説明

走査線補間回路

【目的】本発明の目的は、動画像においても画質劣化の生じない走査線補間信号を得るための走査線補間回路を提供することにある。
【構成】本発明は、インタレースされたテレビ信号の走査線を補間する回路において、相続く2フィールドのフレーム差信号を利用して被写体の動き情報を抽出し、この動き情報を用いて上記走査線を補間する。
【効果】動画像を誤って静止部分とみなして処理することによる見苦しい画質劣化を避けることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は走査線補間回路に係り、特に動き検出手段を有する走査線補間回路に関する。
【0002】
【従来の技術】インタレース走査されたテレビ画像では、文字等の細い横縞部分等でフリッカが生じる等の妨害がある。これを改善するため、走査線を補間して、2フィールドの走査線を同時に表示してインタレース走査をやめて、順次走査のテレビ画像とする方式がある。この場合、補間走査線の信号は前フィールドの信号から補間される。静止した被写体の場合にはこれによりフリッカのない高品質の画像が表示できるが、被写体が動くと、1/60秒前のフィールド画像と現在のフィールド画像を重ねて表示することになるため、動いた部分のエッジ櫛の歯状になり、見苦しい画質劣化となる。
【0003】この画質の妨害を避けるため、テレビ信号から被写体の動き情報を抽出し、動画部分では前フィールドからの補間の代りに、現在のフィールド画像の隣接走査線の平均値で補間走査線の信号を作る方法が試みられている。
【0004】図1は順次送られてくるテレビ画像((i−2),(i−1),iフィールド)の3枚を示す。1枚の画像の走査線数はインタレース走査のため525/2本であり、図ではその走査線の一部を実線(1,2,3)で示す。このインタレース走査されたテレビ画像から走査線数を倍増して各画像が525本の走査線から成る順次走査のテレビ画像を作る。このための補間走査線4を図に破線で示す。補間走査線の信号は静止画像であれば、前フィールドの垂直方向(V方向)に同一位置の走査線3から補間し、動画像では同一フィールドの上下の走査線1,2の平均値により補間して作成する。図2はこの補間の様子を時間軸tと垂直軸Vとにより表したもので、o印がインタレースされた走査線を、●印は補間走査線を示す。番号1,2,3,4は図1に示した同一走査線を表わす。
【0005】被写体の動きの有無は、図2に2重の矢印で示すように、2フィールド(1フレーム)前の同一位置の走査線同志を比較し、差が小さければ静止画像と判定し、差が大きければ動画像と判定する。これにより、補間走査線4の信号を前フィールドの走査線3あるいは同一フィールドの走査線1と2の平均値に切換えて得る。
【0006】上述した信号処理方式で、例えば図3に示すような画像すなわち、3本の走査線から成る黒い画像5が上方へ移動している場合について考える。図4は時間tと垂直軸Vでこれを表わしたもので、図ではフィールド周期当り3本の速さで上方に移動していることを示す。この場合、領域AびCでは、1フレーム前の走査線との差があるため、動画像とみなされ、補間走査線は図示のように同一フィールドの上下の走査線の平均値で補間される。一方、領域Bではiフィールドと、(i−2)フィールドの走査線の値が等しいため、静止画像とみなされ、(i−1)フィールドの走査線により補間が行なわれる。従って、領域Bでは、iフィールドの明るい背景に(i−1)フィールドの黒い走査線が補間される。その結果、第iフィールドの順次走査変換画像は図5R>5に示すように、上方に領域Aの黒い画像7があり、その下側(領域B)に1本おきに黒い画像8,9が現われ、目障りな画質劣化となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は上述した問題点を解決し、動画像においても画質劣化の生じない走査線補間信号を得るための走査線補間回路を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成するため、インタレースされたテレビ信号の走査線を補間する回路において、相続く2フィールドのフレーム差信号を利用して被写体の動き情報を抽出し、この動き情報を用いて上記走査線を補間することを特徴としている。
【0009】
【実施例】以下、本発明で用いる動き検出回路の原理を図6を用いて述べる。図6は相続く4フィールドの走査線の配置を時間軸t及び垂直軸Vで示したもので、図4の領域Bに相当する部分を表わす。補間走査線4の補間モードは、走査線1,2のフレーム差信号11,12と、更に前フィールドの同じ位置の走査線3のフレーム差信号13の大小も考慮して、この3ヶのフレーム差信号11,12,13が全て小さい場合のみ、静止画像であると判定し、補間走査線4の信号は前フィールドの走査線3から補間し、それ以外は動画像と判断して、同一フィールドの上下の走査線1,2の平均値で補間する。同図の補間走査線4の場合は、フレーム差信号11,12は小さいが、信号13は大きいため動画像と判定され、走査線1と2の平均値で補間される。その結果、図5R>5に示した8,9のような画質劣化は生じない。
【0010】図6の実施例ではiフィールドの補間走査線の信号を得るためにi及び(i−1)フィールドの画像信号を用いる。一方、補間処理モードを切換えるための被写体の静/動検出には、(i−1),(i−2),(i−3)フィールドの信号を利用している。このため静/動判定結果と補間処理との間の時間のずれが大きく、正しい静/動適応処理がなされない場合がある。
【0011】(i−3)〜iフィールドの静/動判定結果を用いて、第(i−1)フィールドの補間処理を行なえば、補間処理には第(i−2),(i−1)フィールドの信号が使われ、動き判定にはその前後の(i−3),iフィールドの信号が使われることになり、動き判定結果とそれを用いた補間処理との時間ずれは少なくほゞ正しい動き適応処理が実現できる。すなわち図7の(i−1)フィールドの補間走査線20の信号の静/動判定を走査線14,17の差信号、15,19の差信号及び16,18の差信号を利用して判定すれば、最大時間間隔は2フィールド周期となり補間演算と静/動判定の時間ずれは小さい。
【0012】図8は補間走査線20の信号を走査線14,17の平均値及び、走査線15,16の平均値の混合比を静/動判定結果により得た動き係数k(01)により変化させて算出する回路構成の1例を示す。同図において、フィールドメモリ21,23,24及びラインメモリ22,25を図示のように継続接続すると、その入出力信号の時間/空間の位置関係は図7の走査線14〜19の信号となる。補間走査線20の信号(20)は加算回路26,28,32及び係数回路27,29,乗算回路30,31とにより、次式のように算出される。
【0013】


ただし(01)ここで、動き係数kは、静止画像部分では1に近づき、動画部分では0に近づくものとする。動き検出回路は、減算回路33,35,37,絶対値化回路34,36,38及び加算回路39,係数変換回路40とで構成され、3ヶのフレーム差信号[(14)−(17)],[(15)−(19)],[(16)−(18)]の絶対値を加算した信号が小さければkを1とし、大きくなるに従いkを0に近づける係数変換回路40の出力として動き係数kが得られる。
【0014】動き係数kは0と1の間のいくつかの値をとりうるが、乗算回路30,31を省き回路構成を簡単にするため、kを0と1の2値に限定する場合がある。この場合、乗算回路30,31が除去できると共に加算回路32はスイッチに置換できる。又、フレーム差信号の絶対値信号(34,36,38の出力信号)夫々の静/動判定結果を論理和することにより、加算回路39,係数変損回路40をおきかえることができる。
【0015】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、インタレースされた画像の動き情報を相続く2フイールドのフレーム差信号から抽出しているため、動画像を誤って静止部分とみなして処理することによる見苦しい画質劣化を避けることができ、画質劣化の生じない走査線補間処理が実現できる。その結果、一般テレビ画像を極めて高画質に表示できる高画質化テレビ受像機の実現が可能となる等の効果がある。
【0016】
【図面の簡単な説明】
【図1】テレビ画像の3次元モデル
【図2】従来の動き適応形走査線補間処理の説明図
【図3】動画像の1列
【図4】従来の走査線補間処理により得られる画質劣化の画像例
【図5】従来の走査線補間処理により得られる画質劣化の画像例
【図6】本発明の動き判定処理の動作説明図
【図7】本発明の動き判定処理の動作説明図
【図8】本発明の実施例の構成図
【符号の説明】
21,23,24…フィールドメモリ、22,25…ラインメモリ、26,28,32,33,35,37,39…加(減)算回路、27,29…係数回路、30,31…乗算回路、40…動き係数変換回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】インターレース走査されたテレビ信号の走査線を画像信号の動きを表わす係数を用いて補間する回路において、上記動きを表わす係数は、あるフィールドにおける補間すべき走査線の直上の走査線のフレーム差信号と、上記補間すべき走査線の直下の走査線のフレーム差信号と、上記フィールドの直前フィールド及び直後フィールドのうちの一方のフィールドにおける上記補間すべき走査線と同一位置の走査線のフレーム差信号の大きさに基づいて求めることを特徴とする走査線補間回路。

【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【公開番号】特開平5−207431
【公開日】平成5年(1993)8月13日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−34733
【分割の表示】特願昭58−134326の分割
【出願日】昭和58年(1983)7月25日
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)