33bを巻き取っていく。巻取装置45による巻き取り動作は、PTO機構やバッテリーを動力源とするモータやウインチ、又は手動等であってもよい。手動の場合、作業者が巻き取り線33a、33bのたるみ具合等をみながら、巻き取っていく。
【0028】
次に、荷台111の後方下側に移動したスライド荷受板14について図7及び図8を参照して、説明する。図8は、複数のスライド荷受板14が荷台111の下側に配置された状態の斜視図である。図8に示すように、荷台111の下側に移動したスライド荷受板14は、フック34a、34bを介して、巻き取り線33a、33bに吊り下げられている。また、隣り合うスライド荷受板14は、連結ゴム31a、31bを介して折りたたまれた状態になっている。上述したように、連結ゴム31a、31bは、自由に伸縮することができることから、各スライド荷受板14が、折りたたまれるとき、連結ゴム31a、31bが伸びることで簡単に折りたたまれる。また、図8に示すように、フック34a、34bが取り付けられた位置の違いによって、スライド荷受板14が山折に折りたたまれるのか、谷折に折りたたまれるのかが決まる。すなわち、図6に示すように、フック34a、34bが前後方向に隣接しているスライド荷受板14間の境界では、図8に示すように、山折にして折りたたまれる。一方、フック34a、34bが前後方向に隣接していないスライド荷受板14間の境界では、図8に示すように、谷折にして折りたたまれる。
【0029】
荷台111に配置されたスライド荷受板14は、巻取装置45によって巻き取り線33a、33bが巻き取られることにより及び後から荷台111の下側に配置されたスライド荷受板14により、徐々に前方に移動する。そして、巻取装置45に設けられたスライド板ストッパ48に当接することによって、スライド荷受板14の前方の移動が停止される。
【0030】
また、スライド荷受板14と共に荷台111外に移動した保護シート46は、図7に示すように、スライド荷受板14と同様、荷台111の後方下側に移動する。このとき、保護シート巻取装置47は、保護シート46を巻き取っていく。保護シート巻取装置47による巻き取り動作は、PTO機構やバッテリーを動力源とするモータやウインチ、又は手動等であってもよい。手動の場合、作業者が保護シート46のたるみ具合等をみながら、巻き取っていく。
【0031】
上述したような動作が行われることにより、荷台111に積載された積載物は、荷台111の後方に搬送されると共に、スライド荷受板14が荷台111から荷台111外に移動することにより、荷台111に積載された積載物は、荷台111外に搬出される。具体的には、荷台111に積載された積載物は、荷台111の後方から落下する。このとき、荷台111の後方下側に位置するブレーキランプやナンバープレート等は、保護シート46により覆われていることから、落下する積載物によって損傷することが防止される。
【0032】
また、L字状スライド荷受板15は、荷台111の後方まで移動することができる。L字状スライド荷受板15が荷台111の最も後方まで移動することで、荷台111に積載されていた積載物が、荷台111外に搬出される。なお、上述したようにL字状スライド荷受板15には、傾斜部17が形成されているので、L字状スライド荷受板15が荷台111の最も後方に位置したときに、傾斜部17付近に溜まっている積載物は、傾斜に沿って自動的に滑り落ちる。したがって、例えば、L字状スライド荷受板15を傾倒させる機構を設ける等して、荷台111の積載物を搬出する必要がない。
【0033】
このように、本実施形態によれば、荷台111に積載された積載物は、複数のスライド荷受板14による連続した移動によって、荷台111外に搬出されるので、積載物を搬送する効率を向上させることができる。
【0034】
次に、積載物を荷台111内に搬入する動作について説明する。なお、積載物を荷台111に搬入する場合に限られず、荷台111を図2に示す最初の状態に戻す動作も同様である。
まず、巻取装置45及び保護シート巻取装置47に対して、負荷をかけない状態に設定する。すなわち、巻取装置45によって巻き取られた巻き取り線33a、33b及び保護シート巻取装置47によって巻き取られた保護シート46を自由に引き出すことができる状態にする。
次に、駆動機構20のモータ21を、積載物を荷台111外に搬出したときの回転方向とは逆回転で駆動させることで、L字状スライド荷受板15は、図7に示すように矢印B方向、すなわち荷台111の前方に向かって移動する。L字状スライド荷受板15が移動することに伴い、L字状スライド荷受板15に連結ゴム31a、31bにより連結されたスライド荷受板14aも前方に移動する。スライド荷受板14aが移動することにより、更に、隣接するスライド荷受板14bも同様に移動する。また、荷台111の下側に折りたたまれた各スライド荷受板14は折りたたみが解除されると共に、連結ゴム31a、31bを介して、引き上げられ、ローラコンベア12上に配置される。なお、隣接するスライド荷受板14間には、遊びが設けられていることからスライド荷受板14を引き上げるときに遊び分の距離が離間してローラコンベア12上に配置されてしまうことから、例えば、作業者は、隣接するスライド荷受板14と間の遊び分の隙間をなくすようにスライド荷受板14を前方に押し込むように補助してもよい。
【0035】
また、L字状スライド荷受板15には、巻取り線33a、33bが連結されていることから、L字状スライド荷受板15の前方への移動に伴い、巻取装置45から巻き取り線33a、33bが引き出される。また、同様に、L字状スライド荷受板15には、保護シート46が取り付けられていることから、L字状スライド荷受板15の前方への移動に伴い、保護シート巻取装置47から保護シート46が引き出される。
【0036】
このとき、積載物を保護シート46を介してスライド荷受板14上に積載することにより、荷台111上に積載された積載物は、荷台111上を搬入方向に移動する。このように、本実施形態によれば、荷台111に積載された積載物は、複数のスライド荷受板14による連続した移動によって、荷台111内に搬入されるので、積載物を搬送する効率を向上させることができる。
【0037】
このように、本実施形態の貨物車によれば、簡単な構造の搬送機構を設けることができるために、貨物車を安価に提供することができる。また、従来のダンプアップの方法と異なり、天井が低い建屋内であっても、用いることができる。また、外見は、通常の輸送トラックとほとんど変わらないため、ダンプ車のような物々しさや威圧感がなくスマートに構成することができる。
また、本実施形態の貨物車に積載する積載物としては、例えば箱状、コンテナ状の積載物に限られず、比重の軽いバラ状の積載物、例えばフィルム状の廃棄プラスチック等を大量輸送する場合に用いられて好適である。
【0038】
なお、本実施形態では、保護シート46を介して積載物を荷台111上に積載する場合について説明したが、この場合に限られない。例えば、保護シート46をなくして構成してもよい。
また、本実施形態では、搬送方向として貨物車の前後方向のみについて説明したが、この場合に限られない。例えば、搬送方向として貨物車の幅方向としてもよい。この場合、駆動機構20によって、L字状スライド荷受板15及びスライド荷受板14は、貨物車の幅方向に移動できるように構成する。
【0039】
また、本実施形態では、駆動装置を荷台111に固定する場合について説明したが、この場合に限られない。例えば、駆動装置をL字状スライド荷受板15と共に移動できるように構成してもよい。この場合、例えば、荷台111上にラックを搬送方向に配設しておき、L字状スライド荷受板15内にラックと噛合するピニオンギアを配設するように構成し、ピニオンギアをモータ等で回転させることで、モータ等と共にL字状スライド荷受板15が移動する。また、駆動装置は、荷台111の外側に取り付けてもよい。この場合、例えば、荷台部110と運転部101との間に配設する。
【0040】
また、本実施形態では、駆動装置の動力をPTO機構を介して取り出す場合について説明したが、この場合に限られない。例えば、バッテリー等から駆動装置を駆動させてもよい。
また、本実施形態では、いわゆるバン型車を取り上げて説明したが、この場合に限られず、荷台111のみから構成されている、いわゆる平ボディ車に適用してもよい。例えば、低床四軸ボディ車に適用することで、多大な積載量を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施形態に係る貨物車の構成を示す側面図である。
【図2】本実施形態に係る荷台及び荷台周辺の構成を示す図である。
【図3】本実施形態に係る駆動機構の構成を示す斜視図である。
【図4】本実施形態に係る荷台の構成の一部を示す斜視図である。
【図5】本実施形態に係る荷台内部の構成を示す斜視図である。
【図6】本実施形態に係るスライド荷受板の裏側の構成を示す図である。
【図7】本実施形態に係る積載物の搬送の状態を示す側面図である。
【図8】本実施形態に係るスライド荷受板が折りたたまれた状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
100 貨物車
101 運転部
110 荷台部
111 荷台
14 スライド荷受部材(スライド荷受板)
15 壁状荷受部材(L字状スライド荷受板)
17 傾斜部
21 駆動装置(モータ)
46 保護シート
47 保護シート巻取装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷台に積載された積載物を荷台上で搬送することができる貨物車であって、
前記荷台上で、前記積載物の搬送方向に沿って並べて配置される複数のスライド荷受部材と、
前記複数のスライド荷受部材を搬送方向に移動する駆動装置とが設けられていることを特徴とする貨物車。
【請求項2】
前記搬送方向のうち前記荷台から積載物を搬出する方向を後方とし、積載物を前記荷台に搬入する方向を前方とする場合において、
前記複数のスライド荷受部材の前方には、荷台面に対して壁部が立設している壁状荷受部材が設けられ、
前記駆動装置は、前記壁状荷受部材を搬送方向に移動することを特徴とする請求項1に記載の貨物車。
【請求項3】
前記駆動装置は、前記荷台に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の貨物車。
【請求項4】
前記複数のスライド荷受部材は、前記駆動装置によって搬出方向に移動することで、前記荷台外に移動することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の貨物車。
【請求項5】
前記複数のスライド荷受部材は、隣り合うスライド荷受部材間で連結されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の貨物車。
【請求項6】
前記荷台外に移動した複数のスライド荷受部材は、隣り合うスライド荷受部材間で折りたたまれた状態で、前記荷台外に配置されることを特徴とする請求項4又は5に記載の貨物車。
【請求項7】
前記荷台外に移動した複数のスライド荷受部材は、前記荷台の下側に配置されることを特徴とする請求項4乃至6の何れか1項に記載の貨物車。
【請求項8】
前記荷台上で、前記積載物の搬送方向に沿って並べて配置される複数のスライド荷受部材の上面には、保護シートが設けられ、
前記保護シートは、前記複数のスライド荷受部材と共に搬送方向に移動することを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の貨物車。
【請求項9】
前記保護シートは、前記荷台外に移動することを特徴とする請求項8に記載の貨物車。
【請求項10】
前記荷台外に移動した保護シートを巻き取る保護シート巻取装置が設けられていることを特徴とする請求項9に記載の貨物車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−76656(P2010−76656A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248574(P2008−248574)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(507309699)