説明

赤外線放射器および照明装置

本発明は赤外線放射器に関し、ここでそのビーム源は、光とIRビームを放射する発光手段(2)であり、またこの発光手段を包囲するその容器(1)には干渉フィルタ(13)がコーティングされている。この干渉フィルタは、700nm〜3500nmの波長領域における所定の部分領域の赤外線ビームだけに対して透明である。この部分領域外の電磁ビームは、反射されて容器(1)に戻される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載された赤外線放射器およびこのような赤外線放射器を有する照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
I.従来の技術
上記のような赤外線放射器は、例えば欧州特許公開公報EP 1 072 841 A2に開示されている。この刊行物には実質的に白熱ランプと類似に構成された赤外線放射器が記載されている。赤外線放射源としては、動作中に赤外線ビームも光ビームも共に放射する白熱フィラメントが使用されている。この赤外線放射器はパラボラの反射器によって包囲されており、この反射器は赤外線ビームを所望の方向に配向し、可視のビームを透過させる。反射器開口部は、光を通さないフィルタプレートによって覆われている。上記の白熱フィラメントを包囲する赤外線放射器の容器の頂点部分には光反射性の、有利には冷光ミラー(Kaltlichtspiegel)として構成されたコーティングが施されている。
【0003】
II.発明の説明
本発明の課題は、可能な限り簡単な構造を有する効率的な赤外線放射器を提供することである。
【0004】
この課題は、本発明により、請求項1の特徴部分に記載された構成によって解決される。殊に有利な本発明の特徴は従属請求項に記載されている。
【0005】
本発明の赤外線放射器は、赤外線ビームを形成する発光手段(Leuchtmittel)を有しており、この発光手段は赤外線ビームに対して透過な容器の内部空間に配置されている。この容器は、内部空間を包囲する領域と、これに接続され閉じられた少なくとも1つの端部とを有する。さらにこの容器には、干渉フィルタ(Interferenzfilter)がコーティングされており、この干渉フィルタは、本発明によれば少なくとも、内部空間を包囲する容器領域全体にわたって延在しており、かつつぎのように構成されている。すなわち、この干渉フィルタは、700nm〜3500nmの波長領域のうちのあらかじめ定めた部分領域の赤外線ビームに対して透明であり、かつ発光手段から放射された可視のスペクトル領域のビームと、あらかじめ定めた波長領域外の赤外線ビームとを反射して容器の内部空間に戻すように構成されているのである。上に述べた干渉フィルタによって保証されるのは、本発明の赤外線放射器により、実質的に所望の波長領域の赤外線ビームだけが放射されることである。上記の発光手段から形成される可視のビームおよび不所望の赤外線ビームは、反射して容器の内部空間に戻り、発光手段を加熱するのに使用される。これによってこの赤外線放射器の効率は向上し、発光手段から形成される光および赤外線ビームの不所望の部分の放射を別の補助手段なしに十分に阻止することができるのである。
【0006】
有利には上記の干渉フィルタはコーティングとして容器の外部表面に構成され、これによって、容器に収容された物質との化学反応による干渉フィルタの損傷が回避される。有利な赤外線ビーム源として発光体、有利には白熱フィラメントか、またはキセノンにおけるガス放電を使用する。これらの赤外線ビーム源は所望の赤外線ビームの他に光も形成するため、これらの赤外線ビーム源は発光手段であるが、これらの赤外線ビーム源により、別の赤外線ビーム源によるよりも高い効率を得られることも判明した。本発明の1実施形態では、発光手段は、少なくとも1つの発光体を含む。本発明の殊に有利な実施形態によれば、このために発光体は、その定格動作データによる赤外線放射器の動作中に少なくとも2900℃の温度にまで加熱される。本発明の有利な実施形態では、上記の少なくとも1つの発光体の材料、幾何学形状およびサイズを選択して、定格動作データによる赤外線放射器の動作時にこの発光体が少なくとも2900℃の温度を有するようにする。
【0007】
赤外線放射器の容器を有利には軸対称に構成し、また有利には白熱フィラメントとして構成される発光体を容器において軸方向に配向して、干渉フィルタによって反射されて内部空間に戻るビームないしは反射されて内部空間に戻る光により、発光体の最適な加熱が保証されるようにする。有利には上記の内部空間を包囲する容器の領域を楕円体として構成し、これにより、干渉フィルタにおける反射の角度依存性を最小化して、干渉フィルタの厚さが全体の領域にわたって実質的に一定のままでよいようにする。
【0008】
干渉フィルタが透明である、700nm〜3500nmの波長領域の上記のあらかじめ定められた部分領域は、本発明の赤外線放射器の使用に依存する。赤外線フィルムを有するフィルムカメラ(Fotokamera)に本発明の赤外線放射器を使用する場合、上記の透明な領域は有利には720nm〜920nmである。シリコンベースの半導体撮像センサを有する電子式カメラにおける使用に対して干渉フィルタの上記の透明な部分領域は、有利には800nm〜1000nmである。インジウム−ガリウム−ヒ素(InGaAs)ベースの半導体撮像センサを有する電子式カメラにおける使用に対して、上記の干渉フィルタの透明な領域は有利には800nm〜2000nmである。加熱または熱放射器としての使用に対して上記の干渉フィルタの透明な領域は有利には800nm〜1200nmである。湯沸かし器または乾燥装置における使用に対して上記の干渉フィルタの透明な領域は有利には2500nm〜3500nmである。干渉フィルタは、透明な部分領域におけるその透過度(Transmission)が、この部分領域においてビーム源から放射されるビームの少なくとも80%になり、またこの透明な部分領域外の波長においてその透過度が高々10%になるように構成される。透明な部分領域の波長よりも波長の短い電磁ビームに対する透過度は、10%よりもさらにはるかに小さいと有利である。光に対して透過度は有利にはわずか0.1%である。
【0009】
本発明の赤外線放射器によって形成される赤外線ビームを配向して放射するため、有利には照明装置にこの放射器に装着することができ、ここでこの照明装置は、赤外線放射器を包囲する反射器を有する。反射器としては、例えばアルミニウム製のパラボラの金属体、または内側に金属層が施されたパラボラのプラスチックまたはガラス体が有利である。
【0010】
III.有利な実施例の説明
以下では本発明を有利な実施例に基づいて詳しく説明する。ここで
図1は、本発明の有利な実施例による赤外線放射器の側面図を示しており、
図2は、図1に示した赤外線放射器を有する照明装置を示しており、
図3は、本発明の第2実施例による赤外線放射器の側面図を示している。
【0011】
図1に概略的に示した赤外線放射器は実質的に約50ワットの電力を消費するハロゲン白熱ランプである。このランプは、一方が密閉された石英ガラス製の容器1を有する。ここでこれには紫外線ビーム吸収性のドーピング材料が施されている。容器1の内部空間にはタングステン製の白熱フィラメント2が配置されており、この白熱フィラメントには、容器1の密閉された端部10から突き出た2つの電流供給部3,4によって電気エネルギーが供給される。容器1の内部空間5を包囲する領域11(すなわち、密閉された端部10と、この密閉された端部10とは反対側の頂点部12とを除いた容器の領域)は、実質的に楕円体の形状を有しており、ハロゲン白熱ランプないしは赤外線放射器の長手軸A−Aに関して回転対称である。容器1の頂点部12は、溶融され密閉されたポンプチューブによって形成される。白熱フィラメント2は楕円体状の領域において軸方向に配置されている。容器1の頂点部12および楕円体状の領域11の外部表面には干渉フィルタ13がコーティングされており、ここでこの干渉フィルタは実質的に800nm〜1000nmの波長領域の赤外線ビームだけに対して透明である。白熱フィラメント2の動作中に放射される光と、この白熱フィラメントによって形成され透明な波長領域外にある赤外線ビームとは、干渉フィルタ13によって実質に反射されて白熱フィラメント2に戻り、その加熱に使用される。干渉フィルタ13は、公知のようにSiOおよびTiOからなる交互に光学的に低屈折率および高屈折率の多数の層から構成される。800nm以下の波長の短い領域における透過度、殊に光に対する透過度をさらに低減するため、干渉フィルタ13はさらに吸収層、例えばFeOからなる吸収層を含むことができる。干渉フィルタ13の透過率は、白熱フィラメント2によって放射される光の約0.1%である。白熱フィラメント2は、動作中に2900℃の温度に加熱される。
【0012】
図2は本発明の照明装置6の概略図であり、これは実質的に、図1に示した赤外線放射器7およびパラボラのアルミニウム反射器8からなる。付加的に照明装置6は場合により、冷却手段、例えばベンチレータを含むことができる。赤外線放射器7の密閉された端部10は、反射器ネック部80にはめ込まれ、これによって赤外線放射器7はアルミニウム反射器8の対称軸に配置される。赤外線放射器7によって形成される赤外線ビームはアルミニウム反射器8によって反射器8の対称軸に平行な方向に配向される。この照明装置6は例えば自動車の赤外線ハイビーム用赤外線ビーム源として有利である。
【0013】
図3には本発明の赤外線放射器の第2実施例が概略的に示されている。この赤外線放射器は、第1実施例による赤外線放射器と大部分が同じである。この第2実施例が第1実施例と異なるのは、密閉された端部10とは反対側の頂点部の領域における容器1の形状だけである。このため、図1および3において赤外線放射器の同じ部分に対して同じ参照符号を使用している。図3に示した赤外線放射器の容器1は、図1に示した赤外線放射器とは異なり、ポンプチューブ付加部12を有していない。容器1の真空化およびハロゲン充填物の注入は、容器1の端部10を介し、それを密閉する前に行われる。これは、例えば、保護ガス雰囲気内でクリーンルーム条件下で上記の作製ステップを行うことによる。択一的には(図示しない)ポンプチューブを使用することも可能であり、これは電流供給部3,4間において、密閉される端部10に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の有利な実施例による赤外線放射器の側面図である。
【図2】図1に示した赤外線放射器を有する照明装置である。
【図3】本発明の第2実施例による赤外線放射器の側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線ビームを形成する発光手段(2)を有する赤外線放射器であって、
該発光手段は、赤外線ビームに対して透過性の容器(1)の内部空間(5)に配置されており、
前記容器(1)は、前記内部空間(5)を包囲する領域(11)と、該領域に接続され、閉じられた少なくとも1つの端部(10)とを有しており、
前記容器(1)には干渉フィルタ(13)がコーティングされている形式の赤外線放射器において、
前記干渉フィルタ(13)は少なくとも、前記の内部空間(5)を包囲する領域(11)全体にわたって延在しており、
前記干渉フィルタ(13)を構成して、当該干渉フィルタが、700nm〜3500nmの波長領域のうちのあらかじめ定めた部分領域の赤外線ビームに対して透明であり、また前記発光手段(2)によって放射された、可視のスペクトル領域のビームと、前記のあらかじめ定めた波長領域外の赤外線ビームとを反射して前記容器(1)の内部空間(5)に戻すようにしたことを特徴とする
赤外線放射器。
【請求項2】
前記の干渉フィルタ(13)は、コーティングとして容器(1)の外部表面に構成されている、
請求項1に記載の赤外線放射器。
【請求項3】
前記発光手段(2)は、少なくとも1つの発光体を含む、
請求項1に記載の赤外線放射器。
【請求項4】
前記の少なくとも1つの発光体(2)の材料、幾何学形状およびサイズを選択して、定格動作データによる赤外線放射器の動作時に該発光体(2)が少なくとも2900℃の温度を有するようにした、
請求項3に記載の赤外線放射器。
【請求項5】
前記の少なくとも1つの発光体(2)は白熱フィラメントである、
請求項3に記載の赤外線放射器。
【請求項6】
前記容器(1)は軸対称に構成されており、
前記の少なくとも1つの白熱フィラメント(2)は容器(1)内で軸方向に配向されている、
請求項5に記載の赤外線放射器。
【請求項7】
前記の容器(1)の内部空間(5)を包囲する領域(11)は、楕円体として構成されている、
請求項6に記載の赤外線放射器。
【請求項8】
前記のあらかじめ定めた部分領域は、720nm〜920nmである、
請求項1に記載の赤外線放射器。
【請求項9】
前記のあらかじめ定めた部分領域は、800nm〜1000nmである、
請求項1に記載の赤外線放射器。
【請求項10】
前記のあらかじめ定めた部分領域は、800nm〜1200nmである、
請求項1に記載の赤外線放射器。
【請求項11】
前記のあらかじめ定めた部分領域は、800nm〜2000nmである、
請求項1に記載の赤外線放射器。
【請求項12】
前記のあらかじめ定めた部分領域は、2500nm〜3500nmである、
請求項1に記載の赤外線放射器。
【請求項13】
前記発光手段は、キセノンにおけるガス放電である、
請求項1に記載の赤外線放射器。
【請求項14】
照明装置において、
請求項1から13までのいずれか1項に記載の赤外線放射器を有することを特徴とする
照明装置。
【請求項15】
赤外線放射器(7)を包囲する赤外線ビーム用反射器(8)を有する、
請求項14に記載の照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−524885(P2006−524885A)
【公表日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504270(P2006−504270)
【出願日】平成16年3月24日(2004.3.24)
【国際出願番号】PCT/DE2004/000608
【国際公開番号】WO2004/096365
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(390009472)パテント−トロイハント−ゲゼルシヤフト フユール エレクトリツシエ グリユーラムペン ミツト ベシユレンクテル ハフツング (152)
【氏名又は名称原語表記】Patent−Treuhand−Gesellschaft fuer elektrische Gluehlampen mbH
【住所又は居所原語表記】Hellabrunner Strasse 1, Muenchen, Germany