走行型車両重心計測システム
【課題】 車高計と輪重計とを用いて走行車両の水平方向及び垂直方向の重心位置を測定することを可能にすると共に、該測定結果により、貨物の積載状態を把握することで車両の横転事故等を抑止する。
【解決手段】 本発明の走行型車両重心計測システムは、重心計測路である、平坦路面10上に、ガントリ11の上部に設置された車高計111R及び車高計111Lを備え、第1測定帯20上には、ガントリ21の上部に設置された車高計211R及び車高計211Lと、走行路面に設置された輪重計212R及び輪重計212Lとを備え、第2測定帯30には、ガントリ31の上部に設置された車高計311R及び車高計311Lと、走行路面に設置された輪重計312R及び輪重計312Lとを備える。各測定装置の測定値に基づいて各方向の重心位置等を決定し、監視装置で監視する。
【解決手段】 本発明の走行型車両重心計測システムは、重心計測路である、平坦路面10上に、ガントリ11の上部に設置された車高計111R及び車高計111Lを備え、第1測定帯20上には、ガントリ21の上部に設置された車高計211R及び車高計211Lと、走行路面に設置された輪重計212R及び輪重計212Lとを備え、第2測定帯30には、ガントリ31の上部に設置された車高計311R及び車高計311Lと、走行路面に設置された輪重計312R及び輪重計312Lとを備える。各測定装置の測定値に基づいて各方向の重心位置等を決定し、監視装置で監視する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両重心計測システムに係り、特に、測定対象車両の水平方向の重心位置決定手段に加えて、上下方向(垂直方向)の重心位置決定手段を備えた走行型車両重心計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の重心を測定することは、車両の走行時の安全を確保するために重要な要素であり、よって、この車両重心の測定を行う車両重心計測システムの重要性は増している、といえる。
特に、貨物を積載する車両(トラック等)の場合、できるだけ積載量を多くしたい場合には、ともすれば、貨物を高さ方向へ積み上げる安直な方法が実施されがちである。
しかし、このような場合、車両の重心位置が高くなると、荷崩れが無くとも、走行路に左右の高低差が有る場合や、急ハンドルを切った場合に車体がローリングしたり、またカーブ区間に車両が到達すると遠心力が増大して、車体が転倒するなどの危険性が生じる。
よって、車両の水平方向の重心(より具体的には前後方向の重心と、左右方向の重心)の重心位置決定方法に加えて、車両の垂直方向(上下方向)の重心位置決定方法を開発することが本発明に際しての1つの課題であった。
また、測定時、後続車群に渋滞を生じさせないために、測定時に測定対象車両を停止させることなく、走行中に上記の各重心を測定できるようにすることも本発明に際しての1つの課題であった。
【0003】
さらには、測定対象車両が重心計測路を1回だけ走行する間に、上記の水平方向および垂直方向の各重心位置測定が行えるようにすることも本発明に際しての1つの課題であった。
なお、従来から、一般に、陸上輸送貨物の積載状態を知り、車両の過積載や偏積(積荷の偏り)を発見したときの是正を目的とする計測装置として積載重量計が、特許文献1(特開平6−58796号公報)にて提案されている。
この特許文献1(特開平6−58796号公報)には、過積載の車両を発見し得ると共に積荷の片寄りによる重心位置のズレの検出機能を有する積載重量計が開示されている。具体的には、貨物自動車の前輪および後輪に於ける一軸重量を順次測定する軸重計を2個用いて積載重量計を構成している。即ち、前輪および後輪のそれぞれについて、該2個の重量計で得られた重量を合計した一軸重量と、前輪および後輪の間の車軸間距離とによって前後方向の重心位置を求め、この重心位置と理想的な重心位置とを比較することにより、前後方向の重心位置のズレを検出する。同様に、左右方向の重心位置は、前記2個の重量計で得られた左側の前後の車輪(タイヤ)の合計重量と右側の前後の車輪の合計重量とにより求めるものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−58796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記背景技術で述べた従来の重心位置検出機能を有する積載重量計にあっては、水平方向(より具体的には前後方向の重心と、左右方向の重心)の重心位置決定に留まっており、垂直方向(上下方向)の重心位置決定については全く想定されていない。
このため、前述のとおり、車両の重心位置が高い場合は、荷崩れが無くとも、走行路に左右の高低差が有る区間や、カーブ区間に車体が到達すると、車体がローリングしたりカーブを曲がり切れず、車両が積荷と共に横転する事故を未然に防止することができないといった問題点があった。
即ち、特許文献1に記載された従来技術にあっては、車両の走行に伴い、貨物の過積載と積載の片寄りを計測することはできるが、積載重心の高さが分からないため、走行中の操舵による車体のローリングに起因した横転の危険度合いが分からないといった致命的な問題があった。
【0006】
近年では、貨物の積載状態に起因して、貨物輸送車両の横転事故に繋がる事例が目立っており、特に、輸送業者が貨物の内容や積載状態を把握できない輸送コンテナにあっては、陸上輸送中の横転事故が社会問題となっている。しかしながら、前述のとおり、従来の水平方向重心位置のみしか計測できない積載重量計では、このような横転事故を抑止するまでの危険度合いを測れないために輸送運転者への運転操作に対する十分な注意喚起をすることができない。
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであって、車両を走行させながら車両の水平方向および垂直方向の重心位置を測定することを可能にすると共に、該測定結果により、貨物の積載状態を的確に把握することで車両の横転事故等を抑止することができる走行型車両重心計測システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載した発明に係る走行型車両重心計測システムは、上記の目的を達成するために、
車両の重心位置を計測する車両重心計測システムにおいて、
測定対象の車両を通過させる平坦路と、左右勾配の異なる第1測定帯と第2測定帯とからなる重心計測路に沿って、複数設けられ、前記車両の左右方向の傾きを計測する複数の傾斜角決定手段と、
前記重心計測路上に沿って前記車両の各軸の左右両輪の輪重を独立して計測し得るように配設された複数対の輪重計と、
前記輪重計で計測された最前軸から最後軸までの輪重を加算して前記車両の総重量を決定する車両重量決定手段と、
前記車両の左右方向の重心位置を決定する左右重心位置決定手段と、
前記車両の前後方向の重心位置を決定する前後重心位置決定手段と、
前記2つの傾斜角決定手段により得られた傾斜角と、前記左右勾配の異なる路面に設置された前記軸重計上に車両を通過させて得られた双方の重心位置とに基づき、上下方向の重心位置を決定する上下重心位置決定手段とを具備し、
測定対象の車両を走行させながら、左右方向重心位置、前後方向重心位置および上下方向重心位置をそれぞれ計測し得るように構成したことを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載した発明に係る走行型車両重心計測システムは、上記の目的を達成するために、
車両の重心位置を計測する車両重心計測システムにおいて、
測定対象の車両を通過させる平坦路面と、この平坦路面に順次連続する左右勾配の異なる第1測定帯と第2測定帯とから重心計測路を敷設し、
前記平坦路面の左右の上部に配設された第1の車高計および第2の車高計と、
前記第1測定帯の左右の上部に配設された第3の車高計および第4の車高計と、
前記第1測定帯の路面に配設され、各輪重を独立して計測し得る第1の輪重計および第2の輪重計と、
前記第2測定帯の左右の上部に配設された第5の車高計および第6の車高計と、
前記第2の測定帯の路面に配設され、各輪重を独立して計測し得る第3の輪重計および第4の輪重計と、
前記第1〜第6の車高計の計測結果に基づき、前記平坦路、前記第1測定帯、前記第2測定帯を通過する時の前記車両のそれぞれの傾斜角を決定する傾斜角決定手段と、
前記車両の総重量を決定する車両重量決定手段と、
前記車両の前後方向の重心位置を決定する前後重心位置決定手段と、
前記車両の左右方向の重心位置を決定する左右重心位置決定手段と、
前記車両の上下方向の重心位置を決定する上下重心位置決定手段と、
を具備し、
前記測定対象の車両を前記重心計測路上を走行させながら、左右方向重心位置、前後方向重心位置および上下方向重心位置をそれぞれ計測し得るように構成したことを特徴としている。
【0009】
また、請求項3に記載した発明に係る走行型車両重心計測システムは、
前記車両重量決定手段は、前記車両を走行させながら、前記各輪重計の波形より得られる最前軸から最後軸までの左右独立した輪重を、各軸毎に測定した後、該左右の輪重を加算して各軸毎の軸重値を求め、さらに、該各軸毎の軸重値を全ての軸について加算した値により、前記車両の総重量を決定することを特徴としている。
また、請求項4に記載した発明に係る走行型車両重心計測システムは、
前記前後重心位置決定手段は、前記車両を走行させながら、前記各輪重計の波形より前記車両の走行速度を求め、また、前記車両の各軸の前記各輪重計の通過時間と前記走行速度より、各軸の軸間距離を求め、さらに、前記軸間距離と前記軸重値との積を全ての軸について加算した値を前記車両の前記総重量で除して算出し、決定することを特徴としている。
また、請求項5に記載した発明に係る走行型車両重心計測システムは、
前記左右輪重比決定手段は、前記第1測定帯と前記第2測定帯での左右の前記各輪重計への前記車両の車輪の載り始めから前記車両の車輪が降りるまでの間にサンプリングした輪重波形を全て使用して最小二乗法により算出することを特徴としている。
【0010】
また、請求項6に記載した発明に係る走行型車両重心計測システムは、
前記左右重心位置決定手段は、前記車両を走行させながら、前記第1測定帯と前記第2測定帯での車両の傾斜角と左右の重心位置とに基づいて、前記第1測定帯と前記第2測定帯の上下方向の重心位置が同じであることから、計算式を導き出し、前記車両の一般的な平坦路面における左右方向の重心位置を計算し、決定することを特徴としている。
また、請求項7に記載した発明に係る走行型車両重心計測システムは、
前記上下方向重心位置決定手段は、前記第1測定帯と前記第2測定帯での前記車両の前記傾斜角と前記左右の重心位置とに基づいて、前記第1測定帯と前記第2測定帯の上下方向の重心位置が同じであることから、計算式を導き出し、前記車両の一般的な平坦路面における上下方向の重心位置を計算し、決定されるものであることを特徴としている。
また、請求項8に記載した発明に係る走行型車両重心計測システムは、
前記第1測定帯における前記傾斜角は、前記第3と前記第4の車高計による前記車両の高さの測定値に基づいて計算されるものであることを特徴としている。
また、請求項9に記載した発明に係る走行型車両重心計測システムは、
前記第1測定帯における前記左右の重心位置は、前記第1と前記第2の各輪重計の測定結果に基づく、各軸毎に測定された左右輪重比と各軸重とから計算されるものであることを特徴としている。
【0011】
また、請求項10に記載した発明に係る走行型車両重心計測システムは、
前記第2測定帯における前記傾斜角は、前記第5と前記第6の車高計による前記車両の高さの測定値に基づいて計算されるものであることを特徴としている。
また、請求項11に記載した発明に係る走行型車両重心計測システムは、
前記第2測定帯における前記左右の重心位置は、前記第3と前記第4の輪重計の測定結果に基づく、各軸毎に測定された左右輪重比と各軸重とから計算されるものであることを特徴としている。
また、請求12に記載した発明に係る走行型車両重心計測システムは、
平坦路面における前記第1の輪重計と前記第2の輪重計を支持する複数のロードセルを、さらに各輪重計の右側と左側とに分割配置し、それぞれのロードセルの出力差により、前記車両の車輪の載っている位置を計算して左右輪荷重中心間隔を決定する左右輪荷重中心間隔決定手段をさらに具備することを特徴としている。
さらに、請求項13に記載した発明に係る走行型車両重心計測システムは、
前記前後重心位置決定手段と前記左右重心位置決定手段と前記上下重心位置決定手段により決定した多重心位置を検証することにより、前記上下重心位置の高さが危険水準に有る場合は警告表示する装置を、さらに具備することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、測定対象の車両を走行させながら水平方向のみならず、上下方向の重心位置を短時間で計測することができるため、構内道路の交通を妨げることなく、交通渋滞を招来せずに、重心位置の計測を行うことができる。
その結果得られた3方向の重心位置計測結果を、運転者に告知することにより、運転者が運転操作を意識的に注意するようになり、より具体的には、運転者への横転危険度の通知が可能となり、結果的に、車両輸送中の横転事故や貨物の落下事故を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る走行型車両重心計測システムの重心計測路から見た全体の概略構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る走行型車両重心計測システムの監視装置を含む全体構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る走行型車両重心計測システムにおける監視装置の動作手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明に係る車両重心計測システムに使用される輪重計から出力される車両の左右の輪重波形および輪重比を示すグラフである。
【図5】軸重差分波形を示すグラフである。
【図6】(a)、(b)は、左右輪の荷重中心間隔を測定する方法を説明するための図であり、このうち、(a)は、測定対象車両が左右の輪重計に乗った状態を示す正面図、(b)は、輪重計に配置されたロードセルを示す平面図である。
【図7】車両の左右重心位置の計算方法の一例を示す車両の正面図である。
【図8】本発明に係る車両の前後重心位置の計算方法の一例を説明するための側面図である。
【図9】車両の傾斜角を計測し、車両の重心高さを計測する場合の重心計測路での状態を示す説明をするものであり、図9(a)は、平坦路面10での状態、図9(b)は、第1測定帯20での状態、図9(c)は、第2測定帯30での状態を、それぞれ示す正面図である。
【図10】車両を左右に傾けて車両の重心高さの計算方法を視覚的に示したもので、(a)は、右側に傾けた状態を示す正面図、(b)は、左側に傾けた状態を示す正面図である。
【図11】車両横転危険度を視覚的に表示した一表示例を示すもので、(a)は、背面図、(b)は、側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の走行型車両重心計測システムは、測定対象車両(以下、単に「車両」と略称することがある)1の重心位置として、車体左右方向の重心、車体前後方向の重心、車体上下方向の重心を測定し、決定する。
また、この決定に関連して、車両1の、車体の傾斜および車体重量を測定し、さらには、積載貨物の、重量、前後、左右および上下の重心を決定する。
また、これらの測定値から、車両1の横転危険度を算出して検知することができるようにしている。
以下、本発明の走行型車両重心計測システムの第1の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る走行型車両重心計測システムの重心計測路から見た計測装置3の構成を示す斜視図である。
同図において、第1の実施形態の走行型車両重心計測システムは、測定対象車両1の重心を測定するシステムであり、重心を測定する測定区間(即ち重心計測路)として、平坦路面10と、第1測定帯20と、第2測定帯30と、を敷設する。
平坦路面10には、門型のガントリ11を立設し、このガントリ11の上部に所定間隔を隔てて車高計111Rおよび車高計111Lと、を配設する。
【0015】
第1測定帯20には、門型のガントリ21を立設し、このガントリ21の上部に所定間隔を隔てて車高計211Rおよび車高計211Lを配設すると共に、左右の高さが異なる走行路面には、輪重計212Rおよび輪重計212Lと、を設ける。
第2測定帯30には、門型のガントリ31を立設し、このガントリ31の上部に所定間隔を隔てて車高計311Rおよび車高計311Lを配設し、さらに左右の高さが異なる走行路面に輪重計312Rおよび輪重計312Lと、を設ける。
この他に、計測装置3と離れた位置に、上記の各計測装置3の計測結果を纏めて、車両の重心位置、車両総重量、車両の横転危険度等を算出する監視装置を備えるが、その詳細は、図2で説明する。
以下、図1を参照して、この第1の実施形態の走行型車両重心計測システムの重心計測路から見た各構成要素について説明する。
平坦路面10は、走行路の左右に高低差(段差)を有しない平坦な測定区間である。
第1測定帯20は、走行路の左右に高低差(段差)を有し、かつ車両の進行方向に沿って車両の長さの2倍の長さに輪重計の長さを加えた全長を有する測定区間である。この第1測定車両は、一方の路面、この場合、右側の路面は、平坦路面10と同じ面となっているが、左側の路面には、中央部が一定長さに亘って、所定の段差を有する平坦部aを設け、その手前側には、進入側斜面bが形成され、先方側には、退出側斜面cが形成されている。
【0016】
第2測定帯30は、走行路の一方側に、第1測定帯20の高低差とは反対となる高低差(段差)を有し、かつ車両の進行方向に車両の長さの2倍の長さに輪重計の長さを加えた全長を有する測定区間である。この第2測定帯30においても、左側の路面は、平坦路面10と同じ面となっているが、右側の路面は、中央部が一定長さに亘って所定の段差を有する平坦部aを設け、その手前側には、進入側斜面bが形成され、先方側には、退出側斜面cが形成されている。
なお、上記のいずれの走行路も、左右の高低差は、精度を考慮すると、車両の前方から見た時の傾斜角は、1.5°〜5.0°の範囲内とし、より好ましくは、1.5°〜3.0°の範囲内とすることが望ましい。
下限値1.5°を下回ると、高さ方向の重心計測の精度が低くなり、上限値5.0°を越えると、安全性に問題が出てくる。
第1測定帯20の輪重計212R,212Lは、車両が右に傾斜するように段差をつけた第1測定帯20を通過する間に左右各々の輪重の測定を行う機能を有する。
また、左右の輪重計は、輪重の左右バランスを測定することによって輪重計上での車輪の左右の位置を測定する機能を有する。これらの輪重計は、後述する第1の輪重計測手段に用いられる。
【0017】
第2測定帯30の輪重計312R,312Lは、車両が第1測定帯20の左右高低差とは異なる(より具体的には反対の右側が高い)左右高低差を有するように段差(左右高低差)を付与した第2測定帯30を通過する間に左右各々の輪重の測定を行う機能を有する。これらの輪重計は、後述する第2の輪重計測手段に用いられる。
車高計111R,111L,211L,211R,311R,311Lは、各々、車両の高さを計測する機能を有する。これらの車高計は、車両の通過時に、車両の両側の高さをレーザー距離測定器(または超音波距離測定装置、もしくは、三角測距装置でもよい)で測定し、その車高値を用いて傾きを計算するために使用する(詳細は後述する)。
図2は、本発明の実施形態に係る走行型車両重心計測システムの計測装置監視装置および外部装置を含む全体構成を示すブロック図である。
図2に示す監視装置2は、増幅部201と、A/D変換部202と、車両情報入力部203と、演算部204と、記録部205と、判定部206と、出力部207と、を備えて構成される。
【0018】
図2に示す表示器・信号機401、ネットワーク(有線、無線)402、車両端末(ETCなど)403および遮断機404は、ここでは出力部207を介して制御される外部装置4としているが、これらの装置(設備)は、本実施形態に係る監視装置2の構成要素に含めることも可能である。
以下、監視装置2の各構成要素の機能について説明する。
増幅部201は、前述の各輪重計212R,212L,312R,312Lおよび各車高計111R,111L,211R,211L,311R,311Lの測定信号を増幅する機能を有する。
A/D変換部202は、増幅器201により増幅された前述の各輪重計212R,212L,312R,312Lおよび各車高計111R,111L,211R,211L,311R,311L(以下、これらの符号を省略する場合がある)の測定信号をA/D変換する。
車両情報入力部203は、キーボードやバーコード(いずれも図示は省略)等を用いて、車両の車番、車種、車両重量、軸数等と運転者の情報を入力することが可能であり、さらには、本発明に必須ではないが、車検証に記載されている軸距、輪距も入力可能であり、また、前記の入力情報を演算部204に送出する機能を有する。
【0019】
演算部204は、A/D変換部202でA/D変換された前述の各輪重計および各車高計の測定信号のデジタル値と、車両情報入力部203から送出される情報とを用いて、車両の重心位置、車両重量、左右の輪荷重中心間隔、軸距(軸間距離)および傾斜角を算出して各々決定する機能を有する。また、空車重量、貨物重量、空車の前後・左右・上下の各重心位置、貨物の前後・左右・上下の各重心位置を算出する機能を有する。
記録部205は、A/D変換部202で変換された前述の各輪重計および各車高計の測定信号のデジタル値(輪重データ、車高データ)および演算部204で決定した各種演算結果(車両重量、傾斜角、重心位置、左右輪荷重中心間隔、軸距、判定結果)と、車両情報入力部203を介して入力された車両情報とを記録する。
判定部206は、演算部204で演算し、決定された結果を用いて、測定対象車両1の横転危険度および過積載の決定を行う。
出力部207は、車両重心情報(演算結果や判定結果)と横転危険度の情報とを、外部の装置4(想定される接続機器)に出力する。外部装置4としては、例えば、表示器・信号機401、ネットワーク(有線、無線)402、車両端末(ETCなど)403、遮断機404などとの接続が可能である。
【0020】
以下、本発明の第1の実施形態に係る走行型車両重心計測システムによる重心位置の測定手順について図1、図2を参照して説明する。
(1) 測定対象車両1を、5〜20〔km/h〕程度で走行させながら、第1測定帯20の輪重計212R,212Lと、第2測定帯30の輪重計312R,312Lとを順次通過させ、各輪重と左右輪荷重中心間隔と、軸距とを測定および計算より求める(具体的計算方法は、後述する)。
(2) また、測定対象車両1が、平坦路面10上と、第1測定帯20の輪重計212R,212L上と、第2測定帯30の輪重計312R,312L上とを、それぞれ通過する時に、車高計111R,111L、車高計211R,211Lおよび車高計311R,311Lとにより、それぞれ該車両1の車高を測定し、この測定結果から、該車両1が前記各車高計111R,111L,211R,211L,311R,311Lをそれぞれ通過した時の該車両車体の左右方向の傾きを計算する。
【0021】
(3) 第1測定帯20の輪重計212R,212Lの測定値、輪重波形からは、後述する方法により各車輪の左右荷重分布を測定することにより、左右輪荷重の中心間隔を計算する。第2測定帯30の輪重計312R,312Lの測定値、輪重波形からは、各軸の左右の各車輪の輪重を計算し、さらに、左右輪重比、軸重を計算する。
(4) (1)〜(3)項の実行により得られた測定対象車両1の輪重、車両傾き、左右輪荷重中心間隔に基づき、該車両の前後方向、左右方向および上下方向の重心を計算する。
(5) 監視装置1の車両情報入力部203を介して入力された車両情報と、(4)項の演算結果とをデータ化し、記録部205に記録する。
(6) 判定部206により、(5)項の記録データに基づく危険度合いを判定し、出力部207へ、該危険度の情報を送出する。例えば、上下方向重心位置と、車両速度と、車両重量と、カーブ道路の曲率半径をパラメータとした危険度度合いを設定する。
(7) 出力部207は、外部装置4の表示器・信号機401、ネットワーク402、車両端末403、遮断機404等の各外部機器に該情報を出力する。
【0022】
以下、本発明の第1の実施形態に係る走行型車両重心計測システムの重心位置の決定方法について詳細に説明する。
1.平坦路面10での測定
(a) 車両を走行させ、複数の車高計(111R,111L)により、左側および右側近傍の車両の高さをそれぞれ測定する。
2.第1測定帯20での測定
(a) 車両を走行させ、各軸毎に測定された左右の輪重波形を比較することで各軸の左右輪重比を計算する。
(b) 各軸毎に測定された左右輪重比と各軸重とから第1測定帯20での左右方向の重心位置と前後方向の重心位置を計算する。
(c) 複数の車高計(211R,211L)により、車両の左右両側近傍の高さを計測し、車両の左右方向の傾斜角を計算する。
【0023】
3.第2測定帯30での測定
(a) 車両を走行させ、各軸毎に測定された左右の輪重波形を比較することで各軸の左右輪重比を計算する。
(b) 各軸毎に計算された左右輪重比と各軸重とから第2測定帯30での左右方向の重心位置を計算する。
(c) 複数の車高計(311R,311L)により、車両の左右両側近傍の高さを計測し、車両の左右方向の傾斜角を計算する。
4.重心の計算
(a) 第1測定帯20と第2測定帯30での車両1の傾斜角と左右方向の重心位置とにより、平坦な路面上での車両の左右方向の重心位置を計算する。
(b) 第1測定帯20と第2測定帯30での車両1の傾斜角と左右の重心位置とにより、平坦な路面上での車両1の重心高さ(車両1の上下方向の重心位置)を計算する。
なお、このようにして重心位置を決定することにより、車両1の横転事故に関する載荷責任者と輸送業者との間の過失度合を量ることも可能となる(即ち、本システムの測定結果は、重心計測結果の記録として、証拠資料として活用できることになる)。
【0024】
また、公共道路走行時には、道路側通信機器、例えば、GPSナビゲーションやカーブの曲率半径送信機器との連携により、測定した載荷状態での重心高さと路面状態とから、車両は安全走行することができる。
また、横転事故が発生した車両の重心測定結果をデータベース化することで、より安全な道路の構築や、車両の安全設計にも活用することができる。
さらに、本システムを用いた重心位置計測が一般化することにより、車両横転の予防を目的とした法整備が期待できる。
図3は、本発明の実施形態に係る走行型車両重心計測システムにおける監視装置2の動作を示すフローチャートである。
以下、図1,2を参照しながら、図3に示すフローチャートを使用して、走行型車両重心計測システムの動作を説明する。
まず、ステップS1では、キーボード、バーコードリーダ、デジタルスイッチ等の車両情報入力部203を介して測定対象車両1の車両情報(上述したように、車番、車種、車両重量、軸数、運転者等の情報)を入力する。
【0025】
次に、ステップS2では、外部装置4の表示装置・信号機401を用いて車両1を平坦路面10に誘導し、平坦路面10上を所定範囲の速度で走行させる。車両1が平坦路面10を走行したことは、車高計111R,111Lからの出力により演算部204で認識することができる。
次に、ステップS3では、一対の車高計111R,111Lにより、車両1の左右両側近傍の高さを計測し、演算部204で平坦路面10における車両の傾斜角を計算する。
次に、ステップS4では、出力部207は、外部の表示器・信号機401を介して車両1を第1測定帯20内を所定の速度範囲で走行するように誘導し、第1測定帯20を走行させる(但し、この誘導は省略することができる)。車両1が第1測定帯20を走行したことは、車高計211R,211Lからの出力により演算部204で確認することができる。
次に、ステップS5では、演算部204は、車両の軸毎に左右の輪重波形を取得する。
次に、ステップS6では、演算部204は、軸毎に取得した左右の輪重波形を用いて、車両の各軸の左右輪重比および軸重と、左右輪の荷重中心間隔とを計算する(但し、この左右輪の荷重中心間隔については、車検証のデータの一つである輪距を予めステップS1において入力しておいて、それを使用することも可能である)。
【0026】
次に、ステップS7では、演算部204は、車両の各軸の左右輪重比から、車両の左右方向の重心位置を計算する。
次に、ステップS8では、演算部204は、車両の各軸重に基づいて、車両の前後方向の重心位置を計算する。
次に、ステップS9では、演算部204は、車高計211R,211Lにより、車両の両端近傍の高さをそれぞれ計測し、演算部204で車両1の傾斜角を計算する。
次に、ステップS10では、出力部207は、外部装置4の表示器・信号機401を用いて車両1を第2測定帯30に所定の速度範囲で走行するよう誘導し、第2測定帯30を走行させる(但し、この誘導は省略することができる)。車両1が第2測定帯30を走行したことは、車高計311R,311Lからの出力により演算部204で確認することができる。
次に、ステップS11では、演算部204は、車両1の軸毎に左右の輪重波形を取得する。
次に、ステップS12では、演算部204は、軸毎に取得した左右の輪重波形を用いて、車両1の各軸の左右輪重比および軸重を計算する。
次に、ステップS13では、演算部204は、車両1の各軸の左右輪重比から、車両の左右方向の重心位置を計算する。
【0027】
次に、ステップS14では、演算部204は、車輪が輪重計を通過する時間から車両1の速度を求め、車両1の各軸が輪重計312R,312Lを順次通過するのに要した時間の間隔に上記車速を乗じて軸距を計算する。また、演算部204は、車両の各軸重に基づいて、車両の前後方向の重心位置を計算する。
次に、ステップS15では、演算部204は、車高計311R,311Lにより、車両1の左右両端近傍の高さを計測し、演算部204で車両の傾斜角を計算する。
次に、ステップS16では、演算部204は、第1測定帯20と第2測定帯30との通過時に計算された車両1の傾斜角と重心位置とにより、車両1が平坦路を走行している時の該車両1の左右の重心位置と、重心の高さとを計算する。
次に、ステップS17では、判定部207が、車両1の重心の高さが車高よりも低いか否かを検証し、仮に、車両1の重心の高さが車高よりも低くはない場合はステップS2に戻り、また、車両の重心の高さが車高よりも低い場合は出力部207に判定結果、例えば、図11(a)、(b)に示すように、重心位置をグラフィック化する信号を送出して、処理を終了する。
なお、ステップS6,S12では、左右の輪重波形(車両の輪重を示す波形)を比較する。つまり、左右の輪重は、左右の輪重波形そのものを比較することで、車輪が検出装置(輪重計)に載り始めた段階から、左右の輪重比が計算できる。
【0028】
〔左右の輪重比の計算〕
前述のステップS6,S12の処理では、左右の輪重比を計算する。
以下では、左右の輪重波形に基づいて左右の輪重比を計算する方法について詳しく説明する。
図4は、車両1の車輪が輪重計に乗り始めてから、降り終わるまでの左右の輪重波形を示すグラフである。
以下、図4を参照し、左右の輪重比の計算方法を説明する。
左右の輪重比は、(1)式から計算する。但し、(1)式において、WLtは、t時にサンプリングした左輪の荷重、WRtは、t時にサンプリングした右輪の荷重、aはWLtとWRtの比率を、それぞれ示すものとする。
【0029】
【数1】
但し、WLtは、サンプリングt時の左輪の荷重、
WRtは、サンプリングt時の右輪の荷重、
aは、WLtとWRtの比率とする。
(1)式より、左右の輪重の比率を求めることができるので、(1)式を最小二乗法により変形する。
最小二乗法の計算に使用する誤差は、(2)式で示されるものとする。
【0030】
【数2】
全波形おいて誤差Eが最小となるaを求めるため、(2)式で示される誤差Eを2乗した値であるE2を全波形分足し合わせてaで微分する。この計算式を(3)式および(4)式で示す。
【0031】
【数3】
【0032】
【数4】
(3)式および(4)式より、(4−1)式が成立するように計算すると、全波形における誤差Eが最小となる。
【0033】
【数5】
これより、(5)式および(6)式を得る。
【0034】
【数6】
【0035】
【数7】
なお、車両1の重心位置は、左右輪の荷重中心間隔をlTとすると、右輪から左輪に向かって(7)式で求められる位置となる。
【0036】
【数8】
ここで、(1)式より、(7)式は、(8)式で置き換えられ、分母と分子をWRtで除すと(9)式を得る。
【0037】
【数9】
【0038】
【数10】
ここで、他の軸との重心位置関係を明確にするため、車両中心軸からの左輪方向への重心位置を求めると、該重心位置は、(10)式で求められる。これを計算すると、(10−1)式となるので、車両中心軸からの左輪方向への重心位置を計算すると、(11)式となる。
【0039】
【数11】
【0040】
【数12】
【0041】
【数13】
また、軸重Waは、サンプリングt時の左の輪重WLtと右の輪重WRtとを加算した加算値をWAtとして(即ち、(12)式とし)、サンプリング(t+1)時の加算値WAt+1からサンプリングt時の加算値WAtを減じた値(即ち軸重差分値)が、十分に小さくなるサンプリングts時からサンプリングte時における加算値WAtを平均して求める。
の計算式を(13)式で示す。
【0042】
【数14】
【0043】
【数15】
図5は、軸重差分波形を示すグラフである。
前後方向の軸重の比較においても同様の方法を応用することで、前後方向の重心位置を計算することができる。
これに対して、左右の輪重を比較する場合、左右の輪重波形より各々の重さを計算して比較をするが、この方法では車輪が検出装置に全て載っている間しか計測することができないため、計測時間が短いときに誤差を生じやすくなる。
【0044】
〔左右輪の荷重中心間隔の測定〕
次に、図3におけるステップS7,S8,S13の処理では、該処理に先立って、ステップS6で、左右輪の荷重中心間隔lTを測定する必要が生じるので、以下では、左右輪の荷重中心間隔lTを測定する方法について説明する。
図6は、左右輪の荷重中心間隔lTを測定する方法を図示した説明図である。
測定対象車両1の輪距(車両の右車輪と左車輪との間隔)を車両の諸元表から得るか、第1測定帯20での輪重計212R,212Lのロードセルを、さらに右側と左側に分割して、それぞれのロードセルの出力差により車輪の載っている位置を計算して輪距に対応する値である左右輪の荷重中心間隔lTを求める(ステップS6の詳細)。
図6(a)の正面側より見て左側の輪重計212Rの載荷板Tlの下側を支える4つのロードセルLll1,Lll2,Llr1,Llr2より得られた重さ(出力)を、それぞれWll1,Wll2,Wlr1,Wlr2とし、右側の輪重計212Lの載荷板Trの下側を支えるロードセルLrl1,Lrl2,Lrr1,Lrr2のロードセルより得られた重さ(出力)を、それぞれWrl1,Wrl2,Wrr1,Wrr2とする時、(14)式の関係より、それぞれの比率を求める。
これにより、(15)式を得る。
【0045】
【数16】
【0046】
【数17】
(6)式と同様に(16)式が求まる。
【0047】
【数18】
(11)式と同様に、輪重計212R内の左右ロードセルLll1,Lll2の取り付け位置と、Llr1,Llr2の取り付け位置との間の距離をllとし、また、輪重計212L内の左右ロードセルLrl1,Lrl2の取り付け位置と、Lrr1,Lrr2の取り付け位置との間の距離をlrとし、さらに、輪重計212Rと輪重計212Lの上の車輪の位置を各輪重計の中心軸より左方向にDl,Drとすると、Dl,Drは、(17)式により算出される。
【0048】
【数19】
さらに、(15)式と、輪重計212R,重計212Lの、それぞれの中心軸からの距離Dlrとにより、(18)式が得られる。
【0049】
【数20】
左右の重心位置を求める場合、左右輪の荷重中心間隔で計算する方法の方が、荷重中心位置で計算することになるので、車検証に基づく輪距で計算するよりも正確である。
【0050】
〔車両の左右重心位置の計算〕
次に、ステップS7(第1測定帯20上での処理)の処理と、S13(第2測定帯30上での処理)の処理として、車両の左右重心位置を計算する方法について詳述する。
各軸の比率aをaiとし、左右輪の荷重中心間隔をlTiとし、軸重Waiとする(従って、例えば、1軸目については、比率はa1、左右輪の荷重中心間隔はlT1、軸重はWa1となる)。
各軸の重心位置に軸重を乗じて、全部の軸の(重心位置×軸重)を加算したものを、全部の軸重を加算したもので除すことで、車両全体の車体中心から左方向の重心位置Clを求めることができる。
図7は、車両の左右重心位置の計算方法の一例を示す説明図である。
例えば、2軸車の計算を行う場合は、車両の左右重心位置の計算は、図7で示されるので、車両全体の車体中心から左方向の重心位置Clは、(19)式で計算される。
【0051】
【数21】
また、(19)式での計算方法を多軸車に適応できるように変形すると、(20)式となる。
【0052】
【数22】
〔軸距の測定〕
以下では、ステップS14(第2測定帯30上)の処理である軸距の計算の計算方法を説明する。
この実施形態では、車両1が一定速度で重心計測路に設けられた上述の各測定帯上を走行する時の輪重を計測する場合を想定しているので、前記の各輪重計で得られる波形に基づいて車両の速度Vを計算し、次に、各軸の通過時間Tviから軸距lwを求めることができる。
例えば、1軸目が通過する時間をTv1、2軸目が通過する時間をTv2とした場合、求める軸距lwは(21)式で計算される。
【0053】
【数23】
〔車両の前後重心位置の計算〕
以下では、ステップS8(第1測定帯20上での処理)と、ステップS14(第2測定帯30上での処理)の処理である車両の前後重心位置の計算の計算方法を説明する。
車両の各軸の最後軸からの軸距をlwi(即ち、1軸目の軸距はlw1)として、全部の軸の(軸距×軸重)を加算したものを、全部の軸重を加算したもので除すことで、車両全体の後軸からの前後方向の重心位置Cfを求めることができる。
図8は、車両の前後重心位置の計算方法の一例を説明するための車両を模式的に示す側面図である。
例えば、2軸車の計算を行う場合は、車両1の前後重心位置の計算は、図8で示されるので、前後方向の重心位置Cfは、(22)式で計算される。
また、(22)式を多軸車に適応できるように変形すると、軸数がnの場合、(23)式となる。
【0054】
【数24】
【0055】
【数25】
〔車高の測定〕
この実施形態では、車両1の平坦路面走行時の重心位置と重心高さとを求めるため(ステップS16の処理)、まずは、第1測定帯20および第2測定帯30における、車高と、車両1の傾斜角とを測定する(ステップS15の処理)。
図9(a)、(b)、(c)は、車両の重心高さと、傾斜角とをそれぞれ測定している場合の重心計測路での状態を示すものであり、図9(a)は、平坦路面10での状態、図9(b)は、第1測定帯20での状態、図9(c)は、第2測定帯30での状態を、それぞれ示すものである。
同図に示すように、車両の重心高さと、傾斜角とをそれぞれ測定する場合は、重心計測路(図1)に配された6個の車高計(車高計111R,111L,211R,211L,311R,311L)を使用する。
以下では、平坦路面10に配置された車高計111R,111Lにより測定された車高を、それぞれH1,H2とし、この場合の車体の傾斜角をθ1とする。
また、第1測定帯20に配置された車高計211R,211Lにより測定された車高を、それぞれH3,H4とし、この場合の車体の傾斜角をθ2とする。
【0056】
さらに、第2測定帯30に配置された車高計311R,311Lにより測定された車高を、それぞれH5,H6とし、この場合の車体の傾斜角をθ3とする。
ちなみに、上記の傾斜角θ1,θ2,θ3は、(24)式で求めることができる。
【0057】
【数26】
〔平坦路面走行時の重心位置と重心高さの計算〕
この計算は、前述のステップS16に含まれる処理である。
(20)式より、第1測定帯20における車両の左右方向の重心位置Cl1と、第2測定帯30における車両の左右方向の重心位置Cl2とを求め、車両が、一般的な平坦路面を通過する時の、左右方向の重心位置ClNと車両の重心高さChとを求める。
前述の各車高計より求めた車両の各傾斜角(θ1,θ2,θ3)から、図10に示すように下記の(25)式でθ1−2,θ1−3を定義すると、車両が平坦路面を走行する時の重心高さChは、第1測定帯で計算された結果と第2測定帯で計算された結果が等しくなるはずであることから(26)式で計算される。
【0058】
【数27】
【0059】
【数28】
また、(26)式より、車両が平坦路面を走行する時の左右方向の重心位置ClNは、(27)式で計算される。
【0060】
【数29】
さらに、(26)式と(27)式とから、一般的な平坦路面を通過する時の、車両の重心高さ(即ち、上下方向の重心位置)Chは、(28)式として求められる。
【0061】
【数30】
この(28)式を整理すると、(29)式が得られ、これから、第1測定帯20における車両の左右方向の重心位置Cl1と、第2測定帯30における車両の左右方向の重心位置Cl2と、前述の各車高計より求めた車両の各傾斜角(θ1,θ2,θ3)とから、車両が一般的な平坦路面を通過する時の当該車両の重心高さChを、求めることができる。
【0062】
【数31】
平坦路を走行する車両の傾斜角θ1を基準とした2種類の傾斜角θ2,θ3の走行下で計測した左右重心位置Cl1,Cl2から車両の重心高さが算出できることを示している。
θ1が十分小さければθ1を計測せずにθ1-3=θ3,θ1-2=θ2として近似計算することができる。
このとき、車高計111R,111Lが必要なくなる。
さらに、θ3またはθ2が十分小さいときでも計算可能である。
なお、上記の計算により、前記の重心高さChが車高よりも高くなる場合は、本システムによる測定を再度実施するものとする。
【0063】
〔車両重量の決定〕
車両1を一定の低速度(5〜20Km/h)で通過させて、計測装置3(前記の各輪重計)で得られる波形より輪重を求め、左右の輪重を加算して軸重値Waiを算出し、さらに軸数分加算することで、車両重量Wvを決定することができる。
例えば、軸数がnの場合は、車両重量Wvは(30)式で求められる。
【0064】
【数32】
〔貨物重量の決定〕
貨物重量を決定する際には、予め、トラクタ部の重量Wdと、トレーラ部の重量Wpとを測定するか、若しくは車検証に基づき記録しておいて、この値を車両重量Wvから、減ずることで、貨物重量Wcを計算することができる。この計算式を(31)式で示す。
【0065】
【数33】
〔貨物の前後左右および上下の重心位置の決定〕
貨物の前後左右および上下の重心位置を決定する際には、予め、トラクタ部、およびトレーラ部の前後左右および上下の重心位置を測定するか、若しくは記録しておいて、本システムで測定した車両全体の前後左右および上下の重心位置により、貨物の前後左右および上下の重心位置を求めることができる。よって、トラクタ部の前後,左右,上下の重心位置を、それぞれ、Cdf,Cdl,Cdhとし、トレーラ部の前後,左右,上下の重心位置を、それぞれ、Cpf,Cpl,Cphとし、車両全体の前後,左右,上下の重心位置を、それぞれ、Cf,ClN,Chとし、貨物の前後,左右,上下の重心位置を、それぞれ、Ccf,Ccl,Cchとすると、モーメントと力の関係とにより、(32)式で貨物のみの上記各重心位置を算出することができる。
【0066】
【数34】
〔車両横転危険度の決定〕
車両横転危険度の決定は、本システムで計算された、前後方向、左右方向と高さ方向の重心位置とから、予め設定した危険レベルと比較することにより、車両横転の危険度を決定する。
【0067】
〔車両横転危険度の通知〕
車両横転危険度の通知方法としては、視認可能な警告標示板に該危険度を表示することが考えられる。
図11(a)、(b)は、車両横転危険度を視覚的に表示した一表示例を模式的に示すものであって、図11(a)は、背面図、図11(b)は、側面図である。
本システムで決定した車両横転危険度は、例えば、図7に示すように、重心位置を特定の色で表示するなどの方法で、運転者または設備管理者に対して視覚的に一目で分かるように表示することが好ましい。
【0068】
〔車両重心情報の活用〕
本システムで得られた車両重心情報は、下記の活用範囲を有している。
(1) 陸上輸送車両の積載状態の管理
(2) 陸上輸送車両の横転防止
(3) 貨物ターミナル、コンテナターミナルなどでの不適切貨物の発見・是正
(3) 道路交通安全管理
(3) 海上輸送コンテナにおける荷主と輸送業者との間の過失度合の責任分界の目安
(4) GPS情報と地図情報との連携(走行先のカーブの曲率を得て、安全な通過速度の上限値を通知することができる)。
この実施形態の走行型車両重心計測システムによれば、以下に述べる特有の効果が得られる。即ち、重心計測に要する時間が短く、かつ走行しながら計測するため交通渋滞を招来しないので、構内道路等の交通を妨げることなく、車両の重心位置を、積載する貨物も含めて測定することができる効果が有る。
また、過密なコンテナターミナルの荷役業務を妨げずに重心を計測することができる効果が有る(例えば、ストラドルキャリアでコンテナを移動する際の重心計測で陸送前の積載状態確認が可能である。また、コンテナターミナル構内での不適切コンテナ発見・是正を促進することができる)。
【0069】
また、例えば、コンテナトレーラの重心計測と、運転者への横転危険度を通知することが可能となる効果が有る。
また、重心位置表示板などで視覚的に表示することにより、車両の運転者に対して積載状態を知らせることができるので、運転操作に際しての意識的な注意を喚起することができる効果が有る。
また、ナビゲーションシステムとの連携により、積載重量,車両高さ,車両重心位置を考慮したルート案内と、道路曲率に即した速度抑制案内ができる効果が有る。
また、輸送中の横転事故や貨物の落下事故を抑制できる効果が有る。
また、重心計測結果の記録を証拠資料として活用することにより、横転事故に関する荷主と輸送業者の間の過失度合を客観的且つ公正な判断をすることができる効果が有る。
【0070】
また、公共道路を走行する時には、路側通信機器との連携により、載荷状態と路面状態とに基づいた安全走行を実施することができる効果が有る。
また、横転事故が発生した車両の重心測定結果をデータベース化することで、より安全な道路の構築や、より安全な車両の設計に応用することができる効果が有る。
【0071】
さらに、本システムの重心位置計測方法が普及し、一般化することにより、車両横転の予防を目的とした法整備を進めることができる効果が有る。
なお、本発明に係る構成要素の処理の少なくとも一部をコンピュータ制御により実行するものとし、かつ、上記処理を、図3のフローチャートで示した手順によりコンピュータに実行せしめるプログラムは、半導体メモリを始め、CD−ROMや磁気テープなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配付してもよい。そして、少なくともマイクロコンピュータ、パーソナルコンピュータ、汎用コンピュータを範疇に含むコンピュータが、上記の記録媒体から上記プログラムを読み出して、実行するものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、走行型車両重心計測システムの開発に適用可能であり、特に、測定対象車両を所定の速度で走行させたままで、該車両の水平方向や垂直方向の重心位置を迅速に決定することができる走行型車両重心計測システムの開発に好適である。
【符号の説明】
【0073】
1 測定対象車両
2 監視装置
3 計測装置
4 外部装置
10 平坦路面
11,21,31 ガントリ
20 第1測定帯
30 第2測定帯
201 増幅器
202 A/D変換部
203 車両情報入力部
204 演算部
205 記録部
206 判定部
207 出力部
111R,111L,211R,211L,311R,311L 車高計
212R,212L,312R,312L 輪重計
401 表示器・信号機
402 ネットワーク
403 車両端末(ELTなど)
404 遮断機
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両重心計測システムに係り、特に、測定対象車両の水平方向の重心位置決定手段に加えて、上下方向(垂直方向)の重心位置決定手段を備えた走行型車両重心計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の重心を測定することは、車両の走行時の安全を確保するために重要な要素であり、よって、この車両重心の測定を行う車両重心計測システムの重要性は増している、といえる。
特に、貨物を積載する車両(トラック等)の場合、できるだけ積載量を多くしたい場合には、ともすれば、貨物を高さ方向へ積み上げる安直な方法が実施されがちである。
しかし、このような場合、車両の重心位置が高くなると、荷崩れが無くとも、走行路に左右の高低差が有る場合や、急ハンドルを切った場合に車体がローリングしたり、またカーブ区間に車両が到達すると遠心力が増大して、車体が転倒するなどの危険性が生じる。
よって、車両の水平方向の重心(より具体的には前後方向の重心と、左右方向の重心)の重心位置決定方法に加えて、車両の垂直方向(上下方向)の重心位置決定方法を開発することが本発明に際しての1つの課題であった。
また、測定時、後続車群に渋滞を生じさせないために、測定時に測定対象車両を停止させることなく、走行中に上記の各重心を測定できるようにすることも本発明に際しての1つの課題であった。
【0003】
さらには、測定対象車両が重心計測路を1回だけ走行する間に、上記の水平方向および垂直方向の各重心位置測定が行えるようにすることも本発明に際しての1つの課題であった。
なお、従来から、一般に、陸上輸送貨物の積載状態を知り、車両の過積載や偏積(積荷の偏り)を発見したときの是正を目的とする計測装置として積載重量計が、特許文献1(特開平6−58796号公報)にて提案されている。
この特許文献1(特開平6−58796号公報)には、過積載の車両を発見し得ると共に積荷の片寄りによる重心位置のズレの検出機能を有する積載重量計が開示されている。具体的には、貨物自動車の前輪および後輪に於ける一軸重量を順次測定する軸重計を2個用いて積載重量計を構成している。即ち、前輪および後輪のそれぞれについて、該2個の重量計で得られた重量を合計した一軸重量と、前輪および後輪の間の車軸間距離とによって前後方向の重心位置を求め、この重心位置と理想的な重心位置とを比較することにより、前後方向の重心位置のズレを検出する。同様に、左右方向の重心位置は、前記2個の重量計で得られた左側の前後の車輪(タイヤ)の合計重量と右側の前後の車輪の合計重量とにより求めるものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−58796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記背景技術で述べた従来の重心位置検出機能を有する積載重量計にあっては、水平方向(より具体的には前後方向の重心と、左右方向の重心)の重心位置決定に留まっており、垂直方向(上下方向)の重心位置決定については全く想定されていない。
このため、前述のとおり、車両の重心位置が高い場合は、荷崩れが無くとも、走行路に左右の高低差が有る区間や、カーブ区間に車体が到達すると、車体がローリングしたりカーブを曲がり切れず、車両が積荷と共に横転する事故を未然に防止することができないといった問題点があった。
即ち、特許文献1に記載された従来技術にあっては、車両の走行に伴い、貨物の過積載と積載の片寄りを計測することはできるが、積載重心の高さが分からないため、走行中の操舵による車体のローリングに起因した横転の危険度合いが分からないといった致命的な問題があった。
【0006】
近年では、貨物の積載状態に起因して、貨物輸送車両の横転事故に繋がる事例が目立っており、特に、輸送業者が貨物の内容や積載状態を把握できない輸送コンテナにあっては、陸上輸送中の横転事故が社会問題となっている。しかしながら、前述のとおり、従来の水平方向重心位置のみしか計測できない積載重量計では、このような横転事故を抑止するまでの危険度合いを測れないために輸送運転者への運転操作に対する十分な注意喚起をすることができない。
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであって、車両を走行させながら車両の水平方向および垂直方向の重心位置を測定することを可能にすると共に、該測定結果により、貨物の積載状態を的確に把握することで車両の横転事故等を抑止することができる走行型車両重心計測システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載した発明に係る走行型車両重心計測システムは、上記の目的を達成するために、
車両の重心位置を計測する車両重心計測システムにおいて、
測定対象の車両を通過させる平坦路と、左右勾配の異なる第1測定帯と第2測定帯とからなる重心計測路に沿って、複数設けられ、前記車両の左右方向の傾きを計測する複数の傾斜角決定手段と、
前記重心計測路上に沿って前記車両の各軸の左右両輪の輪重を独立して計測し得るように配設された複数対の輪重計と、
前記輪重計で計測された最前軸から最後軸までの輪重を加算して前記車両の総重量を決定する車両重量決定手段と、
前記車両の左右方向の重心位置を決定する左右重心位置決定手段と、
前記車両の前後方向の重心位置を決定する前後重心位置決定手段と、
前記2つの傾斜角決定手段により得られた傾斜角と、前記左右勾配の異なる路面に設置された前記軸重計上に車両を通過させて得られた双方の重心位置とに基づき、上下方向の重心位置を決定する上下重心位置決定手段とを具備し、
測定対象の車両を走行させながら、左右方向重心位置、前後方向重心位置および上下方向重心位置をそれぞれ計測し得るように構成したことを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載した発明に係る走行型車両重心計測システムは、上記の目的を達成するために、
車両の重心位置を計測する車両重心計測システムにおいて、
測定対象の車両を通過させる平坦路面と、この平坦路面に順次連続する左右勾配の異なる第1測定帯と第2測定帯とから重心計測路を敷設し、
前記平坦路面の左右の上部に配設された第1の車高計および第2の車高計と、
前記第1測定帯の左右の上部に配設された第3の車高計および第4の車高計と、
前記第1測定帯の路面に配設され、各輪重を独立して計測し得る第1の輪重計および第2の輪重計と、
前記第2測定帯の左右の上部に配設された第5の車高計および第6の車高計と、
前記第2の測定帯の路面に配設され、各輪重を独立して計測し得る第3の輪重計および第4の輪重計と、
前記第1〜第6の車高計の計測結果に基づき、前記平坦路、前記第1測定帯、前記第2測定帯を通過する時の前記車両のそれぞれの傾斜角を決定する傾斜角決定手段と、
前記車両の総重量を決定する車両重量決定手段と、
前記車両の前後方向の重心位置を決定する前後重心位置決定手段と、
前記車両の左右方向の重心位置を決定する左右重心位置決定手段と、
前記車両の上下方向の重心位置を決定する上下重心位置決定手段と、
を具備し、
前記測定対象の車両を前記重心計測路上を走行させながら、左右方向重心位置、前後方向重心位置および上下方向重心位置をそれぞれ計測し得るように構成したことを特徴としている。
【0009】
また、請求項3に記載した発明に係る走行型車両重心計測システムは、
前記車両重量決定手段は、前記車両を走行させながら、前記各輪重計の波形より得られる最前軸から最後軸までの左右独立した輪重を、各軸毎に測定した後、該左右の輪重を加算して各軸毎の軸重値を求め、さらに、該各軸毎の軸重値を全ての軸について加算した値により、前記車両の総重量を決定することを特徴としている。
また、請求項4に記載した発明に係る走行型車両重心計測システムは、
前記前後重心位置決定手段は、前記車両を走行させながら、前記各輪重計の波形より前記車両の走行速度を求め、また、前記車両の各軸の前記各輪重計の通過時間と前記走行速度より、各軸の軸間距離を求め、さらに、前記軸間距離と前記軸重値との積を全ての軸について加算した値を前記車両の前記総重量で除して算出し、決定することを特徴としている。
また、請求項5に記載した発明に係る走行型車両重心計測システムは、
前記左右輪重比決定手段は、前記第1測定帯と前記第2測定帯での左右の前記各輪重計への前記車両の車輪の載り始めから前記車両の車輪が降りるまでの間にサンプリングした輪重波形を全て使用して最小二乗法により算出することを特徴としている。
【0010】
また、請求項6に記載した発明に係る走行型車両重心計測システムは、
前記左右重心位置決定手段は、前記車両を走行させながら、前記第1測定帯と前記第2測定帯での車両の傾斜角と左右の重心位置とに基づいて、前記第1測定帯と前記第2測定帯の上下方向の重心位置が同じであることから、計算式を導き出し、前記車両の一般的な平坦路面における左右方向の重心位置を計算し、決定することを特徴としている。
また、請求項7に記載した発明に係る走行型車両重心計測システムは、
前記上下方向重心位置決定手段は、前記第1測定帯と前記第2測定帯での前記車両の前記傾斜角と前記左右の重心位置とに基づいて、前記第1測定帯と前記第2測定帯の上下方向の重心位置が同じであることから、計算式を導き出し、前記車両の一般的な平坦路面における上下方向の重心位置を計算し、決定されるものであることを特徴としている。
また、請求項8に記載した発明に係る走行型車両重心計測システムは、
前記第1測定帯における前記傾斜角は、前記第3と前記第4の車高計による前記車両の高さの測定値に基づいて計算されるものであることを特徴としている。
また、請求項9に記載した発明に係る走行型車両重心計測システムは、
前記第1測定帯における前記左右の重心位置は、前記第1と前記第2の各輪重計の測定結果に基づく、各軸毎に測定された左右輪重比と各軸重とから計算されるものであることを特徴としている。
【0011】
また、請求項10に記載した発明に係る走行型車両重心計測システムは、
前記第2測定帯における前記傾斜角は、前記第5と前記第6の車高計による前記車両の高さの測定値に基づいて計算されるものであることを特徴としている。
また、請求項11に記載した発明に係る走行型車両重心計測システムは、
前記第2測定帯における前記左右の重心位置は、前記第3と前記第4の輪重計の測定結果に基づく、各軸毎に測定された左右輪重比と各軸重とから計算されるものであることを特徴としている。
また、請求12に記載した発明に係る走行型車両重心計測システムは、
平坦路面における前記第1の輪重計と前記第2の輪重計を支持する複数のロードセルを、さらに各輪重計の右側と左側とに分割配置し、それぞれのロードセルの出力差により、前記車両の車輪の載っている位置を計算して左右輪荷重中心間隔を決定する左右輪荷重中心間隔決定手段をさらに具備することを特徴としている。
さらに、請求項13に記載した発明に係る走行型車両重心計測システムは、
前記前後重心位置決定手段と前記左右重心位置決定手段と前記上下重心位置決定手段により決定した多重心位置を検証することにより、前記上下重心位置の高さが危険水準に有る場合は警告表示する装置を、さらに具備することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、測定対象の車両を走行させながら水平方向のみならず、上下方向の重心位置を短時間で計測することができるため、構内道路の交通を妨げることなく、交通渋滞を招来せずに、重心位置の計測を行うことができる。
その結果得られた3方向の重心位置計測結果を、運転者に告知することにより、運転者が運転操作を意識的に注意するようになり、より具体的には、運転者への横転危険度の通知が可能となり、結果的に、車両輸送中の横転事故や貨物の落下事故を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る走行型車両重心計測システムの重心計測路から見た全体の概略構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る走行型車両重心計測システムの監視装置を含む全体構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る走行型車両重心計測システムにおける監視装置の動作手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明に係る車両重心計測システムに使用される輪重計から出力される車両の左右の輪重波形および輪重比を示すグラフである。
【図5】軸重差分波形を示すグラフである。
【図6】(a)、(b)は、左右輪の荷重中心間隔を測定する方法を説明するための図であり、このうち、(a)は、測定対象車両が左右の輪重計に乗った状態を示す正面図、(b)は、輪重計に配置されたロードセルを示す平面図である。
【図7】車両の左右重心位置の計算方法の一例を示す車両の正面図である。
【図8】本発明に係る車両の前後重心位置の計算方法の一例を説明するための側面図である。
【図9】車両の傾斜角を計測し、車両の重心高さを計測する場合の重心計測路での状態を示す説明をするものであり、図9(a)は、平坦路面10での状態、図9(b)は、第1測定帯20での状態、図9(c)は、第2測定帯30での状態を、それぞれ示す正面図である。
【図10】車両を左右に傾けて車両の重心高さの計算方法を視覚的に示したもので、(a)は、右側に傾けた状態を示す正面図、(b)は、左側に傾けた状態を示す正面図である。
【図11】車両横転危険度を視覚的に表示した一表示例を示すもので、(a)は、背面図、(b)は、側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の走行型車両重心計測システムは、測定対象車両(以下、単に「車両」と略称することがある)1の重心位置として、車体左右方向の重心、車体前後方向の重心、車体上下方向の重心を測定し、決定する。
また、この決定に関連して、車両1の、車体の傾斜および車体重量を測定し、さらには、積載貨物の、重量、前後、左右および上下の重心を決定する。
また、これらの測定値から、車両1の横転危険度を算出して検知することができるようにしている。
以下、本発明の走行型車両重心計測システムの第1の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る走行型車両重心計測システムの重心計測路から見た計測装置3の構成を示す斜視図である。
同図において、第1の実施形態の走行型車両重心計測システムは、測定対象車両1の重心を測定するシステムであり、重心を測定する測定区間(即ち重心計測路)として、平坦路面10と、第1測定帯20と、第2測定帯30と、を敷設する。
平坦路面10には、門型のガントリ11を立設し、このガントリ11の上部に所定間隔を隔てて車高計111Rおよび車高計111Lと、を配設する。
【0015】
第1測定帯20には、門型のガントリ21を立設し、このガントリ21の上部に所定間隔を隔てて車高計211Rおよび車高計211Lを配設すると共に、左右の高さが異なる走行路面には、輪重計212Rおよび輪重計212Lと、を設ける。
第2測定帯30には、門型のガントリ31を立設し、このガントリ31の上部に所定間隔を隔てて車高計311Rおよび車高計311Lを配設し、さらに左右の高さが異なる走行路面に輪重計312Rおよび輪重計312Lと、を設ける。
この他に、計測装置3と離れた位置に、上記の各計測装置3の計測結果を纏めて、車両の重心位置、車両総重量、車両の横転危険度等を算出する監視装置を備えるが、その詳細は、図2で説明する。
以下、図1を参照して、この第1の実施形態の走行型車両重心計測システムの重心計測路から見た各構成要素について説明する。
平坦路面10は、走行路の左右に高低差(段差)を有しない平坦な測定区間である。
第1測定帯20は、走行路の左右に高低差(段差)を有し、かつ車両の進行方向に沿って車両の長さの2倍の長さに輪重計の長さを加えた全長を有する測定区間である。この第1測定車両は、一方の路面、この場合、右側の路面は、平坦路面10と同じ面となっているが、左側の路面には、中央部が一定長さに亘って、所定の段差を有する平坦部aを設け、その手前側には、進入側斜面bが形成され、先方側には、退出側斜面cが形成されている。
【0016】
第2測定帯30は、走行路の一方側に、第1測定帯20の高低差とは反対となる高低差(段差)を有し、かつ車両の進行方向に車両の長さの2倍の長さに輪重計の長さを加えた全長を有する測定区間である。この第2測定帯30においても、左側の路面は、平坦路面10と同じ面となっているが、右側の路面は、中央部が一定長さに亘って所定の段差を有する平坦部aを設け、その手前側には、進入側斜面bが形成され、先方側には、退出側斜面cが形成されている。
なお、上記のいずれの走行路も、左右の高低差は、精度を考慮すると、車両の前方から見た時の傾斜角は、1.5°〜5.0°の範囲内とし、より好ましくは、1.5°〜3.0°の範囲内とすることが望ましい。
下限値1.5°を下回ると、高さ方向の重心計測の精度が低くなり、上限値5.0°を越えると、安全性に問題が出てくる。
第1測定帯20の輪重計212R,212Lは、車両が右に傾斜するように段差をつけた第1測定帯20を通過する間に左右各々の輪重の測定を行う機能を有する。
また、左右の輪重計は、輪重の左右バランスを測定することによって輪重計上での車輪の左右の位置を測定する機能を有する。これらの輪重計は、後述する第1の輪重計測手段に用いられる。
【0017】
第2測定帯30の輪重計312R,312Lは、車両が第1測定帯20の左右高低差とは異なる(より具体的には反対の右側が高い)左右高低差を有するように段差(左右高低差)を付与した第2測定帯30を通過する間に左右各々の輪重の測定を行う機能を有する。これらの輪重計は、後述する第2の輪重計測手段に用いられる。
車高計111R,111L,211L,211R,311R,311Lは、各々、車両の高さを計測する機能を有する。これらの車高計は、車両の通過時に、車両の両側の高さをレーザー距離測定器(または超音波距離測定装置、もしくは、三角測距装置でもよい)で測定し、その車高値を用いて傾きを計算するために使用する(詳細は後述する)。
図2は、本発明の実施形態に係る走行型車両重心計測システムの計測装置監視装置および外部装置を含む全体構成を示すブロック図である。
図2に示す監視装置2は、増幅部201と、A/D変換部202と、車両情報入力部203と、演算部204と、記録部205と、判定部206と、出力部207と、を備えて構成される。
【0018】
図2に示す表示器・信号機401、ネットワーク(有線、無線)402、車両端末(ETCなど)403および遮断機404は、ここでは出力部207を介して制御される外部装置4としているが、これらの装置(設備)は、本実施形態に係る監視装置2の構成要素に含めることも可能である。
以下、監視装置2の各構成要素の機能について説明する。
増幅部201は、前述の各輪重計212R,212L,312R,312Lおよび各車高計111R,111L,211R,211L,311R,311Lの測定信号を増幅する機能を有する。
A/D変換部202は、増幅器201により増幅された前述の各輪重計212R,212L,312R,312Lおよび各車高計111R,111L,211R,211L,311R,311L(以下、これらの符号を省略する場合がある)の測定信号をA/D変換する。
車両情報入力部203は、キーボードやバーコード(いずれも図示は省略)等を用いて、車両の車番、車種、車両重量、軸数等と運転者の情報を入力することが可能であり、さらには、本発明に必須ではないが、車検証に記載されている軸距、輪距も入力可能であり、また、前記の入力情報を演算部204に送出する機能を有する。
【0019】
演算部204は、A/D変換部202でA/D変換された前述の各輪重計および各車高計の測定信号のデジタル値と、車両情報入力部203から送出される情報とを用いて、車両の重心位置、車両重量、左右の輪荷重中心間隔、軸距(軸間距離)および傾斜角を算出して各々決定する機能を有する。また、空車重量、貨物重量、空車の前後・左右・上下の各重心位置、貨物の前後・左右・上下の各重心位置を算出する機能を有する。
記録部205は、A/D変換部202で変換された前述の各輪重計および各車高計の測定信号のデジタル値(輪重データ、車高データ)および演算部204で決定した各種演算結果(車両重量、傾斜角、重心位置、左右輪荷重中心間隔、軸距、判定結果)と、車両情報入力部203を介して入力された車両情報とを記録する。
判定部206は、演算部204で演算し、決定された結果を用いて、測定対象車両1の横転危険度および過積載の決定を行う。
出力部207は、車両重心情報(演算結果や判定結果)と横転危険度の情報とを、外部の装置4(想定される接続機器)に出力する。外部装置4としては、例えば、表示器・信号機401、ネットワーク(有線、無線)402、車両端末(ETCなど)403、遮断機404などとの接続が可能である。
【0020】
以下、本発明の第1の実施形態に係る走行型車両重心計測システムによる重心位置の測定手順について図1、図2を参照して説明する。
(1) 測定対象車両1を、5〜20〔km/h〕程度で走行させながら、第1測定帯20の輪重計212R,212Lと、第2測定帯30の輪重計312R,312Lとを順次通過させ、各輪重と左右輪荷重中心間隔と、軸距とを測定および計算より求める(具体的計算方法は、後述する)。
(2) また、測定対象車両1が、平坦路面10上と、第1測定帯20の輪重計212R,212L上と、第2測定帯30の輪重計312R,312L上とを、それぞれ通過する時に、車高計111R,111L、車高計211R,211Lおよび車高計311R,311Lとにより、それぞれ該車両1の車高を測定し、この測定結果から、該車両1が前記各車高計111R,111L,211R,211L,311R,311Lをそれぞれ通過した時の該車両車体の左右方向の傾きを計算する。
【0021】
(3) 第1測定帯20の輪重計212R,212Lの測定値、輪重波形からは、後述する方法により各車輪の左右荷重分布を測定することにより、左右輪荷重の中心間隔を計算する。第2測定帯30の輪重計312R,312Lの測定値、輪重波形からは、各軸の左右の各車輪の輪重を計算し、さらに、左右輪重比、軸重を計算する。
(4) (1)〜(3)項の実行により得られた測定対象車両1の輪重、車両傾き、左右輪荷重中心間隔に基づき、該車両の前後方向、左右方向および上下方向の重心を計算する。
(5) 監視装置1の車両情報入力部203を介して入力された車両情報と、(4)項の演算結果とをデータ化し、記録部205に記録する。
(6) 判定部206により、(5)項の記録データに基づく危険度合いを判定し、出力部207へ、該危険度の情報を送出する。例えば、上下方向重心位置と、車両速度と、車両重量と、カーブ道路の曲率半径をパラメータとした危険度度合いを設定する。
(7) 出力部207は、外部装置4の表示器・信号機401、ネットワーク402、車両端末403、遮断機404等の各外部機器に該情報を出力する。
【0022】
以下、本発明の第1の実施形態に係る走行型車両重心計測システムの重心位置の決定方法について詳細に説明する。
1.平坦路面10での測定
(a) 車両を走行させ、複数の車高計(111R,111L)により、左側および右側近傍の車両の高さをそれぞれ測定する。
2.第1測定帯20での測定
(a) 車両を走行させ、各軸毎に測定された左右の輪重波形を比較することで各軸の左右輪重比を計算する。
(b) 各軸毎に測定された左右輪重比と各軸重とから第1測定帯20での左右方向の重心位置と前後方向の重心位置を計算する。
(c) 複数の車高計(211R,211L)により、車両の左右両側近傍の高さを計測し、車両の左右方向の傾斜角を計算する。
【0023】
3.第2測定帯30での測定
(a) 車両を走行させ、各軸毎に測定された左右の輪重波形を比較することで各軸の左右輪重比を計算する。
(b) 各軸毎に計算された左右輪重比と各軸重とから第2測定帯30での左右方向の重心位置を計算する。
(c) 複数の車高計(311R,311L)により、車両の左右両側近傍の高さを計測し、車両の左右方向の傾斜角を計算する。
4.重心の計算
(a) 第1測定帯20と第2測定帯30での車両1の傾斜角と左右方向の重心位置とにより、平坦な路面上での車両の左右方向の重心位置を計算する。
(b) 第1測定帯20と第2測定帯30での車両1の傾斜角と左右の重心位置とにより、平坦な路面上での車両1の重心高さ(車両1の上下方向の重心位置)を計算する。
なお、このようにして重心位置を決定することにより、車両1の横転事故に関する載荷責任者と輸送業者との間の過失度合を量ることも可能となる(即ち、本システムの測定結果は、重心計測結果の記録として、証拠資料として活用できることになる)。
【0024】
また、公共道路走行時には、道路側通信機器、例えば、GPSナビゲーションやカーブの曲率半径送信機器との連携により、測定した載荷状態での重心高さと路面状態とから、車両は安全走行することができる。
また、横転事故が発生した車両の重心測定結果をデータベース化することで、より安全な道路の構築や、車両の安全設計にも活用することができる。
さらに、本システムを用いた重心位置計測が一般化することにより、車両横転の予防を目的とした法整備が期待できる。
図3は、本発明の実施形態に係る走行型車両重心計測システムにおける監視装置2の動作を示すフローチャートである。
以下、図1,2を参照しながら、図3に示すフローチャートを使用して、走行型車両重心計測システムの動作を説明する。
まず、ステップS1では、キーボード、バーコードリーダ、デジタルスイッチ等の車両情報入力部203を介して測定対象車両1の車両情報(上述したように、車番、車種、車両重量、軸数、運転者等の情報)を入力する。
【0025】
次に、ステップS2では、外部装置4の表示装置・信号機401を用いて車両1を平坦路面10に誘導し、平坦路面10上を所定範囲の速度で走行させる。車両1が平坦路面10を走行したことは、車高計111R,111Lからの出力により演算部204で認識することができる。
次に、ステップS3では、一対の車高計111R,111Lにより、車両1の左右両側近傍の高さを計測し、演算部204で平坦路面10における車両の傾斜角を計算する。
次に、ステップS4では、出力部207は、外部の表示器・信号機401を介して車両1を第1測定帯20内を所定の速度範囲で走行するように誘導し、第1測定帯20を走行させる(但し、この誘導は省略することができる)。車両1が第1測定帯20を走行したことは、車高計211R,211Lからの出力により演算部204で確認することができる。
次に、ステップS5では、演算部204は、車両の軸毎に左右の輪重波形を取得する。
次に、ステップS6では、演算部204は、軸毎に取得した左右の輪重波形を用いて、車両の各軸の左右輪重比および軸重と、左右輪の荷重中心間隔とを計算する(但し、この左右輪の荷重中心間隔については、車検証のデータの一つである輪距を予めステップS1において入力しておいて、それを使用することも可能である)。
【0026】
次に、ステップS7では、演算部204は、車両の各軸の左右輪重比から、車両の左右方向の重心位置を計算する。
次に、ステップS8では、演算部204は、車両の各軸重に基づいて、車両の前後方向の重心位置を計算する。
次に、ステップS9では、演算部204は、車高計211R,211Lにより、車両の両端近傍の高さをそれぞれ計測し、演算部204で車両1の傾斜角を計算する。
次に、ステップS10では、出力部207は、外部装置4の表示器・信号機401を用いて車両1を第2測定帯30に所定の速度範囲で走行するよう誘導し、第2測定帯30を走行させる(但し、この誘導は省略することができる)。車両1が第2測定帯30を走行したことは、車高計311R,311Lからの出力により演算部204で確認することができる。
次に、ステップS11では、演算部204は、車両1の軸毎に左右の輪重波形を取得する。
次に、ステップS12では、演算部204は、軸毎に取得した左右の輪重波形を用いて、車両1の各軸の左右輪重比および軸重を計算する。
次に、ステップS13では、演算部204は、車両1の各軸の左右輪重比から、車両の左右方向の重心位置を計算する。
【0027】
次に、ステップS14では、演算部204は、車輪が輪重計を通過する時間から車両1の速度を求め、車両1の各軸が輪重計312R,312Lを順次通過するのに要した時間の間隔に上記車速を乗じて軸距を計算する。また、演算部204は、車両の各軸重に基づいて、車両の前後方向の重心位置を計算する。
次に、ステップS15では、演算部204は、車高計311R,311Lにより、車両1の左右両端近傍の高さを計測し、演算部204で車両の傾斜角を計算する。
次に、ステップS16では、演算部204は、第1測定帯20と第2測定帯30との通過時に計算された車両1の傾斜角と重心位置とにより、車両1が平坦路を走行している時の該車両1の左右の重心位置と、重心の高さとを計算する。
次に、ステップS17では、判定部207が、車両1の重心の高さが車高よりも低いか否かを検証し、仮に、車両1の重心の高さが車高よりも低くはない場合はステップS2に戻り、また、車両の重心の高さが車高よりも低い場合は出力部207に判定結果、例えば、図11(a)、(b)に示すように、重心位置をグラフィック化する信号を送出して、処理を終了する。
なお、ステップS6,S12では、左右の輪重波形(車両の輪重を示す波形)を比較する。つまり、左右の輪重は、左右の輪重波形そのものを比較することで、車輪が検出装置(輪重計)に載り始めた段階から、左右の輪重比が計算できる。
【0028】
〔左右の輪重比の計算〕
前述のステップS6,S12の処理では、左右の輪重比を計算する。
以下では、左右の輪重波形に基づいて左右の輪重比を計算する方法について詳しく説明する。
図4は、車両1の車輪が輪重計に乗り始めてから、降り終わるまでの左右の輪重波形を示すグラフである。
以下、図4を参照し、左右の輪重比の計算方法を説明する。
左右の輪重比は、(1)式から計算する。但し、(1)式において、WLtは、t時にサンプリングした左輪の荷重、WRtは、t時にサンプリングした右輪の荷重、aはWLtとWRtの比率を、それぞれ示すものとする。
【0029】
【数1】
但し、WLtは、サンプリングt時の左輪の荷重、
WRtは、サンプリングt時の右輪の荷重、
aは、WLtとWRtの比率とする。
(1)式より、左右の輪重の比率を求めることができるので、(1)式を最小二乗法により変形する。
最小二乗法の計算に使用する誤差は、(2)式で示されるものとする。
【0030】
【数2】
全波形おいて誤差Eが最小となるaを求めるため、(2)式で示される誤差Eを2乗した値であるE2を全波形分足し合わせてaで微分する。この計算式を(3)式および(4)式で示す。
【0031】
【数3】
【0032】
【数4】
(3)式および(4)式より、(4−1)式が成立するように計算すると、全波形における誤差Eが最小となる。
【0033】
【数5】
これより、(5)式および(6)式を得る。
【0034】
【数6】
【0035】
【数7】
なお、車両1の重心位置は、左右輪の荷重中心間隔をlTとすると、右輪から左輪に向かって(7)式で求められる位置となる。
【0036】
【数8】
ここで、(1)式より、(7)式は、(8)式で置き換えられ、分母と分子をWRtで除すと(9)式を得る。
【0037】
【数9】
【0038】
【数10】
ここで、他の軸との重心位置関係を明確にするため、車両中心軸からの左輪方向への重心位置を求めると、該重心位置は、(10)式で求められる。これを計算すると、(10−1)式となるので、車両中心軸からの左輪方向への重心位置を計算すると、(11)式となる。
【0039】
【数11】
【0040】
【数12】
【0041】
【数13】
また、軸重Waは、サンプリングt時の左の輪重WLtと右の輪重WRtとを加算した加算値をWAtとして(即ち、(12)式とし)、サンプリング(t+1)時の加算値WAt+1からサンプリングt時の加算値WAtを減じた値(即ち軸重差分値)が、十分に小さくなるサンプリングts時からサンプリングte時における加算値WAtを平均して求める。
の計算式を(13)式で示す。
【0042】
【数14】
【0043】
【数15】
図5は、軸重差分波形を示すグラフである。
前後方向の軸重の比較においても同様の方法を応用することで、前後方向の重心位置を計算することができる。
これに対して、左右の輪重を比較する場合、左右の輪重波形より各々の重さを計算して比較をするが、この方法では車輪が検出装置に全て載っている間しか計測することができないため、計測時間が短いときに誤差を生じやすくなる。
【0044】
〔左右輪の荷重中心間隔の測定〕
次に、図3におけるステップS7,S8,S13の処理では、該処理に先立って、ステップS6で、左右輪の荷重中心間隔lTを測定する必要が生じるので、以下では、左右輪の荷重中心間隔lTを測定する方法について説明する。
図6は、左右輪の荷重中心間隔lTを測定する方法を図示した説明図である。
測定対象車両1の輪距(車両の右車輪と左車輪との間隔)を車両の諸元表から得るか、第1測定帯20での輪重計212R,212Lのロードセルを、さらに右側と左側に分割して、それぞれのロードセルの出力差により車輪の載っている位置を計算して輪距に対応する値である左右輪の荷重中心間隔lTを求める(ステップS6の詳細)。
図6(a)の正面側より見て左側の輪重計212Rの載荷板Tlの下側を支える4つのロードセルLll1,Lll2,Llr1,Llr2より得られた重さ(出力)を、それぞれWll1,Wll2,Wlr1,Wlr2とし、右側の輪重計212Lの載荷板Trの下側を支えるロードセルLrl1,Lrl2,Lrr1,Lrr2のロードセルより得られた重さ(出力)を、それぞれWrl1,Wrl2,Wrr1,Wrr2とする時、(14)式の関係より、それぞれの比率を求める。
これにより、(15)式を得る。
【0045】
【数16】
【0046】
【数17】
(6)式と同様に(16)式が求まる。
【0047】
【数18】
(11)式と同様に、輪重計212R内の左右ロードセルLll1,Lll2の取り付け位置と、Llr1,Llr2の取り付け位置との間の距離をllとし、また、輪重計212L内の左右ロードセルLrl1,Lrl2の取り付け位置と、Lrr1,Lrr2の取り付け位置との間の距離をlrとし、さらに、輪重計212Rと輪重計212Lの上の車輪の位置を各輪重計の中心軸より左方向にDl,Drとすると、Dl,Drは、(17)式により算出される。
【0048】
【数19】
さらに、(15)式と、輪重計212R,重計212Lの、それぞれの中心軸からの距離Dlrとにより、(18)式が得られる。
【0049】
【数20】
左右の重心位置を求める場合、左右輪の荷重中心間隔で計算する方法の方が、荷重中心位置で計算することになるので、車検証に基づく輪距で計算するよりも正確である。
【0050】
〔車両の左右重心位置の計算〕
次に、ステップS7(第1測定帯20上での処理)の処理と、S13(第2測定帯30上での処理)の処理として、車両の左右重心位置を計算する方法について詳述する。
各軸の比率aをaiとし、左右輪の荷重中心間隔をlTiとし、軸重Waiとする(従って、例えば、1軸目については、比率はa1、左右輪の荷重中心間隔はlT1、軸重はWa1となる)。
各軸の重心位置に軸重を乗じて、全部の軸の(重心位置×軸重)を加算したものを、全部の軸重を加算したもので除すことで、車両全体の車体中心から左方向の重心位置Clを求めることができる。
図7は、車両の左右重心位置の計算方法の一例を示す説明図である。
例えば、2軸車の計算を行う場合は、車両の左右重心位置の計算は、図7で示されるので、車両全体の車体中心から左方向の重心位置Clは、(19)式で計算される。
【0051】
【数21】
また、(19)式での計算方法を多軸車に適応できるように変形すると、(20)式となる。
【0052】
【数22】
〔軸距の測定〕
以下では、ステップS14(第2測定帯30上)の処理である軸距の計算の計算方法を説明する。
この実施形態では、車両1が一定速度で重心計測路に設けられた上述の各測定帯上を走行する時の輪重を計測する場合を想定しているので、前記の各輪重計で得られる波形に基づいて車両の速度Vを計算し、次に、各軸の通過時間Tviから軸距lwを求めることができる。
例えば、1軸目が通過する時間をTv1、2軸目が通過する時間をTv2とした場合、求める軸距lwは(21)式で計算される。
【0053】
【数23】
〔車両の前後重心位置の計算〕
以下では、ステップS8(第1測定帯20上での処理)と、ステップS14(第2測定帯30上での処理)の処理である車両の前後重心位置の計算の計算方法を説明する。
車両の各軸の最後軸からの軸距をlwi(即ち、1軸目の軸距はlw1)として、全部の軸の(軸距×軸重)を加算したものを、全部の軸重を加算したもので除すことで、車両全体の後軸からの前後方向の重心位置Cfを求めることができる。
図8は、車両の前後重心位置の計算方法の一例を説明するための車両を模式的に示す側面図である。
例えば、2軸車の計算を行う場合は、車両1の前後重心位置の計算は、図8で示されるので、前後方向の重心位置Cfは、(22)式で計算される。
また、(22)式を多軸車に適応できるように変形すると、軸数がnの場合、(23)式となる。
【0054】
【数24】
【0055】
【数25】
〔車高の測定〕
この実施形態では、車両1の平坦路面走行時の重心位置と重心高さとを求めるため(ステップS16の処理)、まずは、第1測定帯20および第2測定帯30における、車高と、車両1の傾斜角とを測定する(ステップS15の処理)。
図9(a)、(b)、(c)は、車両の重心高さと、傾斜角とをそれぞれ測定している場合の重心計測路での状態を示すものであり、図9(a)は、平坦路面10での状態、図9(b)は、第1測定帯20での状態、図9(c)は、第2測定帯30での状態を、それぞれ示すものである。
同図に示すように、車両の重心高さと、傾斜角とをそれぞれ測定する場合は、重心計測路(図1)に配された6個の車高計(車高計111R,111L,211R,211L,311R,311L)を使用する。
以下では、平坦路面10に配置された車高計111R,111Lにより測定された車高を、それぞれH1,H2とし、この場合の車体の傾斜角をθ1とする。
また、第1測定帯20に配置された車高計211R,211Lにより測定された車高を、それぞれH3,H4とし、この場合の車体の傾斜角をθ2とする。
【0056】
さらに、第2測定帯30に配置された車高計311R,311Lにより測定された車高を、それぞれH5,H6とし、この場合の車体の傾斜角をθ3とする。
ちなみに、上記の傾斜角θ1,θ2,θ3は、(24)式で求めることができる。
【0057】
【数26】
〔平坦路面走行時の重心位置と重心高さの計算〕
この計算は、前述のステップS16に含まれる処理である。
(20)式より、第1測定帯20における車両の左右方向の重心位置Cl1と、第2測定帯30における車両の左右方向の重心位置Cl2とを求め、車両が、一般的な平坦路面を通過する時の、左右方向の重心位置ClNと車両の重心高さChとを求める。
前述の各車高計より求めた車両の各傾斜角(θ1,θ2,θ3)から、図10に示すように下記の(25)式でθ1−2,θ1−3を定義すると、車両が平坦路面を走行する時の重心高さChは、第1測定帯で計算された結果と第2測定帯で計算された結果が等しくなるはずであることから(26)式で計算される。
【0058】
【数27】
【0059】
【数28】
また、(26)式より、車両が平坦路面を走行する時の左右方向の重心位置ClNは、(27)式で計算される。
【0060】
【数29】
さらに、(26)式と(27)式とから、一般的な平坦路面を通過する時の、車両の重心高さ(即ち、上下方向の重心位置)Chは、(28)式として求められる。
【0061】
【数30】
この(28)式を整理すると、(29)式が得られ、これから、第1測定帯20における車両の左右方向の重心位置Cl1と、第2測定帯30における車両の左右方向の重心位置Cl2と、前述の各車高計より求めた車両の各傾斜角(θ1,θ2,θ3)とから、車両が一般的な平坦路面を通過する時の当該車両の重心高さChを、求めることができる。
【0062】
【数31】
平坦路を走行する車両の傾斜角θ1を基準とした2種類の傾斜角θ2,θ3の走行下で計測した左右重心位置Cl1,Cl2から車両の重心高さが算出できることを示している。
θ1が十分小さければθ1を計測せずにθ1-3=θ3,θ1-2=θ2として近似計算することができる。
このとき、車高計111R,111Lが必要なくなる。
さらに、θ3またはθ2が十分小さいときでも計算可能である。
なお、上記の計算により、前記の重心高さChが車高よりも高くなる場合は、本システムによる測定を再度実施するものとする。
【0063】
〔車両重量の決定〕
車両1を一定の低速度(5〜20Km/h)で通過させて、計測装置3(前記の各輪重計)で得られる波形より輪重を求め、左右の輪重を加算して軸重値Waiを算出し、さらに軸数分加算することで、車両重量Wvを決定することができる。
例えば、軸数がnの場合は、車両重量Wvは(30)式で求められる。
【0064】
【数32】
〔貨物重量の決定〕
貨物重量を決定する際には、予め、トラクタ部の重量Wdと、トレーラ部の重量Wpとを測定するか、若しくは車検証に基づき記録しておいて、この値を車両重量Wvから、減ずることで、貨物重量Wcを計算することができる。この計算式を(31)式で示す。
【0065】
【数33】
〔貨物の前後左右および上下の重心位置の決定〕
貨物の前後左右および上下の重心位置を決定する際には、予め、トラクタ部、およびトレーラ部の前後左右および上下の重心位置を測定するか、若しくは記録しておいて、本システムで測定した車両全体の前後左右および上下の重心位置により、貨物の前後左右および上下の重心位置を求めることができる。よって、トラクタ部の前後,左右,上下の重心位置を、それぞれ、Cdf,Cdl,Cdhとし、トレーラ部の前後,左右,上下の重心位置を、それぞれ、Cpf,Cpl,Cphとし、車両全体の前後,左右,上下の重心位置を、それぞれ、Cf,ClN,Chとし、貨物の前後,左右,上下の重心位置を、それぞれ、Ccf,Ccl,Cchとすると、モーメントと力の関係とにより、(32)式で貨物のみの上記各重心位置を算出することができる。
【0066】
【数34】
〔車両横転危険度の決定〕
車両横転危険度の決定は、本システムで計算された、前後方向、左右方向と高さ方向の重心位置とから、予め設定した危険レベルと比較することにより、車両横転の危険度を決定する。
【0067】
〔車両横転危険度の通知〕
車両横転危険度の通知方法としては、視認可能な警告標示板に該危険度を表示することが考えられる。
図11(a)、(b)は、車両横転危険度を視覚的に表示した一表示例を模式的に示すものであって、図11(a)は、背面図、図11(b)は、側面図である。
本システムで決定した車両横転危険度は、例えば、図7に示すように、重心位置を特定の色で表示するなどの方法で、運転者または設備管理者に対して視覚的に一目で分かるように表示することが好ましい。
【0068】
〔車両重心情報の活用〕
本システムで得られた車両重心情報は、下記の活用範囲を有している。
(1) 陸上輸送車両の積載状態の管理
(2) 陸上輸送車両の横転防止
(3) 貨物ターミナル、コンテナターミナルなどでの不適切貨物の発見・是正
(3) 道路交通安全管理
(3) 海上輸送コンテナにおける荷主と輸送業者との間の過失度合の責任分界の目安
(4) GPS情報と地図情報との連携(走行先のカーブの曲率を得て、安全な通過速度の上限値を通知することができる)。
この実施形態の走行型車両重心計測システムによれば、以下に述べる特有の効果が得られる。即ち、重心計測に要する時間が短く、かつ走行しながら計測するため交通渋滞を招来しないので、構内道路等の交通を妨げることなく、車両の重心位置を、積載する貨物も含めて測定することができる効果が有る。
また、過密なコンテナターミナルの荷役業務を妨げずに重心を計測することができる効果が有る(例えば、ストラドルキャリアでコンテナを移動する際の重心計測で陸送前の積載状態確認が可能である。また、コンテナターミナル構内での不適切コンテナ発見・是正を促進することができる)。
【0069】
また、例えば、コンテナトレーラの重心計測と、運転者への横転危険度を通知することが可能となる効果が有る。
また、重心位置表示板などで視覚的に表示することにより、車両の運転者に対して積載状態を知らせることができるので、運転操作に際しての意識的な注意を喚起することができる効果が有る。
また、ナビゲーションシステムとの連携により、積載重量,車両高さ,車両重心位置を考慮したルート案内と、道路曲率に即した速度抑制案内ができる効果が有る。
また、輸送中の横転事故や貨物の落下事故を抑制できる効果が有る。
また、重心計測結果の記録を証拠資料として活用することにより、横転事故に関する荷主と輸送業者の間の過失度合を客観的且つ公正な判断をすることができる効果が有る。
【0070】
また、公共道路を走行する時には、路側通信機器との連携により、載荷状態と路面状態とに基づいた安全走行を実施することができる効果が有る。
また、横転事故が発生した車両の重心測定結果をデータベース化することで、より安全な道路の構築や、より安全な車両の設計に応用することができる効果が有る。
【0071】
さらに、本システムの重心位置計測方法が普及し、一般化することにより、車両横転の予防を目的とした法整備を進めることができる効果が有る。
なお、本発明に係る構成要素の処理の少なくとも一部をコンピュータ制御により実行するものとし、かつ、上記処理を、図3のフローチャートで示した手順によりコンピュータに実行せしめるプログラムは、半導体メモリを始め、CD−ROMや磁気テープなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配付してもよい。そして、少なくともマイクロコンピュータ、パーソナルコンピュータ、汎用コンピュータを範疇に含むコンピュータが、上記の記録媒体から上記プログラムを読み出して、実行するものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、走行型車両重心計測システムの開発に適用可能であり、特に、測定対象車両を所定の速度で走行させたままで、該車両の水平方向や垂直方向の重心位置を迅速に決定することができる走行型車両重心計測システムの開発に好適である。
【符号の説明】
【0073】
1 測定対象車両
2 監視装置
3 計測装置
4 外部装置
10 平坦路面
11,21,31 ガントリ
20 第1測定帯
30 第2測定帯
201 増幅器
202 A/D変換部
203 車両情報入力部
204 演算部
205 記録部
206 判定部
207 出力部
111R,111L,211R,211L,311R,311L 車高計
212R,212L,312R,312L 輪重計
401 表示器・信号機
402 ネットワーク
403 車両端末(ELTなど)
404 遮断機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の重心位置を計測する車両重心計測システムにおいて、
測定対象の車両を通過させる平坦路と、左右勾配の異なる第1測定帯と第2測定帯とからなる重心計測路に沿って、複数設けられ、前記車両の左右方向の傾きを計測する複数の傾斜角決定手段と、
前記重心計測路上に沿って前記車両の各軸の左右両輪の輪重を独立して計測し得るように配設された複数対の輪重計と、
前記輪重計で計測された最前軸から最後軸までの輪重を加算して前記車両の総重量を決定する車両重量決定手段と、
前記車両の左右方向の重心位置を決定する左右重心位置決定手段と、
前記車両の前後方向の重心位置を決定する前後重心位置決定手段と、
前記2つの傾斜角決定手段により得られた傾斜角と、前記左右勾配の異なる路面に設置された前記軸重計上に車両を通過させて得られた双方の重心位置とに基づき、上下方向の重心位置を決定する上下重心位置決定手段とを具備し、
測定対象の車両を走行させながら、左右方向重心位置、前後方向重心位置および上下方向重心位置をそれぞれ計測し得るように構成したことを特徴とする走行型車両重心計測システム。
【請求項2】
車両の重心位置を計測する車両重心計測システムにおいて、
測定対象の車両を通過させる平坦路面と、この平坦路面に順次連続する左右勾配の異なる第1測定帯と第2測定帯とから重心計測路を敷設し、
前記平坦路面の左右の上部に配設された第1の車高計および第2の車高計と、
前記第1測定帯の左右の上部に配設された第3の車高計および第4の車高計と、
前記第1測定帯の路面に配設され、各輪重を独立して計測し得る第1の輪重計および第2の輪重計と、
前記第2測定帯の左右の上部に配設された第5の車高計および第6の車高計と、
前記第2の測定帯の路面に配設され、各輪重を独立して計測し得る第3の輪重計および第4の輪重計と、
前記第1〜第6の車高計の計測結果に基づき、前記平坦路、前記第1測定帯、前記第2測定帯を通過する時の前記車両のそれぞれの傾斜角を決定する傾斜角決定手段と、
前記車両の総重量を決定する車両重量決定手段と、
前記車両の前後方向の重心位置を決定する前後重心位置決定手段と、
前記車両の左右方向の重心位置を決定する左右重心位置決定手段と、
前記車両の上下方向の重心位置を決定する上下重心位置決定手段と、
を具備し、
前記測定対象の車両を前記重心計測路上を走行させながら、左右方向重心位置、前後方向重心位置および上下方向重心位置をそれぞれ計測し得るように構成したことを特徴とする走行型車両重心位置計測システム。
【請求項3】
前記車両重量決定手段は、前記車両を走行させながら、前記各輪重計の波形より得られる最前軸から最後軸までの左右独立した輪重を、各軸毎に測定した後、該左右の輪重を加算して各軸毎の軸重値を求め、さらに、該各軸毎の軸重値を全ての軸について加算した値により、前記車両の総重量を決定することを特徴とする請求項1または2に記載の走行型車両重心計測システム。
【請求項4】
前記前後重心位置決定手段は、前記車両を走行させながら、前記各輪重計の波形より前記車両の走行速度を求め、また、前記車両の各軸の前記各輪重計の通過時間と前記走行速度より、各軸の軸間距離を求め、さらに、前記軸間距離と前記軸重値との積を全ての軸について加算した値を前記車両の前記総重量で除して算出し、決定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の走行型車両重心計測システム。
【請求項5】
前記左右輪重比決定手段は、前記第1測定帯と前記第2測定帯での左右の前記各輪重計への前記車両の車輪の載り始めから前記車両の車輪が降りるまでの間にサンプリングした輪重波形を全て使用して最小二乗法により算出することを特徴とする請求項1または2に記載の走行型車両重心計測システム。
【請求項6】
前記左右重心位置決定手段は、前記車両を走行させながら、前記第1測定帯と前記第2測定帯での車両の傾斜角と左右の重心位置とに基づいて、前記第1測定帯と前記第2測定帯の上下方向の重心位置が同じであることから、計算式を導き出し、前記車両の一般的な平坦路面における左右方向の重心位置を計算し、決定することを特徴とする請求項1または2に記載の走行型車両重心計測システム。
【請求項7】
前記上下方向重心位置決定手段は、前記第1測定帯と前記第2測定帯での前記車両の前記傾斜角と前記左右の重心位置とに基づいて、前記第1測定帯と前記第2測定帯の上下方向の重心位置が同じであることから、計算式を導き出し、前記車両の一般的な平坦路面における上下方向の重心位置を計算し、決定されるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の走行型車両重心計測システム。
【請求項8】
前記第1測定帯における前記傾斜角は、前記第3と前記第4の車高計による前記車両の高さの測定値に基づいて計算されるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の走行型車両重心計測システム。
【請求項9】
前記第1測定帯における前記左右の重心位置は、前記第1と前記第2の各輪重計の測定結果に基づく、各軸毎に測定された左右輪重比と各軸重とから計算されるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の走行型車両重心計測システム。
【請求項10】
前記第2測定帯における前記傾斜角は、前記第5と前記第6の車高計による前記車両の高さの測定値に基づいて計算されるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の走行型車両重心計測システム。
【請求項11】
前記第2測定帯における前記左右の重心位置は、前記第3と前記第4の輪重計の測定結果に基づく、各軸毎に測定された左右輪重比と各軸重とから計算されるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の走行型車両重心計測システム。
【請求項12】
平坦路面における前記第1の輪重計と前記第2の輪重計を支持する複数のロードセルを、さらに各輪重計の右側と左側とに分割配置し、それぞれのロードセルの出力差により、前記車両のタイヤの載っている位置を計算して左右輪荷重中心間隔を決定する左右輪荷重中心間隔決定手段をさらに具備することを特徴とする請求項1または2に記載の走行型車両重心計測システム。
【請求項13】
前記前後重心位置決定手段と前記左右重心位置決定手段と前記上下重心位置決定手段により決定した多重心位置を検証することにより、前記上下重心位置の高さが危険水準に有る場合は警告表示する装置を、さらに具備することを特徴とする請求項1または2に記載の走行型車両重心計測システム。
【請求項1】
車両の重心位置を計測する車両重心計測システムにおいて、
測定対象の車両を通過させる平坦路と、左右勾配の異なる第1測定帯と第2測定帯とからなる重心計測路に沿って、複数設けられ、前記車両の左右方向の傾きを計測する複数の傾斜角決定手段と、
前記重心計測路上に沿って前記車両の各軸の左右両輪の輪重を独立して計測し得るように配設された複数対の輪重計と、
前記輪重計で計測された最前軸から最後軸までの輪重を加算して前記車両の総重量を決定する車両重量決定手段と、
前記車両の左右方向の重心位置を決定する左右重心位置決定手段と、
前記車両の前後方向の重心位置を決定する前後重心位置決定手段と、
前記2つの傾斜角決定手段により得られた傾斜角と、前記左右勾配の異なる路面に設置された前記軸重計上に車両を通過させて得られた双方の重心位置とに基づき、上下方向の重心位置を決定する上下重心位置決定手段とを具備し、
測定対象の車両を走行させながら、左右方向重心位置、前後方向重心位置および上下方向重心位置をそれぞれ計測し得るように構成したことを特徴とする走行型車両重心計測システム。
【請求項2】
車両の重心位置を計測する車両重心計測システムにおいて、
測定対象の車両を通過させる平坦路面と、この平坦路面に順次連続する左右勾配の異なる第1測定帯と第2測定帯とから重心計測路を敷設し、
前記平坦路面の左右の上部に配設された第1の車高計および第2の車高計と、
前記第1測定帯の左右の上部に配設された第3の車高計および第4の車高計と、
前記第1測定帯の路面に配設され、各輪重を独立して計測し得る第1の輪重計および第2の輪重計と、
前記第2測定帯の左右の上部に配設された第5の車高計および第6の車高計と、
前記第2の測定帯の路面に配設され、各輪重を独立して計測し得る第3の輪重計および第4の輪重計と、
前記第1〜第6の車高計の計測結果に基づき、前記平坦路、前記第1測定帯、前記第2測定帯を通過する時の前記車両のそれぞれの傾斜角を決定する傾斜角決定手段と、
前記車両の総重量を決定する車両重量決定手段と、
前記車両の前後方向の重心位置を決定する前後重心位置決定手段と、
前記車両の左右方向の重心位置を決定する左右重心位置決定手段と、
前記車両の上下方向の重心位置を決定する上下重心位置決定手段と、
を具備し、
前記測定対象の車両を前記重心計測路上を走行させながら、左右方向重心位置、前後方向重心位置および上下方向重心位置をそれぞれ計測し得るように構成したことを特徴とする走行型車両重心位置計測システム。
【請求項3】
前記車両重量決定手段は、前記車両を走行させながら、前記各輪重計の波形より得られる最前軸から最後軸までの左右独立した輪重を、各軸毎に測定した後、該左右の輪重を加算して各軸毎の軸重値を求め、さらに、該各軸毎の軸重値を全ての軸について加算した値により、前記車両の総重量を決定することを特徴とする請求項1または2に記載の走行型車両重心計測システム。
【請求項4】
前記前後重心位置決定手段は、前記車両を走行させながら、前記各輪重計の波形より前記車両の走行速度を求め、また、前記車両の各軸の前記各輪重計の通過時間と前記走行速度より、各軸の軸間距離を求め、さらに、前記軸間距離と前記軸重値との積を全ての軸について加算した値を前記車両の前記総重量で除して算出し、決定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の走行型車両重心計測システム。
【請求項5】
前記左右輪重比決定手段は、前記第1測定帯と前記第2測定帯での左右の前記各輪重計への前記車両の車輪の載り始めから前記車両の車輪が降りるまでの間にサンプリングした輪重波形を全て使用して最小二乗法により算出することを特徴とする請求項1または2に記載の走行型車両重心計測システム。
【請求項6】
前記左右重心位置決定手段は、前記車両を走行させながら、前記第1測定帯と前記第2測定帯での車両の傾斜角と左右の重心位置とに基づいて、前記第1測定帯と前記第2測定帯の上下方向の重心位置が同じであることから、計算式を導き出し、前記車両の一般的な平坦路面における左右方向の重心位置を計算し、決定することを特徴とする請求項1または2に記載の走行型車両重心計測システム。
【請求項7】
前記上下方向重心位置決定手段は、前記第1測定帯と前記第2測定帯での前記車両の前記傾斜角と前記左右の重心位置とに基づいて、前記第1測定帯と前記第2測定帯の上下方向の重心位置が同じであることから、計算式を導き出し、前記車両の一般的な平坦路面における上下方向の重心位置を計算し、決定されるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の走行型車両重心計測システム。
【請求項8】
前記第1測定帯における前記傾斜角は、前記第3と前記第4の車高計による前記車両の高さの測定値に基づいて計算されるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の走行型車両重心計測システム。
【請求項9】
前記第1測定帯における前記左右の重心位置は、前記第1と前記第2の各輪重計の測定結果に基づく、各軸毎に測定された左右輪重比と各軸重とから計算されるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の走行型車両重心計測システム。
【請求項10】
前記第2測定帯における前記傾斜角は、前記第5と前記第6の車高計による前記車両の高さの測定値に基づいて計算されるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の走行型車両重心計測システム。
【請求項11】
前記第2測定帯における前記左右の重心位置は、前記第3と前記第4の輪重計の測定結果に基づく、各軸毎に測定された左右輪重比と各軸重とから計算されるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の走行型車両重心計測システム。
【請求項12】
平坦路面における前記第1の輪重計と前記第2の輪重計を支持する複数のロードセルを、さらに各輪重計の右側と左側とに分割配置し、それぞれのロードセルの出力差により、前記車両のタイヤの載っている位置を計算して左右輪荷重中心間隔を決定する左右輪荷重中心間隔決定手段をさらに具備することを特徴とする請求項1または2に記載の走行型車両重心計測システム。
【請求項13】
前記前後重心位置決定手段と前記左右重心位置決定手段と前記上下重心位置決定手段により決定した多重心位置を検証することにより、前記上下重心位置の高さが危険水準に有る場合は警告表示する装置を、さらに具備することを特徴とする請求項1または2に記載の走行型車両重心計測システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
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【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−202882(P2012−202882A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69010(P2011−69010)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000142067)株式会社共和電業 (52)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000142067)株式会社共和電業 (52)
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