説明

走査型光学装置

【課題】偏角を十分に得ることができ、射出されるレーザ光に影響を及ぼすことなくレーザ光が走査され、何らかの要因で走査部が停止した場合に、レーザ光が装置外部の一点を照射し続けるのを防止することが可能な走査型光学装置を提供する。
【解決手段】レーザ光を射出する光源装置11と、印加電圧の大きさに応じて屈折率分布を変化させることによって、光源装置11から射出されるレーザ光を走査する電気光学素子12と、電圧無印加時の電気光学素子12から射出されたレーザ光の光路上のレーザ光の走査範囲の端部側に配置された遮光部材13とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査型光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プロジェクタの高画質化や小型化の機運が高まり、さらに半導体レーザの高出力化や青色レーザや緑色レーザの登場により、レーザ光を射出するレーザ光源を備えたプロジェクタやディスプレイ開発の動きが活発化している。これらは、光源の波長域が狭いため、非常に色再現範囲を広くすることが可能である。また、レーザ光源を備えたプロジェクタやディスプレイは、装置全体の小型化や構成要素の削減も可能であることから、次世代の表示装置として大きな可能性を秘めている。また、レーザ光源は、従来の超高圧水銀ランプなどの放電ランプに比べて発光効率も高く、機器の省電力化にも効果があると考えられる。
【0003】
レーザ光源装置を用いた表示装置としては、レーザ光を2次元走査して各ビームの強度を変調させ映像を生成するものが考えられる。このような表示装置は、例えば、RGBそれぞれの異なるレーザ光源装置より射出した光線を合成して一本の光線にした後、この光線を1つの光走査デバイスで走査することによってスクリーン等に映像表示する。
【0004】
ところで、レーザ光源を用いて十分に視認し得る画像を表示するためには、レーザ光源から射出されるレーザ光の強度をある程度以上に大きくする必要が生じる。その結果、画像表示装置の走査光学系が何らかの要因により停止した場合、レーザ光が1点を照射し続けて、被投射面の損傷を引き起こすおそれが生じる。また、この状態で光路に人間の目が入ってしまった場合にも、非常に危険となる。このため、走査部が何らかの故障で停止した場合、レーザ光が装置の筐体から外部に射出されるのを防止するプロジェクタが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
この特許文献1に記載のプロジェクタは、レーザ光源と、走査部と、走査部を所定位置で停止させて保持する保持部とを備えている。このプロジェクタでは、保持部により、走査部に絶えず負荷が与えられている。そして、走査部が何らかの要因で停止したときに、強制的にレーザ光が筐体の開口部の外側に向くように、走査部に負荷が加わるようになっている。このようにして、走査部の走査動作が正常に行われない状態にあるときには、保持部により、レーザ光がプロジェクタの筐体の外部へ射出されることを防止している。
【0005】
また、走査部としては、十分なスキャン速度を得られることからMEMSスキャナが用いられている。MEMSスキャナの駆動には静電力を利用したものや、圧電素子が用いられている。
【特許文献1】特開2004−312347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の技術には以下のような課題が残されている。すなわち、上記特許文献1に記載の表示装置では、走査部が何らかの故障で停止した場合、走査部に外力を与えて光軸を外し、レーザ光が筐体から外部に射出されるのを防止しているが、この方法では構成が複雑になるため、実用的には困難である。
また、MEMSミラーは一般に往復回転運動を行うため、走査部としてMEMSミラーを用いた場合、MEMSミラーのトーションバーの破損がなければ、中立位置はスキャン範囲の中心となる。例えば、この中立位置に遮光板を設けた場合、スキャン範囲の中心を使うことができなくなるため、表示性能が低下してしまう。さらに、MEMSスキャナは、一般に偏角と走査速度との両立は難しく、走査速度を得るのに十分な偏角を得ることができない。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、偏角を十分に得ることができ、射出されるレーザ光に影響を及ぼすことなくレーザ光が走査され、何らかの要因で走査部が停止した場合に、レーザ光が装置外部の一点を照射し続けるのを防止することが可能な走査型光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の走査型光学装置は、レーザ光を射出する光源装置と、印加電圧の大きさに応じて屈折率分布を変化させることによって、前記光源装置から射出されるレーザ光を走査する電気光学素子と、電圧無印加時の前記電気光学素子から射出されたレーザ光の光路上であり、レーザ光の走査範囲の端部側に配置された遮光部材とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る走査型光学装置では、電気光学素子に電圧を印加することにより、電気光学素子の屈折率分布が電界方向に向かって連続的に増加あるいは減少する。このため、電気光学素子の内部に生じる電界と垂直な方向に進行する光は、屈折率が低い側から高い側に向かって曲げられる。
また、遮光部材はレーザ光の走査範囲の端部側に配置されているため、電気光学素子が正常に光を走査している間は、装置から射出されるレーザ光に与える影響を最小限に抑えることができる。したがって、遮光部材は、走査範囲に影響を及ぼすことがないので、レーザ光は良好に走査される。
【0010】
ここで、電気光学素子が何らかの要因で故障した場合、電気光学素子には電圧が印加されていない状態となり、レーザ光の走査が停止する。このとき、遮光部材は電圧が印加されていないときの電気光学素子から射出された光の光路上に配置されているため、電気光学素子から射出されたレーザ光が遮光部材によって遮られることになる。したがって、レーザ光が、装置外部のある部分(一点)を照射し続けることを防止することができる。
なお、本発明で言う故障とは、電圧無印加状態となる故障を想定している。
【0011】
また、本発明の走査型光学装置は、前記遮光部材が、電圧印加時の前記電気光学素子に電界が生じたときに前記電気光学素子から射出されるレーザ光の走査範囲にかからない位置に配置されていることが好ましい。
【0012】
本発明に係る走査型光学装置では、遮光部材が電気光学素子から射出されたレーザ光の走査範囲を妨げない大きさであるため、電気光学素子が正常に光を走査している間は、レーザ光を遮ることはない。したがって、遮光部材がレーザ光の走査範囲に影響を及ぼすことがないので、レーザ光の走査範囲が狭まってしまうなどの不具合が生じることがない。
【0013】
また、本発明の走査型光学装置は、前記遮光部材を冷却する冷却手段が設けられていることが好ましい。
本発明に係る走査型光学装置では、冷却手段により遮光部材を冷却することにより、遮光部材に照射されたレーザ光の熱を放熱することができる。これにより、遮光部材が加熱されることを防止することが可能となる。
【0014】
また、本発明の走査型光学装置は、前記遮光部材に、前記電気光学素子から射出されたレーザ光を前記電気光学素子の入射端面に向かって反射させる反射部が設けられ、
前記電気光学素子の入射端面側には、前記反射部において反射されたレーザ光を吸収する光吸収部が設けられていることが好ましい。
【0015】
本発明に係る走査型光学装置では、電気光学素子が何らかの要因で故障した場合、レーザ光の走査が停止する。このとき、電気光学素子から射出されたレーザ光は遮光部材に設けられた反射部により電気光学素子の入射端面に向かって反射される。そして反射部において反射されたレーザ光の熱は、電気光学素子の入射端面側に設けられた光吸収部において吸収される。
特に、本発明は、レーザ光の出力が強く遮光部材に照射されたレーザ光の熱を放熱する必要がある場合に有効である。すなわち、電気光学素子の射出端面側では、レーザ光の走査を行っているため、遮光部材を冷却するのに必要な大きなスペースを確保するのが難しい。そこで、大きなスペースを確保することができる入射端面側に光吸収部を配置する。これにより、比較的大きな光吸収部を置くことができるため、レーザ光の熱を効率良く放熱することが可能となる。
【0016】
また、本発明の走査型光学装置は、前記光吸収部を冷却する冷却手段が設けられていることが好ましい。
本発明に係る走査型光学装置では、冷却手段により光吸収部が吸収したレーザ光の熱を放熱する。この場合、電気光学素子の入射端面側ではスペースを確保することができるので、光吸収部を冷却するための冷却手段を配置し易くなる。したがって、このスペースを有効利用することにより、装置の小型化を実現することが可能となる。
【0017】
また、本発明の走査型光学装置は、前記遮光部材には、レーザ光を検知する光検知手段が設けられ、前記光検知手段によるレーザ光の検知に応じて前記光源装置の駆動を制御する制御部が設けられていることが好ましい。
【0018】
本発明に係る走査型光学装置では、電気光学素子が何らかの要因で故障した場合、レーザ光の走査が停止する。このとき、電気光学素子から射出されたレーザ光は遮光部材に設けられた光検知手段によりレーザ光が検知される。ここで、例えば、光検知手段により検知されたレーザ光の強度が予め定められた値よりも大きい場合は、制御部により光源装置の駆動を停止する。このように、レーザ光の走査が停止した場合、光源装置の駆動を停止させることにより、遮光部材の破損やレーザ光源の消費電力の浪費を抑え、さらに人体への危険性を低減させることができる。
【0019】
また、本発明の走査型光学装置は、前記電気光学素子がKTa1−xNb3の組成を有することが好ましい。
【0020】
本発明に係る走査型光学装置では、電気光学素子が、高い誘電率を有する誘電体材料であるKTa1−xNb3(タンタル酸ニオブ酸カリウム)の組成を有する結晶である(以下、KTN結晶と称す)。KTN結晶は、立方晶から正方晶さらに菱面体晶へと温度により結晶系を変える性質を有しており、立方晶においては、大きい2次の電気光学効果を有することが知られている。特に、立方晶から正方晶への相転移温度に近い領域では、比誘電率が発散する現象が起こり、比誘電率の自乗に比例する2次の電気光学効果はきわめて大きい値となる。したがって、KTa1−xNb3の組成を有する結晶は、他の結晶に比べて屈折率を変化させる際に必要になる印加電圧を低く抑えることが可能となる。これにより、省電力化を実現可能な電気光学素子を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明に係る走査型光学装置の実施形態について説明する。なお、以下の図面においては、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0022】
[第1実施形態]
走査型光学装置1は、レーザ光を射出する光源装置11と、光源装置11から射出されたレーザ光を走査する電気光学素子12と、電気光学素子12の射出側に配置された遮光板(遮光部材)13とを備えている。
【0023】
電気光学素子12は、図1(a)に示すように、第1電極16と、第2電極17と、光学素子18とを備えている。
光学素子18は、電気光学効果を有する誘電体結晶(電気光学結晶)であり、本実施形態ではKTN(タンタル酸ニオブ酸カリウム、KTa1−xNb3)の組成を有する結晶材料で構成されている。また、光学素子18は、図1(b)に示すように、直方体形状であり、光学素子18の上面18aには第1電極16が配置され、下面18bには第2電極17が配置されている。この第1電極16及び第2電極17には、電圧を印加する電源Eが接続されている。また、第1電極16及び第2電極17は、図1(a)に示すように、光学素子18内を進行するレーザ光Lの進行方向の寸法がほぼ同じである。これにより、第1電極16と第2電極17との間の光学素子18に電界が生じるようになっている。
【0024】
また、電気光学素子12が何らかの要因で故障した場合、第1電極16及び第2電極17には電圧が印加されていない状態となる。すなわち、第1電極16及び第2電極17に電圧が印加されていないとき、電気光学素子12を進行するレーザ光は光学素子18内を直進し、光学素子18の射出端面18dから射出される。なお、電圧が印加されていないときの光源装置11から射出されたレーザ光の光路をA1とする。
【0025】
遮光板13は、遮光性を有する材料から形成されている。遮光板13の材料としては、例えば、光の反射を抑えた染料や顔料で着色された難燃性のものである。また、遮光板13はレーザ光が照射されるため、熱伝導率が高い材料や、光吸収性を有する材料からなることが好ましい。さらに、遮光板13は、図1(a)に示すように、光学素子18の射出端面18d側の光路A1上で、かつ、光源装置11から射出されたレーザ光のスキャン範囲の外側に配置されている。さらに、遮光板13の大きさは、光学素子18に初期値S1の電圧を印加したときに、光学素子18の射出端面18dから射出されたレーザ光のスキャン範囲を妨げない大きさであり、また、レーザスポットの径より大きくなっている。すなわち、遮光板13は通常スキャン時のレーザ光L1が当たらないように配置されている。
【0026】
また、光源装置11は、図1(a)に示すように、光学素子18の第1電極16側からレーザ光を入射させるように配置されている。
つまり、本実施形態では、電気光学素子12の屈折率分布により、光学素子18に入射したレーザ光は第2電極17側に曲げられるため、光学素子18の第1電極16側からレーザ光を入射させることにより、スキャン範囲を大きく取ることが可能となっている。
【0027】
次に、電気光学素子12の動作について説明する。
第1電極16には、電源Eにより例えば+250Vの電圧が印加され、第2電極17には、電源Eにより例えば0Vの電圧が印加される。第1,第2電極16,17に電圧を印加することで、光学素子18には第1電極16から第2電極17に向かって電界が生じる。そして、図1(a)に示すように、光学素子18の屈折率は、第1電極16側が低くなり、第2電極17側が高くなる。これにより、光学素子18の内部に生じる電界と垂直な方向に進行するレーザ光は偏向する。具体的には、屈折率が低い第1電極16側の光学素子18の入射端面18cから入射したレーザ光Lは、光学素子18の屈折率が高い第2電極17側に向かって曲げられ、射出端面18dより射出される。
【0028】
また、第1電極16に印加される電圧の波形は、例えば、図2に示すように、鋸歯状の波形である。この初期値S1の電圧を第1電極16に印加すると、図1(a)に示すように、光源装置11から射出され光学素子18を進行するレーザ光L1は、光学素子18の屈折率分布により第2電極17側に曲げられる。そして、レーザ光L1は、遮光板13に当たることなく光学素子18の射出端面18dから射出されるようになっている。また、第1電極16に印加する電圧値を、図2の電圧の波形に示すように徐々に上げ、最大の電圧値S2を印加すると、光源装置11から射出され光学素子18を進行するレーザ光L2は、図1(a)に示すように、レーザ光L1に比べて光学素子18内において大きく屈折する。そして、光学素子18の射出端面18dにおいて、レーザ光L1に比べて大きな偏角で射出される。
【0029】
このように、図2に示す波形の電圧を第1電極16に印加することで、光源装置11から射出されたレーザ光Lは、電気光学素子12によりレーザ光L1からレーザ光L2までのスキャン範囲(走査範囲)内を走査されるようになっている。すなわち、第1電極16に印加する電圧を変化させることで、光学素子18の入射端面18cから入射し射出端面18dから射出される光は1次元方向に走査される。
【0030】
本実施形態に係る走査型光学装置1では、電気光学素子12が何らかの要因で故障した場合、電気光学素子12によるレーザ光の走査が停止するが、遮光板13が光路A1上に配置されているため、電気光学素子12から射出されたレーザ光が遮光板13によって遮られることになる。したがって、レーザ光が、装置外部のある部分(一点)を照射し続けることを防止することができる。
また、遮光板13が電気光学素子12から射出されたレーザ光のスキャン範囲を妨げない大きさであるため、電気光学素子12が正常に光を走査している間は、レーザ光を遮ることはない。したがって、遮光板13がスキャン範囲に影響を及ぼすことがないので、レーザ光は良好に走査される。
【0031】
さらに、光学素子18がKTN結晶であるため、光学素子18の射出端面18dから射出される光の偏角(走査角)を大きくすることができる。しかも、KTNスキャナはMEMSスキャナと同等の速さ(マイクロ秒程度)で走査することができるので、高解像度の表示を行うことが可能となる。
つまり、本実施形態の走査型光学装置1は、偏角を十分に得ることができ、射出されるレーザ光に影響を及ぼすことなくレーザ光が走査され、何らかの要因でレーザの走査が停止した場合に、レーザ光が装置外部の一点を照射し続けるのを防止することが可能である。
【0032】
なお、本実施形態の走査型光学装置1には、遮光板13が吸収したレーザ光の熱を放熱するためのフィンや、冷却する冷却装置が設けられていても良い。この冷却装置は、空冷、水冷、ペルチェ等のいずれであっても良い。このように、遮光板13を冷却することにより、遮光板13に照射されたレーザ光の熱を放熱することで、遮光板13が加熱されることを防止することが可能となる。
【0033】
[第2実施形態]
次に、本発明に係る第2実施形態について、図3を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施形態において、上述した第1実施形態に係る走査型光学装置1と構成を共通とする箇所には同一符号を付けて、説明を省略することにする。
本実施形態に係る走査型光学装置20では、電気光学素子が停止したときのレーザ光を吸収する光吸収部を備える点において、第1実施形態と異なる。
【0034】
遮光板22には、当該遮光板22の電気光学素子12と対向する表面22aに反射部23が設けられている。この反射部23は、反射率の高い金属膜により形成されている。なお、反射部23は、誘電体多層膜により形成されていても良い。
また、遮光板(遮光部材)22は、反射部23に入射するレーザ光の入射角が法線に対して角度をなすように配置されている。すなわち、遮光板22の中心軸に対して、光学素子18に電圧が印加されていないときの光源装置11から射出されたレーザ光の光路A1が傾くように配置されている。これにより、電気光学素子12の射出端面18dから射出されたレーザ光は、遮光板22の反射部23によって第2電極17側に反射される。そして、反射されたレーザ光は、光学素子18の内部を通過し、入射端面18c側から射出される。つまり、遮光板22の反射部23において反射された反射光はレーザ光源11には戻らない。
また、光吸収部21は、電気光学素子12の入射端面18c側に設けられており、さらには、反射部23において反射され光学素子18の入射端面18cから射出されたレーザ光の光路上に配置されている。この光吸収部21は、十分な熱容量を持つように設計されており、レーザ光が照射され続けても損傷することはない。
【0035】
本実施形態に係る走査型光学装置20では、第1実施形態の走査型光学装置1と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施形態の走査型光学装置20では、特に、レーザ光の出力が強く遮光板22に照射されたレーザ光の熱を放熱する必要がある場合に有効である。すなわち、第1実施形態のように、電気光学素子12の射出端面18d側では、レーザ光の走査を行っているため、遮光板22を冷却するのに必要な大きなスペースを確保するのが難しい。そこで、大きなスペースを確保することができる電気光学素子12の入射端面18c側に光吸収部21を配置する。このように、電気光学素子12の入射端面18c側に光吸収部21を配置することで、レーザ光の熱を効率良く放熱することが可能となる。
【0036】
さらに、本実施形態の走査型光学装置20では、光吸収部21が吸収したレーザ光の熱を放熱するためのフィンや、冷却する冷却装置が設けられていても良い。この場合、電気光学素子12の入射端面18c側ではスペースを確保することができるので、光吸収部21を冷却するための冷却装置を配置し易くなる。したがって、このスペースを有効利用することにより、装置の小型化を実現することが可能となる。
【0037】
[第3実施形態]
次に、本発明に係る第3実施形態について、図4を参照して説明する。
本実施形態に係る走査型光学装置30では、電気光学素子が停止したときに、レーザ光の射出を停止させる機構を備える点において、第1実施形態と異なる。
【0038】
遮光板31には、当該遮光板31の電気光学素子12と対向する表面31aには光電変換を行うフォトダイオード(光検知手段)32が設けられている。
また、光源装置11及びフォトダイオード32は制御部35に接続されている。この制御部35は、フォトダイオード32により検知された光に応じて光源装置11を制御するものである。つまり、電気光学素子12が何らかの要因で故障した場合、光源装置11から射出されたレーザ光はフォトダイオード32を照射し続けるので、電気光学素子12が正常に動作している場合に比べてフォトダイオード32において検知されるエネルギーの積分値が高くなる。したがって、制御部35は、電気光学素子12の正常動作時にフォトダイオード32が検知するレーザ光の光強度値を閾値として、この閾値以上の光強度を検知した場合は、光源装置11の駆動を停止させる。また、制御部35は、フォトダイオード32が閾値以下の光強度を検知している間は光源装置11を駆動させる。
【0039】
本実施形態に係る走査型光学装置30では、第1実施形態の走査型光学装置1と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施形態の走査型光学装置30では、レーザ光の走査が停止した場合、制御部35により光源装置11の駆動を停止させることで、遮光板31にレーザ光が照射し続けることを防止することが可能となる。したがって、遮光板31の損傷やレーザ光源11の消費電力の浪費を抑えることができる。さらには、遮光板31にレーザ光が照射され続けることがないので、レーザ光の熱が蓄積されることがない。したがって、遮光板31を冷却する必要がなくなるため、簡易な構成、かつ小型な走査型光学装置30を実現することが可能となる。
なお、本実施形態のフォトダイオードを第2実施形態の遮光板22に設けても良い。この構成では、何らかの要因でレーザ光の走査が停止した場合に、遮光板31の損傷をさらに防止することが可能となる。
【0040】
[第4実施形態]
次に、本発明に係る第4実施形態について、図5を参照して説明する。
第1実施形態では、単色の光源装置を用いた走査型光学装置であったが、本実施形態に係る走査型光学装置50は、3色の光源装置を用いて、スクリーンに画像を投影させる画像表示装置である。
【0041】
本実施形態に係る画像表示装置50は、図5に示すように、赤色のレーザ光を射出する赤色光源装置(光源装置)50Rと、緑色のレーザ光を射出する緑色光源装置(光源装置)50Gと、青色のレーザ光を射出する青色光源装置(光源装置)50Bと、クロスダイクロイックプリズム51と、クロスダイクロイックプリズム51から射出されたレーザ光をスクリーン55の水平方向に走査する電気光学素子12と、電気光学素子12から射出されたレーザ光をスクリーン55の垂直方向に走査するガルバノミラー52とを備えている。
【0042】
次に、以上の構成からなる本実施形態の画像表示装置50を用いて、画像をスクリーン55に投射する方法について説明する。
各光源装置50R,50G,50Bから射出されたレーザ光は、クロスダイクロイックプリズム51で合成され電気光学素子12に入射する。電気光学素子12に入射したレーザ光は、スクリーン55の水平方向に走査され、ガルバノミラー52により垂直方向に走査されてスクリーン55に投影される。
【0043】
本実施形態に係る画像表示装置50では、レーザ光の走査が停止した際、遮光板13によりレーザ光が遮られるため、スクリーン55のある部分(一点)を照射し続けることを防止することが可能となる。
なお、ガルバノミラー52に代えて、安価なポリゴンミラーにより走査を行っても良い。すなわち、電気光学素子12の走査の精度が良いため、画像表示装置としては、ガルバノミラーほど精度の良いミラーを用いなくても、コストを抑えつつ高性能な画像表示を行うことが可能となる。
【0044】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
なお、例えば、第1〜第3実施形態の走査型光学装置をレーザプリンタに応用することも可能である。
また、上記各実施形態では、遮光板をレーザ光のスキャン範囲外に設けたが、画像表示領域外までレーザ光を走査する場合、遮光板がスキャン範囲内であっても画像に寄与しない端部、すなわち、画像表示領域外のレーザ光が当たって配置されていても構わない。
また、電気光学素子としてKTN結晶を例に挙げて説明したが、これに限ることはなく、屈折率が線形的に変化する素子であれば良い。例えば、LiNbO(ニオブ酸リチウム)等の電気光学効果を有する誘電体結晶であっても良いが、LiNbO3等の組成を有する結晶は、KTN結晶に比べて走査偏角が小さく、また、駆動電圧が高いため、KTN結晶を用いることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1実施形態に係る走査型光学装置を示す平面図である。
【図2】図1の電気光学素子の電極に印加する電圧の波形を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る走査型光学装置を示す平面図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る走査型光学装置を示す平面図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係る走査型光学装置を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
1,20,30…走査型光学装置、11…光源装置、13,22,31…遮光板(遮光部材)、23…反射部、32…フォトダイオード(光検知手段)、50…画像表示装置(走査型光学装置)50R…赤色光源装置(光源装置)、50G…緑色光源装置(光源装置)、50B…青色光源装置(光源装置)




【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を射出する光源装置と、
印加電圧の大きさに応じて屈折率分布を変化させることによって、前記光源装置から射出されるレーザ光を走査する電気光学素子と、
電圧無印加時の前記電気光学素子から射出されたレーザ光の光路上であり、レーザ光の走査範囲の端部側に配置された遮光部材とを備えることを特徴とする走査型光学装置。
【請求項2】
前記遮光部材が、電圧印加時の前記電気光学素子に電界が生じたときに前記電気光学素子から射出されるレーザ光の走査範囲にかからない位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の走査型光学装置。
【請求項3】
前記遮光部材を冷却する冷却手段が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の走査型光学装置。
【請求項4】
前記遮光部材に、前記電気光学素子から射出されたレーザ光を前記電気光学素子の入射端面に向かって反射させる反射部が設けられ、
前記電気光学素子の入射端面側には、前記反射部において反射されたレーザ光を吸収する光吸収部が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の走査型光学装置。
【請求項5】
前記光吸収部を冷却する冷却手段が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の走査型光学装置。
【請求項6】
前記遮光部材には、レーザ光を検知する光検知手段が設けられ、
前記光検知手段によるレーザ光の検知に応じて前記光源装置の駆動を制御する制御部が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の走査型光学装置。
【請求項7】
前記電気光学素子がKTa1−xNb3の組成を有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の走査型光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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