説明

貯留設備

【課題】タンク内や供給管内での安定液による閉塞を防ぐと共に、搬送性を向上させた貯留設備を提供する。
【解決手段】蛇腹状に折り畳み可能で、掘削の際に使用される安定液を貯留するフレキシブルタンク1と、このフレキシブルタンク1を支持するフレーム2と、フレキシブルタンク1に貯留された安定液を搬送する送液管3と、を備えた貯留設備であって、前記フレーム2は、支柱21と、この支柱21に取付けられると共に、前記フレキシブルタンク1を保持する上部横架部材22と、を備え、前記フレームの支柱21は、上下方向にスライド自在な伸長部21Aと、この伸長部21Aを収納可能な脚部21Bと、を有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯留設備に関し、詳しくは掘削の際に使用される安定液を貯留し、現場へ安定液を供給する貯留設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、下水道管や函渠(ボックスカルバート)などの管体を溝孔内に沈設して埋設するに際して、安定液を充填しながら掘削溝を掘削するとともに、人孔や管体等を沈設していくが、この安定液としてベントナイト泥水などの粘性の高い溶液が使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許3403674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現地プラントで製造された安定液は、貯留タンク内でストックされるが、しかしながら、ベントナイト泥水は静置すると流動性を失うという「チキソトロピー性」を有しているために、静置状態が長時間にわたる場合に、貯留タンク内や供給管内でベントナイトが固化して閉塞させてしまうという問題があった。
また、貯留タンクは大型のため、各工事現場への搬送性がよくないという問題もあった。
【0004】
そこで、本発明の主たる課題は、タンク内や供給管内での安定液による閉塞を防ぐと共に、搬送性を向上させた貯留設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決した本発明は、次のとおりである。
<請求項1記載の発明>
請求項1記載の発明は、蛇腹状に折り畳み可能で、掘削の際に使用される安定液を貯留するフレキシブルタンクと、このフレキシブルタンクを支持するフレームと、フレキシブルタンクに貯留された安定液を搬送する送液管と、を備えた貯留設備であって、前記フレームは、支柱と、この支柱に取付けられると共に、前記フレキシブルタンクを保持する上部横架部材と、を備え、前記フレームの支柱は、上下方向にスライド自在な伸長部と、この伸長部を収納可能な脚部とを有する構成とされた、ことを特徴とする貯留設備である。
【0006】
(作用効果)
蛇腹状に折り畳み可能なフレキシブルタンクが、上下方向にスライド自在な伸長部と、この伸長部を収納可能な脚部とを有する支柱を備えたフレームに取付けられた構成により、貯留設備の搬送の際には、支柱の脚部内に伸長部を納めることによって、フレームに支持されたフレキシブルタンクを折り畳み、貯留設備全体をコンパクト化することができ、その結果、貯留設備の搬送の容易化を図ることができる。
【0007】
<請求項2記載の発明>
請求項2記載の発明は、前記送液管には、前記フレキシブルタンク内の下部に安定液を戻す戻し配管が取付けられた、請求項1記載の貯留設備である。
【0008】
(作用効果)
送液管には、フレキシブルタンク内の下部に安定液を戻す戻し配管が取付けられていることにより、フレキシブルタンク内には常に安定液の流れが生じ、安定液の流動性が確保される。そのため、タンク内や供給管(送液管)内でベントナイトが固化して閉塞させてしまうという問題が生じない。また、タンク内での安定液の流動性を確保するための、攪拌設備等を設ける必要がないため設備コストが掛からない。
【0009】
<請求項3記載の発明>
請求項3記載の発明は、前記送液管及び戻し配管には、それぞれピンチ弁が取付けられ、このピンチ弁によって安定液の流量制御がされる構成とされた、請求項1又は2記載の貯留設備である。
【0010】
(作用効果)
送液管及び戻し配管には、それぞれピンチ弁が取付けられ、このピンチ弁によって安定液の流量制御がされる構成となっていることにより、手動式の弁とは異なり遠隔操作が可能であるため、作業効率を向上させることができる。
【0011】
<請求項4記載の発明>
請求項4記載の発明は、前記フレキシブルタンクの上方の開口を覆うように、蓋が取付けられた、請求項1乃至3のいずれか1項記載の貯留設備である。
【0012】
(作用効果)
フレキシブルタンクの上方の開口を覆うように、蓋が取付けられていることにより、安定液がフレキシブルタンクから溢れたり、安定液の飛沫が外部に飛び出すこと等を防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、タンク内や供給管内での安定液による閉塞を防ぐと共に、搬送性を向上させることができる等の利点がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図5に基づき説明する。なお、図1は本発明に係る貯留設備の概略図であり、図2は本発明に係る貯留設備の正面図であり、図3はその平面図であり、図4はその縦断面図及び正面図であり、図5は本発明に係る貯留設備の収納時の正面図である。
【0015】
本発明に係る貯留設備は、上下方向に伸縮自在なフレキシブルタンク1と、このフレキシブルタンク1を支持するフレーム2と、フレキシブルタンク1に貯留された安定液を現場(例えば掘削溝)に供給する送液管3と、この送液管3から分岐され、フレキシブルタンク1内に安定液を戻す戻し配管4と、を備えている。
フレキシブルタンク1は、筒状のタンク本体11と、このタンク本体11の下端部に設けられた底部ホッパー12と、を備えている。タンク本体11の側壁は蛇腹状に折り畳みが可能になっており、上下方向に伸縮自在となっている。
【0016】
タンク本体11の材質としては、不透水性と可撓性を有するシート素材からなっており、布製シートや合成樹脂製シート等を考えることができる。合成樹脂製シートとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどからなるものを考えることができる。また、このタンク本体11には、円筒形状であることを維持するために所望の間隔をおいて複数箇所に針金やリング等の骨部材13,13,…が取付けられている。これらの骨部材13,13,…は、タンク本体11の側壁に取付けられたシート片14,14,…によってタンク本体11に固定されている。このシート片14,14,…の材質としては、タンク本体11の材質と同材を用いることができる。タンク本体11の側壁上端には、リング部材15が取付けられており、このリング部材15が、後述する上部横架部材22に設けられたシャックル27,27,…に保持されていることにより、タンク本体11の側壁が起立するようになっている。
【0017】
上記のようなタンク本体11の材質及び構成によって、施工時には図2に示すように、タンク本体11の側壁を伸長させて安定液を貯留し、搬送時には図5に示すように、タンク本体11を折り畳みコンパクトにすることができる。なお、本実施の形態におけるタンク本体11の形状としては、円筒形であるがこれに限られず、直方体、立方体又は底面が多角形の筒状体でもよい。
【0018】
底部ホッパー12は、筒状のタンク本体11の下端部に設けられた漏斗状部材であり、出口側には、送液管3が連結されている。この底部ホッパー12の側壁には、後述するフレーム2を構成する支柱21,21,…の脚部21B,21B,…の上端部が固定されている。また、底部ホッパー12の側壁には、後述する戻し配管4の出口が連結されている。
【0019】
フレーム2は、複数の支柱21,21,…と、タンク本体11を支持する上部横架部材22と、支柱21,21,…の下端部を連結するベース枠部材23と、を備えている。支柱21は、伸長部21Aと脚部21Bとを備え、脚部21Bは伸長部21Aを収納可能な鞘構造であり、伸長部21Aはこの脚部21Bに対して上下方向にスライドし伸長可能な構成となっている。現場作業の際には、図2に示すように脚部21Bから伸長部21Aをスライドさせて伸ばし、任意の位置で脚部21Bと伸長部21Aとをボルト28等で固定しておけばよく、貯留設備の搬送の際には、図5に示すように脚部21B内に伸長部21Aの一部を納めてしまえばよい。タンク本体11の側壁の上端部は、上部横架部材22に保持される構成になっているので、支柱21の伸長部21Aを下方にスライドさせることによって、タンク本体11の側壁が蛇腹状に折り畳まれるようになっている。このように、支柱21を伸長自在とし、かつタンク本体11を蛇腹状に折り畳み可能な構成とすることにより、貯留設備の全体容積をコンパクト化(本実施の形態では、施工時の約60%程度までに減少)することができるようになっている。そのため、貯留設備の搬送の容易化を図ることができるようになっている。なお、本実施の形態における支柱21の数は4本であるが、これに限られるものではない。
【0020】
また、上部横架部材22には、フレキシブルタンク1の上方を覆うように蓋24が取付けられており、この蓋24により、安定液がフレキシブルタンク1から溢れたり、安定液の飛沫が外部に飛び出すこと等を防止している。なお、この蓋24は必ずしも必要ではなく、貯留される安定液の液面よりも側壁がかなり高い等の場合には、蓋24はなくてもよい。また、図2及び図3において、25はレベル計であり、26は点検蓋を示している。
【0021】
上部横架部材22は、支柱21,21,…の伸長部21A,21A,…の上端部に取付けられ、これら支柱21,21,…を連結している。上部横架部材22には、ボルト29等を介してシャックル27が複数取付けられており、これらのシャックル27,27,…にタンク本体11の側壁上端に取付けられたリング部材15が保持されている。
【0022】
ベース枠部材23は、支柱21,21,…の脚部21B,21B,…の下端部に取付けられ、これら支柱21,21,…を連結している。なお、ベース枠部材23は、必要に応じて設ければよく必ずしも必要としない。また、本実施の形態におけるベース枠部材23は、転倒防止等の観点から、そのフレーム形状を正方形にしているが、これに限られず円形や多角形等でもよい。
【0023】
作液された安定液又は現場(掘削溝)からの戻りの安定液は、ポンプ51で圧送され、安定液供給管5の出口からフレキシブルタンク1内に供給される。なお、安定液供給管5の先端部(出口側部)は、フランジ部分で取外しが可能となっており、貯留設備の搬送の際には、図5に示すように、この安定液供給管5の先端部を取外せばよい。
【0024】
送液管3は、底部ホッパー12の下端部に取付けられており、フレキシブルタンク1に貯留された安定液はポンプ34により圧送されて、最終的に現場(掘削溝)に供給される。送液管3には、第1のゲート弁31と、第2のゲート弁32と、第1のピンチ弁33と、が取付けられている。第1のゲート弁31は送液管3の基端側(入口側)に取付けられており、施工の休止時や貯留設備の搬送時等には、この第1のゲート弁31を閉じればよい。この第1のゲート弁31より出口側には安定液を圧送するポンプ34が取付けられており、このポンプ34より出口側には後述する戻し配管4が分岐されている。送液管3における分岐部分よりも出口側には、入口側より第2のゲート弁32と第1のピンチ弁33とがそれぞれ取付けられており、第1のピンチ弁33を通過した安定液は、最終的に現場(掘削溝)に供給されるようになっている。
【0025】
戻し配管4は、送液管3から分岐し、この戻し配管4には、入口側から第3のゲート弁42と第2のピンチ弁43とがそれぞれ取付けられており、前述したように底部ホッパー12の側壁に戻し配管4の出口が連結されているため、第2のピンチ弁43を通過した安定液はフレキシブルタンク1内に戻されるようになっている。このため、安定液を搬送する送液管3が下部に接続された漏斗状の底部ホッパー12には、常に安定液の流れが生じ、安定液の流動性が確保される。そのため、タンク内や供給管(送液管)内でベントナイトが固化して閉塞させてしまうという問題が生じない。また、タンク内での安定液の流動性を確保するための、攪拌設備等を設ける必要がないため設備コストが掛かることがない。
【0026】
送液管3に取付けられた第1のピンチ弁33と、戻し配管4に取付けられた第2のピンチ弁43にはコンプレッサー(図示せず)等により圧送されるエアを供給するエア供給管(図示せず)が取付けられており、このエアによってピンチ弁の流量制御がされるようになっている。そのため、エアを圧送している状態では所定の送液圧以上の場合にのみ安定液が各ピンチ弁を通過する構成となっており、エアの入切を手元操作盤(図示せず)で操作することにより、弁の開閉を制御するようになっている。ピンチ弁によって流量制御をする構成であることにより、手動式の弁とは異なり遠隔操作が可能となるため、作業効率を向上させることができる。なお、第1のピンチ弁33と第2のピンチ弁43にそれぞれ別々のコンプレッサーを取付けてもよいし、同一のものを共有してもよい。
【0027】
第3のゲート弁42を閉じることにより、戻し配管4内に安定液を送液することなく、フレキシブルタンク1内に貯留された安定液をすべて現場(掘削溝)等に供給することができ、特に、フレキシブルタンク1内の洗浄の際に第3のゲート弁42は閉じられる。また、第2のゲート弁32を閉じることにより、安定液を外部に送液することなく、安定液を送液管3、戻し配管4及びフレキシブルタンク1内を循環させることができる。
【0028】
なお、送液管3と戻し配管4を流れる安定液の量のそれぞれの調整は、第1のゲート弁31、第2のゲート弁32及び第3のゲート弁42によって調整することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る貯留設備の概略図である。
【図2】本発明に係る貯留設備の正面図である。
【図3】その平面図である。
【図4】その縦断面図及び正面図である。
【図5】本発明に係る貯留設備の収納時の正面図である。
【符号の説明】
【0030】
1…フレキシブルタンク、2…フレーム、3…送液管、4…戻し配管、5…安定液供給管、11…タンク本体、12…底部ホッパー、13…骨部材、14…シート片、15…リング部材、21…支柱、21A…伸長部、21B…脚部、22…上部横架部材、23…ベース枠部材、24…蓋、25…レベル計、26…点検蓋、27…シャックル、28…ボルト、29…ボルト、31…第1のゲート弁、32…第2のゲート弁、33…第1のピンチ弁、34…ポンプ、42…第3のゲート弁、43…第2のピンチ弁、51…ポンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛇腹状に折り畳み可能で、掘削の際に使用される安定液を貯留するフレキシブルタンクと、このフレキシブルタンクを支持するフレームと、フレキシブルタンクに貯留された安定液を搬送する送液管と、を備えた貯留設備であって、
前記フレームは、支柱と、この支柱に取付けられると共に、前記フレキシブルタンクを保持する上部横架部材と、を備え、
前記フレームの支柱は、上下方向にスライド自在な伸長部と、この伸長部を収納可能な脚部と、を有する構成とされた、
ことを特徴とする貯留設備。
【請求項2】
前記送液管には、前記フレキシブルタンク内の下部に安定液を戻す戻し配管が取付けられた、請求項1記載の貯留設備。
【請求項3】
前記送液管及び戻し配管には、それぞれピンチ弁が取付けられ、このピンチ弁によって安定液の流量制御がされる構成とされた、請求項1又は2記載の貯留設備。
【請求項4】
前記フレキシブルタンクの上方の開口を覆うように、蓋が取付けられた、請求項1乃至3のいずれか1項記載の貯留設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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