貸金庫装置用の収納棚
【課題】任意の高さhの貸金庫ボックス20、20…を効率よく収納する。
【解決手段】各縦材には、一定のピッチp=ma(ただし、mは2以上の自然数、aは基準ピッチ)ごとに取付孔11a、11a…を上下方向に形成し、貸金庫ボックス20、20…を支持する各段の支持材12には、ピッチα=aごとにm個の取付孔12c、12c…を設け、一定の間隙δ=aを介して貸金庫ボックス20、20…を多段に支持する。
【解決手段】各縦材には、一定のピッチp=ma(ただし、mは2以上の自然数、aは基準ピッチ)ごとに取付孔11a、11a…を上下方向に形成し、貸金庫ボックス20、20…を支持する各段の支持材12には、ピッチα=aごとにm個の取付孔12c、12c…を設け、一定の間隙δ=aを介して貸金庫ボックス20、20…を多段に支持する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、貸金庫ボックスの内容積に関する顧客の要望に簡単に対応可能な貸金庫装置用の収納棚に関する。
【背景技術】
【0002】
金融機関の店舗などには、貸金庫装置を設置し、顧客の要望により、貴重品などを安全に保管することが少なくない(たとえば特許文献1、2)。
【0003】
貸金庫装置は、一般に、多数の貸金庫ボックスを金庫室内の収納棚に複列多段に収納し、各貸金庫ボックスを顧客ごとに割り当てている。そこで、顧客は、専用のブース内の操作端末を操作して認証を受け、自動搬送システムを介して自分の貸金庫ボックスをブース内にまで搬送させ、貸金庫ボックスの内部を利用することができる。また、利用済の貸金庫ボックスは、顧客の指示により、元の収納棚の位置に自動的に格納される。なお、貸金庫ボックスは、たとえば金庫室ごとに高さ(深さ)を一定に統一し、内容積を均一に揃えるのが普通である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−301663号公報
【特許文献2】特開2006−328753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる従来技術によるときは、金庫室内の貸金庫ボックスは、内容積が均一に揃えられているので、内容積の大小に関する顧客の要望に個別に対応することが極めて難しいという問題があった。
【0006】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、収納棚の縦材に形成する支持材用の取付孔のピッチと、各支持材に設ける複数の取付孔のピッチとの相対関係を適切に設定することによって、任意の高さの貸金庫ボックスを最も効率よく収納することができ、貸金庫ボックスの内容積に関する顧客の要望に容易に対応することができる貸金庫装置用の収納棚を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、前後左右の縦材と、縦材に多段にねじ止めする支持材と、支持材を介して支持する蓋付きの貸金庫ボックスとを備えてなり、各縦材は、一定のピッチpごとに支持材用の取付孔を上下方向に形成し、各支持材は、ピッチα≦δ<p(ただし、δは上下に隣接する貸金庫ボックスの間隙)ごとに複数個の取付孔を各縦材の取付孔に対応させて上下方向に形成することにより、任意の高さhの貸金庫ボックスを一定の間隙δを介して多段に支持することをその要旨とする。
【0008】
なお、各縦材は、ピッチp=ma(ただし、mは2以上の自然数、aは基準ピッチ)ごとに支持材用の取付孔を形成し、各支持材は、ピッチα=δ=aごとにm個の取付孔を形成することができる。
【0009】
また、支持材は、ピッチαごとに複数個の取付孔を上下方向に形成するに代えて、1個の取付孔の高さ位置をαずつ異ならせて形成する複数種から選択することができる。
【発明の効果】
【0010】
かかる発明の構成によるときは、各支持材は、それぞれの複数個の取付孔の1個を各縦材の取付孔に合わせて固定用のボルトを挿通することにより、各縦材に多段にねじ止めされている。ただし、固定用のボルトは、縦材側、支持材側の各取付孔の一方を雌ねじ付きのタップ孔として、タップ孔にねじ込んでもよく、各取付孔の双方を雌ねじなしのボルト孔として、ナットと組み合わせてもよい。また、一方の取付孔にナットを溶接して、タップ孔に代えてもよい。なお、支持材は、左右一対を前後の縦材の同一高さ位置に掛け渡して固定することにより、貸金庫ボックスを前後に出し入れ可能に支持することができる。ただし、左右一対の支持材は、一体に連結して全体強度を向上させてもよい。
【0011】
各縦材には、ピッチpごとに支持材用の取付孔が上下方向に形成されており、各支持材には、ピッチα≦δごとに複数個の取付孔が上下方向に形成されている。そこで、各段ごとの支持材は、各縦材の取付孔に対して同一の高さ位置の取付孔を合わせることにより、各縦材に対してpの整数倍ごとの一定間隔にねじ止めして固定することができ、上下方向の複数個の取付孔の1個を選択することにより、固定位置を上下方向にαずつ微調整可能である。
【0012】
一方、任意の高さhの貸金庫ボックスを支持する支持材の間隔は、上下の貸金庫ボックスの間隙δを考慮してh+δにする必要がある。これに対し、各支持材は、pの整数倍ごとの固定位置を上下方向にαずつ微調整することにより、h+δの固定間隔を実現することができる。ただし、各支持材に形成する複数の取付孔のピッチαは、各縦材の取付孔のピッチp、貸金庫ボックスの間隙δに対し、p、δの公約数に相当する数値から実用的な数値を選定すればよく、各支持材の取付孔の個数bは、(b−1)α≧pとして、各支持材の上下方向の微調整範囲が縦材側の取付孔のピッチpをカバーするように設定すればよい。
【0013】
すなわち、各支持材は、一定の間隙δを介して任意の高さhの貸金庫ボックスを最も効率よく多段に支持するように各縦材にねじ止め可能であり、貸金庫ボックスの内容積の大小に関する顧客の要望に簡単に対応することができる。なお、上下に隣接する貸金庫ボックスの間隙δは、貸金庫ボックスを支持材上に出し入れする際に、貸金庫ボックスを上昇させて各支持材の前端のストッパ部から外すために設けるものであり、たとえばδ=10〜20mmが実用的である。
【0014】
各縦材の取付孔のピッチp=maとする一方、各支持材の取付孔のピッチα=δ=aとし、個数m個とすれば、各貸金庫ボックスの高さh=na(ただし、n=1、2…)に設定することができ、全体の設計を最も単純にすることができる。ただし、aは、基準ピッチであり、上下に隣接する貸金庫ボックスの間隙δ以上の適当な値に設定する。また、mは、2以上の自然数である。
【0015】
支持材は、1個の取付孔の高さ位置をαずつ異ならせて形成する複数種のうちの1種を選択的に使用しても、前述と同様にして、固定位置を上下方向にαずつ微調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】要部分解斜視図
【図2】要部側面図
【図3】要部構成模式説明図
【図4】要部構成模式図
【図5】支持材の側面説明図
【図6】他の実施の形態を示す図3(A)相当図(1)
【図7】他の実施の形態を示す図3(B)相当説明図(1)
【図8】他の実施の形態を示す図4相当図(1)
【図9】他の実施の形態を示す図3(A)相当図(2)
【図10】他の実施の形態を示す図3(B)相当説明図(2)
【図11】他の実施の形態を示す図4相当図(2)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0018】
貸金庫装置用の収納棚は、前後左右の縦材11、11…と、縦材11、11…に多段にねじ止めする支持材12、12…と、支持材12、12…を介して支持する多数の貸金庫ボックス20、20…とを備えてなる(図1、図2)。ただし、図1には、1個の貸金庫ボックス20と、それを支持する左右一対の支持材12、12のみが図示されている。
【0019】
各縦材11は、上下に長いチャンネル材である。各縦材11は、前後の一対を互いに対向させるとともに、左右一対の間隔を貸金庫ボックス20の幅に適合させて枠状に立設されている。各縦材11の内側のフランジには、支持材12、12…用の取付孔11a、11a…がピッチp=a(ただし、aは基準ピッチ)ごとに上下方向に形成されている。なお、各取付孔11aは、支持材12の固定用の図示しないボルトに適合するタップ孔とする。
【0020】
各支持材12は、板材を断面L形に折り曲げて水平辺12a、垂直辺12bを形成し、垂直辺12bの前後両端部には、それぞれ支持材12の固定用のボルトを挿通する取付孔12cが各縦材11の取付孔11aに対応させて形成されている。また、水平辺12aの前端、後端には、それぞれ上向きのストッパ部12d、12eが形成されており、後のストッパ部12eは、前のストッパ部12dより高く形成されている。また、垂直辺12bの前端には、外側に開く斜めのガイド部12fが形成されている。
【0021】
貸金庫ボックス20は、平箱状の本体21の上面に蓋22を装着して構成されている。本体21の前面、後面には、それぞれ下向きのフック23が付設されており、フック23は、支持材12、12の後端のストッパ部12e、12eの間を前後に通過し得るように、長さ、位置が設定されている。蓋22は、ヒンジ22aを介して上方に開くことができ、顧客が保有する鍵を鍵穴22bに挿入して施錠し、解錠することができる。
【0022】
貸金庫ボックス20、20…は、各段の左右一対の支持材12、12を介して支持することにより、縦材11、11…内に上下多段に収納して支持することができる。なお、支持材12、12上の貸金庫ボックス20は、支持材12、12の前後のストッパ部12d、12d、12e、12eを介して前後方向に拘束され、地震などにより不用意に落下したりするおそれがない。
【0023】
貸金庫ボックス20を支持材12、12上に出し入れする際には、図示しない移載装置を介して前後のフック23、23の一方または双方を押し引きすることにより、貸金庫ボックス20を前後に駆動する。ただし、貸金庫ボックス20を支持材12、12上に収納するときは(図2の矢印K1 方向)、貸金庫ボックス20の少なくとも後端部分を前側のストッパ部12dより高く上昇させ、支持材12、12上の貸金庫ボックス20を引き出すときは(同図の矢印K2 方向)、貸金庫ボックス20の少なくとも前端部分をストッパ部12dより高く上昇させるものとする。そこで、各段の貸金庫ボックス20は、上下に隣接する他の貸金庫ボックス20との間に一定の間隙δを設けることにより、各段の支持材12、12上に出し入れ可能に支持されている。
【0024】
図2において、各貸金庫ボックス20は、高さh=4p=4aに設定されており、上下の間隙δ=p=aに設定されている。そこで、各段の支持材12、12…は、各縦材11のピッチp=aごとの取付孔11a、11a…を利用して一定間隔Δ=h+δ=5p=5aごとに固定することにより、一定の間隙δを介して貸金庫ボックス20、20…を多段に支持することができる(図3(A))。ただし、図3(A)は、各縦材11上の取付孔11a、11a…の位置、各段の支持材12、12…の固定位置、各段の支持材12、12…上の貸金庫ボックス20、20…の相対関係を模式的に図示している。
【0025】
同様にして、支持材12、12…の間隔Δ=11p=11aとすれば、高さh=10aの貸金庫ボックス20、20…に対応させることができ(図3(B)の最右列)、間隔Δ=(n+1)p=(n+1)aとすれば、任意の高さh=na(ただし、nは1以上の自然数)の貸金庫ボックス20、20…に対応させることができる(図3(B)の他の各列)。また、任意の高さh=naの貸金庫ボックス20、20…を混在させて多段に支持することも可能である(図4)。ただし、図3(B)、図4において、各列の貸金庫ボックス20、20…は、全部一定の間隙δ=aを介して多段に支持されている。また、図3、図4において、取付孔11a、11a…は、貸金庫ボックス20の最小高さh=4aを想定して、下から2〜4段分が省略されている。
【0026】
以上の説明において、収納棚は、たとえば高さh=4aの貸金庫ボックス20、20…を約40段収納可能な高さにして、たとえば3〜4列を単位として任意の列数を連接し、複列多段に構成することができる。また、収納棚の各列には、図3、図4の各列を任意に組み合わせて収納可能である。
【他の実施の形態】
【0027】
各縦材11には、ピッチp=2aごとに取付孔11a、11a…を形成し、各支持材12の前後両端部には、各縦材11の取付孔11aに対応させて、各2個の取付孔12c、12cをピッチα=aごとに上下方向に形成することができる(図5(B)、図6)。ただし、図5(A)は、比較のために図1、図2の支持材12を図示している。
【0028】
図6において、高さh=4aの貸金庫ボックス20、20…を一定の間隙δ=aを介して多段に支持するために、各段の支持材12、12…は、上下の取付孔12c、12cの一方を交互に選択して使用することにより、一定の間隔Δ=h+δ=5a=2p+a=3p−aを実現することができる。また、同様にして、任意の高さh=naの貸金庫ボックス20、20…を多段に支持することができ(図7(A)〜(D))、任意の高さh=naの貸金庫ボックス20、20…を混在させて多段に支持することもできる(図8)。ただし、図7(A)〜(D)、図8において、各列の貸金庫ボックス20、20…は、図6と同様に、各縦材11側のピッチp=2aごとの取付孔11a、11a…を利用して固定する各段の支持材12、12…を介し、全部一定の間隙δ=aを介して多段に支持されている。
【0029】
各縦材11には、ピッチp=3aごとに取付孔11a、11a…を形成してもよい(図9)。ただし、このとき、各支持材12の前後両端部には、各3個の取付孔12c、12c…を各縦材11の取付孔11aに対応させてピッチα=aごとに上下方向に形成する(図5(C))。
【0030】
図9において、各段の支持材12、12…は、上下の取付孔12c、12c…の1個を選択し、一定の間隔Δ=h+δ=5a=2p−a=p+2aを実現することにより、高さh=4aの貸金庫ボックス20、20…を一定の間隙δ=aを介して多段に支持することができる。また、同様にして、任意の高さh=naの貸金庫ボックス20、20…を多段に支持することができ(図10(A)〜(D))、任意の高さh=naの貸金庫ボックス20、20…を混在させて多段に支持することもできる(図11)。なお、図10(A)〜(D)、図11において、各列の貸金庫ボックス20、20…は、全部一定の間隙δ=aを介して多段に支持されている。
【0031】
以下同様にして、各縦材11には、ピッチp=ma(ただし、mは2以上の自然数)ごとに取付孔11a、11a…を上下方向に形成し、各支持材12の前後両端部には、それぞれピッチα=aごとにm個(ただし、m≧2)の取付孔12c、12c…を上下方向に形成することにより、任意の高さh=na(ただし、nは1以上の自然数)の貸金庫ボックス20、20…を一定の間隙δ=aを介して多段に支持することができる。各支持材12に形成するピッチα=aごとの取付孔12c、12c…の1個を選択的に使用することにより、各段の支持材12、12…の間隔Δを各縦材11の取付孔11a、11a…のピッチp=ma内においてαずつ上下方向に微調整することができるからである。また、このとき、各縦材11の取付孔11a、11a…は、ピッチp=aごとに形成する図1〜図4の場合に比して、個数を1/mに削減することができるから、たとえば各取付孔11aをタップ孔にするときなどにおいて、極めて大きな加工工数の削減効果を実現することができる。
【0032】
以上の論理は、各縦材11の取付孔11a、11a…のピッチp=maに対し、各貸金庫ボックス20の高さh≠naとし、上下に隣接する貸金庫ボックス20、20の間隙δ≠aとする場合にも拡張して適用可能である。すなわち、各支持材12の前後両端部には、それぞれピッチα≦δ<p、個数b≧p/α+1の取付孔12c、12c…を上下方向に形成し、各支持材12の固定位置を各縦材11上の取付孔11a、11a…のピッチpの範囲内にαずつ上下に微調整可能とすることにより、一定の間隙δを介して任意の高さhの貸金庫ボックス20、20…を多段に支持することができる。ただし、このときのピッチαは、p、δの公約数相当の数値であって、しかも実用的な数値を選定するものとする。
【0033】
なお、各支持材12は、前後両端部にそれぞれピッチαごとに複数個の取付孔12c、12c…を上下方向に形成するに代えて、前後両端部の各1個の取付孔12cの高さ位置をαずつ異ならせて形成する複数種を準備し、その1種を選択して使用しても、同等の効果を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
この発明は、貸金庫ボックス20以外の各種の収納箱等を多段に出し入れ自在に支持する自動倉庫形の収納棚などに対し、広く一般的に適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
11…縦材
11a…取付孔
12…支持材
12c…取付孔
20…貸金庫ボックス
特許出願人 株式会社 富士精工本社
代理人 弁理士 松 田 忠 秋
【技術分野】
【0001】
この発明は、貸金庫ボックスの内容積に関する顧客の要望に簡単に対応可能な貸金庫装置用の収納棚に関する。
【背景技術】
【0002】
金融機関の店舗などには、貸金庫装置を設置し、顧客の要望により、貴重品などを安全に保管することが少なくない(たとえば特許文献1、2)。
【0003】
貸金庫装置は、一般に、多数の貸金庫ボックスを金庫室内の収納棚に複列多段に収納し、各貸金庫ボックスを顧客ごとに割り当てている。そこで、顧客は、専用のブース内の操作端末を操作して認証を受け、自動搬送システムを介して自分の貸金庫ボックスをブース内にまで搬送させ、貸金庫ボックスの内部を利用することができる。また、利用済の貸金庫ボックスは、顧客の指示により、元の収納棚の位置に自動的に格納される。なお、貸金庫ボックスは、たとえば金庫室ごとに高さ(深さ)を一定に統一し、内容積を均一に揃えるのが普通である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−301663号公報
【特許文献2】特開2006−328753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる従来技術によるときは、金庫室内の貸金庫ボックスは、内容積が均一に揃えられているので、内容積の大小に関する顧客の要望に個別に対応することが極めて難しいという問題があった。
【0006】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、収納棚の縦材に形成する支持材用の取付孔のピッチと、各支持材に設ける複数の取付孔のピッチとの相対関係を適切に設定することによって、任意の高さの貸金庫ボックスを最も効率よく収納することができ、貸金庫ボックスの内容積に関する顧客の要望に容易に対応することができる貸金庫装置用の収納棚を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、前後左右の縦材と、縦材に多段にねじ止めする支持材と、支持材を介して支持する蓋付きの貸金庫ボックスとを備えてなり、各縦材は、一定のピッチpごとに支持材用の取付孔を上下方向に形成し、各支持材は、ピッチα≦δ<p(ただし、δは上下に隣接する貸金庫ボックスの間隙)ごとに複数個の取付孔を各縦材の取付孔に対応させて上下方向に形成することにより、任意の高さhの貸金庫ボックスを一定の間隙δを介して多段に支持することをその要旨とする。
【0008】
なお、各縦材は、ピッチp=ma(ただし、mは2以上の自然数、aは基準ピッチ)ごとに支持材用の取付孔を形成し、各支持材は、ピッチα=δ=aごとにm個の取付孔を形成することができる。
【0009】
また、支持材は、ピッチαごとに複数個の取付孔を上下方向に形成するに代えて、1個の取付孔の高さ位置をαずつ異ならせて形成する複数種から選択することができる。
【発明の効果】
【0010】
かかる発明の構成によるときは、各支持材は、それぞれの複数個の取付孔の1個を各縦材の取付孔に合わせて固定用のボルトを挿通することにより、各縦材に多段にねじ止めされている。ただし、固定用のボルトは、縦材側、支持材側の各取付孔の一方を雌ねじ付きのタップ孔として、タップ孔にねじ込んでもよく、各取付孔の双方を雌ねじなしのボルト孔として、ナットと組み合わせてもよい。また、一方の取付孔にナットを溶接して、タップ孔に代えてもよい。なお、支持材は、左右一対を前後の縦材の同一高さ位置に掛け渡して固定することにより、貸金庫ボックスを前後に出し入れ可能に支持することができる。ただし、左右一対の支持材は、一体に連結して全体強度を向上させてもよい。
【0011】
各縦材には、ピッチpごとに支持材用の取付孔が上下方向に形成されており、各支持材には、ピッチα≦δごとに複数個の取付孔が上下方向に形成されている。そこで、各段ごとの支持材は、各縦材の取付孔に対して同一の高さ位置の取付孔を合わせることにより、各縦材に対してpの整数倍ごとの一定間隔にねじ止めして固定することができ、上下方向の複数個の取付孔の1個を選択することにより、固定位置を上下方向にαずつ微調整可能である。
【0012】
一方、任意の高さhの貸金庫ボックスを支持する支持材の間隔は、上下の貸金庫ボックスの間隙δを考慮してh+δにする必要がある。これに対し、各支持材は、pの整数倍ごとの固定位置を上下方向にαずつ微調整することにより、h+δの固定間隔を実現することができる。ただし、各支持材に形成する複数の取付孔のピッチαは、各縦材の取付孔のピッチp、貸金庫ボックスの間隙δに対し、p、δの公約数に相当する数値から実用的な数値を選定すればよく、各支持材の取付孔の個数bは、(b−1)α≧pとして、各支持材の上下方向の微調整範囲が縦材側の取付孔のピッチpをカバーするように設定すればよい。
【0013】
すなわち、各支持材は、一定の間隙δを介して任意の高さhの貸金庫ボックスを最も効率よく多段に支持するように各縦材にねじ止め可能であり、貸金庫ボックスの内容積の大小に関する顧客の要望に簡単に対応することができる。なお、上下に隣接する貸金庫ボックスの間隙δは、貸金庫ボックスを支持材上に出し入れする際に、貸金庫ボックスを上昇させて各支持材の前端のストッパ部から外すために設けるものであり、たとえばδ=10〜20mmが実用的である。
【0014】
各縦材の取付孔のピッチp=maとする一方、各支持材の取付孔のピッチα=δ=aとし、個数m個とすれば、各貸金庫ボックスの高さh=na(ただし、n=1、2…)に設定することができ、全体の設計を最も単純にすることができる。ただし、aは、基準ピッチであり、上下に隣接する貸金庫ボックスの間隙δ以上の適当な値に設定する。また、mは、2以上の自然数である。
【0015】
支持材は、1個の取付孔の高さ位置をαずつ異ならせて形成する複数種のうちの1種を選択的に使用しても、前述と同様にして、固定位置を上下方向にαずつ微調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】要部分解斜視図
【図2】要部側面図
【図3】要部構成模式説明図
【図4】要部構成模式図
【図5】支持材の側面説明図
【図6】他の実施の形態を示す図3(A)相当図(1)
【図7】他の実施の形態を示す図3(B)相当説明図(1)
【図8】他の実施の形態を示す図4相当図(1)
【図9】他の実施の形態を示す図3(A)相当図(2)
【図10】他の実施の形態を示す図3(B)相当説明図(2)
【図11】他の実施の形態を示す図4相当図(2)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0018】
貸金庫装置用の収納棚は、前後左右の縦材11、11…と、縦材11、11…に多段にねじ止めする支持材12、12…と、支持材12、12…を介して支持する多数の貸金庫ボックス20、20…とを備えてなる(図1、図2)。ただし、図1には、1個の貸金庫ボックス20と、それを支持する左右一対の支持材12、12のみが図示されている。
【0019】
各縦材11は、上下に長いチャンネル材である。各縦材11は、前後の一対を互いに対向させるとともに、左右一対の間隔を貸金庫ボックス20の幅に適合させて枠状に立設されている。各縦材11の内側のフランジには、支持材12、12…用の取付孔11a、11a…がピッチp=a(ただし、aは基準ピッチ)ごとに上下方向に形成されている。なお、各取付孔11aは、支持材12の固定用の図示しないボルトに適合するタップ孔とする。
【0020】
各支持材12は、板材を断面L形に折り曲げて水平辺12a、垂直辺12bを形成し、垂直辺12bの前後両端部には、それぞれ支持材12の固定用のボルトを挿通する取付孔12cが各縦材11の取付孔11aに対応させて形成されている。また、水平辺12aの前端、後端には、それぞれ上向きのストッパ部12d、12eが形成されており、後のストッパ部12eは、前のストッパ部12dより高く形成されている。また、垂直辺12bの前端には、外側に開く斜めのガイド部12fが形成されている。
【0021】
貸金庫ボックス20は、平箱状の本体21の上面に蓋22を装着して構成されている。本体21の前面、後面には、それぞれ下向きのフック23が付設されており、フック23は、支持材12、12の後端のストッパ部12e、12eの間を前後に通過し得るように、長さ、位置が設定されている。蓋22は、ヒンジ22aを介して上方に開くことができ、顧客が保有する鍵を鍵穴22bに挿入して施錠し、解錠することができる。
【0022】
貸金庫ボックス20、20…は、各段の左右一対の支持材12、12を介して支持することにより、縦材11、11…内に上下多段に収納して支持することができる。なお、支持材12、12上の貸金庫ボックス20は、支持材12、12の前後のストッパ部12d、12d、12e、12eを介して前後方向に拘束され、地震などにより不用意に落下したりするおそれがない。
【0023】
貸金庫ボックス20を支持材12、12上に出し入れする際には、図示しない移載装置を介して前後のフック23、23の一方または双方を押し引きすることにより、貸金庫ボックス20を前後に駆動する。ただし、貸金庫ボックス20を支持材12、12上に収納するときは(図2の矢印K1 方向)、貸金庫ボックス20の少なくとも後端部分を前側のストッパ部12dより高く上昇させ、支持材12、12上の貸金庫ボックス20を引き出すときは(同図の矢印K2 方向)、貸金庫ボックス20の少なくとも前端部分をストッパ部12dより高く上昇させるものとする。そこで、各段の貸金庫ボックス20は、上下に隣接する他の貸金庫ボックス20との間に一定の間隙δを設けることにより、各段の支持材12、12上に出し入れ可能に支持されている。
【0024】
図2において、各貸金庫ボックス20は、高さh=4p=4aに設定されており、上下の間隙δ=p=aに設定されている。そこで、各段の支持材12、12…は、各縦材11のピッチp=aごとの取付孔11a、11a…を利用して一定間隔Δ=h+δ=5p=5aごとに固定することにより、一定の間隙δを介して貸金庫ボックス20、20…を多段に支持することができる(図3(A))。ただし、図3(A)は、各縦材11上の取付孔11a、11a…の位置、各段の支持材12、12…の固定位置、各段の支持材12、12…上の貸金庫ボックス20、20…の相対関係を模式的に図示している。
【0025】
同様にして、支持材12、12…の間隔Δ=11p=11aとすれば、高さh=10aの貸金庫ボックス20、20…に対応させることができ(図3(B)の最右列)、間隔Δ=(n+1)p=(n+1)aとすれば、任意の高さh=na(ただし、nは1以上の自然数)の貸金庫ボックス20、20…に対応させることができる(図3(B)の他の各列)。また、任意の高さh=naの貸金庫ボックス20、20…を混在させて多段に支持することも可能である(図4)。ただし、図3(B)、図4において、各列の貸金庫ボックス20、20…は、全部一定の間隙δ=aを介して多段に支持されている。また、図3、図4において、取付孔11a、11a…は、貸金庫ボックス20の最小高さh=4aを想定して、下から2〜4段分が省略されている。
【0026】
以上の説明において、収納棚は、たとえば高さh=4aの貸金庫ボックス20、20…を約40段収納可能な高さにして、たとえば3〜4列を単位として任意の列数を連接し、複列多段に構成することができる。また、収納棚の各列には、図3、図4の各列を任意に組み合わせて収納可能である。
【他の実施の形態】
【0027】
各縦材11には、ピッチp=2aごとに取付孔11a、11a…を形成し、各支持材12の前後両端部には、各縦材11の取付孔11aに対応させて、各2個の取付孔12c、12cをピッチα=aごとに上下方向に形成することができる(図5(B)、図6)。ただし、図5(A)は、比較のために図1、図2の支持材12を図示している。
【0028】
図6において、高さh=4aの貸金庫ボックス20、20…を一定の間隙δ=aを介して多段に支持するために、各段の支持材12、12…は、上下の取付孔12c、12cの一方を交互に選択して使用することにより、一定の間隔Δ=h+δ=5a=2p+a=3p−aを実現することができる。また、同様にして、任意の高さh=naの貸金庫ボックス20、20…を多段に支持することができ(図7(A)〜(D))、任意の高さh=naの貸金庫ボックス20、20…を混在させて多段に支持することもできる(図8)。ただし、図7(A)〜(D)、図8において、各列の貸金庫ボックス20、20…は、図6と同様に、各縦材11側のピッチp=2aごとの取付孔11a、11a…を利用して固定する各段の支持材12、12…を介し、全部一定の間隙δ=aを介して多段に支持されている。
【0029】
各縦材11には、ピッチp=3aごとに取付孔11a、11a…を形成してもよい(図9)。ただし、このとき、各支持材12の前後両端部には、各3個の取付孔12c、12c…を各縦材11の取付孔11aに対応させてピッチα=aごとに上下方向に形成する(図5(C))。
【0030】
図9において、各段の支持材12、12…は、上下の取付孔12c、12c…の1個を選択し、一定の間隔Δ=h+δ=5a=2p−a=p+2aを実現することにより、高さh=4aの貸金庫ボックス20、20…を一定の間隙δ=aを介して多段に支持することができる。また、同様にして、任意の高さh=naの貸金庫ボックス20、20…を多段に支持することができ(図10(A)〜(D))、任意の高さh=naの貸金庫ボックス20、20…を混在させて多段に支持することもできる(図11)。なお、図10(A)〜(D)、図11において、各列の貸金庫ボックス20、20…は、全部一定の間隙δ=aを介して多段に支持されている。
【0031】
以下同様にして、各縦材11には、ピッチp=ma(ただし、mは2以上の自然数)ごとに取付孔11a、11a…を上下方向に形成し、各支持材12の前後両端部には、それぞれピッチα=aごとにm個(ただし、m≧2)の取付孔12c、12c…を上下方向に形成することにより、任意の高さh=na(ただし、nは1以上の自然数)の貸金庫ボックス20、20…を一定の間隙δ=aを介して多段に支持することができる。各支持材12に形成するピッチα=aごとの取付孔12c、12c…の1個を選択的に使用することにより、各段の支持材12、12…の間隔Δを各縦材11の取付孔11a、11a…のピッチp=ma内においてαずつ上下方向に微調整することができるからである。また、このとき、各縦材11の取付孔11a、11a…は、ピッチp=aごとに形成する図1〜図4の場合に比して、個数を1/mに削減することができるから、たとえば各取付孔11aをタップ孔にするときなどにおいて、極めて大きな加工工数の削減効果を実現することができる。
【0032】
以上の論理は、各縦材11の取付孔11a、11a…のピッチp=maに対し、各貸金庫ボックス20の高さh≠naとし、上下に隣接する貸金庫ボックス20、20の間隙δ≠aとする場合にも拡張して適用可能である。すなわち、各支持材12の前後両端部には、それぞれピッチα≦δ<p、個数b≧p/α+1の取付孔12c、12c…を上下方向に形成し、各支持材12の固定位置を各縦材11上の取付孔11a、11a…のピッチpの範囲内にαずつ上下に微調整可能とすることにより、一定の間隙δを介して任意の高さhの貸金庫ボックス20、20…を多段に支持することができる。ただし、このときのピッチαは、p、δの公約数相当の数値であって、しかも実用的な数値を選定するものとする。
【0033】
なお、各支持材12は、前後両端部にそれぞれピッチαごとに複数個の取付孔12c、12c…を上下方向に形成するに代えて、前後両端部の各1個の取付孔12cの高さ位置をαずつ異ならせて形成する複数種を準備し、その1種を選択して使用しても、同等の効果を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
この発明は、貸金庫ボックス20以外の各種の収納箱等を多段に出し入れ自在に支持する自動倉庫形の収納棚などに対し、広く一般的に適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
11…縦材
11a…取付孔
12…支持材
12c…取付孔
20…貸金庫ボックス
特許出願人 株式会社 富士精工本社
代理人 弁理士 松 田 忠 秋
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後左右の縦材と、該縦材に多段にねじ止めする支持材と、該支持材を介して支持する蓋付きの貸金庫ボックスとを備えてなり、前記各縦材は、一定のピッチpごとに前記支持材用の取付孔を上下方向に形成し、前記各支持材は、ピッチα≦δ<p(ただし、δは上下に隣接する前記貸金庫ボックスの間隙)ごとに複数個の取付孔を前記各縦材の取付孔に対応させて上下方向に形成することにより、任意の高さhの前記貸金庫ボックスを一定の間隙δを介して多段に支持することを特徴とする貸金庫装置用の収納棚。
【請求項2】
前記各縦材は、ピッチp=ma(ただし、mは2以上の自然数、aは基準ピッチ)ごとに前記支持材用の取付孔を形成し、前記各支持材は、ピッチα=δ=aごとにm個の取付孔を形成することを特徴とする請求項1記載の貸金庫装置用の収納棚。
【請求項3】
前記支持材は、ピッチαごとに複数個の取付孔を上下方向に形成するに代えて、1個の取付孔の高さ位置をαずつ異ならせて形成する複数種から選択することを特徴とする請求項1または請求項2記載の貸金庫装置用の収納棚。
【請求項1】
前後左右の縦材と、該縦材に多段にねじ止めする支持材と、該支持材を介して支持する蓋付きの貸金庫ボックスとを備えてなり、前記各縦材は、一定のピッチpごとに前記支持材用の取付孔を上下方向に形成し、前記各支持材は、ピッチα≦δ<p(ただし、δは上下に隣接する前記貸金庫ボックスの間隙)ごとに複数個の取付孔を前記各縦材の取付孔に対応させて上下方向に形成することにより、任意の高さhの前記貸金庫ボックスを一定の間隙δを介して多段に支持することを特徴とする貸金庫装置用の収納棚。
【請求項2】
前記各縦材は、ピッチp=ma(ただし、mは2以上の自然数、aは基準ピッチ)ごとに前記支持材用の取付孔を形成し、前記各支持材は、ピッチα=δ=aごとにm個の取付孔を形成することを特徴とする請求項1記載の貸金庫装置用の収納棚。
【請求項3】
前記支持材は、ピッチαごとに複数個の取付孔を上下方向に形成するに代えて、1個の取付孔の高さ位置をαずつ異ならせて形成する複数種から選択することを特徴とする請求項1または請求項2記載の貸金庫装置用の収納棚。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−116512(P2011−116512A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276391(P2009−276391)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000154288)株式会社富士精工本社 (11)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000154288)株式会社富士精工本社 (11)
【Fターム(参考)】
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