説明

貼合せSOIウェーハの製造方法

【課題】厚BOX−SOIウェーハの製造において、貼合せ熱処理の際に生じていた貼合せ界面の結晶欠陥(スリップ)を低減するとともに、SOIウェーハに生じる反りを低減する。
【解決手段】本発明の貼合せSOIウェーハ18の製造方法は、支持用ウェーハ12表面に形成する酸化膜12aの厚さが、活性層用ウェーハ11表面に形成する酸化膜11aの厚さより大きくなるように各酸化膜を形成する酸化膜形成工程と、貼合せる前に、活性層用ウェーハ或いは支持用ウェーハのうち少なくともいずれか一方の貼合せ面にプラズマ処理を施すプラズマ処理工程と、2枚のウェーハを酸化膜を介して重ね合せて密着させる貼合せ工程と、貼合せたウェーハの活性層用ウェーハに減肉化処理を施して薄膜化することによりSOI層を形成するSOI層形成工程と、SOI層形成工程後の貼合せウェーハを熱処理して貼合せ強度を増強させる接合強化熱処理工程とをこの順に含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋込み酸化膜層厚さが大きい高耐圧デバイスに適した貼合せSOI(Silicon On Insulater)ウェーハの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
SOIウェーハは、シリコン単結晶を支持基板とし、埋込み酸化膜(Buried Oxide;以下、BOXという。)層を介して活性層となる単結晶シリコン層(以下、SOI層という。)が形成された構造を有する。そして、BOX層の誘電体分離によって素子間が電気的に分離されることを活かして高耐圧デバイスへの応用がなされている。特に、自動車エレクトロニクスやフラットパネルディスプレイ、モーター制御や電源など多くの分野において、より高耐圧なデバイスに対応したSOIウェーハへの需要がある。
【0003】
一般的に、より高耐圧なデバイスへ適応するためには素子間の電気抵抗を大きくすればよい。即ち、素子間の電気分離に用いられているBOX層を厚くすることによって高耐圧に対応したSOIウェーハが作製され、BOX層厚みが1μm以上のものが高耐圧用SOIウェーハとして使用されている。
【0004】
SOIウェーハの製造方法としては、薄膜化される活性層用ウェーハと、支持用ウェーハを貼合せて形成する貼合せ法や、ウェーハ表面より酸素イオンを注入してウェーハ表面から所定の深さの領域にBOX層を形成するSIMOX(Separation by Implanted Oxygen)法などがある。
【0005】
このうち、貼合せ法によるSOIウェーハの製造方法は、図4に示すように、先ず、活性層用ウェーハ1と支持用ウェーハ2を用意し、いずれか一方或いは双方のウェーハに熱酸化による酸化膜1a,2aを形成する。図4では、双方のウェーハに酸化膜を形成している。次に、2枚のウェーハ1,2を重ね合せて加圧することによって2枚のウェーハ1,2を酸化膜1a,2aを介して接着する。重ね合せウェーハ3は水素結合によって接着されているに過ぎず、接着強度が弱いため、酸化雰囲気中、1100〜1250℃の温度で貼合せ熱処理を施して、接着強度を高める。これにより重ね合せたウェーハの間に介在する酸化膜1a,2aをBOX層5とする。更に、熱処理後の重ね合せウェーハ4の活性層用ウェーハを研削、研磨によって所望する厚さになるように減肉化処理を施してSOI層6とし、更にテラス研磨を施すことにより貼合せSOIウェーハ7が製造される。
【0006】
前述した高耐圧デバイス向けSOIウェーハを製造する際には、上記の熱酸化時間を長くしてBOX層を厚く形成することによって対応してきたが、BOX層が厚いSOIウェーハ(以下、厚BOX−SOIウェーハという。)を製造する際に、活性層用ウェーハに形成する酸化膜厚さと支持用ウェーハに形成する酸化膜厚さの厚み差が大きくなると、貼合せ熱処理の際に、重ね合せた2枚のウェーハの断面の周端領域にスリップと呼ばれる結晶欠陥が生じていた。このため、BOX厚さが2μm以上の厚BOX−SOIウェーハの製造では、活性層用ウェーハに形成する酸化膜の厚さと支持用ウェーハに形成する酸化膜の厚さの厚み差を小さくする、具体的には2μm以下にすることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
また、この貼合せ熱処理時に生じるスリップの発生を大幅に抑えるために、2枚のウェーハを重ね合せ、活性層用ウェーハを所望のSOI層厚さにまで薄膜化した後、貼合せ熱処理することが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0008】
更に、貼り合わせウェーハの貼合せ強度を増強させるために、貼り合わせ前にシリコンウェーハ表面をプラズマ処理し、その後貼り合わせを行うことが提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−93788号公報(請求項1,2、段落[0006]〜段落[0008]、図1)
【特許文献2】特開平5−109678号公報(請求項1、段落[0007],段落[0012]〜段落[0020]、図1〜図6)
【特許文献3】特開2008−227207号公報(請求項5,6、段落[0021],[0028])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法で厚BOX−SOIウェーハを作製した場合、必然的にBOX層厚さと支持用ウェーハ裏面の酸化膜厚さに厚み差が生じるため、結果として、得られるSOIウェーハには、この厚み差に起因して反りが増大していた。この反りが100μm以上になると、半導体製造工程における露光不良や吸着不良の原因となる。
【0011】
また、上記特許文献2に記載の方法では、2枚のウェーハを単に重ね合せただけの接着強度が弱い状態で面取り加工や、研削加工及び研磨加工によって所望のSOI層厚さになるまで薄膜化が行われるため、加工処理中に、重ね合せた2枚のウェーハが接着面で剥がれてしまい、加工そのものができないおそれがある。
【0012】
本発明の目的は、厚BOX−SOIウェーハの製造において、貼合せ熱処理の際に生じていた貼合せ界面の結晶欠陥(スリップ)を低減するとともに、得られるSOIウェーハに生じる反りを低減し得る、貼合せSOIウェーハの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の観点は、図1に示すように、SOI層となる活性層用ウェーハ11とこれを支持する支持用ウェーハ12とを酸化膜11a,12aを介して貼合せた後、活性層用ウェーハ11を薄膜化することにより、支持用ウェーハ12の上にBOX層14を介してSOI層16を形成した貼合せSOIウェーハ18を製造する方法において、支持用ウェーハ12表面に形成する酸化膜12aの厚さが、活性層用ウェーハ11表面に形成する酸化膜11aの厚さより大きくなるように、活性層用ウェーハ11及び支持用ウェーハ12のそれぞれに酸化膜11a,12aを形成する酸化膜形成工程と、活性層用ウェーハ11と支持用ウェーハ12とを貼合せる前に、活性層用ウェーハ11或いは支持用ウェーハ12のうち少なくともいずれか一方の貼合せ面にプラズマ処理を施すプラズマ処理工程と、活性層用ウェーハ11と支持用ウェーハ12とを酸化膜11a,12aを介して重ね合せて密着させる貼合せ工程と、貼合せたウェーハの活性層用ウェーハ11に減肉化処理を施して薄膜化することによりSOI層16を形成するSOI層形成工程と、SOI層形成工程後の貼合せウェーハを熱処理して貼合せ強度を増強させる接合強化熱処理工程とをこの順に含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に酸化膜形成工程において、BOX層14の厚さと支持用ウェーハ裏面側に形成した酸化膜11aの厚さとの厚み差が1μm以内となるように、活性層用ウェーハ11及び支持用ウェーハ12のそれぞれに酸化膜11a,12aを形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の貼合せSOIウェーハの製造方法では、酸化膜形成工程で支持用ウェーハ表面に形成する酸化膜の厚さが、活性層用ウェーハ表面に形成する酸化膜の厚さより大きくなるように各酸化膜を形成することで、BOX層と支持用ウェーハの裏面酸化膜との体積膨張差が小さくなるため、得られるSOIウェーハに生じる反りを100μm以下にまで低減することができる。また、従来貼合せ直後に行っていた接合強化熱処理工程をSOI層形成加工後に行うことで、貼合せ直後に行っていた接合強化熱処理に比べて、ウェーハの厚み方向の温度差が少なくなり、熱応力が低下するため、貼合せ直後の接合強化熱処理の際に生じていた貼合せ界面の結晶欠陥(スリップ)を低減することができる。更に、貼合せ直後であってSOI形成加工前に接合強化熱処理を施さないことによる貼合せウェーハの接合強度不足に対しては、貼合せ前に貼合せ面に対してプラズマ処理を行うことで接合強度を向上させるため、SOI形成加工を施しても、剥離等を生じることはない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る貼合せSOIウェーハの製造方法における製造工程図である。
【図2】実施例1及び比較例2,6で得られた貼合せSOIウェーハのスリップ発生状況を示すSP1画像及びXRT画像である。
【図3】実施例1及び比較例2,6で得られた貼合せSOIウェーハの酸化膜剥離発生状況を示す光学顕微鏡画像である。
【図4】従来の貼合せSOIウェーハの製造工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
本発明の貼合せSOIウェーハの製造方法では、先ず、図1に示すように、SOI層となる活性層用ウェーハ11とこのウェーハを支持するための支持用ウェーハ12を用意する。活性層用ウェーハ11及び支持用ウェーハ12は、研磨処理などによりその表面が鏡面加工されたシリコンウェーハが好ましく、直径150mm、200mm、300mmなど、何れのサイズであっても構わない。
【0019】
続いて、活性層用ウェーハ11と支持用ウェーハ12をSC−1洗浄、純水リンス及びフッ酸有機酸洗浄をこの順に行い、各ウェーハ表面を清浄化させる。
<酸化膜形成工程>
次に、活性層用ウェーハ11の全面に酸化膜11aを形成し、支持用ウェーハ12の全面に酸化膜12aを形成する。また、この酸化膜形成は、支持用ウェーハ12表面に形成する酸化膜12aの厚さが、活性層用ウェーハ11表面に形成する酸化膜11aの厚さより大きくなるように行われる。支持用ウェーハ12の全面に形成された酸化膜12aの厚さを、活性層用ウェーハ11の全面に形成された酸化膜11aの厚さより大きくすることで、製造するSOIウェーハのBOX層14と支持用ウェーハの裏面酸化膜12aとの体積膨張差が小さくなるため、得られるSOIウェーハ18に生じる反りを低減することができる。特に、BOX層14の厚さと支持用ウェーハ裏面酸化膜12aの厚さとの厚み差が1μm以内となるように、2枚のウェーハ11,12に形成する酸化膜11a,12aの厚さを調整することによりSOIウェーハ18に生じる反り量を100μm以下にまで低減することができる。
【0020】
各ウェーハへの酸化膜形成は、水素及び酸素混合ガス雰囲気下、1050〜1200℃の温度での熱処理により行うことが好適である。
【0021】
なお、いずれか一方のウェーハのみに酸化膜を形成し、他方のウェーハには酸化膜を形成しない場合、スリップの発生を低減することができず、また、貼合せ界面にある汚染が活性層に拡散していく不具合を生じる。また、厚BOX−SOIウェーハを製造する場合には、いずれか一方のウェーハのみへの酸化膜形成では、酸化膜形成に長時間を要することになり、製造コストが高くなる不具合を生じる。
【0022】
続いて、全面に酸化膜を形成した2枚のウェーハ11,12をSC−1洗浄、純水リンス及びフッ酸有機酸洗浄をこの順に行い、各ウェーハ表面を水素終端させる。
<プラズマ処理工程>
次に、活性層用ウェーハ11と支持用ウェーハ12とを貼合せる前に、活性層用ウェーハ11或いは支持用ウェーハ12のうち少なくともいずれか一方の貼合せ面にプラズマ処理を施す。
【0023】
従来の貼合せSOIウェーハの製造方法では、貼合せたウェーハを接合強化熱処理を施さずにSOI層形成加工(薄膜化)すると、貼合せウェーハ界面の貼合せ強度が弱いため、ウェーハの剥れが生じていたが、本発明の製造方法のように、貼合せ前に、貼合せ面に対してプラズマ処理を施すことによって後述するSOI層形成加工(薄膜化)によっても接合面から剥離することがない程度の貼合せ強度を得ることができる。具体的には、貼合せ面にプラズマ処理を施すことで、貼合せ前洗浄で除去しきれなかったウェーハ表面に付着している有機物等の汚染が除去され、未結合手が増加する。更に、増加した未結合手に大気中のOH基が結合し、このOH基を介して活性層用ウェーハと支持用ウェーハが貼合される。このとき、プラズマ処理によって結合に寄与するOH基が増加しているため、結果として、貼合せ直後の接合強化熱処理を施さなくとも、酸化膜剥がれ等の加工不良を生じることなく、SOI層形成加工ができるようになる。
【0024】
プラズマ処理方法は、例えば、プラズマチャンバー内に処理対象ウェーハを設置し、チャンバー内部を所定のガスで完全に置換した後、例えば0.1kPa以下にまで減圧し、この減圧状態で、数十秒間から数分間、プラズマを発生させることで、チャンバー内に設置した処理対象ウェーハ表面を活性化させることにより行われる。上記プラズマ処理で使用されるガスとしては、窒素、酸素、アルゴン、希釈水素や、上記ガスの混合ガス等が挙げられる。ここでプラズマ処理方法の一例を示したが、この方法に限定されるものではない。
<貼合せ工程>
続いてプラズマ処理後に、2枚のウェーハ11,12を重ねて重石を乗せて加圧することによって2枚のウェーハ11,12を酸化膜11a,12aを介して接着する。重ね合せた2枚のウェーハ11,12の間に介在する酸化膜11a,12aはBOX層14になる。
【0025】
なお、貼合せた後に、貼合せたウェーハ13に対してプレベーク処理を実施しても良い。プレベーク処理はクリーンオーブンによって数100℃熱処理することにより行われ、貼合せ強度を更に向上させることができる。
<SOI層形成工程>
次に、貼合せ工程後の貼合せたウェーハ13の活性層用ウェーハ11に減肉化処理を施して薄膜化することによりSOI層16を形成する。
【0026】
具体的には、貼合せたウェーハ13の活性層用ウェーハ11側をその厚さが0.3〜250μmのSOI層16となるように減肉化処理を施して薄膜化する。減肉化処理は平面研削により行われる。これにより、支持用ウェーハ12の上にBOX層14を介してSOI層16が形成される。そして、BOX層14及びSOI層16の周端にテラス部形成加工を施す。テラス部形成加工は外周研削、エッチング処理により行われる。更に、表面研磨処理を施すことにより、裏面に酸化膜12aが形成された支持用ウェーハ12の上にBOX層14を介してSOI層16が形成された貼合せSOIウェーハ17が得られる。
【0027】
なお、テラス部を形成した後に、減肉化処理による薄膜化を行っても良い。
<接合強化熱処理工程>
次に、SOI層形成工程後の貼合せウェーハを熱処理して水素結合によって接着されていた貼合せ界面の貼合せ強度を増強させることで接合強化熱処理後のSOIウェーハ18が得られる。
【0028】
従来、活性層用ウェーハと支持用ウェーハとで形成した、酸化膜の膜厚差が2μmを越えるような厚BOX−SOIウェーハの製造では、貼合せ直後に接合強化熱処理を施すと、熱応力に起因するスリップを生じていたが、本発明の製造方法では、SOI層形成加工(薄膜化加工)後に接合強化熱処理を施すことで、従来厚BOX−SOIウェーハの製造で生じていたスリップの発生を抑制することができる。その理由は、SOI層形成工程後に接合強化熱処理を施すことで、ウェーハの厚み方向に対する熱分布が均一になり、熱応力が低下するためである。結果として、この熱応力に起因したスリップが抑制される。
【0029】
接合強化熱処理は、水素及び酸素混合ガス雰囲気中、1200℃の温度で60〜180分間保持することにより行われる。
【0030】
このように上記工程を経ることにより、貼合せ熱処理の際に生じていた貼合せ界面の結晶欠陥(スリップ)を低減するとともに、得られるSOIウェーハに生じる反りを低減した厚BOX−SOIウェーハを製造することができる。
【実施例】
【0031】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
【0032】
<実施例1>
先ず、活性層用ウェーハ及び支持用ウェーハとして、ともに厚さが725μm、直径が200mmの鏡面加工されたウェーハを用意した。そして、活性層用ウェーハと支持用ウェーハをSC−1洗浄、純水リンス及びフッ酸有機酸洗浄をこの順に行い、ウェーハ表面を清浄化させた。次に、2枚のウェーハを水素及び酸素混合ガス雰囲気下、1150℃の温度で熱処理を行い、活性層用ウェーハには厚さ0.1μmの酸化膜を、支持用ウェーハには厚さ4.6μmの酸化膜をそれぞれ形成した。そして、2枚のウェーハをSC−1洗浄、純水リンス及びフッ酸有機酸洗浄をこの順に行い、表面を水素終端させた。その後、活性層用ウェーハと支持用ウェーハのそれぞれの貼合せ面にプラズマ処理を施した。プラズマ処理条件は、酸素100%雰囲気、真空度40Pa、プラズマ照射時間30秒である。プラズマ処理後、2枚のウェーハを重ね合せて貼合せた。続いて、活性層用ウェーハの外周部に砥石を用いた研削処理及びエッチング処理を施して、テラス部を形成した。その後、貼合せウェーハの活性層用ウェーハ側を砥石を用いた平面研削、研磨布を用いた研磨によって活性層用ウェーハの厚さが1.8μmのSOI層となるように減肉化処理を施してSOI層を形成した。その後、SOI層を形成したウェーハを洗浄によって清浄化し、最後に、SOI層を形成したウェーハを水素及び酸素混合ガス雰囲気中、1200℃の温度で1時間接合強化熱処理を施すことで貼合せSOIウェーハを得た。
【0033】
<実施例2>
活性層用ウェーハ表面に厚さ1.0μmの酸化膜を、支持用ウェーハ表面に厚さ2.0μmの酸化膜を形成した以外は実施例1と同様にして貼合せSOIウェーハを得た。
【0034】
<実施例3>
活性層用ウェーハ表面に厚さ1.0μmの酸化膜を、支持用ウェーハ表面に厚さ3.0μmの酸化膜を形成した以外は実施例1と同様にして貼合せSOIウェーハを得た。
【0035】
<実施例4>
活性層用ウェーハ表面に厚さ1.5μmの酸化膜を、支持用ウェーハ表面に厚さ4.6μmの酸化膜を形成した以外は実施例1と同様にして貼合せSOIウェーハを得た。
【0036】
<比較例1>
活性層用ウェーハ表面に厚さ4.6μmの酸化膜を、支持用ウェーハ表面に厚さ0.1μmの酸化膜を形成した以外は実施例1と同様にして貼合せSOIウェーハを得た。
【0037】
<比較例2>
活性層用ウェーハ表面に厚さ1.0μmの酸化膜を、支持用ウェーハ表面に厚さ5.0μmの酸化膜を形成し、プラズマ処理を施さず、SOI層形成加工後の接合強化熱処理を、貼合せ直後であってSOI層形成前に行った以外は実施例1と同様にして貼合せSOIウェーハを得た。
【0038】
<比較例3>
活性層用ウェーハ表面に厚さ2.0μmの酸化膜を、支持用ウェーハ表面に厚さ2.0μmの酸化膜を形成した以外は比較例2と同様にして貼合せSOIウェーハを得た。
【0039】
<比較例4>
活性層用ウェーハ表面に厚さ4.6μmの酸化膜を、支持用ウェーハ表面に厚さ0.1μmの酸化膜を形成した以外は比較例2と同様にして貼合せSOIウェーハを得た。
【0040】
<比較例5>
SOI層形成加工後の接合強化熱処理を、貼合せ直後であってSOI層形成前に行った以外は実施例1と同様にして貼合せSOIウェーハを得た。
【0041】
<比較例6>
プラズマ処理を施さない以外は実施例1と同様にして貼合せSOIウェーハを得た。
【0042】
<比較例7>
活性層用ウェーハ表面に厚さ2.0μmの酸化膜を、支持用ウェーハ表面に厚さ2.0μmの酸化膜を形成し、プラズマ処理を施さない以外は実施例1と同様にして貼合せSOIウェーハを得た。
【0043】
<比較例8>
活性層用ウェーハ表面に厚さ4.6μmの酸化膜を、支持用ウェーハ表面に厚さ0.1μmの酸化膜を形成し、プラズマ処理を施さない以外は実施例1と同様にして貼合せSOIウェーハを得た。
【0044】
<比較試験1>
実施例1〜4及び比較例1〜8で貼合せ熱処理を終えた後の重ね合せウェーハを用意し、表面検査装置(SP1)或いはX線トポグラフ(XRT)を用いて活性層用ウェーハの貼合せ界面へのスリップ発生状況を観察した。スリップ発生の有無を次の表1に示した。また、図2(a)に実施例1の活性層用ウェーハの貼合せ界面におけるSP1画像を、図2(b)に比較例6の活性層用ウェーハの貼合せ界面におけるSP1画像を、図2(c)に比較例2の活性層用ウェーハの貼合せ界面におけるXRT画像をそれぞれ示す。
【0045】
<比較試験2>
実施例1〜4及び比較例1〜8でそれぞれ得られた貼合せSOIウェーハについて、平坦度測定装置(ADE9500)にて反りを示すwarpを測定した。その結果を次の表1にそれぞれ示す。
【0046】
<比較試験3>
実施例1〜4及び比較例1〜8でそれぞれ得られた貼合せSOIウェーハについて、砥石を用いて研削加工を施した後のウェーハのテラス部を光学顕微鏡によって観察し、酸化膜剥離の有無を確認した。その結果を次の表1にそれぞれ示す。また、図3(a)に実施例1のSOIウェーハ断面の貼合せ界面における光学顕微鏡画像を、図3(b)に比較例6の活性層用ウェーハの貼合せ界面における光学顕微鏡画像を、図3(c)に比較例2の活性層用ウェーハの貼合せ界面における光学顕微鏡画像をそれぞれ示す。
【0047】
【表1】

スリップの発生については、表1から明らかなように、SOI層形成加工(薄膜化)後に接合強化熱処理を施した実施例1〜4、比較例1,比較例6〜8ではスリップが抑制されているのに対し、貼合せ直後に接合強化熱処理を施した例の殆どにスリップが発生していた。また、図2(a)〜図2(c)から明らかなように、SOI層形成加工(薄膜化)後に接合強化熱処理を施している実施例1と比較例6の貼合せSOIウェーハでは、スリップが抑制されているのに対し、貼合せ直後に接合強化熱処理を施している比較例2の貼合せSOIウェーハではウェーハ全面にスリップが発生しているのが判る。
【0048】
次に、ウェーハの反りについては、表1から明らかなように、活性層側酸化膜の厚さが支持側酸化膜の厚さよりも大きい比較例1,4,8や活性層側酸化膜の厚さと支持側酸化膜の厚さが同じ比較例3,7では、得られるSOIウェーハに生じる反りが増大していた。一方、実施例1〜4では、得られるSOIウェーハに生じる反りは100μm以下と低減されていた。
【0049】
更に、酸化膜の剥離については、表1から明らかなように、プラズマ処理を施すか、或いは貼合せ直後の接合強化熱処理を施した実施例1〜4,比較例1〜5では、テラス部において、活性層用ウェーハ側に形成した酸化膜が残っており、酸化膜の剥離は生じていないのに対し、プラズマ処理及び貼合せ直後の接合強化熱処理を施していない比較例6〜8では、テラス部において、活性層用ウェーハ側に形成した酸化膜が剥離されていた。また、図3(a)〜図3(c)から明らかなように、プラズマ処理や貼合せ直後の接合強化熱処理を施さずSOI層形成加工(薄膜化)した比較例6の貼合せSOIウェーハでは、テラス部において、活性層用ウェーハ側に形成した酸化膜が全て剥離されているのが判る。このテラス部での酸化膜の剥離は研磨時のSOI層の剥れにつながる事を示唆しており、安定したSOIウェーハの製造方法としては不適切である。
【0050】
このように、実施例1〜4で得られる貼合せSOIウェーハは、BOX層厚さが2μm以上の厚BOX−SOIウェーハであるにも関わらず、接合強化熱処理後においてもスリップが生じておらず、かつ研削加工後においてもテラス部での酸化膜の剥離が生じていないことから、本発明の製造方法はSOI層形成加工に十分に耐えられる加工フローであることが裏付けられた。
【0051】
なお、各実施例及び各比較例とも、貼合せ熱処理後の活性層用ウェーハ側を減肉化処理(平面研削)して所定厚みのSOI層を形成した後に、テラス研磨を施した例を例示したが、貼合せ熱処理後の活性層用ウェーハにテラス研磨を施した後に、活性層用ウェーハ側を減肉化処理(平面研削)して所定厚みのSOI層を形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
11 活性層用ウェーハ
11a 酸化膜
12 支持用ウェーハ
12a 酸化膜
13 貼合せウェーハ
14 BOX層
16 SOI層
17 SOI層形成後のSOIウェーハ
18 接合強化熱処理後のSOIウェーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SOI層となる活性層用ウェーハとこれを支持する支持用ウェーハとを酸化膜を介して貼合せた後、前記活性層用ウェーハを薄膜化することにより、前記支持用ウェーハの上に前記埋込み酸化膜層を介してSOI層を形成した貼合せSOIウェーハを製造する方法において、
前記支持用ウェーハ表面に形成する酸化膜の厚さが、前記活性層用ウェーハ表面に形成する酸化膜の厚さより大きくなるように、前記活性層用ウェーハ及び前記支持用ウェーハのそれぞれに酸化膜を形成する酸化膜形成工程と、
前記活性層用ウェーハと前記支持用ウェーハとを貼合せる前に、前記活性層用ウェーハ或いは前記支持用ウェーハのうち少なくともいずれか一方の貼合せ面にプラズマ処理を施すプラズマ処理工程と、
前記活性層用ウェーハと前記支持用ウェーハとを酸化膜を介して重ね合せて密着させる貼合せ工程と、
前記貼合せたウェーハの活性層用ウェーハに減肉化処理を施して薄膜化することによりSOI層を形成するSOI層形成工程と、
前記SOI層形成工程後の貼合せウェーハを熱処理して貼合せ強度を増強させる接合強化熱処理工程と
をこの順に含むことを特徴とする貼合せSOIウェーハの製造方法。
【請求項2】
前記酸化膜形成工程において、前記埋込み酸化膜層の厚さと前記支持用ウェーハ裏面側に形成した酸化膜の厚さとの厚み差が1μm以内となるように、前記活性層用ウェーハ及び前記支持用ウェーハのそれぞれに酸化膜を形成する請求項1記載の貼合せSOIウェーハの製造方法。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−204439(P2012−204439A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65382(P2011−65382)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)