説明

貼付剤用支持体、貼付剤、及び包装体

【課題】包材からの貼付剤の取出しをより確実に容易化できる支持体、この支持体を備える貼付剤等を提供すること。
【解決手段】貼付剤10は、支持体20と、この支持体20上に位置する粘着剤層30と、この粘着剤層30を被覆する剥離ライナ40と、を備える。支持体20は、少なくともその周縁部24に位置し且つ粘着剤層30と反対側に膨出する複数の膨出部23を有し、膨出部23及び粘着剤層30の間には、所定厚みTの空所29が介在し、膨出部23の頂部は、0.2mm以上0.9mm以下の長さを有し、且つ膨出部23の間隔は、2.1mm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼付剤用支持体、この支持体を備える貼付剤、及びこの貼付剤を備える包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬物を生体内へ投与する手段として、薬物含有貼付剤が採用されている。薬物含有貼付剤は、プラスチック製の支持体の片面に、経皮吸収用薬物を含有する粘着剤層と、この粘着剤層を被覆する剥離ライナとが積層されたものである。
【0003】
かかる薬物含有貼付剤は、一般に、薬物の揮散を防止したり、湿度による影響を低減したりするため、水不透過性の包材内に包装される。しかし、貼付剤の端面から粘着剤、可塑剤、粘着付与剤等がはみ出して包材の内面や支持体の外面に付着するために、貼付剤を包材から取り出すのが困難となる場合が多い。
【0004】
そこで、包材からの貼付剤の取り出しを容易にするべく、特許文献1には、断面凹凸形状の支持体を備える貼付剤が開示されている。図6は、従来例に係る貼付剤500の断面図である。
貼付剤500によれば、支持体510の断面縁515が湾曲した凹凸形状であるため、支持体510及び包材550の接触面積が低下する。よって、粘着材層520からの粘着剤等が支持体510の外面511に付着した場合であっても、支持体510及び包材550の接着力が小さいため、包材550から貼付剤500を容易に取り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−126156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、多量の粘着剤等が支持体の外面に付着した場合には、支持体及び包材の接触面積が小さくても、支持体及び包材が強固に接着することが懸念される。
【0007】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、包材からの貼付剤の取出しをより確実に容易化できる支持体、この支持体を備える貼付剤、及びこの貼付剤を備える包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 支持体と、この支持体上に位置する粘着剤層と、この粘着剤層を被覆する剥離ライナと、を備える貼付剤であって、
前記支持体は、少なくともその周縁部に位置し且つ前記粘着剤層と反対側に膨出する複数の膨出部を有し、
前記膨出部及び前記粘着剤層の間には、所定厚みの空所が介在し、
前記膨出部の頂部は、0.2mm以上0.9mm以下の長さを有し、且つ前記膨出部の間隔は、2.1mm以下である貼付剤。
【0009】
(1)の発明によれば、膨出部及び粘着剤層の間に空所を介在させたので、膨出部がその下方に位置する粘着剤層に付着して凹むことが抑制され、膨出部の高さが充分に確保される。ここで、膨出部を支持体の周縁部に位置したので、粘着剤が貼付剤の端部からはみ出した場合でも、包材と接触する部分である膨出部の頂部に粘着剤が付着するのが抑制される。よって、支持体が包材に接着せず、包材からの貼付剤の取出しをより確実に容易化できる。
そして、膨出部の頂部の長さを0.2mm以上0.9mm以下としたので、使用者が支持体側を触ると、膨出部が使用者の指先にひっかかり、ザラザラとした感触を受ける。これにより、使用者は、触感に基づいて、いずれの面が支持体側又は剥離ライナ側であるかを即座に判別でき、快適に貼付剤を使用できる。なお、「頂部」とは、広義には膨出部のうち最大高さを有する部分を指し、狭義には膨出部のうち角部に挟まれた部位を指す。
【0010】
このように、(1)の発明の特徴は、膨出部の頂部への粘着剤の付着自体が抑制されるため、支持体及び包材の接触面積いかんに関わらず、包材からの貼付剤の取出しを容易化できる点である。
【0011】
なお、「所定厚みの空所」は、膨出部の頂部及び粘着剤層がほぼ全体に亘って離間し、気体が充填された気体層又は真空層が膨出部及び粘着剤層の間に形成されている状態を指し、支持体及び粘着剤層の接着が不充分であったために支持体及び粘着剤層の間に偶発的に発生する気泡のようなものは除外される。
【0012】
(2) 支持体と、この支持体上に位置する粘着剤層と、この粘着剤層を被覆する剥離ライナと、を備える貼付剤であって、
前記支持体は、少なくともその周縁部に位置し且つ前記粘着剤層と反対側に膨出する複数の膨出部を有し、
前記支持体は、前記膨出部において70μm以上の高さを有し、
前記膨出部の頂部は、0.2mm以上0.9mm以下の長さを有し、且つ前記膨出部の間隔は、2.1mm以下である貼付剤。
【0013】
支持体の高さが不充分であると、粘着剤等が支持体の外面に付着しやすく、支持体及び包材が強固に接着することが懸念される。
そこで、(2)の発明によれば、膨出部を支持体の周縁部に位置し、支持体の高さを膨出部において70μm以上としたので、粘着剤が貼付剤の端部からはみ出した場合でも、包材と接触する部分である膨出部の頂部に粘着剤が付着するのが抑制される。よって、支持体が包材に接着せず、包材からの貼付剤の取出しをより確実に容易化できる。
そして、膨出部の頂部の長さを0.2mm以上0.9mm以下としたので、使用者が支持体側を触ると、膨出部が使用者の指先にひっかかり、ザラザラとした感触を受ける。これにより、使用者は、触感に基づいて、いずれの面が支持体側又は剥離ライナ側であるかを即座に判別でき、快適に貼付剤を使用できる。
【0014】
なお、「支持体の高さ」とは、膨出部の高さに加え、支持体自体の厚みも含む寸法である(後述の図3における「h」に対応する)。
【0015】
(3) 前記膨出部は、角部を有する(1)又は(2)記載の貼付剤。
【0016】
貼付剤は、一般に極めて薄いため、支持体側と剥離ライナ側とを視覚的に判別することが困難である。
そこで(3)の発明によれば、膨出部に角部を設けたので、使用者が支持体側を触ると、角部が使用者の指先にひっかかり、ザラザラとした感触を受ける。これにより、使用者は、触感に基づいて、いずれの面が支持体側又は剥離ライナ側であるかを即座に判別でき、快適に貼付剤を使用できる。
【0017】
(4) 前記支持体は、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムである(1)から(3)いずれか記載の貼付剤。
【0018】
(4)の発明によれば、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムを採用したので、支持体を安価に製造できる。
ここで、ポリエチレンテレフタレートフィルムは、他の素材(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)に比べて高い剛性を有するため、使用者の動きへの追従性を確保するためには、厚みを低く抑える必要がある。すると、端部からはみ出した粘着剤が支持体に付着して、支持体及び包材を接着させるおそれが高まる。
しかし、(4)の発明によれば、貼付剤が空所又は所定高さの支持体を有するので、包材からの貼付剤の取出しをより確実に容易化できる。
【0019】
(5) (1)から(4)いずれか記載の貼付剤と、この貼付剤を包装する包材と、を備える包装体。
【0020】
(6) 貼付剤に用いられる長尺状の貼付剤用支持体であって、
少なくともその周縁部に位置し且つ表面の直交方向に膨出する複数の膨出部を有し、これら膨出部において70μm以上の高さを有し、
前記膨出部の頂部は、0.2mm以上0.9mm以下の長さを有し、且つ前記膨出部の間隔は、2.1mm以下であり、
ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムである貼付剤用支持体。
【0021】
本明細書でいう「貼付剤用支持体」とは、貼付剤サイズに裁断される前における長尺状物を指す。
【0022】
(7) 前記膨出部は、角部を有する(6)記載の貼付剤用支持体。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、膨出部及び粘着剤層の間に空所を介在させたので、膨出部がその下方に位置する粘着剤層に付着して凹むことが抑制され、膨出部の高さが充分に確保される。ここで、膨出部を支持体の周縁部に位置したので、粘着剤が貼付剤の端部からはみ出した場合でも、包材と接触する部分である膨出部の頂部に粘着剤が付着するのが抑制される。よって、支持体が包材に接着せず、包材からの貼付剤の取出しをより確実に容易化できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る貼付剤の分解斜視図である。
【図2】前記実施形態に係る貼付剤を備える包装体の断面図である。
【図3】図2のA部分の拡大図である。
【図4】前記実施形態に係る貼付剤の使用状態を示す一部拡大図である。
【図5】本発明の一実施例に係る貼付剤の一部拡大断面図である。
【図6】従来例に係る貼付剤の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1は本発明の一実施形態に係る貼付剤10の分解斜視図であり、図2は貼付剤10を備える包装体1の断面図である。
【0027】
1は、貼付剤10と、この貼付剤10を包装する包材50と、を備える。また、貼付剤10は、支持体20と、この支持体20の上に位置する粘着剤層30と、この粘着剤層30を被覆する剥離ライナ40と、を備える。以下、各構成要素について詳細に説明する。
【0028】
[支持体]
支持体20は、液状又はゲル状の薬剤に対して実質的に非透過性で、且つ、外部からの湿気及び空気に対して非透過性であって、皮膚又は粘膜面の動きに追随性を有する素材で構成されればよい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル等のフィルムが挙げられ、単独で使用しても、複数種が積層されたものを使用してもよい。更に、このフィルムに、伸縮性又は非伸縮性の織布、不織布等の布帛、ウレタン、ポリウレタン等の発泡性支持体が更に積層されたものを用いてもよい。この中でも、支持体20の素材は、使用時に使用者に与える痛みが少なく、優れたハンドリング性を有することが好ましく、安価であることがより好ましい。
【0029】
具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなるフィルムが挙げられる。PETフィルムは、比較的高い剛性を有する点を考慮して、3μm以上50μm以下、6μm以上25μm以下、特に好ましく12μmの厚みを有することが好ましい。厚みが不足すると、強度が不足して過度に変形する傾向がある一方、厚みが過剰であると、支持体の端部が適用部位(例えば、皮膚、粘膜)に食いこんで使用者に不快感を与える傾向がある。
【0030】
その他、支持体20の素材としては、ポリプロピレン製フィルム、ポリエチレン製フィルムが挙げられ、この場合、好ましくは10μm以上80μm以下の厚み、より好ましくは30μm以上60μm以下の厚みを有する。
【0031】
支持体20は、複数の膨出部23を有し、これら膨出部23は、粘着剤層30と反対側(図1の上方向、図2の下方向)に膨出する。また、膨出部23は、本実施形態では表面21の全面に亘って配置されているが、少なくとも周縁部24に設けられていればよい。これにより、必要最低限の膨出部23を設けるだけで、支持体20及び包材50の接着力を大幅に低減でき、経済的である。
【0032】
なお、膨出部とは、支持体のうち最低高さでない部分全体を指し、介在部とは膨出部で挟まれた部分、つまり支持体のうち最低高さである部分全体を指す。
【0033】
図3は、図2のA部分の拡大図である。支持体20は、膨出部23の頂部231において最大高さhとなり、この高さhは70μm以上である。また、膨出部23及び粘着剤層30の間には所定厚みTの空所29が介在し、これにより膨出部23が粘着剤層30に付着して凹むことが抑制されている。従って、粘着剤が端部からはみ出したとしても、膨出部23の頂部231には付着しにくいため、支持体20が包材50の内面53に接着することが抑制される。
【0034】
なお、端部からはみ出した粘着剤31が一旦表面21に付着した場合でも、この粘着剤31が頂部231に付着しにくくするべく、膨出部23自体の高さS(支持体20自体の厚みに依存しない値、換言すれば高さhから支持体20自体の厚みの1倍を差し引いた値)は、20μm以上、好ましくは45μm以上、より好ましくは58μm以上であることが好ましい。
【0035】
換言すれば、膨出部23の頂部231への粘着剤31の付着自体が抑制されるため、支持体20及び包材50の接触面積いかんに関わらず、包材50からの貼付剤10の取出しが容易である。つまり、頂部231が内側に湾曲していても平坦であっても、包材50から貼付剤10を容易に取り出すことができる。
【0036】
図4は、貼付剤10の使用状態を示す一部拡大図である。膨出部23は、少なくとも周縁部24では略均等の間隔で設けられており、これによって支持体20及び包材50が局所的に接着するような事態を抑制できる。膨出部23同士の間隔L2は、過剰になると、支持体20に包材50が接着しやすくなることを考慮して、2.1mm以下である。また、膨出部23の頂部231の長さL1は、短すぎると、使用者に与えるザラザラとした感触が不足することを考慮して、0.2mm以上、好ましくは0.4mm以上である。
【0037】
また、膨出部23は、破損しにくい点で、縦断面形状(つまり、図1における上方向から膨出部23を見たときの形状)が角部を有しない、具体的には略円形形状を有することが好ましい。一方、膨出部23の横断面(図2〜図4)は、角部233を含む形状を有し、これによりザラザラとした感触が強化されている。なお、膨出部23の横断面が湾曲形状のみで構成されていてもよい。
【0038】
膨出部23同士の間に介在する介在部25は、平坦であっても、湾曲していてもよいが、ザラザラとした感触を強化できる点で、平坦であることが好ましい。膨出部23の厚みは、通常12μm程度であってよい。
【0039】
かかる支持体20は、例えば、介在部25と略対称な凸部を有するエンボスロールで支持体材料を押圧することによって製造できる。
【0040】
[粘着剤層]
粘着剤層30を構成する粘着基剤としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコン系粘着剤等の感圧性粘着剤が挙げられる。
【0041】
アクリル系粘着剤は、アクリル系単量体の(共)重合体を主成分とする。アクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジアセトンアクリルアミド、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0042】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル残基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、ステアリル基等が挙げられる。
【0043】
アクリル系粘着剤は、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル等の有機溶剤中で、過酸化ベンゾイル等の過酸化物等を開始剤として使用し、モノマーを窒素雰囲気下で重合することにより作成できる。この方法により得られるアクリル系粘着剤は、溶剤型アクリル系粘着剤と呼ばれている。また、モノマーを水中で乳化剤によって乳化させ分散させた後に、重合することで得られるエマルジョン型アクリル系粘着剤も使用できる。
【0044】
アクリル系粘着剤を架橋するには、重合後、アクリル系粘着剤を多価イソシアネート系架橋剤(「ポリイソシアネート系架橋剤」ともいう)、多価エポキシ樹脂系架橋剤、多価金属系架橋剤等の架橋剤を用いればよい。これらの架橋剤は、通常、粘着剤組成物を調製する際に、その中に添加される。架橋剤の種類としては、他に尿素樹脂やポリアミンがあるが、粘着剤組成物中で薬物と反応する場合があるため、これらの架橋剤を使用する場合は、薬物との反応性を考慮する必要がある。また、電子線照射によって架橋する場合、電子線照射によって薬物が他の成分と反応したり、変質したりするおそれがある。従って、薬物を含有するアクリル系粘着剤と安定して架橋反応する点で、多価イソシアネート系架橋剤、多価エポキシ樹脂系架橋剤、及び多価金属系架橋剤を使用することが好ましい。
【0045】
アクリル系粘着剤を架橋して凝集性を付与することにより、皮膚表面に対する適度な粘着力を保持しつつ、皮膚から剥離される際に糊が皮膚に残留することを抑制できる。架橋剤の使用量は、粘着特性、凝集性、薬理活性成分のブリーディング等を考慮して適宜選択すればよいが、アクリル系粘着剤(アクリル系重合体成分)100質量部に対して、通常0.01〜5質量部、好ましくは0.05〜2質量部である。アクリル系粘着剤には、必要に応じて、軟化剤や経皮吸収促進剤のような液状成分を配合することもできる。
【0046】
ゴム系粘着基剤は、粘着性及び薬理活性成分の放出性に優れる。
ゴム系粘着基剤としては、エラストマー100質量部に対して、粘着付与樹脂を通常50〜250質量部の範囲で添加し、更に必要に応じて、軟化剤、経皮吸収促進剤、充填剤、酸化防止剤等を配合する。ゴム系粘着剤のエラストマー成分としては、例えば、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS共重合体)、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS共重合体)等が挙げられる。
【0047】
SIS共重合体としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、スチレンとゴムの比率(質量%)が10/90〜30/70のものが一般的に用いられ、その溶液粘度(mPa・s〔cps〕、25℃)は、約100〜3000のものが一般的であり用いることができる。また、好ましくは、スチレンとイソプレンの質量比(スチレン/イソプレン)が20/80〜25/75のものが挙げられる。
【0048】
以上のようなSIS系樹脂の市販品の例としては、スチレン/ゴム比(質量%)が15/85で、溶液粘度(mPa・s〔cps〕、25℃)が1.500のもの(「クレイトンD−1107(商品名)」)、スチレン/ゴム比(質量%)が15/85で、溶液粘度(mPa・s〔cps〕、25℃)が900のもの(「クレイトンD−1112(商品名)」)、スチレン/ゴム比(質量%)が17/83で、溶液粘度(mPa・s〔cps〕、25℃)が500のもの(「クレイトンD−1117P(商品名)」)、スチレン/ゴム比(質量%)が22/78のもの(「クレイトンD−KX401(商品名)」)、スチレン/ゴム比(質量%)が16/84のもの(「クレイトンD−KX406(商品名)」)、スチレン/ゴム比(質量%)が30/70で、溶液粘度(mPa・s〔cps〕、25℃)が300のもの(「クレイトンD−1125x(商品名)」)、スチレン/ゴム比(質量%)が10/90で、溶液粘度(mPa・s〔cps〕、25℃)が2,500のもの(「クレイトンD−1320x(商品名)」)等(いずれもクレイトンポリマージャパン社製)が挙げられる。いずれも単独で使用してもよく、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0049】
SIS共重合体としては、スチレン含有質量の比率が高いものが好ましく、例えば、スチレン/ゴム比(質量比)が22/78である「クレイトンD−KX401(商品名)」が使用できる。
【0050】
シリコン系粘着剤としては、ポリジメチルシロキサン等のシリコンゴム、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA系粘着剤)が挙げられる。
【0051】
粘着剤層30は、必要に応じて、粘着付与剤、可塑剤、経皮吸収促進剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤等を配合できる。
【0052】
ゴム系粘着剤は粘着力が比較的弱いため、粘着付与剤を配合することが好ましい。粘着付与剤としては、例えば、脂環族飽和炭化水素樹脂(「アルコンP100(商品名)」)、脂肪族炭化水素樹脂(ポリブテン)、脂環族不飽和炭化水素樹脂、ロジンエステル、水素添加ロジングリセリンエステル、テルペン樹脂が挙げられる。
【0053】
粘着付与剤は、エラストマー100質量部に対して、通常50〜250質量部で配合され、薬物や経皮吸収促進剤等も含めた粘着剤成分全量に対して、通常10〜50質量%、好ましくは25〜40質量%となるように配合される
【0054】
経皮吸収促進剤としては、従来皮膚での吸収促進作用が認められている化合物のいずれでもよい。具体例としては、炭素鎖数6〜20の脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪酸エステル、アミド、又はエーテル類、芳香族系有機酸、芳香族系アルコール、芳香族系有機酸エステル又はエーテル(以上は飽和、不飽和のいずれでもよく、環状、直鎖状分枝状のいずれでもよい)、乳酸エステル類、酢酸エステル類、モノテルペン系化合物、セスキテルペン系化合物、アゾン、アゾン誘導体、ピロチオデカン、グリセリン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリソルベート類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ショ糖脂肪酸エステル類、植物油等が挙げられる。
【0055】
充填剤としては、シリカ等の酸化珪素、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタン等が挙げられる。充填剤は、必要に応じて、粘着剤成分全量に対して、通常0〜15質量%、好ましくは0〜5質量%で用いられる。
【0056】
酸化防止剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)やジブチルヒドロキシアニソール(BHA)等のフェノール系酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤は、ゴム系粘着剤を用いる場合に有効であり、その使用量は、粘着剤成分全量に対して、通常0.2〜2質量%、好ましくは0.5〜1質量%である。
【0057】
紫外線吸収剤としては、p−アミノ安息香酸誘導体、アントラニル酸誘導体、サリチル酸誘導体、クマリン誘導体、アミノ酸系化合物、イミダゾリン誘導体、ピリミジン誘導体、ジオキサン誘導体等が挙げられる。
【0058】
[剥離ライナ]
40は、使用時に粘着剤層30から剥離される。本実施形態の剥離ライナ40は、容易に剥離できるよう2つの部分41a,41bに分割され、これら部分41a,41bは互いに僅かな幅で重畳している(図示せず)。
【0059】
剥離ライナ40の素材は、薬物及び水に非透過性の素材であればよい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンビニルアセテート、ポリエチレンテレフタレート等の高分子フィルム、アルミニウム、亜鉛等の金属箔、紙、及び繊維からなる群より選ばれる1種で形成されるフィルム、又は上記群より選ばれる2種以上の素材が積層されたラミネートフィルムが挙げられる。粘着剤層30に接着される側の剥離ライナ40の面には、シリコン等で薄いコーティング膜を施してもよい。
【0060】
本実施形態では、剥離ライナ40には膨出部が設けられていないが、膨出部が設けられていてもよい。これにより、剥離ライナ40が包材50と接着することも抑制され、剥離ライナ40の取出しをより容易化できる。
【0061】
以上の貼付剤10の製造方法を説明する。
まず、液状の粘着剤を、剥離ライナのシリコンコーティングされた面に、剥離ライナに適度な張力を負荷しながら塗膏する。続いて、塗膏物に乾燥機内を通過させることで粘着剤の溶媒を除去した後、塗膏物及び支持体に適度なニップ圧を負荷しながら支持体を付着させる。なお、上記工程は、一般に、搬送ライン上で連続的に行われる。
ここで張力とは、例えば、ロール状の剥離ライナを塗膏機に送り出す際に、ブレーキングをかけて剥離ライナを引っ張る力を指す。張力が強すぎると、支持体に形成された膨出部が変形する一方、張力が弱すぎると、粘着剤の塗膏時や、支持体の貼り合わせ時に皴やよれが生じる場合がある。
また、ニップ圧とは、支持体を粘着剤に貼り合わせる際に、支持体に負荷する力を指す。ニップ圧が強すぎると、支持体の膨出部が潰れる一方、ニップ圧が弱すぎると、支持体及び粘着剤層の密着性が不足する場合がある。
【0062】
本実施形態によれば、以下のような作用効果が得られる。
【0063】
膨出部23及び粘着剤層30の間に空所29を介在させたので、膨出部23が粘着剤層30に付着して凹むことが抑制され、膨出部23の高さが充分に確保される。ここで、膨出部23を支持体20の周縁部24に位置したので、粘着剤31が貼付剤10の端部からはみ出した場合でも、包材50と接触する部分である膨出部23の頂部231に粘着剤31が付着するのが抑制される。よって、支持体20が包材50に接着せず、包材50からの貼付剤10の取出しをより確実に容易化できる。
【0064】
膨出部23を周縁部24に位置し、支持体20の高さhを膨出部23において70μm以上としたので、粘着剤31が貼付剤10の端部からはみ出した場合でも、包材50と接触する部分である膨出部23の頂部231に粘着剤31が付着するのが抑制される。よって、支持体20が包材50に接着せず、包材50からの貼付剤10の取出しをより確実に容易化できる。
【0065】
膨出部23に角部233を設けたので、使用者は支持体20側を触ると、角部233が使用者の指先200にひっかかり、ザラザラとした感触を受ける。これにより、使用者は、触感に基づいて、いずれの面が支持体20側又は剥離ライナ40側であるかを即座に判別でき、快適に貼付剤10を使用できる。
【0066】
膨出部23の頂部231の長さを0.2mm以上としたので、使用者が支持体20側を触ると、膨出部23が使用者の指先にひっかかり、ザラザラとした感触を受ける。これにより、使用者は、触感に基づいて、いずれの面が支持体20側又は剥離ライナ40側であるかを即座に判別でき、快適に貼付剤を使用できる。
【実施例】
【0067】
2−エチルヘキシルアクリレート、2−アセトアセトキシエチルメタクリレート、メチルメタクリレート、ジアセトンアクリルアミド、及びテトラエチレングリコールジメタクリレートからなる非水性アクリル系感圧接着剤を77質量部、ミリスチン酸イソプロピルを20質量部、薬物としてツロブテロールを3質量部配合した粘着剤を、ポリエチレンテレフタレート製フィルムからなる剥離ライナのシリコン処理された塗膏面に、所定の張力を剥離ライナに負荷しながら塗膏した。
【0068】
一方、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート製のフィルムに、所定形状の凸型が形成されたロール状金型を用いて押圧することで、支持体を作製した。
【0069】
この支持体に所定のニップ圧を負荷しながら、塗膏した粘着剤に支持体を貼り合わせ、全体を32mm×32mmの矩形状に裁断することで、貼付剤を作製した。
【0070】
作製した貼付剤の支持体が包材に接着して取り出すことができない貼付剤の数を調査した。また、モニターに貼付剤の支持体を触れさせ、その時にザラザラとした触感を受けたか否かについて、官能評価を行った。この結果を表1に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
表1に示されるように、市販品1及び市販品2では不良枚数が多かったのに対し、参考例1、2、6、7、9、及び11では不良枚数が極めて小さかった。これにより、支持体の高さが70μm以上であれば、貼付剤を高い確率で包材から取り出すことができることが確認された。
【0073】
次に、参考例2の貼付剤を表面の直交方向に切断し、その切断面を光学顕微鏡で観察した。この結果を図5に示す。
【0074】
図5に示されるように、参考例2の貼付剤は、膨出部及び粘着剤層の間に介在する空所(平均厚み:約158μm)を有していた。この結果を表1とあわせると、膨出部及び粘着剤層の間に空所を介在させることで、貼付剤を高い確率で包材から取り出すことができることが分かった。
【0075】
また、図5に示されるように、参考例2の貼付剤は、膨出部において角部を有することが確認された。この結果を表1とあわせると、膨出部に角部を設け、膨出部の頂部の長さが0.2mm以上又は膨出部の間隔が0.6mm以上であることで、使用者はザラザラとした感触を受け、この触感に基づいて、いずれの面が支持体側又は剥離ライナ側であるかを即座に判別でき、快適に貼付剤を使用できることが分かった。
【符号の説明】
【0076】
1 包装体
10 貼付剤
20 支持体
23 膨出部
24 周縁部
29 空所
30 粘着剤層
40 剥離ライナ
50 包材
233 角部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、この支持体上に位置する粘着剤層と、この粘着剤層を被覆する剥離ライナと、を備える貼付剤であって、
前記支持体は、少なくともその周縁部に位置し且つ前記粘着剤層と反対側に膨出する複数の膨出部を有し、
前記膨出部及び前記粘着剤層の間には、所定厚みの空所が介在し、
前記膨出部の頂部は、0.2mm以上0.9mm以下の長さを有し、且つ前記膨出部の間隔は、2.1mm以下である貼付剤。
【請求項2】
支持体と、この支持体上に位置する粘着剤層と、この粘着剤層を被覆する剥離ライナと、を備える貼付剤であって、
前記支持体は、少なくともその周縁部に位置し且つ前記粘着剤層と反対側に膨出する複数の膨出部を有し、
前記支持体は、前記膨出部において70μm以上の高さを有し、
前記膨出部の頂部は、0.2mm以上0.9mm以下の長さを有し、且つ前記膨出部の間隔は、2.1mm以下である貼付剤。
【請求項3】
前記膨出部は、角部を有する請求項1又は2記載の貼付剤。
【請求項4】
前記支持体は、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムである請求項1から3いずれか記載の貼付剤。
【請求項5】
請求項1から4いずれか記載の貼付剤と、この貼付剤を包装する包材と、を備える包装体。
【請求項6】
貼付剤に用いられる長尺状の貼付剤用支持体であって、
少なくともその周縁部に位置し且つ表面の直交方向に膨出する複数の膨出部を有し、これら膨出部において70μm以上の高さを有し、
前記膨出部の頂部は、0.2mm以上0.9mm以下の長さを有し、且つ前記膨出部の間隔は、2.1mm以下であり、
ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムである貼付剤用支持体。
【請求項7】
前記膨出部は、角部を有する請求項6記載の貼付剤用支持体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−46826(P2013−46826A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−254139(P2012−254139)
【出願日】平成24年11月20日(2012.11.20)
【分割の表示】特願2008−234241(P2008−234241)の分割
【原出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000174622)ニプロパッチ株式会社 (31)
【Fターム(参考)】