説明

貼付剤および貼付製剤

【課題】本発明は、貼付剤を包装体内に収容した際に、包装体から容易に取り出すことができる貼付剤を提供することを課題とする。
【解決手段】支持体と、その少なくとも片面に粘着剤層を有する貼付剤本体と、該貼付剤本体の粘着面に仮着された仮着部と、貼付剤本体の外方へ延出する延出部とを有する剥離ライナーとを備える貼付剤であって、該剥離ライナーは、その延出部の少なくとも一部に、直線状の折り曲げ線で境界付けられ、該延出部の端部が貼付剤本体側に折り曲げられた第1折り曲げ部を有し、該折り曲げ線に垂直な平面による、該貼付剤の断面形状において、該第1折り曲げ部と、該仮着部からの延長線とが、該貼付剤本体の遠位側になす角度は、直角より小さいものである、貼付剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体と、その少なくとも片面に粘着剤層を有する貼付剤本体と、該貼付剤本体の粘着面に仮着された仮着部と、貼付剤本体の外方へ延出する延出部とを有する剥離ライナーとを備える貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、皮膚を保護するため、または薬物を皮膚面を通して生体内へ投与するためなどの目的で、種々の貼付剤および貼付製剤が開発されている。特に近年、剥離時に皮膚への物理的刺激を低減し、またはソフトな貼付感を持たせるために、粘着剤層に有機液状成分を含有させた柔らかい粘着剤層が開発されている。また、粘着剤層に多量の薬物を溶解、保持させるなどの目的で厚い粘着剤層が使用されることがある。
【0003】
しかし、このような貼付剤は、粘着剤層が柔らかい、または厚いため、端部から粘着剤層がはみ出したり、貼付剤保管中にいわゆるコールドフロー現象により、粘着剤層が流れ出し、貼付剤の包装体の内壁へ付着し、貼付剤を包装体から取り出しにくかったり、使用時に手がべとついて不快感を与えることがある。このような現象を回避する技術としていわゆるドライエッジが知られている。
【0004】
特開平11−1432号公報(特許文献1)には、剥離ライナーを支持体および粘着剤層の端部から延出させた、ドライエッジあるいはアイランドカットなどと呼ばれる構造を有する貼付剤が開示されている。このような貼付剤は、剥離ライナーに接する粘着剤層の端部から粘着剤層がはみ出したり、流れ出すことはある程度まで抑制される。しかし、このような貼付剤は、包装体に収容された場合、包装体内壁に密着しえることから、貼付剤を包装体から容易に取り出すことが出来ない可能性がある。
【0005】
実公平4−51782号公報(特許文献2)には、そのような構造の貼付剤の剥離ライナーの延出部において、突状部を設けた貼付剤が開示されている。このような貼付剤では、突状部が、包装体を傷つけるおそれがある。さらに、このような貼付剤は、突状部を新たに設ける煩雑な別の製造工程を要する弊害もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−1432
【特許文献2】実公平4−51782
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記に鑑み、本発明は、貼付剤を包装体内に収容した際に、包装体から容易に取り出すことができる貼付剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、貼付剤を特定形状とすることで上記課題を解決することができることを見出した。また、本発明者らは意外にも、貼付剤の上記特定形状により、貼付剤が包装体内壁に接触し、包装体を傷つける可能性を低減することが可能となる新たな効果を奏することを見出し、本発明を完成するにいたった。すなわち、本発明は、
(1)
支持体と、その少なくとも片面に粘着剤層を有する貼付剤本体と、該貼付剤本体の粘着面に仮着された仮着部と、貼付剤本体の外方へ延出する延出部とを有する剥離ライナーとを備える貼付剤であって、該剥離ライナーは、その延出部の少なくとも一部に、直線状の折り曲げ線で境界付けられ、該延出部の端部が貼付剤本体側に折り曲げられた第1折り曲げ部を有し、該折り曲げ線に垂直な平面による、該貼付剤の断面形状において、該第1折り曲げ部と、該仮着部からの延長線とが、該貼付剤本体の遠位側になす角度は、直角より小さいものである、貼付剤;
(2)
該断面形状における該角度が、5〜70度の範囲内にある、(1)記載の貼付剤;
(3)
該断面形状は、貼付剤の厚さ方向において、第1折り曲げ部の端部と、剥離ライナーの仮着部の延長線との距離は、支持体の露出表面と該仮着部の距離よりも小さいものである、(1)または(2)記載の貼付剤;
(4)
該剥離ライナーの該延出部は、該第1折り曲げ部の該貼付剤中央部側に、該貼付剤本体側とは反対側に折り曲げられた第2折り曲げ部をさらに有する、(1)乃至(3)いずれかに記載の貼付剤;並びに
(5)
該剥離ライナーの平面形状は、第1辺および該第1辺に対向する第2辺を有する略矩形であり、
該第1折り曲げ部は、該第1辺および該第2辺に沿って延在する、(1)〜(4)いずれかに記載の貼付剤;
を提供する。
【発明の効果】
【0009】
このような貼付剤が包装体内に収容されたとき、剥離ライナーの第1折り曲げ部が、粘着剤層側面端部と包装体の内壁との接触の機会を低減することができるので、粘着剤層が包装体の内壁に付着を抑制することができる。特に、貼付剤の保管中に、粘着剤層が流れ出し(コールドフロー)、はみ出した場合、この効果は顕著となる。
【0010】
また、このような貼付剤が包装体内に収容され、貼付剤の支持体側から包装体へ外力が加わることにより、包装体内壁が、貼付剤の支持体に接触する場合を想定する。かかる場合、該貼付剤の断面形状は、該第1折り曲げ部と、該仮着部からの延長線とが、該貼付剤本体の遠位側になす角度が、直角より小さいので、第1折り曲げ部が、かかる外力に対してクッション的に作用することができることで、貼付剤の支持体への荷重を低減することができる。それによって粘着剤層が包装体の内壁に付着することを抑制することができる。したがって、本発明の貼付剤は、包装体に収容された場合に、包装体から容易に取り出すことが出来る。
【0011】
加えて、かかる角度が直角より小さいので、該第1折り曲げ部端部が包装体内壁に接触し、包装体を傷つける可能性を低減することも可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施態様を示すが、それらの詳細な説明および特定の例は、例示の目的のみのためのものであることが意図されており、本発明の範囲を限定しない。以下の好ましい実施態様の説明は、単に例示的な性質のものであり、決して本発明、その応用、または用途を限定することが意図されるわけではない。
【0013】
図1は、本発明の例示的貼付剤の、模式的斜視図である。貼付剤1は、支持体2と、その少なくとも片面に粘着剤層3を有する貼付剤本体4と、該貼付剤本体4の粘着面に仮着された仮着部5と、貼付剤本体の外方へ延出する延出部6とを有する剥離ライナー7とを有する。剥離ライナー7は、その延出部6の少なくとも一部に、直線状の折り曲げ線8で境界付けられ、延出部6の端部が貼付剤本体4側に折り曲げられた第1折り曲げ部9を有する。
【0014】
図1の例では、貼付剤の平面形状は、第1辺および該第1辺に対向する第2辺を有する略矩形であり、第1折り曲げ部は、貼付剤の矩形の第1辺に沿って延在する。第1折り曲げ部は、第2辺に沿ってもまた、延在することが、容易に包装体から取り出すことが出来る点で好ましい。
【0015】
次に、図2Aは、図1に示された貼付剤の、折り曲げ線8に垂直な平面における、該貼付剤1の断面形状を示す模式的断面図である。図2Aにおいて、剥離ライナー7の第1折り曲げ部9と、仮着部5からの延長線10とが、該貼付剤本体4の遠位側になす角度11は、0度より大きく、直角より小さいものである。
【0016】
図2Bは、図2Aの貼付剤を包装体13に収容した際の、貼付剤1の剥離ライナー7の延出部6と、包装体13の内壁との位置関係を示す模式的断面図である。かかる形状とすることで、貼付剤1を包装体に収容した場合、包装体13内壁を、貼付剤の支持体2から離間させつつ、かつ包装体13内壁が第1折り曲げ部9の端部と、包装体13内壁と強く当接する機会を低減することで、粘着剤層の包装体13内壁へ付着することを抑制することができる。したがって、このような貼付剤1は、包装体13からの取り出しが容易であり、かつ第1折り曲げ部9の端部の、包装体13内壁への接触に起因し得る包装体13内壁の傷、包装体のピンホール発生の可能性を効果的に抑制することが出来る。
【0017】
再び図2Aを参照すると、そのような断面形状における第1折り曲げ部9と、仮着部5からの延長線10とが、該貼付剤本体4の遠位側になす角度11は、5〜70度の範囲内にある。該角度が5度以上であることで、このような貼付剤が包装体内に収容されたとき、剥離ライナーの第1折り曲げ部が、粘着剤層側面端部と包装体の内壁との接触の機会を確実に低減することができる。一方、該角度が70度以下であることで、当該外力に対してクッション効果を十分に発揮することができるので、第1折り曲げ部9の端部と、包装体13内壁との接触に起因し得る包装体内壁の傷、包装体のピンホール発生の可能性を効果的に抑制することが出来る。
【0018】
また、図2Aにおいて、このような断面形状は、貼付剤1の厚さ方向において、第1折り曲げ部9の端部と、剥離ライナーの仮着部5の延長線との距離12は、支持体2の露出表面と該仮着部の距離(すなわち貼付剤本体の厚さ)よりもより小さいものである。かかる形状とすることで、第1折り曲げ部9の端部が、包装体13内壁と強く当接する機会を低減することで、粘着剤層の包装体13内壁へ付着することを効果的に抑制することができる。
【0019】
図3Aは、本発明の貼付剤の別の実施態様を示す模式的断面図である。そのような断面形状は、貼付剤の厚さ方向において、第1折り曲げ部9の端部と、剥離ライナー7の仮着部5の延長線10との距離は、支持体2の露出表面と仮着部5の距離12以上のものである。そのような断面形状における第1折り曲げ部9と、仮着部5からの延長線10とが、該貼付剤本体4の遠位側になす角度11は、5〜70度の範囲内にある。
【0020】
図3Bは、図3Aの貼付剤を包装体13に収容した際の、貼付剤1の剥離ライナー7の延出部6と、包装体13の内壁との位置関係を示す模式的断面図である。このような形状とすることで、包装体13内壁を、貼付剤の支持体2から十分に離間させることができる。したがって、粘着剤層が包装体13の内壁へ付着することを、十分抑制することが可能であるので、このような貼付剤を、包装体13からきわめて容易に取り出すことができる。
【0021】
図4に示されるように、剥離ライナーの該延出部は、第1折り曲げ部9の該貼付剤中央部側に、該貼付剤本体4側とは反対側に折り曲げられた第2折り曲げ部14をさらに有することができる。かかる第2折り曲げ部14は、第1折り曲げ部9と相互作用し、クッション的な作用をさらに増大させることができるため、本発明の効果を増強することができる。
【0022】
図5は、従来の貼付剤の例の模式的断面図を示す。このような貼付剤は、本発明のような第1折り曲げ部を有しないため、包装体13内壁と、貼付剤の支持体2とが常時接触しており、粘着剤層3は包装体内壁12に付着する可能性が高い。
【0023】
以上のような本発明の貼付剤において、支持体としては特に限定されず、自体公知のフィルム状またはシート状材料が用いられる。そのような支持体は、実質的に薬物、添加剤などの粘着剤層中の成分が不透過性であるもの、これらが支持体中を通って背面から失われて含有量の低下を引き起こさないものが好ましい。
【0024】
このような支持体としては、例えば、ポリエステル、ナイロン、サラン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、サーリン(登録商標)、金属箔などの単独フィルム又はこれらの積層フィルムなどが挙げられる。
【0025】
粘着剤層としては、特に限定されず:アクリル系重合体からなるアクリル系粘着剤;スチレン−ジエン−スチレンブロック共重合体(例えばスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体など)、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエンなどのゴム系粘着剤;シリコーンゴム、ジメチルシロキサンベース、ジフェニルシロキサンベースなどのシリコーン系粘着剤;ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル系粘着剤;酢酸ビニル−エチレン共重合体などのビニルエステル系粘着剤;ジメチルテレフタレート、ジメチルイソフタレート、ジメチルフタレートなどのカルボン酸成分とエチレングリコールなどの多価アルコール成分からなるポリエステル系粘着剤などが挙げられる。 皮膚接着性の観点から疎水性粘着剤が好ましく、非含水系の粘着剤層が好ましい。
【0026】
なかでも、ゴム系粘着剤は、粘着剤層のはみ出しまたは流れ出しが起こりやすい傾向にあることから、これを効果的に抑制できる本発明は、ゴム系粘着剤を粘着剤層に採用する場合に特に有利である。粘着剤層は架橋でも非架橋でもよいが、非架橋の場合、粘着剤層が包装体内壁に付着する傾向にあるため、本発明は特に有利である。
【0027】
ゴム系粘着剤は、適度な粘着力および薬剤溶解性を得るために、同一成分または異なる成分で平均分子量の異なるものを混合して使用することができる。例えば、ポリイソブチレンを例に挙げて説明すると、平均分子量300,000〜2,500,000の高分子量のポリイソブチレンと、平均分子量10,000〜200,000の中分子量のポリイソブチレンおよび/または平均分子量500〜4,000の低分子量のポリイソブチレンとの混合物が好ましい。
【0028】
ここで、高分子量のポリイソブチレンを10〜80重量%、好ましくは20〜50重量%、中分子量のポリイソブチレンを0〜90重量%、好ましくは10〜80重量%、低分子量のポリイソブチレンを0〜80重量%、好ましくは10〜60重量%の割合で配合することが好適である。ここにいう平均分子量とは、Flory の粘度式から計算される粘度平均分子量である。
【0029】
ゴム系粘着剤には、適度な粘着性を付与するために、例えば、ロジン系樹脂、ポリテルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、石油系樹脂、テルペン−フェノール樹脂、キシレン樹脂などの粘着付与剤が配合されていてもよく、これらは一種でまたは2種以上混合して用いられる。粘着付与剤は、粘着剤層中に例えば10〜40重量%である。
【0030】
所望により、粘着剤層は薬物を含み、貼付製剤を提供することができる。ここにいう薬物は特に限定されず、ヒトなどの哺乳動物にその皮膚を通して投与し得る、すなわち経皮吸収可能な薬物が好ましい。薬物の粘着剤層中における濃度は、例えば0.5〜40重量%、好ましくは1.0〜30重量%である。
【0031】
本発明の貼付剤において、粘着剤層は、有機液状成分を含む場合に特に有利である。粘着剤層が有機液状成分を含む場合、粘着剤層は可塑化する傾向にある。可塑化した粘着剤層は、貼付剤の保管中に、粘着剤層端部からはみ出し、または流れ出し(コールドフロー)、それによって、粘着剤層が包装体内壁に付着して、貼付剤を包装体から取り出すことが困難となる可能性がある。本発明の貼付剤は、折り曲げ部により、そのような可能性を十分に低減することが可能である。
【0032】
そのような有機液状成分としては、特に限定されず、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのグリコール類、オリーブ油、ヒマシ油、ラノリンなどの油脂類、スクアラン、流動パラフィンのような炭化水素類、各種界面活性剤、エトキシ化ステアリルアルコール、オレイン酸モノグリセリド、カプリル酸モノグリセリド、ラウリル酸モノグリセリドのようなグリセリンモノエステル、ポリプロピレン(一般的には、ポリアルキレン)グリコールジアルキルエステルなどのグリセリンジエステル、グリセリントリアセテートなどのグリセリントリエステル、またはそれらの混合物、クエン酸トリエチルなどの脂肪酸アルキルエステル、長鎖アルコール、オレイン酸、カプリル酸のような高級脂肪酸、N−メチルピロリドン、N−ドデシルピロリドンのようなピロリドン類、デシルメチルスルホキシドのようなスルホキシド類、1,3−ブタンジオールなどが挙げられ、これらは1種でも2種以上混合してもよい。有機液状成分は粘着剤層の全重量基準で、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは15〜60重量%、最も好ましくは20〜60重量%含有させることができる。10重量%以上含有される場合に、粘着剤層が可塑化しやすく、粘着剤層のはみ出しまたは流れ出しが起こりやすいので、これを効果的に抑制できる本発明はこのような場合に有利である。なお、60重量%を超えて含有される場合、粘着剤層が一定形状を保持することが困難となる可能性がある。所望により、貼付剤の粘着剤層は経皮吸収性の薬物を含むことができる。その場合本明細書では、貼付製剤と称する。
【0033】
粘着剤層は架橋されてもよい。非架橋の粘着剤層の場合、粘着剤層の端部あるいは存在する場合の弱化線から、粘着剤層がはみ出し、または流れ出しやすい傾向にある。したがって、本発明は、これを効果的に抑制しうる点で、非架橋粘着剤層において特に有利である。
【0034】
剥離ライナーとしては特に限定されず、シート状のものであれば差し支えない。その材質としては、この分野で自体既知のものが挙げられ、具体的にはポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、各種アクリル系及びメタクリル系ポリマー、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、酢酸セルロース(アセテート)、再生セルロース(セロファン)、セルロイドなどのプラスチックフィルム、あるいは上質紙またはグラシン紙などとポリオレフィンとのラミネートフィルムなどが例示される。本発明では、所定形状を維持するためにはある程度の剛性を有するポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルを用いることが好ましい。剥離ライナーは、粘着剤層との剥離を容易にするように粘着剤との仮着面側が易剥離処理されたものが好ましい。
【0035】
剥離ライナーには、使用時に剥離ライナーの剥離を助ける弱化線を有することが好ましい。弱化線の平面形状は、直線状、曲線状およびそれらの組み合わせでもよい。剥離が容易となるためには、曲線部分を有する平面形状が好ましい。弱化線は、完全に切断されていても、連結部を有しても、例えば破線状であってもよい。弱化線の断面形状は、完全に切れていても、底部においてわずかに連接されていてもよい。
【0036】
以上のような貼付剤の製造は、自体公知の方法によることができる。例えば、剥離ライナーを用意し、剥離ライナーの片面に粘着剤層を積層し、該粘着剤層上に支持体を積層する。あるいは、支持体を用意し、支持体の片面に粘着剤層を積層し、該粘着剤層上に剥離ライナーを積層する。積層の手法としては、特に限定されず、キャスティング、塗布、接着、融着、溶着などが挙げられる。弱化線は、剥離ライナーの積層前、中および/または後に剥離ライナー表面に、例えばダイロール、レザーなどの刃物加工、レーザー加工などで形成することができる。
【0037】
以下に本発明を具体例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)塗工液の調合
トルエン875.0g、n−ヘキサン875.0g、高分子量ポリイソブチレン(粘度平均分子量2,000,000)104.3g、中分子量ポリイソブチレン(粘度平均分子量120,000)208.7g、脂環族飽和炭化水素樹脂 208.7g、油性液状成分(ミリスチン酸イソプロプロピル) 228.2gを秤量し、均一となるまで攪拌して塗工液とした。
(2)塗工
塗工液を、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(以下「PET」)製の剥離ライナーの軽剥離面に、乾燥後の粘着剤層厚さが200μmとなるように塗布した。乾燥後、粘着剤層を、PET製フィルムとPET製不織布との積層体(厚さ30μm)である支持体のPET不織布面と貼り合わせて貼付剤の原反を作製した。
(3)貼付剤の作製
得られた原反から、4cm×4cmの正方形の平面形状を有する貼付剤本体、および5cm×5cmの正方形の平面形状を有する剥離ライナーからなる粗貼付剤を打ち抜いた。粗貼付剤の剥離ライナーの第1辺および/または第2辺に沿って延在する折り曲げ部を、剥離ライナーの折り曲げ線に相当する位置に金尺に強く圧着することによって形成し、貼付剤を得た。
【0038】
いずれの実施例の貼付剤においても、折り曲げ線に垂直な平面における、該貼付剤の断面形状は、第1折り曲げ部と、仮着部からの延長線とが、該貼付剤本体の遠位側になす角度は約45度であった。また、いずれの実施例貼付剤においても断面形状は、貼付剤の厚さ方向において、第1折り曲げ部の端部と、剥離ライナーの仮着部の延長線との距離は、支持体の露出表面と該仮着部の距離よりも小さいものであった。
比較例1 折り曲げ部なし。図4A参照。
実施例1 剥離ライナーの第1辺のみに第1折り曲げ部あり。図4B参照。
実施例2 剥離ライナーの第1辺および第2辺の両方に第1折り曲げ部あり。図4C参照。
実施例3 剥離ライナーの第1辺のみに第1折り曲げ部および第2折り曲げ部あり。 図4D参照。
(4)試験例
貼付剤を、2枚のアルミ/PET包材(49cm2)を4方シールした包装体で封入した。これを、10枚重ね、更に200gの板状錘を上に乗せて40℃の雰囲気下で3日間保管した。パネラーA〜Eの5名がそれぞれ、5個の包装体の隣あった2辺を開封し、貼付剤を取り出した。そのときに、はみ出した粘着剤層が包装体の内壁に付着して引っかかったと感じられた包装体の個数をカウントした。
【0039】
【表1】

【0040】
表1から明らかなように、いずれの実施例でも、比較例よりも、包装体から取り出しやすかった。また、剥離ライナーの第1辺および第2辺の両方に第1折り曲げ部を有する実施例2(図4C参照)のほうが、剥離ライナーの第1辺のみに第1折り曲げ部を有する実施例1(図4B参照)よりも、包装体から取り出しやすかった。さらに、剥離ライナーの第1辺のみに第1折り曲げ部および第2折り曲げ部を有する実施例3(図4D参照)のほうが、剥離ライナーの第1辺のみに第1折り曲げ部を有する実施例1(図4B参照)よりも、包装体から取り出しやすかった。
【0041】
本発明の説明は、単に例示的な性質のものであり、かくして本発明の要旨から離れないその変形態様は、本発明の範囲内であるべきことが意図される。そのような変形態様は、本発明の精神および範囲から離れるものとしてみなされるべきではない。
【符号の説明】
【0042】
1 貼付剤
2 支持体
3 粘着剤層
4 貼付剤本体
5 仮着部
6 延出部
7 剥離ライナー
8 折り曲げ線
9 第1折り曲げ部
10 延長線
11 角度
12 距離
13 包装体
14 第2折り曲げ部
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、本発明の例示的貼付剤の、模式的斜視図である。
【図2】図2は、本発明の例示的貼付剤の、模式的断面図である。
【図3】図3は、本発明の例示的貼付剤の、模式的断面図である。
【図4】図4は、本発明の例示的貼付剤の、模式的断面図である。
【図5】図5は、従来の例示的貼付剤の、模式的断面図である。
【図6】図6は、本発明の例示的貼付剤の、模式的断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、その少なくとも片面に粘着剤層を有する貼付剤本体と、該貼付剤本体の粘着面に仮着された仮着部と、貼付剤本体の外方へ延出する延出部とを有する剥離ライナーとを備える貼付剤であって、
該剥離ライナーは、その延出部の少なくとも一部に、直線状の折り曲げ線で境界付けられ、該延出部の端部が貼付剤本体側に折り曲げられた第1折り曲げ部を有し、
該折り曲げ線に垂直な平面による、該貼付剤の断面形状において、該第1折り曲げ部と、該仮着部からの延長線とが、該貼付剤本体の遠位側になす角度は、直角より小さいものである、
ことを特徴とする貼付剤。
【請求項2】
該断面形状における該角度が、5〜70度の範囲内にある、請求項1記載の貼付剤。
【請求項3】
該断面形状は、貼付剤の厚さ方向において、第1折り曲げ部の端部と、剥離ライナーの仮着部の延長線との距離は、支持体の露出表面と該仮着部の距離よりも小さいものである、請求項1記載の貼付剤。
【請求項4】
該剥離ライナーの該延出部は、該第1折り曲げ部の該貼付剤中央部側に、該貼付剤本体側とは反対側に折り曲げられた第2折り曲げ部をさらに有する、請求項1記載の貼付剤。
【請求項5】
該剥離ライナーの平面形状は、第1辺および該第1辺に対向する第2辺を有する略矩形であり、
該第1折り曲げ部は、該第1辺および該第2辺に沿って延在する、請求項1〜4いずれかに記載の貼付剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−125554(P2011−125554A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288080(P2009−288080)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】