説明

貼付剤および貼付製剤

【課題】疎水性の粘着剤層が極性の高い有機流体成分を含有してもブルーミングせず、接着力の高い粘着剤層を備えた貼付剤及び貼付製剤の提供。
【解決手段】支持体の少なくとも片面に粘着剤層を備える貼付剤であって、粘着剤層が、粘度平均分子量1,700,000〜6,500,000の合成ゴム、高極性有機流体成分、タッキファイヤー、及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含む。また、貼付製剤においては、上記粘着剤層がさらに薬物を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体の少なくとも片面に粘着剤層を有する貼付剤および貼付製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、皮膚を保護するため、又は薬物を皮膚面を通して生体内へ投与するため等の目的で、種々の貼付剤および貼付製剤が開発されている。
【0003】
貼付製剤の粘着剤層の粘着剤として用いられる合成ゴムは、官能基を持たないため粘着剤層中の薬物の安定性の点で好ましく、また、薬物の放出性が良いという長所がある。しかし、このような合成ゴムは、官能基を持たないために疎水性であり、粘着剤層に高極性の有機流体成分を含有させる場合には、有機流体成分との相溶性が低いために問題が生じる。つまり、合成ゴムと有機流体成分との相溶性が低いと、粘着剤表面に有機流体成分がブルーミングして接着力の低下を引き起こして、貼付製剤を貼付対象に貼付してもすぐに剥がれてしまう。このため、粘着剤に合成ゴムを使用した粘着剤層に、粘着剤層へのソフト感の付与や、貼付製剤を皮膚から剥離する時の皮膚接着力に起因する痛みや刺激の軽減のために、有機流体成分を含有させる場合、有機流体成分に極性の低い有機流体成分しか使用できず、そのために薬物も極性の低いものに限定されてしまう。
【0004】
粘着剤層に粘着剤と相溶性の低い成分を含有させる場合の問題の解消を課題として取り扱った文献としては、例えば、次のようなものがある。
特許文献1は、粘着剤、難水溶性薬物、難水溶性薬物を溶解する3種の有機流体成分、及び架橋ポリビニルピロリドンを含む貼付製剤を開示する。ここで、架橋ポリビニルピロリドンは、ゴム系粘着剤に対して相溶性の低い高極性の有機流体成分を粘着剤層内に保持するために加えられている。そして、粘着剤層が架橋ポリビニルピロリドンを含有していない比較例では、粘着剤層から有機流体成分がブルーミングして、接着力は測定されなかったと記載されている。
【0005】
特許文献2は、ポリブテン、非イオン性界面活性剤、及び吸油性無機粉体を含む含水系粘着剤組成物を開示する。この文献には、親水性の含水系粘着剤組成物から疎水性のポリブテンがブリーディングすることを吸油性無機粉体により解決したことが記載されている。しかし、合成ゴムのような疎水性の粘着剤を使用した粘着剤層から高極性の有機流体成分がブリーディングすることやその解決方法については一切触れられていない。
【0006】
一方、粘着剤層にメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含有させた貼付製剤としては、例えば、特許文献3に、A−B−A型熱可塑性のエラストマーと、脂環族飽和炭化水素系樹脂と、流動パラフィンと、薬効成分と、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムとを配合した膏体を展延してなる貼付製剤が記載されている。しかし、この文献は膏体(粘着剤層)の凝集力の低下を抑える方法について触れられているのみである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−114175公報
【特許文献2】特開2007−39451号公報
【特許文献3】特公平3−71404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、粘着剤層が合成ゴムのような疎水性の高い粘着剤とともに該疎水性の高い粘着剤とは相溶しにくい極性の高い有機流体成分を含んでいても、十分に高い接着力が得られる粘着剤層を備えた新規な貼付剤及び貼付製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、合成ゴムのような疎水性の高い粘着剤とともにメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを粘着剤層に含有させると、疎水性の高い粘着剤とは相溶しにくい極性の高い有機流体成分を粘着剤層中に保持できることを見出し、かかる知見に基づいてさらに研究を進めることにより、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] 支持体の少なくとも片面に粘着剤層を有する貼付剤であって、
該粘着剤層は、粘度平均分子量1,700,000〜6,500,000の合成ゴム、高極性有機流体成分、タッキファイヤー、及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含むことを特徴とする、貼付剤。
[2] 高極性有機流体成分が、有機概念図における無機性値と有機性値とから下記の式により算出される角度が20°〜80°の範囲内にある有機流体である、上記[1]記載の貼付剤。
【0011】
【数1】

【0012】
[3] 粘着剤層中の高極性有機流体成分の含有量が粘着剤層の総重量に対して20重量%以下である、上記[1]又は[2]記載の貼付剤。
[4] 高極性有機流体成分よりも極性が低い低極性有機流体成分をさらに含む、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の貼付剤。
[5] 低極性有機流体成分が、有機概念図における無機性値と有機性値とから下記の式により算出される角度が0°〜19°の範囲内にある有機流体である、上記[4]記載の貼付剤。
【0013】
【数2】

【0014】
[6] 粘着剤層中の高極性有機流体成分と低極性有機流体成分の合計含有量が粘着剤層の総重量に対して50重量%以下である、上記[4]又は[5]記載の貼付剤。
[7] 粘着剤層中のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムの含有量が粘着剤層の総重量に対して25重量%未満である、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の貼付剤。
[8] 上記[1]〜[7]のいずれかに記載の貼付剤の粘着剤層に薬物をさらに含有してなる、貼付製剤。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、合成ゴムのような疎水性の高い粘着剤とともに、該合成ゴムと相溶しない高極性の有機流体成分(以下、「高極性有機流体成分」とも称す)を粘着剤層中に含有しながら、粘着剤層表面への高極性有機流体成分のブルーミングを防止でき、十分に高い接着力が得られる、貼付剤及び貼付製剤を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明をその実施形態に即して説明する。
本発明の貼付剤は、支持体の少なくとも片面に粘着剤層を有し、該粘着剤層が、粘度平均分子量1,700,000〜6,500,000の合成ゴム、高極性有機流体成分、タッキファイヤー、及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを少なくとも含有する。
【0017】
また、本発明の貼付製剤は、本発明の貼付剤の粘着剤層にさらに薬物を含有してなるものである。
【0018】
[合成ゴム]
本発明で使用する第一の合成ゴムは、粘度平均分子量が1,700,000〜6,500,000の合成ゴム(以下、「第一の合成ゴム」とも称す)であり、粘度平均分子量がこの範囲内にあれば特に限定されない。該合成ゴムの具体例としては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ブチルラバー、エチレン−ビニルアセテート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、ポリ(アルキルビニルエーテル)(例えば、ポリ(プロピルビニルエーテル)、ポリ(イソプロピルビニルエーテル)、ポリ(ブチルビニルエーテル)等)、ポリ(2−メチルプロペン)、ポリ(エチルエチレン)、ポリ(1,2−ジメチルエチレン)、エチルエチレン−1,2−ジメチルエチレン共重合体、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体等が挙げられ、これらはいずれか1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、価格、扱いやすさ等からポリ(2−メチルプロペン)、ポリ(エチルエチレン)、ポリ(1,2−ジメチルエチレン)、エチルエチレン−1,2−ジメチルエチレン共重合体等の分岐脂肪族炭化水素系ポリマーが好ましく、特にポリ(2−メチルプロペン)が好ましい。
【0019】
合成ゴムは粘度平均分子量が1,700,000以上であることから、分子鎖が長く複雑に絡み合っており、有機流体成分の保持性に優れる。このため、かかる合成ゴムを含む粘着剤層は20重量%を超える量(すなわち、粘着剤層の総重量に対して20重量%超、好ましくは25重量%以上)の有機流体成分を保持することが可能となる。合成ゴムの粘度平均分子量が1,700,000より小さい場合、合成ゴムの有機流体成分を保持する能力が低下するため、20重量%を超える有機流体成分を含むと粘着剤層から有機流体成分が滲み出る虞があり、また、有機流体成分が滲み出さない場合でも粘着剤層の接着力が低下して、貼付製剤は貼付対象に貼付しても剥がれてしまう虞がある。一方、合成ゴムの粘度平均分子量が6,500,000を超える場合そのような合成ゴムを含む粘着剤層は、皮膚接着力やタックが低下する傾向となる。
【0020】
第一の合成ゴムの粘度平均分子量は、好ましくは1,700,000〜5,500,000、より好ましくは2,000,000〜5,000,000である。
【0021】
ここにいう粘度平均分子量は、シュタウディンガーインデックス(J)を、20℃にてウベローデ粘度計のキャピラリーのフロータイムからSchulz−Blaschke式により算出し、このJ値を用いて下式により求めるものである:
【0022】
【数3】

【0023】
第一の合成ゴムの粘着剤層中の含有量は特に限定されないが、粘着剤層の総重量に対して5〜50重量%が好ましく、より好ましくは7〜45重量%、特に好ましくは10〜40重量%である。
【0024】
第一の合成ゴムの粘着剤層中の含有量が5重量%に満たない場合、粘着剤層の内部凝集力が低下する虞があり、50重量%を超える場合、粘着剤層が固くなりタックが低下する虞がある。
【0025】
所望により、粘着剤層は、第一の合成ゴム以外に、粘度平均分子量が40,000〜85,000の合成ゴム(以下、「第二の合成ゴム」とも称す)をさらに含んでもよい。第二の合成ゴムは第一の合成ゴムと比較して流動性が大きく、そのため、第一の合成ゴムと第二の合成ゴムを併用することで、親和性が低いために分離しやすい第一の合成ゴムとタッキファイヤーの分離が抑制され、粘着剤層は適度な柔軟性を維持することが可能となる。
【0026】
第二の合成ゴムの粘度平均分子量が40,000に満たない場合、タッキファイヤーと第二の合成ゴムの親和性が高くなりすぎることから、タッキファイヤーと第一の合成ゴムとの親和性が低下してこれらが分離するのを十分に抑制することができない虞があり、第二の合成ゴムの粘度平均分子量が85,000を超える場合、第二の合成ゴムと第一の合成ゴムの親和性が高くなりすぎることから、タッキファイヤーと第一の合成ゴムの親和性が低下してこれらが分離する虞がある。
【0027】
第二の合成ゴムの具体例(ゴムの種類)としては、前述の第一の合成ゴムの具体例として挙げたものと同様のものが挙げられ、1種又は2種以上を使用することができる。なお、第一の合成ゴムと第二の合成ゴムは同種であっても異種であってもよいが、両者の相溶性の観点から同種が好ましい。
【0028】
第二の合成ゴムの粘着剤層中の含有量は特に限定されないが、粘着剤層総重量に対して5〜50重量%が好ましく、より好ましくは7〜45重量%、最も好ましくは10〜40重量%である。第二の合成ゴムの粘着剤層中の含有量が5重量%に満たない場合、第一の合成ゴムとタッキファイヤーの分離を十分に抑制できない虞があり、50重量%を超える場合、粘着剤層の内部凝集力が低下する虞がある。
【0029】
なお、所望により、粘度平均分子量が第一の合成ゴムのそれより小さく、第二の合成ゴムのそれより大きい第三の合成ゴムを粘着剤層に添加してもよい。かかる第三の合成ゴムの具体例(ゴムの種類)も、前述の第一の合成ゴムの具体例として挙げたものと同様のものが挙げられ、1種又は2種以上を使用することができる。
【0030】
[高極性有機流体成分]
本発明における高極性有機流体成分(以下、「第一の有機流体成分」とも称す)は、室温(25℃)で流体(2種以上を混合して用いる場合には、その混合物が室温(25℃)で流体)であり、第一の合成ゴムと相溶しない有機物質を意味する。
【0031】
ここで「第一の合成ゴムと相溶しない」とは、有機流体成分1重量部と、第一の合成ゴム9重量部とを、これらと相溶する有機溶媒(例えばトルエン等)50重量部の存在下に均一となるまで混合し、前記有機溶媒を乾燥、除去して得られた固形物を、室温(25℃)下で1週間保存した場合に、高極性有機流体成分のブリードが目視にて確認できることである。なお、上記の有機流体成分と第一の合成ゴムとの有機溶媒存在下での混合は、例えば、有機流体成分、第一の合成ゴム及び有機溶媒をスパチュラを用いて人手で30分間攪拌することによって行なう。
【0032】
このような第一の合成ゴムと相溶しない高極性有機流体成分は、具体的には、有機概念図における無機性値と有機性値から下記の式(数4)により算出される角度(以下、この角度を「有機概念図上の角度」とも称す)が20°〜80°の範囲内にある有機流体(すなわち、室温(25℃)で流体である有機化合物)該当する。
【0033】
【数4】

【0034】
なお、有機概念図とは、化合物の性質を、共有結合性(疎水性)を表わす有機性値とイオン結合性(親水性)を表わす無機性値に分け、すべての有機化合物を有機性値をX軸、無機性値をY軸にとった直交座標上にプロットしていくものである。この有機概念図は「新版 有機概念図 基礎と応用」(甲田善生、佐藤四郎、本間善夫、新版、三共出版、2008年11月30日)に詳しく説明されている。一般に、有機軸に近いほど疎水性が高く、無機軸に近いほど親水性が高い性質を示す。
【0035】
有機概念図上の角度が20°〜80°の範囲内にある有機流体としては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60等)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類(ポリソルベート80(Tween80)、ポリソルベート60(Tween60)、ポリソルベート40(Tween40)、ポリソルベート20(Tween20)等)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(プルロニックF−68、PEP−101、ポロクサマー188等)等の非イオン性界面活性剤;ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤;乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等のヒドロキシ酸;酢酸、カプリン酸、カプリル酸、ラウリン酸、オレイン酸等の脂肪酸;オレイン酸、カプリル酸、ラウリン酸等の中鎖脂肪酸のグリセリンエステル(モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド又はそれらの混合物);乳酸エチル、乳酸セチル、クエン酸トリエチル、フタル酸ジブチル、酢酸ベンジル等のエステル;メタノール、エタノール、直鎖又は分岐のプロパノール、直鎖又は分岐のブタノール、直鎖又は分岐のペンタノール、直鎖又は分岐のヘキサノール、直鎖又は分岐のヘプタノール、直鎖又は分岐のオクタノール、直鎖又は分岐のノナノール、直鎖又は分岐のデカノール、直鎖又は分岐のウンデカノール、直鎖又は分岐のドデカノール、直鎖又は分岐のテトラデカノール等の飽和アルコールや、直鎖又は分岐のプロペノール、直鎖又は分岐のブテノール、直鎖又は分岐のペンテノール、直鎖又は分岐のヘキセノール、直鎖又は分岐のヘプテノール、直鎖又は分岐のオクテノール、直鎖又は分岐のノネノール、直鎖又は分岐のデセノール、直鎖又は分岐のウンデセノール、直鎖又は分岐のドデセノール等の不飽和アルコール等の炭素数が1〜14の1価アルコール;N−メチルピロリドン、N−ドデシルピロリドンのようなピロリドン類;ジメチルスルホキシド、デシルメチルスルホキシドのようなスルホキシド類;1,3−ブタンジオール;エトキシ化ステアリルアルコール等が挙げられる。
【0036】
第一の有機流体成分は、特に貼付製剤における薬物の皮膚透過促進効果の観点から、有機概念図上の角度が25〜60°の範囲内にあるものが好ましい。
【0037】
第一の有機流体成分は1種又は2種以上を使用することができ、粘着剤層中の含有量は粘着剤層の総重量に対して1〜20重量%が好ましく、より好ましくは2〜17重量%、特に好ましくは2〜15重量%である。
【0038】
[低極性有機流体成分]
粘着剤層には第一の有機流体成分よりも極性が低い低極性有機流体成分(以下、「第二の有機流体成分」とも称す)を含有させることができる。かかる第二の有機流体成分は、有機概念図上の角度が0°〜19°の範囲内にある有機流体であれば特に限定されず、例えば、オリーブ油、ヒマシ油、ラノリン等の油脂類;スクアラン、流動パラフィンのような炭化水素類;高級脂肪酸アルキルエステル(ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸オクチル等の炭素数8〜18(好ましくは12〜16)の脂肪酸と炭素数が1〜22の1価アルコールとのエステル等);高級アルコール(直鎖アルコール(セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール、硬化ナタネ油アルコール等)、分枝鎖アルコール(ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等)等の炭素数16〜22のアルコール等)等が挙げられる。かかる低極性有機流体成分(第二の有機流体成分)は1種又は2種以上を使用できる。
【0039】
第二の有機流体成分の粘着剤層中の含有量は粘着剤層の総重量に対して0〜19重量%が好ましく、好ましくは7.5〜18.75重量%、より好ましくは12.5〜18.75重量%である。
【0040】
第一の有機流体成分と第二の有機流体成分の両方を含む場合、それらの粘着剤層中の合計含有量は、多すぎると粘着剤層の形状を保持することが困難となるため、粘着剤層の形状を保持できる範囲であれば特に限定されないが、粘着剤層の総重量に対して50重量%以下が好ましい。なお、保持できる有機流体成分の量が多いほど、貼付製剤における薬物の皮膚透過性と薬物溶解性が向上することから第一の有機流体成分と第二の有機流体成分の合計含有量は粘着剤層の総重量に対して20重量%超が好ましく、25重量%以上がより好ましい。
【0041】
[メタケイ酸アルミン酸マグネシウム]
メタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、医薬製剤分野で、従来から粉末及び顆粒の充填能ならびに打錠特性の向上等の目的で使用されている添加剤である。メタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、例えば、ノイシリンの商品名の下で、富士化学工業から入手可能である。また、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、アルミニウム、マグネシウム及びケイ素原子が酸素原子を介して3次元的に重合した非晶質の複合酸化物からなるものが好ましく、かかる複合酸化物は、より具体的には、一般式、Al/aMgO/bSiO・nHO(式中、a=0.3〜3、b=0.3〜5である。)で表されるメタケイ酸アルミン酸マグネシウムである。このようなメタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、その多孔性構造により、高極性の第一の有機流体成分を安定に保持することが可能となる。
【0042】
粘着剤層における、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムの含有量は、適宜設定でき、特に限定するものではないが、粘着剤層の総重量に対して1重量%以上、25重量%未満が好ましい。25重量%以上であると粘着剤層が固くなり過ぎ、接着力が著しく低下してしまう虞がある。1重量%以上とすることで、十分な効果が得られる。すなわち、第一の合成ゴムと相溶しない高極性有機流体成分(第一の有機流体成分)の粘着剤層中への保持が可能になる。メタケイ酸アルミン酸マグネシウム量の含有量はより好ましくは2.5〜22.5重量%、さらに好ましくは5〜22.5重量%、とりわけ好ましくは7.5〜22重量%、最も好ましくは10〜22重量%である。
【0043】
タッキファイヤーとしては、例えば、ポリブテン類、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂(例えば、石油系脂肪族炭化水素樹脂、石油系芳香族炭化水素樹脂、石油系脂肪族・芳香族共重合炭化水素樹脂、石油系脂環族炭化水素樹脂(芳香族炭化水素樹脂を水素添加したもの)等)、クマロン系樹脂等が挙げられる。なかでも、石油系脂環族炭化水素樹脂(芳香族炭化水素樹脂を水素添加したもの)が好ましい。タッキファイヤーは、一種又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。タッキファイヤーの粘着剤層中の含有量は、粘着剤層の総重量に対して5〜50重量%が好ましく、より好ましくは7〜45重量%、特に好ましくは10〜40重量%である。タッキファイヤーの割合が5重量%未満ではタックが乏しい場合があり、50重量%を超えると粘着剤層が破壊傾向を示す等の好ましくない場合がある。
【0044】
[薬物]
本発明の貼付製剤に配合される薬物は、特に限定されず、ヒト等の哺乳動物にその皮膚を通して投与し得る、すなわち経皮吸収可能な薬物が好ましい。そのような薬物としては、具体的には、全身性麻酔薬、催眠・鎮静薬、抗癲癇薬、解熱鎮痛消炎薬、鎮暈薬、精神神経用薬、中枢神経薬、抗痴呆薬、局所麻酔薬、骨格筋弛緩薬、自律神経用薬、鎮痙薬、抗パーキンソン薬、抗ヒスタミン薬、強心薬、不整脈用薬、利尿薬、血圧降下薬、血管収縮薬、冠血管拡張薬、末梢血管拡張薬、動脈硬化用薬、循環器用薬、呼吸促進薬、鎮咳去痰薬、ホルモン薬、化膿性疾患用外用薬、鎮痛・鎮痒・収斂・消炎用薬、寄生性皮膚疾患用薬、止血用薬、痛風治療用薬、糖尿病用薬、抗悪性腫瘍用薬、抗生物質、化学療法薬、麻薬、禁煙補助薬等が挙げられる。
【0045】
また、薬物は、フリー塩基である薬物だけでなく、その生理学的に許容される塩も含む。そのような塩は特に限定されないが、たとえば、ギ酸塩、酢酸塩、乳酸塩、アジピン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩等が挙げられ、無機酸の付加塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等が例示できる。また、薬物は、溶媒和物であってもよく、水和物及び非水和物であってもよい。
【0046】
本発明の貼付製剤において、薬物は、有機概念図上の角度が20°〜80°の範囲内にある薬物が好ましく、より好ましくは有機概念図上の角度が22°〜79°の薬物である。このような薬物は、高極性有機流体成分(第一の有機流体成分)と相溶することから、粘着剤層中に安定に保持される。薬物の粘着剤層中の含有量は、その経皮吸収用薬物の効果を満たし、粘着剤層の接着特性を損なわない範囲であれば特に限定されないが、好ましくは粘着剤層の総重量に対して0.1〜50重量%、より好ましくは0.5〜40重量%である。0.1重量%より少ないと治療効果が十分でない虞があり、50重量%より多いと粘着剤層中の粘着剤の割合が少なくなりすぎて粘着剤層が十分な接着力を示さない虞がある。
【0047】
本発明に用いる支持体としては、特に限定されないが、実質的に粘着剤層の構成成分(特に有機流体成分)に対して不透過性のもの、特に貼付製剤においては、粘着剤層中の薬物が支持体中を通って背面から失われて含有量の低下を引き起こさないものが好ましい。そのような支持体としては、例えば、ポリエステル、ナイロン、サラン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、サーリン(登録商標)等の単独フィルム、金属箔、又はこれらから選ばれる2種以上のフィルムを積層したラミネートフィルム等が挙げられる。支持体の厚みは2〜100μmが好ましく、2〜50μmがより好ましい。
【0048】
本発明の貼付剤及び貼付製剤は、使用時まで粘着剤層の粘着面を保護するため、該粘着面に剥離ライナーを積層するのが好ましい。剥離ライナーとしては、剥離処理がなされ、充分に軽い剥離力を確保できれば、特に限定されるものでは無く、例えば、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート等)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等から選ばれる1種又は2種以上のプラスチックから形成されたプラスチックフィルム;上質紙、グラシン紙等の紙;上質紙又はグラシン紙等とポリオレフィンフィルムを積層したラミネートフィルム等からなる基材の粘着剤層と接触する面にシリコーン樹脂、フッ素樹脂等を塗布することによって剥離処理が施されたものが用いられる。バリアー性、価格の点から、基材がポリエステル(特に、ポリエチレンテレフタレート)フィルムからなるものが好ましい。該剥離ライナーの厚みは、通常10〜200μm、好ましくは25〜100μmである。
【0049】
本発明の貼付剤及び貼付製剤の形状は特に限定されず、例えばテープ状、シート状、リザーバー型等を含む。
【0050】
本発明の貼付剤及び貼付製剤は、例えば、第一の合成ゴム、高極性有機流体成分(第一の有機流体成分)、タッキファイヤー及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウム(貼付製剤においてはさらに薬物)を、必要に応じて配合されるその他の成分とともに、トルエン等の適当な溶剤に溶解し、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムを分散し、得られた粘着剤層形成用組成物の塗液を剥離ライナー上に塗布、乾燥して、粘着剤層を形成し、この粘着剤層上に支持体を積層して製造することができる。
【0051】
また、本発明の貼付剤及び貼付製剤は、例えば、上記粘着剤層形成用組成物の塗液を支持体に直接塗布、乾燥して、支持体上に粘着剤層を形成し、製造することができる。
【0052】
本発明の貼付剤及び貼付製剤は、使用直前に剥離ライナーを剥がして、露出した粘着面を皮膚面等に貼付して使用することができる。
【実施例】
【0053】
以下に実施例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明は以下に記載の実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り、各成分の割合は、重量部数で表記した。
【0054】
実施例及び比較例で使用した原料及びその略称は以下の通りである。
【0055】
(粘着成分)
第一の合成ゴムとしての粘度平均分子量4,000,000のポリイソブチレン24部、第二の合成ゴムとしての粘度平均分子量55,000のポリイソブチレン36部、及びタッキファイヤーとしての脂環族飽和炭化水素樹脂(荒川化学社製、アルコンP100)40部を混合して粘着成分を得た。
【0056】
(高極性有機流体成分)
PGML:プロピレングリコールモノラウレート、有機概念図上の角度28°
POE(4.2):ポリオキシエチレン(4.2)ラウリルエーテル、有機概念図上の角度43°
Tween80:ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(和光純薬工業社製)、有機概念図上の角度56°
Glycerin:グリセリン、有機概念図上の角度79°
【0057】
(低極性有機流体成分)
IPM:ミリスチン酸イソプロピル、有機概念図上の角度10°
【0058】
(メタケイ酸アルミン酸マグネシウム)
ノイシリン:ノイシリンUFL2(富士化学工業社製)
【0059】
(メタケイ酸アルミン酸マグネシウム以外の紛体)
XPVP:架橋ポリビニルピロリドン(BASF、Kollidon CL−M)
SiO:サイリシア730(富士シリシア化学社製)
HT:ハイドロタルサイト(和光純薬工業社製)
【0060】
[実施例1〜25及び比較例1〜8]
高極性有機流体成分として、PGML(有機概念図上の角度28°)を使用し、表1に記載の配合割合にしたがって粘着剤層形成用組成物のトルエン溶液を調製し、得られた溶液をシリコーン剥離処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)製ライナー(厚さ75μm)上に、乾燥後に60μmの厚みとなるように塗布し、これを熱風循環式乾燥機中で100℃、3分間乾燥して粘着剤層を形成した。この粘着剤層をPET製支持体に貼り合わせ、シート状の貼付剤を得た。そして、得られた貼付剤を下記の接着力試験に供した。
【0061】
[接着力試験]
試験板(ステンレス板)を360番の耐水研磨紙で表面を均一に研磨し、洗浄した。その後、以下の手順に従って180°引張り試験を実施した。
(1)幅24mm、長さ50mmの貼付剤(サンプル)の長さ方向の一端を約5mm剥がして180°角に折り返し、補助紙を貼り付けて長さを延長した。
(2)ライナーを取り除いた後、ステンレス板に速やかにサンプルを貼り付け、直ちに重量2Kgのゴムローラーを300mm/分の速さでサンプルの上を2回通過させた。
(3)上記のサンプルを貼付した試験板を23±2℃、相対湿度50±10%に30分間放置した。
(4)引張り試験機に180°引張用治具を装着し、試験板を治具にセットし、補助紙の一端は上部の留金に固くはさみ、1分間に300mmの速さで連続して引き剥がし、荷重を測定し、記録した。
(5)測定結果を記録したチャートより等間隔で3回荷重を読み取り(読み取り位置:20、40、60mm)、平均した。N=3の平均値を算出した。
【0062】
(評価)
××:粘着剤層形成用組成物のトルエン溶液と高極性有機流体成分が分離、もしくは粉体が凝集したため、均一な粘着剤層を形成できなかった。
×:粘着剤層を形成した後、PET製支持体に貼り合わせたが、支持体に投錨しなかったため、接着力を測定できなかった。
△:接着力が0.2[N]未満
△△:接着力が0.2[N]以上、0.4[N]未満
△△△:接着力が0.4[N]以上、0.7[N]未満
○:接着力が0.7[N]以上、1.0[N]未満
○○:接着力が1.0[N]以上、1.6[N]未満
◎:接着力が1.6[N]以上、2.0[N]未満
◎◎:接着力が2.0[N]以上
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
表2、3から、高極性有機流体成分であるPGML(有機概念図上での角度:28°)を含有する粘着剤層にノイシリンを含有させることにより粘着剤層の接着力が向上すること、及び、ノイシリン以外の粉体では粘着剤層にそれを含有させても粘着剤層の接着力は向上しないか、或いは、粘着剤層の接着力が向上しても、その向上効果はノイシリンに比べて劣ることが分かる。
【0067】
[実施例31〜60及び比較例9〜16]
高極性有機流体成分として、Tween80(有機概念図上の角度:56°)を使用し、表4に記載の配合割合にしたがって粘着剤層形成用組成物のトルエン溶液を調製し、得られた溶液をシリコーン剥離処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)製ライナー(厚さ75μm)上に、乾燥後に60μmの厚みとなるように塗布し、これを熱風循環式乾燥機中で100℃、3分間乾燥して粘着剤層を形成した。この粘着剤層をPET製支持体に貼り合わせ、シート状の貼付剤を得た。そして、得られた貼付剤を前記の接着力試験に供した。
【0068】
【表4】

【0069】
【表5】

【0070】
【表6】

【0071】
表5、6から高極性有機流体成分であるTween80を含有する粘着剤層にノイシリンを含有させることにより粘着剤層の接着力が向上すること、及び、ノイシリン以外の粉体では粘着剤層にそれを含有させても粘着剤層の接着力は向上しないか、或いは、粘着剤層の接着力が向上しても、その向上効果はノイシリンに比べて劣ることが分かる。
【0072】
[実施例61〜90及び比較例17〜24]
高極性有機流体成分として、Glycerin(有機概念図上の角度79°)を使用し、表7に記載の配合割合にしたがって粘着剤層形成用組成物のトルエン溶液を調製した。ただし、Glycerinは30%イソプロパノール溶液を調製して加えた。得られた溶液をシリコーン剥離処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)製ライナー(厚さ75μm)上に、乾燥後に60μmの厚みとなるように塗布し、これを熱風循環式乾燥機中で100℃、3分間乾燥して粘着剤層を形成した。この粘着剤層をPET製支持体に貼り合わせ、シート状の貼付剤を得た。そして、得られた貼付剤を前記の接着力試験に供した。
【0073】
【表7】

【0074】
【表8】

【0075】
【表9】

【0076】
表8に示されるように、高極性有機流体成分であるGlycerin(有機概念図上での角度79°)を含有する粘着剤層形成用組成物は、トルエン溶液中でGlycerinが分離してしまい、均一な粘着剤層を作製することができなかった。しかし、ノイシリンを2.5%以上含むことで、均一な粘着剤層を作製することが可能になり、接着力も高い結果となった。また、表9に示されるようにノイシリン以外の粉体では、粘着剤層形成用組成物のトルエン溶液中で粉体が凝集するか、若しくはGlycerinが分離したため、均一な粘着剤層を形成することができなかった。
【0077】
<貼付製剤>
上記実施例における貼付剤の粘着剤層中の粘着剤のうち1重量部を、薬物としてインドメタシン又はイバンドロン酸1重量部に置き換えた以外は、同様にして貼付製剤を作製する。
これらの貼付製剤は、各実施例の貼付剤と同様の特性を有するものである。
なお、上記薬物の、有機概念図における無機性値と有機性値とから算出される角度(有機概念図上の角度)は、次のとおりである。
・インドメタシン 44°
・イバンドロン酸 77°

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の少なくとも片面に粘着剤層を有する貼付剤であって、
該粘着剤層は、粘度平均分子量1,700,000〜6,500,000の合成ゴム、高極性有機流体成分、タッキファイヤー、及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含むことを特徴とする、貼付剤。
【請求項2】
高極性有機流体成分が、有機概念図における無機性値と有機性値とから下記の式により算出される角度が20°〜80°の範囲内にある有機流体である、請求項1記載の貼付剤。
【数1】

【請求項3】
粘着剤層中の高極性有機流体成分の含有量が粘着剤層の総重量に対して20重量%以下である、請求項1又は2記載の貼付剤。
【請求項4】
高極性有機流体成分よりも極性が低い低極性有機流体成分をさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の貼付剤。
【請求項5】
低極性有機流体成分が、有機概念図における無機性値と有機性値とから下記の式により算出される角度が0°〜19°の範囲内にある有機流体である、請求項4記載の貼付剤。
【数2】

【請求項6】
粘着剤層中の高極性有機流体成分と低極性有機流体成分の合計含有量が粘着剤層の総重量に対して50重量%以下である、請求項4又は5記載の貼付剤。
【請求項7】
粘着剤層中のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムの含有量が粘着剤層の総重量に対して25重量%未満である、請求項1〜6のいずれか1項記載の貼付剤。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載の貼付剤の粘着剤層に薬物をさらに含有してなる、貼付製剤。

【公開番号】特開2012−158571(P2012−158571A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21200(P2011−21200)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】