説明

貯蔵容器から取り出された液状モノマー相をタンクローリーまたはタンカーのタンク中に輸送する方法

貯蔵容器から取り出された、90質量%以上がメタクリルモノマーである液状モノマー相を、タンクローリーまたはタンカーのタンク中に輸送する方法であって、液状モノマー相を、貯蔵容器からタンクローリーまたはタンカーのタンク中への経過中に液状モノマー相中に溶解されて含有されている、モノマーのポリマーを分離するための分離操作に掛けることによる上記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵容器から取り出された、モノマーに対する含量が90質量%を上廻る液状モノマー相を、タンクローリーまたはタンカーのタンク中に輸送する方法に関し、この場合モノマーは、アクリレイン、メタクロレイン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸と1〜12個のC原子を有するアルコールからなるエステルならびにメタクリル酸と1〜12個のC原子を有するアルコールとからなるエステルである。
【0002】
前記の実施態様によれば、本明細書中でのモノマーの概念は、アクリレイン、メタクロレイン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸と1〜12個のC原子を有するアルコールとからなるエステルならびにメタクリル酸と1〜12個のC原子を有するアルコールとからなるエステルを含む。この場合、アルコールとしては、1価アルコール(1個の−OH−基を有する)ならびに多価アルコール(1個を上廻る−OH−基を有する)がこれに該当する。前記アルコールには、殊に1〜12個、特に1〜8個のC原子を有する1価アルコールおよび多価アルコールが所属する。
【0003】
この定義は、必要に応じて、相応するアルコールとそれぞれの酸との反応によって前記エステルの製造を行わなければならないことを含まない。むしろ、製造法としては、別の反応、例えばエステル交換または付加反応がこれに該当する。
【0004】
例示的なモノマーとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、第三ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−プロピルヘプチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレートおよび第三ブチルメタクリレートが挙げられる。
【0005】
通常、モノマーは、化学合成によって製造される。
【0006】
しかし、この場合モノマーは、直接に純粋な形で存在するのではなく、分離されなければならないガス状または液状の生成物混合物の成分として得られる。分離は、一般に熱的分離方法、例えば吸収、脱着、分別凝縮、抽出、結晶化、吸着等を使用するか、或いは種々のこのような熱的分離方法を組み合わせて使用することにより行なわれる(例えば、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19924533号明細書、WO 2004/035514、欧州特許出願公開第1388533号明細書、欧州特許出願公開第778225号明細書、欧州特許出願公開第1041062号明細書、欧州特許出願公開第982287号明細書、欧州特許出願公開第982288号明細書、WO 01/96271、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10336386号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19631645号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19501325号明細書、欧州特許出願公開第982289号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19838845号明細書、WO 02/076917、欧州特許出願公開第1695954号明細書、欧州特許出願公開第695736号明細書、欧州特許出願公開第778225号明細書、欧州特許出願公開第1041062号明細書、米国特許第2004/0242826号明細書、欧州特許出願公開第792867号明細書、欧州特許出願公開第784046号明細書、欧州特許出願公開第695736号明細書、欧州特許出願公開第1125912号明細書、欧州特許出願公開第1097741号明細書、WO 00/45928、ドイツ連邦共和国特許出願公開第2246480号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第2362373号明細書、米国特許第5637222号明細書Aおよび本明細書中で引用した公知技術水準の刊行物参照)。
【0007】
中間生成物または純粋生成物としては、一般にそれぞれのモノマーに対する含量が90質量を上廻るかまたは95質量%を上廻る液状モノマー相が得られる。
【0008】
上記の最後の工程には、しばしばガス状相からの凝縮から、または結晶相の溶融からの中間生成物または純粋生成物への生成物混合物の経過が存在する。例えば、精留塔内での凝縮は、精留塔内への(精留塔内で)分離すべき混合物の供給位置の上方で精留塔内で上昇する蒸気から生じることができ、純粋生成物は、前記の供給管の上方で精留塔から取り出されうる。この場合、分離すべき混合物は、液状(精留)で、ならびにガス状(分別凝縮)で精留塔内に供給されることができる。
【0009】
双方の場合、即ちガス状相からの凝縮による液状モノマー相の場合ならびに結晶相(結晶物の)の溶融による液状モノマー相の場合が形成される場合には、前記相は、通常、目視的観察の際(即ち、ヒトの裸眼での観察の際)に固体を含まないように生じる。この場合、液状モノマー相は、通常、ラジカル重合抑制剤(望ましくないラジカル重合を抑制するための抑制剤)を溶解して含有し、この抑制剤は、液状モノマー相の製造の経過中および/またはこのような製造の終結時に供給される。しかし、結晶相を溶融によって製造する場合には、重合抑制剤系は、既に結晶相中に含有されていてもよい。
【0010】
しかし、原則的に液状モノマー相は、90質量%以上または95質量%以上のそれぞれのモノマーの含量を有する中間生成物または純水生成物として、分離塔中(例えば、精留塔中)で分離すべき混合物の分離塔中(例えば、精留塔中)への供給位置の下方で分離塔(例えば、精留塔)から取り出されてよい。例えば、このような取出しは、分離塔(例えば、精留塔)の塔底部から行なうこともできる。これは、例えばモノマー(例えば、アクリル酸)がその製造による生成物ガス混合物から生じる場合である(例えば、アクリル酸は、アクリル酸のC3前駆体(例えば、プロピレン、プロパン、グリセリン、アクロレイン)の不均一な部分接触気相酸化の生成物ガス混合物から標準条件下(25℃、1バール)でモノマー(例えば、アクリル酸)より低温で沸騰する液体(アクリル酸の場合、例えば水または水溶液)で吸収され、この被吸収剤から事後に易揮発性の吸収液体は、(場合によっては、共沸連行剤を用いて)精留により被吸収剤と分離される(この場合には、しばしば冒頭に記載されたような液状モノマー相が残留する))。
【0011】
記載されたように得られる液状モノマー相は、中間生成物または純粋生成物として、通常、貯蔵容器に供給される。液状モノマー相が製造に応じて溶解されていない可視的に目視可能なポリマーを含有する場合(本発明による当該モノマーは、公知であるように全ての当該モノマーが不所望にもラジカル重合の傾向を有し;このラジカル重合は、例えば光、温度および/または不純物によって引き起こされる可能性があり、この種のラジカル重合を或る程度の範囲内で抑制することができる抑制剤を添加しても完全には回避することができず;液状モノマー相は、通常、この種の重合抑制剤の存在下で製造され、そのために液状モノマー相は、このような重合抑制剤を一般に製造に応じて添加されて含有する)には、このポリマーは、規則的に分離され、その後に液状モノマー相は、貯蔵容器中に移行される。溶解されていない固体のこのような分離は、濾過によって相応する目開きのフィルターを用いて簡単に行なうことができる。
【0012】
通常、このような貯蔵容器は、タンクとも呼称されるし、貯蔵タンクとも呼称される。液相によって占めることができる、貯蔵タンクの内部容積(これは、典型的には停止している)は、一般に100m3〜10000m3、しばしば200m3〜1000m3、特に500m3である(例えば、Research Disclosure Database Number 513001、2007年1月発行、参照)。望ましい貯蔵温度に維持する目的のために、貯蔵タンクは、一般に1つの装置を有し、この装置を用いて(例えば、連続的に)貯蔵された液状モノマー相の部分量を取り出すことができ、熱交換器上に導くことができ、引続き貯蔵タンク中に返送されることができる(ところで、本発明による方法は、本発明による分離操作が前記の取出しおよび/または返送の際に(例えば、導管中に相応して取り付けられたフィルターによって(例えば、連続的に))実施されるように実施されてもよい)。
【0013】
前記の重合抑制剤系は、その完全な作用を通常分子状酸素(これは、その側自体で抑制剤である)の存在下でのみ発揮するので、液状モノマー相は、通常分子状酸素を含有するガス雰囲気下で貯蔵される(例えば、WO 2005/049543ならびに米国特許第6910511号明細書、参照)。即ち、液相によって占めることができる、貯蔵タンクの内部容積は、貯蔵タンク中に貯蔵された液状モノマー相によって部分的に充填され、その際に残存する占めることができる、貯蔵タンクの内部容積は、分子状酸素を含有する気相によって占められる。混合装置を用いると、一般に、液状モノマー相が当該液状モノマー相中に溶解された分子状酸素に対して減少しないように配慮される。
【0014】
貯蔵タンク中(貯蔵容器中)では、液状モノマー相が別方面での使用の目的のために取り出されるまで液状モノマー相が残存する。このような使用は、特に貯蔵タンクから取り出される液状モノマー相の使用者への輸送において存在する。
【0015】
一般に、この輸送は、タンクローリーのタンク中へ行なわれる(タンク材料としては、しばしば特殊鋼が使用される)。即ち、タンクは、通常、トラック(路上で)またはレール車両(軌道上)によって輸送される。このようなタンクローリーのタンクの貯蔵能力(液状媒体によって占めることができる内部容積)は、一般に少なくとも5m3、特に少なくとも10m3、殊に15〜40m3または20〜30m3であり、部分的にこのタンクの内部空間は、少なくとも2個、一般に少なくとも3個または少なくとも4個の互いに完全に分離された室に分割されており、これらの室は、互いに無関係に液状モノマー相で充填される。液状モノマー相での充填容積は、典型的には液相によってそれぞれ占めることができる内部容積の約80〜90体積%である。タンクの充填は、通常、空気で行なわれる。
【0016】
しかし、しばしば輸送は、海路上でタンカー(タンカーのタンク中)を用いても行なわれる。このようなタンカーの貯蔵能力は、通常、タンクローリーのタンクの貯蔵能力をはるかに上廻る。また、一般に、タンカーのタンク内部空間は、互いに分離された室に分割されている。
【0017】
ところで、本質的なことは、液状モノマー相のこのような輸送が確実に行なわれることである。このためには、殊に液状モノマー相の輸送中に液状モノマー相の望ましくないラジカル重合が十分に回避されることが属する。したがって、この結果、とりわけラジカル重合が発熱を伴って進行するので、このことは、殊に冷却されていない輸送の際に場合によっては輸送されたモノマー相の臨界的な固有昇温を生じうる(これは、特に長い輸送区間、例えば海外輸送の場合である)。
【0018】
しかし、同時にラジカル重合抑制剤に対して輸送された液状モノマー相の含量ができるだけ僅かであることも望ましい。
【0019】
これは、一面で重合抑制剤が比較的安価な作用物質であることに理由付けられる。他面、モノマーそれ自体および/またはその後の反応生成物は、しばしば濃色の反応生成物の形成下に前記抑制剤と反応する能力を有し、このことは、一般に望ましくない。更に、重合抑制剤は、ラジカル重合反応で貯蔵された液状モノマー相を使用した際に通常、不利に作用する(例えば、製品品質に対して)。
【0020】
更に、液相上で輸送タンク中に存在する気相の酸素含量が高すぎないことは、望ましい。これは、ガス状モノマー(これは、自然に蒸発する)と分子状酸素との混合物が爆発性であることができることに帰因しうる(WO 2004/007405、DE−A 102004034515、WO 2005/049543、2007年1月に発行されたResearch Disclosure Database Number 513001ならびに2007年1月に発行されたResearch Disclosure Database Number 513002参照)。従って、総じて輸送タンク中での酸素含量の最少化を達成しようと努力されている。特に有利には、この最少化は、所謂酸素限界濃度を下廻ることであり(WO 2004/007405)、この場合この酸素限界濃度未満ではガス混合物の爆発挙動は、不可能である。
【0021】
前記の背景に対して、本発明の課題は、殊に貯蔵容器から取り出された、その含量がモノマーに対して90質量%以上である液状モノマー相をタンクローリーまたはタンカーのタンク中に輸送する方法を提供することであった。この方法は、高められた安全性ならびに場合によっては減少された抑制剤の需要をもって輸送を可能にする。
【0022】
それに応じて、貯蔵容器から取り出された、その含量がモノマーに対して90質量%以上である液状モノマー相をタンクローリーまたはタンカーのタンク中に輸送し、この場合モノマーは、アクロレイン、メタクロレイン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸と1〜12個のC原子(特に、1〜8個、特に有利に1〜4個のC原子)を有するアルコールとのエステルならびにメタクリル酸と1〜12個のC原子(特に、1〜8個、特に有利に1〜4個のC原子)を有するアルコールとのエステルである方法であって、液状モノマー相が貯蔵容器からタンクローリーまたはタンカーのタンク中への過程で液状モノマー相中で溶解されて含有されている、モノマーのポリマーの少なくとも部分量(特に、少なくとも25質量%、よりいっそう良好に50質量%、なおいっそう良好に少なくとも75質量%、最善で全体量(殊に、記載された相対分子量未満の))を分離するための少なくとも1つの分離操作に掛けられることを特徴とする、貯蔵容器から取り出された液状モノマー相をタンクローリーまたはタンカーのタンク中に輸送する方法が見出された。
【0023】
本明細書中で、ポリマーの概念は、オリゴマーも含む。それらの中で、第1に(望ましくない)ラジカル重合によって製造されたポリマー/オリゴマーが考えられている。
【0024】
"液状モノマー相中で溶解されて含有されているポリマー"の文言は、本明細書中で"分子的に溶解された"ならびに"コロイド状に溶解された"ことを含む。しかし、これら双方は、溶解された形が貯蔵すべき液状モノマー相中で目視的に(即ち、ヒトの裸眼で)知覚不可能である場合のみに限る。
【0025】
固有の試験は、殊にこの種の溶解されたポリマーが(巨視的に目視可能なポリマーとは異なり)顕著な重合促進活性を有することをもたらした。これは、なかんずく原子状水素に対する、溶解されたポリマーの1000以上、または2000以上または3000以上の相対分子量の場合に該当する。
【0026】
この種のポリマーの望ましくない形成は、液状モノマー相の貯蔵の場合であっても、低い温度(50℃以下、よりいっそう良好に40℃以下、または30℃以下、しかし、モノマー相の不動点を上廻る)で完全には阻止されることができない。好ましい貯蔵温度は、17〜25℃である。詳細な試験は、このように取り出された液状モノマー相中で溶解されて含有されているポリマーがラジカル重合のために本発明による方法に依らずに取り出された液状モノマー相を使用した際にラジカル重合の経過ならびに生じるポリマーの品質に不利な影響を及ぼすという結果をまねいた。
【0027】
従って、本発明は、例えば本発明により輸送された液状モノマー相またはその混合物が輸送された液状モノマー相とは異なる、少なくともモノ不飽和(特に、エチレン系)化合物と重合開始(ラジカル的に開始)されることによって特徴付けられる、ラジカル重合の方法を含む。
【0028】
即ち、本発明による方法は、殊に貯蔵容器から取り出された液状モノマー相に対して使用可能であり、前記液状モノマー相は、目視的観察の際(即ち、ヒトの裸眼での観察の際)に固体を含まない。
【0029】
液状モノマー相中に溶解されて含有されているポリマーを分離するための分離操作として、殊に液体の微粒状固体の分離に適している全ての機械的分離操作がこれに該当する。これに関連して本発明により特に好適なのは、濾過および/または遠心分離による分離操作である。そのためには、殊に精密濾過法、限外濾過法(ナノ濾過法)および超遠心分離法が挙げられる(オリゴマー化されたモノマーおよび/または重合されたモノマーの質量密度は、それぞれの体積膨張率と同様に相応するモノマーの質量密度によって十分に異なり;25℃および1気圧の際に、モノマーのアクリル酸の質量密度は、例えば1.05g/cm3であり、重合されたアクリル酸の質量密度は、1.54g/cm3であり;質量密度の差は、殊に不飽和二重結合の電子雲の高められた空間需要に基づくものであり;オリゴマー化されたモノマーおよび/または重合されたモノマーは、超遠心分離器の外被上に蓄積され、それ自体連続的に剥離されうる)。勿論、クロマトグラフィー法ならびに浸透圧法も本発明による分離操作として使用されることができる。
【0030】
本発明によれば、有利には、取り出された(または取り出すべき)液状モノマー相(目視的に知覚不可能)が溶解されて含有されているポリマーは、液状モノマー相の濾過によって分離される。この場合、濾材としては、例えばフィルター用フリース、フィルター用織物、繊維層、燒結材料または堆積層(例えば、微粒状の石英材料、珪藻土、活性炭、ゼオライトからなる)を使用することができる。
【0031】
原則的に本発明による使用目的には、例えば袋状フィルターまたはキャンドルフィルターを使用することができる。この場合、本発明による濾過の課題は、多種多様の材料からなる縫製された、特に多層の袋状フィルターならびに完全に溶接された、特に多層の袋状フィルターで解決することができる。このような材料としては、例えば特殊鋼、ポリプロピレン、セルロース、ポリエステル、金属織物(特殊鋼、例えばクロム−ニッケル特殊鋼)ならびにフェノール樹脂結合されたアクリル繊維がこれに該当する。本発明により使用することができるフィルター(ならびに袋状フィルターならびにフィルターキャンドル)のための本発明により特に好ましい材料)は、ポリプロピレンである。しかし、本発明より使用可能なフィルターキャンドルは、活性炭から完成されていてもよい。原則的に本発明による適したフィルターキャンドルは、コイル状フィルターキャンドル、メルトブローン(Meltblown)フィルターキャンドルおよび樹脂が結合したフィルターキャンドルがこれに該当する。袋状フィルターならびにフィルターキャンドルは、本発明によれば、簡単なフィルターケーシングおよび多重フィルターケーシング中に使用されることができる。ケーシング材料としては、例えばポリプロピレン、特殊鋼およびC鋼がこれに該当する。本発明によれば、有利なのは、約40個までの個々の袋状フィルターを使用することができ、および液状モノマー相に対する貫流量が1000m3/時間まで可能である多重ケーシングを使用することである。取付け補助手段または袋状クランプ(Beutelniederhalte)は、袋状フィルターの正しい座り(Sitz)を改善する。例えば、前記の取付け補助手段または袋状クランプは、制御できないバックウォーター(Rueckstau)による"浮遊(Aufschwimmen)"を確実に阻止する。同様に、袋状フィルターの破裂は、阻止される。特殊な"カラー(Kragen)"は、袋状フィルター中での袋状クランプの完全な座りおよび固定した座りに役立つ。
【0032】
本発明によれば、有利には、フィルター材料(濾過材またはフィルター型)が使用され、このフィルター材料の30μm以上の粒径を有する粒子に対する分離度(残留効率)は、少なくとも70%、特に少なくとも80%、特に有利に少なくとも90%または少なくとも95%以上である。
【0033】
特に有利には、本発明による方法の場合、フィルター材料(濾過材またはフィルター型)が使用され、このフィルター材料の20μm以上の粒径を有する粒子に対する分離度は、少なくとも70%、特に少なくとも80%、特に有利に少なくとも90%または少なくとも95%以上である。
【0034】
殊に有利には、本発明による方法の場合、フィルター材料(濾過材またはフィルター型)が使用され、このフィルター材料の10μm以上の粒径を有する粒子に対する分離度は、少なくとも70%、特に少なくとも80%、特に有利に少なくとも90%または少なくとも95%以上である。
【0035】
更に、好ましくは、本発明による方法の場合、フィルター材料(濾過材またはフィルター型)が使用され、このフィルター材料の5μm以上の粒径を有する粒子に対する分離度は、少なくとも70%、特に少なくとも80%、特に有利に少なくとも90%または少なくとも95%以上である。
【0036】
最も有利には、本発明による方法の場合、フィルター材料(濾過材またはフィルター型)が使用され、このフィルター材料の1μm以上の粒径を有する粒子に対する分離度は、少なくとも70%、特に少なくとも80%、特に有利に少なくとも90%または少なくとも95%以上である。
【0037】
一般に、本発明による方法(ならびに後に本明細書中でさらに記載される取出し法)には、フィルター材料(濾過材またはフィルター型)が使用され、このフィルター材料の0.5μmの粒径を有する粒子に対する分離度は、90%以下、特に80%以下である。それによって、本発明による方法には、一般に満足な空時収量が保証される。
【0038】
前記の百分率の記載は、それぞれの粒度の全体の粒子の数に関連する。更に、前記の百分率の記載は、20 l/(m2-分)の単位面積当たりの負荷量、粒子に対する担体媒体としての水、20℃の温度および50ミリバール未満の圧力差ならびに粒子種としてのISO 12103−1 A3により試験ダストに関連する。
【0039】
試験の実施は、フランス標準NF 45−303に依拠して行なわれる(Filtration & Separation (Filtr. sep.) ISSN 0015-1882 CODEN FSEPAA Filtration and Separation, 1997, vol. 34, No.3, pp. 217-223参照)。
【0040】
例えば、フィルターモデルAGF−51、AGF−53、AGF−55、AGF−57およびAGF−59のEaton Filtration社, LLC, 900 Fairmount Avenue, Elizabeth, New Jersey 07207 (USA)のACCUGAFTM 袋状フィルターは、前記の全ての性質を満たす。これは、溶接された形の溶融吹込成形されたポリプロピレンから完成されている。この袋状フィルターは、結合剤、界面活性剤および添加剤(例えば、接着用樹脂)を全く有しない。ポリプロピレンだけから完成された、この種のフィルター材料(濾過材、フィルター型)は、本発明による方法にとって特に好適であることが判明し、それというのも、この種のフィルター材料は、望ましくないラジカル重合時に特にほんの僅かに本発明により貯蔵すべき液状モノマー相に影響を及ぼすからである。
【0041】
この場合には、型AGF−51を使用して最大の分離度が達成される(粒径1μm以上に対して少なくとも90%)。数値的指数が増加すると、分離度は減少する。しかし、型AGF−59に対して、30μm以上の粒径のための分離度は、なお常に90%を上廻る。
【0042】
また、他の選択可能な方法によれば、本発明による方法に対してEaton社の袋状フィルターPROGAFTMまたはKOFCLEARTMが使用されてもよい。LOFCLEAR袋状フィルターは、多層フィルター材料からなる袋状フィルターであり、PROGAFTM袋状フィルターは、特に高度に有効化された濾過材からなる袋状フィルターであり、この袋状フィルターを用いた場合には、サブミクロンの範囲までの有効な粒子減少を達成することができる。LOFCLEAR袋状フィルターは、同様にポリプロピレン100%から完成されている。
【0043】
他の選択可能な方法によれば、本発明による方法には、Pall GmbH社, Philopp-Reis-Strasse 6, D-63303 Dreieich在の一連の構造"HP"の高効率の袋状フィルター(殊に、袋状フィルターHPC、HPBおよびHPA)を使用することができる。この袋状フィルターは、3つの重なり合って配置されたポリプロピレンフリース;袋状フィルターの良好な機械的強度を保証する外側の支持フリース、中間の活性フィルターフリースおよび前フィルターとして機能する内側の保護フリースからなる。
【0044】
有利であるのは、差圧が新しい状態で10(特に、20)m3/(h・m2)20℃を有する水で負荷された際に100ミリバール以下である袋状フィルターである。しかし、一般に前記の値は、5ミリバール以上である。
【0045】
更に、ポリプロピレンから完成された、FUHR GmbH社(D-55270 Klein-Winternheim bei Mainz, Am Weinkastell 14)のキャンドルフィルターは、本発明によれば、好適であることが挙げられる。そのためには、殊に同様に完全にポリプロピレンから完成されている、acuraProgardメンブランフィルターキャンドルが挙げられる。このメンブランフィルターキャンドルは、熱的溶接構造を有し、それによって接着剤および結合剤を含有していない。このメンブランフィルターキャンドルのフィルターマトリックスは、2層構造を有しているので、使用の際には、極めて長い可使時間を達成することができる。
【0046】
acuraProgardキャンドルフィルターは、0.2μm以上、または0.45μm以上、または1μm以上、または5μm以上、または10μm以上または20μm以上の粒径に対して少なくとも99.9%の分離度で得ることができる。このacuraProgardキャンドルフィルターは、全て本発明による方法に適している。例示的には、5μm以上の粒径に対して少なくとも99.9%の分離度を有するacuraProgardキャンドルフィルターを使用することが強調される。
【0047】
本発明により濾過すべきモノマー相の温度は、殊にポリプロピレンからなる濾過材を使用する際に95℃以下である。
【0048】
有利には、前記の温度は、80℃以下、特に有利に60℃以下、殊に有利に40℃以下、最善で30℃以下または25℃以下である。好ましい場合には、0℃までであることができる。
【0049】
ところで、本発明による方法の少なくとも1つの分離操作は、一般に特に95℃以下、有利に80℃以下、好ましくは60℃以下、特に有利に40℃以下、最善で30℃以下または25℃以下の温度で実施される。好ましい場合には、0℃までであることができる。輸送温度は、同時に特に僅かである(特に、30℃以下、典型的には17〜25℃)。
【0050】
前記したように本発明により実施することができる濾過の場合には、10ミリバール以上ないし5バールの差圧を使用することができる。
【0051】
特に、前記の差圧は、20ミリバール以上および3バール以下、特に有利に20ミリバール以上および2バール以下または1.5バール以下である。よりいっそう高い差圧が必要である場合には、フィルターは、交換される。しかし、本発明による濾過には、勿論、ポリテトラフルオロエチレン(例えば、FUHR GmbH社のacuraVentAVFフィルターキャンドル)、ボラシリケート繊維(例えば、FUHR GmbH社のacuraVentAFG−GGフィルターキャンドル)、ポリエーテルスルホン(例えば、FUHR GmbH社のacuraFineAFSフィルターキャンドル)ならびにナイロン(例えば、FUHR GmbH社のacuraProgradフィルターキャンドル)からなるフィルターキャンドルもこれに該当する。
【0052】
勿論、本発明による濾過には、FUHR GmbH社のacuraBagフィルターキャンドル、殊にポリプロピレンから完成されたフィルターキャンドルを使用することができる。しかし、本発明によれば、FUHR GmbH社のACCUFIT(登録商標)袋状フィルターおよびULTRAFIT(登録商標)袋状フィルターも適している。この袋状フィルターは、本発明によれば、好ましくは同様に溶接された実施態様でポリプロピレンから完成されている。
【0053】
一般に、本発明により適当な袋状フィルターは、多数のフィルター層から完成されている。
【0054】
本発明によれば、本発明により使用される方法に使用された濾過材が濾過すべき液状モノマー相での負荷下に実際に膨脹しないことは、好ましい。前記の負荷量は、一般に2〜20m3/(h・m2)になる。
【0055】
一般に、濾過すべき液状モノマー相は、袋状フィルターまたはフィルターキャンドルを使用した際に内側から外向きにフィルター型に導通される。
【0056】
原則的に、フィルターキャンドルを使用した場合には、液状モノマー相は、外側から内向きにも導くことができる。
【0057】
本発明により使用すべきフィルター材料のフィルター活性層の典型的な細孔は、0.1〜300μm、特に1〜200μmまたは1〜100μm、特に有利に1〜50μmまたは1〜5μmである。既述したように、本発明によれば、有利に多数の層(例えば、3つまたは5つまたは7つの層)が重なり合って使用される。
【0058】
濾過は、原則的に圧力濾過または真空炉かとして実際に行なうことができる。この濾過は、有利には圧力濾過として実施される。勿論、この濾過は、遠心分離により実際に行なうこともできる。
【0059】
本発明による方法は、殊にモノマーに対する液状モノマー相の含量が96質量%以上、または97質量%以上、または98質量%以上、または99質量%以上、または99.5質量%以上、または99.7質量%以上、または99,9質量%以上である場合にも適している。本明細書中の前記の記載および全ての記載は、殊にモノマーがアクリル酸である場合(殊に、液状モノマー相がアクリル酸である場合(殊に液状モノマー相が純粋なアクリル酸である場合))に該当する。
【0060】
本発明により使用されるフィルター型が消耗した場合には、このフィルター型は、新しいフィルターによって代替することができる。フィルターが目的に合わせて交換フィルターとして構成されていることは、自明のことである。アルカリ金属水酸化物水溶液(例えば、水酸化カリウムおよび/または水酸化ナトリウム)を用いての洗浄および次の純粋な水を用いての中和洗浄により、本発明により消耗されたフィルターは、再生させることができる。殊に、ポリプロピレンから完成されたフィルターは、消耗後に問題なしに燃焼させることができる。
【0061】
液状モノマー相中に存在するモノマーの望ましくないラジカル重合(例えば、温度、光または他の自発的に開始されるラジカル形成によって開始される)を抑制する作用物質として、本発明により取り出された液状モノマー相は、公知技術水準にこの目的のために公知の重合抑制剤のそれぞれを溶解して含有することができる。有利に使用される重合抑制剤は、p−メトキシフェノール(MEHQ)、フェノチアジン、ヒドロキノン、フェノール(例えば、2,4−ジメチル−6,6−ブチルフェノール)、キノン、ブチルブレンツカテキン、ジフェニルアミン、p−フェニレンジアミン、ニトロキシルラジカル(例えば、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−OH−THEMPO))および/またはニトロソ化合物、例えばニトロフェノール(ならびにWO 00/64947中に記載された別の全ての重合抑制剤)である。
【0062】
本発明による処理形式は、輸送すべき液状モノマー相の抑制剤含量を確実な輸送の際に、輸送タンク中の液相上に存在する気相中の酸素含量と同様に減少させることを可能にする。
【0063】
使用される抑制剤の必要量は、貯蔵条件、抑制剤の種類、モノマーの種類および液状モノマー相の特殊な純度にも依存する。モノマーに対する液状モノマー相中に含有されている質量に関連して、抑制剤含量は、典型的には400質量ppm以下、特に220質量ppm、殊に100質量ppmである。
【0064】
好ましくは、液状モノマー相を含有する貯蔵容器からタンクローリーまたはタンカーを本発明により充填させる場合には、貯蔵タンクから取り出すべき液状モノマー相それ自体を最初に試験タンク中に取り出すように行なわれる(本発明による分離(例えば、濾過)が既に取出しの際に(例えば、取出し導管中に存在するフィルターまたは貯蔵容器中の取出し位置に存在するフィルターを通して)直接行なうことができることは、自明のことである)。
【0065】
更に、貯蔵タンクから取り出された液状モノマー相は、試験タンクから1回または数回連続的にポンプ輸送され、例えば前記のフィルターシステムを介して試験タンク中にそれぞれ再び返送される。
【0066】
フィルターシステム(例えば、多重ケーシング中の5μm以上の粒径に対する99.9%の分離度を有するacuraProgradキャンドルフィルター)中で分離量がもはや増加しないかまたはもはや言うに値しない程に増加する場合には、分離工程は中断され、試験タンク中に存在する、貯蔵タンクから先に取り出されたモノマー相は、タンクローリーまたはタンカーのタンク中に移送される。
【0067】
従って、本発明は、取り出すべき液状モノマー相の貯蔵タンクを有するタンクローリーまたはタンカーのタンクを充填する方法も含み、この方法は、液状モノマー相が貯蔵容器からタンクローリーまたはタンカーのタンクへの経路で液状モノマー相中に溶解されて含有されている、モノマーのポリマーの少なくとも1つの部分量を分離するための少なくとも1つの分離操作に掛けられることによって特徴付けられる。
【0068】
ところで、貯蔵容器中での液状モノマー相の貯蔵は、例えばWO 2005/049543、米国特許第6910511号明細書、2007年1月に発行されたResearch Disclosure Dataabse No. 513002および殊に2007年1月に発行されたResearch Disclosure Dataabse No. 513001の記載と同様に行なうことができる。
【0069】
貯蔵すべき液状モノマー相を、例えば精留塔内で上昇する蒸気により(精留塔内で)分離すべき混合物の精留塔内への供給位置(流入位置)の上方での凝縮によって精留塔内で製造し、次にこうして凝縮により製造された、本発明により貯蔵すべき液状モノマー相を上記の流入位置の上方で精留塔から取り出す場合には、精留塔内での凝縮は、例えば直接の冷却および/または間接的な冷却によって生じさせることができる。間接的な冷却は、例えば塔頂部で、塔頂部に到達する上昇した蒸気を間接的に熱交換器に導通し、間接的な熱交換の条件下で凝縮しうる成分を液相中に移送することによって生じさせることができる。次に、こうして製造された液相の一部分は、貯蔵部に供給され、別の部分は、返送液体として精留塔の塔頂部に返送される。更に、この返送液体は、精留塔内で既に精留塔内で上昇する蒸気の直接の冷却を必要とする。間接的な熱交換器中で凝縮し得なかった成分は、精留塔から一般に廃棄処理部に供給される。重合抑制剤は、直接に凝縮物中に添加される。純粋な生成物を頭頂部の下方で取り出す場合には、頭頂部で凝縮された相は、通常、十分に返送液体として精留塔内に返送される。通常、返送液体は、重合抑制剤を添加して含有する。精留塔から取り出された純粋な生成物は、こうして直接に同様に重合抑制されている。塔頂部での凝縮が専ら直接的な冷却によって行なわれてもよいことは、自明のことである。この目的のために、一度製造された頭頂部での凝縮物には抑制剤が添加され、この凝縮物は、冷却され、少なくとも部分的に直接冷却のために精留塔の頭頂空間内に噴霧される。純粋な生成物を頭頂部の下方で(しかし、分離すべき混合物の精留塔内への供給位置の上方で)取り出す場合には、通常、冷却された凝縮物の全体量は、塔頂空間内で逆噴霧される。分離作用を有する取付け物を含む、精留塔の部分および頭頂部の凝縮空間は、通常、煙突底面によって互いに分離されている。返送液体は、分離作用を有する部分に供給される。供給位置(流入位置)の下方で精留塔内に存在する、精留塔の部分は、通常、分離部と呼称され、供給位置の上方に存在する、精留塔の部分は、通常、精留塔の濃縮部(Verstaerkerteil)と呼称される。
【0070】
精留塔内で分離すべき物質混合物を精留塔内に液状の形で供給する場合には、分離により精留が形成され、供給は、蒸気状(またはガス状)で行なわれ、分離により分別凝縮が形成される。分離作用を有する取付け物としては、精留塔、例えば棚段、不規則充填体および/または規則充填体を含むことができる。プロピレンおよび/またはプロパンの不均一な部分的接触気相酸化の生成物ガス混合物からアクリル酸を分別凝縮させる例示的な実施態様は、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第19924533号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19924532号明細書、WO 01/77056、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10156016号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10243625号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10223058号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10235847号明細書、WO 2004/035514、WO 00/53560およびドイツ連邦共和国特許出願公開第10332758号明細書に開示されている。
【0071】
貯蔵すべきモノマー相を、例えば結晶相の溶融によって製造する場合には、このモノマー相は、当該モノマーを含有する液状混合物を1段または多段で結晶化により精製するという結果を生じることができる(例えば、欧州特許出願公開第616998号明細書)。冷気を液状混合物に作用させることによって、モノマーは、液状混合物から結晶相として晶出する。
【0072】
しばしば、溶融すべき結晶相は、1段の結晶化の結果である。
【0073】
勿論、溶融すべき相は、分別結晶の結果であってもよい。
【0074】
例えば、冷気の作用は、モノマーを含有する液状混合物に対して層状結晶として実施されてよい(ドイツ連邦共和国特許出願公開第2606364号明細書、欧州特許出願公開第616998号明細書、欧州特許出願公開第648520号明細書および欧州特許出願公開第776875号明細書参照)。この場合、この結晶物は、一緒になった固く付着した層の形で冷却表面上で凍結される。残存する残留溶融物(母液)からの析出した結晶物は、残留溶融物の単純な流出により分離される。原理的に、"静的"と"動的"な層結晶化方法は、区別される。液状混合物からの動的層状結晶の特性は、液状混合物が強制的に対流することである。この対流は、例えば液状混合物を冷却された完全に貫流される管を通してポンプ循環させ、液状混合物を細流フィルム(Rieselfilm)として冷却された壁上に放出する(例えば、欧州特許出願公開第616998号明細書の記載によれば、例えば冷却された落下管中で)かまたは不活性ガスを液状混合物中に導入するかまたはパルス化することによって生じさせることができる。
【0075】
静的方法では、液状混合物(例えば、管束中または平板型熱交換器中で)は静止し、緩慢な温度低下により、熱交換器の第二の側で層を形成して析出する。この後で残留溶融物(母液)は排出され、緩慢な温度増加により、より顕著に汚染された分画が結晶層から除去され、引き続きこの純粋な生成物は溶融される(参照、WO 01/77056)。
【0076】
一般に、この純粋な生成物は、モノマーを含有する液状混合物(通常、溶液)を含有し、この液状混合物からモノマーは、結晶により分離され、重合抑制剤が添加される。モノマーが結晶化により析出する場合には、このモノマーは、通常、本質的に重合抑制剤を含まずに晶出する。従って、析出されたモノマー結晶相は、しばしば第二の側で昇温することによって溶融されるのではなく、モノマー結晶層と、添加された重合抑制剤を含有する、先に溶融され析出されたモノマー結晶層の加熱された溶融液との接触によって溶融される。
【0077】
他の選択可能な方法によれば、モノマーを含有する液状混合物からのモノマー結晶物は、懸濁結晶化(例えば、WO 01/77056、WO 02/055469ならびにWO 03/078378の教示により)として形成させることができる。
【0078】
この場合には、一般に例えばモノマーとしてのアクリル酸を含有する(液状溶液の)液状混合物を冷却することによって、アクリル酸結晶物を懸濁して含有する結晶懸濁液が製造され、この場合アクリル酸結晶物は、液状の出発混合物よりも僅かな不純物含量を有し、残留する残存溶融液(母液)は、液状の出発混合物よりも高い不純物含量を有する。この場合、アクリル酸結晶物は、直接に懸濁液中に存在して成長することができ、および/または層として冷却された壁上に析出することができ、前記壁から前記結晶物は、絶えずかき落とすことができ、そして残留溶融物中に再懸濁させることができる。
【0079】
この場合、WO 01/77056、WO 02/055469ならびにWO 03/078378中に挙げられた全ての懸濁結晶物および全ての懸濁物結晶化方法は、本明細書中で使用することができる。こうして製造されたアクリル酸結晶物懸濁液は、例えば10〜50質量%、有利に20〜40質量%または30質量%の固体含量を有することができる。
【0080】
懸濁結晶物および残留する母液を分離するために、例えば前記のWO刊行物中に記載された全ての分離方法がこれに該当する(例えば、機械的分離方法、例えば遠心分離)。有利には、分離は、洗浄塔中で行なわれる。好ましくは、これは、析出された、例えばアクリル酸結晶物を強制的に輸送する洗浄塔である。洗浄液体としては、有利に洗浄塔中で予め精製された(分離された)、例えばアクリル酸結晶物の溶融液が使用される。この洗浄は、通常、向流において行なわれる。
【0081】
前述の全ての方法は、なかんずく、洗浄塔がアクリル酸結晶物の強制輸送手段を有する洗浄塔である場合に有効であり、かつこれはなかんずく、前記手段がWO 01/77056による水力学的または機械的な洗浄塔であり、かつこれらの手段がこの刊行物中に説明されているように運転される場合である。
【0082】
それによって、貯蔵すべき液状アクリル酸相は、例えば次のように製造されることができる。アクリル酸のC3前駆体(例えば、プロピレン、プロパンまたはアクロレイン)の1段または2段の不均一な部分接触気相酸化によって、アクリル酸を含有する生成物ガス混合物が製造される。この生成物ガス混合物は、分離作用を有する取付け物を有する分離塔内に導入され、同じ分離塔内で上昇して分別凝縮される。供給位置の上方で、しかし、塔頂部の下方で、分離塔から液状の粗製アクリル酸が取り出され、この粗製アクリル酸は、アクリル酸95質量%以上を有しかつ分離塔内への返送流により重合抑制剤が添加されて含有されている。懸濁結晶化によって、粗製アクリル酸から純粋なアクリル酸懸濁結晶物が製造される。このアクリル酸懸濁結晶物は、洗浄塔中(特に、水力学的な洗浄塔中)で添加された重合抑制剤を含有する純粋な結晶物溶融液を使用しながら洗浄液として残留する母液と分離される。分離された純粋な結晶物を添加された重合抑制剤を含有する、先に分離された純粋な結晶物の溶融液と接触させることによって、分離された純粋な結晶物は、溶融され、こうして貯蔵すべき液状のアクリル酸相が製造される(純度、一般に99.5質量%以上)。
【0083】
勿論、本発明による方法は、別の方法で製造された、液状のモノマー相に対して使用されることができ、このモノマー相の含量は、モノマーに対して90質量%未満である。
【0084】
本発明による方法は、貯蔵タンクから貯蔵の経過中に常に再び(最善で連続的に)液状のモノマー相を取り出し、引続きこのモノマー相を再び貯蔵タンク中に返送し、この取出しおよび返送の経過中に液状モノマー相中に溶解されて含有されている、モノマーのポリマーの少なくとも1つの部分量を分離するための少なくとも1つの分離操作に掛け、こうして貯蔵された液状モノマー相をタンクローリーまたはタンカーのタンク中に移送するようにして実施されることができる。この場合には、輸送すべき液状モノマー相の貯蔵容器から貯蔵容器上のタンク中への本発明による経路が生じる。勿論、本明細書中で紹介された本発明による全ての変法(または本発明による部分量)は、組み合わせて使用されてもよい。
【0085】
実施例および比較例
a)比較例
不均一な部分接触プロピレン酸化の分別凝縮によって、WO 2004/035514の実施例1の記載と同様にアクリル酸96.0質量%を含有しかつMEHQ0.018質量%ならびにフェノチアジン0.012質量%および分子状酸素0.0004質量%で重合抑制されたアクリル酸を製造した。このアクリル酸を、100.6℃の温度で凝縮塔からの固体を目視的に含まずに凝縮塔への生成物ガス混合物の供給位置の上方で凝縮塔の第2の捕集棚から取り出した。次に、このアクリル酸を25℃に冷却し、2リットル分を空気の下で3リットルの内部容積を有するフラスコ中に移した。引続き、このフラスコを閉鎖して20℃で4ヶ月間貯蔵した。次に、貯蔵されたアクリル酸それ自体0.5ml(依然として、目視的に固体を含まない)を取出し、空気雰囲気下に1.8mlのガラス製アンプル中に移した。引続き、これらのアンプルを120℃で空冷乾燥棚中で回転させつつ貯蔵して完全な混合を確保した。次に、時間tを試料が完全に重合するまで検出した。tは、13時間12分であった。
【0086】
b)実施例
比較例と同様に実施した。フラスコからの取出しの際に、全部の貯蔵されたアクリル酸量をACCUGAF AGF−51袋状フィルターに導通した。濾過の終結後、袋状フィルターの内壁は、ポリアクリル酸からなる接着性被覆を有していた。濾過したアクリル酸0.5mlを20℃で空気雰囲気下に1.8mlのガラス製アンプル中に移した。引続き、これらのアンプルを120℃で空冷乾燥棚中で回転させつつ貯蔵して完全な混合を確保した。次に、時間tを試料が完全に重合するまで検出した。tは、20時間25分であった。
【0087】
これら双方の試験から証明されたように、溶解されて含有されているポリマー(溶解されて含有されているポリアクリル酸)の除去は、望ましくないラジカル重合へのアクリル酸の傾向を減少させる。
【0088】
米国暫定特許出願番号60/896582、出願日2007年3月23日は、参考文献のために本発明中に組み込まれている。上記の教示に関して、本発明の多様な変更および変化が可能である。従って、本発明は、特許請求の範囲内で、ここでの特定の記載とは異なるような構成から出発することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵容器から取り出された、モノマーに対する含量が90質量%以上である液状モノマー相を、タンクローリーまたはタンカーのタンク中に輸送する方法であって、この場合モノマーは、アクロレイン、メタクロレイン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸と1〜12個のC原子を有するアルコールとからなるエステルならびにメタクリル酸と1〜12個のC原子を有するアルコールとからなるエステルである上記方法において、液状モノマー相を、貯蔵容器からタンクローリーまたはタンカーのタンク中への経過中に液状モノマー相中に溶解されて含有されている、モノマーのポリマーの少なくとも1つの部分量を分離するための少なくとも1つの分離操作に掛けることを特徴とする、貯蔵容器から取り出された、モノマーに対する含量が90質量%以上である液状モノマー相を、タンクローリーまたはタンカーのタンク中に輸送する方法。
【請求項2】
液相によって占めることができる、貯蔵容器の内部容積は、100m3〜10000m3である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
貯蔵容器は、1つの装置を有し、この装置を用いて貯蔵された液状モノマー相の部分量を取り出すことができ、熱交換器上に導くことができ、引続き貯蔵タンク中に返送することができる、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
液状モノマー相を貯蔵容器中で分子状酸素を含有する雰囲気下に貯蔵する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
液状モノマー相は、p−メトキシフェノールおよび/またはフェノチアジンを溶解して含有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの分離操作は、濾過および/または遠心分離である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの分離操作は、濾過であり、この場合、使用される濾過材は、ポリプロピレンから完成されている、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの分離操作は、濾過であり、この場合、濾過材は、特殊鋼から完成されている、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの分離操作は、濾過であり、この場合30μm以上の粒径を有する粒子に対して使用される濾過材の分離度は、少なくとも90%である、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの分離操作は、濾過であり、この場合10μm以上の粒径を有する粒子に対して使用される濾過材の分離度は、少なくとも90%である、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの分離操作は、50℃以下の温度で実施される、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
液状媒体によって占めることができる、タンクローリーまたはタンカーのタンクの内部容積は、5m3以上である、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
液状モノマー相は、純粋なアクリル酸であり、このアクリル酸のアクリル酸含量は、99質量%以上である、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
ラジカル重合法において、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法により、輸送された液状モノマー相またはこの液状モノマー相と、輸送された液状モノマー相とは異なる少なくともモノ不飽和の化合物との混合物を重合導入することを特徴とする、ラジカル重合法。
【請求項15】
タンクローリーまたはタンカーのタンクを、貯蔵容器から取り出された、モノマーに対する含量が90質量%以上である液状モノマー相で充填する方法であって、この場合モノマーは、アクロレイン、メタクロレイン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸と1〜12個のC原子を有するアルコールとからなるエステルならびにメタクリル酸と1〜12個のC原子を有するアルコールとからなるエステルである上記方法において、液状モノマー相を、貯蔵容器からタンクローリーまたはタンカーのタンク中への経過中に液状モノマー相中に溶解されて含有されている、モノマーのポリマーの少なくとも1つの部分量を分離するための少なくとも1つの分離操作に掛けることを特徴とする、タンクローリーまたはタンカーのタンクを、貯蔵容器から取り出された、モノマーに対する含量が90質量%以上である液状モノマー相で充填する方法。

【公表番号】特表2010−521532(P2010−521532A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500205(P2010−500205)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【国際出願番号】PCT/EP2008/053174
【国際公開番号】WO2008/116777
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】