説明

貯湯式電気温水器

【課題】 節電効果を高めた貯湯式電気温水器を提供する。
【解決手段】 電気ヒータが設けられた貯湯タンクと、貯湯タンク内の湯温を検出するための温度検出器と、貯湯タンクからの出湯と給水とを混合する混合弁と、操作スイッチ及び人体感知手段の少なくともいずれかからの信号により電動弁に開閉信号を出力し、温度検出器からの検出湯温が目標湯温となるように電気ヒータを制御する制御手段とを備え、制御手段は、電動弁の開信号に基づいて目標湯温を上げて前記電気ヒータへの通電を開始すると共に、単位期間を所定時間に区分した時間帯毎に、電気温水器の使用を検出する検知手段の出力から得られる使用実績データを記憶し、電気ヒータへの通電を開始したときの時間帯における使用実績データに基づいて、通電開始後の目標湯温を切り替える制御をする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯式電気温水器に関する。
【背景技術】
【0002】
貯湯式電気温水器は、例えば手洗い器などに設置された水栓などへ適温水を供給する。
給水源から供給される水は、貯湯式電気温水器の給水口から定流量弁、電動弁、給水管を通って貯湯タンクに至る。貯湯タンクでは、供給された水が電気ヒータで暖められ、温められた湯は、出湯管、逆流防止弁を介して混合弁に至る。また、電動弁を通った水の一部は、給水管からバイパス管に分岐し貯湯タンクを介することなく逆流防止弁を介して混合弁に至る。混合弁で適温に混合された湯は、給湯管、給湯口、給湯配管を介して、水栓にいたり、吐出口から吐出される。尚、混合弁では出湯管から来た湯の温度がある程度変動してもバイパス管からの水との混合比を形状記憶合金などを利用した弁機構で変えることにより、吐出する湯の温度を略一定に保つことができる。
【0003】
このような貯湯式電気温水器に関し、電動弁が閉状態にあるときに湯温検出手段の検出結果により電気ヒータの制御をする第1の電気ヒータ制御手段と、電動弁が開状態にあるときに湯温検出手段の検出結果により電気ヒータの制御をする第2の電気ヒータ制御手段と、を備えた貯湯式電気温水器が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この貯湯式電気温水器では、湯の使用開始後、速やかに電気ヒータの通電を開始するので、適温出湯時間を長くすることができる。
【0004】
また、水温の制御方法として、単位期間を所定時間に区分した時間帯毎に、温度検出器で湯温を検出し、その時の水温変化量をもとに検出された温水使用量の大小を複数単位期間にわたり記憶し、この記憶データに基づいて、所定時間を温水使用量の大きい時間帯と小さい時間帯とに区別し、温水使用量が小さいと判別した時間帯の保温温度を温水使用量が大きいと判別した時間帯の保温温度よりも低くなるようにヒータ制御する方法がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−184016号公報
【特許文献2】特開2000−074494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された貯湯式電気温水器では、使用頻度に関わらず、いかなるときでも使用時は速やかにヒータへの通電がなされて所定の沸き上げ温度となるように制御される。このため、例えば少量の湯を繰り返して使用した結果として電動弁が開閉を繰り返すような使われ方に対しても、高い沸き上げ温度にすることで余分な電力が消費されてしまう。
【0007】
また、特許文献2で開示された水温制御では、湯水使用量に応じた時間帯学習による保温温度の制御をしているが、沸き上げ温度まで考慮したものでなく、また、使用頻度まで考慮した時間帯学習ではないため、余分な電力が消費されてしまう。
本発明の目的は、貯湯式電気温水器の使い勝手を損なうことなく、更なる節電効果を実現させた貯湯式電気温水器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、電気ヒータが設けられた貯湯タンクと、前記貯湯タンク内の湯温を検出するための温度検出器と、給水源からの水を前記貯湯タンクに導く給水管と、前記貯湯タンク内の湯水を吐水部に導く出湯管と、前記給水管の水を、前記貯湯タンクを介さずに前記出湯管に導くバイパス管と、前記バイパス管と前記出湯管との合流部に設けられた混合弁と、前記給水管及び前記出湯管の少なくともいずれかに配設される電動弁と、操作スイッチ及び人体感知手段の少なくともいずれかからの信号により前記電動弁に開閉信号を出力し、前記温度検出器からの検出湯温が目標湯温となるように電気ヒータを制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記電動弁の開信号に基づいて目標湯温を上げて前記電気ヒータへの通電を開始すると共に、単位期間を所定時間に区分した時間帯毎に、電気温水器の使用を検出する検知手段の出力から得られる使用実績データを記憶し、前記電気ヒータへの通電を開始したときの時間帯における使用実績データに基づいて、通電開始後の目標湯温を切り替えることを特徴とする貯湯式電気温水器である。
【0009】
これにより、電動弁へ開信号が出力されて貯湯タンクからの出湯が開始されると、目標湯温を上げて電気ヒータへの通電を開始して貯湯タンク内の湯温を上昇させるため、貯湯タンク内の湯温低下を抑えることができる。従って、電動弁が閉じている待機時のタンク内温度を下げておくことが可能であり、放熱を抑えて消費電力を下げることができる。
また、使用実績データに基いて目標湯温を切替えているため、使用実績が少ない場合は目標湯温を小さくすることで、タンク内温度を無駄に加熱することがなくなり、消費電力を抑えることができる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明の貯湯式電気温水器において、前記制御手段は、前記電動弁の閉状態における待機時の目標湯温を、前記記憶した各時間帯毎の使用実績データに基づいて切り替えることを特徴とする。
これにより、使用実績が高い時には、待機時の目標温度も上げることにより、出湯開始後の目標温度の上昇と相俟って、所定温度以上での吐水持続時間を確保することができ、使い勝手が向上する。
【0011】
第3の発明は、第1の発明の貯湯式電気温水器において、前記制御手段は、電気温水器の使用を検出する検知手段の出力から得られる使用頻度の大小データと、前記電気ヒータへの通電量から得られる使用水量の大小データとを、使用実績データとして記憶することを特徴とする。
これにより、使用実績を正確に判断することができ、消費電力の削減と所定温度以上での吐水持続時間を確保することによる使い勝手とを両立することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、貯湯式電気温水器の所定温度以上での吐水持続時間が短くなって使い勝手を損なうことなく、更なる節電を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第一実施形態に係る貯湯式電気温水器の構成図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る貯湯式電気温水器のブロック図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係る使用実績に応じたヒータ通電仕様例である。
【図4】本発明の第一実施形態に係るフローチャート例である。
【図5】本発明の第一実施形態に係る温度検出器の検知温度と時間の関係を示す図である。
【図6】本発明の第二実施形態に係る使用実績に応じたヒータ通電仕様例である。
【図7】本発明の第二実施形態に係るフローチャート例である。
【図8】本発明の第二実施形態に係る温度検出器の検知温度と時間の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
図1は、本発明の第一実施形態に係る貯湯式電気温水器の構成図である。図1に示す貯湯式電気温水器1は、手洗い器等に設置された自動水栓17へ適温水を供給することができる。
給水源(図示せず)から供給される水は、貯湯式電気温水器1の給水口2から定流量弁3、電動弁4、給水管5を通って貯湯タンク6に至る。貯湯タンク6では、供給された水は電気ヒータ13で温められ、温められた湯は出湯管7、逆流防止弁8aを介して混合弁10に至る。
【0016】
また、電動弁4を通った水は、給水管5からバイパス管9に分岐し逆流防止弁8bを介して混合弁10に至る。混合弁10で適温に混合された湯は、給湯管11、給湯口12、給湯配管16を介し、自動水栓17に至り、吐出口19から吐出される。なお、混合弁10は、出湯管7からきた湯の温度がある程度変動しても、バイパス管9からの水との混合比を形状記憶合金などを利用した弁機構により変えることにより、吐出する湯の温度を略一定に保つことが出来る。
【0017】
上記構成において、使用者が自動水栓17に取り付けられた操作スイッチ18をONすると、貯湯式電気温水器1の制御手段15を介して電動弁4が開き、水及び湯が押し出され混合弁10で適温となった温水が、吐出口19より吐出される。そして、使用者が操作スイッチ18をOFFすると、適温水の吐出は停止する。なお、操作スイッチ18を光電センサ等の人体感知手段としてもよい。
【0018】
電気ヒータ13は、後述する図4に示されるように、電動弁4が開となった後(ステップ11)は、貯湯タンク6に取り付けられた温度検出器14で検出した温度(Ta)以上の温度を目標温度として通電開始する(ステップ12)。通電後は、所定の温度を超えたか否かを判断し、所定の温度を超えると通電停止するが(ステップS19)、超えない限りは電動弁4が閉じるまで通電を継続する。なお、所定の温度は、使用実績によって異なり、Ta1またはTa2またはTa3またはTa4となる。
【0019】
図2は、本発明の第一実施形態に係る貯湯式電気温水器のブロック図である。
この図では、自動水栓17のブロックおよび貯湯式電気温水器1のブロックが併せて例示されている。
貯湯式電気温水器1は、吐水のオンオフ制御及び流量制御を行うための電動弁4と、貯湯タンク内の温水温度を検出するための温度検出器14と、貯湯タンク内の水を加熱するための電気ヒータ13と、これらの電動弁4、温度検出器14および電気ヒータ13等を制御する制御手段15と、を備えている。
【0020】
制御手段15は、自動水栓17に設けられた操作スイッチ18の操作信号を取り込むための入力回路20と、電動弁4を駆動するための出力回路21aと、入力回路20に取り込まれた信号をもとに出力回路21aへの制御信号を発生させるための電動弁制御回路22と、を有する。そのほか、制御手段15は、電気ヒータ13を駆動するための出力回路21bと、使用実績データを蓄積する記憶部23と、電気ヒータ制御回路24と、を有する。記憶部23は、使用頻度データ23aの蓄積部分と、使用水量データ23bの蓄積部分とを備える。
電気ヒータ制御回路24は、電動弁制御回路22からの電動弁開閉信号をうけた後、記憶部23からの使用実績データに応じた4つの目標温度の何れかと温度検出器14からの信号に基いて、出力回路21bを介して電気ヒータ13を入切する。
【0021】
自動水栓17の操作スイッチ18からの操作信号は、制御手段15の入力回路20を介し、電動弁制御回路22で電動弁開閉信号に変換され、出力回路21aへと伝わり電動弁4を開または閉とする。また、電動弁制御回路22から出力される電動弁開閉信号は、電気ヒータ制御回路24及び記憶部23に対しても送信される。
【0022】
記憶部23は演算手段を有し、単位期間を区分した所定時間が経過する毎に、その所定時間帯における使用頻度データ23a、使用水量データ23bの判定を行う。例えば、記憶部23は所定時間の間に電動弁制御回路22から送られてきた電動弁開閉信号の回数xを所定値aと比較することにより、その所定時間内の使用頻度を次の(1)、(2)のように判断する。
(1)x≦aのとき・・・使用頻度小
(2)a<xのとき・・・使用頻度大
【0023】
また、例えば、所定時間の間に電気ヒータ制御回路24によって電気ヒータ13に通電された積算通電時間をKuとし、この積算通電時間Kuと所定値cとを比較することにより、その所定時間内の使用水量を次の(3)、(4)のように判断する。
(3)Ku≦cのとき・・・使用水量小
(4)c<Kuのとき・・・使用水量大
【0024】
使用頻度の大小データは使用頻度データ23aの蓄積部分に、使用水量の大小データは使用水量データ23bの蓄積部分に使用実績データとして、単位期間を所定時間に区分した各時間帯ごとに個別に蓄積される。単位期間とは、例えば、1日、半日という比較的長い時間のスパンであり、各時間帯とは、前記単位期間をさらに細かく区分けした時間帯である。ただし、本発明はこの例示に限られるものではなく、用途に応じて単位期間および各時間帯の長さは適宜変更できる。
【0025】
各時間帯の使用実績データは、複数の単位期間に亘って記憶させておくことが好ましい。この場合、単位期間が経過するごとに最も過去の単位期間の使用実績データを削除し、新たに得られた使用実績データを反映させた上で、例えば、複数の単位期間に亘って記憶された各時間帯の使用実績データの内、多数を占める使用実績データをその時間帯における最新の使用実績データとする。そして、制御手段15における電気ヒータ制御手段24は、最新の使用実績データに基づいて、電気ヒータ13を以下のように通電させる。
【0026】
以下、具体例を示す。
図3は、本発明の第一実施形態に係る使用実績に応じたヒータ通電仕様例である。
ここで貯湯タンク保温温度Ta1、Ta2、Ta3、Ta4は、各使用実績時間帯において、吐水開始後に貯湯タンク内の湯温がこれらの温度になるまで沸き上げを継続するという目標温度(保温温度)である。Ta1、Ta2、Ta3、Ta4の温度の大小関係は、Ta4>Ta3>Ta2>Ta1である。
【0027】
各所定時間帯は、使用頻度の大小と使用水量の大小に応じて4つに場合分けされ、その場合分けに応じて、沸き上げの目標温度となる貯湯タンク保温温度が割り当てられる。例えば、使用頻度「小」且つ使用水量「大」の時の時間帯は、ヒータ通電仕様は図3中の使用実績時間帯「2」に従うので、貯湯タンク保温温度がTa3になるようにヒータは制御される。
【0028】
図4は、本発明の第一実施形態に係るフローチャートである。
まず、電動弁4が「開」となったら(ステップS11)電気ヒータ13をONにして(ステップS12)、その時がどのような使用実績時間帯に該当するかをステップS12で判断する。ここで、Taは検出された貯湯タンク内の湯温である。
【0029】
図4で分岐されるフローにより、図3の各ヒータ通電仕様が貯湯式電気温水器1に反映されたものとなっている。
例えば過去の使用実績データから、使用頻度・使用水量が共に「大」の時間帯は使用実績時間帯1だと判断される。そして、使用実績時間帯1における使用であれば、貯湯タンク内の湯温がTa4になるように電気ヒータを次のように制御する。
まず、貯湯タンク内の湯温Taと使用実績時間帯1における貯湯タンク内湯温Ta4との比較がされて(ステップS14)、Ta<Ta4ならば電動弁4が「開」か「閉」かの判断がなされる(ステップS18)。Ta≧Ta4ならば電気ヒータ13の通電をOFFにした上で(ステップS19)、電動弁4が「開」か「閉」かの判断がなされる(ステップS18)。電動弁4が「開」ならば、ステップS14にまで遡る。電動弁4が「閉」ならば、電気ヒータ13が通電状態の場合は電気ヒータ13をOFFにした上で(ステップS20)、使用実績データの更新がなされる(ステップS21)。
【0030】
使用実績時間帯2だと判断されると、貯湯タンク内の湯温Taと使用実績時間帯2における貯湯タンク内湯温Ta3との比較がされて(ステップS15)、Ta<Ta3ならば電動弁4が「開」か「閉」かの判断がなされる(ステップS18)。Ta≧Ta3ならば電気ヒータ13の通電をOFFにした上で(ステップS19)、電動弁4が「開」か「閉」かの判断がなされる(ステップS18)。電動弁4が「開」ならば、ステップS15にまで遡る。電動弁4が「閉」ならば、電気ヒータ13が通電状態の場合は電気ヒータ13をOFFにした上で(ステップS20)、使用実績データの更新がなされる(ステップS21)。
【0031】
使用実績時間帯3だと判断されると、貯湯タンク内の湯温Taと使用実績時間帯3における貯湯タンク内湯温Ta2との比較がされて(ステップS16)、Ta<Ta2ならば電動弁4が「開」か「閉」かの判断がなされる(ステップS18)。Ta≧Ta2ならば電気ヒータ13の通電をOFFにした上で(ステップS19)、電動弁4が「開」か「閉」かの判断がなされる(ステップS18)。電動弁4が「開」ならば、ステップS16にまで遡る。電動弁4が「閉」ならば、電気ヒータ13が通電状態の場合は電気ヒータ13をOFFにした上で(ステップS20)、使用実績データの更新がなされる(ステップS21)。
【0032】
使用実績時間帯4だと判断されると、貯湯タンク内の湯温Taと使用実績時間帯1における貯湯タンク内湯温Ta1との比較がされて(ステップS17)、Ta<Ta1ならば電動弁4が「開」か「閉」かの判断がなされる(ステップS18)。Ta≧Ta1ならば電気ヒータ13の通電をOFFにした上で(ステップS19)、電動弁4が「開」か「閉」かの判断がなされる(ステップS18)。電動弁4が「開」ならば、ステップS17にまで遡る。電動弁4が「閉」ならば、電気ヒータ13が通電状態の場合は電気ヒータ13をOFFにした上で(ステップS20)、使用実績データの更新がなされる(ステップS21)。
【0033】
使用実績データの更新について詳述する。
まず使用頻度については、電動弁4が開した回数をカウントアップしていく。そして、所定時間帯終了時の電磁弁開回数と所定値aを比較し使用頻度の大小を決める。決定された使用頻度は、記憶部23の使用頻度データ23aの蓄積部分に格納される。
【0034】
次に、使用水量については前述した通り、所定時間の間に電気ヒータ制御回路24によって電気ヒータ13に通電された積算通電時間Kuを所定値cと比較することで使用水量の大小を決める。決定された使用頻度は記憶部23の使用水量データ23bの蓄積部分に格納される。所定時間帯の中で、現在格納されている使用水量より多い使用水量となった場合はそちらに更新される。
【0035】
図5は、本発明の第一実施形態に係る温度検出器の検知温度と時間の関係を示すグラフである。
ここで、図中の「a」は使用開始時間を示し、「b」は使用実績時間帯4における、給水管5からの水が貯湯タンク6の湯温検出手段(温度検出器)14に達する時間を示し、「TM」は出湯温度を一定に保つために必要な貯湯タンク6内の最低湯温を示す。また、図の横軸は時間を示し縦軸は貯湯タンク6内の湯温Taを示す。
【0036】
まず、貯湯タンク内の湯温と湯切れの関係について説明する。
上述したように、混合弁10では出湯管7からきた湯の温度がある程度変動しても吐出口19から吐出する湯の温度を一定に保つことが出来るが、そのためには貯湯タンク6内の湯温がある値以上必要である。ここではその温度をTMとしている。湯温がTMを下ると温かい水が出湯されないことになり、このTMよりも温度が下がることがいわゆる湯切れを示している。従って「時点aから貯湯タンク6内の湯温がTMを下るまでの時間」が適温出湯可能時間となる。つまり、沸き上げ温度が高いほど「時点aから貯湯タンク6内の湯温がTMを下るまでの時間」を長く確保でき、ひいては湯切れを防ぐことにつながる。
【0037】
使用実績データ1に基づくヒータ通電仕様では、電動弁4が「開」となったら(時点a)、湯温がTa4になるように電気ヒータ13の通電を開始する(ステップS14)。使用実績データ1は、使用頻度が最も高く使用水量も最も多い時間帯なので、4つの時間帯の中で最も湯切れの心配がある。よって、貯湯タンク内の湯温が他の使用実績時間帯よりも高くなるようなヒータ通電が必要となる。よって、貯湯タンク内湯温を設定レベル中最高温度であるTa4とする。その結果、適温出湯可能時間が最も長くなる。
【0038】
次に、使用実績データ2は「使用頻度:小・使用水量:大」の時間帯であり、使用実績データ3は「使用頻度:大・使用水量:小」の時間帯である。使用実績データ2は使用頻度は少なくても1回当たりの使用水量が多い。一方、使用実績データ3は使用水量が少ないため、ある程度連続して使われない限りは湯切れの心配はない。よって、使用実績データ2の方が使用実績データ3より湯切れの可能性が高いとみなし、貯湯タンクの湯温についても使用実績データ2の方を使用実績データ3より高温に設定した。
【0039】
使用実績データ4は、使用頻度も使用水量も少ない時間帯なので、4つの時間帯の中で最も湯切れの心配がない。よって、最も低い温度でのヒータ通電でも問題ないことより、貯湯タンク内の湯温をTa1とした。
【0040】
なお、電動弁4が「開」となると(時点a)、貯湯タンク6へは給水管5を通じて冷たい水が入ってくるが、貯湯タンク6の底部には邪魔板(図示せず)が設けられているため、その入ってきた水は直ぐには温度検出器14の近傍には至らず、温度検出器14による検出温度には反映されない。その間に電気ヒータ13に通電されて加熱されることで、温度検出器14で検出される温度はTa1〜Ta4まで上昇することが可能である。しかし、給水条件のばらつき等により、温度検出器14で検出される温度がTa1〜Ta4に至る前に給水管かから入ってきた水が温度検出器14に至ることがあり、その場合は、そこから温度検出器14の検出温度は下がり始める。このように、Ta1〜Ta4は、電動弁4を開した後における電気ヒータ制御回路24における目標温度であり、図5のように温度検出器14の検出温度が必ずTa1〜Ta4まで上昇するとは限らないものである。
【0041】
なお、図3に例示した使用頻度の大小データおよび使用水量の大小データは、単位期間を所定時間に区分した時間帯毎に記憶部23内に複数の単位期間にわたり記憶される。このようなデータは、上述した(1)〜(4)により絶えず最新のデータに更新される。そして、各時間帯におけるヒータ通電の制御は、記憶された使用実績データに基づいてなされる。
このような電気温水器によれば、使用頻度と使用水量に基づく使用実績に応じたヒータ通電がなされる。これにより、充分な節電効果を得ることができる。
【0042】
図1と図2によって説明される自動水栓及び貯湯式電気温水器において、前述した使用実績データを用いて待機時における貯湯タンク6内の湯温の保温温度を制御して節電を図ることも出来る。この実施形態に第二実施形態として以下に説明する。
【0043】
以下、具体例を示す。
図6は本発明の第二実施形態に係る使用実績に応じたヒータ通電仕様例である。
ここでTa1、Ta2、Ta3、Ta4は、各使用実績時間帯の待機時における貯湯タンク6内の湯温がこれらの温度になるようにヒータ通電を行うという狙い値である。Ta1、Ta2、Ta3、Ta4の温度の大小関係は、Ta4>Ta3>Ta2>Ta1である。
【0044】
各所定時間帯には、使用頻度の大小と使用水量の大小に応じて4つに場合分けしたものの内の1つが使用実績データとして割り当てられる。
割り当てられた使用実績データに基づいた貯湯タンク保温温度にてヒータ通電を行う。例えば、使用頻度小且つ使用水量大の時の時間帯は図6中の使用実績時間帯2に該当するので、待機時の貯湯タンク6内の保温温度がTa3になるようにヒータは制御される。
【0045】
図7は、本発明の第二実施形態に係るフローチャートである。
まず、貯湯式電気温水器1は、待機状態にあるその時間帯が使用実績時間帯1〜4の何れに該当するかをステップS22で判断する。ここで、Taは、検出された貯湯タンク内の湯温である。
図7で分岐されるフローにより、図6の各ヒータ通電仕様が貯湯式電気温水器1に反映されたものとなっている。
例えば過去の使用実績データから、使用頻度・使用水量が共に多い時間帯は使用実績時間帯1と判断される。そして、待機状態にあるその時間帯が使用実績時間帯1であれば、貯湯タンク内の湯温がTa4になるように電気ヒータを次のように制御する。
【0046】
まず、貯湯タンク内の湯温Taと使用実績時間帯1における貯湯タンク内湯温Ta4との比較がされて(ステップS23)、Ta<Ta4ならば電気ヒータ13の通電がONされ(ステップ23a)、電動弁4が「開」か「閉」かの判断がなされる(ステップS27)。Ta≧Ta4ならば電気ヒータ13の通電をOFFにした上で(ステップS28)、電動弁4が「開」か「閉」かの判断がなされる(ステップS27)。電動弁4が「閉」ならば、ステップS22にまで遡る。電動弁4が「開」ならば電気ヒータ13の通電がONされ(ステップ27a)、再びその時がどの使用実績時間帯に該当するかを判断する(ステップS29)。
ステップS29において使用実績時間帯が1と判断されれば、貯湯タンク内の湯温Taは使用実績時間帯1の待機時保温温度であるTa4にTa4’を加えた「Ta4+Ta4’」と比較される。Ta<Ta4+Ta4’ならば電動弁4が「開」か「閉」かの判断がなされる(ステップS34)。Ta≧ Ta4+Ta4’ならば電気ヒータ13の通電をOFFにした上で、電動弁4が「開」か「閉」かの判断がなされる(ステップS34)。電動弁4が「開」ならば、ステップS30にまで遡る。電動弁4が「閉」ならば、使用実績データの更新がなされる(ステップS36)。
【0047】
使用実績時間帯2だと判断されると、貯湯タンク内の湯温Taと使用実績時間帯2における貯湯タンク内湯温Ta3との比較がされて(ステップS24)、Ta<Ta3ならば電気ヒータ13の通電がONされ(ステップ23a)、電動弁4が「開」か「閉」かの判断がなされる(ステップS27)。Ta≧Ta3ならば電気ヒータ13の通電をOFFにした上で(ステップS28)、電動弁4が「開」か「閉」かの判断がなされる(ステップS27)。電動弁4が「閉」ならば、ステップS22にまで遡る。電動弁4が「開」ならば電気ヒータ13の通電がONされ(ステップ27a)、再びその時がどの使用実績時間帯に該当するかを判断する(ステップS29)。
【0048】
ステップS29において使用実績時間帯が2と判断されれば、貯湯タンク内の湯温Taは使用実績時間帯2の待機時保温温度であるTa3にTa3’を加えた「Ta3+Ta3’」と比較される。Ta<Ta3+Ta3’ならば電動弁4が「開」か「閉」かの判断がなされる(ステップS34)。Ta≧ Ta3+Ta3’ならば電気ヒータ13の通電をOFFにした上で、電動弁4が「開」か「閉」かの判断がなされる(ステップS34)。電動弁4が「開」ならば、ステップS31にまで遡る。電動弁4が「閉」ならば、使用実績データの更新がなされる(ステップS36)。
【0049】
使用実績時間帯3だと判断されると、貯湯タンク内の湯温Taと使用実績時間帯3における貯湯タンク内湯温Ta2との比較がされて(ステップS25)、Ta<Ta2ならば電気ヒータ13の通電がONされ(ステップ23a)、電動弁4が「開」か「閉」かの判断がなされる(ステップS27)。Ta≧Ta2ならば電気ヒータ13の通電をOFFにした上で(ステップS28)、電動弁4が「開」か「閉」かの判断がなされる(ステップS27)。電動弁4が「閉」ならば、ステップS22にまで遡る。電動弁4が「開」ならば電気ヒータ13の通電がONされ(ステップ27a)、再びその時がどの使用実績時間帯に該当するかを判断する(ステップS29)。
【0050】
ステップS29において使用実績時間帯が3と判断されれば、貯湯タンク内の湯温Taは使用実績時間帯3の待機時保温温度であるTa2にTa2’を加えた「Ta2+Ta2’」と比較される。Ta<Ta2+Ta2’ならば電動弁4が「開」か「閉」かの判断がなされる(ステップS34)。Ta≧ Ta2+Ta2’ならば電気ヒータ13の通電をOFFにした上で、電動弁4が「開」か「閉」かの判断がなされる(ステップS34)。電動弁4が「開」ならば、ステップS31にまで遡る。電動弁4が「閉」ならば、使用実績データの更新がなされる(ステップS36)。
【0051】
使用実績時間帯4だと判断されると、貯湯タンク内の湯温Taと使用実績時間帯4における貯湯タンク内湯温Ta1との比較がされて(ステップS26)、Ta<Ta1ならば電気ヒータ13の通電がONされ(ステップ23a)、電動弁4が「開」か「閉」かの判断がなされる(ステップS27)。Ta≧Ta1ならば電気ヒータ13の通電をOFFにした上で(ステップS28)、電動弁4が「開」か「閉」かの判断がなされる(ステップS27)。電動弁4が「閉」ならば、ステップS22にまで遡る。電動弁4が「開」ならば電気ヒータ13の通電がONされ(ステップ27a)、再びその時がどの使用実績時間帯に該当するかを判断する(ステップS29)。
【0052】
ステップS29において使用実績時間帯が1と判断されれば、貯湯タンク内の湯温Taは使用実績時間帯1の待機時保温温度であるTa1にTa1’を加えた「Ta1+Ta1’」と比較される。Ta<Ta1+Ta1’ならば電動弁4が「開」か「閉」かの判断がなされる(ステップS34)。Ta≧ Ta1+Ta1’ならば電気ヒータ13の通電をOFFにした上で、電動弁4が「開」か「閉」かの判断がなされる(ステップS34)。電動弁4が「開」ならば、ステップS31にまで遡る。電動弁4が「閉」ならば、使用実績データの更新がなされる(ステップS36)。使用実績データの更新は前述した通りである。
【0053】
図8は、本発明の第二実施形態に係る温度検出器の検知温度と時間の関係を示すグラフである。
ここで、図中の「a」は使用開始時間を示し、「b」は各使用実績時間帯における、給水管5からの水が貯湯タンク6の湯温検出手段(温度検出器)14に達する時間を示し、「TM」は出湯温度を一定に保つために必要な貯湯タンク6内の最低湯温を示す。また、図の横軸は時間を示し縦軸は貯湯タンク6内の湯温Taを示す。貯湯タンク内の湯温と湯切れの関係は前述した通りである。
【0054】
使用実績データ1に基づくヒータ通電仕様では、待機時における貯湯タンク内の湯温がTa4になるように電気ヒータ13の通電を制御する。使用実績データ1は、使用頻度が最も高く使用水量も最も多い時間帯なので、4つの時間帯の中で最も湯切れの心配がある。よって、貯湯タンク内の湯温が他の使用実績時間帯よりも高くなるようなヒータ通電が必要となる。よって、貯湯タンク内湯温を設定レベル中最高温度であるTa4とする。その結果、適温出湯可能時間が最も長くなる。
【0055】
次に、使用実績データ2は「使用頻度:小・使用水量:大」の時間帯であり、使用実績データ3は「使用頻度:大・使用水量:小」の時間帯である。使用実績データ2は使用頻度は少なくても1回当たりの使用水量が多い。一方、使用実績データ3は使用水量が少ないため、ある程度連続して使われない限りは湯切れの心配はない。よって、使用実績データ2の方が使用実績データ3より湯切れの可能性が高いとみなし、貯湯タンクの湯温についても使用実績データ2の方を使用実績データ3より高温に設定した。
【0056】
使用実績データ4は、使用頻度も使用水量も少ない時間帯なので、4つの時間帯の中で最も湯切れの心配がない。よって、最も低い温度でのヒータ通電でも問題ないことより、貯湯タンク内の湯温をTa1とした。
【0057】
なお、図6に例示した電気温水器の使用頻度の大小データおよび使用水量の大小データは、単位期間を所定時間に区分した時間帯毎に、記憶部23内に複数の単位期間にわたり記憶される。このようなデータは、上述した(1)〜(4)により絶えず最新のデータに更新される。そして、各時間帯におけるヒータ通電の制御は、記憶された使用実績データに基づいてなされる。このような電気温水器によれば、使用頻度と使用水量に基づく使用実績に応じたヒータ通電がなされる。これにより、充分な節電効果を得ることができる。
【0058】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0059】
1 貯湯式電気温水器
2 給水口
3 定流量弁
4 電動弁
5 給水管
6 貯湯タンク
7 出湯管
8a、8b 逆流防止弁
9 バイパス管
10 混合弁
11 給湯管
12 給湯口
13 電気ヒータ
14 温度検出器
15 制御手段
16 給湯配管
17 自動水栓
18 操作スイッチ
19 吐出口
20 入力回路
21a、21b 出力回路
22 電動弁制御回路
23 記憶部
23a 使用頻度データ
23b 使用水量データ
24 電気ヒータ制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気ヒータが設けられた貯湯タンクと、
前記貯湯タンク内の湯温を検出するための温度検出器と、
給水源からの水を前記貯湯タンクに導く給水管と、
前記貯湯タンク内の湯水を吐水部に導く出湯管と、
前記給水管の水を、前記貯湯タンクを介さずに前記出湯管に導くバイパス管と、
前記バイパス管と前記出湯管との合流部に設けられた混合弁と、
前記給水管及び前記出湯管の少なくともいずれかに配設される電動弁と、
操作スイッチ及び人体感知手段の少なくともいずれかからの信号により前記電動弁に開閉信号を出力し、前記温度検出器からの検出湯温が目標湯温となるように電気ヒータを制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記電動弁の開信号に基づいて目標湯温を上げて前記電気ヒータへの通電を開始すると共に、単位期間を所定時間に区分した時間帯毎に、電気温水器の使用を検出する検知手段の出力から得られる使用実績データを記憶し、前記電気ヒータへの通電を開始したときの時間帯における使用実績データに基づいて、通電開始後の目標湯温を切り替えることを特徴とする貯湯式電気温水器。
【請求項2】
前記制御手段は、前記電動弁の閉状態における待機時の目標湯温を、前記記憶した各時間帯毎の使用実績データに基づいて切り替えることを特徴とする請求項1記載の貯湯式電気温水器。
【請求項3】
前記制御手段は、電気温水器の使用を検出する検知手段の出力から得られる使用頻度の大小データと、前記電気ヒータへの通電量から得られる使用水量の大小データとを、使用実績データとして記憶することを特徴とする請求項1記載の貯湯式電気温水器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−69565(P2011−69565A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−221984(P2009−221984)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】