走行レールの据付方法及びその据付構造
【課題】時間が足りないことを原因として走行レールの高さ調整が十分に行えないなどの作業工程の不具合を解消し、好ましくは必要以上に大型の重機なども要しない効率的な走行レールの据付方法及びその据付構造を提供する。
【解決手段】走行レール3を収納するための凹部22が長手方向に沿って形成された基礎部11、21を形成する基礎部形成工程と、上記走行レールを凹部に収納して、上記凹部に走行レールを仮固定するレール仮締結具4によって、上記走行レールを仮固定する走行レール仮固定工程と、上記レール仮締結具を取り外した後に、上記走行レールの高さ調整して走行レールを再設置して硬化樹脂33を注入する走行レール本固定工程とを有する。
【解決手段】走行レール3を収納するための凹部22が長手方向に沿って形成された基礎部11、21を形成する基礎部形成工程と、上記走行レールを凹部に収納して、上記凹部に走行レールを仮固定するレール仮締結具4によって、上記走行レールを仮固定する走行レール仮固定工程と、上記レール仮締結具を取り外した後に、上記走行レールの高さ調整して走行レールを再設置して硬化樹脂33を注入する走行レール本固定工程とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現在運行中の事業線の軌道を除去して既設線の走行レールを据え変える際の走行レールの据付方法あるいは新規線の走行レールの据付方法やそれらの据付構造に関するものであり、特に、走行レールを硬化樹脂により固定する樹脂固定軌道式の走行レールの据付方法や据付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂固定軌道は、一般的に鉄筋コンクリートスラブからなる基礎部の長手方向に沿って形成された凹部に走行レールが収容されて、硬化樹脂を注入硬化することによって固定されており、犬釘やボルトなどで枕木に固定した場合と異なって樹脂によって走行レールが連続的に支持されるため、振動の発生を抑えることができ、レールの編摩耗も生じる恐れがない等の利点が多い(特許文献1参照)。
【0003】
そして、この樹脂固定軌道は、路盤工後の現場に予め工場などで製作した走行レールの敷設方向に沿って凹部が形成されたプレキャスト版の基礎部を設置して、この凹部に走行レールを収容して樹脂を注入することにより走行レールを据え付けるプレキャスト型の手法によっても、あるいは路盤工後にコンクリートを打設して基礎部を施設し、同様に凹部に走行レールを収容して樹脂を注入することにより走行レールを据え付ける現場施工型の手法によっても施工可能である。
【0004】
しかしながら、前者のプレキャスト型の手法では、基礎部の荷重負担が大きいため、基礎部を設置する際に大型の重機などが必要となり、作業性が悪く、重機や人材を確保するための日程調整などに不要な労力を要することとなる。
また、後者の現場施工型の手法では、路盤工、コンクリートの打設および樹脂の硬化のいずれにも時間を要することとなる。このため、現在運行中の犬釘等で走行レールが枕木に固定された既存の軌道を樹脂固定軌道に変更する場合や既存の樹脂固定軌道の走行レールを据え変える場合にも、各作業工程の時間を少しずつ省いて行うなどして夜間の運行停止時間に短時間で施工する必要がある。従って、路盤工の際の不陸整正や締硬めにも、また、コンクリートの養生にも十分な時間をかけることができないのみならず、走行レールの高さを調整することもままならない状態である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−268701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、時間が足りないことを原因として走行レールの高さ調整が十分に行えないなどの作業工程の不具合を解消し、好ましくは必要以上に大型の重機なども要しない効率的な走行レールの据付方法及びその据付構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、請求項1に記載の発明に係る走行レールの据付方法は、走行レールを収納するための凹部が長手方向に沿って形成された基礎部を形成する基礎部形成工程と、上記走行レールを上記凹部に収納して、上記凹部に走行レールを仮固定するレール仮締結具によって、上記走行レールを仮固定する走行レール仮固定工程と、上記レール仮締結具を取り外した後に、上記走行レールの高さ調整して当該走行レールを再設置し、上記凹部に硬化樹脂を注入することにより上記走行レールを固定する走行レール本固定工程とを有することを特徴としている。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、上記基礎部形成工程において、走行レールを収納するための凹部が長手方向に沿って形成された矩形柱状のトラフを、当該トラフの底部に対応する溝が形成されたブロック部と後工程にてコンクリートが打設される配筋部とを有する基礎ブロックの上記溝に設置し、上記走行レール仮固定工程において、上記トラフに埋設されてその下面から垂下するアンカーボルトを、上記基礎ブロックに形成された穴に挿入して上記溝にモルタルを充填し、次いで、上記走行レールを凹部に収納して、上記レール仮締結具を上記凹部内に突出する上記アンカーボルトによって固定することにより、上記走行レールを仮固定し、上記走行レール仮固定工程と上記走行レール本固定工程との間に、上記基礎ブロックにコンクリートを打設するコンクリート打設工程を有することを特徴としている。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の走行レールの据付方法において、上記ブロック部は、上記配筋部との境界が傾斜を有する縦断面逆テーパー形状であることを特徴としている。
【0010】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の走行レールの据付方法において、上記基礎ブロックの両側にそれぞれ枠体を設置した状態で、上記基礎部形成工程において上記トラフを設置して、上記コンクリート打設工程において上記コンクリートを打設することを特徴としている。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項2ないし4のいずれか一項に記載の走行レールの据付方法によって据え付けられた走行レールの据付構造であって、上記トラフが上記基礎ブロックの溝に設置され、当該溝に充填されたモルタルによって上記トラフと上記基礎ブロックとが上記固定具とともに固定され、かつ上記トラフの上記凹部に注入された上記硬化樹脂によって上記高さを調整した走行レールが固定されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1〜4に記載の走行レールの据付方法によれば、基礎部形成工程と走行レール本固定工程との間に走行レール仮固定工程を設けたため、走行レール仮固定工程においてレール仮締結具によって走行レールを仮固定した段階で作業を中断して、再度作業を再開することにより、走行レール本固定工程にて走行レールを本固定することができる。このため、現在運行中の既存の軌道を夜間に工事する場合にも、たとえば、作業1日目に走行レールを仮固定し、2日目に走行レールを本固定する等して作業を2段階以上にわけて行うことができる。その結果、十分に時間をかけて路盤工や走行レール本固定工程における走行レールの高さ調整などを行うことができ、各工程にて時間の制約により不具合が生じることを防止できる。さらには、基礎部形成工程により形成された基礎部によって路面などが沈下したとしても、走行レール本固定工程において走行レールの高さ調整をして固定することにより、走行レールの高さを確実に調整することができる。
【0013】
特に、請求項2に記載の走行レールの据付方法によれば、基礎部形成工程において、走行レールを収納するための凹部が長手方向に沿って形成されたトラフを、当該トラフの底部に対応する溝が形成されたブロック部と後工程にてコンクリートが打設される配筋部とを有する基礎ブロックの溝に設置するため、据付時における基礎ブロックの荷重を軽減できる。また、トラフを基礎ブロックの溝に設置して連結できることから各トラフ間の連結の際の位置合わせも容易であり、トラフの幅も走行レールを収納できれば足りるため、容易に軽量化することができる。換言すると、プレキャストのトラフとプレキャストの基礎ブロックとを組み合わせて用いるとともに、この基礎ブロックをブロック部と配筋部とによって構成することによって、最大限の軽量化を図ることができる。
従って、必要以上に大型の重機なども必要とせずに効率的に走行レールを据え付けることができる。
【0014】
さらに、走行レール仮固定工程において、レール仮締結具を固定する棒状の固定具を凹部から基礎ブロックに挿通させた後にモルタルを充填することによって、トラフと基礎ブロックとともに固定具を固定できる。従って、この固定具によって固定されたレール仮締結具によって走行レールを安定的に固定でき、走行レール仮固定工程後に安定的に車両などを走行させることができる。
加えて、走行レール仮固定工程と走行レール本固定工程との間にコンクリート打設工程を設けたため、コンクリートの養生も時間的な制約なく行うことができる。
【0015】
また、請求項3に記載の走行レールの据付方法によれば、ブロック部が配筋部との境界が傾斜を有する縦断面逆テーパー形状であるため、ブロック部間に位置する各配筋部に打設したコンクリートが硬化した後には、ブロック部と配筋部とからなる基礎ブロック部が受ける荷重によってブロック部と配筋部との境界面に圧縮応力が作用して、当該境界面から剥離してしまうことを防止でき、配筋部のコンクリートにも荷重を分散させることができる。
【0016】
さらにまた、請求項4に記載の走行レールの据付方法によれば、上記基礎ブロックの両側にそれぞれ枠体を設置した状態で、上記基礎部形成工程において上記トラフを設置することにより、トラフと基礎ブロックの荷重作用面積を広くして、路面に作用する単位面積当たりの荷重を小さくすることができ、路面沈下を抑制できる。さらに、上記コンクリート打設工程において打設したコンクリートのみに、車両を通過させた際に荷重が全て作用することを防止して、基礎部の強度を上げることができる。
【0017】
請求項5に記載の走行レールの据付構造によれば、トラフを基礎ブロックの溝に設置するため、各部材を軽量化して必要以上に大型の重機なども必要とせずに効率的に走行レールを据え付けることができ、トラフと基礎ブロックとがモルタルによって、走行レールが硬化樹脂によって固定されているため、車両を安定的に走行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る走行レールの据付方法の一実施形態の説明図であって、既設の事業線のレール撤去、掘削などの路盤工を行った後であって基礎部形成工程に移行する前の走行レールの据付構造の断面模式図である。
【図2】同、基礎部形成工程が完了した後の走行レールの据付構造の断面模式図である。
【図3】同、走行レール仮固定工程が完了した後の走行レールの据付構造の断面模式図である。
【図4】同、コンクリート打設工程が完了した後の走行レールの据付構造の断面模式図である。
【図5】同、コンクリートによる舗装が完了して、走行レール本固定工程に移行する前の走行レールの据付構造の断面図である。
【図6】同、走行レール本固定工程が完了した後の走行レールの据付構造の断面図である。
【図7】上記実施形態の据付方法を図中右側から左側に向けて断層的に示す平面図である。
【図8】図7のα−α断面図である。
【図9】図7のβ−β線視した要部の断面図である。
【図10】同、走行レール仮固定工程が完了した後の走行レールの据付構造の要部断面図である。
【図11】図10の部分拡大図である。
【図12】図11の平面図である。
【図13】図10のトラフ高さ調整治具を示すもので、(a)は縦断面図、(b)は横断面図である。
【図14】図11のレール仮締結具を示すもので、(a)は縦断面図、(b)は横断面図である。
【図15】走行レール3の両側方にパイプ20を設置する際の凹部22内の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次いで、図1〜図15に基づいて、現在運行中の事業線の軌道を除去し、既設線の走行レールを据え付ける本発明に係る走行レールの据付方法の一実施形態について説明する。
【0020】
先ず、走向レールの据付工事を開始する前に、予め走行レール3を収納するための凹部22が長手方向に沿って形成された矩形柱状のトラフ21と、鉄筋を内装したコンクリートからなるブロック部11aと鉄筋17が露出している配筋部11bとが長手方向に交互に設けられた基礎ブロック11とを工場などで製作しておく。
【0021】
この基礎ブロック11は、ブロック部11aが配筋部11bとの境界に沿う長手方向に底面側より表面側の大きい縦断面逆テーパー形状に形成されるとともに、ブロック部11aの表面には、長手方向にトラフ21の底部を入れる溝12が幅方向に間隔をあけて2ヶ所に形成されており、基礎ブロック11の両側には、それぞれブロック部11aと配筋部11bとを連結させる溝形鋼(枠体)14がボルトにより締結されている。このように、溝形鋼14によって基礎ブロック11を事前に組み立てておくことによって、設置時間も短縮化される。
【0022】
また、トラフ21の凹部22の両側壁部には、それぞれ走行レールを仮固定するレール仮締結具4を載置するために、凹部22よりも一段浅い切欠き溝23が凹部22に沿って一定間隔毎に形成されている。そして、このトラフ21には、上端部分が各切欠き溝23内に突出するとともに、下端部分がトラフ21の底面から垂下するアンカーボルト40が埋設されている。他方、基礎ブロック11のブロック部11aには、各アンカーボルト40が挿入される穴15が形成されている。さらに、トラフ21の両側部には、それぞれ水平方向に螺子の切られた穴を有する螺子筒26が埋設されている。
【0023】
次いで、本実施形態の走行レールの据付方法を順次説明すると、先ず初日の日中に既存の事業線のコンクリート舗装の掘削を行う。
次いで、図1に示すように、終電車通過後の夜間に既設の走行レールを撤去し、路盤を掘削することにより露出した栗石81上に砕石82を敷均して締硬めした後に、ポリプロピレンシート(図示を略す)を張り、砂83を敷均して締硬めをすることにより路盤工を行う。
【0024】
次に、図2に示すように、基礎部形成工程に移行し、この路盤工を行った路面に、溝形鋼14によって組み立てられた基礎ブロック11を吊り込み、据え付けた後に、この基礎ブロック11の2本の溝12に、それぞれトラフ21を吊り込み、基礎ブロック11の穴15にアンカーボルト40を挿入させて据え付ける(以上、基礎部形成工程)。
【0025】
次に、図3、図10〜図15に示すように、走行レール仮固定工程に移行して、走行レール3をトラフ21に仮固定するためのレール仮締結具4を、アンカーボルト40によって切欠き溝23に固定するとともに、トラフ21の両側部と基礎ブロック11の配筋部11bとの間にそれぞれトラフ高さ調整具5を取り付ける。
【0026】
ここで、このトラフ高さ調整具5は、山形鋼51と2対のボルト52、53からなるものであり、ボルト52を山形鋼51の水平方向の貫通孔から螺子筒26に螺合させるとともに、ボルト53を山形鋼51の鉛直方向の貫通孔に合わせて山形鋼51に溶接されたナット53aに螺合させる。そして、ボルト53を回動させることによりトラフ21を溝12から浮かせて所望の高さ(水平レベル)に固定する。
【0027】
次いで、上記トラフ21の位置決めが完了した後に、溝12に超速硬モルタル31を注入して数時間養生させることにより、トラフ21は、基礎ブロック11に間隔をおいて設けられたブロック部11a上に据え付けられる。
【0028】
そこで次に、トラフ21の凹部22に、それぞれ鋼板からなるベースプレート61とその上に高さ調整パット62とを敷いて、高さ調整パット62上に走行レール3を吊り込む。さらに、走行レール3の両側部にそれぞれ楔49を打ち込み、アンカーボルト40にレール仮締結具4を通してナット44を螺合締結する。各レール仮締結具4は、図14に示すように、底板41aおよび両側板41bからなるコ字状金具41と背板42とが一体に形成されてなり、その底板41aにアンカーボルト40用の貫通孔410が形成されている。そして、各レール仮締結具4と走行レール3との間にそれぞれ丸鋼43が配設されることにより走行レール3が仮固定され(以上、走行レール仮固定工程)、2日目の日中の車両通過が可能となる。
【0029】
次いで、図4に示すように、2日目日中に、基礎ブロック11のブロック部11a間の配筋部11bにコンクリート71を打設し(コンクリート打設工程)、養生した後に溝形鋼14を撤去し、トラフ21間やトラフ21の両側方の周囲に金網74(図7参照)を配置して、図5に示すように、コンクリート75でトラフ21の上面高さと同一になるように舗装する。その際、コンクリート75による舗装は、走行レール3を長手方向に連結する連結部を有する場合には、当該連結部を除いて行う。
【0030】
次に、2日目夜間に、走行レール本固定工程に移行して、レール仮締結具4および楔49を撤去するとともに、走行レール3、ベースプレート61および高さ調整パット62を取り外し、トラフ21の凹部22を清掃して、凹部22の底面に接着剤を塗布する。この接着剤としては、硬化剤が加えられたエポキシ樹脂が好ましく使用され、エポキシ基を2個以上含む液状のプレポリマーに硬化剤としてポリアミンを加えると常温で硬化し強い接着力を発揮するものであれば、硬化後もほとんど収縮せず、接着層の膜厚が大きくても亀裂が入らず接着力の低下しない特性を有し、凹部22底面と後述の振動吸収板63および高さ調整パット64とを確実に接着させることができるため好適とされる。
【0031】
その後、図6および図9に示すように、凹部22の底部に振動吸収板63を敷設し、当該振動吸収板63上に、走行レール3の上部の高さが所定のレベルとなるように弾性樹脂板からなる高さ調整パット64を敷く。なお、高さ調整パット64は、振動吸収板63が凹部22の長手方向全長に亘って敷設されるのに対して、矩形板状に形成されて凹部22の長手方向に向けて複数枚が互いの間に一定の隙間をあけて敷設される。
【0032】
本実施形態においては、振動吸収板63の上面から走行レール3の上面となるべきレベルの高さ寸法を、レール3の敷設方向に適宜間隔をおいて測定して、測定箇所の高さ寸法に対応する高さ調整パッド64を走行レール3の下面敷設位置に沿って間隔をおいて振動吸収板63上に載置する。その際、高さ調整パッド64として、厚さ1mm、2mm、3mmおよび5mmのものを複数枚用意して、組み合わせることにより、所定の高さに積み重ねる。
【0033】
これにより、その都度、高さ調整パット64の厚さ加工が必要なく、レール3の位置決めを正確かつ容易に調整可能である。また、高さ調整パット64が弾性樹脂板からなるため、振動吸収特性、吸音特性を有するだけでなく、後述するポリウレタンともなじみ易い。
【0034】
次いで、高さ調整パッド64の上に走行レール3を敷設する。その際、走行レール3のウェブ3aの両側方に塩化ビニル製のパイプ20を、スペーサ兼水平位置調整用リング37および適宜間隔をおいて巻き回された針金やプラスチックバンド(図15参照)38によって付設した状態で設置する。次いで、パイプ20に装着した水平位置調整用リング37と凹部22の側壁との間にプラスチック製の楔39を打ち込んで、走行レール3の水平方向の位置を調整した後に、針金やプラスチックバンド38を取り去る。その後、走行レール3の下部フランジ3bの両側部にそれぞれ楔49を打ち込む。このパイプ20は車両運行などに必要な電線や光ファイバなどの収納管として利用することが可能である。
【0035】
次いで、各トラフ21の凹部22に、コルク粉末が1〜10質量%混入し、硬化剤が加えられたセルフレベリング性を有するポリウレタン33、好ましくはポリイソシアネートプレポリマーとアミンとの混合物にコルク粉末を1〜10質量%混入したポリウレタン33を注入する。その際、ポリウレタン33を注入する前処理として、ポリウレタン33の接着強度を上げるためにプライマーを散布する。このプライマーとして、ポリウレタン33の凹部22壁面、振動吸収板63、高さ調整パット64およびレール3への接着強度を高めるべく、ポリイソシアネートを溶剤に溶解させて使用され、より好ましくは、メチレン、二塩化メチレン等に4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを20質量%程度溶解させたものが使用される。
【0036】
また、ポリウレタン33は、基礎ブロック11の幅方向の外側に位置する凹部22の壁面、すなわち、走行レール3の外側に位置する凹部22の壁面と走行レール3との間から注入する。すると、走行レール3の底部下面と振動吸収板63または高さ調整パッド64間とによって形成された隙間を介して、走行レール3の反対側、すなわち走行レール3と走行レール3の内側に位置する凹部22の壁面との間にまで入り込む。
【0037】
その際、ポリウレタン33を、走行レール3の外側に位置する凹部22の壁面と走行レール3との間のポリウレタン33の表面レベルがトラフ21の上面と同様の高さになるまで注入する。このようにしても、走行レール3と走行レール3の内側に位置する凹部22の壁面との間に入り込んだポリウレタン33の表面レベルはトラフ21の上面よりもかなり低い位置までしか入りこまない。そこで、走行レール3と走行レール3の内側に位置する凹部22の壁面との間からもポリウレタン33を継ぎ足して、そのポリウレタン33の表面レベルを走行レール3の頭部の下端部に位置するようにして、車輪のフランジウエイ機能するようにポリウレタン33が充填される。
【0038】
これによって、走行レール3の両側部だけでなく、高さ調整パッド64間における走行レール3の下部にもポリウレタン33が充填されるため、ポリウレタン33を養生して硬化させることにより凹部22内に振動吸収板63および高さ調整パッド64が固定されるととともに、走行レール3自体もウェブ3aおよび下部フランジ3bの全面が凹部22の全長にわたってそれぞれポリウレタンにより拘束されて強固に固定され、車両の走行中に発生する振動や騒音が効果的に抑制される。その後、トラフ高さ調整具5を取り外すことにより走行レールの本固定が終了し(以上、走行レール本固定工程)、3日目の日中の車両通過が可能となる。
【0039】
また、必要に応じて走行レール3を溶接により連結して、連結部をコンクリート75にて舗装し、走行レール3の連結部も上述の走行レールの本固定工程と同様にトラフ21に固定する。
【0040】
上述の方法により構成される本発明に係る走行レールの据付構造は、栗石81上に砕石82が敷均されて締固めされ、その上にポリプロピレンシートを介して砂83が敷均されて締固めされた路盤工の上に、走行レール3の敷設方向に向けて基礎ブロック11が据え付けられている。
【0041】
この基礎ブロック11には、その長手方向に向けて形成された2本の溝12内にそれぞれトラフ21が吊り込まれて、トラフ21と基礎ブロック11の接合部において、トラフ21の両側部に高さ調整具5が取り付けられることにより、トラフ21が基礎ブロック11の溝12から浮かせた状態で据え付けられている。
【0042】
そして、このトラフ21の底面から垂下されてアンカーボルト40が、基礎ブロック11に形成した穴15に挿入された状態で、トラフ21と溝12との間にモルタル31が充填されることによって、トラフ21が所望の水平レベルで基礎ブロック11に固定されるとともに、アンカーボルト40が強固にトラフ21および基礎ブロック11に固定されている。
【0043】
さらに、この基礎ブロック11は、ブロック部11aと配筋部11bに打設されたコンクリート71とが走行レール3の敷設方向に向けて交互に配設されており、このブロック部11aがレール3の敷設方向にそれぞれ底面側より表面側の大きい断面逆テーパー形状に形成されることによって配筋部11bのコンクリート71との間に傾斜境界面を有している。
【0044】
また、トラフ21の凹部22には、振動吸収板63がレールの敷設方向に連続して貼り付けられ、この振動吸収板63上に、高さ調整パッド64が走行レール3の敷設方向に互いの間に一定の隙間を有するようにして複数枚敷設され、この高さ調整パッド64上に走行レール3が両側方に塩化ビニル製のパイプ20を伴って設置され、さらに、走行レール3の両側部にそれぞれ楔49が打ち込まれた状態にて、凹部22にセルフレベリング性を有するポリウレタン33が充填されている。これにより、ポリウレタン33が走行レール3の両側部やパイプ20周りだけでなく、高さ調整パッド64間における走行レール3の下面と振動吸収板63との間にも充填される。このため、高さ調整パッド64が凹部22の底面に固定されるとともに、走行レール3自体もウェブ3aおよび下部フランジ3bの全面が凹部22の全長にわたってそれぞれポリウレタンにより連続的に拘束されて強固に固定され、車両の走行中に発生する振動や騒音が効果的に抑制され、また、走行レール3の偏摩耗も生じる恐れもない。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の走行レールの据付方法や据付構造によれば、基礎部形成工程と走行レール本固定工程との間に走行レール仮固定工程を設けたため、走行レール仮固定工程においてレール仮締結具によって走行レールを仮固定した段階で作業を中断して、再度作業を再開することにより、走行レール本固定工程にて走行レールを本固定することができる。このため、現在運行中の既存の軌道を夜間に工事する場合にも、これらの工程を複数段階にわけて行うことができる。その結果、十分に時間をかけて路盤工や走行レール本固定工程における走行レール3の高さ調整などを行うことができ、各工程にて時間の制約により不具合が生じることを防止できる。さらには、基礎部形成工程により形成された基礎ブロック11やトラフ21によって路盤が沈下したとしても、確実に走行レール本固定工程において走行レール3の高さ調整を行うことができる。
【0046】
また、予め製作したプレキャスト版のトラフ21を、予め製作したプレキャスト版の基礎ブロック11に間隔をおいて形成されたブロック部11aの溝12に吊り込み、両者の間にトラフ高さ調整具5を取り付けることによって、トラフ21を溝12から浮かせた状態で水平レベルに位置決めを行った後に、トラフ21と基礎ブロック11との間の溝12にモルタルを注入して、トラフ21を基礎ブロック11に据え付け、後工程においてブロック部11a間の配筋部11bにコンクリートを打設して基礎部とトラフ21とを一体化することにより、走行レール3を収納可能な基礎部を形成することができる。従って、路盤工を行った路面に基礎部を形成する際に、必要以上に大型の重機なども必要とせずに効率的に作業を行うことができる。
【0047】
さらには、基礎ブロック11をプレキャストのブロック部11aと当該ブロック部11a間に予め埋め込まれた鉄筋17からなる配筋部11bとによって構成し、後工程において上記配筋部11bにコンクリートを打設して一体化するとともに、プレキャストのトラフ21にも下方に突出するアンカーボルト40を埋め込み、当該アンカーボルト40を基礎ブロック11に形成した穴15に挿入してコンクリートを打設することにより基礎ブロック11と一体化している。このため、全体をプレキャストとした従来工法と同等の性能を得ることができるとともに、基礎部においてプレキャスト部材の割合を少なくして、据付時の荷重を軽減でき、さらに作業効率を高めることができる。
【0048】
また、基礎ブロック11は、予め、その両側において溝形鋼14により間隔をおいて形成された複数のブロック部11aが連結されている。このため、基礎ブロック11の設置時間を短縮でき、トラフ21と基礎ブロック11の荷重作用面積を広くして、路盤に作用する単位面積当たりの荷重を小さくすることができ、路盤沈下を抑制できる。
【0049】
これに加え、トラフ21を基礎ブロック11の溝12に据え付けるため、トラフ21を基礎ブロック11の溝12内にて連結させることができることから、各トラフ21間の連結の際の位置合わせ容易であり、トラフ21も走行レール3を収納できる幅を有すれば足りることから、容易に軽量化することができる。同様に基礎ブロック11を走行レール3の敷設方向に複数設けて連結させることもできる。
【0050】
また、この基礎ブロック11は、ブロック部11aがレール3の敷設方向にそれぞれ底面側より表面側の大きい断面逆テーパー形状に形成されることによって配筋部11bのコンクリート71との間に傾斜境界面を有し、かつブロック部11aの製作時に埋め込まれた鉄筋17を配筋部11bに突出させているため、配筋部11bのコンクリート71の硬化後には、基礎ブロック11に作用する荷重による上記傾斜境界面と鉄筋17により境界面に圧縮応力を発生させて境界面剥離を防止し、かつせん断耐力を増加させることにより、配筋部11bのコンクリート71にも荷重を分散できる。
【0051】
また、トラフ21の走行レール3を収容するための凹部22に連続して敷設した振動吸収板63上に、高さ調整パット64を走行レール3の敷設方向に互いの間に隙間を有するようにして複数枚敷設し、セルフレレベリング性を有するポリウレタン33を充填することによって、ポリウレタン33が走行レール3の両側部やパイプ20周りだけでなく、高さ調整パッド64間における走行レール3の下部にも充填される。このため、高さ調整パッド64を凹部22の底部に固定できるとともに、走行レール3自体もウェブ3aおよび下部フランジ3bの全面が凹部22の全長にわたってそれぞれポリウレタン33により連続的に拘束されて強固に固定され、車両の走行中に発生する振動や騒音が効果的に抑制でき、また、走行レール3の偏摩耗の恐れもなく、寿命の長期化も図ることができ、乗り心地のよい安全性の高いものとすることができる。
【0052】
さらに、このポリウレタン33を走行レール3の外側に位置する凹部22の壁面と走行レール3との間からの一方向から注入するため、空気の混入なども抑制できる。これに加えて、セルフレベリング性を有するポリウレタン33を使用しているために、別途上面を均すことなく、水平面を得られることから作業効率を高めることができ、また、ポリウレタン33にコルク粉末を混入させることによって、高さ調整パッド64と相俟って、車両走行中に発生する振動や騒音を効果的に抑制することができる。
【0053】
また、走行レール3のウェブ3aの両側方にパイプ20を設置したため、ポリウレタン33の樹脂を多量に使用することなく走行レール3を固定できるとともに、車両運行などに必要な電線や光ファイバなどを収容することもできる。
【0054】
なお、本発明は上述の実施形態に何ら限定されるものでなく、例えば、基礎ブロック11の配筋部11bが鉄筋17以外の素材によって構成されていてもよく、さらには、プレキャスト版のトラフ21や基礎ブロック11でなくてもよく、また、トラフ21と基礎ブロック11とによって基礎部が形成されるものでなくてもよい。さらに、上述の実施形態では、3日の日中夜に分けて作業を行ったものの基礎部形成工程、走行レール仮固定工程、走行レール本固定工程のいずれかの工程の間で作用を中断して行えば足りるものである。また、新規線の走行レールの据付方法に用いてもよく、この場合には、既設線の撤去が不要となるものの必要に応じて路盤の掘削を行い、路盤工を行う。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、現在運行中の事業線の軌道を除去して既設線の走行レールを据え変える際や、新規線の走行レールの据え付ける際に利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
3 走行レール
4 レール仮締結具
5 トラフ高さ調整具
11 基礎ブロック
12 溝
21 トラフ
22 凹部
31 超速硬モルタル
33 ポリウレタン
40 アンカーボルト(レール仮締結具4を固定する固定具)
【技術分野】
【0001】
本発明は、現在運行中の事業線の軌道を除去して既設線の走行レールを据え変える際の走行レールの据付方法あるいは新規線の走行レールの据付方法やそれらの据付構造に関するものであり、特に、走行レールを硬化樹脂により固定する樹脂固定軌道式の走行レールの据付方法や据付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂固定軌道は、一般的に鉄筋コンクリートスラブからなる基礎部の長手方向に沿って形成された凹部に走行レールが収容されて、硬化樹脂を注入硬化することによって固定されており、犬釘やボルトなどで枕木に固定した場合と異なって樹脂によって走行レールが連続的に支持されるため、振動の発生を抑えることができ、レールの編摩耗も生じる恐れがない等の利点が多い(特許文献1参照)。
【0003】
そして、この樹脂固定軌道は、路盤工後の現場に予め工場などで製作した走行レールの敷設方向に沿って凹部が形成されたプレキャスト版の基礎部を設置して、この凹部に走行レールを収容して樹脂を注入することにより走行レールを据え付けるプレキャスト型の手法によっても、あるいは路盤工後にコンクリートを打設して基礎部を施設し、同様に凹部に走行レールを収容して樹脂を注入することにより走行レールを据え付ける現場施工型の手法によっても施工可能である。
【0004】
しかしながら、前者のプレキャスト型の手法では、基礎部の荷重負担が大きいため、基礎部を設置する際に大型の重機などが必要となり、作業性が悪く、重機や人材を確保するための日程調整などに不要な労力を要することとなる。
また、後者の現場施工型の手法では、路盤工、コンクリートの打設および樹脂の硬化のいずれにも時間を要することとなる。このため、現在運行中の犬釘等で走行レールが枕木に固定された既存の軌道を樹脂固定軌道に変更する場合や既存の樹脂固定軌道の走行レールを据え変える場合にも、各作業工程の時間を少しずつ省いて行うなどして夜間の運行停止時間に短時間で施工する必要がある。従って、路盤工の際の不陸整正や締硬めにも、また、コンクリートの養生にも十分な時間をかけることができないのみならず、走行レールの高さを調整することもままならない状態である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−268701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、時間が足りないことを原因として走行レールの高さ調整が十分に行えないなどの作業工程の不具合を解消し、好ましくは必要以上に大型の重機なども要しない効率的な走行レールの据付方法及びその据付構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、請求項1に記載の発明に係る走行レールの据付方法は、走行レールを収納するための凹部が長手方向に沿って形成された基礎部を形成する基礎部形成工程と、上記走行レールを上記凹部に収納して、上記凹部に走行レールを仮固定するレール仮締結具によって、上記走行レールを仮固定する走行レール仮固定工程と、上記レール仮締結具を取り外した後に、上記走行レールの高さ調整して当該走行レールを再設置し、上記凹部に硬化樹脂を注入することにより上記走行レールを固定する走行レール本固定工程とを有することを特徴としている。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、上記基礎部形成工程において、走行レールを収納するための凹部が長手方向に沿って形成された矩形柱状のトラフを、当該トラフの底部に対応する溝が形成されたブロック部と後工程にてコンクリートが打設される配筋部とを有する基礎ブロックの上記溝に設置し、上記走行レール仮固定工程において、上記トラフに埋設されてその下面から垂下するアンカーボルトを、上記基礎ブロックに形成された穴に挿入して上記溝にモルタルを充填し、次いで、上記走行レールを凹部に収納して、上記レール仮締結具を上記凹部内に突出する上記アンカーボルトによって固定することにより、上記走行レールを仮固定し、上記走行レール仮固定工程と上記走行レール本固定工程との間に、上記基礎ブロックにコンクリートを打設するコンクリート打設工程を有することを特徴としている。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の走行レールの据付方法において、上記ブロック部は、上記配筋部との境界が傾斜を有する縦断面逆テーパー形状であることを特徴としている。
【0010】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の走行レールの据付方法において、上記基礎ブロックの両側にそれぞれ枠体を設置した状態で、上記基礎部形成工程において上記トラフを設置して、上記コンクリート打設工程において上記コンクリートを打設することを特徴としている。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項2ないし4のいずれか一項に記載の走行レールの据付方法によって据え付けられた走行レールの据付構造であって、上記トラフが上記基礎ブロックの溝に設置され、当該溝に充填されたモルタルによって上記トラフと上記基礎ブロックとが上記固定具とともに固定され、かつ上記トラフの上記凹部に注入された上記硬化樹脂によって上記高さを調整した走行レールが固定されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1〜4に記載の走行レールの据付方法によれば、基礎部形成工程と走行レール本固定工程との間に走行レール仮固定工程を設けたため、走行レール仮固定工程においてレール仮締結具によって走行レールを仮固定した段階で作業を中断して、再度作業を再開することにより、走行レール本固定工程にて走行レールを本固定することができる。このため、現在運行中の既存の軌道を夜間に工事する場合にも、たとえば、作業1日目に走行レールを仮固定し、2日目に走行レールを本固定する等して作業を2段階以上にわけて行うことができる。その結果、十分に時間をかけて路盤工や走行レール本固定工程における走行レールの高さ調整などを行うことができ、各工程にて時間の制約により不具合が生じることを防止できる。さらには、基礎部形成工程により形成された基礎部によって路面などが沈下したとしても、走行レール本固定工程において走行レールの高さ調整をして固定することにより、走行レールの高さを確実に調整することができる。
【0013】
特に、請求項2に記載の走行レールの据付方法によれば、基礎部形成工程において、走行レールを収納するための凹部が長手方向に沿って形成されたトラフを、当該トラフの底部に対応する溝が形成されたブロック部と後工程にてコンクリートが打設される配筋部とを有する基礎ブロックの溝に設置するため、据付時における基礎ブロックの荷重を軽減できる。また、トラフを基礎ブロックの溝に設置して連結できることから各トラフ間の連結の際の位置合わせも容易であり、トラフの幅も走行レールを収納できれば足りるため、容易に軽量化することができる。換言すると、プレキャストのトラフとプレキャストの基礎ブロックとを組み合わせて用いるとともに、この基礎ブロックをブロック部と配筋部とによって構成することによって、最大限の軽量化を図ることができる。
従って、必要以上に大型の重機なども必要とせずに効率的に走行レールを据え付けることができる。
【0014】
さらに、走行レール仮固定工程において、レール仮締結具を固定する棒状の固定具を凹部から基礎ブロックに挿通させた後にモルタルを充填することによって、トラフと基礎ブロックとともに固定具を固定できる。従って、この固定具によって固定されたレール仮締結具によって走行レールを安定的に固定でき、走行レール仮固定工程後に安定的に車両などを走行させることができる。
加えて、走行レール仮固定工程と走行レール本固定工程との間にコンクリート打設工程を設けたため、コンクリートの養生も時間的な制約なく行うことができる。
【0015】
また、請求項3に記載の走行レールの据付方法によれば、ブロック部が配筋部との境界が傾斜を有する縦断面逆テーパー形状であるため、ブロック部間に位置する各配筋部に打設したコンクリートが硬化した後には、ブロック部と配筋部とからなる基礎ブロック部が受ける荷重によってブロック部と配筋部との境界面に圧縮応力が作用して、当該境界面から剥離してしまうことを防止でき、配筋部のコンクリートにも荷重を分散させることができる。
【0016】
さらにまた、請求項4に記載の走行レールの据付方法によれば、上記基礎ブロックの両側にそれぞれ枠体を設置した状態で、上記基礎部形成工程において上記トラフを設置することにより、トラフと基礎ブロックの荷重作用面積を広くして、路面に作用する単位面積当たりの荷重を小さくすることができ、路面沈下を抑制できる。さらに、上記コンクリート打設工程において打設したコンクリートのみに、車両を通過させた際に荷重が全て作用することを防止して、基礎部の強度を上げることができる。
【0017】
請求項5に記載の走行レールの据付構造によれば、トラフを基礎ブロックの溝に設置するため、各部材を軽量化して必要以上に大型の重機なども必要とせずに効率的に走行レールを据え付けることができ、トラフと基礎ブロックとがモルタルによって、走行レールが硬化樹脂によって固定されているため、車両を安定的に走行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る走行レールの据付方法の一実施形態の説明図であって、既設の事業線のレール撤去、掘削などの路盤工を行った後であって基礎部形成工程に移行する前の走行レールの据付構造の断面模式図である。
【図2】同、基礎部形成工程が完了した後の走行レールの据付構造の断面模式図である。
【図3】同、走行レール仮固定工程が完了した後の走行レールの据付構造の断面模式図である。
【図4】同、コンクリート打設工程が完了した後の走行レールの据付構造の断面模式図である。
【図5】同、コンクリートによる舗装が完了して、走行レール本固定工程に移行する前の走行レールの据付構造の断面図である。
【図6】同、走行レール本固定工程が完了した後の走行レールの据付構造の断面図である。
【図7】上記実施形態の据付方法を図中右側から左側に向けて断層的に示す平面図である。
【図8】図7のα−α断面図である。
【図9】図7のβ−β線視した要部の断面図である。
【図10】同、走行レール仮固定工程が完了した後の走行レールの据付構造の要部断面図である。
【図11】図10の部分拡大図である。
【図12】図11の平面図である。
【図13】図10のトラフ高さ調整治具を示すもので、(a)は縦断面図、(b)は横断面図である。
【図14】図11のレール仮締結具を示すもので、(a)は縦断面図、(b)は横断面図である。
【図15】走行レール3の両側方にパイプ20を設置する際の凹部22内の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次いで、図1〜図15に基づいて、現在運行中の事業線の軌道を除去し、既設線の走行レールを据え付ける本発明に係る走行レールの据付方法の一実施形態について説明する。
【0020】
先ず、走向レールの据付工事を開始する前に、予め走行レール3を収納するための凹部22が長手方向に沿って形成された矩形柱状のトラフ21と、鉄筋を内装したコンクリートからなるブロック部11aと鉄筋17が露出している配筋部11bとが長手方向に交互に設けられた基礎ブロック11とを工場などで製作しておく。
【0021】
この基礎ブロック11は、ブロック部11aが配筋部11bとの境界に沿う長手方向に底面側より表面側の大きい縦断面逆テーパー形状に形成されるとともに、ブロック部11aの表面には、長手方向にトラフ21の底部を入れる溝12が幅方向に間隔をあけて2ヶ所に形成されており、基礎ブロック11の両側には、それぞれブロック部11aと配筋部11bとを連結させる溝形鋼(枠体)14がボルトにより締結されている。このように、溝形鋼14によって基礎ブロック11を事前に組み立てておくことによって、設置時間も短縮化される。
【0022】
また、トラフ21の凹部22の両側壁部には、それぞれ走行レールを仮固定するレール仮締結具4を載置するために、凹部22よりも一段浅い切欠き溝23が凹部22に沿って一定間隔毎に形成されている。そして、このトラフ21には、上端部分が各切欠き溝23内に突出するとともに、下端部分がトラフ21の底面から垂下するアンカーボルト40が埋設されている。他方、基礎ブロック11のブロック部11aには、各アンカーボルト40が挿入される穴15が形成されている。さらに、トラフ21の両側部には、それぞれ水平方向に螺子の切られた穴を有する螺子筒26が埋設されている。
【0023】
次いで、本実施形態の走行レールの据付方法を順次説明すると、先ず初日の日中に既存の事業線のコンクリート舗装の掘削を行う。
次いで、図1に示すように、終電車通過後の夜間に既設の走行レールを撤去し、路盤を掘削することにより露出した栗石81上に砕石82を敷均して締硬めした後に、ポリプロピレンシート(図示を略す)を張り、砂83を敷均して締硬めをすることにより路盤工を行う。
【0024】
次に、図2に示すように、基礎部形成工程に移行し、この路盤工を行った路面に、溝形鋼14によって組み立てられた基礎ブロック11を吊り込み、据え付けた後に、この基礎ブロック11の2本の溝12に、それぞれトラフ21を吊り込み、基礎ブロック11の穴15にアンカーボルト40を挿入させて据え付ける(以上、基礎部形成工程)。
【0025】
次に、図3、図10〜図15に示すように、走行レール仮固定工程に移行して、走行レール3をトラフ21に仮固定するためのレール仮締結具4を、アンカーボルト40によって切欠き溝23に固定するとともに、トラフ21の両側部と基礎ブロック11の配筋部11bとの間にそれぞれトラフ高さ調整具5を取り付ける。
【0026】
ここで、このトラフ高さ調整具5は、山形鋼51と2対のボルト52、53からなるものであり、ボルト52を山形鋼51の水平方向の貫通孔から螺子筒26に螺合させるとともに、ボルト53を山形鋼51の鉛直方向の貫通孔に合わせて山形鋼51に溶接されたナット53aに螺合させる。そして、ボルト53を回動させることによりトラフ21を溝12から浮かせて所望の高さ(水平レベル)に固定する。
【0027】
次いで、上記トラフ21の位置決めが完了した後に、溝12に超速硬モルタル31を注入して数時間養生させることにより、トラフ21は、基礎ブロック11に間隔をおいて設けられたブロック部11a上に据え付けられる。
【0028】
そこで次に、トラフ21の凹部22に、それぞれ鋼板からなるベースプレート61とその上に高さ調整パット62とを敷いて、高さ調整パット62上に走行レール3を吊り込む。さらに、走行レール3の両側部にそれぞれ楔49を打ち込み、アンカーボルト40にレール仮締結具4を通してナット44を螺合締結する。各レール仮締結具4は、図14に示すように、底板41aおよび両側板41bからなるコ字状金具41と背板42とが一体に形成されてなり、その底板41aにアンカーボルト40用の貫通孔410が形成されている。そして、各レール仮締結具4と走行レール3との間にそれぞれ丸鋼43が配設されることにより走行レール3が仮固定され(以上、走行レール仮固定工程)、2日目の日中の車両通過が可能となる。
【0029】
次いで、図4に示すように、2日目日中に、基礎ブロック11のブロック部11a間の配筋部11bにコンクリート71を打設し(コンクリート打設工程)、養生した後に溝形鋼14を撤去し、トラフ21間やトラフ21の両側方の周囲に金網74(図7参照)を配置して、図5に示すように、コンクリート75でトラフ21の上面高さと同一になるように舗装する。その際、コンクリート75による舗装は、走行レール3を長手方向に連結する連結部を有する場合には、当該連結部を除いて行う。
【0030】
次に、2日目夜間に、走行レール本固定工程に移行して、レール仮締結具4および楔49を撤去するとともに、走行レール3、ベースプレート61および高さ調整パット62を取り外し、トラフ21の凹部22を清掃して、凹部22の底面に接着剤を塗布する。この接着剤としては、硬化剤が加えられたエポキシ樹脂が好ましく使用され、エポキシ基を2個以上含む液状のプレポリマーに硬化剤としてポリアミンを加えると常温で硬化し強い接着力を発揮するものであれば、硬化後もほとんど収縮せず、接着層の膜厚が大きくても亀裂が入らず接着力の低下しない特性を有し、凹部22底面と後述の振動吸収板63および高さ調整パット64とを確実に接着させることができるため好適とされる。
【0031】
その後、図6および図9に示すように、凹部22の底部に振動吸収板63を敷設し、当該振動吸収板63上に、走行レール3の上部の高さが所定のレベルとなるように弾性樹脂板からなる高さ調整パット64を敷く。なお、高さ調整パット64は、振動吸収板63が凹部22の長手方向全長に亘って敷設されるのに対して、矩形板状に形成されて凹部22の長手方向に向けて複数枚が互いの間に一定の隙間をあけて敷設される。
【0032】
本実施形態においては、振動吸収板63の上面から走行レール3の上面となるべきレベルの高さ寸法を、レール3の敷設方向に適宜間隔をおいて測定して、測定箇所の高さ寸法に対応する高さ調整パッド64を走行レール3の下面敷設位置に沿って間隔をおいて振動吸収板63上に載置する。その際、高さ調整パッド64として、厚さ1mm、2mm、3mmおよび5mmのものを複数枚用意して、組み合わせることにより、所定の高さに積み重ねる。
【0033】
これにより、その都度、高さ調整パット64の厚さ加工が必要なく、レール3の位置決めを正確かつ容易に調整可能である。また、高さ調整パット64が弾性樹脂板からなるため、振動吸収特性、吸音特性を有するだけでなく、後述するポリウレタンともなじみ易い。
【0034】
次いで、高さ調整パッド64の上に走行レール3を敷設する。その際、走行レール3のウェブ3aの両側方に塩化ビニル製のパイプ20を、スペーサ兼水平位置調整用リング37および適宜間隔をおいて巻き回された針金やプラスチックバンド(図15参照)38によって付設した状態で設置する。次いで、パイプ20に装着した水平位置調整用リング37と凹部22の側壁との間にプラスチック製の楔39を打ち込んで、走行レール3の水平方向の位置を調整した後に、針金やプラスチックバンド38を取り去る。その後、走行レール3の下部フランジ3bの両側部にそれぞれ楔49を打ち込む。このパイプ20は車両運行などに必要な電線や光ファイバなどの収納管として利用することが可能である。
【0035】
次いで、各トラフ21の凹部22に、コルク粉末が1〜10質量%混入し、硬化剤が加えられたセルフレベリング性を有するポリウレタン33、好ましくはポリイソシアネートプレポリマーとアミンとの混合物にコルク粉末を1〜10質量%混入したポリウレタン33を注入する。その際、ポリウレタン33を注入する前処理として、ポリウレタン33の接着強度を上げるためにプライマーを散布する。このプライマーとして、ポリウレタン33の凹部22壁面、振動吸収板63、高さ調整パット64およびレール3への接着強度を高めるべく、ポリイソシアネートを溶剤に溶解させて使用され、より好ましくは、メチレン、二塩化メチレン等に4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを20質量%程度溶解させたものが使用される。
【0036】
また、ポリウレタン33は、基礎ブロック11の幅方向の外側に位置する凹部22の壁面、すなわち、走行レール3の外側に位置する凹部22の壁面と走行レール3との間から注入する。すると、走行レール3の底部下面と振動吸収板63または高さ調整パッド64間とによって形成された隙間を介して、走行レール3の反対側、すなわち走行レール3と走行レール3の内側に位置する凹部22の壁面との間にまで入り込む。
【0037】
その際、ポリウレタン33を、走行レール3の外側に位置する凹部22の壁面と走行レール3との間のポリウレタン33の表面レベルがトラフ21の上面と同様の高さになるまで注入する。このようにしても、走行レール3と走行レール3の内側に位置する凹部22の壁面との間に入り込んだポリウレタン33の表面レベルはトラフ21の上面よりもかなり低い位置までしか入りこまない。そこで、走行レール3と走行レール3の内側に位置する凹部22の壁面との間からもポリウレタン33を継ぎ足して、そのポリウレタン33の表面レベルを走行レール3の頭部の下端部に位置するようにして、車輪のフランジウエイ機能するようにポリウレタン33が充填される。
【0038】
これによって、走行レール3の両側部だけでなく、高さ調整パッド64間における走行レール3の下部にもポリウレタン33が充填されるため、ポリウレタン33を養生して硬化させることにより凹部22内に振動吸収板63および高さ調整パッド64が固定されるととともに、走行レール3自体もウェブ3aおよび下部フランジ3bの全面が凹部22の全長にわたってそれぞれポリウレタンにより拘束されて強固に固定され、車両の走行中に発生する振動や騒音が効果的に抑制される。その後、トラフ高さ調整具5を取り外すことにより走行レールの本固定が終了し(以上、走行レール本固定工程)、3日目の日中の車両通過が可能となる。
【0039】
また、必要に応じて走行レール3を溶接により連結して、連結部をコンクリート75にて舗装し、走行レール3の連結部も上述の走行レールの本固定工程と同様にトラフ21に固定する。
【0040】
上述の方法により構成される本発明に係る走行レールの据付構造は、栗石81上に砕石82が敷均されて締固めされ、その上にポリプロピレンシートを介して砂83が敷均されて締固めされた路盤工の上に、走行レール3の敷設方向に向けて基礎ブロック11が据え付けられている。
【0041】
この基礎ブロック11には、その長手方向に向けて形成された2本の溝12内にそれぞれトラフ21が吊り込まれて、トラフ21と基礎ブロック11の接合部において、トラフ21の両側部に高さ調整具5が取り付けられることにより、トラフ21が基礎ブロック11の溝12から浮かせた状態で据え付けられている。
【0042】
そして、このトラフ21の底面から垂下されてアンカーボルト40が、基礎ブロック11に形成した穴15に挿入された状態で、トラフ21と溝12との間にモルタル31が充填されることによって、トラフ21が所望の水平レベルで基礎ブロック11に固定されるとともに、アンカーボルト40が強固にトラフ21および基礎ブロック11に固定されている。
【0043】
さらに、この基礎ブロック11は、ブロック部11aと配筋部11bに打設されたコンクリート71とが走行レール3の敷設方向に向けて交互に配設されており、このブロック部11aがレール3の敷設方向にそれぞれ底面側より表面側の大きい断面逆テーパー形状に形成されることによって配筋部11bのコンクリート71との間に傾斜境界面を有している。
【0044】
また、トラフ21の凹部22には、振動吸収板63がレールの敷設方向に連続して貼り付けられ、この振動吸収板63上に、高さ調整パッド64が走行レール3の敷設方向に互いの間に一定の隙間を有するようにして複数枚敷設され、この高さ調整パッド64上に走行レール3が両側方に塩化ビニル製のパイプ20を伴って設置され、さらに、走行レール3の両側部にそれぞれ楔49が打ち込まれた状態にて、凹部22にセルフレベリング性を有するポリウレタン33が充填されている。これにより、ポリウレタン33が走行レール3の両側部やパイプ20周りだけでなく、高さ調整パッド64間における走行レール3の下面と振動吸収板63との間にも充填される。このため、高さ調整パッド64が凹部22の底面に固定されるとともに、走行レール3自体もウェブ3aおよび下部フランジ3bの全面が凹部22の全長にわたってそれぞれポリウレタンにより連続的に拘束されて強固に固定され、車両の走行中に発生する振動や騒音が効果的に抑制され、また、走行レール3の偏摩耗も生じる恐れもない。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の走行レールの据付方法や据付構造によれば、基礎部形成工程と走行レール本固定工程との間に走行レール仮固定工程を設けたため、走行レール仮固定工程においてレール仮締結具によって走行レールを仮固定した段階で作業を中断して、再度作業を再開することにより、走行レール本固定工程にて走行レールを本固定することができる。このため、現在運行中の既存の軌道を夜間に工事する場合にも、これらの工程を複数段階にわけて行うことができる。その結果、十分に時間をかけて路盤工や走行レール本固定工程における走行レール3の高さ調整などを行うことができ、各工程にて時間の制約により不具合が生じることを防止できる。さらには、基礎部形成工程により形成された基礎ブロック11やトラフ21によって路盤が沈下したとしても、確実に走行レール本固定工程において走行レール3の高さ調整を行うことができる。
【0046】
また、予め製作したプレキャスト版のトラフ21を、予め製作したプレキャスト版の基礎ブロック11に間隔をおいて形成されたブロック部11aの溝12に吊り込み、両者の間にトラフ高さ調整具5を取り付けることによって、トラフ21を溝12から浮かせた状態で水平レベルに位置決めを行った後に、トラフ21と基礎ブロック11との間の溝12にモルタルを注入して、トラフ21を基礎ブロック11に据え付け、後工程においてブロック部11a間の配筋部11bにコンクリートを打設して基礎部とトラフ21とを一体化することにより、走行レール3を収納可能な基礎部を形成することができる。従って、路盤工を行った路面に基礎部を形成する際に、必要以上に大型の重機なども必要とせずに効率的に作業を行うことができる。
【0047】
さらには、基礎ブロック11をプレキャストのブロック部11aと当該ブロック部11a間に予め埋め込まれた鉄筋17からなる配筋部11bとによって構成し、後工程において上記配筋部11bにコンクリートを打設して一体化するとともに、プレキャストのトラフ21にも下方に突出するアンカーボルト40を埋め込み、当該アンカーボルト40を基礎ブロック11に形成した穴15に挿入してコンクリートを打設することにより基礎ブロック11と一体化している。このため、全体をプレキャストとした従来工法と同等の性能を得ることができるとともに、基礎部においてプレキャスト部材の割合を少なくして、据付時の荷重を軽減でき、さらに作業効率を高めることができる。
【0048】
また、基礎ブロック11は、予め、その両側において溝形鋼14により間隔をおいて形成された複数のブロック部11aが連結されている。このため、基礎ブロック11の設置時間を短縮でき、トラフ21と基礎ブロック11の荷重作用面積を広くして、路盤に作用する単位面積当たりの荷重を小さくすることができ、路盤沈下を抑制できる。
【0049】
これに加え、トラフ21を基礎ブロック11の溝12に据え付けるため、トラフ21を基礎ブロック11の溝12内にて連結させることができることから、各トラフ21間の連結の際の位置合わせ容易であり、トラフ21も走行レール3を収納できる幅を有すれば足りることから、容易に軽量化することができる。同様に基礎ブロック11を走行レール3の敷設方向に複数設けて連結させることもできる。
【0050】
また、この基礎ブロック11は、ブロック部11aがレール3の敷設方向にそれぞれ底面側より表面側の大きい断面逆テーパー形状に形成されることによって配筋部11bのコンクリート71との間に傾斜境界面を有し、かつブロック部11aの製作時に埋め込まれた鉄筋17を配筋部11bに突出させているため、配筋部11bのコンクリート71の硬化後には、基礎ブロック11に作用する荷重による上記傾斜境界面と鉄筋17により境界面に圧縮応力を発生させて境界面剥離を防止し、かつせん断耐力を増加させることにより、配筋部11bのコンクリート71にも荷重を分散できる。
【0051】
また、トラフ21の走行レール3を収容するための凹部22に連続して敷設した振動吸収板63上に、高さ調整パット64を走行レール3の敷設方向に互いの間に隙間を有するようにして複数枚敷設し、セルフレレベリング性を有するポリウレタン33を充填することによって、ポリウレタン33が走行レール3の両側部やパイプ20周りだけでなく、高さ調整パッド64間における走行レール3の下部にも充填される。このため、高さ調整パッド64を凹部22の底部に固定できるとともに、走行レール3自体もウェブ3aおよび下部フランジ3bの全面が凹部22の全長にわたってそれぞれポリウレタン33により連続的に拘束されて強固に固定され、車両の走行中に発生する振動や騒音が効果的に抑制でき、また、走行レール3の偏摩耗の恐れもなく、寿命の長期化も図ることができ、乗り心地のよい安全性の高いものとすることができる。
【0052】
さらに、このポリウレタン33を走行レール3の外側に位置する凹部22の壁面と走行レール3との間からの一方向から注入するため、空気の混入なども抑制できる。これに加えて、セルフレベリング性を有するポリウレタン33を使用しているために、別途上面を均すことなく、水平面を得られることから作業効率を高めることができ、また、ポリウレタン33にコルク粉末を混入させることによって、高さ調整パッド64と相俟って、車両走行中に発生する振動や騒音を効果的に抑制することができる。
【0053】
また、走行レール3のウェブ3aの両側方にパイプ20を設置したため、ポリウレタン33の樹脂を多量に使用することなく走行レール3を固定できるとともに、車両運行などに必要な電線や光ファイバなどを収容することもできる。
【0054】
なお、本発明は上述の実施形態に何ら限定されるものでなく、例えば、基礎ブロック11の配筋部11bが鉄筋17以外の素材によって構成されていてもよく、さらには、プレキャスト版のトラフ21や基礎ブロック11でなくてもよく、また、トラフ21と基礎ブロック11とによって基礎部が形成されるものでなくてもよい。さらに、上述の実施形態では、3日の日中夜に分けて作業を行ったものの基礎部形成工程、走行レール仮固定工程、走行レール本固定工程のいずれかの工程の間で作用を中断して行えば足りるものである。また、新規線の走行レールの据付方法に用いてもよく、この場合には、既設線の撤去が不要となるものの必要に応じて路盤の掘削を行い、路盤工を行う。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、現在運行中の事業線の軌道を除去して既設線の走行レールを据え変える際や、新規線の走行レールの据え付ける際に利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
3 走行レール
4 レール仮締結具
5 トラフ高さ調整具
11 基礎ブロック
12 溝
21 トラフ
22 凹部
31 超速硬モルタル
33 ポリウレタン
40 アンカーボルト(レール仮締結具4を固定する固定具)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行レールを収納するための凹部が長手方向に沿って形成された基礎部を形成する基礎部形成工程と、
上記走行レールを上記凹部に収納して、上記凹部に走行レールを仮固定するレール仮締結具によって、上記走行レールを仮固定する走行レール仮固定工程と、
上記レール仮締結具を取り外した後に、上記走行レールの高さ調整して当該走行レールを再設置し、上記凹部に硬化樹脂を注入することにより上記走行レールを固定する走行レール本固定工程とを有することを特徴とする走行レールの据付方法。
【請求項2】
上記基礎部形成工程において、
走行レールを収納するための凹部が長手方向に沿って形成された矩形柱状のトラフを、当該トラフの底部に対応する溝が形成されたブロック部と後工程にてコンクリートが打設される配筋部とを有する基礎ブロックの上記溝に設置し、
上記走行レール仮固定工程において、
上記トラフに埋設されてその下面から垂下するアンカーボルトを、上記基礎ブロックに形成された穴に挿入して上記溝にモルタルを充填し、次いで、上記走行レールを凹部に収納して、上記レール仮締結具を上記凹部内に突出する上記アンカーボルトによって固定することにより、上記走行レールを仮固定し、
上記走行レール仮固定工程と上記走行レール本固定工程との間に、上記基礎ブロックにコンクリートを打設するコンクリート打設工程を有することを特徴とする請求項1に記載の走行レールの据付方法。
【請求項3】
上記ブロック部は、上記配筋部との境界が傾斜を有する縦断面逆テーパー形状であることを特徴とする請求項2に記載の走行レールの据付方法。
【請求項4】
上記基礎ブロックの両側にそれぞれ枠体を設置した状態で、上記基礎部形成工程において上記トラフを設置して、上記コンクリート打設工程において上記コンクリートを打設することを特徴とする請求項2または3に記載の走行レールの据付方法。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれか一項に記載の走行レールの据付方法によって据え付けられた走行レールの据付構造であって、
上記トラフが上記基礎ブロックの溝に設置され、当該溝に充填されたモルタルによって上記トラフと上記基礎ブロックとが上記固定具とともに固定され、かつ上記トラフの上記凹部に注入された上記硬化樹脂によって上記高さを調整した走行レールが固定されていることを特徴とする走行レールの据付構造。
【請求項1】
走行レールを収納するための凹部が長手方向に沿って形成された基礎部を形成する基礎部形成工程と、
上記走行レールを上記凹部に収納して、上記凹部に走行レールを仮固定するレール仮締結具によって、上記走行レールを仮固定する走行レール仮固定工程と、
上記レール仮締結具を取り外した後に、上記走行レールの高さ調整して当該走行レールを再設置し、上記凹部に硬化樹脂を注入することにより上記走行レールを固定する走行レール本固定工程とを有することを特徴とする走行レールの据付方法。
【請求項2】
上記基礎部形成工程において、
走行レールを収納するための凹部が長手方向に沿って形成された矩形柱状のトラフを、当該トラフの底部に対応する溝が形成されたブロック部と後工程にてコンクリートが打設される配筋部とを有する基礎ブロックの上記溝に設置し、
上記走行レール仮固定工程において、
上記トラフに埋設されてその下面から垂下するアンカーボルトを、上記基礎ブロックに形成された穴に挿入して上記溝にモルタルを充填し、次いで、上記走行レールを凹部に収納して、上記レール仮締結具を上記凹部内に突出する上記アンカーボルトによって固定することにより、上記走行レールを仮固定し、
上記走行レール仮固定工程と上記走行レール本固定工程との間に、上記基礎ブロックにコンクリートを打設するコンクリート打設工程を有することを特徴とする請求項1に記載の走行レールの据付方法。
【請求項3】
上記ブロック部は、上記配筋部との境界が傾斜を有する縦断面逆テーパー形状であることを特徴とする請求項2に記載の走行レールの据付方法。
【請求項4】
上記基礎ブロックの両側にそれぞれ枠体を設置した状態で、上記基礎部形成工程において上記トラフを設置して、上記コンクリート打設工程において上記コンクリートを打設することを特徴とする請求項2または3に記載の走行レールの据付方法。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれか一項に記載の走行レールの据付方法によって据え付けられた走行レールの据付構造であって、
上記トラフが上記基礎ブロックの溝に設置され、当該溝に充填されたモルタルによって上記トラフと上記基礎ブロックとが上記固定具とともに固定され、かつ上記トラフの上記凹部に注入された上記硬化樹脂によって上記高さを調整した走行レールが固定されていることを特徴とする走行レールの据付構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図12】
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【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−242391(P2010−242391A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92865(P2009−92865)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(503132257)新潟トランシス株式会社 (16)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(503132257)新潟トランシス株式会社 (16)
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