赤血球の溶解のための新規の試薬及び方法
【課題】白血球の細胞数測定のために使用されることができる溶解試薬の提供。
【解決手段】本願発明に係る溶解試薬は、4〜9のpHにおいて使用されるイミダゾリジン及びイミダゾリン、モルフォリン、ピペリジン及びピロリジンから成る群から選ばれる飽和窒素含有複素環化合物である。
【解決手段】本願発明に係る溶解試薬は、4〜9のpHにおいて使用されるイミダゾリジン及びイミダゾリン、モルフォリン、ピペリジン及びピロリジンから成る群から選ばれる飽和窒素含有複素環化合物である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白血球にとって非毒性であり、かつ脂肪族アルデヒド型の固定化剤の使用に適合する、赤血球の溶解のための新規の試薬及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
正常な血液中には、赤血球は、白血球よりも約1,000倍多くあり、そして白血球の試験又は分析の障害となる。それ故、サイトメトリーの如き白血球分析、又は血液構成成分の遠心分離に関すサイトスピン(cytospin)の方法は、ほとんどの場合、白血球から赤血球を分離するための工程に先行される(US−A−4 284 412,EP−A−0 022 670)。
血液からリンパ球及び顆粒状を単離するためのフィコール(Ficoll)を使用した遠心分離による1の上記のような分離は、Scandinavian Journal of Clinical and Laboratory Investigation 1967-68, Suppl. 94-101. 305. 293中にBoyem により、そしてJournal of Immunological Methods: 1980, 33: 221-229 中Pertoff により記載されている。
【0003】
これらの方法は、細胞の損失を、そしてそれ故、不履行のアッセイを導くことができる、いくつかの洗浄及び遠心分離をそれらが必要とするために、使用することが比較的困難である。しかしながら、上記方法は、最近、参照方法であると考えられている。なぜなら、白血球の形態学及び生存能力が、分離後に保存されているからである。
【0004】
白血球分析に関する血液の溶解は、死骸の状態への赤血球の(red corpuscles)の破壊を含む。一方において、この溶解方法は、細胞数測定の白血球分析を許容し、そして赤血球の死骸から白血球を明確に区別するために、白血球の形態の最適な保存を目的とする。
赤血球の溶解は、赤血球の外側からの膜を通しての一定量の材料の通過という一般原理に基づく。この通過の間、その膜の状態は、細胞の膨潤に因り、又は通過材料中の膜の溶解に因り、悪化する。
【0005】
溶解の間の、白血球の形態の保存は、その膜の付近のよりタンパク質に富む環境:外側及び内側の、トランスメンブラン・タンパク質、及び内側の、発達した細胞骨格に基づく。
この白血球膜の支持の利点は、固定化剤、例えば、その膜に浸透し、そして外側と内側を架橋することによりそのタンパク質構造を固定するホルムアルデヒドの使用により、最大限利用される。
赤血球の膜を通過するために使用される材料は、一般には、小さな中性分子、第1に低張性溶解において使用される水自体、又はChang et al.(米国特許第4 902 613号)中に記載されたようなジエチレン・グリコール、ホルムアルデヒド及びクエン酸の存在下の水である。ときどき、固定及び低張溶解が、Quintana(WO-89/0509)及びVan Agthoven (EP-A-0625706)により記載されたように、異なる段階において行われる。
【0006】
EP−A−625 707中に記載されたような等張溶解の場合には、通過される材料は、ホルムアルデヒド、グリセロール、ブタノール、及びクエン酸の混合物から成る。
等張溶解の他の方法は、サポニン、WO85/05640中に記載されたような洗剤特性をもつ小さな分子を使用する。
溶解の一般原理が直ちには明らかでないような溶解の方法が存在する。これは、塩化アンモニウムを用いた溶解である。この溶解操作は、上記膜を通してのNH3 とCO3 の通過に依存する。NH3 とCO2 は、上記混合物中NH4 + とHCO3 - と平衡状態にある。細胞内でのNH3 からNH4 + への、そして赤血球内に多量に存在する炭酸アンヒドラーゼによるCO2 からHCO3 - への自発的再変換は、細胞に侵入するNH3 とCO2 の連続流の後の力であることができるであろう。
【0007】
塩化アンモニウムによる溶解は、固定化剤の非存在下で行われることができる最も有効な溶解であり、そしてそれ故、多くの研究実験室の好ましい方法である。この方法の制限は、その溶解プロセスの間に白血球がそれらの生存能力をひじょうに速く失うということである。明らかに、細胞の内部は、上記2反応の生成物により、最初にアルカリ性にされる;NH5 CO3 )。その後、溶解及び赤血球からの炭酸アンヒドラーゼの放出後の反応において、その溶解バッファー中に存在する重炭酸塩からの反応HCO3 →CO2 +OH- は、その混合物全体をアルカリ性にし、これは、白血球の分解を引き起こす。これらの毒性状態により、ひじょうに速く、通常、調製を行ってから1〜2時間後に、読みを記録しなければならない。
【0008】
この方法の他の制限は、以下の反応:
6HCHO+4NH3 →C6 H12N4 +6H2 O
に因り、塩化アンモニウムの使用とホルムアルデヒドの使用を組み合せることができないという事実である。
形成されたヘキサメチレン・テトラミンは安定であり、そしてそれ故、その混合物は、その反応の間、白血球に有害な程に酸性となる。なぜなら、培地中のNH3 の除去はその平衡をシフトさせ、そしてそのH+ イオンがもはや補償されないからである。
要するに、塩化アンモニウムは、脂肪族アルデヒドに不適合であることが証明されており、そしてそれ故、両者が共に使用されるとき、溶解は速やかに停止する。
【0009】
それ故、できるだけ白血球の細胞生存能力を保持する、赤血球のための溶解試薬及び溶解方法をもつことが望ましいであろう。上記調製を実施してから長い時間後に、例えば、上記生成物の反応から1日以上たった後に、細胞数測定の読みが行われることを可能にする、赤血球の溶解試薬及び溶解方法をもつことも望ましいであろう。
ホルムアルデヒドの使用も適用性である赤血球の溶解試薬と溶解方法も望ましいであろう。
長い間の研究の後、本出願人は、上記問題を溶解剤として窒素含有複素環化合物を使用することにより解決した。
【発明の開示】
【0010】
上記の理由により、本願は、白血球の細胞測定分析のために使用されることができる溶解試薬であって、この溶解剤が、4〜9のpH、好ましくは5〜8のpH、特に6〜7.5のpH、より特に6.8〜7.2のpHにおいて使用される窒素含有複素環化合物であることを特徴とする。
用語“溶解剤”は、前記窒素含有複素環化合物が、使用される基本的な溶解剤であるということを意味する。
本願出願人は、実際、溶解剤としての窒素含有複素環化合物の使用が、白血球を保護するためにホルムアルデヒドの使用と適合しながら、NH4 Clを適用する結果を与えるということが発見された。上記脂肪族アルデヒドは上記窒素含有複素環化合物と反応するが、上記溶解培地中での反応が完全ではなく、そして上記生成物は一般に、安定な反応生成物を形成せずに平衡状態において残存するようであろう。
【0011】
上記窒素含有複素環化合物は、例えば、2環、そして好ましくは単環であることができる。それは不飽和であることができ、その場合、それは、例えば5、そして好ましくは4、顕著には3、特に2の2重結合を含み、そしてそれは、好ましくは飽和である。それは、例えば、3〜8、顕著には3〜6、そして特に3〜5、そしてより特に4又は5の炭素原子を含む。それは、2の、顕著には、1の単一の窒素原子をもつ。
飽和の窒素含有複素環化合物の例は、ピラゾリジン、イミダゾリジン及びイミダゾリン、ピペラジン、顕著にはモルフォリン、及び特にピペリジン又はピロリジンを含む。
【0012】
本発明に係る溶解試薬においては、上記窒素含有複素環化合物は、0.01〜0.2M、特に0.05〜0.19M、そしてより特に0.1〜0.18Mのモル濃度で存在することができる。上記の溶解試薬の使用の全体として優先的な条件下では、0.15Mの濃度が使用される。
上記濃度は、赤血球溶解の間の、関係する化合物の量に関して与えられる。
本発明の使用の他の優先的な条件下では、上記の溶解試薬について所望のpHを付与するために本発明に従って使用される化合物は、アニオンとして、例えば、HClの形態で塩素を使用する。
【0013】
さらに他の優先的な使用条件下、本発明の溶解試薬は、上記溶解試薬について所望のpHを与えるために本発明に従って使用されるアニオンとは別に、炭酸イオン、炭酸水素イオンであるが好ましくはホウ素イオンである対イオンをも含む。
実際、ホウ酸イオンは重炭酸イオンのように分解を受けず、そしてそれ故、細胞の良好な安定性に寄与し、溶解が行われてからはるか後に、細胞数測定の読みを許容するということが、発見されている。その上、その使用は、安定性の溶解溶液の調製を許容し、これは、炭酸水素塩の場合にはそうではない。
【0014】
本発明に係る溶解試薬においては、上記対イオンは、0.001〜0.2M、特に0.005〜0.1M、そしてより特に0.01〜0.05Mのモル濃度で存在することができる。本発明に従えば、上記ホウ酸塩は、上記炭酸塩よりも高い濃度で使用される。例えば、0.04Mのホウ酸塩の濃度が、0.01Mの炭酸塩又は炭酸水素塩の濃度の代わりに使用される。
本発明の使用の他の優先的な条件下、本発明の溶解試薬は、特にpH6.5〜7.5の有効量の緩衝剤をも含む。緩衝剤の例は、MES(2−(N−モルフォリノ)エタン・スルホン酸)、顕著にはMOPS(3−(N−モルフォリノ)プロペン・スルホン酸)、そして特にHEPES(N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N′−(2−エタン・スルホン酸)を含む。
【0015】
本発明に係る溶解試薬においては、上記緩衝剤は、0.0001〜0.05M、特に0.0005〜0.03M、そしてより特に0.002〜0.008Mのモル濃度で存在することができる。
本発明のさらに他の優先的な条件下では、本発明の溶解試薬は、有効量の抗凝血剤をも含む。
抗凝血剤の例は、ヘパリン、顕著には、クエン酸イオン、そして特にEDTAを含む。
本発明の使用の全体として優先的な条件下では、0.15Mの塩化ピロリドン、0.04Mのホウ酸、0.0001MのEDTA、及び0.005MのHEPESの混合物が、7.0付近のpHで使用される。
【0016】
上記溶解試薬の使用のさらに他の優先的な条件下では、さらに固定化剤、顕著には、脂肪族アルデヒド、例えば、C1 〜C5 を含むもの、例えば、パラホルムアルデヒド、そして特にホルムアルデヒドが使用される。
上記脂肪族アルデヒドは、0.01%〜5%、特に0.14%〜1%、そしてより特に0.1%〜0.5%の濃度で存在することができる。上記の溶解試薬の使用の優先的な条件下では、固定剤と共に、0.15Mの塩化ピロリジン、0.04Mのホウ酸、0.0001MのEDTA、0.005MのHEPES、及び0.3%のホルムアルデヒドが使用される。
本発明は、抗凝血剤、例えば、EDTA、ヘパリン又はクエン酸イオンで処理された全血のサンプルが上記の溶解試薬の作用を受けるような、赤血球の溶解方法をも提供する。
【0017】
白血球細胞を標識付けするためにモノクローナル抗体の非存在下又は存在下で操作することができる。これらの抗体は、蛍光性化合物、例えば下記のようなものに結合されても、されなくてもよい。好ましい使用条件下では、これらの抗体は、蛍光性化合物に結合される。
【0018】
上記溶解試薬は、以下のように使用されることができる:
抗凝血剤で処理され、そして前もって、モノクローナル抗体と、又は蛍光マーカーと組み合されたモノクローナル抗体と、又は蛍光マーカーと組み合されたモノクローナル抗体混合物と共にインキュベートされた、0.1mlの血液のサンプルを、37℃の温度まで事前に加熱された上述の溶解試薬2mlと接触させ、そして10分間にわたり放置して冷却し、その間に溶解を完結させる。このようなマーカーは、例えば、CD45−FITC(フルオレセイン・イソシアネートと組み合されたCD45)又はフィコエリスリン(phycoerythrin)と組み合されたCD14であり、そして例えば、DAKO, BECTON and DICKINSON又はIMMUNOTECHのような企業により購売されている。次に、溶解直後又は3日後までに、例えば、BECTON and DICKINSON Facscanタイプの、サイトメーター内で読みを実行する。
【0019】
本発明に従う使用の優先的な条件下では、上記の優先的な条件が、溶解試薬及び溶解方法のために選ばれる。
図1〜図13は、溶解直後(0時間)、及び24時間、48時間、及び72時間後における:大きな角度と小さな角度における拡散を比較することによるBECTON and DICKINSONからのFacscan を使用したサイトメトリーにより得られた結果を表す。
【実施例】
【0020】
以下の例は本発明を説明する。
参照調製物
NH4 Cl(Ortho Diagnostics 参照)に基づく溶解試薬を使用した。
実施例1:溶解試薬の調製
以下の配合に一致する溶解試薬を調製した:
0.15M ピロリジン−HCl
0.04M ホウ酸
0.005M HEPES
0.0001M EDTA
実施例2:溶解試薬の調製
以下の配合に一致する溶解試薬を調製した:
0.15M ピロリジン−HCl
0.04M ホウ酸
0.005M HEPES
0.0001M EDTA
0.1M ホルムアルデヒド
pH7.0
【0021】
実施例3:溶解試薬の調製
以下の配合に一致する溶解試薬を調製した:
0.15M ピペリジン−HCl
0.04M ホウ酸
0.005M HEPES
0.0001M EDTA
pH:7.0
実施例4:溶解試薬の調製
以下の配合に一致する溶解試薬を調製した:
0.15M ピペリジン−HCl
0.04M ホウ酸
0.005M HEPES
0.0001M EDTA
0.1M ホルムアルデヒド
【0022】
薬理学的研究
実験1:赤血球の溶解の証明
EDTAを含む血液から出発して、サンプリングから2時間後、100μlのサンプルを、参照IM1201の下、IMMUNOTECHにより購売された、20μlの単球マーカー(CD14−フィコエリスリン)及び白血球マーカー(CD45−FITC)の存在下、15分間インキュベートした。次にこれらのサンプルを、異なる温度で、異なる溶解調製物、顕著には上記のものと混合し、周囲温度で10分間、溶解に供し、次にこれらのサンプルの一部を、遠心分離(5分間、300g)後にホスフェート・バッファー(PBS)中に溶解させた。これらのサンプルを4℃で保存する。
【0023】
上記サンプルを、直後に又は3mlのホスフェート・バッファーで洗浄した後にFACSCANサイトメーター(BECTON & DICKINSON)上に分析し、そしてその後、保存の間、24時間の間隔で分析した。
図1〜13は、Simulsetプログラム(BECTON & DICKINSON)を使用して分析された溶解された血液調製物の散乱図(scattergrams)を示す。白血球配合物中のリンパ球、単球、及び顆粒球のパーセンテージを大きな角度と小さな角度及びCD45/CD14蛍光における拡散ダイアグラムに基づいて推定した。
【0024】
対照として、CD45−フィコエリスリンで標識された血液(溶解を伴わずにPBS中で500倍に希釈された、0.02mlのCD45−フィコエリスリン当り0.1mlの血液)を、(400ボルトに対応する)蛍光チャンネルFL2内の閾値を適用することにより、サイトメトリーによりアッセイした。
実施例1、実施例2、及び塩化アンモニウムの溶解試薬の遂行と、溶解を伴わない対照とを比較することにより(図1,2,3、及び4)、よく保存された単球とリンパ球の形態学が、そして特にNH4 Clの場合、右側への、多核細胞の位置の僅かな修飾が、見られる。
保存の間、時間の関数としての右側への多核細胞におけるシフトも観察され、これは、このシフトが多核細胞の部分的破壊に関係しているということを示している。上記サンプルの保存の間、死骸の領域におけるリンパ球と単球の一部のシフト、明らかに溶解に依存しない効果も観察された。なぜなら、それは、対照のシリーズにおいても観察されるからである(図1)。
【0025】
同じ現象が、溶解後の保存シリーズにおいて、そして実施例1と実施例2の調製物を使用した方法の洗浄を伴わずに、観察される(8,9)。
これは、実施例1と2の試薬中での細胞の保存が、PBS中での保存と異ならないということを示す。他方において、NH4 Cl中での保存は(図10)は、その材料の速い分解を示す。
ひじょうに良好な保存が、PBS中での洗浄後に(図5,6)又は洗浄を伴わずに(図11,12)、ホルムアルデヒドの存在下、実施例1と2の試薬を用いて得られた。
NH4 Clとホルムアルデヒドが非適合性である(両立しない)という事実にも拘らず、上記の反応に従って使用されたNH4 Clをホルムアルデヒドにより置換することにより混合物を創出する試みを行った。溶解と洗浄の後に、右側への多核細胞のシフトが観察され、そしてリンパ球が速く破壊され、そして死骸と共に発見された(図7)。明らかに、ホルムアルデヒドは上記混合物中にほとんど残っていない。なぜなら、洗浄を伴わない生成物中の分解は(図13)、ホルムアルデヒドによらないNH4 Clによるよりも低いからである(図10)。
【0026】
洗浄なしでは、NH4 Clとホルムアルデヒドの反応生成物は上記細胞にとって明らかに毒性である。なぜなら、洗浄を伴う溶解においては、左側への、そして底への顆粒状の変位を伴うかなりの分解が、保存の間に生じたからである(図10)。
実験2:溶解後の細胞の生存能力の証明
細胞の生存能力の推定を、RPM1 10%胎児子ウシ血清培地の存在下、かつフィトヘマグルチニン10μg/mlとインターロイキン−2(SIGMA, St-Louis, Missouri, 20 ユニット/ml)の存在下、溶解又は分離後のリンパ球又は白血球集団の培養により得た。実施例1の方法により調製された白血球集団を、Ficoll (Histopaque(登録商標)SIGMA, St-Louis, Missouri)上でBoyum に従って調製されたリンパ球調製物(Scandinavian Journal of Clinical and Laboratory Investigation 1967-1968, Suppl. 94-101. 305.293)と比較した。後者は、生存能力の損失を伴わないリンパ球調製方法の参照として認められている。
【0027】
NH4 Clを用いた方法(ORTHO DIAGNOSTIC SYSTEMS Co., Raritan, New Jersey) に従ったリンパ球の調製も含まれる。
図14中、その生存能力を、アネキシン−5(annexin−5)(WO−A−95/27903)による標識付けに従った、非壊死性又はアポトーシスの(apoptotic)、T細胞(CD3+)の培養における数に基づき証明し、そして推定した。図14は、フィトヘマグルチニン及びインターロイキン−2の影響下、時間にわたるT細胞の増殖を示している。
結論:
実施例1に従った溶解後の生存能力は、Histopaque(登録商標)分離後のものと実質的に同一である。一方、塩化アンモニウムを用いた溶解後の生存能力は大きく減少される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、対照−溶解試薬なし、について得られた結果を表す。
【図2】図2は、溶解から10分後にホスフェート・バッファー(PBS)による洗浄を行うことにより、実施例1の試薬について得られた結果を表す。
【図3】図3は、溶解から10分後に洗浄を行うことにより実施例3の試薬について得られた結果を表す。
【図4】図4は、溶解から10分後に洗浄を行うことにより、ORTHO DIAGNOSTIC SYSTEMS INC. 試薬、参照770521−溶解剤=NH4 Clについて得られた結果を表す。
【図5】図5は、実施例2の試薬について得られた結果を表す。
【図6】図6は、実施例4の試薬について得られた結果を表す。
【図7】図7は、0.3%のHCHOがそれに添加されたところのORTHO DIAGNOSTICS 試薬について得られた結果を表す。
【図8】図8は、実施例1の試薬であるが洗浄を伴わないものについて得られた結果を表す。
【図9】図9は、実施例3の試薬であるが洗浄を伴わないものについて得られた結果を表す。
【図10】図10は、ORTHO DIAGNOSTICS 試薬であるが洗浄を伴わないものについて得られた結果を表す。
【図11】図11は、実施例2の試薬であるが洗浄を伴わないものについて得られた結果を表す。
【図12】図12は、実施例4の試薬であるが洗浄を伴わないものについて得られた結果を表す。
【図13】図13は、0.3%HCHOがそれに添加されたところのORTHO DIAGNOSTICS 試薬であるが洗浄を伴わないものについて得られた結果を表す。
【図14】図14は、インターロイキン−2とフィトヘマグルチニンを含む培養基中でのT細胞の増殖による溶解後の細胞生存能力の証明を表す。培養の日数を横軸上に表し、そして生きているCD3細胞の数を縦軸上に示す(106 細胞)。三角、丸、と四角は、それぞれ、NH4 Cl、実施例1、及びFicollを用いて得られた結果を表す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、白血球にとって非毒性であり、かつ脂肪族アルデヒド型の固定化剤の使用に適合する、赤血球の溶解のための新規の試薬及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
正常な血液中には、赤血球は、白血球よりも約1,000倍多くあり、そして白血球の試験又は分析の障害となる。それ故、サイトメトリーの如き白血球分析、又は血液構成成分の遠心分離に関すサイトスピン(cytospin)の方法は、ほとんどの場合、白血球から赤血球を分離するための工程に先行される(US−A−4 284 412,EP−A−0 022 670)。
血液からリンパ球及び顆粒状を単離するためのフィコール(Ficoll)を使用した遠心分離による1の上記のような分離は、Scandinavian Journal of Clinical and Laboratory Investigation 1967-68, Suppl. 94-101. 305. 293中にBoyem により、そしてJournal of Immunological Methods: 1980, 33: 221-229 中Pertoff により記載されている。
【0003】
これらの方法は、細胞の損失を、そしてそれ故、不履行のアッセイを導くことができる、いくつかの洗浄及び遠心分離をそれらが必要とするために、使用することが比較的困難である。しかしながら、上記方法は、最近、参照方法であると考えられている。なぜなら、白血球の形態学及び生存能力が、分離後に保存されているからである。
【0004】
白血球分析に関する血液の溶解は、死骸の状態への赤血球の(red corpuscles)の破壊を含む。一方において、この溶解方法は、細胞数測定の白血球分析を許容し、そして赤血球の死骸から白血球を明確に区別するために、白血球の形態の最適な保存を目的とする。
赤血球の溶解は、赤血球の外側からの膜を通しての一定量の材料の通過という一般原理に基づく。この通過の間、その膜の状態は、細胞の膨潤に因り、又は通過材料中の膜の溶解に因り、悪化する。
【0005】
溶解の間の、白血球の形態の保存は、その膜の付近のよりタンパク質に富む環境:外側及び内側の、トランスメンブラン・タンパク質、及び内側の、発達した細胞骨格に基づく。
この白血球膜の支持の利点は、固定化剤、例えば、その膜に浸透し、そして外側と内側を架橋することによりそのタンパク質構造を固定するホルムアルデヒドの使用により、最大限利用される。
赤血球の膜を通過するために使用される材料は、一般には、小さな中性分子、第1に低張性溶解において使用される水自体、又はChang et al.(米国特許第4 902 613号)中に記載されたようなジエチレン・グリコール、ホルムアルデヒド及びクエン酸の存在下の水である。ときどき、固定及び低張溶解が、Quintana(WO-89/0509)及びVan Agthoven (EP-A-0625706)により記載されたように、異なる段階において行われる。
【0006】
EP−A−625 707中に記載されたような等張溶解の場合には、通過される材料は、ホルムアルデヒド、グリセロール、ブタノール、及びクエン酸の混合物から成る。
等張溶解の他の方法は、サポニン、WO85/05640中に記載されたような洗剤特性をもつ小さな分子を使用する。
溶解の一般原理が直ちには明らかでないような溶解の方法が存在する。これは、塩化アンモニウムを用いた溶解である。この溶解操作は、上記膜を通してのNH3 とCO3 の通過に依存する。NH3 とCO2 は、上記混合物中NH4 + とHCO3 - と平衡状態にある。細胞内でのNH3 からNH4 + への、そして赤血球内に多量に存在する炭酸アンヒドラーゼによるCO2 からHCO3 - への自発的再変換は、細胞に侵入するNH3 とCO2 の連続流の後の力であることができるであろう。
【0007】
塩化アンモニウムによる溶解は、固定化剤の非存在下で行われることができる最も有効な溶解であり、そしてそれ故、多くの研究実験室の好ましい方法である。この方法の制限は、その溶解プロセスの間に白血球がそれらの生存能力をひじょうに速く失うということである。明らかに、細胞の内部は、上記2反応の生成物により、最初にアルカリ性にされる;NH5 CO3 )。その後、溶解及び赤血球からの炭酸アンヒドラーゼの放出後の反応において、その溶解バッファー中に存在する重炭酸塩からの反応HCO3 →CO2 +OH- は、その混合物全体をアルカリ性にし、これは、白血球の分解を引き起こす。これらの毒性状態により、ひじょうに速く、通常、調製を行ってから1〜2時間後に、読みを記録しなければならない。
【0008】
この方法の他の制限は、以下の反応:
6HCHO+4NH3 →C6 H12N4 +6H2 O
に因り、塩化アンモニウムの使用とホルムアルデヒドの使用を組み合せることができないという事実である。
形成されたヘキサメチレン・テトラミンは安定であり、そしてそれ故、その混合物は、その反応の間、白血球に有害な程に酸性となる。なぜなら、培地中のNH3 の除去はその平衡をシフトさせ、そしてそのH+ イオンがもはや補償されないからである。
要するに、塩化アンモニウムは、脂肪族アルデヒドに不適合であることが証明されており、そしてそれ故、両者が共に使用されるとき、溶解は速やかに停止する。
【0009】
それ故、できるだけ白血球の細胞生存能力を保持する、赤血球のための溶解試薬及び溶解方法をもつことが望ましいであろう。上記調製を実施してから長い時間後に、例えば、上記生成物の反応から1日以上たった後に、細胞数測定の読みが行われることを可能にする、赤血球の溶解試薬及び溶解方法をもつことも望ましいであろう。
ホルムアルデヒドの使用も適用性である赤血球の溶解試薬と溶解方法も望ましいであろう。
長い間の研究の後、本出願人は、上記問題を溶解剤として窒素含有複素環化合物を使用することにより解決した。
【発明の開示】
【0010】
上記の理由により、本願は、白血球の細胞測定分析のために使用されることができる溶解試薬であって、この溶解剤が、4〜9のpH、好ましくは5〜8のpH、特に6〜7.5のpH、より特に6.8〜7.2のpHにおいて使用される窒素含有複素環化合物であることを特徴とする。
用語“溶解剤”は、前記窒素含有複素環化合物が、使用される基本的な溶解剤であるということを意味する。
本願出願人は、実際、溶解剤としての窒素含有複素環化合物の使用が、白血球を保護するためにホルムアルデヒドの使用と適合しながら、NH4 Clを適用する結果を与えるということが発見された。上記脂肪族アルデヒドは上記窒素含有複素環化合物と反応するが、上記溶解培地中での反応が完全ではなく、そして上記生成物は一般に、安定な反応生成物を形成せずに平衡状態において残存するようであろう。
【0011】
上記窒素含有複素環化合物は、例えば、2環、そして好ましくは単環であることができる。それは不飽和であることができ、その場合、それは、例えば5、そして好ましくは4、顕著には3、特に2の2重結合を含み、そしてそれは、好ましくは飽和である。それは、例えば、3〜8、顕著には3〜6、そして特に3〜5、そしてより特に4又は5の炭素原子を含む。それは、2の、顕著には、1の単一の窒素原子をもつ。
飽和の窒素含有複素環化合物の例は、ピラゾリジン、イミダゾリジン及びイミダゾリン、ピペラジン、顕著にはモルフォリン、及び特にピペリジン又はピロリジンを含む。
【0012】
本発明に係る溶解試薬においては、上記窒素含有複素環化合物は、0.01〜0.2M、特に0.05〜0.19M、そしてより特に0.1〜0.18Mのモル濃度で存在することができる。上記の溶解試薬の使用の全体として優先的な条件下では、0.15Mの濃度が使用される。
上記濃度は、赤血球溶解の間の、関係する化合物の量に関して与えられる。
本発明の使用の他の優先的な条件下では、上記の溶解試薬について所望のpHを付与するために本発明に従って使用される化合物は、アニオンとして、例えば、HClの形態で塩素を使用する。
【0013】
さらに他の優先的な使用条件下、本発明の溶解試薬は、上記溶解試薬について所望のpHを与えるために本発明に従って使用されるアニオンとは別に、炭酸イオン、炭酸水素イオンであるが好ましくはホウ素イオンである対イオンをも含む。
実際、ホウ酸イオンは重炭酸イオンのように分解を受けず、そしてそれ故、細胞の良好な安定性に寄与し、溶解が行われてからはるか後に、細胞数測定の読みを許容するということが、発見されている。その上、その使用は、安定性の溶解溶液の調製を許容し、これは、炭酸水素塩の場合にはそうではない。
【0014】
本発明に係る溶解試薬においては、上記対イオンは、0.001〜0.2M、特に0.005〜0.1M、そしてより特に0.01〜0.05Mのモル濃度で存在することができる。本発明に従えば、上記ホウ酸塩は、上記炭酸塩よりも高い濃度で使用される。例えば、0.04Mのホウ酸塩の濃度が、0.01Mの炭酸塩又は炭酸水素塩の濃度の代わりに使用される。
本発明の使用の他の優先的な条件下、本発明の溶解試薬は、特にpH6.5〜7.5の有効量の緩衝剤をも含む。緩衝剤の例は、MES(2−(N−モルフォリノ)エタン・スルホン酸)、顕著にはMOPS(3−(N−モルフォリノ)プロペン・スルホン酸)、そして特にHEPES(N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N′−(2−エタン・スルホン酸)を含む。
【0015】
本発明に係る溶解試薬においては、上記緩衝剤は、0.0001〜0.05M、特に0.0005〜0.03M、そしてより特に0.002〜0.008Mのモル濃度で存在することができる。
本発明のさらに他の優先的な条件下では、本発明の溶解試薬は、有効量の抗凝血剤をも含む。
抗凝血剤の例は、ヘパリン、顕著には、クエン酸イオン、そして特にEDTAを含む。
本発明の使用の全体として優先的な条件下では、0.15Mの塩化ピロリドン、0.04Mのホウ酸、0.0001MのEDTA、及び0.005MのHEPESの混合物が、7.0付近のpHで使用される。
【0016】
上記溶解試薬の使用のさらに他の優先的な条件下では、さらに固定化剤、顕著には、脂肪族アルデヒド、例えば、C1 〜C5 を含むもの、例えば、パラホルムアルデヒド、そして特にホルムアルデヒドが使用される。
上記脂肪族アルデヒドは、0.01%〜5%、特に0.14%〜1%、そしてより特に0.1%〜0.5%の濃度で存在することができる。上記の溶解試薬の使用の優先的な条件下では、固定剤と共に、0.15Mの塩化ピロリジン、0.04Mのホウ酸、0.0001MのEDTA、0.005MのHEPES、及び0.3%のホルムアルデヒドが使用される。
本発明は、抗凝血剤、例えば、EDTA、ヘパリン又はクエン酸イオンで処理された全血のサンプルが上記の溶解試薬の作用を受けるような、赤血球の溶解方法をも提供する。
【0017】
白血球細胞を標識付けするためにモノクローナル抗体の非存在下又は存在下で操作することができる。これらの抗体は、蛍光性化合物、例えば下記のようなものに結合されても、されなくてもよい。好ましい使用条件下では、これらの抗体は、蛍光性化合物に結合される。
【0018】
上記溶解試薬は、以下のように使用されることができる:
抗凝血剤で処理され、そして前もって、モノクローナル抗体と、又は蛍光マーカーと組み合されたモノクローナル抗体と、又は蛍光マーカーと組み合されたモノクローナル抗体混合物と共にインキュベートされた、0.1mlの血液のサンプルを、37℃の温度まで事前に加熱された上述の溶解試薬2mlと接触させ、そして10分間にわたり放置して冷却し、その間に溶解を完結させる。このようなマーカーは、例えば、CD45−FITC(フルオレセイン・イソシアネートと組み合されたCD45)又はフィコエリスリン(phycoerythrin)と組み合されたCD14であり、そして例えば、DAKO, BECTON and DICKINSON又はIMMUNOTECHのような企業により購売されている。次に、溶解直後又は3日後までに、例えば、BECTON and DICKINSON Facscanタイプの、サイトメーター内で読みを実行する。
【0019】
本発明に従う使用の優先的な条件下では、上記の優先的な条件が、溶解試薬及び溶解方法のために選ばれる。
図1〜図13は、溶解直後(0時間)、及び24時間、48時間、及び72時間後における:大きな角度と小さな角度における拡散を比較することによるBECTON and DICKINSONからのFacscan を使用したサイトメトリーにより得られた結果を表す。
【実施例】
【0020】
以下の例は本発明を説明する。
参照調製物
NH4 Cl(Ortho Diagnostics 参照)に基づく溶解試薬を使用した。
実施例1:溶解試薬の調製
以下の配合に一致する溶解試薬を調製した:
0.15M ピロリジン−HCl
0.04M ホウ酸
0.005M HEPES
0.0001M EDTA
実施例2:溶解試薬の調製
以下の配合に一致する溶解試薬を調製した:
0.15M ピロリジン−HCl
0.04M ホウ酸
0.005M HEPES
0.0001M EDTA
0.1M ホルムアルデヒド
pH7.0
【0021】
実施例3:溶解試薬の調製
以下の配合に一致する溶解試薬を調製した:
0.15M ピペリジン−HCl
0.04M ホウ酸
0.005M HEPES
0.0001M EDTA
pH:7.0
実施例4:溶解試薬の調製
以下の配合に一致する溶解試薬を調製した:
0.15M ピペリジン−HCl
0.04M ホウ酸
0.005M HEPES
0.0001M EDTA
0.1M ホルムアルデヒド
【0022】
薬理学的研究
実験1:赤血球の溶解の証明
EDTAを含む血液から出発して、サンプリングから2時間後、100μlのサンプルを、参照IM1201の下、IMMUNOTECHにより購売された、20μlの単球マーカー(CD14−フィコエリスリン)及び白血球マーカー(CD45−FITC)の存在下、15分間インキュベートした。次にこれらのサンプルを、異なる温度で、異なる溶解調製物、顕著には上記のものと混合し、周囲温度で10分間、溶解に供し、次にこれらのサンプルの一部を、遠心分離(5分間、300g)後にホスフェート・バッファー(PBS)中に溶解させた。これらのサンプルを4℃で保存する。
【0023】
上記サンプルを、直後に又は3mlのホスフェート・バッファーで洗浄した後にFACSCANサイトメーター(BECTON & DICKINSON)上に分析し、そしてその後、保存の間、24時間の間隔で分析した。
図1〜13は、Simulsetプログラム(BECTON & DICKINSON)を使用して分析された溶解された血液調製物の散乱図(scattergrams)を示す。白血球配合物中のリンパ球、単球、及び顆粒球のパーセンテージを大きな角度と小さな角度及びCD45/CD14蛍光における拡散ダイアグラムに基づいて推定した。
【0024】
対照として、CD45−フィコエリスリンで標識された血液(溶解を伴わずにPBS中で500倍に希釈された、0.02mlのCD45−フィコエリスリン当り0.1mlの血液)を、(400ボルトに対応する)蛍光チャンネルFL2内の閾値を適用することにより、サイトメトリーによりアッセイした。
実施例1、実施例2、及び塩化アンモニウムの溶解試薬の遂行と、溶解を伴わない対照とを比較することにより(図1,2,3、及び4)、よく保存された単球とリンパ球の形態学が、そして特にNH4 Clの場合、右側への、多核細胞の位置の僅かな修飾が、見られる。
保存の間、時間の関数としての右側への多核細胞におけるシフトも観察され、これは、このシフトが多核細胞の部分的破壊に関係しているということを示している。上記サンプルの保存の間、死骸の領域におけるリンパ球と単球の一部のシフト、明らかに溶解に依存しない効果も観察された。なぜなら、それは、対照のシリーズにおいても観察されるからである(図1)。
【0025】
同じ現象が、溶解後の保存シリーズにおいて、そして実施例1と実施例2の調製物を使用した方法の洗浄を伴わずに、観察される(8,9)。
これは、実施例1と2の試薬中での細胞の保存が、PBS中での保存と異ならないということを示す。他方において、NH4 Cl中での保存は(図10)は、その材料の速い分解を示す。
ひじょうに良好な保存が、PBS中での洗浄後に(図5,6)又は洗浄を伴わずに(図11,12)、ホルムアルデヒドの存在下、実施例1と2の試薬を用いて得られた。
NH4 Clとホルムアルデヒドが非適合性である(両立しない)という事実にも拘らず、上記の反応に従って使用されたNH4 Clをホルムアルデヒドにより置換することにより混合物を創出する試みを行った。溶解と洗浄の後に、右側への多核細胞のシフトが観察され、そしてリンパ球が速く破壊され、そして死骸と共に発見された(図7)。明らかに、ホルムアルデヒドは上記混合物中にほとんど残っていない。なぜなら、洗浄を伴わない生成物中の分解は(図13)、ホルムアルデヒドによらないNH4 Clによるよりも低いからである(図10)。
【0026】
洗浄なしでは、NH4 Clとホルムアルデヒドの反応生成物は上記細胞にとって明らかに毒性である。なぜなら、洗浄を伴う溶解においては、左側への、そして底への顆粒状の変位を伴うかなりの分解が、保存の間に生じたからである(図10)。
実験2:溶解後の細胞の生存能力の証明
細胞の生存能力の推定を、RPM1 10%胎児子ウシ血清培地の存在下、かつフィトヘマグルチニン10μg/mlとインターロイキン−2(SIGMA, St-Louis, Missouri, 20 ユニット/ml)の存在下、溶解又は分離後のリンパ球又は白血球集団の培養により得た。実施例1の方法により調製された白血球集団を、Ficoll (Histopaque(登録商標)SIGMA, St-Louis, Missouri)上でBoyum に従って調製されたリンパ球調製物(Scandinavian Journal of Clinical and Laboratory Investigation 1967-1968, Suppl. 94-101. 305.293)と比較した。後者は、生存能力の損失を伴わないリンパ球調製方法の参照として認められている。
【0027】
NH4 Clを用いた方法(ORTHO DIAGNOSTIC SYSTEMS Co., Raritan, New Jersey) に従ったリンパ球の調製も含まれる。
図14中、その生存能力を、アネキシン−5(annexin−5)(WO−A−95/27903)による標識付けに従った、非壊死性又はアポトーシスの(apoptotic)、T細胞(CD3+)の培養における数に基づき証明し、そして推定した。図14は、フィトヘマグルチニン及びインターロイキン−2の影響下、時間にわたるT細胞の増殖を示している。
結論:
実施例1に従った溶解後の生存能力は、Histopaque(登録商標)分離後のものと実質的に同一である。一方、塩化アンモニウムを用いた溶解後の生存能力は大きく減少される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、対照−溶解試薬なし、について得られた結果を表す。
【図2】図2は、溶解から10分後にホスフェート・バッファー(PBS)による洗浄を行うことにより、実施例1の試薬について得られた結果を表す。
【図3】図3は、溶解から10分後に洗浄を行うことにより実施例3の試薬について得られた結果を表す。
【図4】図4は、溶解から10分後に洗浄を行うことにより、ORTHO DIAGNOSTIC SYSTEMS INC. 試薬、参照770521−溶解剤=NH4 Clについて得られた結果を表す。
【図5】図5は、実施例2の試薬について得られた結果を表す。
【図6】図6は、実施例4の試薬について得られた結果を表す。
【図7】図7は、0.3%のHCHOがそれに添加されたところのORTHO DIAGNOSTICS 試薬について得られた結果を表す。
【図8】図8は、実施例1の試薬であるが洗浄を伴わないものについて得られた結果を表す。
【図9】図9は、実施例3の試薬であるが洗浄を伴わないものについて得られた結果を表す。
【図10】図10は、ORTHO DIAGNOSTICS 試薬であるが洗浄を伴わないものについて得られた結果を表す。
【図11】図11は、実施例2の試薬であるが洗浄を伴わないものについて得られた結果を表す。
【図12】図12は、実施例4の試薬であるが洗浄を伴わないものについて得られた結果を表す。
【図13】図13は、0.3%HCHOがそれに添加されたところのORTHO DIAGNOSTICS 試薬であるが洗浄を伴わないものについて得られた結果を表す。
【図14】図14は、インターロイキン−2とフィトヘマグルチニンを含む培養基中でのT細胞の増殖による溶解後の細胞生存能力の証明を表す。培養の日数を横軸上に表し、そして生きているCD3細胞の数を縦軸上に示す(106 細胞)。三角、丸、と四角は、それぞれ、NH4 Cl、実施例1、及びFicollを用いて得られた結果を表す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
白血球の細胞数測定の分析のために使用されることができる溶解試薬であって、その溶解剤が4〜9のpHにおいて使用される、イミダゾリジン及びイミダゾリン、モルフォリン、ピペリジン及びピロリジンから成る群から選ばれる飽和窒素含有複素環化合物であることを特徴とする前記試薬。
【請求項2】
前記窒素含有複素環化合物がpH5〜8において使用されることを特徴とする、請求項1に記載の溶解試薬。
【請求項3】
前記の使用される窒素含有複素環化合物が単環であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の溶解試薬。
【請求項4】
前記の使用される窒素含有複素環化合物が3〜8炭素原子を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶解試薬。
【請求項5】
前記窒素含有複素環化合物が、0.01〜0.2Mのモル濃度で存在することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶解試薬。
【請求項6】
前記所望のpHを与えるために使用される前記化合物が、そのアニオンとしてクロリドを含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の溶解試薬。
【請求項7】
前記所望のpHを与えるために使用されるアニオンとは別に、炭酸イオン、炭酸水素イオン又はホウ酸イオンである対イオンを含むことを特徴とする、請求項6に記載の溶解試薬。
【請求項8】
有効量の緩衝液化剤を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の溶解試薬。
【請求項9】
有効量の抗凝血剤を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の溶解試薬。
【請求項10】
脂肪族アルデヒドを含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の溶解試薬。
【請求項11】
7.0のpHにおいて0.15Mの塩化ピロリジン、0.04Mのホウ酸、0.0001MのEDTA、及び0.005MのHEPESの混合物を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の溶解試薬。
【請求項12】
抗凝血剤により処理される全血のサンプルが、請求項1〜11のいずれか1項に記載の溶解試薬の作用を受ける、赤血球を溶解させる方法。
【請求項1】
白血球の細胞数測定の分析のために使用されることができる溶解試薬であって、その溶解剤が4〜9のpHにおいて使用される、イミダゾリジン及びイミダゾリン、モルフォリン、ピペリジン及びピロリジンから成る群から選ばれる飽和窒素含有複素環化合物であることを特徴とする前記試薬。
【請求項2】
前記窒素含有複素環化合物がpH5〜8において使用されることを特徴とする、請求項1に記載の溶解試薬。
【請求項3】
前記の使用される窒素含有複素環化合物が単環であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の溶解試薬。
【請求項4】
前記の使用される窒素含有複素環化合物が3〜8炭素原子を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶解試薬。
【請求項5】
前記窒素含有複素環化合物が、0.01〜0.2Mのモル濃度で存在することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶解試薬。
【請求項6】
前記所望のpHを与えるために使用される前記化合物が、そのアニオンとしてクロリドを含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の溶解試薬。
【請求項7】
前記所望のpHを与えるために使用されるアニオンとは別に、炭酸イオン、炭酸水素イオン又はホウ酸イオンである対イオンを含むことを特徴とする、請求項6に記載の溶解試薬。
【請求項8】
有効量の緩衝液化剤を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の溶解試薬。
【請求項9】
有効量の抗凝血剤を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の溶解試薬。
【請求項10】
脂肪族アルデヒドを含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の溶解試薬。
【請求項11】
7.0のpHにおいて0.15Mの塩化ピロリジン、0.04Mのホウ酸、0.0001MのEDTA、及び0.005MのHEPESの混合物を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の溶解試薬。
【請求項12】
抗凝血剤により処理される全血のサンプルが、請求項1〜11のいずれか1項に記載の溶解試薬の作用を受ける、赤血球を溶解させる方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−224696(P2008−224696A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−163866(P2008−163866)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【分割の表示】特願平11−127385の分割
【原出願日】平成11年5月7日(1999.5.7)
【出願人】(591069237)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【分割の表示】特願平11−127385の分割
【原出願日】平成11年5月7日(1999.5.7)
【出願人】(591069237)
【Fターム(参考)】
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