説明

貯湯式電気温水器

【課題】節電効果が得られるとともに、排水管に設けられた開放式の封水部の封水切れを防止できる貯湯式電気温水器を提供する。
【解決手段】排水管6に設けられた開放式の封水部7aへ電気温水器1の貯湯タンクからの膨張水を排出できる膨張水排水管8を備えた貯湯式電気温水器は、夏場や使用頻度が少ない時期に貯湯タンク内のヒーターをOFFしたり貯湯タンク内保温温度を下げて節電制御を行い、節電制御時においても一定期間毎に一定温度まで貯湯タンク内で湯を沸かし、貯湯タンクから膨張水を膨張水排水管8を通して封水部7aに供給し、封水部7aの封水切れを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯式電気温水器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されている貯湯式電気温水器では、「おまかせ節電」の開始時からの経過時間を計時するタイマーが設けられ、その経過時間が所定時間を越えると「おまかせ節電」が解除されてヒーターへの通電が開始され、貯湯タンク内の湯が沸かし上げられる構成となっており、「おまかせ節電」を実行しながら貯湯タンク内の湯中での菌繁殖を抑制できるものとしている。
また、特許文献2に開示されている先止め式貯湯給湯器では、湯沸し時に貯湯タンク内に発生するエアーを開閉手段で間欠的かつ強制的に排出する構成となっており、確実なエアー抜きができるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−222258号公報
【特許文献2】特開平9−42768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されている構成では、節電中においても所定時間を越えるとヒーターへ通電して貯湯タンク内で湯を沸かしているが、湯を沸かす時に発生する膨張水を排水管に設けられた開放式の封水部へ流すものではない。
また、上記特許文献2に開示されている構成では、間欠的に排出された湯を排水口の水封の水として利用することができるものであるが、貯湯給湯器の節電制御と連動するような構成とはなっていないものであった。
即ち、従来では、開放式の封水部へ貯湯タンクからの膨張水を排出できる膨張水排水管を備えた貯湯式電気温水器において、節電制御中には貯湯タンク内で湯が沸かされないために開放式の封水部へ膨張水が排出されなくなり、開放式封水部内の水が蒸発して水封ができなくなってしまい、下流側から臭気が排水管を通り上がってきて室内に臭気が漂ってしまうという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、節電制御中においても開放式の封水部へ膨張水を排出できて、開放式封水部の封水切れが防止できる貯湯式電気温水器の提供を目的とし、この目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
本発明は、排水管に設けられた開放式の封水部へ貯湯タンクからの膨張水を排出できる膨張水排水管を備えた貯湯式電気温水器であって、該電気温水器は、夏場や使用頻度が少ない時期に貯湯タンク内のヒーターをOFFしたり貯湯タンク内保温温度を下げて節電制御を行う制御回路を備えて構成され、該制御回路では、前記節電制御時においても一定期間毎に一定温度まで貯湯タンク内で湯を沸かし該貯湯タンクから前記膨張水排水管へ膨張水を排出する制御を行うことを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の貯湯式電気温水器では、節電制御中においても一定期間毎に貯湯タンク内で湯を沸かし、貯湯タンクから膨張水排水管へ膨張水を排出することができ、膨張水は開放式の封水部に供給される。
そのため、開放式の封水部内の封水が蒸発していても一定期間毎に膨張水が供給されることで、開放式の封水部の封水切れが良好に防止され、排水管側より臭気が上がってくることを確実に防ぐことができるものとなる。
また、一定期間毎に貯湯タンク内で湯を沸かす以外は節電制御により節電効果が得られるものである。
【0007】
また、本発明の貯湯式電気温水器において、前記一定温度は、貯湯タンク内で湯を沸かす通常温度より低い温度であるものとすることもできる。
こうすれば、所定期間毎に膨張水を排出する時の湯沸し温度は低い温度であるため、使用者が意図せずに使用しても、熱い湯が吐出されることがないため火傷等を負うことはない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】電気温水器の膨張水排水管を、洗面器の排水管の排水器具に接続した状態の概略外観構成図である。
【図2】図1の配管構成の一例を示す電気温水器の配管構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
図1は、電気温水器の膨張水排水管を洗面器の排水管の排水器具に接続した状態の概略構成図であり、図2は、図1の配管構成の一例を示す電気温水器の配管構成図である。
内部に湯を溜めることのできる貯湯タンク11を備えた電気温水器1には、給水管2と給湯管3が接続されており、また、電気温水器1から膨張水排水管8が延びており、この膨張水排水管8は、洗面器5の排水管6に継手6bを介し取り付けられた排水器具7に接続されている。また、洗面器5に設けられた水栓4に、分岐された給水管2aと電気温水器1からの給湯管3が接続されており、この水栓4で湯水が混合されて吐水口4aから吐水されるように構成されている。
【0010】
止水栓16が設けられて図示しない水道管に接続された給水管2は、給水口11aから電気温水器1内に入り、電気温水器1内で給水管2は、外部の水栓4に接続された給水管2aと、貯湯タンク11の下端に接続された給水管2bとに分岐されている。
また、貯湯タンク11の上端に接続された給湯管3は、出湯口11bから外部の水栓4に接続されている。
また、貯湯タンク11内で湯が沸かされた時に発生する膨張水を排出できる膨張水排水管8が備えられ、この膨張水排水管8は排水器具7に接続されている。
【0011】
排水器具7は、例えば洗面器5の排水管6に継手6bを介して接続されており、排水器具7の内部には開放式のトラップ形式の封水部7aが形成されており、この封水部7a内に封水が入っており、この封水部7aにより、排水管6の下流側に接続された下水管内の臭気が上昇して室内に入り込むのが防がれる。
なお、継手6bの上流側には、別途排水管6のトラップ部6aが形成されているため、このトラップ部6aで臭気の上昇が防がれて、洗面器5から臭気が室内に入り込むことが防がれている。
なお、この排水器具7内の封水部7aは開放式であるため、内部の封水が蒸発して無くなると、この排水器具7から下水管内の臭気が室内に入り込むこととなる。
【0012】
なお、給水管2内には、給水温度を検知するために給水サーミスタ9が設けられており、また、給水管2b内にはフローセンサー10が設けられている。このフローセンサー10は羽根車式の水量センサーであり、給水管2b内を流れる水の流量を検知できるものである。
貯湯タンク11内にはヒーター17が内蔵されており、また、貯湯タンク11の側面には温調サーミスタ12と過昇バイメタル13が取り付けられている。
この温調サーミスタ12および過昇バイメタル13は制御回路で構成された制御基板15に接続されており、制御基板15は操作基板14に接続されている。この操作基板14は、電気温水器1の表面に設けられた操作部1aの裏側に設けられたものである。
なお、制御基板15には、前記給水サーミスタ9およびフローセンサー10からの信号が入力される。
【0013】
このような構成において、水栓4が開かれて吐水口4aから吐水が行われると、給水管2,2bを通して貯湯タンク11内に水が流入し、同時に貯湯タンク11内のヒーター17に通電されて、ヒーター17により貯湯タンク11内で湯が沸かされ、通常はヒーター17により貯湯タンク11内で70℃〜80℃の湯が沸かされる。湯は給湯管3内に押し出されて水栓4に供給される。
なお、貯湯タンク11内で湯を沸かす時に、貯湯タンク11内部の圧力上昇により膨張水が発生し、この膨張水は膨張水排水管8を通り排水器具7内の封水部7aに供給されて、封水部7a内の封水となる。
【0014】
なお、温調サーミスタ12は貯湯タンク11内の湯の温度を検知し、これに基づき制御基板15では70℃〜80℃の湯温となるようにヒーター17への通電を制御する。また、貯湯タンク11内の湯温が90℃となった時には過昇バイメタル13が作動して、ヒーター17への通電を停止するように構成されている。
【0015】
なお、制御基板15では、給水サーミスタ9からの信号およびフローセンサー10からの信号により、給水温度と給水の流量を検出して、制御基板15内で節電制御を実行するための学習が行われるように設定されており、夏場等において給水サーミスタ9からの信号により給水温度が30℃を超えていると判定した場合には、制御基板15はヒーター17への通電をOFFして節電制御を実行する。
また、フローセンサー10からの信号により給水の流量を検出して、例えば3週間程度この給水の流量の変化を学習し、水栓の吐水口4aからの吐水量、即ち使用量が少ない時期を算出して、この使用頻度が少ない時期にも制御基板15はヒーター17への通電をOFFして節電制御を行うように構成されている。
【0016】
なお、冬場においては貯湯タンク11内の凍結を防ぐために、貯湯タンク11内の湯が4℃になった時にはヒーター17をONし、8℃になった状態でヒーター17をOFFして、凍結を防げる程度の温度に貯湯タンク11内を保持できるように制御基板15で制御するように構成されている。
【0017】
このように制御基板15内で学習制御して、夏場や使用頻度が少ない時期に貯湯タンク11内のヒーター17をOFFしたり、冬場では凍結が生じない程度の低温に保持する節電制御が実行されている時においても、制御基板15では、例えば1週間毎にヒーター17に通電して、約40℃の温度で貯湯タンク11内で湯を沸かすように制御する構成となっている。
この1週間毎に40℃程度に貯湯タンク11内で湯を沸かすと、貯湯タンク11内は満タン状態となっているため、40℃程度で湯を沸かしても貯湯タンク11内で圧力上昇により膨張水が発生し、膨張水は膨張水排水管8を通り排水器具7の封水部7a内に排出されることとなる。
【0018】
従って、1週間毎に封水部7aには膨張水が供給されるため、封水部7a内の封水が無くなることが良好に防がれ、排水管6側から臭気が室内に上がってくることがないように構成されている。
即ち、封水の蒸発により封水切れが生じると、下流の下水管内の臭気が封水部7aを通り室内に入り込んでくるため、一定期間毎に電気温水器1側で湯を沸かして膨張水を排水器具7の封水部7aに流して、封水部7aの封水切れを良好に防止できるように構成されている。
【0019】
なお、この一定期間毎に40℃程度の一定温度に貯湯タンク11内で湯が沸かされた時に、水栓4を操作して吐水口4aから吐水させて湯水を使用するような場合に、例えば夏場では、使用者は熱い湯が出てくると火傷等の虞があるが、40℃程度に沸かされた湯が出てきても、それほど熱いとは感じないために使用者が火傷等を負うこともない。
【0020】
このように本例の電気温水器1では、夏場や使用頻度が少ない時期には節電制御を行い、良好に節電効果を上げることができ、また、節電制御中においても一定期間毎に一定温度まで貯湯タンク11内で湯を沸かして、貯湯タンク11から膨張水排水管8へ膨張水を排出して、膨張水を良好に排水器具7の封水部7a内に溜めて封水切れを防止することができ、しかも膨張水を発生させるために、貯湯タンク11を沸かす際に40℃程度の低い温度でしか湯を沸かさないものであるため、水栓の吐水口4aからの吐水により使用者が火傷等を負うこともないものとなる。
【0021】
なお、このように制御基板15での制御設定で良好な制御が行えるために、給水管2或いは給湯管3内に弁等を設ける必要もなく、既存の電気温水器1の制御基板15の制御ソフトの変更により安価に対応できるものである。
【符号の説明】
【0022】
1 電気温水器
2,2a,2b 給水管
3 給湯管
4 水栓
4a 吐水口
5 洗面器
6 排水管
7 排水器具
7a 封水部
8 膨張水排水管
9 給水サーミスタ
10 フローセンサー
11 貯湯タンク
12 温調サーミスタ
13 過昇バイメタル
15 制御基板(制御回路)
17 ヒーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水管に設けられた開放式の封水部へ、貯湯タンクからの膨張水を排出できる膨張水排水管を備えた貯湯式電気温水器であって、
該貯湯式電気温水器は、夏場や使用頻度が少ない時期に貯湯タンク内のヒーターをOFFしたり貯湯タンク内保温温度を下げて節電制御を行う制御回路を備えて構成され、
該制御回路では、前記節電制御時においても、一定期間毎に一定温度まで貯湯タンク内で湯を沸かし、該貯湯タンクから前記膨張水排水管へ膨張水を排出する制御を行う
ことを特徴とする貯湯式電気温水器。
【請求項2】
前記一定温度は、貯湯タンク内で湯を沸かす通常温度より低い温度であることを特徴とする請求項1に記載の貯湯式電気温水器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−220600(P2011−220600A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89716(P2010−89716)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)