貯湯式給湯機
【課題】断熱材の輸送効率を悪化させず、破損の可能性を低減し、且つ貯湯タンクとの密着度を高めることのできる断熱構造を有する貯湯式給湯機を提供する。
【解決手段】湯を貯湯する円筒形状の貯湯タンク2と、貯湯タンク2の表面を覆う非真空断熱材としての断熱材3と、を備え、断熱材3は、貯湯タンク2の円筒面に沿った円弧面を内面に有する円弧体6と、円弧体の中心軸方向に延在するスリット5であって円弧体6の内面側に設けられた内面側スリット5aと、中心軸方向に延在するスリットであって円弧体6の外面側に設けられた外面側スリット5bと、を有し、貯湯タンク2の円筒面に円弧面6を密着させて配設する。
【解決手段】湯を貯湯する円筒形状の貯湯タンク2と、貯湯タンク2の表面を覆う非真空断熱材としての断熱材3と、を備え、断熱材3は、貯湯タンク2の円筒面に沿った円弧面を内面に有する円弧体6と、円弧体の中心軸方向に延在するスリット5であって円弧体6の内面側に設けられた内面側スリット5aと、中心軸方向に延在するスリットであって円弧体6の外面側に設けられた外面側スリット5bと、を有し、貯湯タンク2の円筒面に円弧面6を密着させて配設する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯式給湯機に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプ式給湯機の貯湯タンクユニットは、最高約90℃の温水が貯湯される。このため、貯湯タンクの周囲には、保温性能を向上させることを目的として真空断熱材を取り付けることが広く知られている。しかしながら、真空断熱材は熱劣化し易い特性を有している。このため、貯湯タンクに直接真空断熱材を密着させて取り付ける構成は、熱による経年変化の影響により、真空断熱材の保温性能が年々低下するという問題がある。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1では、円筒形状を有する貯湯タンクの周囲に非真空断熱材を設け、更に貯湯タンクの外周形状に沿って湾曲した真空断熱材を当該非真空断熱材の外側に設けることが提案されている。この構成によれば、真空断熱材が直接貯湯タンクに密着されることがないため、真空断熱材の熱劣化による熱伝導率の低下が抑制される。これにより、貯湯タンクユニットの保温性能の低下を防ぎ、高断熱性能を維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−91134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の装置のように、非真空断熱材(例えば発泡スチロール)を円筒形状の貯湯タンクに密着させる構成とすると、非真空断熱材の形状が貯湯タンクの円筒局面に沿ったU字形状になってしまう。このため、このような形状の非真空断熱材を使用することとすると、輸送効率が悪い、輸送時や貯湯タンクへの実装時に薄肉部が破損し易い、或いは成形後の反り等によって貯湯タンクに密着しないといった課題を有していた。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、断熱材の輸送効率を悪化させず、破損の可能性を低減し、且つ貯湯タンクとの密着度を高めることのできる断熱構造を有する貯湯式給湯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る貯湯式給湯機は、湯を貯湯する円筒形状の貯湯タンクと、貯湯タンクの表面を覆う非真空断熱材と、を備え、非真空断熱材は、貯湯タンクの円筒面に沿った円弧面を内面に有する円弧体と、円弧体の中心軸方向に延在するスリットであって、円弧体の内面側に設けられた内面側スリットと、中心軸方向に延在するスリットであって、円弧体の外面側に設けられた外面側スリットと、を有し、貯湯タンクの円筒面に円弧面を密着させて配設するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、貯湯タンクの断熱材の輸送効率を悪化させず、断熱材の破損を抑え、且つ貯湯タンクとの密着度を高めることのできる断熱構造を有する貯湯式給湯機を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施の形態に係る貯湯タンクユニット1の断熱材の構造を説明するための図である。
【図2】断熱材3の構成を説明するための図であり、図中(a)は断熱材3の斜視図を、図中(b)は断熱材3のC−C断面図を、それぞれ示している。
【図3】断熱材3の実装時の形状を説明するための図であり、図中(a)は断熱材3の斜視図を、図中(b)は断熱材3のD−D断面図を、それぞれ示している。
【図4】断熱材3の段積み状態を示す図であり、図中の(a)は従来のU字形状に成形された断熱材の段積み状態を、図中(b)は、スリット5が形成されている本発明の本実施の形態の断熱材の段積み状態を、それぞれ示している。
【図5】断熱材3に形成されたスリット5の構成を説明するための図である。
【図6】断熱材3の変形例を説明するための図であり、図中(a)は変形例としての断熱材3の斜視図を、図中(b)は、変形例としての断熱材3のE−E断面図を、それぞれ示している。
【図7】変形例としての断熱材3の実装時の形状を説明するための図であり、図中(a)は断熱材3の斜視図を、図中(b)は断熱材3のF−F断面図を、それぞれ示している。
【図8】断熱材3を貯湯タンク2へ実装する動作について説明するための図である。
【図9】下部断熱材13の形状を説明するための図である。
【図10】断熱材3を貯湯タンク2へ実装したときの下部凸部8の近傍を拡大して示す図である。
【図11】断熱材3を貯湯タンク2に実装した場合における貯湯タンクユニットの立体斜視図を示す図である。
【図12】図11に示す貯湯タンクユニットの断熱材3の断熱材両端凹凸形状部7を拡大して示す図である。
【図13】図11に示す貯湯タンクユニットの断熱材3に設けられたサーミスタ交換用穴10を正面から見た図である。
【図14】貯湯タンクユニットに真空断熱材を実装する場合の実装動作について説明するための図である。
【図15】貯湯タンクユニットに真空断熱材を実装した状態での中心軸方向の下部断面図である。
【図16】真空断熱材を実装した貯湯タンクユニットの正面図である。
【図17】貯湯タンクユニットに真空断熱材を実装した状態での中心軸方向の上部断面図である。
【図18】従来の貯湯タンクユニット100(貯湯式給湯機)の立体斜視図を示す。
【図19】従来の貯湯タンクユニットのB−B断面図である。
【図20】従来の貯湯タンクユニットのA−A断面図である。
【図21】貯湯タンク102への断熱材103の取り付け過程を示すA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。また、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態1.
図18は、従来の貯湯タンクユニット100(貯湯式給湯機)の立体斜視図を示す。以下、図18に示す貯湯タンクユニット100のA−A断面図およびB−B断面図を用いて、本発明の特徴的構成である貯湯タンクの断熱材構造について説明する。尚、貯湯タンクユニット100は、後述する貯湯タンクの他に、該貯湯タンクに水を供給するための給水配管、貯湯タンクから湯を取り出すための給湯配管、水と湯を混合して所定温度の湯を供給するための混合弁、水を加熱するための熱源(電気ヒータやヒートポンプユニット)などを備えているが、以下に示す図では、貯湯タンクおよびその断熱材の構成のみを示し、他の配管構造等については、図示および詳細な説明を省略することとする。
【0012】
図19は従来の貯湯タンクユニットのB−B断面図を、図20は従来の貯湯タンクユニットのA−A断面図を、それぞれ示している。これらの図に示すとおり、貯湯タンクユニット100は、高温の湯(温水)が貯湯される貯湯タンク102を備えている。貯湯タンク102は円筒形状に形成され、その円筒側面部には断熱材103が密着されている。断熱材103は、貯湯タンク102の円筒側面に密着する中空円筒形状を複数個に分割(図では2分割)した形状を有し、例えば発泡スチロール等の発泡性の成型断熱材(非真空断熱材)によって形成されている。また、断熱材103の外側には、更に真空断熱材104がその側面に沿って設けられている。
【0013】
このような構造によれば、真空断熱材104が直接貯湯タンク102に密着しないため、真空断熱材104の熱劣化を防止することができる。これにより、真空断熱材104の熱伝導率の低下による保温性能の低下を有効に抑制することができるので、長期間高断熱性能が維持できる貯湯タンク102を備えた貯湯タンクユニット100を提供することができる。
【0014】
しかしながら、上述した従来の断熱材構造は、以下の課題を有している。図21は、貯湯タンク102への断熱材103の取り付け過程を示すA−A断面図である。この図に示すとおり、断熱材103は、それぞれ均一な厚みで成形された半円筒状の形状を有しており、この断熱材103に対応する形状を有する成形型を用いて成型される。この際、断熱材103として使用される発泡スチロールなどの発泡材のビーズを発泡させるためには、発泡材の厚みとして、最低10mm程度が必要となる。このため、半円筒形状に成形された断熱材103は薄肉でもあり、輸送時や貯湯タンクへの実装時に破損しやすいという課題を有している。
【0015】
また、断熱材103の成形後の形状はU字形状であり、輸送効率の悪化を招くという課題を有している。更に、断熱材103を上方向へ段積する際にU字形状の内側部を上方向へ向けた場合、段積みが不安定となり荷崩れが発生するおそれがある。また、反対にU字形状の内側部を下方向へ向けた場合、断熱材103の端部に荷重が集中し、下に位置する断熱材103が破損するおそれがある。また、この課題を輸送冶具等で補うこととすると、その治具構成が大掛かりとなり費用がかかる課題も有している。更に、断熱材103のような薄肉U字形状は、成型後の変形(反り)が大きい。このため、断熱材103の曲率が貯湯タンク102のそれからずれてしまうと、貯湯タンク102への密着度が低下してしまうという課題を有している。
【0016】
そこで、本発明の本実施の形態に係る貯湯タンクユニット1では、これらの課題を解決すべく、以下の断熱材構造を採ることとしている。図1は、本実施の形態に係る貯湯タンクユニット1(貯湯式給湯機)の断熱材の構造を説明するための図である。この図に示すとおり、本実施の形態に係る貯湯タンクユニット1では、上記従来の装置と同様の円筒形状の貯湯タンク2の円筒側面部に、例えば発泡スチロール等の発泡性の成型断熱材(非真空断熱材)によって形成された断熱材3が密着されている。また、貯湯タンク2の上面部および底面部には、タンク形状に合わせた凹部が形成された上部断熱材12および下部断熱材13がそれぞれ設けられている。尚、上部断熱材12および下部断熱材13は、断熱材3と同様に、発泡スチロール等の発泡性の成型断熱材(非真空断熱材)によって形成されている。
【0017】
図2は断熱材3の構成を説明するための図であり、図中(a)は断熱材3の斜視図を、図中(b)は断熱材3のC−C断面図を、それぞれ示している。この図に示すとおり、断熱材3は、貯湯タンク2の円筒面に沿った円弧形状に湾曲した内面を短手方向に有する短冊状の断面形状部6(円弧体)を複数備え、断面形状部6を短手方向に複数並べて繋ぎ合わせることで略平板状に構成されている。断面形状部6同士の繋ぎ目の内面側および外面側には、当該繋ぎ目に沿って延在する第1スリット5a(内面側スリット)および第2スリット5b(外面側スリット)がそれぞれ形成されている。尚、第1スリット5aおよび第2スリット5bの形状および配置に関しては詳細を後述する。
【0018】
また、断面形状部6は、複数の断面形状部6aと、断面形状部6aよりも円弧幅の広い単一の断面形状部6bと、断熱材3の両側縁部に配置された断面形状部6cと、を有している。断面形状部6cの側縁部側には、実装時に当接する断面形状部6cと嵌合するための断熱材両端凹凸形状部7が形成されている。また、断面形状部6bには、貯湯タンク2内の水温を検知するためのサーミスタを交換するためのサーミスタ交換用穴10(穴部)が設けられている。更に、断面形状部6b,6cの長手方向の下部には、突起状に形成された下部凸部8(嵌合部)、および該下部凸部8の表面周囲に厚み方向に重ねられた断熱材外周下部凸形状部9(凸部)が設けられている。尚、断熱材両端凹凸形状部7、下部凸部8、断熱材外周下部凸形状部9およびサーミスタ交換用穴10の構成については、詳細を後述する。
【0019】
図3は断熱材3の実装時の形状を説明するための図であり、図中(a)は断熱材3の斜視図を、図中(b)は断熱材3のD−D断面図を、それぞれ示している。断熱材3は、スリット5が設けられた肉厚が薄い部位において容易に湾曲する。このため、この図に示すとおり、断熱材3を円弧の周方向(すなわち内面側の第1スリット5aの溝が閉じて外面側の第2スリット5bが開く方向)に湾曲させることで、断熱材3の内面側に貯湯タンク2の円筒面に沿った円弧面を形成することができる。貯湯タンク2に断熱材3を実装する際には、図3に示すように、2つの断熱材3を上記のように湾曲させて円筒面に密着させる。これにより、平板状の断熱材3を用いつつ半円筒形状に形成された断熱材と同等の断熱性能を発揮することができる。
【0020】
また、図4は、断熱材3の段積み状態を示す図であり、図中の(a)は従来のU字形状に成形された断熱材の段積み状態を、図中(b)は、スリット5が形成されている本発明の本実施の形態の断熱材の段積み状態を、それぞれ示している。この図に示すとおり、本実施の形態の断熱材3は、平面上に段積みすることが可能となるため、従来のU字形状の断熱材に比して輸送効率の向上を図るとともに、輸送時の断熱材3の薄肉部の破損も抑えることが可能となる。
【0021】
尚、スリット5は、種々の構成のものを採用することができる。図5は、断熱材3に形成されたスリット5の構成を説明するための図である。図5中の(a)に示すスリット5は、第1スリット5aが浅く形成され、第2スリット5bが深く形成されている。このようなスリットによれば、断熱材3を周方向に湾曲させた場合に第2スリット5bが大きく開くため、断熱材3の内面側を容易に円弧面に変形させることができる。また、図5(a)に示すスリット5は、第2スリット5bが第1スリット5aと相対しない位置、すなわち、第1スリット5aの真裏に相当する領域を避けた位置に形成されている。これにより、2つのスリット5a,5bが干渉する事態を抑制することができるので、より深いスリットを形成することができる。
【0022】
また、図5中の(b)および(c)には、スリット5の他の例を示している。図5中の(b)に示すスリット5は、第1スリット5aが深く形成され、第2スリット5bが浅く形成されている。このようなスリットによれば、断熱材3を周方向に湾曲させた場合に第1スリット5aが大きく閉じるため、断熱材3の内面側を容易に円弧面に変形させることができる。更に、また、図5中の(c)に示すスリット5は、第1スリット5aを挟む位置に複数の第2スリット5b(図では2つ)が形成されている。このようなスリットによれば、断熱材3を周方向に湾曲させた場合に複数の第2スリット5bがそれぞれ開くため、断熱材3の内面側を容易に円弧面に変形させることができる。
【0023】
また、上述した断熱材3では、複数の断面形状部6aと単一の断面形状部6bとを繋ぎ合わせているが、これらの組み合わせは上述した構成に限定されず、例えば、複数の断面形状部6aと複数の断面形状部6bとを繋ぎ合わせる構成としてもよい。図6は、断熱材3の変形例を説明するための図であり、図中(a)は変形例としての断熱材3の斜視図を、図中(b)は、変形例としての断熱材3のE−E断面図を、それぞれ示している。また、図7は、変形例としての断熱材3の実装時の形状を説明するための図であり、図中(a)は断熱材3の斜視図を、図中(b)は断熱材3のF−F断面図を、それぞれ示している。図6および図7に示す断熱材3では、断面形状部6aと断面形状部6bとを交互に繋ぎ合わせている。このような構成によれば、スリット5の数が減るので、成形型の製作が容易となり、成形型のイニシャルコストを抑制することが可能となる。また、円周幅の広い断面形状部6bを増やすことにより、貯湯タンク2と密着させる際、曲げる箇所(スリット)が少ないので、貯湯タンク2の外周形状に沿って組立をすることが容易となり、保温性能の低下を防ぐことで、高断熱性能を維持することができる。
【0024】
本発明の実施の形態1の貯湯式給湯機では、断熱材3の貯湯タンク2への実装を容易且つ確実に行うための種々の工夫がなされている。以下、これらについて順に説明する。
【0025】
(下部凸部8の特徴)
先ず、断熱材3に形成された下部凸部8の特徴について説明する。図8は断熱材3を貯湯タンク2へ実装する動作について説明するための図であり、図9は下部断熱材13の形状を説明するための図であり、また、図10は断熱材3を貯湯タンク2へ実装したときの下部凸部8の近傍を拡大して示す図である。図8に示すとおり、下部凸部8は、断熱材3の側縁部に配置されている断面形状部6cの下部に設けられた下部凸部8aと、断熱材3の中央付近に配置されている断面形状部6bの下部に設けられた下部凸部8bとを備えている。また、図10に示すとおり、下部断熱材13には、断熱材3の実装時における下部凸部8に対応する位置に下部断熱材凹部14(嵌合部)が設けられている。上述した下部凸部8bは、この下部断熱材凹部14に差し込み固定される。また、図10に示すとおり、下部凸部8aは、当接する隣の下部凸部8aと嵌合した上で下部断熱材凹部14に差し込み固定される。これにより、断熱材3の端部の反りを抑制するとともに、組立時の位置決めを可能とし、容易に組立をすることが可能となる。また、貯湯タンク2と断熱材3の曲率を容易に合わせて組立をすることが可能となり、保温性能の低下を防ぐことで、高断熱性能を維持することが可能となる。尚、断面形状部6に設けられた下部凸部8と下部断熱材13に設けられた下部断熱材凹部14との嵌合形状は上述したものに限定されず、種々の公知の嵌合形状を採用することができる。
【0026】
(断熱材両端凹凸形状部7およびサーミスタ交換用穴10の特徴)
図11は、断熱材3を貯湯タンク2に実装した場合における貯湯タンクユニットの立体斜視図を示す図であり、図12は、図11に示す貯湯タンクユニットの断熱材3の断熱材両端凹凸形状部7を拡大して示す図であり、また、図13は、図11に示す貯湯タンクユニットの断熱材3に設けられたサーミスタ交換用穴10を正面から見た図である。図11および図12に示すとおり、断熱材両端凹凸形状部7は、隣り合う断熱材両端凹凸形状部7と嵌合する。これにより、複数枚の断熱材3を確実に固定することが可能となる。また、図11および図13に示すとおり、貯湯タンク2の正面側には、タンク内の水温を測定し制御を行なうための5つのタンク内水温検知サーミスタ16が、タンク長手方向に沿って配置されている。そして、断熱材3には、これらのタンク内水温検知サーミスタ16が配置されている位置に、長穴で構成されたサーミスタ交換用穴10が設けられている。このような構成によれば、タンク内水温検知サーミスタ16に故障等が発生して交換が必要になった場合にも、断熱材3を取り外すことなく、貯湯タンク2の正面より、容易にサーミスタの交換を行なうことが可能となる。
【0027】
尚、上述した実施の形態では、サーミスタ交換用穴10が2つの長穴で構成されているが、断熱材3を実装した状態でサーミスタを交換可能であれば、その穴の形状、配置等は特に限定しない。
(断熱材外周下部凸形状部9の特徴)
また、本実施の形態の貯湯タンクユニットでは、非真空断熱材である断熱材3の更に外側に真空断熱材が実装される。図14は、貯湯タンクユニットに真空断熱材を実装する場合の実装動作について説明するための図である。また、図15は、貯湯タンクユニットに真空断熱材を実装した状態での中心軸方向の下部断面図である。上述した図2(a)および図14に示すとおり、断熱材外周下部凸形状部9の上端には、周方向に沿って段差9aが形成されている。真空断熱材4を実装する際は、この段差9aをガイドとする。具体的には、図14および図15に示すとおり、断熱材3の外周下部に形成された断熱材外周下部凸形状部9の段差9aに真空断熱材4を乗せるようにして実装することにより、実装時の位置決めを容易に行うことが可能となる。また、下部凸部は、断熱材外周下部凸形状部9によって肉厚になっている。これにより、断熱材下部凸部8の破損を有効に防止することができる。
【0028】
(真空断熱材4の特徴)
図16は、真空断熱材を実装した貯湯タンクユニットの正面図である。また、図17は、貯湯タンクユニットに真空断熱材を実装した状態での中心軸方向の上部断面図である。図14および図15に示すとおり、貯湯タンク2に真空断熱材4を実装する際には、真空断熱材4の上端面が断熱材3の上部よりも低い位置となるように、真空断熱材4の大きさが設定されている。これにより、真空断熱材4を断熱材3にテープ15によって固定することが可能となり、真空断熱材4が直接貯湯タンク2に接することを防ぐことができる。また、真空断熱材4の劣化を防ぐことができるので、高断熱性能の維持が可能となる。
【符号の説明】
【0029】
1 貯湯タンクユニット(貯湯式給湯機)
2 貯湯タンク
3 断熱材(非真空断熱材)
4 真空断熱材
5 スリット
5a 第1スリット(内面側スリット)
5b 第2スリット(外面側スリット)
6 断面形状部(円弧体)
7 断熱材両端凹凸形状部(側縁部)
8 下部凸部(嵌合部)
9 断熱材外周下部凸形状部(凸部)
10 サーミスタ交換用穴
13 下部断熱材
14 下部断熱材凹部(嵌合部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯式給湯機に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプ式給湯機の貯湯タンクユニットは、最高約90℃の温水が貯湯される。このため、貯湯タンクの周囲には、保温性能を向上させることを目的として真空断熱材を取り付けることが広く知られている。しかしながら、真空断熱材は熱劣化し易い特性を有している。このため、貯湯タンクに直接真空断熱材を密着させて取り付ける構成は、熱による経年変化の影響により、真空断熱材の保温性能が年々低下するという問題がある。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1では、円筒形状を有する貯湯タンクの周囲に非真空断熱材を設け、更に貯湯タンクの外周形状に沿って湾曲した真空断熱材を当該非真空断熱材の外側に設けることが提案されている。この構成によれば、真空断熱材が直接貯湯タンクに密着されることがないため、真空断熱材の熱劣化による熱伝導率の低下が抑制される。これにより、貯湯タンクユニットの保温性能の低下を防ぎ、高断熱性能を維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−91134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の装置のように、非真空断熱材(例えば発泡スチロール)を円筒形状の貯湯タンクに密着させる構成とすると、非真空断熱材の形状が貯湯タンクの円筒局面に沿ったU字形状になってしまう。このため、このような形状の非真空断熱材を使用することとすると、輸送効率が悪い、輸送時や貯湯タンクへの実装時に薄肉部が破損し易い、或いは成形後の反り等によって貯湯タンクに密着しないといった課題を有していた。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、断熱材の輸送効率を悪化させず、破損の可能性を低減し、且つ貯湯タンクとの密着度を高めることのできる断熱構造を有する貯湯式給湯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る貯湯式給湯機は、湯を貯湯する円筒形状の貯湯タンクと、貯湯タンクの表面を覆う非真空断熱材と、を備え、非真空断熱材は、貯湯タンクの円筒面に沿った円弧面を内面に有する円弧体と、円弧体の中心軸方向に延在するスリットであって、円弧体の内面側に設けられた内面側スリットと、中心軸方向に延在するスリットであって、円弧体の外面側に設けられた外面側スリットと、を有し、貯湯タンクの円筒面に円弧面を密着させて配設するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、貯湯タンクの断熱材の輸送効率を悪化させず、断熱材の破損を抑え、且つ貯湯タンクとの密着度を高めることのできる断熱構造を有する貯湯式給湯機を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施の形態に係る貯湯タンクユニット1の断熱材の構造を説明するための図である。
【図2】断熱材3の構成を説明するための図であり、図中(a)は断熱材3の斜視図を、図中(b)は断熱材3のC−C断面図を、それぞれ示している。
【図3】断熱材3の実装時の形状を説明するための図であり、図中(a)は断熱材3の斜視図を、図中(b)は断熱材3のD−D断面図を、それぞれ示している。
【図4】断熱材3の段積み状態を示す図であり、図中の(a)は従来のU字形状に成形された断熱材の段積み状態を、図中(b)は、スリット5が形成されている本発明の本実施の形態の断熱材の段積み状態を、それぞれ示している。
【図5】断熱材3に形成されたスリット5の構成を説明するための図である。
【図6】断熱材3の変形例を説明するための図であり、図中(a)は変形例としての断熱材3の斜視図を、図中(b)は、変形例としての断熱材3のE−E断面図を、それぞれ示している。
【図7】変形例としての断熱材3の実装時の形状を説明するための図であり、図中(a)は断熱材3の斜視図を、図中(b)は断熱材3のF−F断面図を、それぞれ示している。
【図8】断熱材3を貯湯タンク2へ実装する動作について説明するための図である。
【図9】下部断熱材13の形状を説明するための図である。
【図10】断熱材3を貯湯タンク2へ実装したときの下部凸部8の近傍を拡大して示す図である。
【図11】断熱材3を貯湯タンク2に実装した場合における貯湯タンクユニットの立体斜視図を示す図である。
【図12】図11に示す貯湯タンクユニットの断熱材3の断熱材両端凹凸形状部7を拡大して示す図である。
【図13】図11に示す貯湯タンクユニットの断熱材3に設けられたサーミスタ交換用穴10を正面から見た図である。
【図14】貯湯タンクユニットに真空断熱材を実装する場合の実装動作について説明するための図である。
【図15】貯湯タンクユニットに真空断熱材を実装した状態での中心軸方向の下部断面図である。
【図16】真空断熱材を実装した貯湯タンクユニットの正面図である。
【図17】貯湯タンクユニットに真空断熱材を実装した状態での中心軸方向の上部断面図である。
【図18】従来の貯湯タンクユニット100(貯湯式給湯機)の立体斜視図を示す。
【図19】従来の貯湯タンクユニットのB−B断面図である。
【図20】従来の貯湯タンクユニットのA−A断面図である。
【図21】貯湯タンク102への断熱材103の取り付け過程を示すA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。また、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態1.
図18は、従来の貯湯タンクユニット100(貯湯式給湯機)の立体斜視図を示す。以下、図18に示す貯湯タンクユニット100のA−A断面図およびB−B断面図を用いて、本発明の特徴的構成である貯湯タンクの断熱材構造について説明する。尚、貯湯タンクユニット100は、後述する貯湯タンクの他に、該貯湯タンクに水を供給するための給水配管、貯湯タンクから湯を取り出すための給湯配管、水と湯を混合して所定温度の湯を供給するための混合弁、水を加熱するための熱源(電気ヒータやヒートポンプユニット)などを備えているが、以下に示す図では、貯湯タンクおよびその断熱材の構成のみを示し、他の配管構造等については、図示および詳細な説明を省略することとする。
【0012】
図19は従来の貯湯タンクユニットのB−B断面図を、図20は従来の貯湯タンクユニットのA−A断面図を、それぞれ示している。これらの図に示すとおり、貯湯タンクユニット100は、高温の湯(温水)が貯湯される貯湯タンク102を備えている。貯湯タンク102は円筒形状に形成され、その円筒側面部には断熱材103が密着されている。断熱材103は、貯湯タンク102の円筒側面に密着する中空円筒形状を複数個に分割(図では2分割)した形状を有し、例えば発泡スチロール等の発泡性の成型断熱材(非真空断熱材)によって形成されている。また、断熱材103の外側には、更に真空断熱材104がその側面に沿って設けられている。
【0013】
このような構造によれば、真空断熱材104が直接貯湯タンク102に密着しないため、真空断熱材104の熱劣化を防止することができる。これにより、真空断熱材104の熱伝導率の低下による保温性能の低下を有効に抑制することができるので、長期間高断熱性能が維持できる貯湯タンク102を備えた貯湯タンクユニット100を提供することができる。
【0014】
しかしながら、上述した従来の断熱材構造は、以下の課題を有している。図21は、貯湯タンク102への断熱材103の取り付け過程を示すA−A断面図である。この図に示すとおり、断熱材103は、それぞれ均一な厚みで成形された半円筒状の形状を有しており、この断熱材103に対応する形状を有する成形型を用いて成型される。この際、断熱材103として使用される発泡スチロールなどの発泡材のビーズを発泡させるためには、発泡材の厚みとして、最低10mm程度が必要となる。このため、半円筒形状に成形された断熱材103は薄肉でもあり、輸送時や貯湯タンクへの実装時に破損しやすいという課題を有している。
【0015】
また、断熱材103の成形後の形状はU字形状であり、輸送効率の悪化を招くという課題を有している。更に、断熱材103を上方向へ段積する際にU字形状の内側部を上方向へ向けた場合、段積みが不安定となり荷崩れが発生するおそれがある。また、反対にU字形状の内側部を下方向へ向けた場合、断熱材103の端部に荷重が集中し、下に位置する断熱材103が破損するおそれがある。また、この課題を輸送冶具等で補うこととすると、その治具構成が大掛かりとなり費用がかかる課題も有している。更に、断熱材103のような薄肉U字形状は、成型後の変形(反り)が大きい。このため、断熱材103の曲率が貯湯タンク102のそれからずれてしまうと、貯湯タンク102への密着度が低下してしまうという課題を有している。
【0016】
そこで、本発明の本実施の形態に係る貯湯タンクユニット1では、これらの課題を解決すべく、以下の断熱材構造を採ることとしている。図1は、本実施の形態に係る貯湯タンクユニット1(貯湯式給湯機)の断熱材の構造を説明するための図である。この図に示すとおり、本実施の形態に係る貯湯タンクユニット1では、上記従来の装置と同様の円筒形状の貯湯タンク2の円筒側面部に、例えば発泡スチロール等の発泡性の成型断熱材(非真空断熱材)によって形成された断熱材3が密着されている。また、貯湯タンク2の上面部および底面部には、タンク形状に合わせた凹部が形成された上部断熱材12および下部断熱材13がそれぞれ設けられている。尚、上部断熱材12および下部断熱材13は、断熱材3と同様に、発泡スチロール等の発泡性の成型断熱材(非真空断熱材)によって形成されている。
【0017】
図2は断熱材3の構成を説明するための図であり、図中(a)は断熱材3の斜視図を、図中(b)は断熱材3のC−C断面図を、それぞれ示している。この図に示すとおり、断熱材3は、貯湯タンク2の円筒面に沿った円弧形状に湾曲した内面を短手方向に有する短冊状の断面形状部6(円弧体)を複数備え、断面形状部6を短手方向に複数並べて繋ぎ合わせることで略平板状に構成されている。断面形状部6同士の繋ぎ目の内面側および外面側には、当該繋ぎ目に沿って延在する第1スリット5a(内面側スリット)および第2スリット5b(外面側スリット)がそれぞれ形成されている。尚、第1スリット5aおよび第2スリット5bの形状および配置に関しては詳細を後述する。
【0018】
また、断面形状部6は、複数の断面形状部6aと、断面形状部6aよりも円弧幅の広い単一の断面形状部6bと、断熱材3の両側縁部に配置された断面形状部6cと、を有している。断面形状部6cの側縁部側には、実装時に当接する断面形状部6cと嵌合するための断熱材両端凹凸形状部7が形成されている。また、断面形状部6bには、貯湯タンク2内の水温を検知するためのサーミスタを交換するためのサーミスタ交換用穴10(穴部)が設けられている。更に、断面形状部6b,6cの長手方向の下部には、突起状に形成された下部凸部8(嵌合部)、および該下部凸部8の表面周囲に厚み方向に重ねられた断熱材外周下部凸形状部9(凸部)が設けられている。尚、断熱材両端凹凸形状部7、下部凸部8、断熱材外周下部凸形状部9およびサーミスタ交換用穴10の構成については、詳細を後述する。
【0019】
図3は断熱材3の実装時の形状を説明するための図であり、図中(a)は断熱材3の斜視図を、図中(b)は断熱材3のD−D断面図を、それぞれ示している。断熱材3は、スリット5が設けられた肉厚が薄い部位において容易に湾曲する。このため、この図に示すとおり、断熱材3を円弧の周方向(すなわち内面側の第1スリット5aの溝が閉じて外面側の第2スリット5bが開く方向)に湾曲させることで、断熱材3の内面側に貯湯タンク2の円筒面に沿った円弧面を形成することができる。貯湯タンク2に断熱材3を実装する際には、図3に示すように、2つの断熱材3を上記のように湾曲させて円筒面に密着させる。これにより、平板状の断熱材3を用いつつ半円筒形状に形成された断熱材と同等の断熱性能を発揮することができる。
【0020】
また、図4は、断熱材3の段積み状態を示す図であり、図中の(a)は従来のU字形状に成形された断熱材の段積み状態を、図中(b)は、スリット5が形成されている本発明の本実施の形態の断熱材の段積み状態を、それぞれ示している。この図に示すとおり、本実施の形態の断熱材3は、平面上に段積みすることが可能となるため、従来のU字形状の断熱材に比して輸送効率の向上を図るとともに、輸送時の断熱材3の薄肉部の破損も抑えることが可能となる。
【0021】
尚、スリット5は、種々の構成のものを採用することができる。図5は、断熱材3に形成されたスリット5の構成を説明するための図である。図5中の(a)に示すスリット5は、第1スリット5aが浅く形成され、第2スリット5bが深く形成されている。このようなスリットによれば、断熱材3を周方向に湾曲させた場合に第2スリット5bが大きく開くため、断熱材3の内面側を容易に円弧面に変形させることができる。また、図5(a)に示すスリット5は、第2スリット5bが第1スリット5aと相対しない位置、すなわち、第1スリット5aの真裏に相当する領域を避けた位置に形成されている。これにより、2つのスリット5a,5bが干渉する事態を抑制することができるので、より深いスリットを形成することができる。
【0022】
また、図5中の(b)および(c)には、スリット5の他の例を示している。図5中の(b)に示すスリット5は、第1スリット5aが深く形成され、第2スリット5bが浅く形成されている。このようなスリットによれば、断熱材3を周方向に湾曲させた場合に第1スリット5aが大きく閉じるため、断熱材3の内面側を容易に円弧面に変形させることができる。更に、また、図5中の(c)に示すスリット5は、第1スリット5aを挟む位置に複数の第2スリット5b(図では2つ)が形成されている。このようなスリットによれば、断熱材3を周方向に湾曲させた場合に複数の第2スリット5bがそれぞれ開くため、断熱材3の内面側を容易に円弧面に変形させることができる。
【0023】
また、上述した断熱材3では、複数の断面形状部6aと単一の断面形状部6bとを繋ぎ合わせているが、これらの組み合わせは上述した構成に限定されず、例えば、複数の断面形状部6aと複数の断面形状部6bとを繋ぎ合わせる構成としてもよい。図6は、断熱材3の変形例を説明するための図であり、図中(a)は変形例としての断熱材3の斜視図を、図中(b)は、変形例としての断熱材3のE−E断面図を、それぞれ示している。また、図7は、変形例としての断熱材3の実装時の形状を説明するための図であり、図中(a)は断熱材3の斜視図を、図中(b)は断熱材3のF−F断面図を、それぞれ示している。図6および図7に示す断熱材3では、断面形状部6aと断面形状部6bとを交互に繋ぎ合わせている。このような構成によれば、スリット5の数が減るので、成形型の製作が容易となり、成形型のイニシャルコストを抑制することが可能となる。また、円周幅の広い断面形状部6bを増やすことにより、貯湯タンク2と密着させる際、曲げる箇所(スリット)が少ないので、貯湯タンク2の外周形状に沿って組立をすることが容易となり、保温性能の低下を防ぐことで、高断熱性能を維持することができる。
【0024】
本発明の実施の形態1の貯湯式給湯機では、断熱材3の貯湯タンク2への実装を容易且つ確実に行うための種々の工夫がなされている。以下、これらについて順に説明する。
【0025】
(下部凸部8の特徴)
先ず、断熱材3に形成された下部凸部8の特徴について説明する。図8は断熱材3を貯湯タンク2へ実装する動作について説明するための図であり、図9は下部断熱材13の形状を説明するための図であり、また、図10は断熱材3を貯湯タンク2へ実装したときの下部凸部8の近傍を拡大して示す図である。図8に示すとおり、下部凸部8は、断熱材3の側縁部に配置されている断面形状部6cの下部に設けられた下部凸部8aと、断熱材3の中央付近に配置されている断面形状部6bの下部に設けられた下部凸部8bとを備えている。また、図10に示すとおり、下部断熱材13には、断熱材3の実装時における下部凸部8に対応する位置に下部断熱材凹部14(嵌合部)が設けられている。上述した下部凸部8bは、この下部断熱材凹部14に差し込み固定される。また、図10に示すとおり、下部凸部8aは、当接する隣の下部凸部8aと嵌合した上で下部断熱材凹部14に差し込み固定される。これにより、断熱材3の端部の反りを抑制するとともに、組立時の位置決めを可能とし、容易に組立をすることが可能となる。また、貯湯タンク2と断熱材3の曲率を容易に合わせて組立をすることが可能となり、保温性能の低下を防ぐことで、高断熱性能を維持することが可能となる。尚、断面形状部6に設けられた下部凸部8と下部断熱材13に設けられた下部断熱材凹部14との嵌合形状は上述したものに限定されず、種々の公知の嵌合形状を採用することができる。
【0026】
(断熱材両端凹凸形状部7およびサーミスタ交換用穴10の特徴)
図11は、断熱材3を貯湯タンク2に実装した場合における貯湯タンクユニットの立体斜視図を示す図であり、図12は、図11に示す貯湯タンクユニットの断熱材3の断熱材両端凹凸形状部7を拡大して示す図であり、また、図13は、図11に示す貯湯タンクユニットの断熱材3に設けられたサーミスタ交換用穴10を正面から見た図である。図11および図12に示すとおり、断熱材両端凹凸形状部7は、隣り合う断熱材両端凹凸形状部7と嵌合する。これにより、複数枚の断熱材3を確実に固定することが可能となる。また、図11および図13に示すとおり、貯湯タンク2の正面側には、タンク内の水温を測定し制御を行なうための5つのタンク内水温検知サーミスタ16が、タンク長手方向に沿って配置されている。そして、断熱材3には、これらのタンク内水温検知サーミスタ16が配置されている位置に、長穴で構成されたサーミスタ交換用穴10が設けられている。このような構成によれば、タンク内水温検知サーミスタ16に故障等が発生して交換が必要になった場合にも、断熱材3を取り外すことなく、貯湯タンク2の正面より、容易にサーミスタの交換を行なうことが可能となる。
【0027】
尚、上述した実施の形態では、サーミスタ交換用穴10が2つの長穴で構成されているが、断熱材3を実装した状態でサーミスタを交換可能であれば、その穴の形状、配置等は特に限定しない。
(断熱材外周下部凸形状部9の特徴)
また、本実施の形態の貯湯タンクユニットでは、非真空断熱材である断熱材3の更に外側に真空断熱材が実装される。図14は、貯湯タンクユニットに真空断熱材を実装する場合の実装動作について説明するための図である。また、図15は、貯湯タンクユニットに真空断熱材を実装した状態での中心軸方向の下部断面図である。上述した図2(a)および図14に示すとおり、断熱材外周下部凸形状部9の上端には、周方向に沿って段差9aが形成されている。真空断熱材4を実装する際は、この段差9aをガイドとする。具体的には、図14および図15に示すとおり、断熱材3の外周下部に形成された断熱材外周下部凸形状部9の段差9aに真空断熱材4を乗せるようにして実装することにより、実装時の位置決めを容易に行うことが可能となる。また、下部凸部は、断熱材外周下部凸形状部9によって肉厚になっている。これにより、断熱材下部凸部8の破損を有効に防止することができる。
【0028】
(真空断熱材4の特徴)
図16は、真空断熱材を実装した貯湯タンクユニットの正面図である。また、図17は、貯湯タンクユニットに真空断熱材を実装した状態での中心軸方向の上部断面図である。図14および図15に示すとおり、貯湯タンク2に真空断熱材4を実装する際には、真空断熱材4の上端面が断熱材3の上部よりも低い位置となるように、真空断熱材4の大きさが設定されている。これにより、真空断熱材4を断熱材3にテープ15によって固定することが可能となり、真空断熱材4が直接貯湯タンク2に接することを防ぐことができる。また、真空断熱材4の劣化を防ぐことができるので、高断熱性能の維持が可能となる。
【符号の説明】
【0029】
1 貯湯タンクユニット(貯湯式給湯機)
2 貯湯タンク
3 断熱材(非真空断熱材)
4 真空断熱材
5 スリット
5a 第1スリット(内面側スリット)
5b 第2スリット(外面側スリット)
6 断面形状部(円弧体)
7 断熱材両端凹凸形状部(側縁部)
8 下部凸部(嵌合部)
9 断熱材外周下部凸形状部(凸部)
10 サーミスタ交換用穴
13 下部断熱材
14 下部断熱材凹部(嵌合部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯を貯湯する円筒形状の貯湯タンクと、
前記貯湯タンクの表面を覆う非真空断熱材と、を備え、
前記非真空断熱材は、
前記貯湯タンクの円筒面に沿った円弧面を内面に有する円弧体と、
前記円弧体の中心軸方向に延在するスリットであって、前記円弧体の内面側に設けられた内面側スリットと、
前記中心軸方向に延在するスリットであって、前記円弧体の外面側に設けられた外面側スリットと、
を有し、前記貯湯タンクの円筒面に前記円弧面を密着させて配設することを特徴とする貯湯式給湯機。
【請求項2】
前記外面側スリットは、前記内面側スリットの真裏に相当する位置を避けて設けられていることを特徴とする請求項1記載の貯湯式給湯機。
【請求項3】
前記外面側スリットは、前記内面側スリットの真裏に相当する位置の近傍に設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の貯湯式給湯機。
【請求項4】
前記外面側スリットは、1つの前記内面側スリットに対して複数設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の貯湯式給湯機。
【請求項5】
前記内面側スリットは、前記外面側スリットに比して深いスリットであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の貯湯式給湯機。
【請求項6】
前記内面側スリットは、前記外面側スリットに比して浅いスリットであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の貯湯式給湯機。
【請求項7】
前記非真空断熱材は、前記円弧体の側縁部に嵌合形状を備え、
一又は複数の前記円弧体によって前記貯湯タンクの円筒面上を覆う場合に、当接する前記側縁部同士を嵌合させることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項記載の貯湯式給湯機。
【請求項8】
前記非真空断熱材は、前記貯湯タンクの下部を覆い、且つ前記円弧体の円弧縁部と当接する下部断熱材を含み、前記下部断熱材と前記円弧体の前記円弧縁部との当接部に嵌合部を備えることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項記載の貯湯式給湯機。
【請求項9】
前記非真空断熱材は、前記円弧体の一部領域にサーミスタ交換用の穴部を備えることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項記載の貯湯式給湯機。
【請求項10】
前記非損空断熱材の更に外側を覆う真空断熱材を更に備え、
前記非真空断熱材は、前記円弧体の外側面に前記真空断熱材の位置決め用の凸部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項記載の貯湯式給湯機。
【請求項1】
湯を貯湯する円筒形状の貯湯タンクと、
前記貯湯タンクの表面を覆う非真空断熱材と、を備え、
前記非真空断熱材は、
前記貯湯タンクの円筒面に沿った円弧面を内面に有する円弧体と、
前記円弧体の中心軸方向に延在するスリットであって、前記円弧体の内面側に設けられた内面側スリットと、
前記中心軸方向に延在するスリットであって、前記円弧体の外面側に設けられた外面側スリットと、
を有し、前記貯湯タンクの円筒面に前記円弧面を密着させて配設することを特徴とする貯湯式給湯機。
【請求項2】
前記外面側スリットは、前記内面側スリットの真裏に相当する位置を避けて設けられていることを特徴とする請求項1記載の貯湯式給湯機。
【請求項3】
前記外面側スリットは、前記内面側スリットの真裏に相当する位置の近傍に設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の貯湯式給湯機。
【請求項4】
前記外面側スリットは、1つの前記内面側スリットに対して複数設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の貯湯式給湯機。
【請求項5】
前記内面側スリットは、前記外面側スリットに比して深いスリットであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の貯湯式給湯機。
【請求項6】
前記内面側スリットは、前記外面側スリットに比して浅いスリットであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の貯湯式給湯機。
【請求項7】
前記非真空断熱材は、前記円弧体の側縁部に嵌合形状を備え、
一又は複数の前記円弧体によって前記貯湯タンクの円筒面上を覆う場合に、当接する前記側縁部同士を嵌合させることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項記載の貯湯式給湯機。
【請求項8】
前記非真空断熱材は、前記貯湯タンクの下部を覆い、且つ前記円弧体の円弧縁部と当接する下部断熱材を含み、前記下部断熱材と前記円弧体の前記円弧縁部との当接部に嵌合部を備えることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項記載の貯湯式給湯機。
【請求項9】
前記非真空断熱材は、前記円弧体の一部領域にサーミスタ交換用の穴部を備えることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項記載の貯湯式給湯機。
【請求項10】
前記非損空断熱材の更に外側を覆う真空断熱材を更に備え、
前記非真空断熱材は、前記円弧体の外側面に前記真空断熱材の位置決め用の凸部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項記載の貯湯式給湯機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2012−202666(P2012−202666A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70096(P2011−70096)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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