説明

貯蔵容器用吊具バンド

【課題】単一部品であってコストダウンが可能であり、貯蔵容器本体への装着作業性がよく、しかも貯蔵容器本体の首部形状寸法に多少の誤差があっても確実な締め付けが行える貯蔵容器用吊具バンドを提供する。
【解決手段】貯蔵容器本体1の首部に巻付けられる樹脂製のバンド本体4の対向位置に吊具取付部5を突設し、バンド本体4の先端部に鋸歯状の突条8を備えた挿入片7を形成し、またバンド本体4の他端部にはバンド固定部9を形成する。バンド固定部8は挿入片7の挿入孔12と、挿入片7の突条8と係合して挿入片7の脱落を阻止する弾性ストッパ13とを備えたものである。なお弾性ストッパ13の外側に、弾性ストッパ13を外側に弾性変形させ、鋸歯状の突条8との係合を強制的に解除するための突起22を形成することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスやプラスチック等から成る貯蔵容器の首部に吊具(ハンドル)を取付けるために用いられる貯蔵容器用吊具バンドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
梅酒に代表される果実酒やその他食品の貯蔵容器としては、酸やアルコールに強く内容物が見える利点があるため、比較的大型のガラス壜が普及している。またPET等のプラスチック製の貯蔵容器も用いられている。このような貯蔵容器は中味の入った状態では重量が数kgに達するために、確実に吊下げて運搬できるようにハンドル状の吊具が取付けられている。
【0003】
特許文献1には、吊具をキャップに取付けた貯蔵容器が記載されている。しかしこの構造では、キャップが緩んだ状態で持ち上げると容器が落下して破損するおそれがあるため、通常は貯蔵容器本体の首部に吊具バンドを装着し、この吊具バンドに吊具を取付けた構造が採用されている。
【0004】
吊具バンドは、貯蔵容器本体の首部に形成されたビードと呼ばれるリング状突起の下側に装着し、緩まないように締め付けておく必要がある。そこで従来から、吊具バンドの端部間を金属製や樹脂製のネジによって締め付ける構造が用いられている。この構造は確実な締め付けが行えるのみならず、貯蔵容器本体の形状寸法に多少の誤差があっても吸収することができるという利点がある。しかしその半面、吊具バンドと樹脂製のネジの2つの部品が必要となってコストが嵩むという問題があるうえ、貯蔵容器本体への装着作業に手数がかかるという問題があった。
【特許文献1】特開2002−145301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って本発明の目的は、単一部品であってコストダウンが可能であり、貯蔵容器本体への装着作業性がよく、しかも貯蔵容器本体の首部形状寸法に多少の誤差があっても確実な締め付けが行える貯蔵容器用吊具バンドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するためになされた本発明の貯蔵容器用吊具バンドは、貯蔵容器本体の首部に巻付けられる樹脂製のバンド本体の対向位置に吊具取付部を突設するとともに、このバンド本体の先端部に鋸歯状の突条を備えた挿入片を形成し、またバンド本体の他端部には、この挿入片が挿入される挿入孔と、挿入片の突条と係合して挿入片の脱落を阻止する弾性ストッパとを備えたバンド固定部を形成したことを特徴とするものである。
【0007】
なお請求項2の発明のように、挿入片の突条よりもさらに先端部に、バンド固定部の挿入孔を貫通したときに外側に拡がってバンド固定部の端面と係合する第2の弾性ストッパを形成することができる。また請求項3の発明のように、弾性ストッパの外側に、弾性ストッパを外側に弾性変形させ、鋸歯状の突条との係合を強制的に解除するための突起を形成することができる。この場合には、請求項4に記載のように挿入片の基部に、挿入片を挿入孔から抜き出すための指掛部を形成することが好ましい。何れの発明においても、全体を樹脂の一体成形品とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の貯蔵容器用吊具バンドは、樹脂製のバンド本体を貯蔵容器本体の首部に巻付け、その先端の挿入片を単に他端部のバンド固定部の挿入孔に挿入するだけで容易に固定することができるので装着時の作業性がよく、しかも弾性ストッパが挿入孔に挿入された挿入片の鋸歯状の突条と係合して脱落を防止するので、緩んだり抜け落ちることがない。また本発明の貯蔵容器用吊具バンドは、挿入片のバンド固定部への挿入量が一律に規定されていないため、貯蔵容器本体の首部形状寸法に多少の誤差があってもがたつきなく確実に装着することができる。さらに貯蔵容器用吊具バンドの全体を樹脂の一体成形品とすることができるので、2部品を必要としていた従来のネジ止め構造に比較して、大幅なコストダウンを図ることができる。
【0009】
このように本発明の貯蔵容器用吊具バンドは装着後に緩むことはないが、万一の脱落事故を防止するため、請求項2のように挿入片の突条よりもさらに先端部に、バンド固定部の挿入孔を貫通したときに外側に拡がってバンド固定部の端面と係合する第2の弾性ストッパを形成しておけば、バンドの抜け落ちによる容器本体の落下事故をより確実に防止することができる。
【0010】
また請求項3のように、弾性ストッパの外側に弾性ストッパを外側に弾性変形させ、鋸歯状の突条との係合を強制的に解除するための突起を形成した構造とすれば、貯蔵容器本体の首部から取り外すことが可能となり、貯蔵容器本体を高温消毒したり、バンドの周辺を掃除したりするうえで便利である。この場合、弾性ストッパを外側に弾性変形させるとともに挿入片を挿入孔から抜き出す必要があるので、請求項4のように指掛部を形成しておけばこの作業が容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
図1は本発明の貯蔵容器用吊具バンドが装着された貯蔵容器を示す斜視図、図2は要部の断面図である。これらの図において、1はガラス製の貯蔵容器本体、2はその口部を封止する樹脂製の蓋である。この実施形態では貯蔵容器本体1はガラス製であるが、PET等の樹脂製とすることもできる。貯蔵容器本体1の首部にはリング状のビード3が全周にわたり突設されており、その下側に樹脂製のバンド本体4が装着されている。バンド本体4の対向位置には対を成す吊具取付部5が設けられており、ハンドル状の吊具6が取付けられている。
【0012】
図3と図4に第1の実施形態の貯蔵容器用吊具バンドの平面図及び断面図を示す。これらの図に示すように、バンド本体4は容器本体1の首部に対応する円形状であり、その先端部はやや外側に屈曲されて挿入片7となっている。この挿入片7の外側面には、断面が鋸歯状の突条8が多数形成されている。
【0013】
またバンド本体4の他端部には、バンド固定部9が一体に形成されている。このバンド固定部9は、左右に突出部10、11を備え、これらの突出部10、11に前記した挿入片7のための挿入孔12が形成されている。挿入孔12の断面形状は挿入片7をがたつき無く挿入できる形状としておく。また左右の突出部10、11の中間部には、挿入片7が挿入孔12に挿入されたときに、突条8と係合して挿入片7の脱落を阻止する弾性ストッパ13が形成されている。弾性ストッパ13は突出部11の端部に連設されたものであり、やはり鋸歯状であって抜け止め効果を発揮し、挿入片7の挿入は可能であるが引抜きはできないようになっている。
【0014】
本発明の貯蔵容器用吊具バンドは全体が樹脂の一体成形品であり、従来のネジ止め方式とは異なり部品数を単一とすることができるので、コストダウンが可能となる。なお樹脂の種類は適度の弾性と強度を持つポリプレピレンやポリエチレンが適しているが、これらに限定されるものではない。
【0015】
このように構成された本発明の貯蔵容器用吊具バンドは、バンド本体4を貯蔵容器本体1の首部に巻き、挿入片7をバンド固定部9の挿入孔12に挿入するだけで装着されるもので、貯蔵容器本体1の首部形状寸法に多少の誤差があってもがたつきなく確実に装着することができる。また挿入後は弾性ストッパ13が挿入片7の突条8と係合して抜け止め効果を発揮するので、挿入片7の脱落は阻止され、吊具6によって貯蔵容器を持ち上げても落下するおそれはない。
【0016】
以上に説明した第1の実施形態では弾性ストッパ13と挿入片7の突条8との係合によって挿入片7の脱落を防止したが、図5に示す第2の実施形態ではさらに、第2の弾性ストッパ20を設けて安全性を高めた。第2の弾性ストッパ20は挿入片7の突条8よりもさらに先端部をクサビ型にするとともに、その中心部にスリット21を設けて弾性を持たせたものである。
【0017】
このクサビ型の第2の弾性ストッパ20は、内側に押し縮めながらバンド固定部9の挿入孔7を貫通させると、弾性により外側に拡がってバンド固定部9の突出部10の端面と係合し、引抜けなくなる機能を持つ。このため挿入片7がバンド固定部9から脱落する危険をより確実に防止することができる。
【0018】
なお、この第2の実施形態の貯蔵容器用吊具バンドも全体が樹脂の一体成形品であり、部品数を単一とすることができるので、コストダウンが可能となることは第1の実施形態と同様である。
【0019】
図6と図7は第3の実施形態を示す図であり、請求項3、4の発明に対応するものである。請求項3、4の発明は請求項2の発明とは異なり、装着されたバンドを容器本体1の口部から取り外せるようにしたものである。このため、弾性ストッパ13の外側に弾性ストッパ13を外側に弾性変形させ、鋸歯状の突条8との係合を強制的に解除するための突起22が形成されている。この突起22は図示のように屈曲させたフック状のものであることが好ましい。
【0020】
しかし単に突起22を形成しただけでは操作しにくいので、バンド固定部9の外側にもこの突起22の方向に向かう突起23を突設しておき、図7に示すようにコインやドライバの先端等をこれらの突起22と突起23との隙間に挿入し、突起23を支点としてこじるようにして弾性ストッパ13を外側に弾性変形させ易くしてある。なおこの突起23は弾性ストッパ13が過度に外側に曲げられて塑性変形してしまい、鋸歯状の突条8との係合機能が低下することを防止する効果もある。
【0021】
さらにこの実施形態では、挿入片7の基部に挿入片7を挿入孔12から抜き出すための指掛部24を形成してある。この指掛部24の内面には滑り止め用の突状25を形成しておくことが好ましい。このような指掛部24を形成しておけば、片手で図7のように弾性ストッパ13を外側に弾性変形させながら、他方の手で挿入片7を挿入孔12から抜き出し易くなる利点がある。しかしこの指掛部24は必須のものではない。この第3の実施形態によれば、樹脂製のバンドを容器本体1の口部から取り外すことが可能となるので、貯蔵容器本体1を高温消毒したり、バンドの周辺を掃除したりするうえで便利である。
【0022】
以上に説明したように、本発明の貯蔵容器用吊具バンドは、単一の部品により構成されているのでコストダウンが可能であり、貯蔵容器本体への装着作業性がよく、貯蔵容器本体の首部形状寸法に多少の誤差があっても確実な締め付けが行え、装着後は外れるおそれがない等の多くの利点を有するものである。また請求項3、4の発明によれば、バンドを容器本体の口部から取り外すことも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の貯蔵容器用吊具バンドが装着された貯蔵容器を示す斜視図である。
【図2】本発明の貯蔵容器用吊具バンドが装着された貯蔵容器も要部断面図である。
【図3】第1の実施形態の貯蔵容器用吊具バンドの平面図である。
【図4】第1の実施形態の貯蔵容器用吊具バンドの部分断面図である。
【図5】第2の実施形態の貯蔵容器用吊具バンドの平面図である。
【図6】第3の実施形態の貯蔵容器用吊具バンドの部分断面図である。
【図7】取り外し状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
1 貯蔵容器本体
2 蓋
3 ビード
4 バンド本体
5 吊具取付部
6 吊具
7 挿入片
8 鋸歯状の突条
9 バンド固定部
10 突出部
11 突出部
12 挿入孔
13 弾性ストッパ
20 第2の弾性ストッパ
21 スリット
22 突起
23 突起
24 指掛部
25 突状

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵容器本体の首部に巻付けられる樹脂製のバンド本体の対向位置に吊具取付部を突設するとともに、このバンド本体の先端部に鋸歯状の突条を備えた挿入片を形成し、またバンド本体の他端部には、この挿入片が挿入される挿入孔と、挿入片の突条と係合して挿入片の脱落を阻止する弾性ストッパとを備えたバンド固定部を形成したことを特徴とする貯蔵容器用吊具バンド。
【請求項2】
挿入片の突条よりもさらに先端部に、バンド固定部の挿入孔を貫通したときに外側に拡がってバンド固定部の端面と係合する第2の弾性ストッパを形成したことを特徴とする請求項1に記載の貯蔵容器用吊具バンド。
【請求項3】
弾性ストッパの外側に、弾性ストッパを外側に弾性変形させ、鋸歯状の突条との係合を強制的に解除するための突起を形成したことを特徴とする請求項1に記載の貯蔵容器用吊具バンド。
【請求項4】
挿入片の基部に、挿入片を挿入孔から抜き出すための指掛部を形成したことを特徴とする請求項3に記載の貯蔵容器用吊具バンド。
【請求項5】
全体が樹脂の一体成形品であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の貯蔵容器用吊具バンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−35329(P2009−35329A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306860(P2007−306860)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000102153)ウイストン株式会社 (4)
【Fターム(参考)】