説明

走行路湾曲を求める方法

【課題】本発明の課題は、ナビゲーションシステム用の地図データを、より平滑な道路経過でシミュレーションできる簡単な方法を提供することである。
【解決手段】多角形プロフィールP(t)を、定義された関数f(t)によって積分たたみ込みすることによって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーションシステムのために、少なくとも1つの道路セグメントが多角形プロフィールとして登録されている地図データに基づいて走行路湾曲を求める方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーションシステムは最近の数年間で、広く普及されている。初期は主に、後付け用のシステムが提供されていたが、新車両ではナビゲーションシステムは、多岐にわたって標準装備に属するようになってきた。車両ナビゲーションの基礎として使用されるのは、デジタル化された地図データである。この地図データは幾何的な表示で、しばしば2次元の多角形プロフィールとして設けられる。多角形プロフィールにより、各部分ごとに直線の相互に連続する区間が示され、この区間によって道路経過が、高精度または低精度でシミュレートされる。
【0003】
ドイツのデジタル道路地図は通常、約20ギガバイトのデータ量を有する。このデータ量はその大きさのために、移動用ナビゲーションシステムで使用するのに適していない。それゆえ、地図データは圧縮ないしは低減され、地図データのデータ量は約200メガバイトだけにされる。このようなデータ量の低減は、とりわけ道路表示の精度の負荷に繋がってしまう。
【0004】
通常、多角形プロフィールの各コーナポイントないしは折れ目ポイントを表す基点ないしは形状ポイントの数が低減される。したがってこのような基点の低減により、個々の直線区間が長くなり、2つの区間セグメント間の角度がさらに小さくなるかないしは鋭角になる。このようにして道路経過の表示は、より角張った形状を有するようになる。
【0005】
ナビゲーションシステムを拡張されたドライバアシストシステムとして、たとえばカーブ警報システムとして使用するためには、道路経過のこのような角張ったシミュレーションは不適格である。というのも、カーブ警報システムでは少なくとも、道路カーブの曲率半径に近似する必要があるからだ。しかし多角形プロフィールのコーナポイントないしは基点では、曲率半径はゼロであり、該多角形プロフィールの他のすべてのポイントでは、曲率半径は無限である。
【0006】
さらに、2つの区間セグメント間で形成された角度を、カーブ警告のための湾曲評価に使用することはできない。というのも大抵の場合、カーブは複数の区間セグメントに下位分割されるからである。強く湾曲されたカーブは多数の形状ポイントを有するので、相応の多角形プロフィールの直線区間は非常に短く、2つの区間の間の角度はあまり大きくない。それゆえ、多角形プロフィールの2つの隣接する区間セグメント間の角度から、両区間セグメントの周辺における全体の経過に関する情報を得ることはできない。
【0007】
公知の湾曲評価法は、多角形プロフィールをスプラインまたはバイスプライン等によって近似することを基礎としている。その際、道路経過の湾曲は各ポイントで、スプライン等の湾曲によって評価される。別の湾曲評価法に、3つの隣接する多角形ポイントないしは形状ポイントの位置を使用して、走行路の曲率半径を計算する手法がある。
【0008】
しかし前記の湾曲評価法では、経験値が重要な役割を有するので、これらの湾曲評価法を実施するためには補助ポイントを挿入して、隣接する直線の区間セグメントにカーブを「埋め込まれる」ことがないようにしなければならない場合が多い。しかし、ポイントが非常に密接する交差点では、所定の規則にしたがって多角形ポイントを除去しなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、ナビゲーションシステム用の地図データを、より平滑な道路経過でシミュレーションできる簡単な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題は、請求項1の構成によって解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
すなわち本発明では、多角形プロフィールP(t)を、定義された関数f(t)によって積分たたみ込みすることにより、走行路湾曲の推定を、積分たたみ込みの結果の湾曲から計算するように構成されている。このような積分たたみ込みによって、多角形プロフィールP(t)のコーナポイントは丸め込まれ、道路経過のシミュレートはより平滑になる。
【0012】
本発明による方法の有利な実施例では、多角形プロフィールP(t)はパラメータtによって弧長パラメータ化(自然パラメータ化)される。弧長パラメータ化とは、多角形プロフィールP(t)に以下の数式が適用されることを意味する:
P(t)∈R および |dP/dt|=1
本発明による方法では有利には、関数f(t)は対称的である。すなわち、以下の数式が適用される:
t>0の場合、f(−t)=f(t)
本発明による方法でさらに有利には、関数f(t)は十分に平滑である。
【0013】
本発明による方法では有利には、t=0の近くでは関数f(t)≠0が適用され、|t|>Dの場合にはf(t)≡0が適用される。さらに、以下の数式が適用される:
【0014】
【数1】

【0015】
本発明による方法の有利な実施例は、
【0016】
【数2】

を定義するために、[−D,+D]でf(t)≡constを使用する。ここでは、
【0017】
【数3】

が適用される。
【0018】
択一的に、本発明による方法の別の実施例では、関数f(t)を定義するために、各部分ごとに線形の関数を使用する:
0≦t≦Dの場合、f(t)=1/D−t/D
t>Dの場合、f(t)=0
f(−t)=f(t)
ここではDは、多角形プロフィールによってシミュレートされる道路の幅の約3〜4倍として選択される。
【実施例】
【0019】
以下で本発明による方法を、添付図面に示された道路経過の表示例に基づいて、詳細に例解する。
【0020】
図1に、道路セグメントの概略的な表示として多角形プロフィール1が示されている。この多角形プロフィール1は、相互に連続する直線の区間セグメント2を総じて4つ有し、これらはコーナポイント3で相互に結合されている。ここで、表示される多角形プロフィールで道路経過の湾曲を考察すると、コーナポイント3では相応の曲率半径はゼロであるのに対し、直線の区間セグメント2の他のすべてのポイントの相応の曲率半径は、それぞれ無限である。
【0021】
図2では多角形プロフィール1は、丸められたコーナポイントによって図示されている。このような丸め部は、多角形プロフィールP(t)の積分たたみ込みにより、一定の関数f(t)=constによって表される。このような積分たたみ込みにより、形状ポイントが密接に隣接する特別なケースにおいて、2つの区間セグメント2の間の移行部は円セグメント4によって丸められる。
【0022】
多角形プロフィールP(t)の弧長パラメータ化に基づくと、以下の数式が適用される:
P(t)∈R および |dP/dt|=1
ここで、積分たたみ込みによって多角形プロフィールP(t)は、コーナで丸められた
【0023】
【数4】

のシミュレーションでシミュレートされ、このシミュレーションには以下の数式が適用される:
【0024】
【数5】

【0025】
この数式から、正接の方向、いわゆる前進方向に関しては、以下の数式が得られる:
【0026】
【数6】

【0027】
このたたみ込みを行った後の結果は、原多角形に正確に基づくことがなくなり、コーナポイントで丸められる。デジタル化が非常に削減されている場合、この効果が望まれる。しかし非常に高精度のデジタル化の場合、ジオメトリの大きな偏差が生じることがあるので、以下の前処理が行われる。
【0028】
原多角形P(t)のコーナポイント(形状ポイント)では、
【0029】
【数7】

の結果が計算される。その後、本来の多角形が多角形ポイントで、
【0030】
【数8】

に置換される。すなわち原多角形は、「外側に向かって」丸め量だけシフトされる。道路ジオメトリの本来の湾曲計算または表示はこのようにして、補正された多角形によって行われる。
【0031】
しかしこの手段は、元の多角形ポイントが実際にも走行路上に存在する場合にのみ有利である。このことも、その都度のデジタル化アルゴリズムおよび粗くするためのアルゴリズムに依存する。
【0032】
このように定義されたカーブの特性は、元の多角形の区間セグメントが十分に長く、かつ直線である場合に、生成されたより平滑なカーブが実際に本来のカーブと一致することである。任意のポイントにおける湾曲は、以下の数式で得られる
【0033】
【数9】

【0034】
ここでは、
【0035】
【数10】

は前進のx成分であり、ポイントは、パラメータtによる導関数を意味する。
【0036】
湾曲の上記の計算は、すべての任意の適切なたたみ込み関数に適用される。図2に示された例では、たたみ込み関数f(t)は定数である。したがって、
【0037】
【数11】

から、サポートDを使用して、湾曲計算のために以下の式が得られる。
【0038】
【数12】

【0039】
上記のサポートDは道路幅の倍数に相応し、たとえば道路幅の3〜4倍である。したがってクラス分割が行われる場合、異なるクラスの道路ごとに湾曲計算がその都度の道路に適合され、たとえば高速道路ないしは幹線道路に適合される。道路幅の倍数であるサポートDの正確な値は、地図のベースと、これの基礎となっているデジタル化アルゴリズムとに依存する。したがって地図のベースの交換時には、道路幅の倍数であるサポートの変更が必要である。
【0040】
図3に、図1に示された多角形1の個々の直線部分2の移行部が、線形関数によるたたみ込みによって丸められて示されている。形状ポイントが非常に密接である特別なケースでは、このことにより、クロソイドのセグメントを有する丸め部分が得られる。
【0041】
多角形のシミュレーションは、該多角形P(t)が部分ごとに線形の関数f(t)によってたたみ込みされる場合に得られ、以下の場合に適用される:
0≦t≦Dの場合は、f(t)=1/D−t/D
t>Dの場合は、f(t)=0
t<0の場合は、f(−t)=f(t)
f(t)のこのような数式により、積分たたみ込みのために以下の式が得られる。
【0042】
【数13】

【0043】
前記で挙げた、走行路の湾曲を近似的に計算するための数式は比較的簡略であるから、この数式を、プロセッサの計算能力が比較的低いナビゲーションシステムでも使用することができる。
【0044】
デジタル化で車線の中央線がデジタル化されるのではなく、たとえば道路の中央線がデジタル化される場合、たたみ込まれた多角形の計算前に、初期の多角形の多角形ポイントを角2等分線に沿って、相応の側へ走行路幅だけシフトしなければならない。特に、急なカーブではこの手段は重要である。というのも、このことによって曲率半径が変化するからである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】道路経過のセグメントの概略的な表示として多角形プロフィールを示している。
【図2】多角形プロフィールのコーナポイントがf(t)≡constによって丸められた図1の道路セグメントを示している。
【図3】多角形プロフィールのコーナポイントが線形関数によって丸められた図1の道路セグメントを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナビゲーションシステムにおいて走行路湾曲を求める方法であって、
少なくとも1つの道路セグメントが多角形プロフィールP(t)として登録されている地図データに基づいて走行路湾曲を求める形式の方法において、
多角形プロフィールP(t)を、定義された関数f(t)によって積分たたみ込みすることを特徴とする方法。
【請求項2】
多角形プロフィールP(t)をパラメータtによって、弧長パラメータ化する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
関数f(t)は対称的である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
関数f(t)は平滑である、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
関数f(t)≠0をt=0の近くで適用し、さらに、
【数1】

を適用する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
関数f(t)を定義するために、f(t)の定義領域にあるf(t)=constを使用する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
関数f(t)を定義するために、
0≦t≦Dの場合、f(t)=1/D−t/D
t>Dの場合、f(t)=0
t<0の場合、f(−t)=f(t)
を使用する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−3255(P2008−3255A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−171768(P2006−171768)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】