説明

貯水装置に取り付けられる給水制御ユニット

【課題】 貯水装置の給水制御ユニットは、フロートの連結金具が調圧弁の開閉用金具の端部に移動して、調圧弁が開き難くなるという課題があった。
【解決手段】 調圧弁16の表面に両端部が固着される門形状の開閉用金具19の形状を、開閉用金具19の中央部が調圧弁16の表面から遠ざかる方向に突出する形状に形成する。また、開閉用金具19の中央部の位置を、調圧弁16が遮断弁13に枢着されるヒンジ13aのほぼ中央よりヒンジ13aに垂直な線L上になるようにする。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、例えば集合住宅等の屋上或いは地上に設置される貯水装置に取り付けられる貯水装置の給水制御ユニットの改良に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
集合住宅等の屋上或いは地上に設置される貯水装置およびその給水制御ユニットに関しては、特開平10−18369号公報に記載された技術がある。
同公報に記載された貯水装置およびその給水制御ユニットは、図4の縦断面図に示すように、上水道に接続された給水管2が、貯水タンク1の上部側壁を貫通し、端部に給水弁3が設けられ、この給水弁3が開かれたときに貯水タンク1内に水道水が供給され、給水弁3が閉じると給水が停止する。
また、給水管2に手動開閉弁2aが設けられ、貯水タンク1を掃除、点検する場合には、手動開閉弁2aを閉じて給水を停止できるようになっている。
【0003】
給水弁3にはアーム4を介してフロート5が接続し、貯水タンク1内の水位が給水停止線t1まで上昇したときにフロート5が給水弁3を閉じて給水を停止し、貯水タンク1内の水位が給水開始線t2まで低下したときに給水弁3が開いて給水を開始する。
このようにして、貯水タンク1内には常に給水停止線t1ないし給水開始線t2の範囲で水道水を貯留される。
【0004】
貯水タンク1には、給水停止線t1よりも高い溢水線t3の位置にオーバーフロー管9が設けられ、貯水タンク1内の水位が溢水線t3まで上昇する場合には、オーバーフロー管9から水道水が溢出するので、貯水タンク1の水位が異常に高くなる虞れはない。
貯水タンク1の底部側壁には、手動調圧弁6a付きの出水管6が設けられ、給水管2の手動開閉弁2aを閉じて手動調圧弁6aを開けば、貯水タンク1内の水を排除することができるので、貯水タンク1内部を掃除,点検を行うことができる。
【0005】
貯水タンク1には、出水管6の若干上方に、手動開閉弁7aを備えた配給管7が接続され配給管7はポンプ8を介して各住宅の水道施設に接続されている。
貯水タンク1内の水は、ポンプ8により水圧を加えられて各住宅の水道施設に供給され、水位が給水開始線t2まで下がると、給水弁3が開いて給水停止線t1まで水道水が補充される動作が繰り返される。
【0006】
このような貯水装置を備えた施設において、例えば地震災害などを受けた場合には、給水管2や配給管7が損傷する虞れがあり、給水管2を損傷すれば水道本管からの給水を受けることが出来なくなるが、これに加えて配給管7が損傷して漏水すると、直ちに貯水タンク1内の水は空状態となる。
地震災害を受けた場合の上水道の復旧にはかなりの時間を要するので、この間においては極めて不自由な生活をすることになる。
このような事態に備えて、配給管7から漏水しても貯水タンク1内の水を確保することができる給水制御ユニット11が設けられている。
【0007】
給水制御ユニット11は、図5に示すように、貯水タンク1内において配給管7の開口部に一端が接続される導水管12と、導水管12の他端部近くから分岐する調圧管12aと、導水管12aの他端を開閉する遮断弁13と、遮断弁13にヒンジ13aを介して連結され調圧管12aを開閉する調圧弁16と、貯水タンク1の水位に応じて上下動するフロート15と、調圧弁16の表面に設けられた開閉用金具18とフロート15とを連結する連結金具14とにより構成されている。
【0008】
導水管12の一端には貯水タンク1の側壁に当接するフランジ12bが形成され、フランジ12bの先には先細りのテーパ状に形成された接続部12cが設けられ、外周面にテフロン加工12dが施された接続部12cを配給管14に挿入して密接に嵌合させることにより、給水制御ユニット11が貯水タンク1に容易に取り付けられる。
【0009】
また前記導水管12は、他端側が若干上方に屈曲した「く」の字状に形成され、他端側の外周面から間隔を挟んで突出する一対の支持部12eが設けられる。
また、遮断弁13は平板を「く」の字状に屈曲され、屈曲部に樹設された支承部13bが、一対の支持部12eの隙間に挿入され、一対の支持部12eと支承部13bを貫通するピン12fにより、遮断弁13は導水管12を開閉する方向に回動可能である(図5および図7参照)。
【0010】
遮断弁13の回動側の端部にはヒンジ13aを介して調圧弁16が連結され、調圧弁16はヒンジ13aを支点にして調圧管12aを開閉する方向に回動可能であり、調圧弁16の表面には調圧弁16の回動量を規制するストッパ16aが設けられる(図5および図7参照)。
遮断弁13の下面には、遮断弁13閉鎖時に導水管12を密閉するためのパッキン13cが設けられ、調圧弁16の下面には、調圧弁16閉鎖時に調圧管12aを密閉するためのパッキン16bが設けられる(図5参照)。
【0011】
また導水管12の下面には、貯水タンク1の底面から導水管12を支持する支持部材17が設けられる。
前記支持部材17は、導水管12の外面から下方に突出する支持部17aと、ボルトとナットなどの固定手段17bによって支持部17aに連結される支持柱17cと、支持柱17cに固着され、貯水タンク1の底面に当接する支持台17dにより構成され、給水制御ユニット11の大部分の重量を支持して完全な取り付け状態を確保,維持する。
なお、支持部17aと支持柱17cのボルト孔17e、17fは高さが調整できるように長孔になっている。
【0012】
調圧弁16の表面の回動端側には、門形状に形成され両端が調圧弁16に固着される開閉用金具18が設けられ、フロート15に上端を固着される連結金具14の下端が開閉用金具18にスライド可能に装着される。
前記連結金具14は、上下動するフロート15に追従し易くするためにチェンなどが使用される。
また開閉用金具18は連結金具14の下端を装着するだけであれば門形状に形成する必要はないが、導水管12a及び調圧管12aを点検,掃除を行うときの手動開閉ハンドルを兼ねるので、指先を掛けるスペースを確保するめに門形状に形成されている(図6参照)。
【0013】
調圧弁16は、遮断弁13を開き易くするための補助弁であり、貯水タンク1内の水が調圧弁動作水位t5になったときに、フロート15に接続する連結金具14の緩みがなくなり、遮断弁動作水位t4で調圧弁16が開き、導水管7aに流入した水圧により遮断弁13の表裏両面の圧力差がなくなり、遮断弁13が開き易くなり、更に水位が上昇した位置で遮断弁13が開く。
【0014】
通常時には貯水タンク1内の水位が給水停止線t1および給水開始線t2の範囲に保持されているので、遮断弁13は開いたままであり、配給管7を経由して各住宅の水道施設に水道水を供給することができ、地震等により貯水タンク1内の水が漏水しても遮断弁13および調圧弁16が閉鎖されるので、水位は調圧弁動作水位t5より下がらない。
しかし、このような貯水装置の給水制御ユニット11にも、フロート15と調圧弁16の開閉用金具18を接続する連結金具14に、次に述べるような課題が残されていた。
【0015】
【考案が解決しようとする課題】
フロート15が調圧弁動作水位t5より低くなると、連結金具14に弛みが生じて、図6に示すように、連結金具14の下端部が門形の開閉用金具18の端部にスライドすることがある。
この状態で水位が上昇したときに、連結金具14の下端部が開閉用金具18の端部にひっかかって停止状態になるので、図6、図7に示すようにフロート15の浮力は開閉用金具18の端部に作用し、浮力Fの一部分は、図6において調圧弁16を反時計方向に回動しようとする無駄なモーメントMに消費され、此の無駄なモーメントは調圧弁16の開閉を妨げる摩擦抵抗となるため、調圧弁16が円滑に開放されなかったり、故障の原因になる問題があった。
【0016】
調圧弁16を確実に開くために、フロート15の直径を大きくして浮力を増大させたとしても、上記の摩擦抵抗も大きくなるので適切な解決策ではなく、またスペースに限度がある貯水タンク1内に直径の大きいフロート15を設けると、貯水タンク1内の保守,点検を妨げる等の問題がある。
本考案は、かかる課題を解決することを目的とし、かかる形式の貯水装置の給水制御ユニットにおいて、水位が上昇したときに連結金具の下端部が開閉用金具の端部にひっかかることなく開閉用金具の中央に自動調心され、調圧弁などの調圧弁が円滑,確実に開閉する貯水装置の給水制御ユニットを提供するものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本考案の貯水装置の給水制御ユニットは、請求項1に示すように、貯水タンクに水を送出する配給管を設けた貯水装置に取り付けられる給水制御ユニットであって、前記貯水タンク内において前記配給管の開口部にその一端が接続される導水管と、該導水管から分岐した調圧管と、前記導水管の他端側に一側を枢着され前記導水管を開閉する方向に回動可能な遮断弁と、該遮断弁の他側にヒンジを介して連結され前記調圧管を開閉する方向に回動可能に設けられ、回動自由端側に固着される門形状の開閉用金具を有する調圧弁と、前記貯水タンクの水位に応じて上下動するフロートと、該フロートに上端部が固着され、下端部が前記開閉用金具にスライド可能に装着される連結金具により構成され、前記開閉用金具は、両端が前記調圧弁の表面に固着され、中央部が前記調圧弁の表面より遠ざかる方向に突出する形状に形成されることにより、前記フロートの浮力を受けた前記連結金具が前記開閉用金具の中央部に付勢されることを特徴とするものである。
【0018】
この構成により、水位の低下により連結金具に緩みが生じて下端部が開閉用金具の端部にスライドした場合でも、水位の上昇に応じてフロートと共に連結金具が上方移動し、連結金具の下端部が開閉用金具の中央部に自動的にスライドするので、更に水位が上昇したときに調圧弁は開閉を妨げる抵抗を受けることなく円滑に開く。
【0019】
本考案は、請求項2に示すように、前記開閉用金具の中央部の位置は、前記調圧弁を枢着するヒンジのほぼ中心より前記ヒンジの軸心に対して垂直線上にあるようにするとよい。
この構成では、フロートの浮力はそのまますべて調圧弁の開放力となり、しかも、調圧弁のヒンジに摩擦抵抗抵抗を発生させるモーメントが生じないので、調圧弁は円滑,確実に開かれるようになり、所定の水位で調圧弁が開かれない故障が防止される。
【0020】
本考案は、請求項3に示すように、前記門形状の開閉用金具は、前記調圧弁の表面との間に指掛用空間が形成される手動開閉ハンドルを兼用構造であり、前記連結金具はチェンにより構成することができる。
この構成では、開閉用金具が手動開閉ハンドルに兼用されるので便利であり、連結金具の構造が簡単になり、安価になる利点がある。
【0021】
【考案の実施の形態】
本考案の実施の形態の具体例を図面を参照しながら説明する。
図1は貯水装置の給水制御ユニットにおける第1実施例の開閉用金具19の正面を示す略図、図2は第2実施例の開閉用金具20の正面を示す略図、図3は第3実施例の開閉用金具21の略図である。なお、貯水装置及び給水制御ユニットは基本的に従来例で説明した構成と同様の構成を有しているため、その詳細な説明は省略し、本考案にかかる構成を詳述する。
貯水装置の給水制御ユニットは、図4、図5に示す従来例と同様に、貯水タンク1内に水位を検知するフロート15と、フロート15に上端を固着される連結金具14が設けられ、連結金具14の下端部は開閉用金具19,20あるいは21にスライド可能に装着される。
【0022】
開閉用金具19,20あるいは21は、調圧弁16の自由端側の表面に固着され、給水制御ユニットと手動開閉用ハンドルに兼用されるものであり、手動開閉用ハンドルとして使用する場合には、調圧弁16の表面との間に2、3本程度の指を掛けるスペースを確保するため門形状に形成される。
図1に示す開閉用金具19は、棒材より半円形或いは半楕円形などの湾曲形状に加工形成され、両端に設けられた脚部19aが調圧弁16にねじ止め、あるいは溶接等の手段で固着され、この開閉用金具19に連結金具14の下端部がスライド可能に装着されることも従来例と同様である。
【0023】
しかし、本考案の開閉用金具19は、開閉用金具19の中央部が、調圧弁16の表面から最も遠ざかる方向に突出していることが相違する。
この開閉用金具19の中央部の位置は、ヒンジ18のほぼ中央からヒンジ18に対して垂直な線L上にある。
【0024】
次に、以上のように構成された開閉用金具19の作用を説明する。
貯水タンク1内の水位が調圧弁動作水位t5より低い状態から上昇する場合には、遮断弁13は導水管13を閉鎖し、調圧弁16は調圧管12aを閉鎖し、連結金具14は緩みが生じて下端部が開閉用金具19の端部にスライドしている。
貯水タンク1内に水が供給され、水位が調圧弁動作水位t5より高くなると、フロート15の上昇により連結金具14が上方に引っ張られ、上方に引張された連結金具14の下端部が開閉用金具19の中央部に自動的にスライドする自動求心作用が起こる。
【0025】
連結金具14の下端が開閉用金具19の中央部にあるときには、フロート15の浮力が垂直線Lに加わるので、更に水位が上昇して連結金具14が調圧弁16の中央部を上方に引張し、フロート15の浮力はそのまますべて調圧弁16の開放力となり、調圧弁16は開放を妨げるモーメントによる摩擦抵抗は受けない。
従って、調圧弁16はヒンジ18を支点として円滑,確実に回動する。
水位が遮断弁動作水位t4より高くなると、調圧弁16のストッパ16aが 遮断弁13に当たり、遮断弁13と調圧弁16が一体となって上昇するが、ヒンジ18とピン12fが平行であるので、遮断弁13も円滑に開かれる。
【0026】
図2に示す開閉用金具20は単純な山形形状であり、図3に示す開閉用金具21は中央部が急激に突出した特殊形状である。
開閉用金具20あるいは開閉用金具21は、いずれも中央部が調圧弁16の表面から最も遠ざかる方向に突出し、しかも図1と同様の垂直線L線上にあるので、上記の開閉用金具19と同様の効果がある。
特に、開閉用金具21は中央部が著しく突出しているので、連結金具14の下端部は、開閉用金具21の中央部付近で極めて大きな自動求心力を受ける。
【0027】
本考案の実施例を図1ないし図3に示したが、中央部が調圧弁16の表面から最も遠ざかる形状であり、フロート15の浮力により連結金具14の下端部が中央部に自動求心されるものであれば、他の形状であってもよい。
また、その中央部は上記の垂直線L上にあることが望ましいことは言うまでもない。
【0028】
【考案の効果】
本考案は以上述べたように構成されているので、フロートの浮力を受けた連結金具が開閉用金具の中央部に自動的にセンタリングされ、調圧弁が円滑,確実に開かれる効果を奏する。
従って、調圧弁の開放が不円滑になる不具合や、調圧弁が開かない等の事故を防止することができる。
また、開閉用金具の構造は極めて簡単であり、安価に提供できるので、実施し易い利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】貯水装置の給水制御ユニットにおける本考案の第1実施例の開閉用金具の正面を示す略図である。
【図2】本考案の第2実施例の開閉用金具の正面を示す略図である。
【図3】本考案の第3実施例の開閉用金具の正面を示す略図である。
【図4】給水制御ユニットを取り付けた貯水装置の縦断面図である。
【図5】給水制御ユニットの詳細構造を示す縦断面図である。
【図6】従来の開閉用金具の正面を示す略図である。
【図7】従来の開閉用金具を示す略図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【符号の説明】
1 貯水タンク
7 配給管
11 給水制御ユニット
12 導水管
12a 調圧管
13 遮断弁
13a ヒンジ
14 連結金具
15 フロート
16 調圧弁
19,20,21 開閉用金具

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 貯水タンクに水を送出する配給管を設けた貯水装置に取り付けられる給水制御ユニットであって、前記貯水タンク内において前記配給管の開口部にその一端が接続される導水管と、該導水管から分岐した調圧管と、前記導水管の他端側に一側を枢着され前記導水管を開閉する方向に回動可能な遮断弁と、該遮断弁の他側にヒンジを介して連結され前記調圧管を開閉する方向に回動可能に設けられ、回動自由端側に固着される門形状の開閉用金具を有する調圧弁と、前記貯水タンクの水位に応じて上下動するフロートと、該フロートに上端部が固着され、下端部が前記開閉用金具にスライド可能に装着される連結金具により構成され、前記開閉用金具は、両端が前記調圧弁の表面に固着され、中央部が前記調圧弁の表面より遠ざかる方向に突出する形状に形成されることにより、前記フロートの浮力を受けた前記連結金具が前記開閉用金具の中央部に付勢されることを特徴とする貯水装置に取り付けられる給水制御ユニット。
【請求項2】 前記開閉用金具の中央部の位置は、前記調圧弁を枢着するヒンジのほぼ中心より前記ヒンジの軸心に対して垂直線上にあることを特徴とする請求項1記載の貯水装置に取り付けられる給水制御ユニット。
【請求項3】 前記門形状の開閉用金具は、前記調圧弁の表面との間に指掛用空間が形成される手動開閉ハンドルを兼用構造であり、前記連結金具はチェンにより構成されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の貯水装置に取り付けられる給水制御ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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