説明

貼付製剤

【課題】投与される患者の年齢、体重、症状に関わり無く同一の製剤を用いることが出来、各個人に合った投与量を調整する事が出来る貼付製剤を提供すること。
【解決手段】支持体の片面に、少なくとも粘着剤層、およびライナーが順次積層され、薬物が該粘着剤層に配合されるか、または/および支持体と粘着剤層との間に薬物貯蔵層、薬物透過制御膜を設けてなる貼付製剤であって、ライナーが個々に剥離可能な小片の集合体で形成されている貼付製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の年齢、体重、症状に合わせて薬物の投与量を調整しうる薬物経皮投与用の貼付製剤およびその商業的パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、皮膚面を通して薬物を投与する、多くの経皮吸収型医薬品が開発されてきている。これら経皮吸収型医薬品は、肝臓での一次代謝を避けることによる投与薬物の有効利用性や薬理効果の持続、投与の簡便性、投与の確認等のコンプライアンスの面から高い評価を得ており、他の多くの薬物に於いても皮膚面を通した経皮投与法、特に薬物を含有する粘着剤層を皮膚面に貼付して使用する貼付製剤による投与法を採用することが望まれる。
【0003】
一般に医薬品は投与される患者の年齢、体重、症状に合わせて薬物の投与量は調整されている。経口剤の場合には錠剤の数を加減することにより容易に調整されている。経皮吸収薬の場合、投与量の調整は、同一面積で薬物含量や薬物濃度を変更することにより投与量を調整する方法、あるいは投与面積を変更することにより調整する方法等が挙げられるが、生産性の観点から、一般的には、面積の異なる複数製剤、あるいは一定面積のみの製剤が上市されているのが実情である。
【0004】
従って、従来、貼付製剤は上述した様々な利便性とは反対に、患者の年齢、体重、症状に合わせた薬物の投与量が、容易に調節できなかった。
【0005】
ところで、疾病の治療、予防あるいは検査を目的として使用される貼付製剤は皮膚に適用するまで粘着基材表面を保護するために、薬物非透過性膜(通常はライナー)を有するのが通例である。
【特許文献1】実開昭62−050623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、投与される患者の年齢、体重、症状に関わり無く同一の製剤を用いることが出来、しかも各個人に合った投与量を調整する事が出来る貼付製剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記従来の技術に鑑み、鋭意努力した結果、下記貼付剤によって上記課題を達成し得ることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)支持体の片面に、少なくとも粘着剤層、および薬物非透過性膜が順次積層され、薬物が該粘着剤層に配合されるか、または/および支持体と粘着剤層との間に薬物貯蔵層、薬物透過制御膜を設けてなる貼付製剤であって、薬物非透過性膜が意図される投与量に応じて、用時に個々に選択的に剥離可能な小片の集合体で形成されて貼付面積を調整しうる貼付製剤。
(2)薬物非透過性膜の剥離力が10〜100g/30mm巾である上記(1)に記載の貼付製剤。
(3)貼付製剤の外周に沿って剥離可能である薬物非透過性膜の小片を有する上記(1)または(2)に記載の貼付製剤。
(4)上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の貼付製剤、及び意図する投与量に応じて、剥離すべき薬物非透過性膜の小片を指示する記載物を含む商業的パッケージ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明を詳細に説明する。
図1〜3は本発明の貼付製剤の具体例を示し、図1は薬物非透過性膜側から見た貼付製剤の平面図、図2(マトリックスタイプ)および図3(リザーバータイプ)はそれぞれ図1中のA-A 線の断面図である。
【0010】
本発明において、マトリックスタイプの貼付製剤とは、たとえば図2の断面図に示すように、支持体(5)の片面に粘着剤層(2)、薬物非透過性膜(1)の順で積層されるような貼付製剤であり、このタイプの貼付製剤は粘着剤層に薬物を含有している。
【0011】
さらに本発明において、リザーバータイプの貼付製剤とは、図3の断面図に示すように、支持体(5)の片面に薬物貯蔵層(4)、薬物透過制御膜(3)、粘着剤層(2’)、薬物非透過性膜(1)の順で積層されるような貼付製剤を示し、このタイプの貼付製剤は薬物貯蔵層を有しているので、粘着剤層には薬物を配合しなくてもよい。
【0012】
本発明の貼付製剤においては、上記のように薬物非透過性膜を用時に個々に選択的に剥離可能な小片の集合体にしたことから、投与される患者の年齢、体重、症状に合わせて、その剥離小片を適宜選択的に剥離することによって、粘着剤層の露出面積の大小を調整することができる。かくして、各個人にあった投与量を調整することができるとことになる。また、薬物を継続的に投与する場合でも、本貼付製剤は比較的大きな面積のもの(つまり、薬物を多く含んだもの)も薬物非透過性膜を分割して剥離することによって薬物の投与量を調節できるため、薬物の効果の持続性に優れており、長期的に薬物を投与する場合にも有用である。
【0013】
本発明において、薬物非透過性膜を個々に剥離可能な小片の集合体とするには、例えば貼付製剤調製後、薬物非透過性膜に切り込み線を入れる方法、また、予め所定の形状に作成した個々の小片を集合させて薬物非透過性膜を形成する方法が挙げられる。図1は、薬物非透過性膜を、分断用切り込み線によって、a−1、a−2、b−1、b−2、c−1、c−2およびdの7個の小片に分割した例である。
【0014】
皮膚へ貼付される貼付製剤であることを考慮すると、患部への貼付時の剥がれを抑制する点から、皮膚への貼付時に、貼付製剤の外周部分に粘着性があり、少なくともこの部分が皮膚表面と粘着していることが望ましい。かかる観点から、小片の集合体における小片には、少なくとも当該貼付剤の外周に沿って剥離可能な小片が存在することが好ましい。例えば、図1の例では、a−1、a−2がこれに相当する。その際、a−1およびa−2の外周辺と直交する方向の幅は、通常5〜20mm、好ましくは10〜15mm程度である。かくして、皮膚への十分な粘着性が達成される。
【0015】
本発明における薬物非透過性膜の小片の集合体の形態としては、個々に分割可能であれば特に限定されないが、図1に示した具体例のように外側から順に剥離できる多重構造になっているのが好ましい。
【0016】
本発明の貼付製剤の外形(平面形状)は、皮膚に貼付するのに適した形状であれば特に限定されないが、本発明の意図する目的から、四角形状や円形状などの平面形状にすることが望ましい。
【0017】
各小片の面積には特に制限はなく、本発明の目的を達成しえるものであれば、特に制限はない。また、小片の形状についても特に制限はなく、本発明の目的を達成しえるものであれば、特に制限はない。
【0018】
本発明において、薬物非透過性膜の剥離力は、JIS Z−0237に従って測定される値であり、通常10〜100g/30mm巾、好ましくは40〜100g/30mm巾、より好ましくは60〜80g/30mm巾の範囲である。薬物非透過性膜の剥離力が100g/30mm巾以下であれば、用時における薬物非透過性膜の剥離が容易であり、本発明の薬物非透過性膜として好ましい。また、10g/30mm巾以上である場合には、投与量調整のために剥離しなかった薬物非透過性膜が製剤貼付時にズレ等を起こすことがなく、本来皮膚との接触(接着)を意図しない部分の膏体面が露出して、当該箇所から薬物が皮膚を通じて吸収されることがなく、オーバードーズを生じることがなく、本発明の薬物非透過性膜として好ましい。
【0019】
また、用時に剥離しなかった薬物非透過性膜の部分は、皮膚へ粘着しないことから、その部分が、例えば製剤の周辺端部である場合には、当該箇所から皮膚からの剥がれの懸念がある。従って、製剤の周辺端部は小片を剥離して、粘着性とし、製剤の中心部ないしはそれに近接する部分に剥離されない薬物非透過性膜が残る形態となるように該小片が分布していることが好ましい。例えば図1の具体例においては、a→b→c→dの順で剥離されることが望ましい。
【0020】
本発明に用いられる薬物非透過性膜には、一般に貼付剤のライナーとして使用されているものを使用することができる。例えばシリコーン樹脂やフッ素樹脂等の塗布によって剥離処理を施した紙やプラスチックフィルム(例えば、ポリエステルフィルム等)等が用いられる。特に、用時に剥離せずに製剤表面に残った薬物非透過性膜は皮膚と接触するため、皮膚刺激性の低い材質が好ましく、例えばポリエステルフィルムや紙などを用いるのが好ましい。
【0021】
当該薬物非透過性膜の厚さは、通常10〜200μm、好ましくは50〜100μmである。10μm未満であると取り扱い性が劣るようになるという懸念があり、また200μmを超えると用時に残存する薬物非透過性膜によって皮膚接着性阻害が生じる点で好ましくない。
【0022】
本発明の貼付製剤に用いられる粘着剤としては、常温(20〜30℃程度)で粘着性を有し、皮膚面に接した際にカブレなどを生じないような従来から用いられているアクリル系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤(合成イソプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、スチレン/ブタジエンゴム、スチレン/イソプレン/スチレンゴム、スチレン/ブタジエン/スチレンゴム)、シリコーン系粘着剤、ビニルエステル系粘着剤、ビニルエーテル系粘着剤などの医療用の粘着剤から構成することが好ましい。これらのうち粘着剤の品質の安定性や粘着特性の調整のしやすさの点からは、アクリル系、ゴム系またはシリコーン系から選ばれる少なくとも一種の粘着剤を用いることが好ましい。
【0023】
上記アクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを40重量%以上の割合で重合した重合体が好ましい。特に好ましくは一種もしくは二種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル50〜98重量%と、一種もしくは二種以上の共重合性単量体1〜50重量%を共重合して得られる共重合体が用いられる。
【0024】
このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が2〜18、好ましくは4〜12の一級〜三級アルコールと、アクリル酸もしくはメタクリル酸とから得られるエステルを用いることができる。
【0025】
一方、共重合性単量体としては、共重合反応に関与する不飽和二重結合を分子内に少なくとも一個有すると共に、カルボキシル基(例えば(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸など)やヒドロキシル基(例えば(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルエステルなど)、スルホキシル基(例えばスチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸スルホプロピルエステル、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸、アクリルアミドメチルプロバンスルホン酸など)、アミノ基(例えば(メタ)アクリル酸アミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸tert−ブチルアミノエチルエステルなど)、アミド基(例えば(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなど)、アルコキシル基(例えば(メタ)アクリル酸メトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシジエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステルなど)などの官能基を側鎖に有する単量体を用いることができる。これら以外に共重合できる単量体としては、例えば(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニル−2−ピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピベラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルカプロラクタム、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリンなどを用いることができる。
【0026】
これらの共重合性単量体は一種もしくは二種以上共重合することができるが、粘着特性としての接着性や凝集性などの点から、カルボキシル基含有単量体やヒドロキシル基含有単量体の少なくとも一種を必須成分として1〜50重量%、好ましくは3〜20重量%の範囲で共重合し、必要に応じて上記に例示の他の単量体、例えば酢酸ビニルやN−ビニル−2−ピロリドンのようなビニル系単量体を40重量%以下、好ましくは30重量%以下の範囲で共重合することが好ましい。
【0027】
具体的なアクリル系粘着剤としては、2−エチルへキシルアクリレートとアクリル酸とからなる共重合体、2−エチルへキシルアクリレートとヒドロキシエチルアクリレートとからなる共重合体、2−エチルへキシルアクリレートとビニルピロリドンとアクリル酸とからなる共重合体などが挙げられる。
【0028】
上記アクリル系粘着剤は架橋剤を用いて、架橋粘着剤として用いることが出来る。かくして、貼付後の製剤を剥離する時に皮膚接着粘着剤層で凝集破壊を生じ、糊残りを生じることが抑制できる。
【0029】
上記アクリル系粘着剤の架橋剤としては、イソシアネート系、金属塩系、エポキシ系等の種々の架橋剤を用いることが出来る。
【0030】
本発明において、粘着剤は単独で用いても複数種の粘着剤を適宜混合してもよいが、さらに、ロジン、ロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、石油系樹脂およびテルペンフェノール樹脂等を必要に応じて添加し、粘性を増大させることもできる。
【0031】
先に、薬物非透過性膜剥離力は、通常10〜100g/30mm巾、好ましくは40〜100g/30mm巾、より好ましくは60〜80g/30mm巾の範囲であるとしたが、かかる剥離力のものは、例えば、使用するプラスチックフィルムの材質(種類)によって、上記の範囲内のものを選択したり、剥離処理を施して上記の範囲内に調整したりすることによって、得ることができる。
【0032】
本発明で用いる薬物としては、経皮吸収性を有するものであれば特に限定されない。具体的には全身性麻酔薬、催眠・鎮静薬、抗癲癇薬、解熱鎮痛消炎薬、鎮暈薬、精神神経用薬、局所麻酔薬、骨格筋弛緩薬、自律神経用薬、鎮痙薬、抗パーキンソン薬、抗ヒスタミン薬、強心薬、不整脈用薬、利尿薬、血圧降下薬、血管収縮薬、冠血管拡張薬、末梢血管拡張薬、動脈硬化用薬、循環器用薬、呼吸促進薬、鎮咳去痰薬、ホルモン薬、化膿性疾患用外用薬、鎮痛・鎮痒・収斂・消炎用薬、寄生性皮膚疾患用薬、止血用薬、痛風治療用薬、糖尿病用薬、抗悪性腫瘍用薬、抗生物質、化学療法薬、麻薬などを用いることができる。
【0033】
本発明において、該粘着剤層が薬物を含有する場合、薬物を0.5〜60重量%、好ましくは1〜50重量%の範囲で、さらに好ましくは3〜40重量%の範囲で含有させることが出来る。その含有量が0.5重量%未満の場合には、薬理効果を発揮するのに十分な薬物量を吸収させることが困難であり、60重量%を越えると皮膚接着性が低下する。
【0034】
該薬物を含有する粘着剤層中に一種あるいは二種以上の長鎖脂肪酸エステル類、長鎖脂肪族アルコール類を配合することにより、これら成分は粘着剤層と相溶し、粘着剤層を可塑化する。その結果、活性成分の粘着剤層中での拡散性を向上させ、皮膚透過性を促進させることができる。
【0035】
粘着剤層中に配合される長鎖脂肪酸エステル類としては、ミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、パルミチン酸オクチル、オレイン酸エチル、ラウリン酸エステル、グリセリンオレイン酸モノエステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0036】
長鎖脂肪族アルコール類としては、オクチルアルコール、デシルアルコール、ドデシルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、へキシルデカノール、オクチルドデカノール等が挙げられる。
【0037】
粘着剤層におけるかかる長鎖脂肪酸エステル類、又は/及び長鎖脂肪族アルコール類の含有量は、粘着剤100重量部に対して25〜200重量部、好ましくは40〜180重量部、特に好ましくは50〜150重量部の範囲とすることが望ましい。これらの成分の含有量が少なすぎると活性成分の皮膚透過性の促進が得られないと共に、充分な可塑化作用を発揮できなくなり、皮膚刺激性の低減はあまり望めなくなる。一方、含有量が多すぎると、粘着剤層の面が可塑化され過ぎて凝集力が低下するようになるので、架橋処理を施しても剥離除去時に糊残り現象が生じて再び皮膚刺激性を増大させる傾向を示す。
【0038】
本貼付製剤の支持体としては、特に限定はされないが、プラスチックフィルムと不織布との積層フィルムが好ましく、支持体の不織布面に粘着剤層が積層される。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエステル、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリプロピレンなどを挙げることができ、好ましくはポリエステルやポリエチレンであるが、薬物が支持体へ移行しにくい性質からポリエステルが最も好ましい。
【0039】
当該プラスチックフィルムの厚みは、通常1〜1000μm、好ましくは2〜100μmであるが、柔軟性及び操作性の点から、5〜50μmであることがさらに好ましい。
【0040】
不織布は、貼付剤の分野で通常用いられる材料から製造される。このような材料としては、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド等が挙げられ、好ましくはポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミドである。当該不織布の坪量は、通常1〜100g/m、好ましくは6〜50g/mであるが、柔軟性や貼付時の皮膚面への密着感が良好であるという理由から、6〜30g/mがより好ましい。
【0041】
上記薬物含有層には必要に応じて、抗酸化剤や各種顔料、各種充填剤、安定化剤、薬物溶解補助剤、薬物溶解抑制剤等の添加剤を粘着剤100重量部に対して2〜50重量部程度の範囲で配合することができる。
【0042】
また、本発明におけるリザーバータイプの貼付製剤の場合には、薬物貯蔵層に封入される薬物含有組成物中への薬物の配合量は、組成物の種類によって変わりえるが、通常、アルコール系溶液では0.5〜50重量%、ゲル化剤では1〜20重量%、水溶性ゲルでは0.5〜20重量%であることが望ましい。これ以下の配合量では治療効果が不十分となり、またこの配合量超えると薬物利用率の面から好ましくない。
【0043】
本発明に用いられる薬物透過制御膜としては、平均孔径0.1〜1μmを有する微孔性膜を挙げることができる。微孔性膜の材質としてはポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン等が使用される。当該薬物透過制御膜の厚みは通常1μm〜200μmであるが、特に、製造の容易性や適度な剛軟性などの点から10μm〜100μmが望ましい。
【0044】
本発明の貼付製剤は自体公知の方法で製造される。例えば粘着剤層に用いる高分子化合物を含有する溶液を薬物非透過性膜に塗布し、乾燥させた後、粘着剤層表面に支持層に用いるフィルム、不織布等を貼り合せるか、または該高分子化合物を含有する溶液を支持層に用いるフィルム、不織布等に直接塗布し、乾燥させた後、粘着剤層表面にセパレータを積層して、支持層、粘着剤層及び薬物非透過性膜がこの順に積層した原反を得、これを貼付製剤の外枠の形状で打抜き、例えば薬物非透過性膜の部分のみに金属刃等で、前述のような切込み線を入れることで製造することができる。また、予め所定の形状に作成した薬物非透過性膜の小片を集合させてもよい。
【0045】
また、薬物含有層および薬物透過制御膜を有する本発明のリザーバータイプの貼付製剤は、例えば、上記のように薬物非透過性膜上に粘着剤層を形成し、その上に薬物透過制御膜を形成する。次に、薬物透過制御膜上に支持層に用いるフィルムを載置し、薬物貯蔵用の溶液を注入する部分を残して、周縁部をヒートシールし、貼付製剤形状に打抜き、薬物貯蔵層用溶液を注入、ヒートシールすることで製造することができる。
【0046】
さらに本発明は、本貼付製剤、及び該貼付製剤が患者の年齢、体重、症状に応じて、又は意図する投与量に応じて、選択的に薬物非透過性膜を剥離して貼り付けるべきことを記載した記載物を含む商業的パッケージを提供する。
患者の年齢、体重、症状に応じて投与量が異なることになるが、上記記載物には、投与を意図する量に応じて、用時にどの小片を残し、との小片を剥離して皮膚に貼付すべきかを記載することになる。
【0047】
以下に実施例および試験例を挙げて本発明の貼付製剤をさらに詳細に説明する。なお本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で種々の応用ができることはいうまでもない。
【実施例】
【0048】
実施例1
5重量%ビソプロロール、30重量%ミリスチン酸イソプロピル、65重量%アクリル系粘着剤を重合させて粘着剤溶液を調製した。シリコーン離型処理を施した38μm厚みのポリエステルフィルムに、上記粘着剤溶液を乾燥後の厚みが60μmになるように塗布乾燥した後、2μm厚みのポリエステルフィルムおよび坪量12g/mのポリエステル製不織布からなる支持体を貼り合わせてシート状原反を得た。これを50mm×50mmとなるように打ち抜き、金属刃で切込み線を入れ、本発明の貼付製剤(マトリックスタイプ)を得た。
本製剤の薬物非透過性膜剥離力は45g/30mm巾であった。
【0049】
実施例2
シリコーン離型処理を施した38μm厚みのポリエステルフィルムに、ポリイソブチレン系粘着剤を乾燥後の厚みが60μmになるように塗布乾燥した。これに厚さ100μmのサンマップLC(日東電工社製、ポリエチレン多孔質膜)を積層し、75μm厚みのポリエステルフィルムの支持体を3mm×3mmとなるように薬物貯蔵層溶液注入口を残してヒールシートし、ヒールシート外周部に沿って打ち抜いた。これに5重量%ビソプロロールおよび95重量%エタノール(95%)からなる薬物貯蔵層溶液500μLを注入口より注入後、注入口をヒールシートにより完全に封止して、本発明の貼付製剤(リザーバータイプ)を得た。
本製剤の薬物非透過性膜剥離力は45g/30mm巾であった。
【0050】
【表1】

【0051】
試験例
実施例1および実施例2の分割剥離可能な薬物非透過性膜を25%、50%、100%剥離し、溶出試験を実施した。溶出試験条件は、第14改正日本薬局方(JP)溶出試験法第2法パドル法に準じて行った。ただし、温度は32±0.5℃、パドル回転数は50回/分、試験液はリン酸緩衝液(pH6.8)900mL(JP崩壊試験法第2液に準拠)とした。
【0052】
結果
実施例1の結果(図4)から、本発明の貼付製剤(マトリックスタイプ)は、薬物非透過性膜剥離面積に応じた薬物放出を示した。すなわち皮膚接着剤層を任意の面積で露出し、皮膚上に接着させることにより、同一製剤であるにもかかわらず、投与される患者の年齢、体重、症状に合わせた薬物の投与量の調整を容易に行うことができる。
【0053】
また、実施例2の結果(図5)から、本発明の貼付製剤(リザーバータイプ)は、実施例1と同様に薬物非透過性膜剥離面積に応じた薬物放出速度を示し、さらに本製剤は、薬物が薬物貯蔵層内で自由に移動できるため、長時間にわたって薬物放出された。すなわち、このように一部の薬物非透過性膜のみを剥離した貼付製剤を適用した患者は、その適用期間を延長できるため、患者が製剤を貼り返る手間を減らすことができ、投与量の容易な調節のみならず患者のQOLをも向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】一実施形態の貼付製剤の平面図(薬物非透過性膜側から見た図)を示す。
【図2】図1のA−A断面図(マトリックスタイプ)を示す。
【図3】図1のA−A断面図(リザーバータイプ)を示す。
【図4】実施例1の結果を示すグラフ。
【図5】実施例2の結果を示すグラフ。
【符号の説明】
【0055】
a−1〜d 薬物非透過性膜小片
e 分断用切り込み線
X ライナー
Y 貼付製剤
1 薬物非透過性膜
2,2’ 粘着剤層
3 薬物透過制御膜
4 薬物貯蔵層
5 支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の片面に、少なくとも粘着剤層、および薬物非透過性膜が順次積層され、薬物が該粘着剤層に配合されるか、または/および支持体と粘着剤層との間に薬物貯蔵層、薬物透過制御膜を設けてなる貼付製剤であって、薬物非透過性膜が意図される投与量に応じて、用時に個々に選択的に剥離可能な小片の集合体で形成されて貼付面積を調整しうる貼付製剤。
【請求項2】
薬物非透過性膜の剥離力が10〜100g/30mm巾である請求項1に記載の貼付製剤。
【請求項3】
貼付製剤の外周に沿って剥離可能である薬物非透過性膜の小片を有する請求項1または2に記載の貼付製剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の貼付製剤、及び意図する投与量に応じて、剥離すべき薬物非透過性膜の小片を指示する記載物を含む商業的パッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−225319(P2006−225319A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−41129(P2005−41129)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】