説明

貼付剤

【課題】粘着剤層成分の経時的変化が低減された貼付剤であって、包装体内での保存中に貼付剤の端部から添加剤などの粘着剤層成分のはみ出しが生じ難く、貼付剤が包装体の内面に付着することが抑制され、貼付剤を包装体内から容易に取り出すことができ、コールドフローに起因する皮膚貼付時の貼付剤のめくれも抑制され、皮膚面から脱落しにくい貼付剤を提供すること。
【解決手段】支持体10と、該支持体10の少なくとも片面に形成された粘着剤層11とを有する貼付剤であって、該貼付剤は周辺部22と中央部21を有し、前記粘着剤層11は空隙部31を有し、粘着剤層11における空隙部31は周辺部22に局在化しており、中央部21における粘着剤層11は実質的に空隙部を有さず、かつ周辺部22における粘着剤層11は空隙部31を平均で2.0〜100個/mm有することを特徴とする貼付剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体と、該支持体の少なくとも片面に形成された粘着剤層とを備える貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種の貼付剤や貼付製剤が開発されている。貼付剤や貼付製剤は、傷口の保護および薬物の連続した経皮投与という観点からは非常に優れたものである。
【0003】
貼付剤は、一般に布帛やプラスチックフィルムなどからなる支持体、該支持体上に積層された粘着剤層を有し、通常、該粘着剤層上に積層された剥離ライナーを備えた形態で、樹脂フィルムなどからなる包装体内に収容されて提供される。
【0004】
このような貼付剤においては、粘着剤層の厚さが厚くなると、皮膚への貼付中に貼付剤の端部が衣服などとこすれやすくなり、めくれやすくなるだけでなく、コールドフローと呼ばれる貼付剤端部からの粘着剤層成分のはみ出しが問題となる。
【0005】
コールドフローは、粘着剤の特性に依存して生じるものであって、特に貼付剤に長時間荷重がかかる状態、すなわち包装体内に貼付剤が収容され、長期保存される際などに多く生じる。
【0006】
コールドフローによる悪影響として、はみ出した粘着剤層成分が包装体内面へ付着することによる貼付剤の包装体からの取り出し性の悪化、皮膚貼付時の貼付剤のめくれや汚れ、薬効を含む貼付剤の効果の低下などが挙げられる。したがって、貼付剤としては端部が衣服とこすれにくく、コールドフローが生じにくく、粘着剤層がもとの形状を保持するものが望ましい。
【0007】
ところで特許文献1は、経皮吸収用薬物を含有する貼付製剤において相反することとなる皮膚カブレの防止(透湿性の向上)と薬物の経皮吸収性の向上のバランスをとることを課題とし、不織布などの空隙形成部材を粘着剤層中に介在させ、粘着剤層に空隙を形成することで両者のバランスをとった貼付剤および貼付製剤を開示している。
【特許文献1】特開平9−124462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の粘着剤層に形成される空隙は、貼付剤の平面方向に連続し貼付剤の端縁まで達するように形成されるものであるため、空隙を介して添加剤などの粘着剤層成分が貼付剤の外部環境から影響を受けるおそれをもたらす。したがって特許文献1記載の貼付剤においては、添加剤などの粘着剤層成分の揮散、分解を抑制し、粘着剤層成分の経時的安定性を向上させるための新たな考慮が必要となる。
【0009】
また、特許文献1に開示される、貼付剤の平面方向に連続し貼付剤の端縁まで達するように粘着剤層に空隙を形成する構成は、透湿性の向上と薬物の経皮吸収性向上のバランスをとることを目的としたものであり、前記コールドフローの防止に効果があるとはいえず、特許文献1に開示される構成を採っても、前記問題、すなわち特に貼付剤に長時間荷重がかかる状態で長期保存される際などに多く生じる粘着剤層成分の貼付剤端部からのはみ出し、はみ出した粘着剤層成分が包装体内面へ付着することによる貼付剤の包装体からの取り出し性の悪化、および皮膚貼付時の貼付剤のめくれなどの問題が生じるおそれが依然
として存在する。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、粘着剤層成分の経時的変化が低減された貼付剤であって、包装体内での保存中に貼付剤の端部から添加剤などの粘着剤層成分のはみ出しが生じ難く、貼付剤が包装体の内面に付着することが抑制され、貼付剤を包装体内から容易に取り出すことができ、コールドフローに起因する皮膚貼付時の貼付剤のめくれも抑制され、皮膚面から脱落しにくい貼付剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討した結果、貼付剤の平面方向に連続し貼付剤の端縁まで達する空隙を粘着剤層に形成するのではなく、粘着剤層の周辺部に局在する空隙を形成することで上述の課題を達成し得ることを見出し、以下の特徴を有する本発明を完成した。すなわち、本発明は以下に示される内容を包含する。
[1]支持体と、該支持体の少なくとも片面に形成された粘着剤層とを有する貼付剤であって、該貼付剤は周辺部と中央部を有し、前記粘着剤層は空隙部を有し、粘着剤層における空隙部は周辺部に局在化しており、中央部における粘着剤層は実質的に空隙部を有さず、かつ周辺部における粘着剤層は空隙部を平均で2.0〜100個/mm有することを特徴とする貼付剤。
[2]周辺部における粘着剤層の厚さは、中央部における粘着剤層の厚さより小さい、前記[1]記載の貼付剤。
[3]支持体は多孔質体と樹脂フィルムの積層体であり、該積層体の多孔質体側に粘着剤層が積層される前記[1]記載の貼付剤。
[4]周辺部の平面形状は、その幅が0.29〜3.5mmの帯状である部分を有する、前記[1]記載の貼付剤。
[5]中央部における粘着剤層の厚さが、50μm以上である前記[1]〜[4]いずれかに記載の貼付剤。
[6]中央部における粘着剤層の厚さは100〜4000μmであり、周辺部における粘着剤層の厚さは、1.5〜300μmであり、かつ中央部における粘着剤層の厚さよりも小さい、前記[1]記載の貼付剤。
[7]粘着剤層上に積層された剥離ライナーを有する、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の貼付剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明の貼付剤は、粘着剤層における空隙部が周辺部に局在化しており、中央部における粘着剤層は実質的に空隙部を有さず、かつ周辺部における粘着剤層が特定の範囲の個数の空隙部を有することで、空隙部が粘着剤層の中央部からコールドフローしてきた添加剤などの粘着剤層成分をトラップすることができる。したがって本発明の貼付剤を包装体内に包装して保存した場合、貼付剤端部からの添加剤などの粘着剤層成分のはみ出しが生じ難く、貼付剤が包装体の内面に付着することが抑制される。また本発明の貼付剤によれば、貼付剤を包装体内から容易に取り出すことができ、使用者が貼付剤を扱う際に手がべたつくことも少なく、コールドフローに起因する皮膚貼付時の貼付剤のめくれも抑制され、快適に貼付剤を使用することができる。
【0013】
さらに、本発明の貼付剤によれば、周辺部における粘着剤層の空隙部が、中央部の粘着剤層と、粘着剤層の端部とを少なくとも一部で分断するため、添加剤などの粘着剤層成分が貼付剤の外部環境から受ける影響を低減することができる。したがって添加剤などの粘着剤層成分の経時的変化を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本明細書において、貼付剤とは薬物を含有しないものだけでなく、薬物を含有する貼付製剤も包含する概念であるが、薬物を含有するものは特に貼付製剤ということにする。
【0015】
以下、本発明を、添付図面を引用しつつ説明する。なお、図中、各要素を明示するため要素間の寸法比率は実際とは異なっている。
【0016】
本発明の貼付剤は実質的に平面状の扁平な形態である。本発明の貼付剤の平面形状は、略矩形のほか、三角形、五角形などの多角形、すなわち略直線で輪郭付けられる形状、楕円、円形などの曲線で輪郭づけられる形状、それらの組み合わせなどが挙げられるがこれらに限定されない。貼付剤の寸法も限定されず、貼付剤の用途や適用箇所の大きさなどに応じて、適宜選択することができるが、例えば貼付剤が略正方形状である場合や略矩形の形状の場合、その1辺の長さが30〜90mmであり、他辺の長さが30〜90mmであることが一般的である。
【0017】
図1は、本発明の貼付剤の一例の模式図である。本発明の貼付剤は、支持体10と、該支持体10の少なくとも片面に形成された粘着剤層11とを備える貼付剤本体13を有し、該貼付剤本体13の粘着剤層11の粘着面上に積層され、粘着面を皮膚へ貼付する前に保護するための剥離ライナー12を有し得る。本発明の貼付剤は、中央部21と、中央部21の外側に位置し、貼付剤の端部を含む周辺部22を有し、前記粘着剤層11は空隙部31を有し、粘着剤層11における空隙部31は周辺部22に局在化しており、中央部21における粘着剤層11は実質的に空隙部を有さないことを特徴とする。すなわち本発明において周辺部22とは、中央部21の外側に位置し、貼付剤の端部を含む、貼付剤本体13の領域であって、粘着剤層11における空隙部31が局在化している領域をいう。
【0018】
周辺部に局在化している、粘着剤層における空隙部は、粘着剤層中の気泡を含むものであり、空隙部の大きさ、および形状は特に限定されないが、通常略球形かまたは球形が扁平に押しつぶされた形状である。
【0019】
本発明の貼付剤は、粘着剤層における空隙部が周辺部に局在化していることから、該空隙部が粘着剤層の中央部からコールドフローしてきた添加剤などの粘着剤層成分をトラップすることができる。したがって本発明の貼付剤を包装体内に包装して保存した場合、貼付剤端部からの添加剤などの粘着剤層成分のはみ出しが生じ難く、貼付剤が包装体の内面に付着することが抑制される。また、貼付剤を包装体内から容易に取り出すことができ、使用者が貼付剤を扱う際に手がべたつくことも少なく、コールドフローに起因する皮膚貼付時の貼付剤のめくれも抑制され、快適に貼付剤を使用することができる。さらに本発明の貼付剤によれば、該空隙部が、中央部の粘着剤層と、粘着剤層の端部とを少なくとも一部で分断するため、添加剤などの粘着剤層成分が貼付剤の外部環境から受ける影響を低減することができ、粘着剤層成分の経時的変化を低減することができる。
【0020】
図2においてd1で示すような周辺部における空隙部の貼付剤の主面に垂直な方向の最大径は、好ましくは周辺部における粘着剤層の厚さの1/2以上であり、より好ましくは2/3以上である。また空隙部は、貼付剤の周辺部における粘着剤層において、剥離ライナーから支持体まで貫通している(すなわち空隙部の前記最大径は周辺部における粘着剤層の厚さの1倍である)ことが好ましい。これはそのような空隙部が、流れ出そうとする粘着剤層成分を効果的にトラップすることができ、粘着剤層成分が貼付剤の端部(粘着剤層の端部)からはみ出しまたは流れ出すことを、より効果的に抑制し得ることによる。
【0021】
図2は、本発明の貼付剤の好ましい実施態様の一例を示した模式図であり、図2中の図1と同じ数字の符号は、図1の対応する要素を表し、中央部21と周辺部22の間に存在する貼付剤本体13の領域は、中間部23と称される。図2に示す実施態様において、周辺部22における粘着剤層11の厚さは、中央部21における粘着剤層11の厚さよりも小さく、それにより周辺部における空隙部の貼付剤の主面に垂直な方向の最大径が同じであっても、図1に示す実施態様におけるよりも効果的に空隙部が流れ出そうとする粘着剤層成分をトラップすることができ、上記本発明の効果がより顕著に奏される。
【0022】
また、周辺部における粘着剤層の厚さが、中央部における粘着剤層の厚さよりも小さい実施態様においては、図3に示すように貼付剤を包装体41内に包装した場合に、中央部21が包装体41を支えるように機能するので、包装体41の内面に貼付剤の端部が接触する機会が減少し、貼付剤端部から粘着剤層成分のはみ出しや流れ出しがあったとしても、貼付剤が包装体41に付着することが抑制され、したがって包装体41内から貼付剤を取り出しやすくすることができるという効果も奏される。
【0023】
さらに、周辺部における粘着剤層の厚さが、中央部における粘着剤層の厚さよりも小さい実施態様においては、貼付剤本体の中央部の厚さが、貼付剤本体の周辺部の厚さより大きいため、貼付剤が皮膚に貼付された後に、そのような中央部が衣服などを支えるように機能することができ、そのため貼付剤の端部が衣服などとこすれる機会を低減することができる。したがって、本発明の貼付剤は、皮膚面からきわめて脱落しにくい。
【0024】
本発明の貼付剤本体の形状および寸法を、特にその特徴的な形状の部分について、より具体的に説明すると、周辺部の平面形状は、その幅が0.29〜5mm、より好ましくは0.29〜3.5mmの帯状である部分を有することが好ましい。周辺部の幅を上記範囲内にすることによって、粘着剤層成分の貼付剤の端部からのはみ出しまたは流れ出しをより効果的に抑制することができ、かつ、粘着剤層の周辺部が大きくなりすぎることがないため、貼付剤の周辺部の接着力の低下をより効果的に防止することが出来る。十分に本発明の効果を達成するためには、このような帯状である部分を貼付剤の各周辺部に有することが好ましい。
【0025】
中央部の粘着剤層の厚さとしては、50〜5000μmが例示され、好ましくは100〜4000μmである。100μmより小さいと接着力が低下する可能性があり、4000μmより大きいと、粘着剤層の形状を保持することが困難となり、粘着剤層成分によっては、貼付剤の端部からの粘着剤層成分のはみ出しが著しいことがある。
【0026】
周辺部における粘着剤層の厚さとしては、空隙部が粘着剤層成分を効果的にトラップする観点から、周辺部における粘着剤層の厚さに対する、周辺部における空隙部の貼付剤の主面に垂直な方向の最大径の比を考慮すると、300μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。周辺部における粘着剤層の厚さはまた、所要の皮膚接着力を確保する観点から好ましくは1.5μm以上である。中央部における貼付剤本体の厚さと周辺部における貼付剤本体の厚さの差は、中央部に包装体や衣服を支えさせ、貼付剤本体の端部が包装体や衣服とこすれる機会を低減する観点から好ましくは20〜2000μmである。支持体の厚さは周辺部から中央部にわたってほぼ一定であるため、中央部における粘着剤層の厚さと周辺部における粘着剤層の厚さの差については、上記と同様である。
【0027】
本発明の貼付剤は、粘着剤層における空隙部を周辺部に局在化させることに基づき効果を奏するものであり、中央部における粘着剤層は実質的に空隙部を有さないことが好ましい。本明細書において「中央部における粘着剤層は実質的に空隙部を有さない」とは、中央部において粘着剤層が空隙部を含まないか、または含むとしても平均で1.0個/mm以下であることをいい、「粘着剤層における空隙部は周辺部に局在化している」とは、周辺部における粘着剤層が空隙部を少なくとも平均で2.0個/mm有し、したがって粘着剤層が有する空隙部の平均の個数が周辺部において中央部の少なくとも2倍であるこ
とをいう。
【0028】
本発明の貼付剤はまた、周辺部における粘着剤層が空隙部を好ましくは平均で2.0〜100個/mm、より好ましくは平均で2.0〜10個/mm有することを特徴とする。周辺部における粘着剤層が有する空隙部の平均の個数が100個/mmよりも大きい場合、粘着剤層における粘着剤の割合が小さくなるため、貼付剤の周辺部において、皮膚接着力が低下するおそれがあり、2.0個/mm未満である場合、前述の本発明の効果が十分に得られない。
【0029】
本発明において、かかる粘着剤層が有する空隙部の平均の個数(粘着剤層の単位体積あたりに含まれる空隙部の平均の個数)は、貼付剤の少なくとも4箇所について、凍結ミクロトームにより貼付剤の主面に垂直に切断し、その切断面をFE−SEM(Hitachi、電界放射型走査電子顕微鏡S−4800)によって倍率50〜1000倍で観察・撮像し、ゲージ目盛りを読むことにより求めた平均の値をいう。
【0030】
より具体的には、粘着剤層が有する空隙部の平均の個数は、ほぼ矩形またはほぼ正方形の貼付剤の各辺の少なくとも1箇所(合計で少なくとも貼付剤の4箇所)について、凍結ミクロトームにより中央部および周辺部とも少なくとも3000μmにわたって、各辺に垂直な方向に切断し、各切断面を撮像し、各画像中の700μm×600μmの断面について、ゲージ目盛りに基づき、図2のd2に示されるような貼付剤の厚さ方向に垂直な径(最大径)が1μm以上の空隙部の個数を数え、粘着剤層1mmあたりの空隙部の個数を算出することによって求めた平均の値をいう。
【0031】
図4および図5(a)はかかる方法により、周辺部における粘着剤層の厚さが中央部における粘着剤層の厚さよりも小さい実施態様の本発明の貼付剤について、貼付剤の主面に垂直な断面を倍率200倍で周辺部から中間部にわたる粘着剤層に焦点を合わせて撮像したFE‐SEM像の例である。図4および図5(a)は、剥離ライナー上に粘着剤層が位置し、粘着剤層における空隙部が周辺部(左側)に局在化している様子を示している。
【0032】
図4および図5(a)に示されるように、本発明の貼付剤の周辺部における粘着剤層が有する空隙部の形状としては、独立した空隙部や、1種または2種以上の空隙部が一部でつながったものなど種々のものが観察される。図2のd2に示されるような該空隙部の貼付剤の厚さ方向に垂直な径(最大径)としては、好ましくは5〜300μmであり、後述する気泡を導入することを含む製造方法を用いれば、調節することができる。図2のd1に示されるような該空隙部の貼付剤の主面に垂直な方向の最大径としては、好ましくは貼付剤の厚さ方向に垂直な径(最大径)の1/2倍〜1倍である。
【0033】
このように空隙部の形状は空隙部によって異なり、空隙部の大きさは変化し得るが、本発明においては、粘着剤層が有する空隙部の平均の個数の測定において、1種または2種以上の空隙部が一部でつながっていても、完全に分断されていないように観察される限り、空隙部は1個として数え、観察した断面における貼付剤の厚さ方向に垂直な径(最大径)が1μm以上である空隙部について計測し、1μm未満の空隙部は計測の対象としない。
【0034】
なお、本明細書における粘着剤層が有する空隙部の平均の個数は、空隙部の容積に基づき求められるものではないため、2つの粘着剤層について、それらが有する空隙部の平均の個数が同じであっても、それらの空隙部の総容積は異なることがある。
【0035】
以上のような貼付剤において、支持体としては、特に限定されないが、実質的に薬物等不透過性であるもの、即ち粘着剤層の活性成分や添加剤等が支持体中を通って背面から失われて含有量の低下を引き起こさないものが好ましい。
【0036】
本発明では好ましくは、支持体は多孔質体と樹脂フィルムの積層体であり、該積層体の多孔質体側に粘着剤層が積層される。多孔質体は、表面に凹凸を有し、該凹凸は、粘着剤層中に含まれ得る空隙(気泡)が移動し、または消失することを抑制すると考えられ、したがって多孔質体を用いれば、粘着剤層成分の流出やはみ出しをより効果的に抑制し得る。また、多孔質体を用いれば、それ自体が空隙部(気泡)を有しており、これが貼付剤の周辺部の粘着剤層に移動し、さらにはこれが粘着剤層中の気泡と融合して周辺部でさらに大きな気泡が形成され得るので、本発明の効果が増強されるものと考えられる。本発明の貼付剤の周辺部における粘着剤層が有する空隙部(気泡)は、多孔質体表面に到達することが好ましく、樹脂フィルムの粘着剤層側の表面まで到達することがより好ましい。
【0037】
このような多孔質体としては多孔質フィルム・シートが挙げられ、シートが厚さ200μm以上のものを指すとすると多孔質フィルムが好ましい。前記多孔質フィルムとしては、単層フィルムであっても積層フィルムであってもよく、多孔質体に対する粘着剤層の移動を抑制する投錨力を有するものを好適に使用することができる。具体的には紙、織布、不織布、編布、機械的に穿孔処理を施したフィルム・金属箔、およびこれらの積層体等が挙げられる。これらのうち取扱い性等の観点からは、特に紙、織布、不織布、およびこれらの積層体が好ましく、中でも不織布が好ましい。
【0038】
樹脂フィルムとしては、単層フィルムであっても、積層フィルムであってもよいが、非多孔質であり、活性成分に対して不透過性を示す樹脂からなるフィルムが好ましい。
【0039】
多孔質フィルムと樹脂フィルムは、同様の材質のものであってもよく、異なる材質のものであってもよい。これらのフィルムは公知の方法を用いて積層することができ、本発明の効果および貼付剤の効果を損なわない範囲内で、酸化防止剤、顔料、帯電防止剤などの各種添加剤が適宜配合されていてもよく、表面にコロナ放電処理、紫外線照射処理などの処理が施されていてもよい。
【0040】
支持体を構成するこのような多孔質フィルムおよび樹脂フィルムの材質としては、例えば、ポリエステル、ナイロン、サラン(旭化成、米国ダウケミカル社の登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、サーリン(米国デュポン社の登録商標)、またはこれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0041】
このような樹脂フィルムは、粘着剤層成分が、支持体の背面を透過して、含量が低下することを抑制する作用を有するとともに、粘着剤層が薬物を含む場合、いわゆる密封包帯療法(ODT)効果を達成するために好ましく用いられる。
【0042】
後述の貼付剤本体の周辺部に相当する領域を加圧、加熱することを特徴とする本発明の貼付剤の製造方法を採用する場合、貼付剤本体の中間部を形成する観点から、支持体を構成する多孔質フィルムと樹脂フィルムの材質としては、加熱され柔軟になった後変形し、冷却後変形された形状が維持されるよう、熱可塑性樹脂、例えばポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等が好ましく、特にポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0043】
多孔質フィルムの厚さは、投錨力向上、貼付剤全体の柔軟性及び貼付操作性等の点から10〜100μmの範囲が好ましい。また、多孔質フィルムとして織布や不織布を用いる場合、効果的な大きさの気泡を確保する観点および投錨性の観点から、その目付量は好ましくは5〜50g/m2であり、より好ましくは10〜30g/m2である。
【0044】
本発明において、多孔質フィルムの厚さは、貼付剤をルテニウム酸水溶液で染色した後、凍結ミクロトームにより切断した切断面をFE−SEM(Hitachi,S−4800)で倍率50〜1000倍で撮像し、ゲージ目盛りを読むことで測定する。その際、多孔質フィルムの表面には凹凸が存在するが、断面写真においてその凸部10箇所を無作為に選択し、当該凸部における多孔質フィルムの厚さを算術平均して、多孔質フィルムの厚さとする。
【0045】
また、本発明において、多孔質フィルムの目付量は、上記多孔質フィルムの厚さに多孔質フィルムの比重(見かけ比重)を乗じて、多孔質フィルムの単位面積あたりの重量を計算することで求める。
【0046】
樹脂フィルムの厚さは特に限定されないが、好ましくは1〜100μmである。1μmより小さいと、薬物等に対する不透過性が損なわれるおそれがあり、中間部を形成する観点からも好ましくない。100μmより大きいと、樹脂フィルムの剛性により貼付時に皮膚に違和感を発生する可能性がある。また、後述の貼付剤本体の周辺部に相当する領域を加圧、加熱することを特徴とする製造方法を採用する場合、周辺部における粘着剤層の厚さが、中央部における粘着剤層の厚さより小さい形状を確保できない可能性がある。なお、本発明において、樹脂フィルムの厚さは、上記多孔質フィルムの厚さと同様に測定する。
【0047】
したがって、本発明において望ましい支持体としては、1〜100μm厚のポリエステルフィルム(好ましくは、ポリエチレンテレフタレートフィルム)と、目付量10〜30g/m2のポリエステル(好ましくは、ポリエチレンテレフタレート)製不織布との積層フィルムである。
【0048】
貼付剤の貼付時の皮膚追従性および快適性を考慮すると支持体のトータル厚さは、好ましくは5〜200μmである。
【0049】
次に粘着剤層を形成するための組成物(粘着剤層形成用組成物)の調製方法、および粘着剤層を構成する成分の配合量について説明する。粘着剤層形成用組成物を調製する際の、以下に記載する各成分の配合量は、溶媒(有機溶剤)を除くすべての成分の配合量に対する各成分の配合量の割合を重量%単位で示したものである。
【0050】
貼付剤の中央部に対応する領域の粘着剤層は、粘着剤を必要に応じて薬物、粘着付与剤、有機液状成分などの成分とともに、溶媒の存在下、配合し、混合することにより中央部粘着剤層形成用組成物を得、これを塗布などの方法により層状にし、乾燥することにより形成することができる。粘着剤層としては、皮膚接着性の観点から疎水性粘着剤層が好ましく、したがって非含水系の粘着剤層が好ましい。かかる観点から、前記溶媒としては有機溶剤が好ましい。
【0051】
貼付剤の周辺部に対応する領域の粘着剤層は、同様に周辺部粘着剤層形成用組成物を調製し、これを塗布などの方法により層状にし、乾燥することにより形成することができるが、層状にする前に該組成物に気泡を導入することにより空隙部を形成することができる。周辺部粘着剤層形成用組成物は、中央部粘着剤層形成用組成物と各成分およびその配合量が同じであってもよく、異なっていてもよいが、気泡を形成させ、一定時間消失させないようにする観点から粘度が5〜50Pa・sであることが好ましい。
【0052】
有機溶剤としては、限定されないが、粘着剤層を構成する前記各成分との相溶性を有し、乾燥工程において容易に揮発させることができるものが好ましい。また周辺部粘着剤層
形成用組成物において、気泡を形成させ、一定時間消失させないようにし得るものが好ましい。かかる有機溶剤としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、酢酸エチルなどのエステル類、エタノールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類などが挙げられ、これらは単独でまたは二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0053】
前記乾燥は、風乾することにより行ってもよく、乾燥装置、熱風、遠赤外線などを用いる公知の方法により行ってもよい。
【0054】
前記各成分の混合方法としては、制限されないが、ニーダー、プラネタリーミキサーなどの混練機、ホモジナイザーなどの分散機、プロペラ型翼攪拌機などの攪拌機などが挙げられ、これらは単独で使用することも2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0055】
粘着剤層を構成する粘着剤としては、特に限定されないが、アクリル系重合体からなるアクリル系粘着剤;スチレン−ジエン−スチレンブロック共重合体(例えばスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体など);ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のゴム系粘着剤;シリコーンゴム、ジメチルシロキサンベース、ジフェニルシロキサンベース等のシリコーン系粘着剤;ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル系粘着剤;酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル系粘着剤;ジメチルテレフタレート、ジメチルイソフタレート、ジメチルフタレート等のカルボン酸成分とエチレングリコール等の多価アルコール成分からなるポリエステル系粘着剤等が挙げられる。
【0056】
粘着剤層は、架橋処理を施した架橋粘着剤層であってもよく、架橋処理を施していない非架橋粘着剤層であってもよい。ここで架橋処理とは、貼付剤の皮膚接着力を十分に維持すること、および貼付剤を皮膚表面から剥がす際の皮膚を引っ張り、皮膚の角質層を物理的に剥ぎ取るといった皮膚刺激を低く抑えることを両立させるために、粘着剤層に施される公知の処理を言い、架橋処理としては、化学架橋処理、イオン架橋処理、電子線や紫外線などによる物理架橋処理が挙げられる。架橋剤としては、酢酸亜鉛などの金属塩、エポキシ化合物、アミド化合物、アミン化合物、酸無水物、過酸化物、イソシアネート化合物等が例示される。
【0057】
粘着剤層が非架橋粘着剤層である場合、貼付剤の端部からの粘着剤層成分のはみ出しまたは流れ出しが起こりやすい傾向にあるが、本発明の貼付剤は、粘着剤層が非架橋粘着剤層であっても、粘着剤層成分のはみ出しや流れ出しを効果的に抑制することができ、かかる場合に特に有利である。
【0058】
同様に、粘着剤層がゴム系粘着剤を含む粘着剤層である場合、貼付剤の端部からの粘着剤層成分のはみ出しまたは流れ出しが起こりやすい傾向にあり、本発明の貼付剤は、かかる場合に特に有利である。
【0059】
ゴム系粘着剤は、適度な粘着力および薬剤溶解性を得るために、同一成分または異なる成分で平均分子量の異なるものを混合して使用することができる。例えば、ポリイソブチレンを例に挙げて説明すると、粘度平均分子量1,800,000〜5,500,000の高分子量のポリイソブチレン、粘度平均分子量40,000〜85,000の中分子量のポリイソブチレン、および必要によりさらに低分子量のポリイソブチレンとの混合物が好ましい。なお本発明における粘度平均分子量は、シュタウディンガーインデックス(J)を、20℃にてウベローデ粘度計のキャピラリー1のフロータイムからSchulz-Blaschke式により算出し、このJ値を用いて下式により求めるものである。
【0060】
【数1】

【0061】
ここで、高分子量のポリイソブチレンを10〜80重量%、好ましくは10〜50重量%、中分子量のポリイソブチレンを0〜90重量%、好ましくは10〜80重量%、低分子量のポリイソブチレンを0〜80重量%、好ましくは0〜60重量%の割合で配合することが好適である。なお一般に得られる粘着剤層は、高分子量の成分の割合が増大すると硬質になり、低分子量の成分の割合が増大すると軟質になる。
【0062】
粘着剤層には、適度な粘着性を付与するために、例えば、ロジン系樹脂、ポリテルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、石油系樹脂、テルペン−フェノール樹脂、キシレン樹脂等の粘着付与剤が配合されていてもよく、これらは一種でまたは2種以上を混合して用いられる。前記石油系樹脂としては、脂肪族系(C5系)石油樹脂、芳香族系(C9系)石油樹脂、共重合体系(C5-C9系)石油樹脂、および芳香族系(C9系)石油樹脂を部分水素添加または完全水素添加することによって得られる脂環族飽和炭化水素樹脂が例示される。脂環族飽和炭化水素樹脂としては、軟化点(環球法)90〜150℃のものが好ましい。粘着付与剤の配合量としては、限定されないが、適度な粘着性を付与し、配合量の増大に伴う粘着付与剤の効果を飽和させない観点から10〜40重量%が例示される。
【0063】
本発明の貼付剤は、所望により、粘着剤層が薬物を含むことができ、貼付製剤を提供することができる。ここにいう薬物は特に限定されず、ヒトなどの哺乳動物にその皮膚を通して投与し得る、すなわち経皮吸収可能な薬物が好ましい。
【0064】
所望により、粘着剤層は有機液状成分を含むことができる。有機液状成分としては、特に限定されず、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類;オリーブ油、ヒマシ油、ラノリン等の油脂類;スクアラン、流動パラフィンのような炭化水素類;各種界面活性剤;エトキシ化ステアリルアルコール;オレイン酸モノグリセリド、カプリル酸モノグリセリド、ラウリル酸モノグリセリドのようなグリセリンモノエステル;ポリプロピレングリコールといったポリアルキレングリコールのジアルキルエステル;グリセリンジアセテートなどのグリセリンジエステル、グリセリントリアセテートなどのグリセリントリエステル、またはそれらの混合物;クエン酸トリエチルなどの脂肪酸アルキルエステル;長鎖アルコール;オレイン酸、カプリル酸のような高級脂肪酸;ミリスチン酸イソプロピルのような高級脂肪酸のアルキルエステル;N−メチルピロリドン、N−ドデシルピロリドンのようなピロリドン類;デシルメチルスルホキシドのようなスルホキシド類;1,3−ブタンジオール等が挙げられ、これらは1種でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0065】
有機液状成分は、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは15〜60重量%、最も好ましくは20〜60重量%の割合で配合することができる。10重量%以上配合する場合に、粘着剤層が可塑化しやすく、粘着剤層の端部からのはみ出しまたは流れ出しが起こりやすいので、これを効果的に抑制できる本発明はこのような場合に有利である。なお、60重量%を超えて配合する場合、粘着剤層が一定形状を保持することが困難となる可能性がある。
【0066】
貼付剤本体の粘着剤層の粘着面には、皮膚へ貼付剤本体を貼付する前に粘着面を保護するための剥離ライナーを積層することができる。剥離ライナーとしては特に限定されず、その材質としては、この分野で自体公知のものが挙げられ、具体的にはポリエチレンテレフタレートをはじめとするポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、各種アクリル系及びメタクリル系ポリマー、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、酢酸セルロース、再生セルロース(セロファン)、セルロイド等のプラスチックフィルム、あるいは上質紙またはグラシン紙等とポリオレフィンとのラミネートフィルム等が例示される。安全性、経済性、薬物移行性の点でポリエステルフィルムを用いることが好ましい。
【0067】
剥離ライナーは、粘着剤層との剥離を容易にするように粘着剤との界面側が易剥離処理されたものが好ましい。易剥離処理としては、限定されないが、公知の方法を用いて行うことができ、例えば硬化性シリコーン樹脂を主成分とする離型剤を用いてバーコート、グラビアコートなどの塗布方法により剥離処理層を形成する処理が挙げられる。
【0068】
剥離処理層の厚さは、剥離性および塗膜の均一性確保の観点から0.01〜5μmが好ましい。剥離処理層が形成された剥離ライナーの厚みとしては、取り扱い性の点で通常10〜200μmであり、好ましくは50〜100μmである。
【0069】
以上のような貼付剤および貼付製剤の製造方法としては、種々の方法が考えられるが、工業的生産においては例えば以下の方法が、製造効率の点で好ましい。
【0070】
剥離ライナーの少なくとも片面の、後に得られる貼付剤の中央部に対応する領域に、中央部粘着剤層形成用組成物を塗工し、乾燥させて実質的に空隙部を有さない粘着剤層を形成する。次いで形成された粘着剤層の周囲の周辺部に対応する領域に気泡を含有する周辺部粘着剤層形成用組成物を同様に塗工し、乾燥させて空隙部を有する粘着剤層を形成する。そのような気泡は、周辺部粘着剤層形成用組成物を、塗工前に大気中で撹拌、通気、および/またはバブリングすることで導入することができる。気泡のサイズは、当該撹拌、通気、および/またはバブリングの強度および/または時間を増加または減少させることで調節することができる。本発明の好ましい実施態様において、通気量としては、周辺部粘着剤層形成用組成物2500gに対して100〜10000ml/minで数分から数十分であり、通気方法としては、限定されないが、例えば多孔質材料や1つ以上のチューブを介して気体を圧入または吸引することにより行うことができる。そして最後に形成された中央部および周辺部に対応する領域の粘着剤層の上に支持体を積層し、貼付剤製造用原反を得る。
【0071】
あるいは、支持体の少なくとも片面に、同様に中央部粘着剤層形成用組成物および周辺部粘着剤層形成用組成物を塗工し、乾燥させて粘着剤層を形成する。次いでその上に剥離ライナーを積層し、貼付剤製造用原反を得る。
【0072】
上記積層の手法としては、特に限定されず、プライマーなどの塗布、接着、融着、溶着、圧着などの公知の手法が挙げられる。
【0073】
次に貼付剤製造用原反(以下、単に原反ともいう)を、形成しようとする周辺部の外周の打ち抜き位置で打ち抜くことにより、本発明の図1に例示される実施態様の貼付剤を得ることができる。
【0074】
図2に例示される実施態様の貼付剤を製造する場合は、原反を支持体側から、所定形状の加熱された押し型で加圧し、型押しする。前記所定形状は、加圧時に貼付剤の周辺部に相当する領域を少なくとも加圧しうる形状である。そして型押し後、原反を、形成しようとする周辺部の外周の打ち抜き位置で打ち抜くことにより、本発明の周辺部における粘着剤層の厚さが中央部における粘着剤層の厚さよりも小さい実施態様の貼付剤を得ることができる。加熱された押し型の形状としては、形成する貼付剤の形状によるが、同軸上の2つの矩形により輪郭付けられる平面形状が例示される。
【0075】
ここで加熱された押し型を用いることが必要である。加熱された押し型は、加圧された領域に隣接する樹脂フィルムを含む支持体を熱で柔軟にさせ、それにより加圧された領域の粘着剤層が逃げ、中間部に相当する領域が形成されることを助長することができる。いったん形成された中間部に相当する貼付剤本体は、その後放冷などで冷却され、その形状を保持することができる。
【0076】
押し型の材質としては、特に限定されないが鉄が好ましい。ステンレスは熱ひずみが生じ得、加工がしにくい可能性があり、アルミと真鍮は加工はしやすいが型の耐久性に劣る可能性がある。
【0077】
打ち抜き手段としては特に限定されず、レーザー、押し切り刃などが挙げられる。切断寸法の調整および位置合わせが容易であり、きれいな端面が得られることから、好ましくは押し切り刃ダイセット(オス型およびメス型)で打ち抜く。
【0078】
剥離ライナーは容易に剥がすことができ、剥離ライナーを剥がすことにより、本発明の支持体と、該支持体の少なくとも片面に形成された粘着剤層とを有する貼付剤を得ることができる。なお剥離ライナーには、必要により切れ線を入れることができ、貼付剤の使用時に剥離ライナーを容易に剥離することを助けることができる。
【実施例】
【0079】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
【0080】
実施例1〜2
<粘着剤層形成用組成物の調製>
(1)中央部粘着剤層形成用組成物の調製
トルエン625.0g、n−ヘキサン875.0g、高分子量ポリイソブチレン(粘度平均分子量4,000,000)104.3g、中分子量ポリイソブチレン(粘度平均分子量55,000)208.7g、粘着付与剤(脂環族飽和炭化水素樹脂、軟化点141℃(環球法))208.7g、およびトルエン50.0g(別途秤量)を配合し、均一となるまで攪拌した。その後、有機液状成分(ミリスチン酸イソプロピル)228.2gおよびトルエン200.0gを秤量し、前記溶液に投入し、同様に均一となるまで攪拌して中央部粘着剤層形成用組成物を得た。
(2)周辺部粘着剤層形成用組成物の調製
中央部粘着剤層形成用組成物と同様に調製し(粘度25Pa・s)、塗布前に該組成物(2500g)に空気をチューブ(1本)を通じて通し(1000ml/min)、10分間バブリングすることによって気泡を導入した。
【0081】
<貼付剤製造用原反の作製>
中央部粘着剤層形成用組成物を、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」とも記す)製の剥離ライナー(厚さ75μm)の軽剥離面上の領域であって、後に得られる貼付剤の中央部に対応する領域(56mm×56mm)に、乾燥後の粘着剤層の厚さが160μmとなるように塗布し、乾燥機により乾燥させ(100℃)、実質的に空隙部を有さない粘着剤層が形成された剥離ライナーを得た。次いで形成された粘着剤層の周囲(幅約5mm)に周辺部粘着剤層形成用組成物を同様に塗布した(図5(b)に(株)キーエンス製マイクロスコープVHX‐500にて倍率200倍で撮像した周辺部粘着剤層形成用組成物塗布時の、周辺部に対応する粘着剤層の領域の気泡および中央部に対応する粘着剤層の領域を示す写真を示す)。塗布した周辺部粘着剤層形成用組成物を乾燥させ(100℃)、周辺部に対応する領域に空隙部が局在化し、中央部に対応する領域は実質的に空隙部を有さない粘着剤層(非架橋)が形成された剥離ライナーを得た。粘着剤層が形成された面を、厚さ4.5μmのPET製フィルムと、厚さ35μm、目付量20g/mのPET製不織布との積層体(トータル厚さ40μm)である支持体のPET不織布面と圧着することにより貼り合わせて貼付剤製造用原反を作製した。
【0082】
<貼付剤の製造>
同軸上の2つのほぼ正方形の形状により輪郭付けられる平面形状を有する、加熱された押し型を用いて、貼付剤製造用原反の周辺部に対応する領域の支持体表面を加熱、加圧した。加熱および加圧した領域が、後に得られる貼付剤の周辺部に対応するように、加熱および加圧された原反から、押し切り刃ダイセットを用いて貼付剤本体と剥離ライナーを同時に打抜き、本発明の貼付剤を得た。得られた貼付剤は、貼付剤本体および貼付剤の輪郭が約60mmの一辺長の略正方形であり、そのすべての外周部に幅約1.5mmの帯状の周辺部を有し、該周辺部の内側に略正方形の中央部を有し、該中央部と該周辺部との間に帯状の中間部を有するものであった。該貼付剤を、外面が12μm厚のPETフィルム、内面が30μm厚のポリアクリロニトリル系樹脂フィルムからなる包装材料で密封包装して2つのVノッチを有する貼付剤包装体を得た。
【0083】
得られた貼付剤包装体を、包装体の厚さ方向に3g/cmの荷重をかけて、1ヶ月間25℃で保存した。
【0084】
実施例3
押し型により貼付剤の周辺部に相当する領域を加圧・加熱しなかったこと以外は、実施例1〜2と同様に貼付剤を製造し、貼付剤包装体を得た。
【0085】
比較例1
周辺部粘着剤層形成用組成物の塗布前に該組成物に気泡を導入しなかったこと、および押し型により貼付剤の周辺部に相当する領域を加圧・加熱しなかったこと以外は実施例1〜2と同様に貼付剤を製造し、貼付剤包装体を得た。
【0086】
比較例2
中央部粘着剤層形成用組成物を調製した後、該組成物(2500g)に空気を通し(10ml/min)、1分間バブリングすることによって気泡の導入量を減少させたこと以外は実施例1〜2と同様に貼付剤を製造し、貼付剤包装体を得た。
【0087】
試験例1(粘着剤層が有する空隙部の平均の個数の測定)
貼付剤の少なくとも4箇所について、凍結ミクロトーム(大和光機工業(株)製、LR−85)により貼付剤の主面に垂直に切断し、その切断面をFE−SEM(Hitachi、電界放射型走査電子顕微鏡S−4800)によって倍率50〜1000倍で観察・撮
像し、ゲージ目盛りを読むことにより空隙部の平均の個数を求めた。
【0088】
各箇所について、切断は、中央部および周辺部とも少なくとも3000μmにわたって行い、各切断面を撮像し、各画像中の700μm×600μmの断面について、ゲージ目盛りに基づき、貼付剤の厚さ方向に垂直な径(最大径)が1μm以上の空隙部の個数を数え、粘着剤層1mmあたりの空隙部の平均の個数を算出した。
【0089】
1種または2種以上の空隙部が一部でつながっていても、完全に分断されていないように観察される限り、空隙部は1個として数え、観察した断面における貼付剤の厚さ方向に垂直な径(最大径)が1μm以上である空隙部について計測した。
【0090】
試験例2(粘着剤層の厚さの測定)
貼付剤をルテニウム酸水溶液で染色した後、貼付剤の主面に垂直に凍結ミクロトーム(同上)により切断し、その切断面をFE−SEM(Hitachi、電界放射型走査電子顕微鏡S−4800)によって倍率50〜1000倍で観察・撮像した。
【0091】
周辺部、および中央部について、ゲージ目盛りを読むことでPET製フィルムおよびPET製不織布の厚さ、ならびに貼付剤本体の厚さ(粘着剤層の厚さと支持体の厚さの和)を測定した。その際、PET製不織布の表面には凹凸が存在するが、断面写真においてその凸部10箇所を無作為に選択し、当該凸部におけるPET製不織布の厚さを算術平均して、PET製不織布の厚さとした。次いで貼付剤本体の厚さからPET製フィルムの厚さおよび前記PET製不織布の厚さを差し引き、周辺部、および中央部について、粘着剤層の厚さを求めた。
【0092】
試験例3(包装体からの貼付剤の取り出し性の評価)
製造直後の貼付剤と1ヶ月間25℃で保存した後の貼付剤について、図6に示すように、貼付剤包装体の2辺をハサミでまたはVノッチに従い開封した。開封部より、貼付剤を角をつかんで取り出し、以下の評価基準に基づき、1〜5の評価点を用いて包装体からの貼付剤の取り出し性を評価した。
【0093】
<評価基準>
5:粘着剤層のはみ出しがなく、きわめて容易に取り出せる。
4:粘着剤層のわずかなはみ出しがあるが、きわめて容易に取り出せる。
3:粘着剤層のいくらかのはみ出しがあるが、容易に取り出せる。
2:粘着剤層のいくらかのはみ出しがあるが、取り出し可能。
1:粘着剤層のかなりのはみ出しがあり、取り出しが困難。
【0094】
試験例4(皮膚貼付性の評価)
製造直後の貼付剤と1ヶ月間25℃で保存した後の貼付剤について、専門の評価者が貼付剤を包装体から取り出し、朝から24時間胸部に貼付し、貼付状態について、以下の評価基準に基づき、1〜5の評価点を用いて評価した。評価者の貼付中の行動は通常通りとした。また評価者が朝に入浴する場合は、入浴直後(30分以内)を避けて貼付することとした。各実施例および比較例について同一の評価者(1名)が1回評価した。
【0095】
<評価基準>
5:貼付剤が皮膚に貼付された状態が良好に保持され、貼付剤の端部にめくれが全く認められない。
4:貼付剤が皮膚に貼付された状態が良好に保持されるが、貼付剤の端部のわずかな部分でめくれが認められる。
3:貼付剤が皮膚に貼付された状態が良好に保持されるが、貼付剤の端部のいくらかの部
分でめくれが認められる。
2:貼付剤が皮膚に貼付された状態にあるが、貼付当初の状態と比べ密着性の低下が認められ、貼付剤の端部のいくらかの部分でめくれが認められる。
1:貼付剤が脱落する。
【0096】
評価結果を表1に示す。表1において、「空隙部の平均個数」は、粘着剤層が有する空隙部の平均の個数(粘着剤層の単位体積あたりに含まれる空隙部の平均の個数)を示す。
【0097】
【表1】

【0098】
表1に示すように、実施例1〜3の貼付剤は、中央部における粘着剤層は空隙部を有さず、周辺部における粘着剤層は空隙部を平均で3〜20個/mm有していた。なお、実施例2の貼付剤の周辺部における粘着剤層は、剥離ライナーから支持体まで貫通する空隙部を有しており、その他の実施例および比較例はそのような空隙部を有していなかった。このような実施例1〜3の貼付剤は、包装体からの取り出し性および皮膚貼付性において優れた特性を有していることがわかった。周辺部における粘着剤層が空隙部を有さない比較例1、および周辺部における粘着剤層が空隙部を平均で1個/mmしか有さない比較例2においては、包装体からの取り出し性および皮膚貼付性が劣るという結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の貼付剤は、皮膚表面の患部を被覆保護するための医療用の貼付剤として好適に使用することができ、薬物を包含させた場合は経皮吸収性薬物を連続的に経皮投与するための貼付製剤として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】図1は、本発明の貼付剤の一例の形状を示す、模式平面図ならびに模式断面図およびその詳細である。
【図2】図2は、本発明の貼付剤の好ましい実施態様の一例を示す、模式平面図ならびに模式断面図およびその詳細である。
【図3】図3は、包装体に収容した本発明の好ましい実施態様の貼付剤の一例を、その特徴的な形状の部分に限定して示す模式断面図である。
【図4】図4は、周辺部における粘着剤層の厚さが中央部における粘着剤層の厚さよりも小さい実施態様の本発明の貼付剤について、貼付剤の主面に垂直な断面を倍率200倍で周辺部から中間部にわたる粘着剤層に焦点を合わせて撮像したFE−SEM像の例である。
【図5】図5(a)は、周辺部における粘着剤層の厚さが中央部における粘着剤層の厚さよりも小さい実施態様の本発明の貼付剤について、貼付剤の主面に垂直な断面を倍率200倍で周辺部から中間部にわたる粘着剤層に焦点を合わせて撮像したFE−SEM像の例である。図5(b)は貼付剤の中央部に対応する領域に形成され、剥離ライナー上に積層された、実質的に空隙部を有さない粘着剤層、およびこれに隣接し貼付剤の周辺部に対応する領域に周辺部粘着剤層形成用組成物を塗布した際の該領域における気泡を(株)キーエンス製マイクロスコープVHX−500にて倍率200倍で撮像したものである。
【図6】図6は、貼付剤包装体の2辺をハサミでまたはVノッチに従い開封し、貼付剤を取り出す様子を示す図である。
【符号の説明】
【0101】
10 支持体
11 粘着剤層
12 剥離ライナー
13 貼付剤本体
21 中央部
22 周辺部
23 中間部
31 空隙部(気泡)
41 包装体
d1 周辺部における空隙部の貼付剤の主面に垂直な方向の最大径
d2 周辺部における空隙部の貼付剤の厚さ方向に垂直な径(最大径)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体の少なくとも片面に形成された粘着剤層とを有する貼付剤であって、該貼付剤は周辺部と中央部を有し、前記粘着剤層は空隙部を有し、粘着剤層における空隙部は周辺部に局在化しており、中央部における粘着剤層は実質的に空隙部を有さず、かつ周辺部における粘着剤層は空隙部を平均で2.0〜100個/mm有することを特徴とする貼付剤。
【請求項2】
周辺部における粘着剤層の厚さは、中央部における粘着剤層の厚さより小さい、請求項1記載の貼付剤。
【請求項3】
支持体は多孔質体と樹脂フィルムの積層体であり、該積層体の多孔質体側に粘着剤層が積層される請求項1記載の貼付剤。
【請求項4】
周辺部の平面形状は、その幅が0.29〜3.5mmの帯状である部分を有する、請求項1記載の貼付剤。
【請求項5】
中央部における粘着剤層の厚さが、50μm以上である請求項1〜4いずれか1項記載の貼付剤。
【請求項6】
中央部における粘着剤層の厚さは100〜4000μmであり、周辺部における粘着剤層の厚さは、1.5〜300μmであり、かつ中央部における粘着剤層の厚さよりも小さい、請求項1記載の貼付剤。
【請求項7】
粘着剤層上に積層された剥離ライナーを有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の貼付剤。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−53065(P2010−53065A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−219190(P2008−219190)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】