説明

貯湯式給湯機

【課題】貯湯タンクの断熱劣化をセンサレスによって精度よく確実に検知し、早期に対策できる信頼性の高い貯湯式給湯機を提供することを目的とする。
【解決手段】加熱装置2によって製造された温水を貯湯する断熱構造の貯湯タンク10を備えている貯湯式給湯機1において、給湯機1の設置時から予め設定された期間における加熱装置2の1日当たりの平均運転時間を過去の運転時間の実績値として記憶し、それ以後の1日当たりの平均運転時間を現在値として実績値と対比することにより、現在値が実績値に対して設定値を超えた場合、貯湯タンク10が断熱劣化していると判定する貯湯タンク断熱劣化検知回路16を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水を貯える断熱構造の貯湯タンクを備えている貯湯式給湯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
貯湯式給湯機は、ヒートポンプ等の加熱装置によって製造された温水を貯える貯湯タンクを備えており、料金が安い深夜電力を利用して夜間にヒートポンプ等を運転して温水を製造し、その温水を貯湯タンクに貯えておき、必要時に貯湯タンクより負荷側に給湯できる構成とされている。また、貯湯タンクは、例えば発泡樹脂等の断熱材で覆われた断熱構造のタンクとされ、貯湯される温水の温度低下を防ぐことができるようになっている。
【0003】
貯湯タンクには、通常、90℃程度に加熱された温水が貯湯され、給湯時、この温水と20℃前後の水とを混合弁により混合し、60℃程度の温水として給湯できるようにしている。しかし、貯湯タンクの断熱材が経年劣化したり、破損したりすることにより、その断熱性能が損なわれると、貯湯されている温水の温度が低下することになる。貯湯タンク内の湯温が低下した場合、その分、給湯時に貯湯タンク側から供給される湯量の割合が増加することから、早期に湯切れが発生したり、沸き増し運転時間が長くなって消費電力が増加したりする等の問題が生じる。
【0004】
そこで、貯湯タンクの断熱能力が低下してきた場合、それを早期に検知して断熱材等を補修し、その保温、断熱効果を回復することにより、貯湯タンクの断熱劣化による湯温の低下を防ぎ、早期の湯切れや消費電力の増加等を防止し、常に効率のよい運転が行えるようにした貯湯式給湯機が特許文献1により提示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4287852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のものでは、貯湯温度センサや給湯流量センサ、給水流量センサ等のセンサ類を設け、それらの検出値に基づいて温度低下量や出湯量、給水量の使用実績値等を求めることにより、貯湯タンクの断熱劣化を判定する構成とされている。このため、センサ類の設置が不可欠であり、部品数の増加に伴う構成の複雑化やコストアップ等の課題があった。また、センサ類の故障や検出精度等の問題もあり、貯湯タンクの断熱劣化に対する判定の信頼性を確保するには、まだまだ改善の余地があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、貯湯タンクの断熱劣化をセンサレスによって精度よく確実に検知し、早期に対策できる信頼性の高い貯湯式給湯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、本発明の貯湯式給湯機は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる貯湯式給湯機は、加熱装置によって製造された温水を貯湯する断熱構造の貯湯タンクを備えている貯湯式給湯機において、前記給湯機の設置時から予め設定された期間における前記加熱装置の1日当たりの平均運転時間を過去の運転時間の実績値として記憶し、それ以後の1日当たりの平均運転時間を現在値として前記実績値と対比することにより、前記現在値が前記実績値に対して設定値を超えた場合、前記貯湯タンクが断熱劣化していると判定する貯湯タンク断熱劣化検知回路を備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、断熱構造の貯湯タンクを備えている貯湯式給湯機にあって、給湯機の設置時から予め設定された期間における加熱装置の1日当たりの平均運転時間を過去の運転時間の実績値として記憶し、それ以後の1日当たりの平均運転時間を現在値として実績値と対比することにより、現在値が実績値に対して設定値を超えた場合、貯湯タンクが断熱劣化していると判定する貯湯タンク断熱劣化検知回路を備えているため、貯湯タンクが断熱劣化の虞のない給湯機の設置時から予め設定された期間における加熱装置の1日当たりの平均運転時間を求め、それを過去の運転時間の実績値として記憶し、それ以後の1日当たりの平均運転時間を現在値として両者を比較することにより、現在値が実績値に対して設定値を超えた場合、貯湯タンク内の湯温の低下が原因で加熱装置の1日当たりの平均運転時間が延長されていると判断し、貯湯タンクが断熱劣化していると判定するようにしている。従って、加熱装置の1日当たりの平均運転時間から貯湯タンクの断熱劣化をセンサレスで精度よく確実に検知し、早期に断熱性能を回復させることによって、効率の良い運転ができる信頼性の高い貯湯式給湯機を提供することができる。
【0010】
さらに、本発明の貯湯式給湯機は、上記の貯湯式給湯機において、前記貯湯タンク断熱劣化検知回路は、前記加熱装置の運転時間を積算する運転時間積算部と、該運転時間積算部からの積算時間に基づいて前記給湯機の設置時から予め設定された期間における前記加熱装置の1日当たりの平均運転時間を過去の運転時間の実績値として記憶する記億部と、前記運転時間積算部からの積算時間に基づいて現在の1日当たりの平均運転時間を現在値としてカウントする現在値カウント部と、前記記億部に記億されている実績値と前記現在値カウント部でカウントされた現在値とを比較し、前記現在値が前記実績値に対して設定値を超えているか否かで前記貯湯タンクの断熱劣化の有無を判定する判定部とから構成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、貯湯タンク断熱劣化検知回路が、加熱装置の運転時間を積算する運転時間積算部と、該運転時間積算部からの積算時間に基づいて給湯機の設置時から予め設定された期間における加熱装置の1日当たりの平均運転時間を過去の運転時間の実績値として記憶する記億部と、運転時間積算部からの積算時間に基づいて現在の1日当たりの平均運転時間を現在値としてカウントする現在値カウント部と、記億部に記億されている実績値と現在値カウント部でカウントされた現在値とを比較し、現在値が実績値に対して設定値を超えているか否かで貯湯タンクの断熱劣化の有無を判定する判定部とから構成されているため、運転時間積算部により加熱装置の運転時間を積算し、その積算時間に基づいて給湯機の設置時から予め設定された期間における加熱装置の1日当たりの平均運転時間を過去の運転時間の実績値として記億部に記億するとともに、現在の1日当たりの平均運転時間を現在値として現在値カウント部でカウントし、この現在値と実績値とを判定部で比較することにより、現在値が実績値に対して設定値を超えた場合、貯湯タンクの断熱劣化が原因で加熱装置の1日当たりの平均運転時間が延長されていると判断し、貯湯タンクが断熱劣化していると判定するようにしている。従って、貯湯タンクの断熱劣化を加熱装置の運転時間を監視することにより、センサレスで精度よく確実に検知し、早期に対策を施すことが可能となる。
【0012】
さらに、本発明の貯湯式給湯機は、上述のいずれかの貯湯式給湯機において、前記貯湯タンク断熱劣化検知回路は、前記貯湯タンクが断熱劣化していると判定された場合、それを表示する表示部を備えていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、貯湯タンク断熱劣化検知回路が、貯湯タンクが断熱劣化していると判定された場合、それを表示する表示部を備えているため、貯湯タンク断熱劣化検知回路によって貯湯タンクが断熱劣化していることが検知された場合、表示部を介して直ちに貯湯タンクが断熱劣化していることを表示し、使用者に警報することができる。従って、使用者に対して貯湯タンクの断熱劣化を認識させ、補修工事を促すことによって早期に断熱性能の回復を図ることができる。
【0014】
さらに、本発明の貯湯式給湯機は、上述のいずれかの貯湯式給湯機において、前記記億部は、前記給湯機を設置後の少なくとも1年間の運転時間を冬期、中間期および夏期の3期に分け、各々の期間の平均運転時間を過去の運転時間の実績値として記憶するように構成され、これに対応して前記現在値カウント部も現在値を前記各期間の平均運転時間としてカウントするように構成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、記億部が、給湯機を設置後の少なくとも1年間の運転時間を冬期、中間期および夏期の3期に分け、各々の期間の平均運転時間を過去の運転時間の実績値として記憶するように構成され、これに対応して現在値カウント部も現在値を各期間の平均運転時間としてカウントするように構成されているため、冬期、中間期および夏期毎にそれぞれの期間の加熱装置の平均運転時間を実績値および現在値とすることにより、季節毎に変化する外気温や水温等を考慮した1日当たりの平均運転時間に基づいて、貯湯タンクの断熱劣化の有無を判定することができる。従って、加熱装置の平均運転時間による貯湯タンクの断熱劣化の判定精度をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、貯湯タンクが断熱劣化の虞のない給湯機の設置時から予め設定された期間における加熱装置の1日当たりの平均運転時間を求め、それを過去の運転時間の実績値として記憶し、それ以後の1日当たりの平均運転時間を現在値として両者を比較することにより、現在値が実績値に対して設定値を超えた場合、貯湯タンク内の湯温の低下が原因で加熱装置の1日当たりの平均運転時間が延長されていると判断し、貯湯タンクが断熱劣化していると判定するようにしているため、加熱装置の1日当たりの平均運転時間から貯湯タンクの断熱劣化をセンサレスで精度よく確実に検知し、早期に断熱性能を回復させることによって、効率の良い運転ができる信頼性の高い貯湯式給湯機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る貯湯式給湯機の構成図である。
【図2】図1に示す貯湯式給湯機の貯湯タンクの断熱劣化判定時の制御フローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の一実施形態について、図1および図2を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る貯湯式給湯機の構成図が示され、図2には、その貯湯タンクの断熱劣化判定時の制御フローチャート図が示されている。
本実施形態の貯湯式給湯機1は、温水を製造するための加熱装置として、CO2冷媒を用いている超臨界サイクルのヒートポンプ(加熱装置)2と、該ヒートポンプ2で製造された温水を貯える貯湯タンク10を備えた貯湯タンクユニット3とから構成されている。
【0019】
ヒートポンプ2は、冷媒を圧縮する圧縮機4と、ガスクーラとして機能し、冷媒と水とを熱交換させる冷媒/水熱交換器5と、冷媒を減圧する電子膨張弁等からなる減圧手段6と、外気との熱交換により冷媒を蒸発させる蒸発器7とが、順次冷媒配管8を介して接続されることにより構成された閉サイクルの冷媒循環回路9を備えている。このヒートポンプ2は、作動媒体としてCO2冷媒が充填された超臨界サイクルのヒートポンプとされており、それ自体、特別のものではなく、公知のものであってよい。
【0020】
貯湯タンクユニット3は、ヒートポンプ2側で製造された温水を貯える所要容量の貯湯タンク10と、この貯湯タンク10を介してヒートポンプ2の冷媒/水熱交換器5に対して水が循環可能とされている水循環系路11と、該水循環系路11中に設けられている水ポンプ12と、水循環系路11内に空気が混入されていた場合、その空気を水ポンプ12の運転により外部に排出する機能を担うエアベント13と、水循環系路11の給水側配管11Aと出湯側配管11Bとの間に設けられたバスパス回路14と、バイパス回路14からの水と貯湯タンク10からの給湯水とを混合して所定温度の温水となし、負荷側に供給する感温式のミキシング弁15等とを備えている。
【0021】
上記ヒートポンプ2の冷媒/水熱交換器5は、冷媒配管8が接続される冷媒流通路5A側を流れる冷媒と、水循環系路11が接続される水流通路5B側を流れる水とが熱交換されるように構成された熱交換器であり、冷媒からの放熱によって水を加熱し、温水を製造する機能を担うものである。この冷媒/水熱交換器5は、冷媒流通路5A側を流れる冷媒の流れ方向と、水流通路5B側を流れる水の流れ方向が互いに向かい合う対向流となるように構成されている。
【0022】
また、貯湯タンクユニット3の貯湯タンク10は、貯湯されている温水の温度低下を防ぐため、外殻のほぼ全面が発泡断熱材や真空断熱材等によって覆われた断熱構造のタンクとされている。なお、断熱構造については、いかなる構成であってもよい。しかし、これらの断熱材は、経年劣化を起こしたり、破損したりすることがあり、この場合、断熱性能が損なわれることから、貯湯された高温水の温度が低下してしまい、多大のロスが発生することになる。
【0023】
そこで、本実施形態においては、貯湯タンク10の断熱劣化を検知するため、以下の構成とされた貯湯タンク断熱劣化検知回路16が設けられている。
この貯湯タンク断熱劣化検知回路16は、図1に示されるように、ヒートポンプ2および水ポンプ12の運転時間を積算する運転時間積算部17と、この運転時間積算部17からの積算時間に基づいて貯湯式給湯機1の設置時から予め設定された期間、例えば貯湯式給湯機1を設置後1年間におけるヒートポンプ2および水ポンプ12の1日当たりの平均運転時間を過去の運転時間の実績値として記憶する記億部18と、運転時間積算部17からの積算時間に基づいて現在の1日当たりの平均運転時間を現在値としてカウントする現在値カウント部19と、記億部18に記億されている実績値と現在値カウント部19でカウントされた現在値とを比較し、現在値が実績値に対して設定値を超えているか否かで貯湯タンク10の断熱劣化の有無を判定する判定部20と、貯湯タンク10が断熱劣化していると判定された場合、それを表示する表示部21とから構成されている。
【0024】
つまり、貯湯タンク断熱劣化検知回路16は、貯湯式給湯機1を設置してから予め設定された期間におけるヒートポンプ2の1日当たりの平均運転時間を過去の運転時間の実績値として記憶し、それ以後の1日当たりの平均運転時間を現在値として実績値と対比することにより、現在値が前記実績値に対して設定値を超えた場合、貯湯タンク10が断熱劣化していると判定するように構成されている。
【0025】
ここで、上記記億部18では、貯湯式給湯機1を設置してから少なくとも1年間の運転時間を、例えば冬期(11月〜3月)、中間期(4月〜6月および10月)および夏期(7月〜9月)の3期に分け、各々の期間の平均運転時間を過去の運転時間の実績値として記憶するように構成し、これに対応して現在値カウント部19では、現在値を上記した各期間の平均運転時間としてカウントするように構成することが望ましい。これにより、季節毎に変化する外気温や水温等を考慮した1日当たりの平均運転時間に基づいて、貯湯タンク10の断熱劣化の有無を判定することができるようになる。
【0026】
貯湯式給湯機1は、設置後の或る期間、例えば1年間は貯湯タンク10の断熱材が劣化したり、破損したりすることがないものと仮定し、最初の1年間におけるヒートポンプ2および水ポンプ12の1日当たりの平均運転時間を過去の運転時間の実績値として記億部18により記憶する。そして、この記億部18に記憶された実績値に基づいて、貯湯タンク10の断熱劣化の有無を判定するようにしている。これは、断熱材の劣化や破損によって貯湯タンク10の断熱性能が低下すると、貯湯中の湯温が低下し、その分だけ沸き上げ運転時間や沸き増し運転時間が長くなり、ヒートポンプ2および水ポンプ12の1日当たりの平均運転時間が延長されることに着目し、記億部18に記憶された最初の1年間の実績値に対して、現在のヒートポンプ2および水ポンプ12の1日当たりの平均運転時間の増加割合を見て、貯湯タンク10の断熱劣化の有無を判定しようとするものである。
【0027】
図2には、貯湯タンク10の断熱劣化判定時の制御フローチャートが示されている。
貯湯式給湯機1が運転中、ステップS1において、貯湯式給湯機1の運転が終了したか否かを判定し、NOの場合は元に戻り、YESの場合、ステップS2に移行し、ここで断熱劣化の有無を判定する。この判定は、記億部18に記億されている過去の運転時間の実績値と、現在値カウント部19によりカウントされた現在値とを対比し、例えば、下記の関係を満たしているか否かで断熱劣化を判定するようにしている。
(現在値−実績値)/実績値×100≧5%
【0028】
つまり、本例においては、現在のヒートポンプ2および水ポンプ12の1日当たりの平均運転時間(現在値)が、貯湯式給湯機1を新たに設置してから最初の1年間におけるヒートポンプ2および水ポンプ12の1日当たりの平均運転時間(実績値)に対して、例えば5%以上増加している場合、ステップS2において、貯湯タンク10が断熱劣化していると判定(YESと判定)し、ステップS3に移行して表示部21に貯湯タンク10の断熱劣化を表示するようにしている。なお、ステップS2でNOと判定された場合、ステップS1の上流側に戻るように構成されている。
【0029】
このように、本実施形態では、温度センサや流量センサ等を設けることなく、ヒートポンプ2および水ポンプ12の運転時間を積算することにより、過去の或る期間中における1日当たりの平均運転時間の実績値と、現時点における1日当たりの平均運転時間である現在値とに基づいて、センサレスにより貯湯タンク10の断熱劣化の有無を判定し、断熱劣化していると判定された場合、それを表示部21に表示することにより、使用者に対して警報することができる構成とされている。
【0030】
以上に説明の構成により、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
上記貯湯式給湯機1において、CO2冷媒を用いた超臨界サイクルのヒートポンプ2が運転されると、圧縮機4により圧縮された高温高圧の冷媒ガスは、冷媒循環回路9を介して冷媒/水熱交換器5に導入される。ここで冷媒流通路5A側を流れる冷媒と、水循環系路11を介して水流通路5B側に循環される水とが熱交換されることにより、水は高温高圧の冷媒ガス側からの放熱によって加熱、昇温され、温水とされる。
【0031】
この温水は、水循環系路11を介して貯湯タンク10に戻り、貯湯タンク10内に貯えられた温水の温度が所定温度(例えば、90℃)に到達するまで、貯湯タンク10と冷媒/水熱交換器5との間を循環され、温水温度が所定温度に到達すると、貯湯運転が終了されるようになっている。一方、冷媒/水熱交換器5で放熱して冷却された冷媒は、減圧手段6で減圧された後、気液二相の低圧低温冷媒とされて蒸発器7に導入され、ここでファン等により送風される外気と熱交換されて蒸発された後、圧縮機4に吸い込まれ、再圧縮される。以下、同様の動作を繰り返すことによって、温水の製造に供される。
【0032】
貯湯タンク10に貯湯された温水は、必要時に貯湯タンク10から出湯側配管11Bを介して負荷側に給湯されることにより消費される。この際、給水側配管11Aからバスパス回路14を介してミキシング弁15に供給される20℃前後の水と、貯湯タンク10内に貯湯されていた90℃程度の高温水とがミキシング弁15で混合され、例えば60℃程度の温水に調整されて負荷側に供給されることになる。なお、この給湯時に、貯湯タンク10側から供給される湯量の割合が増加すると、早期に貯湯タンク10内に貯湯されていた温水がなくなる湯切れが発生し、沸き増し運転が行われることから、ヒートポンプ2および水ポンプ12の運転時間が長くなる。
【0033】
特に、貯湯タンク10の断熱性能が損なわれると、貯湯温水の湯温が低下され、ヒートポンプ2による沸き上げ運転や沸き増し運転の時間が長くなることから、ヒートポンプ2および水ポンプ12の1日当たりの平均運転時間を監視することにより、貯湯タンク10の断熱劣化の有無を判定することができる。そこで、本実施形態では、貯湯タンク断熱劣化検知回路16により、貯湯式給湯機1を設置してから予め設定された期間におけるヒートポンプ2の1日当たりの平均運転時間を過去の運転時間の実績値として記憶し、それ以後の1日当たりの平均運転時間を現在値として実績値と対比することによって、現在値が実績値に対して設定値を超えているか否かで、貯湯タンク10の断熱劣化の有無を判定するようにしている。
【0034】
具体的には、運転時間積算部17によりヒートポンプ2および水ポンプ12の運転時間を積算し、その積算時間に基づいて貯湯式給湯機1の設置時から予め設定された期間におけるヒートポンプ2および水ポンプ12の1日当たりの平均運転時間を過去の運転時間の実績値として記億部18により記億するとともに、現在の1日当たりの平均運転時間を現在値として現在値カウント部19でカウントし、この現在値と実績値とを判定部20で比較し、「(現在値−実績値)/実績値×100≧5%」を満たしたとき、貯湯タンク10の断熱劣化による湯温の低下が原因でヒートポンプ2および水ポンプ12の1日当たりの平均運転時間が延長されていると判断することにより、貯湯タンク10が断熱劣化していると判定し、それを表示部21に表示して使用者に警報するようにしている。
【0035】
斯くして、本実施形態によれば、貯湯タンク10が断熱劣化の虞のない貯湯式給湯機1の設置時から予め設定された期間内におけるヒートポンプ2の1日当たりの平均運転時間を求め、それを過去の運転時間の実績値として記憶し、それ以後の1日当たりの平均運転時間を現在値として過去の実績値と比較するようにしている。そして、現在値が実績値に対して設定値を超えた場合、貯湯タンク10内の湯温の低下が原因でヒートポンプ2の1日当たりの平均運転時間が延長されていると判断できることから、貯湯タンク10が断熱劣化していると判定することができる。
【0036】
このため、ヒートポンプ2の1日当たりの平均運転時間から貯湯タンク10の断熱劣化をセンサレスで精度よく確実に検知し、早期に断熱性能を回復させることによって、効率の良い運転ができる信頼性の高い貯湯式給湯機1を提供することができる。つまり、貯湯タンク10の断熱不良を早期に判定し、沸き上げ/沸き増し運転時間の延長や運転開始時間の早まりを防止できるともに、運転時間の延長を防止できるため、消費電力の増加を抑制し、常に効率の良い運転を行わせることができる。
【0037】
また、貯湯タンク10が断熱劣化していると判定された場合、それを表示する表示部21を備えているため、貯湯タンク断熱劣化検知回路16により貯湯タンク10の断熱劣化が検知された場合、表示部21を介して直ちに貯湯タンク10が断熱劣化していることを表示し、使用者に警報することができる。従って、使用者に対して貯湯タンク10の断熱劣化を認識させ、補修工事を促すことによって、早期に貯湯タンク10の断熱性能を回復させることができる。
【0038】
さらに、本実施形態によれば、貯湯式給湯機1を設置後の少なくとも1年間の運転時間を冬期、中間期および夏期の3期に分け、各々の期間の平均運転時間を過去の運転時間の実績値として記憶部18で記憶するように構成し、これに対応して現在値カウント部19も現在値を各期間の平均運転時間としてカウントするようにしているため、冬期、中間期および夏期毎にそれぞれの期間のヒートポンプ2の平均運転時間を実績値および現在値とすることにより、季節毎に変化する外気温や水温等を考慮した1日当たりの平均運転時間に基づいて、貯湯タンク10の断熱劣化の有無を判定することができる。その結果、ヒートポンプ2の平均運転時間による貯湯タンク10の断熱劣化の判定精度をより向上させることができる。
【0039】
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、上記実施形態では、ヒートポンプ2について、CO2冷媒を用いた超臨界サイクルのヒートポンプ2とした実施形態について説明したが、HFC冷媒を用いたヒートポンプ2に対しても同様に適用できることはもちろんである。
【0040】
また、上記実施形態では、ヒートポンプ2の1日当たりの平均運転時間の現在値が過去の実績値に対して5%以上増加している場合、設定値を超えていると判断し、貯湯タンク10が断熱劣化していると判定するようにした例について説明したが、この増加割合については、一例を示したに過ぎず、貯湯タンク10の大きさや断熱構造に応じて適宜変更されることは云うまでもない。
【符号の説明】
【0041】
1 貯湯式給湯機
2 ヒートポンプ(加熱装置)
3 貯湯タンクユニット
10 貯湯タンク
16 貯湯タンク断熱劣化検知回路
17 運転時間積算部
18 記億部
19 現在値カウント部
20 判定部
21 表示部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱装置によって製造された温水を貯湯する断熱構造の貯湯タンクを備えている貯湯式給湯機において、
前記給湯機の設置時から予め設定された期間における前記加熱装置の1日当たりの平均運転時間を過去の運転時間の実績値として記憶し、それ以後の1日当たりの平均運転時間を現在値として前記実績値と対比することにより、前記現在値が前記実績値に対して設定値を超えた場合、前記貯湯タンクが断熱劣化していると判定する貯湯タンク断熱劣化検知回路を備えていることを特徴とする貯湯式給湯機。
【請求項2】
前記貯湯タンク断熱劣化検知回路は、前記加熱装置の運転時間を積算する運転時間積算部と、該運転時間積算部からの積算時間に基づいて前記給湯機の設置時から予め設定された期間における前記加熱装置の1日当たりの平均運転時間を過去の運転時間の実績値として記憶する記億部と、前記運転時間積算部からの積算時間に基づいて現在の1日当たりの平均運転時間を現在値としてカウントする現在値カウント部と、前記記億部に記億されている実績値と前記現在値カウント部でカウントされた現在値とを比較し、前記現在値が前記実績値に対して設定値を超えているか否かで前記貯湯タンクの断熱劣化の有無を判定する判定部とから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の貯湯式給湯機。
【請求項3】
前記貯湯タンク断熱劣化検知回路は、前記貯湯タンクが断熱劣化していると判定された場合、それを表示する表示部を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の貯湯式給湯機。
【請求項4】
前記記億部は、前記給湯機を設置後の少なくとも1年間の運転時間を冬期、中間期および夏期の3期に分け、各々の期間の平均運転時間を過去の運転時間の実績値として記憶するように構成され、これに対応して前記現在値カウント部も現在値を前記各期間の平均運転時間としてカウントするように構成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の貯湯式給湯機。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−255568(P2012−255568A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127472(P2011−127472)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】