説明

走行体のコース誘導システム

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、折れ線として設定された走行予定コースに沿って走行体を誘導制御する際に、コーナー毎に目標旋回半径を設けて旋回制御する走行体のコース誘導システムに関する。
【0002】
【従来の技術】折れ線をコースとしそれに沿って誘導する走行体において、折れ線コースに早く収束させる方法については多くの研究がなされているが、直線コースから連続する次の直線コースに移行するコーナーの旋回をスムーズに制御する方法がなかった。そのため、急激に旋回したり、旋回時の遠心力によって車速が制限されたりして円滑な運転ができなかった。また、走路の制約で大きく旋回しなければならない場合は、多数の直線コースを組み合わせた折れ線コースを設定する必要があり手間がかかった。
【0003】
【発明が解決しようとする問題点】この発明は上記事情に鑑みて創案されたもので、その主たる課題は、折れ線コースとして設定された走行予定コースの各コーナーに目標旋回半径を定めておきコーナーでは上記目標旋回半径に基づいた旋回制御を行い、スムーズなコース移行を行えるようにした走行体のコース誘導システムに関する。
【0004】
【問題点を解決するための手段】上記課題を解決するために、請求項1の発明では、予め設定した走行予定コースに追従して誘導制御される走行体のコース誘導システムにおいて、走行予定コースが、直線状に設定された直線コースが連続する折れ線コースとして設定されると共に、連続する直線コース間のコーナーに次の直線コースに移行するための目標旋回半径が予め設定されている、進行中の直線コースで旋回移行の予定位置に達した場合に、走行体の現在位置を基にして次の直線コースに収束するための旋回半径を算出する、該旋回半径を上記目標旋回半径に近づけるよう操舵角を制御する旋回制御を行なう、という技術的手段を講じている。また、請求項2の発明では、上記直線コースを走行するのに、旋回移行の予定位置まで走行するのに比例制御によるサーボ制御を行う、旋回移行の予定位置に達した場合に現在位置から次の直線コースに収束するための旋回半径を算出し、該旋回半径を上記目標旋回半径に近づけるよう操舵角を制御する旋回制御を行なう、という技術的手段を講じている。
【0005】
【作用】走行予定コースは、直線コースが連続する折れ線コースとして設定されるが、直線コースから次の直線コースに移行する際に目標旋回半径が予め設定されているので、走路の制約などにより大きく旋回する必要がある場合であっても、多数の直線コースに分解して組合せる必要なく、上記目標旋回半径に近づくように旋回制御が行なわれるので、スムーズなコース移行が可能となる。
【0006】
【実施例】以下に、この発明のコース誘導システムをオフハイウエイトラック等の無人走行体誘導システムに適用した場合の好適実施例を図面に基づいて説明する。ここで無人走行体の誘導システムは、無人走行体に搭載されて、その速度及び前後進を検出する車速センサと、無人走行体の絶対方位を検出するジャイロコンパスと、所定のステーション内に設定された固定基準点を検出する固定基準点測定センサと、これらのセンサからの検知信号を入力し位置データを演算する位置検出手段、メモリに記憶された走行予定コースに追従して走行体の操舵角と車速を制御する誘導制御手段を有する公知構成からなっており、連続する直線の組み合わせで設定された折れ線状の走行予定コースに追従するように誘導制御される公知構成からなっている。
【0007】また、走行予定コースの原理は、図4に示すように、無人走行体の走路をXY座標として表し、コースを2点の座標で定義される直線の連続として設定する。図示例の場合、PC1−PC2−PC3−PC4−PC5−PC6(PC2と同じ)の各点を設定し、PC1とPC2により第1の区間となる直線コースが設定され、PC2とPC3により第2の区間となる直線コースが設定され、終点となるPC6まで順次、折れ線として形成されるコースが設定される。
【0008】そしてコース誘導システムは、図1に示すように位置検出手段1と、相対位置演算手段2と、操舵角演算手段3と、操舵制御サーボ手段4と、走行予定コースの各種データが記録されたメモリとを備えた構成からなっている。位置検出手段1は、走行予定コースを座標で表わした場合の無人走行体の現在位置(X,Y)と方位角φを検出する装置である。この位置検出手段1は、前述のように走行体の走行速度を検出するスピードセンサから走行距離を検出し、ジャイロコンパス等で方位角を検出して、起算点からの移動量を算出し現在位置を求める構成、または一定位置に設定された固定基準点を通過する際の相対的な位置を求めて現在位置を検出する構成等が、単独で、あるいは組み合わせて用いられる。
【0009】このようにして、無人走行体の現在の位置座標が算出されると、誘導制御手段で、最寄りの直線コースに追従するように比例制御が行なわれる。ここで比例制御は、目標値(メモリに記憶され2点で定義された直線コース)と現在値(位置座標)との差から求められる誤差に比例定数を掛けた値を無人走行体の操舵角の操作量とするフィードバック制御からなっている。即ち、無人走行体は、メモリに記録されているコースデータ及び各コース毎に設定された速度データ、方位角データをもとに、まず出発点から第1の区間となる直線コースに追従し走行を開始する。これと共に、位置検出手段1で、無人走行体の現在位置(X,Y)と方位角φが検出される。
【0010】そして、相対位置演算手段2で、現在追従している直線コース(2つの点座標で定義される)に、無人走行体の上記算出された現在の位置座標から下ろした垂線により算出される相対座標(L,D)と、相対角度θを求める。そして、上記直線コース上に追従するように、操舵角制御定数を掛けて、操舵角を算出し、これに基づいて操舵制御サーボ手段4が無人走行体のステアリング装置を制御して無人走行体が直線コース上を走行するように誘導制御する。このように直線コースに沿って走行する無人走行体が、各直線コースにそれぞれ設定された旋回移行の予定位置に達すると、誘導制御が上記比例制御から旋回制御に切替わる。
【0011】本実施例での上記切換えの判定基準は次の通りである。
■ コース移行時に無人走行体がコースに対して離脱距離が+−0.5m以下で、且つ角度の差が+−3度以下の場合は比例制御となるが、そうでない場合は旋回制御となる。
■ 旋回制御を行なっている場合に、無人走行体がコースに近づく方向で、且つその角度が切替え角度より小さくなり、離脱距離が+−2.5m以内になると、比例制御となる。
【0012】ここで、切替え角度θtとは、指定された旋回半径で走行している無人走行体が、ステアリングでまっすぐに切り戻した時の無人走行体の方位角の変化である。
【数1】


ここで、Vは車速、Cはステアリング角旋回半径反比例定数、Vstはステアリング切れ速度(rad/sec)、ψo初期ステアリング角(rad)、ΔTはステアリングの切り遅れ時間(秒)である。この切換え角度θtは、車速に比例し、初期ステアリング角度の二次関数となっており、実験的に修正して用いている。
【0013】■ 旋回制御を行なっている場合、無人走行体が走行した距離のコースに平行な成分が旋回半径より大きくなった場合に、比例制御となる。次に旋回制御は、まず、前記と同様に、位置検出手段1で無人走行体の位置座標を算出し、相対位置演算手段2で、現在追従している直線コース(セグメント)からの相対座標(L,D)と相対角度θ(車輛の方位角と追従しているコースの方位角との差)を求める。
【0014】次いで、操舵角演算手段3で、現在の位置から次の区間となる直線コースに収束するのに必要な旋回半径RRを求める(図2参照)。
RR=L/(1−Cos θ)
一方、車輛の旋回特性をアッカーマンステアリングで近似すれば、曲率とステアリング角度は反比例の関係となるので、操舵角ξは次式で求められる。
ξ = C/ R R Cは定数この式は、移行する次ぎのコースに誘導するために必要なステアリング切れ角を予測するものである。これをフィードバックすることによりコースへの誘導が行なわれるが、初期状態によっては旋回半径が大きくなりすぎてコースに収束しない場合があるので目標旋回半径が予め定められている。従って、予測した旋回半径が目標旋回半径よりも大きい場合には、ステアリングを少な目に切るように修正し、目標旋回半径よりも小さい場合には、ステアリングを多めに切るように修正して、目標旋回半径に近づける。
【0015】そこで、メモリから、上記当該コーナーにおける目標旋回半径を呼び出す。この目標旋回半径Rで旋回するための操舵角φは次の式で求められる。
φ =C/Rそして、前記RRが予め設定してある目標旋回半径Rに近づくように、まず操舵角φと操舵角ξの偏差εを求め、実際の操舵角ψが定められる。ここで、目標旋回半径に近づけるフィードフォワード量を上記ステアリング角度の偏差に比例するように定義する。
ψ = ξ−κ×εκは比例定数従って、上記式を整理すると次式となる。
【数2】


このようにして、操舵角演算手段3により実際の操舵角φが求められる。図3に、上記旋回制御のシグナルフローチャートを示す。
【0016】このように、旋回制御は、旋回半径予測による次の区間コースへ移行するためのフィードバックと、旋回半径を指示された目標旋回半径に近づけるフィードフォワード制御とで構成されている。そして、この操舵角φは操舵制御サーボ手段4に入力され、図示しない無人走行体のステアリング装置を介して無人走行体が目標旋回半径に近づくように旋回される。
【0017】このようにして、無人走行体が次ぎの区間となる直線コースに移行し、位置検出手段1で検出された位置座標を基に次の区間の直線コースに移動したことが判定されると、誘導制御装置は前記旋回制御から比例制御に切替わる。そして、再度直線コースに追従するように前述の比例制御が行なわれる。このような比例制御と旋回制御の繰り返しにより、折れ線からなる走行予定コースにそって無人走行体を誘導することができる。
【0018】
【発明の効果】以上この発明によれば、区間コースの移行に際して、予め目標旋回半径を設定しておき、コースの移行時に算出される旋回半径および操舵角を上記目標値に近づけるように制御するので、コース移行をスムーズに行なうことができる。また、走路の制約等で大きく旋回しなければならない場合にも、従来のように多数の直線コースに分割する必要がなく、走行予定コースを簡潔に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の無人走行体のコース誘導システムのブロック図である。
【図2】旋回制御を説明するための図である。
【図3】シグナルフローチャートを示す図である。
【図4】走行予定コースの原理を示す図である。
【符号の説明】
1 位置検出手段
2 相対位置演算手段
3 操舵角演算手段
4 操舵制御ターボ手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】 予め設定した走行予定コースに追従して誘導制御される走行体のコース誘導システムにおいて、走行予定コースが、直線状に設定された直線コースが連続する折れ線コースとして設定されると共に、連続する直線コース間のコーナーに次の直線コースに移行するための目標旋回半径が予め設定されており、進行中の直線コースで旋回移行の予定位置に達した場合に、走行体の現在位置を基にして次の直線コースに収束するための旋回半径を算出し、該旋回半径を上記目標旋回半径に近づけるよう操舵角を制御する旋回制御を行なうことを特徴とする走行体のコース誘導システム。
【請求項2】 予め設定した走行予定コースに追従して誘導制御される走行体のコース誘導システムにおいて、走行予定コースが、直線状に設定された直線コースが連続する折れ線コースとして設定されると共に、連続する直線コース間のコーナーに次の直線コースに移行するための目標旋回半径が予め設定されており、直線コースを走行するのに、旋回移行の予定位置まで走行するのに比例制御によるサーボ制御を行い、旋回移行の予定位置に達した場合に現在位置から次の直線コースに収束するための旋回半径を算出し、該旋回半径を上記目標旋回半径に近づけるよう操舵角を制御する旋回制御を行なうことを特徴とする走行体のコース誘導システム。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【特許番号】第2837985号
【登録日】平成10年(1998)10月9日
【発行日】平成10年(1998)12月16日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−37218
【出願日】平成4年(1992)1月28日
【公開番号】特開平8−22327
【公開日】平成8年(1996)1月23日
【審査請求日】平成8年(1996)9月6日
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【出願人】(000227250)日鉄鉱業株式会社 (82)
【参考文献】
【文献】特開 昭62−52614(JP,A)
【文献】特開 平2−205904(JP,A)
【文献】特開 昭61−70616(JP,A)