説明

貯湯式給湯機

【課題】貯湯タンクの溶接時にバックガスシールを行うことが可能であり、且つ貯湯タンクの構造の複雑化を抑制することのできる貯湯式給湯機を提供すること。
【解決手段】本発明の貯湯式給湯機は、湯または水が流入する流入口(上部接続口13)を有する貯湯タンク10と、貯湯タンク10の内側に設置され、流入口から流入した湯または水の勢いを抑制するバッフル30と、外側から流入口に挿入される挿入部を有し、貯湯タンク10に装着される装着部材20と、を備え、バッフル30は、流入口と対向する位置に孔30Aを有し、挿入部は、装着部材20が貯湯タンク10に装着された状態のときにバッフル30の孔30Aを塞ぐ閉塞部(ガイド部24Cおよび先端閉塞部24D)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯式給湯機に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプ等の加熱手段により生成された湯を貯える貯湯タンクを備えた貯湯式給湯機が広く用いられている。貯湯タンク内は、常に満水状態であり、温度による比重差により、湯(高温水)は上側に貯留され、加熱前の水(低温水)は下側に貯留される。貯湯タンク内に貯えられた湯を効率良く利用するためには、上側の湯と下側の水との間に形成される温度境界層(温度分布)を極力乱さないようにして、湯と水とが混じり合わないようにすることが重要となる。
【0003】
特許文献1に開示された貯湯式給湯機では、貯湯タンク上部から高温水を機外へ供給するための給湯配管と、ヒートポンプユニットで加熱した高温水を貯湯タンク上部へ戻すための沸き上げ戻し配管との2本の配管が、別々の接続口を介して、貯湯タンク上部に接続されている。また、貯湯タンク下部に接続される給水配管の端部には、該配管から流入する水の流速を減ずるための円筒状のバッフル構造体が設けられている。
【0004】
特許文献2には、貯湯タンク内に設けられた板状のバッフル構造体に関する技術が開示されている。また、特許文献3には、アルゴンガス等によるバックガスシールを用いないTIG溶接により貯湯タンクを製造する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−2613号公報
【特許文献2】特開平10−205884号公報
【特許文献3】特開2007−302995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、省エネルギー対する社会的なニーズがより一層高まっており、給湯分野では、高効率な貯湯式給湯機への期待が高まっている状況にある。しかし、現在の貯湯式給湯機は、各種制約や付加機能の増加などから、その構造が複雑化しており、安価な給湯機を提供することが難しい状況にある。
【0007】
前述したように、特許文献1の給湯機では、給湯配管と、沸き上げ戻し配管との2本の配管が、別々の接続口を介して、貯湯タンク上部に接続されている。一般的に、給湯配管は、貯湯タンクに貯留された高温水を極力有効に活用するため、貯湯タンクの上部に接続することが望まれる。また、沸き上げ戻し配管から高温水が貯湯タンク内に勢い良く流入すると、貯湯タンク内部の高温水と低温水との間の温度境界層が乱されるおそれがある。この点に鑑み、高温水が流入する際の勢いを抑えるためのバッフルを、沸き上げ戻し配管接続部の貯湯タンク内側に設ける必要がある。このように、各種制約から、貯湯タンク上部の配管構成を取ってみても、構造が複雑化せざるを得ない状況にある。
【0008】
また、特許文献1では、先端部が閉塞し、側面に複数の貫通孔を形成した円筒状のバッフル構造体が提案されているが、特許文献1の構造では、平板状のバッフルが無いため、流入する湯水の勢いが貯湯タンク内の奥に及ぶことを確実に防止することが困難であり、貯湯タンク内の温度境界層が乱されるおそれを払拭できない。また、特許文献1のバッフル構造体を沸き上げ戻し配管の接続部に適用した場合には、長期間の使用される間に、高温水中に溶存するカルシウム成分などが析出して上記貫通孔に付着し、貫通孔が狭くなり易い。このため、特許文献1のバッフル構造は、沸き上げ戻し配管の接続部には適さないと言える。このようなことから、貯湯タンクの流入口、特に沸き上げ戻し配管が接続される流入口の内側には、流入する湯水の勢いを確実に抑制することができる平板状のバッフルを設けることが望ましい。
【0009】
特許文献3に示されるように、貯湯タンクは、ステンレス薄肉鋼板を材料とした溶接構造を有するものが主流である。すなわち、貯湯タンクは、一般に、円筒状の胴部の上下両端にそれぞれ、お椀状に成形された鏡板を組み合わせ、これらをTIG溶接により接合した構造となっている。溶接部の耐食性を向上する方法として、貯湯タンクをTIG溶接で製造する際に、貯湯タンク外側からのトーチによる入熱と同時に、貯湯タンク内側から入熱部近傍にアルゴンガスを吹きつけるバックガスシールを行うことにより、裏ビード部の酸化を抑制する方法が知られている。特許文献3では、フェライト系ステンレス鋼の組成を規定することにより、バックガスシールを行わないでTIG溶接することを標榜しているが、溶接部の耐食性を良好とするためには、やはりバックガスシールを行うことが望ましい。
【0010】
貯湯タンクの溶接時にバックガスシールを行うためには、アルゴンガス等のバックシールガスを供給するためのノズルを胴部あるいは鏡板に設けた貫通孔から挿入する必要があるが、そのための専用の孔を設けると、その分、加工費が増加するため、配管接続口などの既存の孔を利用してバックシールガス供給用ノズルを貯湯タンク内部に導く方法が望ましい。しかしながら、貯湯タンクの流入口の内側に板状のバッフルを設置した場合には、バッフルが障害となるので、その流入口からバックシールガス供給用ノズルを挿入することはできない。このため、貯湯タンク溶接時にバックシールガス供給用ノズルを挿入するためには、バッフルが設けられていない他の貫通孔を使用するか、バックシールガス供給用ノズルを挿入するための専用の孔を設ける必要がある。このため、製造上の制約が生じたり、構造が複雑化することによるコスト高を招くという問題がある。
【0011】
以上のように、従来の貯湯式給湯機では、貯湯タンクに構造上および製造上の各種制約があることから、エネルギー効率や耐久性に優れた貯湯式給湯機を低コストで提供することが難しい状況にある。
【0012】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、貯湯タンクの溶接時にバックガスシールを行うことが可能であり、且つ貯湯タンクの構造の複雑化を抑制することのできる貯湯式給湯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る貯湯式給湯機は、湯または水が流入する流入口を有する貯湯タンクと、貯湯タンクの内側に設置され、流入口から流入した湯または水の勢いを抑制するバッフルと、外側から流入口に挿入される挿入部を有し、内部に湯または水の流路を具備し、貯湯タンクに装着される装着部材と、を備え、バッフルは、流入口と対向する位置に孔を有し、挿入部は、装着部材が貯湯タンクに装着された状態のときにバッフルの孔を塞ぐ閉塞部を有するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、貯湯タンクの溶接時にバックシールガス供給用ノズルを貯湯タンクの流入口およびバッフルに形成された孔を通して貯湯タンクの内側に挿入することができるので、バックガスシールを伴って溶接を行うことができる。このため、溶接部の耐食性を高めることができる。また、貯湯タンクに設ける貫通孔の数を減らすことができるので、加工費等を抑制でき、製造コストを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1の貯湯式給湯機を示す構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1の貯湯式給湯機を示す構成図である。
【図3】本発明の実施の形態1の貯湯式給湯機が備える装着部材の外観斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1の貯湯式給湯機が備える装着部材の断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1の貯湯式給湯機において、貯湯タンクに取り付ける前のバッフルの外観斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態1の貯湯式給湯機において、バッフルを貯湯タンクの上部の内側に取り付けた状態の断面図である。
【図7】本発明の実施の形態1の貯湯式給湯機において、装着部材が装着された状態の貯湯タンクの上面図である。
【図8】図7中のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0017】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1の貯湯式給湯機を示す構成図である。図1に示すように、本実施形態の貯湯式給湯機は、貯湯タンク10を内蔵したタンクユニット1と、ヒートポンプユニット60とを有している。タンクユニット1と、ヒートポンプユニット60とは、沸き上げ往き配管5および沸き上げ戻し配管6により接続されている。ヒートポンプユニット60は、後述する冷凍サイクル(ヒートポンプサイクル)によって大気の熱を冷媒に吸収し、タンクユニット1から供給される水を加熱するための加熱手段である。タンクユニット1には、沸き上げ往き配管5および沸き上げ戻し配管6のほかに、水源から水を供給するための給水配管2と、外部へ湯を供給するための給湯配管3とが接続されている。図示の構成では、給湯配管3の先に、1つ以上の給湯栓4が設けられている。
【0018】
次に、図2を参照して、本実施形態の貯湯式給湯機の構成について更に説明する。ただし、本発明と関係しない部品については、図示および説明を省略または簡略化する。図2に示すように、貯湯タンク10は、給水配管2から供給される水(以下、「低温水」とも呼ぶ。)と、ヒートポンプユニット60で加熱して作られた湯(以下、「高温水」とも呼ぶ。)とを貯めることができる。水は、温度差により、比重差を生ずる。貯湯タンク10内では、比重の大きい低温水が下側に、比重の小さい高温水が上側に、それぞれ貯留される。タンクユニット1が備える外装ケースの内側には、貯湯タンク10のほか、各種配管、各種弁、各種センサ、制御装置50などが設置されている。給湯栓4が開かれると、貯湯タンク10内に貯留された高温水が、給水配管2から作用する水源の圧力によって給湯配管3側に押し出され、図示しない混合弁で水源から供給される水と混合されて温度調節された上で、給湯口4Aに供給される。
【0019】
ヒートポンプユニット60は、圧縮機61、沸き上げ用熱交換器62、膨張弁63、空気熱交換器64を冷媒循環配管65にて環状に接続した冷凍サイクルを有している。沸き上げ用熱交換器62は、圧縮機61で圧縮された高温の冷媒の熱により、タンクユニット1から導いた低温水を加熱するものである。沸き上げ戻し配管6上に設けられたヒートポンプ出口温度センサ66は、沸き上げ用熱交換器62で加熱された高温水の温度を検出する。この冷凍サイクルは、冷媒として二酸化炭素を用い、臨界圧を超える圧力で運転することが好ましい。制御装置50は、本貯湯式給湯機が備える各種センサによる検出値や、予め設定された運転条件などの情報を元に各種弁類やポンプなどのアクチュエータを動作させるための装置で、使用者の求めに応じて本貯湯式給湯機の各種制御を可能とするための装置である。なお、制御装置50と、各アクチュエータおよび各センサとは、内部配線50Aにより接続されている。
【0020】
貯湯タンク10には、配管を接続するための複数の接続口が設けられている。貯湯タンク10の下部に設けられた給水接続口11およびヒートポンプ往き側接続口12には、それぞれ、給水配管2および沸き上げ往き配管5が接続されている。貯湯タンク10の上部に設けられた上部接続口13には、後述する装着部材20を介して給湯配管3が接続されている。本実施形態では、沸き上げ戻し配管6のタンクユニット1側の端部は、給湯配管3の途中に接続されている。また、本実施形態では、上部接続口13は、貯湯タンク10の上部のほぼ中央(頂部)に配置されている。
【0021】
減圧弁8は、水源から本貯湯式給湯機内にかかる圧力を一定レベルに減圧するものである。逃し弁9は、沸き上げ運転によって低温水が加熱される際に生じる体積膨張により貯湯式給湯機内の圧力が上昇することを防ぐため、体積膨張分の湯水を逃し弁排水管9Aを経由して系外へ排出し、貯湯タンク10内の圧力が一定以下となるよう調整するための安全弁である。貯湯タンク10には、高さの異なる位置に複数の残湯温度センサ19が設けられている。残湯温度センサ19によって検出された温度情報は、制御装置50により処理され、貯湯タンク10内の残湯量を把握することや、ヒートポンプユニット60による沸き上げ運転の開始・停止などを制御するために使用される。沸き上げ用循環ポンプ7は、タンクユニット1とヒートポンプユニット60との間で、湯水を循環させるためのポンプで、沸き上げ往き配管5上に設けられている。
【0022】
次に、沸き上げ運転時の動作について説明する。沸き上げ運転が必要であると制御装置50が判断すると、沸き上げ用循環ポンプ7および圧縮機61の運転を開始する。これにより、貯湯タンク10のヒートポンプ往き側接続口12から取り出された低温水が沸き上げ往き配管5を通って沸き上げ用熱交換器62に送られて加熱され、高温水となる。加熱された高温水は、沸き上げ戻し配管6を通ってタンクユニット1に戻り、給湯配管3および装着部材20を通って上部接続口13から貯湯タンク10内に流入する。
【0023】
上述したように、本実施形態において、上部接続口13は、沸き上げ戻し配管6からの高温水を貯湯タンク10内に流入させる流入口としての役割と、貯湯タンク10内の高温水を給湯配管3に流出させる流出口としての役割とに兼用される。このため、本実施形態では、貯湯タンク10の上部に高温水の流入口と流出口とを別々に設ける必要がなく、貫通孔の個数を減らすことができるので、加工費等の製造コストを低減することができる。
【0024】
ところで、貯湯タンク10内の高温水を無駄なく有効に利用するためには、上側の高温水と下側の低温水とが極力混じり合わないようにすることが重要となる。そのためには、上側の高温水と下側の低温水との間の温度境界層を極力乱さないようにすることが重要である。貯湯タンク10内には、上部接続口13の内側に板状のバッフル30が設置され、給水接続口11の内側に板状のバッフル31が設置されている。沸き上げ運転時には、上部接続口13から流入した高温水の勢いをバッフル30が抑制することにより、貯湯タンク10内の温度境界層が乱されることを確実に防止することができる。また、給湯時には、給水接続口11から流入した低温水の勢いをバッフル31が抑制することにより、貯湯タンク10内の温度境界層が乱されることを確実に防止することができる。これらのことから、本実施形態では、貯湯タンク10内の高温水と低温水とが極力混じり合わないようにすることができ、高温水を無駄なく有効に利用することが可能となる。
【0025】
次に、図3および図4を参照して、本実施形態の貯湯式給湯機が備える装着部材20について説明する。図3は、装着部材20の外観斜視図である。図4は、装着部材20の断面図である。これらの図に示す装着部材20は、2つの接続部を有するエルボ状の配管継ぎ手としての機能を有している。装着部材20が備える一方の接続部は給湯配管3との接続用である配管接続部22であり、他方の接続部は貯湯タンク10との接続用であるタンク接続部23である。タンク接続部23側には、上部接続口13から貯湯タンク10の内部に挿入されるノズル部24が設けられている。配管接続部22は、装着部材20に給湯配管3を接続するための構造であり、フランジ状の固定部22Aと、凹部22Bとを有している。給湯配管3の端部は、凹部22Bに挿入され、固定部22Aを介して装着部材20に接続される。タンク接続部23は、装着部材20を貯湯タンク10の上部接続口13に装着するための構造であり、フランジ状の固定部23Aと、パッキン溝23Bと、挿入ガイド部23Cと有している。装着部材20は、上部接続口13に挿入ガイド部23Cを挿入し、固定部23Aを介して貯湯タンク10に接続される。なお、パッキン溝23Bは、水漏れを防止するために取り付けるパッキン35(図8参照)を固定するための形状である。挿入ガイド部23Cの外径D1(図4参照)は、上部接続口13の内径D2(図6参照)と同等かまたはやや小さくなっている。
【0026】
ノズル部24は、タンク接続部23と同軸的に延び、先端部が閉塞した略円筒状の形状をなしている。このノズル部24は、複数の柱部24Aおよび開口部24Bと、ガイド部24Cと、先端閉塞部24Dとを有している。複数の開口部24Bは、ノズル部24の円筒側面を貫通しており、貯湯タンク10に高温水を出入りさせるために必要な通水口として機能する。柱部24Aは、隣接する開口部24Bの間に残された柱であり、先端側のガイド部24Cを支持している。先端閉塞部24Dは、ガイド部24Cの先端開口を塞ぐように固定された円板状の部品である。
【0027】
本実施形態の装着部材20を樹脂の射出成形によって製造する場合は、図4の下方から矢印α方向にスライドする成形型を用いて流路21やノズル部24の円筒形状を成形する必要がある。本実施形態では、先端閉塞部24Dを別部品で構成したことにより、装着部材20を樹脂成形を用いて低コストで製造可能となる。
【0028】
本実施形態の装着部材20では、ガイド部24Cおよび先端閉塞部24Dが、後述するバッフル30の孔30Aを塞ぐ閉塞部を構成する。この閉塞部の外径、すなわちガイド部24Cの外径D3(図4参照)は、バッフル30の孔30Aの内径D4(図5参照)と比べ、同等かまたはやや小さくなっている。また、本実施形態の装着部材20では、固定部23Aからノズル部24の先端(ガイド部24C)までの部分が、上部接続口13に挿入される挿入部を構成する。この挿入部の長さ、すなわち固定部23Aからノズル部24の先端までの長さL1(図4参照)は、貯湯タンク10の上部接続口13の上端からバッフル30の孔30Aまでの長さL2(図6参照)とほぼ同一の寸法となっている。
【0029】
次に、図5および図6を参照して、本実施形態の貯湯式給湯機が備えるバッフル30について説明する。図5は、貯湯タンク10に取り付ける前のバッフル30の外観斜視図である。バッフル30は、中央に円形の孔30Aが形成された薄肉平板状の本体部と、この本体部を支持するための複数の支持脚30Bおよび支持部30Cとを有する構造となっている。バッフル30の孔30Aの内径D4は、上部接続口13の内径D2(図6参照)と同等かまたはそれより小さくなっている。
【0030】
図6は、バッフル30を貯湯タンク10の上部の内側に取り付けた状態の断面図である。バッフル30は、貯湯タンク10の上部の内面に、支持脚30Bおよび支持部30Cを介して、スポット溶接などの方法によって取り付けられている。また、バッフル30は、孔30Aと上部接続口13とが同一軸上で対向するように配置される。バッフル30の孔30Aは、貯湯タンク10の奥側(下方向)へ突出するバーリング孔となっている。これにより、装着部材20を貯湯タンク10に装着する際、ガイド部24Cが孔30A内に円滑に挿入することができる。
【0031】
本実施形態の貯湯タンク10は、円筒状の胴部の上下両端にそれぞれ、お椀状に成形された鏡板を組み合わせ、これらを全周に渡り溶接することによって接合した構造となっている。この溶接の際には、例えばアルゴンガス等のバックシールガスを供給するバックシールガス供給用ノズル(図示せず)を、貯湯タンク10の上部接続口13およびバッフル30の孔30Aを通して、貯湯タンク10の内側に挿入することができる。そして、貯湯タンク10の外側からのトーチによる入熱と同時に、この入熱部の裏側に上記バックシールガス供給用ノズルからバックシールガスを吹きつけて、溶接を行う。このようにして製造された本実施形態の貯湯タンク10によれば、溶接部の裏ビード部の酸化を確実に抑制することができるので、溶接部の耐食性を確実に向上することができる。また、バッフル30に孔30Aを設け、上部接続口13からバックシールガス供給用ノズルを挿入できるようにしたことにより、上部接続口13以外の貫通孔を貯湯タンク10の上部に設ける必要がない。このため、加工費等の製造コストを低減することができる。
【0032】
上記のようにして貯湯タンク10の溶接が終了した後、装着部材20が貯湯タンク10の上部接続口13に装着される。図7は、装着部材20が装着された状態の貯湯タンク10の上面図である。図8は、図7中のA−A断面図である。図8に示すように、給湯配管3の端部は、装着部材20の凹部22Bに挿入され、固定部22Aを利用して、装着部材20に接続・固定される。装着部材20を貯湯タンク10へ取り付ける際には、まず貯湯タンク10の上方から装着部材20のガイド部24Cを上部接続口13内に挿入する。ここで、ガイド部24Cの外径D3は、上部接続口13の内径D2よりも小さいため、ガイド部24Cは上部接続口13を貫通することができる。装着部材20を更に押し込むと、挿入ガイド部23Cが上部接続口13の内面に沿って挿入され、ガイド部24Cおよび先端閉塞部24Dは、バッフル30の位置に達する。
【0033】
固定部23Aが上部接続口13に当接するまで更に装着部材20を押し込むと、ガイド部24Cの外径D3は、バッフル30の孔30Aの内径D4と同等かまたはやや小さくなっているため、ガイド部24Cは、バッフル30の孔30Aの内面に沿って挿入される。以上のようにして、装着部材20を装着した状態では、バッフル30の孔30Aの内周面と、ガイド部24Cの外周面とが、当接、またはほぼ隙間無く近接する。すなわち、ガイド部24Cおよび先端閉塞部24Dによって、バッフル30の孔30Aがほぼ隙間無く塞がれる。
【0034】
なお、装着部材20は、固定部23Aを利用して、上部接続口13に固定される。図7および図8では図示していないが、装着部材20と上部接続口13および給湯配管3との各接続部の固定は、クイックファスナなどの手段を用いることが一般的である。また、各接続部には、水漏れを防ぐために、1ないし2個のパッキン35が取り付けられている。
【0035】
沸き上げ運転時に貯湯タンク10に流入する高温水は、図8中の矢印βで示す経路を辿る。すなわち、貯湯タンク10に流入する湯は、沸き上げ戻し配管6から給湯配管3を経由して装着部材20に導かれ、装着部材20内の流路21を通過し、開口部24Bを通って、貯湯タンク10の内壁とバッフル30との間に流入する。このとき、バッフル30の孔30Aはガイド部24Cおよび先端閉塞部24Dによって塞がれているので、流入した高温水の勢いがバッフル30よりも奥に及ぶことが確実に防止される。貯湯タンク10の内壁とバッフル30との間に流入した高温水は、バッフル30によって水平方向に流れを変えられることにより、その勢いが確実に抑制される。このため、貯湯タンク10内の温度境界層を乱すことなく、貯湯タンク10内に高温水を流入させることができる。
【0036】
本実施形態では、上部接続口13の内径D2と、ガイド部24Cの外径D3と、バッフル30の孔30Aの内径D4との関係は、D2≧D4≧D3となっている。なお、温度境界層の乱れを確実に防止する上では、ガイド部24Cの外周面とバッフル30の孔30Aの内周面とがなるべく隙間無く近接する状態となることが望ましいため、ガイド部24Cの外径D3と、バッフル30の孔30Aの内径D4とは、極力同程度の寸法とすることが望ましい。
【0037】
ガイド部24Cが上部接続口13を通過できるようにするため、ガイド部24Cの外径D3は、上部接続口13の内径D2より小さい必要がある。このため、仮にバッフル30の孔30Aの内径D4が上部接続口13の内径D2より大きいとした場合には、ガイド部24Cの外周面とバッフル30の孔30Aの内周面との間に隙間が空いてしまう。これに対し、本実施形態では、バッフル30の孔30Aの内径D4を上部接続口13の内径D2以下としたことにより、ガイド部24Cの外周面とバッフル30の孔30Aの内周面とがなるべく隙間無く近接する状態を実現することが可能となる。
【0038】
以上説明した本実施の形態によれば、装着部材20が装着された上部接続口13を、高温水の流入口と流出口とに兼用することができるため、貯湯タンク10の上部に設ける貫通孔を上部接続口13のみとすることができる。このため、加工費等を抑制することができる。また、貯湯タンク10の上部接続口13の内側に設置したバッフル30に孔30Aを形成したことにより、貯湯タンク10の溶接時に、上部接続口13からバックシールガス供給用ノズルを挿入してバックガスシールを行うことができる。このため、裏ビード部の酸化を抑制し、溶接部の耐食性を高めることができる。バッフル30の孔30Aは、装着部材20を装着することによって塞がれるので、沸き上げ運転時に上部接続口13から流入する高温水の勢いがバッフル30よりも奥に及ぶことがなく、貯湯タンク10内の温度境界層が乱されることを確実に防止することができる。このようなことから、耐久性に優れ、エネルギー効率の高い貯湯式給湯機を低コストで製造することが可能となる。
【0039】
上述した実施の形態では、本発明を高温水の流入口(上部接続口13)に適用した場合について説明したが、本発明は、低温水の流入口(給水接続口11)にも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 タンクユニット
2 給水配管
3 給湯配管
4 給湯栓
4A 給湯口
5 沸き上げ往き配管
6 沸き上げ戻し配管
7 沸き上げ用循環ポンプ
8 減圧弁
9 逃し弁
10 貯湯タンク
11 給水接続口
12 ヒートポンプ往き側接続口
13 上部接続口
19 残湯温度センサ
20 装着部材
21 流路
22 配管接続部
22A 固定部
22B 凹部
23 タンク接続部
23A 固定部
23B パッキン溝
23C 挿入ガイド部
24 ノズル部
24A 柱部
24B 開口部
24C ガイド部
24D 先端閉塞部
30 バッフル
30A 孔
30B 支持脚
30C 支持部
31 バッフル
35 パッキン
60 ヒートポンプユニット
61 圧縮機
62 沸き上げ用熱交換器
63 膨張弁
64 空気熱交換器
65 冷媒循環配管
66 ヒートポンプ出口温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯または水が流入する流入口を有する貯湯タンクと、
前記貯湯タンクの内側に設置され、前記流入口から流入した湯または水の勢いを抑制するバッフルと、
外側から前記流入口に挿入される挿入部を有し、内部に湯または水の流路を具備し、前記貯湯タンクに装着される装着部材と、
を備え、
前記バッフルは、前記流入口と対向する位置に孔を有し、
前記挿入部は、前記装着部材が前記貯湯タンクに装着された状態のときに前記バッフルの前記孔を塞ぐ閉塞部を有する貯湯式給湯機。
【請求項2】
前記装着部材を前記貯湯タンクに装着した状態のとき、前記バッフルの前記孔の内周面と前記閉塞部の外周面とが当接または近接する請求項1記載の貯湯式給湯機。
【請求項3】
前記バッフルの前記孔の内径は、前記流入口の内径以下である請求項1または2記載の貯湯式給湯機。
【請求項4】
前記装着部材を前記貯湯タンクに装着していない状態において、溶接のためのバックシールガス供給用ノズルを、前記流入口および前記バッフルの前記孔を通して、前記貯湯タンクの内側に挿入可能である請求項1乃至3の何れか1項記載の貯湯式給湯機。
【請求項5】
前記流入口は、前記貯湯タンクから湯または水を流出させる流出口と兼用である請求項1乃至4の何れか1項記載の貯湯式給湯機。
【請求項6】
前記流入口は、加熱手段で生成された湯、または給水源から供給される水を前記貯湯タンク内に流入させるものである請求項1乃至5の何れか1項記載の貯湯式給湯機。
【請求項7】
前記挿入部は、先端部が閉塞した略円筒状のノズル部を有し、
前記ノズル部の閉塞した先端部が前記閉塞部を構成し、
前記ノズル部の円筒側面に、湯または水が通るための開口部が形成されている請求項1乃至6の何れか1項記載の貯湯式給湯機。
【請求項8】
前記装着部材は、成型での製作を可能とするべく、複数の部品を組み合わせて製造されたものである請求項1乃至7の何れか1項記載の貯湯式給湯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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