説明

赤外光吸収剤及び画像形成材料

【課題】赤外領域における吸光度が十分に高く、可視光領域における吸光度が十分に低く、画像形成材料の構成成分とした場合に定着後の画像の色調への影響が十分小さい赤外光吸収剤、及び、該赤外光吸収剤を含有する画像形成材料を提供すること
【解決手段】下記式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を含有することを特徴とする、赤外光吸収剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外光吸収剤及び画像形成材料に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真用トナー、インクジェットプリンター用インクなどの画像形成材料を記録媒体
上に定着させる方法として、光照射等により、記録媒体上の画像形成材料を選択的に加熱
することが可能な非接触定着法がある。
【0003】
このような非接触定着法として、特許文献1及び2には、赤外領域に光吸収能を持つ物
質を含有するトナーを用いて、フラッシュ定着を行う方法が開示されている。
【0004】
赤外領域に光吸収能を持つ物質としては、例えば、アミニウム塩類、チオールニッケル
系錯体、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物等の赤外光吸収剤が知られ
ている。
【0005】
【特許文献1】特開昭61−132959号公報
【特許文献2】特許第3022110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
トナー等の画像形成材料に用いられる赤外光吸収剤には、少量の配合で十分な定着効果
を得る観点から、照射される赤外光の波長領域における吸光度が十分に高いことが要求さ
れる。その一方で、鮮明で色調のずれの少ない画像を得る観点からは、可視光領域におけ
る吸光度が十分に低く、定着後の画像において赤外光吸収剤に由来する着色がより少ない
ことが要求される。
【0007】
そこで本発明は、赤外領域における吸光度が十分に高く、可視光領域における吸光度が
十分に低く、画像形成材料の構成成分とした場合に定着後の画像の色調への影響が十分小
さい赤外光吸収剤、及び、該赤外光吸収剤を含有する画像形成材料を提供することを目的
とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、下記式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を
含有することを特徴とする赤外光吸収剤にある。
【化1】

【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の赤外光吸収剤を含有することを特徴
とする画像形成材料にある。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、フラッシュ定着用のトナーであることを特徴とする、
請求項2に記載の画像形成材料にある。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、下記式(a)で表される化合物とスクアリン酸との反
応により得られるペリミジン系スクアリリウム色素オリゴマーを更に含有することを特徴
とする、請求項1に記載の赤外光吸収剤にある。
【化2】

【0012】
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の赤外光吸収剤を含有することを特徴
とする画像形成材料にある。
【0013】
また、請求項6に記載の発明は、フラッシュ定着用のトナーであることを特徴とする、
請求項5に記載の画像形成材料にある。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、上記式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム
色素以外のスクアリリウム色素や、従来の赤外光吸収剤と比較して、赤外領域(特には近
赤外領域)における吸光度が十分に高く、可視光領域における吸光度が十分に低く、かつ
、光照射時に光分解して消色性を示す赤外光吸収剤が実現可能となり、これを画像形成材
料の構成成分として用いた場合に、十分な定着効果を得ることと、定着画像における色調
ずれを小さくすることとを両立することができる。
【0015】
また、請求項2に記載の発明によれば、上記式(I)で表されるペリミジン系スクアリ
リウム色素以外のスクアリリウム色素や、従来の赤外光吸収剤を含む画像形成材料と比較
して、十分な定着性を有しながらも、定着後の画像の色調ずれが小さい画像形成材料が実
現可能となる。
【0016】
また、請求項3に記載の発明によれば、フラッシュ定着用トナーにおける定着性と、定
着画像の色調安定性とを、両立することができる。
【0017】
また、請求項4に記載の発明によれば、900nm以上1200nm以下付近での吸光
度に一層優れる赤外光吸収剤が実現可能となり、請求項1に記載の発明の効果をより有効
に得ることができる。
【0018】
また、請求項5に記載の発明によれば、本構成を有していないスクアリリウム色素を含
む画像形成材料や、従来の赤外光吸収剤を含む画像形成材料と比較して、十分な定着性を
有しながらも、定着後の画像の色調ずれが小さい画像形成材料が実現可能となる。
【0019】
また、請求項6に記載の発明によれば、フラッシュ定着用トナーにおける定着性と、定
着画像の色調安定性とを、両立することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0021】
本実施形態に係る赤外光吸収剤は、下記式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウ
ム色素を含有する。
【0022】
【化3】

【0023】
上記式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素は、例えば以下の反応スキー
ムに従って得ることができる。
【0024】
【化4】

【0025】
より具体的には、触媒の存在下で、1,8−ジアミノナフタレンと、2,6−ジメチル
シクロヘキサノンとを、溶媒中で共沸還流の条件で反応させることにより、ペリミジン中
間体(a)を得ることができる((A−1)工程)。(A−1)工程に使用する触媒とし
ては、p−トルエンスルホン酸一水和物、ベンゼンスルホン酸一水和物、4−クロロベン
ゼンスルホン酸水和物、ピリジン−3−スルホン酸、エタンスルホン酸、硫酸、硝酸、酢
酸などが挙げられる。また、(A−1)工程に使用する溶媒としては、アルコール、芳香
族炭化水素などが挙げられる。ペリミジン中間体(a)は高速カラムクロマトグラフィー
または再結晶により精製することができる。
【0026】
次に、ペリミジン中間体(a)と、3,4−ジヒドロキシシクロブタ−3−エン−1,
2−ジオン(「スクアリン酸」又は「四角酸」とも呼ばれる。)とを、溶媒中で共沸還流
の条件で反応させることにより、式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を
得ることができる((A−2)工程)。(A−2)工程は、窒素ガス雰囲気で行うことが
好ましい。
【0027】
(A−2)工程に使用する溶媒としては、1−プロパノ−ル、1−ブタノール、1−ペ
ンタノール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン、モノクロロベンゼン等の
芳香族炭化水素、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、クロロホルム、ジク
ロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン等のハロゲン化炭化水素、N,N−ジ
メチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類を用いることができる
。アルコール類は単独で使用してもよいが、芳香族炭化水素、エーテル類、ハロゲン化炭
化水素またはアミド類などの溶媒はアルコール類溶媒と混合して使用することが好ましい
。好ましい溶媒としては、具体的には、1−プロパノ−ル、2−プロパノ−ル、1−ブタ
ノール、2−ブタノール、1−プロパノ−ルとベンゼンの混合溶媒、1−プロパノ−ルと
トルエンの混合溶媒、1−プロパノ−ルとN,N−ジメチルホルムアミドの混合溶媒、2
−プロパノ−ルとベンゼンの混合溶媒、2−プロパノ−ルとトルエンの混合溶媒、2−プ
ロパノ−ルとN,N−ジメチルホルムアミドの混合溶媒、1−ブタノールとベンゼンの混
合溶媒、1−ブタノールとトルエンの混合溶媒、1−ブタノ−ルとN,N−ジメチルホル
ムアミドの混合溶媒、2−ブタノールとベンゼンの混合溶媒、2−ブタノールとトルエン
の混合溶媒、2−ブタノ−ルとN,N−ジメチルホルムアミドの混合溶媒が挙げられる。
混合溶媒を使う場合、アルコール類溶媒の濃度は、1容量%以上とすることが好ましく、
5容量%以上75容量%以下とすることが特に好ましい。
【0028】
また、(A−2)工程において、3,4−ジヒドロキシシクロブタ−3−エン−1,2
−ジオンに対するペリミジン中間体(a)のモル比(ペリミジン中間体(a)のモル数/
3,4−ジヒドロキシシクロブタ−3−エン−1,2−ジオンのモル数)は、1以上4以
下であることが好ましく、1.5以上3以下であることがより好ましい。当該モル比が1
未満の場合には式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素の収率が低下する傾
向にあり、また、4を超えるとペリミジン中間体(a)の利用効率が悪くなって式(I)
で表される化合物の分離・精製が困難となる傾向にある。
【0029】
また、(A−2)工程においては、脱水剤を用いると反応時間が短縮し、また、式(I
)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素の収率が向上する傾向にある。脱水剤とし
ては、ペリミジン中間体(a)及び3,4−ジヒドロキシシクロブタ−3−エン−1,2
−ジオンと反応しないものであれば特に制限されないが、オルト蟻酸トリメチル、オルト
蟻酸トリエチル、オルト蟻酸トリプロピル、オルト蟻酸トリブチルなどのオルト蟻酸エス
テル、モレキュラーシーブ等が好適である。
【0030】
(A−2)工程における反応温度は使用する溶媒の種類によって異なるが、反応液の温
度は、60℃以上であることが好ましく、75℃以上であることが特に好ましい。例えば
、1−ブタノールとトルエンの混合溶媒を用いる場合は、反応液の温度が75℃以上10
5℃であることが好ましい。
【0031】
また、(A−2)工程における反応時間は、溶媒の種類又は反応液の温度によって異な
るが、例えば1−ブタノールとトルエンの混合溶媒を用いて反応液の温度を90℃以上1
05℃以下として反応させる場合、反応時間は2時間以上4時間以下であることが好まし
い。
【0032】
(A−2)工程で生成した式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素は、溶
媒洗浄、高速カラムクロマトグラフィーまたは再結晶により精製することができる。
【0033】
本実施形態に係る赤外光吸収剤において、式(I)で表されるペリミジン系スクアリリ
ウム色素は粒子として含有されることが好ましい。式(I)で表される化合物の粒子は、
分子が分散した状態の当該化合物と比較して、赤外領域における吸収ピークが長波長側に
シフトするとともに、幅広い極大吸収を持つようになり、当該粒子を赤外光吸収剤に含有
させることにより、赤外光の吸収効率をより高めることができる。具体的には、式(I)
で表されるペリミジン系スクアリリウム色素は、溶液状態(分子分散状態)では817n
mに吸収ピークを有し、粒子状態では850nm付近に幅広い吸収ピークを有する。
【0034】
式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素の粒子は、例えば(A−2)工程
後の精製物をテトラヒドロフランに溶かして、その溶液を、注射器等を用いて、氷冷した
蒸留水に撹拌しながら注入して沈殿物を生成させ、その沈殿物を吸引濾過により濾取し、
蒸留水で洗浄した後、真空乾燥することによって得ることができる。このとき、溶液中に
おける式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素の濃度、溶液の注入速度、蒸
留水の量又は温度、撹拌速度等を調整することにより、得られる沈殿物の粒子径を所望の
範囲内とすることができる。式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素の粒子
のメジアン径d50は、10nm以上300nm以下であることが好ましく、20nm以
上200nm以下であることがより好ましい。メジアン径d50が上記範囲であると、赤
外光吸収ピークが、キセノンフラッシュランプ等のフラッシュランプの発光スペクトルと
良い一致を示し、フラッシュ定着用トナーに用いるのに好適な赤外光吸収剤が得られる傾
向がある。
【0035】
本実施形態に係る赤外光吸収剤は、下記式(a)で表される化合物とスクアリン酸との
反応により得られるペリミジン系スクアリリウム色素オリゴマーを更に含有することが好
ましい。このような赤外光吸収剤は、式(a)で表される化合物とスクアリン酸とを反応
させて得られる、上記式(I)で表される化合物と上記オリゴマーとの混合物(以下、オ
リゴマー混合物という。)を、配合することにより得ることができる。
【0036】
【化5】

【0037】
なお、本明細書において、上記オリゴマーとは、式(I)で表される化合物よりも分子
量が大きいものを意味し、式(I)で表される化合物とは区別される。上記オリゴマーと
しては、下記式(II)で表される、式(a)で表される化合物とスクアリン酸との縮合
物が挙げられる。なお、式中、nは1以上の整数を示す。以下、nが1であるオリゴマー
をダイマー、nが2であるオリゴマーをトライマーと称する。
【0038】
【化6】

【0039】
本実施形態に係る赤外光吸収剤は、上記ダイマー及びトライマーを含むオリゴマー混合
物を含有することが好ましい。当該オリゴマー混合物中の、ダイマーとトライマーの総含
有量は、オリゴマー混合物の総量基準で、20モル%以上70モル%以下であることが好
ましく、30モル%以上60モル%以下であることがより好ましく、40モル%以上50
モル%以下であることがさらに好ましい
【0040】
上記式(II)で表されるオリゴマーを含むオリゴマー混合物は、例えば、上記(A−
2)工程において、スクアリン酸に対するペリミジン中間体(a)のモル比(ペリミジン
中間体(a)のモル数/スクアリン酸のモル数)を2以下とすることにより得ることがで
きる。
【0041】
上記オリゴマー混合物を合成する場合、(A−2)工程におけるスクアリン酸に対する
ペリミジン中間体(a)のモル比は、0.5以上2以下であることが好ましく、0.8以
上1.2以下であることがより好ましい。当該モル比が0.5未満の場合には、式(I)
で表される化合物と式(II)で表されるオリゴマーとの総収率が低下する傾向にあり、
また、2を超えると、総収率における式(II)で表されるオリゴマーの割合が低下する
傾向にある。
【0042】
本実施形態に係る赤外光吸収剤において、式(II)で表されるオリゴマーを含むオリ
ゴマー混合物は、粒子として含有されることが好ましい。式(II)で表されるオリゴマ
ーの粒子は、分子が分散した状態の当該化合物と比較して、赤外領域における吸収ピーク
が長波長側にシフトするとともに、幅広い極大吸収を持つようになり、当該粒子を赤外光
吸収剤に含有させることにより、赤外光の吸収効率をより高めることができる。具体的に
は、オリゴマー混合物の溶液状態では、上記式(II)で表されるダイマーに由来する吸
収ピークが950nm付近に現れ、トライマーに由来する吸収ピークが1100nm付近
に現れる。粒子状態では、上記ダイマーは1020nm付近に幅広い吸収ピークを有する
。トライマーは、明確なピークとしては観察されないが、1190nm付近にわずかにシ
ョルダーピークが観察され、これがトライマーによるものであると本発明者らは推察する

【0043】
式(II)で表されるオリゴマーを含む粒子は、例えば(A−2)工程後の精製物をテ
トラヒドロフランに溶かして、その溶液を、注射器等を用いて、氷冷した蒸留水に撹拌し
ながら注入して沈殿物を生成させ、その沈殿物を吸引濾過により濾取し、蒸留水で洗浄し
た後、真空乾燥することによって得ることができる。このとき、溶液中における式(II
)で表されるオリゴマーの濃度、溶液の注入速度、蒸留水の量又は温度、撹拌速度等を調
整することにより、得られる沈殿物の粒子径を所望の範囲内とすることができる。式(I
I)で表されるオリゴマーの粒子のメジアン径d50は、10nm以上300nm以下で
あることが好ましく、20nm以上200nm以下であることがより好ましい。メジアン
径d50が上記範囲であると、赤外光吸収ピークが、キセノンフラッシュランプ等のフラ
ッシュランプの発光スペクトルと良い一致を示し、フラッシュ定着用トナーに用いるのに
好適な赤外光吸収剤が得られる。(粒子のメジアン径により奏される効果についてご確認
下さい。)
【0044】
本実施形態に係る画像形成材料は、上記赤外光吸収剤を含有する。本実施形態に係る画
像形成材料の用途は特に制限されないが、電子写真用トナー、インクジェットプリンター
用インク、あるいは、活版印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷又はシル
ク印刷用のインクなどの用途に好適であり、特に電子写真用トナーとして好適に使用でき
る。これらの用途で用いられる場合、赤外光吸収剤の含有量は、画像形成材料の全重量を
基準として、0.05重量%以上3重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以上
2重量%以下がより好ましい。
【0045】
ここで本実施形態に係る画像形成材料が電子写真用トナーである場合を具体的に説明す
る。本実施形態の電子写真用トナーは、上記赤外光吸収剤、結着樹脂及び着色剤を含有す
ることが好ましい。このとき赤外光吸収剤の含有量は、画像形成材料の全重量を基準とし
て、0.05重量%以上3重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以上2重量%
以下がより好ましい。
【0046】
本実施形態に係る電子写真用トナーは、1成分現像剤として単独で用いても、あるいは
キャリアと組み合わせた2成分現像剤として用いてもよい。キャリアとしては、公知のキ
ャリアを用いることができる。例えば、芯材上に樹脂被覆層を有する樹脂コートキャリア
を挙げることができる。この樹脂被覆層には導電粉等が分散されていてもよい。
【0047】
上記結着樹脂としては、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピ
レン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安
息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、
アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メ
タクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等
のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチル
エーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘ
キシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類の単独重合体あるいは共
重合体を例示することができ、特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン
−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−
アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸
共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン等を挙げることができる。さらに、ポリエステ
ル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィ
ンワックス等も結着樹脂として使用することができる。
【0048】
上記着色剤としては、特に限定されず、染料、顔料等のいずれでもよい。例えば、黒色
トナーの場合、カーボンブラック、CMY混合黒などを併用することができる。着色剤の
含有量は、トナー全質量を基準として1質量%以上15質量%以下であることが好ましく
、3質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
【0049】
また、本実施形態に係る電子写真用トナーは、必要に応じて帯電制御剤、オフセット防
止剤、ワックス等を更に含有することができる。
【0050】
帯電制御剤としては正帯電用のものと負帯電用のものがあり、正帯電用には、第4級ア
ンモニウム系化合物がある。また、負帯電用には、アルキルサリチル酸の金属錯体、極性
基を含有したレジンタイプの帯電制御剤等が挙げられる。帯電制御剤の添加量は、その種
類にもよるが、一般にトナー全質量を基準として1質量%以上10質量%以下程度である
。オフセット防止剤としては、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン等が用い
られる。
【0051】
ワックスとしては、天然ワックス、合成ワックスなどを広く用いることができる。例え
ば、石油系ワックスとしてパラフィンワックス、マイクロクリスタインワックスなど、鉱
物ワックスとしてフィッシャートロプシュワックス、モンタンワックスなど、植物ワック
スとしてカルナバワックスなど、動物ワックスとして蜜ろう、ラノリンなど、合成ワック
スとしてポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類、脂肪酸エステル類、ア
ミド系ワックス、変性ポリオレフィンなど、さらにその他の化合物としてテルペン系化合
物、ポリカプロラクトンなどを単体、又は混合物として広く用いることができる。ワック
スの添加量は、その種類にもよるが、一般にトナー全質量を基準として1質量%以上10
質量%以下程度である。
【0052】
また、本実施形態に係る電子写真用トナーは、流動性、粉体保存性の向上、摩擦帯電制
御、転写性能、クリーニング性能向上等のために、無機粉粒子あるいは有機粒子を外添剤
としてトナー表面に添加してもよい。無機粉粒子としては、公知のもの、例えば、シリカ
、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、酸化セ
リウム等を挙げることができる。また目的に応じて無機粉粒子に公知の表面処理を施して
もよい。また、有機粒子としては、フッ化ビニリデン、メチルメタクリレート、スチレン
−メチルメタクリレート等を構成成分とする乳化重合体、あるいはソープフリー重合体等
を挙げることができる。
【0053】
本実施形態に係る電子写真用トナーは、通常のトナー作製法と同様に作製することがで
きる。以下、その一例を示す。
【0054】
粉砕法で作製する場合、本実施形態に係る赤外光吸収剤、結着樹脂、着色剤、更に必要
に応じて、ワックス、帯電制御剤などのトナー構成物を混合した後、ニーダー、押し出し
機などを用いて上記材料を溶融混練する。この後溶融混錬物を粗粉砕した後、ジェットミ
ル等で微粉砕し、風力分級機により、目的とする粒径のトナー粒子を得る。さらに、外添
剤を添加し、最終的なトナーを完成させる。
【0055】
また、トナーを重合法で作製することも可能である。この場合、主に懸濁重合法と乳化
重合法が適応できる。上記赤外光吸収剤は、乳化重合法のプロセスに適正のある水分散ス
ラリーの状態をとることが可能である。そのため、本実施形態に係るトナーは、乳化重合
法を基にしたケミカルトナーであることが特に好ましい。
【0056】
懸濁重合法で作製する場合、スチレン、ブチルアクリレート、2エチルヘキシルアクリ
レートなどのモノマ、ジビニルベンゼンなどの架橋剤、ドデシルメルカプタンなどの連鎖
移動剤、上記赤外光吸収剤、着色剤、重合開始剤、さらに必要に応じて、帯電制御剤、ワ
ックスを混合してモノマ組成物を作製する。その後、リン酸三カルシウム、ポリビニルア
ルコール等の懸濁安定剤、界面活性剤が入った水相中に、上記モノマ組成物を投入し、ロ
ーターステータ式乳化機、高圧式乳化機、超音波式乳化機などを用いてエマルションを作
製した後、加熱によりモノマの重合を行う。重合終了後、粒子の洗浄、乾燥を行い、外添
剤を添加して最終的なトナー粒子を得る。
【0057】
乳化重合法で作製する場合、過硫酸カリウムなどの水溶性重合開始剤を溶解させた水中
に、スチレン、ブチルアクリレート、2エチルヘキシルアクリレートなどのモノマ、必要
に応じてドデシル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤を添加し、攪拌を行いながら加熱して
重合を行い樹脂粒子を得る。その後、赤外光吸収剤、ワックスなどの粒子を樹脂粒子が分
散したサスペンション中に添加し、サスペンションのpH、攪拌強度、温度などを調整す
ることにより粒子をヘテロ凝集させる。さらに、系を樹脂のガラス転移温度以上に加熱し
てヘテロ凝集体を融着させトナー粒子を得る。その後、粒子の洗浄、乾燥を行い、外添剤
を添加して最終的なトナー粒子を得る。この粒子の着色は、ヘテロ凝集体を融着させた後
、着色剤を水中に分散させてなるスラリーを混合し、多価金属凝集剤を用いて凝集させて
もよいし、ヘテロ凝集体形成時に着色剤を合わせて凝集させてもよい。
【0058】
上記赤外光吸収剤は、赤外領域における吸光度が十分に高く、可視光領域における吸光
度が十分に低く、かつ、光照射時に光分解して消色性を示すものである。したがって、か
かる赤外光吸収剤を含有する本実施形態に係る画像形成材料によれば、十分な定着効果を
得ることと、定着画像における色調のずれを小さくすることとを両立することができる。
【0059】
本実施形態に係る画像形成材料は、下記式(III)及び(IV)で表される条件を満
たすことが好ましい。下記式(III)及び(IV)で表される条件を満たすことで、定
着性及び定着後の画像色調の安定性が一層優れる画像形成材料を実現することが可能とな
る。
0≦ΔE≦16 (III)
Et≧3.6×10 (IV)
[式(III)中、ΔEは下記式(V):
【数1】

(式(V)中、L、a、bはそれぞれ赤外光吸収剤未添加の画像形成材料(例えば
、電子写真用トナー)を用いて付着量4.5g/mの定着画像を記録媒体表面に形成し
た時の画像部におけるL値、a値、およびb値を示し、L、a、bはそれぞれ上記
赤外光吸収剤を添加した画像形成材料(例えば、電子写真用トナー)を用いて付着量4.
5g/mの定着画像を記録媒体表面に形成した時の画像部におけるL値、a値、および
b値を示す。)
で表されるCIE1976L*a*b*表色系における色差を示す。
また、式(IV)中、Etは下記式(VII):
【数2】

(式中、fL(k)はフラッシュランプの発光スペクトル関数を示し、fa(k)はスラ
リー塗布紙のスペクトル関数を示し、kは波数(800nm〜1200nm)を示す。)
で表される光吸収エネルギーの総量を示す。]
【0060】
、a、b、L、a、bは反射分光濃度計を用いて得ることができる。本
発明におけるL、a、b、L、a、bは、反射分光濃度計としてエックスラ
イト株式会社製、x−rite939を用いて測定されたものである。
【0061】
本実施形態に係る画像形成材料は、フラッシュ定着用のトナーとして好適に使用するこ
とができ、特には、フラッシュ定着用の電子写真用トナーとして好適に使用することがで
きる。
【0062】
フラッシュ定着とは、例えば、キセノンフラッシュランプ等の放電管の閃光(800〜
1200nm)によってトナーを定着させる方法であり、トナー中の赤外光吸収剤がフラ
ッシュ光の光エネルギーを吸収し、発熱し、赤外光吸収剤の発熱によりトナー中の結着樹
脂が軟化溶融し、記録媒体に密着浸透する。閃光照射後、トナーが固化し、定着画像とな
って記録媒体上に固定される。
【0063】
上記式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素は、溶液状態(分子分散状態
)は817nmに吸収ピークを有し、粒子状態(顔料化処理後)は850nm付近に幅広
い吸収ピークを有する。この波長領域はフラッシュ定着に用いられるキセノンフラッシュ
ランプの発光強度の特に強い領域であるため、当該ペリミジン系スクアリリウム色素を含
有する本実施形態に係る画像形成材料は、フラッシュ定着用のトナーとして好適に使用す
ることができる。図1に、キセノンフラッシュランプの発光スペクトルを示す。
【0064】
さらに、上記式(II)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素オリゴマーを更に
含有する赤外光吸収剤は、上記ダイマーに由来して950nm付近に吸収ピークを有し、
上記トライマーに由来して1100nm付近に吸収ピークを有する。この波長領域はキセ
ノンフラッシュランプの発光スペクトルと良好な一致を示しているため、当該オリゴマー
を含有する本実施形態に係る画像形成材料は、フラッシュ定着用のトナーとしてより好適
に使用することができる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実
施例に何ら限定されるものではない。
【0066】
[実施例1]
(ペリミジン系スクアリリウム色素(A)の調製:二段階合成)
1,8−ジアミノナフタレン4.843g(98%,30mmol)、2,6−ジメチ
ルシクロヘキサノン3.863g(98%,30mmol)、p−トルエンスルホン酸一
水和物10mg(0.05mmol)とトルエン45mlの混合液を窒素ガスの雰囲気中
に攪拌しながら加熱し、110℃で10時間還流させた。反応中にできた水を共沸蒸留に
より除去した。反応終了後、トルエンを留去して得られた暗茶色固体をアセトンで抽出し
、アセトンとエタノールの混合溶媒から再結晶することにより精製し、乾燥することで、
茶色固体7.48g(収率93.6%)を得た。
【0067】
上記の茶色固体4.294g(16mmol)、3,4−ジヒドロキシシクロブタ−3
−エン−1,2−ジオン913mg(8.0mmol)、n−ブタノール40ml、及び
、トルエン60mlの混合液を窒素ガスの雰囲気中に攪拌しながら加熱し、105℃で3
時間還流反応させた。反応中にできた水を共沸蒸留により除去した。反応終了後、大部分
の溶媒を窒素ガスの雰囲気中に留去し、得られた反応混合物を攪拌しながら、120ml
のヘキサンを加えた。生成した黒茶色沈殿物を吸引濾過し、ヘキサンで洗浄し、乾燥後黒
青色固体を得た。この固体をアセトンで洗浄し、上記式(I)で表される目的の化合物(
A)(黒青色固体)4.30g(収率88%)を得た。
【0068】
得られた色素化合物の可視近赤外吸収スペクトルを測定した。測定結果を図2に示す。
【0069】
(顔料化処理およびスラリー塗布紙の作製)
上記手順により得られたペリミジン系スクアリリウム色素(A)の顔料化処理およびス
ラリー塗布紙の作製は下記のように行った。
(微粒子化方法)
上記手順により得られたペリミジン系スクアリリウム色素(A)50mgとヘキサン0
.5mL、直径1mmのジルコニアビーズ10gを遊星ボールミル用容器に入れ、600
rpmで1時間ミリング処理を行った。遊星ボールミル用容器に水を加え、50nmフィ
ルターでろ過して、微粒子化したペリミジン系スクアリリウム色素(以下、「微粒子(A
)」という。)を回収した。
【0070】
(スラリー作製)
微粒子化方法で得られた微粒子(A)4.88mgを、分散剤(12%ドデシルベンゼ
ンスルホン酸ナトリウム水溶液)24μl及び水2.88mlと共に超音波分散し、スラ
リーを調製した(超音波出力:4W、1/4インチホーン使用、照射時間60分)。スラ
リー中の試料濃度は、0.165wt%であった。また、スラリー中の微粒子(A)の粒
径は、メジアン径d50が110nmであった。
【0071】
(スラリー塗布紙の作製)
微粒子(A)のスラリー(試料濃度0.165wt%)37μL、40wt%ラテック
ス(ポリスチレンアクリル酸n−ブチル)液15μL及び水5gの混合液をウルトラタラ
ックスで分散化処理して、混合スラリーとした。得られた混合スラリーにPAC凝集剤を
加えて擬似トナー分散液とし、220nmフィルターでろ過、空気乾燥、熱圧着(120
℃ モード1)して、TMA=4.5g/m、単位面積当たりの顔料量PMA=0.0
45g/m(1wt.%に相当)の評価用ラテックスパッチを作製した。得られた塗布
紙をサンプルとして、日立製作所製の分光光度計U−4100で測定した。ラテックスパ
ッチの吸収スペクトルを図3に示す。
【0072】
[実施例2]
(ペリミジン系スクアリリウム色素オリゴマーの調製)
実施例1に記載の二段階反応の二段階目において、茶色固体の使用量を2.684g(
10mmol)、3,4−ジヒドロキシシクロブタ−3−エン−1,2−ジオンの使用量
を1.141g(10mmol)とした以外は、実施例1と同様の手順により反応を行い
、上記式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素と上記式(II)で表される
ペリミジン系スクアリリウム色素オリゴマーの混合物(以下、「オリゴマー混合物」とい
う。)(黒青色固体)3.36g(収率85%)を得た。得られたオリゴマー混合物の可
視近赤外吸収スペクトルを図4に示す。可視近赤外吸収スペクトルにおいて、950nm
付近に吸収ピークが存在することから、ダイマーが含まれていることがわかり、1100
nm付近に吸収ピークが存在することから、トライマーが含まれていることがわかる。
【0073】
(顔料化処理およびスラリー塗布紙の作製)
上記手順により得られたオリゴマー混合物の顔料化処理およびスラリー塗布紙の作製は
下記のように行った。
【0074】
(微粒子化方法)
ペリミジン系スクアリリウム色素(A)に代えて上記手順により得られたオリゴマー混
合物50mgを用いた以外は、実施例1と同様の手順により顔料化処理を行い、微粒子化
したオリゴマー混合物(以下、「微粒子(B)」という。)を得た。
【0075】
(スラリー作製)
微粒子(A)に代えて上記微粒子化方法で得られた微粒子(B)を用いた以外は、実施
例1と同様の手順により、スラリーを調整した。スラリー中の微粒子(B)の粒径は、メ
ジアン径d50が190nmであった。
【0076】
(スラリー塗布紙の作製)
微粒子(A)のスラリーに代えて上記スラリー作製で得られた微粒子(B)のスラリー
を用いた以外は、実施例1と同様の手順により、評価用ラテックスパッチを作製した。得
られた塗布紙をサンプルとして、日立製作所製の分光光度計U−4100で測定した。ラ
テックスパッチの吸収スペクトルを図5に示す。
【0077】
[比較例1:バナジルナフタロシアニンの顔料化処理およびスラリー塗布紙の作製]
ペリミジン系スクアリリウム色素(A)に代えて、山本化成製VONPcを用いた以外
は、実施例1と同様の手順により、微粒子化したバナジルナフタロシアニン(以下、「微
粒子(C)」という。)、スラリー及び評価用ラテックスパッチの作製を行った。スラリ
ー中の微粒子(C)の粒径は、メジアン径d50が120nmであった。得られた塗布紙
をサンプルとして、日立製作所製の分光光度計U−4100で測定した。ラテックスパッ
チの吸収スペクトルを図6に示す。
【0078】
[比較例2]
(ペリミジン系スクアリリウム色素(D)の調製)
2,6−ジメチルシクロヘキサノンに代えて、4−tert−ブチルシクロヘキサノン
4.627g(98%、30mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の手順により反
応を行い、下記式(VI)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素(D)3.363
g(収率58%)を得た。
【0079】
【化7】

【0080】
(ペリミジン系スクアリリウム色素(D)の顔料化処理およびスラリー塗布紙の作製)
ペリミジン系スクアリリウム色素(A)に代えて上記式(VI)で表されるペリミジン
系スクアリリウム色素(D)50mgを用い、ヘキサンに代えてテトラヒドロフラン(T
HF)0.5mlを用いた以外は、実施例1と同様の手順により、微粒子化したペリミジ
ン系スクアリリウム色素(D)(以下、「微粒子(D)」という。)、スラリー及び評価
用ラテックスパッチの作製を行った。スラリー中の微粒子(D)の粒径は、メジアン径d
50が120nmであった。得られた塗布紙をサンプルとして、日立製作所製の分光光度
計U−4100で測定した。ラテックスパッチの吸収スペクトルを図7に示す。
【0081】
[光消色性の評価]
実施例及び比較例で作製したスラリー、Magenta顔料スラリー、40wt%ラテ
ックス液15μL及び水5gの混合液をウルトラタラックスで分散化処理して、混合スラ
リーとした。得られた混合スラリーにPAC凝集剤を加えて擬似トナー分散液とし、22
0nmフィルターでろ過、空気乾燥、熱圧着(120℃ モード1)して、TMA=4.
5g/m(試料濃度1wt%、Magenta顔料濃度5.5wt%に相当)の光消色
性評価用ラテックスパッチを作製した。また、実施例、比較例で作製したスラリーを混合
しないこと以外は上述と同様の手順により評価用パッチを作製し、対照用ラテックスパッ
チとした。
【0082】
上記手順にて作製した光消色性評価用ラテックスパッチについて、反射分光濃度計(エ
ックスライト株式会社製、x−rite939)を用いてキセノンランプ照射前の色評価
を行った。次に、光消色性評価用ラテックスパッチを、100kluxのキセノンランプ
照射下で24時間放置した後、反射分光濃度計(エックスライト株式会社製、x−rit
e939)を用いて照射後の色評価を行った。反射分光濃度計での測定により得られるL
、a、bを用いて下記式(V)により、ΔEを算出した。得られた値を表1に示す。
【0083】
【数3】

【0084】
なお、式(V)中、L、a、bはそれぞれ対照用ラテックスパッチを用いて測定
した際のL値、a値、およびb値を示し、L、a、bはそれぞれ上記実施例及び比
較例で作製したスラリーを添加したラテックスパッチを用いて測定した際のL値、a値、
およびb値を示す。
【0085】
【表1】

【0086】
[フラッシュランプ発光スペクトルとのマッチング評価]
上記実施例及び比較例で得られたスラリー塗布紙を用いて、フラッシュ発光スペクトル
とのマッチング評価を行った。具体的には、フラッシュランプの発光スペクトル関数をf
L(k)、スラリー塗布紙のスペクトル関数をfa(k)として、下記式(VII)によ
り得られる光吸収エネルギーの総量(Et)を算出し、評価した。式中kは波数を示す。
なお、本評価では、フラッシュランプの光強度の高い800nm〜1200nmの領域の
波数について積分し、Etの値を算出した。算出結果を表2に示す。
【0087】
【数4】

【0088】
【表2】

【0089】
表1及び表2の結果から、同じ添加濃度である場合、実施例2のオリゴマー混合物を含
有するスラリーが特に光吸収エネルギー値が大きく、フラッシュ定着に有利であることが
わかる。また、実施例2における照射後のΔEは7と小さく、光照射後の画像色調に優れ
ることが分かる。これらの結果から、上記オリゴマー混合物を含むトナーは、フラッシュ
定着性及び消色性に優れることが分かる。
【0090】
また、実施例1のペリミジン系スクアリリウム色素(A)を含有するスラリーは、光吸
収エネルギーは比較例とほぼ同程度の値であったものの、照射後のΔEが比較例と比べて
小さく、ペリミジン系スクアリリウム色素(A)が比較例の化合物と比べて消色性に優れ
ていることが分かる。
【0091】
また、実施例1で得られたペリミジン系スクアリリウム色素(A)、実施例2で得られ
たオリゴマー混合物をそれぞれ用いたトナーを作製し、いずれのトナーにおいても優れた
定着性及び消色性が得られることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】キセノンフラッシュランプの発光スペクトルを示す図である。
【図2】実施例1で得られたペリミジン系スクアリリウム色素の吸収スペクトルを示す図である。
【図3】実施例1で得られたスラリー塗布紙の吸収スペクトルを示す図である。
【図4】実施例2で得られたペリミジン系スクアリリウム色素オリゴマーの吸収スペクトルを示す図である。
【図5】実施例2で得られたスラリー塗布紙の吸収スペクトルを示す図である。
【図6】比較例1で得られたスラリー塗布紙の吸収スペクトルを示す図である。
【図7】比較例2で得られたスラリー塗布紙の吸収スペクトルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を含有することを特徴とする
赤外光吸収剤。
【化1】

【請求項2】
請求項1に記載の赤外光吸収剤を含有することを特徴とする画像形成材料。
【請求項3】
フラッシュ定着用のトナーであることを特徴とする、請求項2に記載の画像形成材料。
【請求項4】
下記式(a)で表される化合物とスクアリン酸との反応により得られるペリミジン系ス
クアリリウム色素オリゴマーを更に含有することを特徴とする、請求項1に記載の赤外光
吸収剤。
【化2】

【請求項5】
請求項4に記載の赤外光吸収剤を含有することを特徴とする画像形成材料。
【請求項6】
フラッシュ定着用のトナーであることを特徴とする、請求項5に記載の画像形成材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−68706(P2011−68706A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218463(P2009−218463)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】