説明

起歪体、ロードセル及び多点式秤

【課題】重量測定用の平板状の起歪体において、荷重印加部が、加わった荷重に応じて主に荷重方向に変位することを可能にする技術を提供する。
【解決手段】起歪体3Aは、被計量物の重量によって荷重が加わる厚肉の荷重印加部301と、可動厚肉部308と、荷重印加部301から可動厚肉部308まで延びる薄肉部305と、固定厚肉部300と、可動厚肉部308から固定厚肉部300まで延びる薄肉部306,307とを備えている。薄肉部305が荷重印加部301から可動厚肉部308まで延びる方向は、薄肉部306,307が可動厚肉部308から固定厚肉部300まで延びる方向とは逆方向である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被計量物の重量を測定するための平板状の起歪体、当該起歪体を備えるロードセル及び当該ロードセルを複数備える多点式秤に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2に記載されているように、従来から、被計量物の重量を測定するための平板状の起歪体に関して様々な構造が提案されている。
【0003】
また特許文献3には、複数点で測定された被計量物の部分重量を足し合わせて、被計量物の全体重量を求める多点式秤に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−265419号公報
【特許文献2】特開平7−260553号公報
【特許文献3】特開平9−26352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、多点式秤で使用される起歪体において、被計量物の重量によって荷重が加わる荷重印加部が、荷重方向だけではなく、荷重方向に対して垂直な方向にも変位する場合には、当該垂直な方向への荷重印加部の移動を逃がす逃がし機構が必要となる。仮に、このような逃がし機構が無い場合には、複数の起歪体の間において荷重印加部の変位を妨げる拘束力が発生し、被計量物の重量を正確に測定できない。
【0006】
このような逃がし機構としては、荷重印加部と、被計量物が載置される計量皿との間に、コロ等を設けることが考えられる。しかしながら、このような逃がし機構を採用すると、秤を薄くすることができず、さらには、逃がし機構の経年劣化により、荷重方向に対して垂直な方向への荷重印加部の移動を十分に逃がすことができず、計量精度が劣化することがある。
【0007】
そこで、本発明は上記の点に鑑みて成されたものであり、重量測定用の平板状の起歪体において、荷重印加部が、加わった荷重に応じて主に荷重方向に変位することを可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、被計量物の重量を測定するための平板状の起歪体であって、前記被計量物の重量によって荷重が加わる厚肉の荷重印加部と、第1厚肉部と、前記荷重印加部から前記第1厚肉部まで延びる第1薄肉部と、第2厚肉部と、前記第1厚肉部から前記第2厚肉部まで延びる第2薄肉部とを備え、前記第1薄肉部が前記荷重印加部から前記第1厚肉部まで延びる方向である第1方向は、前記第2薄肉部が前記第1厚肉部から前記第2厚肉部まで延びる方向である第2方向とは逆方向である。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の起歪体であって、前記第1厚肉部を含む複数の第3厚肉部と、前記荷重印加部の周縁に沿って等間隔で配置されるとともに、前記荷重印加部から前記複数の第3厚肉部までそれぞれ延びる、前記第1薄肉部を含む複数の第3薄肉部と、前記複数の第3厚肉部から前記第2厚肉部までそれぞれ延びる、前記第2薄肉部を含む複数の第4薄肉部とを備え、前記複数の第3薄肉部のそれぞれに関して、当該第3薄肉部が前記荷重印加部からそれが接続された第3厚肉部まで延びる方向は、当該第3厚肉部に接続された第4薄肉部が当該第3厚肉部から前記第2厚肉部まで延びる方向とは逆方向である。
【0010】
また、請求項3の発明は、請求項1に記載の起歪体であって、平面視において、前記第2薄肉部と前記第1厚肉部との接続箇所は、前記第1薄肉部と前記第1厚肉部との接続箇所を通る、前記第1及び第2方向に垂直な仮想線に対して、前記荷重印加部側に位置している。
【0011】
また、請求項4の発明は、ロードセルであって、請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の起歪体と、前記起歪体に貼り付けられた歪みゲージとを備える。
【0012】
また、請求項5の発明は、多点式秤であって、請求項4に記載のロードセルを複数備え、複数の前記ロードセルからの出力信号に基づいて、前記被計量物の全体重量を求める重量算出部をさらに備える。
【発明の効果】
【0013】
請求項1乃至請求項5の発明によれば、荷重印加部が、第2厚肉部に対して、第1薄肉部、第1厚肉部及び第2薄肉部を介して接続されており、第1薄肉部が荷重印加部から第1厚肉部まで延びる方向が、第2薄肉部が第1厚肉部から第2厚肉部まで延びる方向とは逆方向であるため、荷重印加部が、第2厚肉部に対して、加わった荷重に応じて主に荷重方向に相対的に変位するように、第1及び第2薄肉部を歪ませることができる。よって、荷重印加部が、第2厚肉部に対して、加わった荷重に応じて主に荷重方向に相対的に変位することが可能な、薄型の重量測定用の起歪体を実現することができる。
【0014】
特に、請求項2の発明によれば、荷重印加部には複数の第3薄肉部が接続されているため、第2厚肉部に対して、荷重印加部を安定して荷重方向に相対的に変位させることができる。さらに、荷重印加部に印加できる荷重を大きくすることができ、測定重量の上限値を増加させることができる。
【0015】
特に、請求項3の発明によれば、平面視において、第2薄肉部と第1厚肉部との接続箇所は、第1薄肉部と第1厚肉部との接続箇所を通る、第1及び第2方向に垂直な仮想線に対して荷重印加部側に位置しているため、第1厚肉部が第1及び第2方向に平行な軸を回転軸として回転しにくくなる。よって、第1及び第2薄肉部がねじれにくくなり、第1及び第2薄肉部に対して歪みゲージを貼り付けやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る多点式秤を示す側面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る多点式秤を示す底面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る多点式秤の電気的構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るロードセルの構成を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態の第1の構造例に係る起歪体を示す上面斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態の第1の構造例に係る起歪体を示す底面斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態の第1の構造例に係る起歪体が歪む様子を示す上面斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態の第1の構造例に係る起歪体が歪む様子を示す底面斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態の第2の構造例に係る起歪体を示す上面斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態の第2の構造例に係る起歪体の一部を示す上面斜視図である。
【図11】本発明の実施の形態の第2の構造例に係る起歪体が歪む様子を示す底面斜視図である。
【図12】本発明の実施の形態の第3の構造例に係る起歪体を示す底面斜視図である。
【図13】本発明の実施の形態の第3の構造例に係る起歪体の一部を示す底面斜視図である。
【図14】本発明の実施の形態の第3の構造例に係る起歪体を構成する構造体を示す斜視図である。
【図15】本発明の実施の形態の第3の構造例に係る起歪体が歪む様子を示す底面斜視図である。
【図16】本発明の実施の形態の第4の構造例に係る起歪体を示す底面斜視図である。
【図17】本発明の実施の形態の第4の構造例に係る起歪体が歪む様子を示す底面斜視図である。
【図18】本発明の実施の形態の第4の構造例に係る起歪体の変形例を示す底面斜視図である。
【図19】本発明の実施の形態の第4の構造例に係る起歪体の変形例が歪む様子を示す底面斜視図である。
【図20】本発明の実施の形態の第4の構造例に係る起歪体の変形例の可動厚肉部が回転する様子を説明するための図である。
【図21】本発明の実施の形態の第4の構造例に係る起歪体の可動厚肉部が回転する様子を説明するための図である。
【図22】本発明の実施の形態の第5の構造例に係る起歪体を示す底面斜視図である。
【図23】本発明の実施の形態の第5の構造例に係る起歪体が歪む様子を示す底面斜視図である。
【図24】本発明の実施の形態の第5の構造例に係る起歪体の変形例を示す底面斜視図である。
【図25】本発明の実施の形態の第5の構造例に係る起歪体の変形例が歪む様子を示す底面斜視図である。
【図26】本発明の実施の形態の第5の構造例に係る起歪体の可動厚肉部が回転する様子を説明するための図である。
【図27】本発明の実施の形態の第6の構造例に係る起歪体を示す底面図である。
【図28】本発明の実施の形態の第6の構造例に係る起歪体の変形例を示す底面図である。
【図29】本発明の実施の形態に係るロードセルの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明の実施の形態に係る多点式秤100を示す側面図であって、図2は当該多点式秤100を示す底面図である。図2では、説明の便宜上、図1に示される筐体2の図示を省略して、筐体2の内部が理解できるようにしている。本実施の形態に係る多点式秤100は、例えば4点で測定された被計量物TGの部分重量を足し合わせて、当該被計量物TGの全体重量を求める。
【0018】
図1,2に示されるように、多点式秤100は、被計量物TGが載置される計量皿1と、当該計量皿1を支持する筐体2とを備えている。計量皿1は、例えば、一方向にやや長い平面視四角形の板状形状を成している。筐体2内には、計量皿1の底面の4隅に固定部材4によってそれぞれ固定された4つの平板状の起歪体3が収納されている。この4つの起歪体3は、被計量物TGの重量を測定するためのものであって、計量皿1に被計量物TGが載置されると、当該被計量物TGの重量に応じて歪むようになっている。4つの起歪体3の底面には、筐体2から露出するように4つの足部材5がそれぞれ取り付けられている。多点式秤100が設置された場合には、この4つの足部材5が多点式秤100を支持する。
【0019】
図3は本実施の形態に係る多点式秤100の電気的構成を示す図である。図3に示されるように、多点式秤100は、それぞれが被計量物TGの部分重量を検出する4つのロードセル10と、当該4つのロードセル10からの計量信号に基づいて、被計量物TGの全体重量を求める重量算出部11とを備えている。4つのロードセル10及び重量算出部11は、上述の筐体2内に収納されている。
【0020】
図4は各ロードセル10の構成を示す図である。図4に示されるように、各ロードセル10は、上述の起歪体3と、当該起歪体3に貼り付けられた4つの歪みゲージ5ca,5cb,5ta,5tbとを備えている。4つの歪みゲージ5ca,5cb,5ta,5tbは、ホイートストンブリッジ回路を構成している。歪みゲージ5ca,5cbの一方端は互いに接続されており、歪みゲージ5ta,5tbの一方端は互いに接続されている。そして、歪みゲージ5ca,5taの他方端は互いに接続されており、歪みゲージ5cb,5tbの他方端は互いに接続されている。歪みゲージ5ca,5cbのそれぞれは、被計量物TGが計量皿1に載置された際に、起歪体3において圧縮歪みが発生する箇所に貼り付けられる。一方で、歪みゲージ5ta,5tbのそれぞれは、被計量物TGが計量皿1に載置された際に、起歪体3において引っ張り歪みが発生する箇所に貼り付けられる。互いに接続された歪みゲージ5ca,5cbの一方端にはプラスの電圧が印加され、互いに接続された歪みゲージ5ta,5tbの一方端は接地される。そして、各ロードセル10からは、互いに接続された歪みゲージ5ca,5taの他方端での電圧と、互いに接続された歪みゲージ5cb,5tbの他方端での電圧とが、一対の計量信号として出力される。この一対の計量信号は、それを出力するロードセル10が検出した被計量物TGの部分重量を示している。
【0021】
重量算出部11は、図3に示されるように、4つの差動アンプ12と、4つのフィルタ13と、4つのA/D変換器14と、CPU15とを備えている。4つの差動アンプ12には、4つのロードセル10から出力される一対の計量信号がそれぞれ入力される。各差動アンプ12は、入力された一対の計量信号の差分を増幅して出力する。4つのフィルタ13には、4つの差動アンプ12の出力信号がそれぞれ入力される。各フィルタ13は、入力された信号をフィルタリングして出力する。4つのA/D変換器14には、4つのフィルタ13の出力信号がそれぞれ入力される。各A/D変換器14は、入力された信号をアナログ形式からデジタル形式に変換して出力する。CPU15は、複数のA/D変換器14からの出力信号に基づいて、被計量物TGの全体重量を求める。具体的には、CPU15は、複数のA/D変換器14からの出力信号が示す被計量物TGの部分重量を足し合わせて、被計量物TGの全体重量を求める。そして、CPU15は、求めた全体重量を示す信号を、図示しない表示部に出力する。これにより、当該表示部には、被計量物TGの全体重量が表示される。
【0022】
本実施の形態では、重量測定用の起歪体3が、被計量物TGの重量によって荷重が加わる荷重印加部が主に荷重方向に変位するように構成されている。これにより、複数の起歪体3の間において荷重印加部の変位を妨げる拘束力が発生することを抑制できる、薄型の多点式秤100を実現することができる。以下に起歪体3の各種構造例について説明する。以下の説明では、起歪体3の平面視における外形が一方向に長い長方形である場合には、当該外形の長辺及び短辺に沿った方向をそれぞれX軸方向及びY軸方向とする。また、起歪体3の形状にかかわらず、起歪体3の厚み方向をZ軸方向とし、起歪体3の底面かその上面に向かう方向を+Z方向、起歪体3の上面からその底面に向かう方向を−Z方向とする。
【0023】
<起歪体の第1の構造例>
図5,6は、第1の構造例に係る起歪体3(以後、「起歪体3A」と呼ぶ)を示す斜視図である。図5は起歪体3Aの上面斜視図であって、図6は起歪体3Aの底面斜視図である。図5,6に示されるように、起歪体3Aは、平面視において、一方向にやや長い長方形を成し、計量皿1に固定される固定厚肉部300と、計量皿1に搭載された被計量物TGの重量によって荷重が加わって固定厚肉部300に対して相対的に変位する厚肉の荷重印加部301と、荷重印加部301と固定厚肉部300とを接続する第1構造体302及び第2構造体303とを備えている。
【0024】
第1構造体302及び第2構造体303は、互いに同じ形状を有しており、それぞれ、荷重印加部301に荷重が加わると歪む薄肉部305〜307と、荷重印加部301に荷重が加わると固定厚肉部300に対して相対的に変位する可動厚肉部308とを備えている。起歪体3Aにおいては、固定厚肉部300、荷重印加部301及び可動厚肉部308は、薄肉部305〜307に対して十分に厚く形成されており、計量皿1に被計量物TGが搭載されて薄肉部305〜307が歪んだとしてもほとんど歪むことはない。したがって、起歪体3Aを用いて被計量物TGを計量する際には、固定厚肉部300、荷重印加部301及び可動厚肉部308は剛体と見なすことができる。
【0025】
固定厚肉部300は、平面視の外形がX軸方向にやや長い長方形を成す枠状部分である。固定厚肉部300は、X軸方向に沿って延在する、互いに平行な一対の長辺部分300aと、Y軸方向に沿って延在する、互いに平行な一対の短辺部分300bと、一対の長辺部分300aからそれぞれ内側に突出する2つの突出部分300cとで構成されている。2つの突出部分300cは、一対の長辺部分300aの長手方向の中央部からそれぞれ突出して、Y軸方向で互いに対向している。荷重印加部301、第1構造体302及び第2構造体303は、この枠状の固定厚肉部300の内側に配置されている。
【0026】
荷重印加部301は、略直方体であって、平面視では略正方形となっている。荷重印加部301は、平面視において、固定厚肉部300の2つの突出部分300cにY軸方向で挟まれるように起歪体3Aの中央に位置している。
【0027】
第1構造体302及び第2構造体303は、荷重印加部301及び固定厚肉部300の2つの突出部分300cを間に挟んでX軸方向で対向している。第1構造体302は+X側に位置し、第2構造体303は−X側に位置している。そして、第1構造体302及び第2構造体303は、荷重印加部301の周辺において、荷重印加部301を中心にして180°回転させた位置関係を有している。これにより、第1構造体302及び第2構造体303は、平面視において、荷重印加部301を中心にして点対称に配置されている。
【0028】
第1構造体302及び第2構造体303の可動厚肉部308は、Y軸方向に沿って延在する、互いに同じ形状の略直方体である。
【0029】
第1構造体302及び第2構造体303の薄肉部305は、互いに同じ形状の板状部分であって、厚み方向をZ軸方向としてX軸方向に沿って延在している。第1構造体302及び第2構造体303の薄肉部305は、X軸方向に沿って荷重印加部301を間に挟んで一直線上に並んでいる。つまり、第1構造体302及び第2構造体303の薄肉部305は、荷重印加部301の周縁に等間隔(180度間隔)で配置されている。
【0030】
第1構造体302では、薄肉部305が、荷重印加部301の+X側の側面から、可動厚肉部308の長手方向の中央部における−X側の側面まで延びている。第2構造体303では、薄肉部305が、荷重印加部301の−X側の側面から、可動厚肉部308の長手方向の中央部における+X側の側面まで延びている。第1構造体302及び第2構造体303のそれぞれでは、薄肉部305の一方端が、荷重印加部301の側面におけるZ軸方向の中央部に接続されており、薄肉部305の他方端が、可動厚肉部308の側面におけるZ軸方向の中央部に接続されている。また、第1構造体302及び第2構造体303のそれぞれでは、薄肉部305の底面において、Y軸方向に沿って延在する、互いに平行を成す2つの溝305aが形成されている。一方の溝305aは、荷重印加部301と薄肉部305との接続箇所付近に形成されており、他方の溝305aは、薄肉部305と可動厚肉部308との接続箇所付近に形成されている。
【0031】
第1構造体302及び第2構造体303の薄肉部306,307は、互いに同じ形状の板状部分であって、厚み方向をZ軸方向としてX軸方向に沿って延在している。薄肉部306,307のY軸方向の幅は、薄肉部305のY軸方向の幅の半分となっている。
【0032】
第1構造体302では、薄肉部306が、薄肉部305と+Y側において平行を成すように、固定厚肉部300の+Y側の突出部分300cにおける+X側の側面から、可動厚肉部308の長手方向の+Y側端部における−X側の側面まで延びている。また、第1構造体302では、薄肉部307が、薄肉部305と−Y側において平行を成すように、−Y側の突出部分300cにおける+X側の側面から、可動厚肉部308の長手方向の−Y側端部における−X側の側面まで延びている。
【0033】
第2構造体303では、薄肉部306が、薄肉部305と−Y側において平行を成すように、−Y側の突出部分300cにおける−X側の側面から、可動厚肉部308の長手方向の−Y側端部における+X側の側面まで延びている。また、第2構造体303では、薄肉部307が、薄肉部305と+Y側において平行を成すように、+Y側の突出部分300cにおける−X側の側面から、可動厚肉部308の長手方向の+Y側端部における+X側の側面まで延びている。
【0034】
第1構造体302及び第2構造体303のそれぞれでは、薄肉部306の一方端が、突出部分300cの側面におけるZ軸方向の中央部に接続されており、薄肉部306の他方端が、可動厚肉部308の側面におけるZ軸方向の中央部に接続されている。また、第1構造体302及び第2構造体303のそれぞれでは、薄肉部307の一方端が、突出部分300cの側面におけるZ軸方向の中央部に接続されており、薄肉部307の他方端が、可動厚肉部308の側面におけるZ軸方向の中央部に接続されている。
【0035】
第1構造体302及び第2構造体303のそれぞれでは、薄肉部306の底面に、Y軸方向に沿って延在する、互いに平行を成す2つの溝306aが形成されている。一方の溝306aは、固定厚肉部300と薄肉部306との接続箇所付近に形成されており、他方の溝306aは、薄肉部306と可動厚肉部308との接続箇所付近に形成されている。
【0036】
第1構造体302及び第2構造体303のそれぞれでは、薄肉部307の底面に、Y軸方向に沿って延在する、互いに平行を成す2つの溝307aが形成されている。一方の溝307aは、固定厚肉部300と薄肉部307との接続箇所付近に形成されており、他方の溝307aは、薄肉部307と可動厚肉部308との接続箇所付近に形成されている。
【0037】
第1構造体302においては、薄肉部305が荷重印加部301から可動厚肉部308まで延びる方向(−X方向)が、薄肉部307が可動厚肉部308から固定厚肉部300まで延びる方向(+X方向)とは逆方向となっている。同様に、第2構造体303においては、薄肉部305が荷重印加部301から可動厚肉部308まで延びる方向(+X方向)が、薄肉部307が可動厚肉部308から固定厚肉部300まで延びる方向(−X方向)とは逆方向となっている。
【0038】
以上のような構造を有する起歪体3Aにおいては、上述の足部材5が荷重印加部301の底面に取り付けられる。そして、固定厚肉部300の上面が、複数の上述の固定部材4を介して計量皿1の底面に取り付けられる。例えば、一対の長辺部分300a、一対の短辺部分300b及び2つの突出部分300cのそれぞれの上面が、少なくとも一つの固定部材4を介して計量皿1の底面に取り付けられる。これにより、計量皿1に被計量物TGが搭載されると、被計量物TGの重量によって固定厚肉部300が−Z方向に沈み、荷重印加部301には+Z方向に荷重が加わるようになる。そして、荷重印加部301は、+Z方向の荷重が加わると、固定厚肉部300に対して、主に+Z方向(荷重方向)に相対的に変位する。本実施の形態に係る多点式秤100が備える4つの起歪体3Aは、それらの長手方向が計量皿1の長手方向と一致し、かつそれらの向きが同じとなるように、計量皿1の底面の4隅に取り付けられる。
【0039】
また、起歪体3Aにおいては、図5に波線で示されるように、歪みゲージ5ca,5taが例えば第1構造体302の薄肉部305の上面に貼り付けられ、歪みゲージ5cb,5tbが例えば第2構造体303の薄肉部305の上面に貼り付けられる。第1構造体302及び第2構造体303の薄肉部305の上面では、荷重印加部301に+Z方向の荷重が加わると、それらの底面に形成された荷重印加部301側の溝305aに対向する箇所に引っ張り応力が大きく発生することから、これらの箇所に歪みゲージ5ta,5tbが取り付けられる。また、第1構造体302及び第2構造体303の薄肉部305の上面では、荷重印加部301に+Z方向の荷重が加わると、それらの底面に形成された可動厚肉部308側の溝305aに対向する箇所に圧縮応力が大きく発生することから、これらの箇所に歪みゲート5ca,5cbが取り付けられる。なお、歪みゲージ5ca,5cb,5ta,5tbは、薄肉部306,307に貼り付けても良い。
【0040】
図7,8は、荷重印加部301に+Z方向の荷重が加わった際に起歪体3Aが歪む様子を示す図である。図7は起歪体3Aの上面斜視図であって、図8は起歪体3Aの底面斜視図である。図7,8に示されるように、起歪体3Aにおいては、荷重印加部301が、固定厚肉部300に対して、加わった荷重に応じてほぼ荷重方向(+Z方向)にだけ相対的に変位するように、薄肉部305〜307がS字状に曲がっている。
【0041】
具体的には、薄肉部305は、上面側から見ると、荷重印加部301側の溝305aが形成されている部分を凸とし、可動厚肉部308側の溝305aが形成されている部分を凹とするS字状となっている。これにより、薄肉部305の上面では、荷重印加部301側の溝305aに対向する箇所に引っ張り応力が大きく発生し、可動厚肉部308側の溝305aに対向する箇所に圧縮応力が大きく発生する。
【0042】
また、薄肉部306は、上面側から見ると、可動厚肉部308側の溝306aが形成されている部分を凸とし、固定厚肉部300側の溝306aが形成されている部分を凹とするS字状となっており、薄肉部307は、上面側から見ると、可動厚肉部308側の溝307aが形成されている部分を凸とし、固定厚肉部300側の溝307aが形成されている部分を凹とするS字状となっている。
【0043】
以上のように、本例に係る起歪体3Aにおいては、荷重印加部301が、固定厚肉部300に対して、薄肉部305、可動厚肉部308及び薄肉部306,307を介して接続されており、薄肉部305が荷重印加部301から可動厚肉部308まで延びる方向が、薄肉部306,307が可動厚肉部308から固定厚肉部300まで延びる方向とは逆方向である。これにより、図7,8に示されるように、荷重印加部301が、固定厚肉部300に対して、加わった荷重に応じて主に荷重方向に相対的に変位するように、薄肉部305〜307を歪ませることができる。よって、荷重印加部301が、固定厚肉部300に対して、加わった荷重に応じて主に荷重方向に相対的に変位することが可能な、薄型の重量測定用の起歪体3Aを実現することができる。
【0044】
また、起歪体3Aにおいては、荷重印加部301に対して、その周縁に沿って等間隔で配置された複数の薄肉部305が接続されているため、固定厚肉部300に対して、荷重印加部301を安定して荷重方向に相対的に変位させることができる。さらに、荷重印加部301に印加できる荷重を大きくすることができ、起歪体3Aで検出可能な重量の上限値を増加させることができる。その結果、本例に係る起歪体3Aを使用する多点式秤100においては、測定可能な被計量物TGの重量の上限値が増加する。
【0045】
なお、本例においては、薄肉部305〜307がよりS字状に曲がりやすくするために、それらの底面に溝を形成したが、この溝がなくても、薄肉部305〜307はS字状に曲がるため、当該溝は必ずしも設ける必要はない。
【0046】
<起歪体の第2の構造例>
図9は、第2の構造例に係る起歪体3(以後、「起歪体3B」と呼ぶ)を示す上面斜視図である。図10は、起歪体3Bの構造が理解し易いように、起歪体3Bを厚み方向に切断して、その一部を除去した様子を示す上面斜視図である。本例に係る起歪体3Bは、上述の起歪体3Aを若干変形したものである。以下では、起歪体3Bについて、起歪体3Aとの相違点を中心に説明する。
【0047】
図9,10に示されるように、起歪体3Bでは、固定厚肉部300の突出部分300c、荷重印加部301及び可動厚肉部308の形状が完全な直方体となっている。また、薄肉部305〜307の底面には溝が形成されていない。
【0048】
薄肉部305の一方端は、荷重印加部301の側面における+Z側端部に接続されており、薄肉部305の他方端は、可動厚肉部308の側面における+Z側端部に接続されている。
【0049】
第1構造体302では、薄肉部306の一方端が、+Y側の突出部分300cの側面における−Z側端部に接続されており、薄肉部306の他方端が、可動厚肉部308の側面における−Z側端部に接続されている。また、第1構造体302では、薄肉部307の一方端が、−Y側の突出部分300cの側面における−Z側端部に接続されており、薄肉部307の他方端が、可動厚肉部308の側面における−Z側端部に接続されている。
【0050】
第2構造体303では、薄肉部306の一方端が、−Y側の突出部分300cの側面における−Z側端部に接続されており、薄肉部306の他方端が、可動厚肉部308の側面における−Z側端部に接続されている。また、第2構造体303では、薄肉部307の一方端が、+Y側の突出部分300cの側面における−Z側端部に接続されており、薄肉部307の他方端が、可動厚肉部308の側面における−Z側端部に接続されている。
【0051】
以上のような構造を有する起歪体3Bは、起歪体3Aと同様にして計量皿1に取り付けられる。そして、起歪体3Bの荷重印加部301の底面の中央には足部材5が取り付けられる。したがって、計量皿1に被計量物TGが搭載されると、被計量物TGの重量によって固定厚肉部300が−Z方向に沈み、荷重印加部301には+Z方向に荷重が加わるようになる。荷重印加部301は、荷重が加わると、固定厚肉部300に対してほぼ荷重方向にだけ相対的に変位する。
【0052】
また、起歪体3Bにおいては、起歪体3Aと同様に、歪みゲージ5ca,5taが例えば第1構造体302の薄肉部305の上面に貼り付けられ、歪みゲージ5cb,5tbが例えば第2構造体303の薄肉部305の上面に貼り付けられる。具体的には、歪みゲージ5caは、第1構造体302の薄肉部305の上面における可動厚肉部308の近傍に取り付けられ、歪みゲージ5taは、第1構造体302の薄肉部305の上面における荷重印加部301の近傍に取り付けられる。また、歪みゲージ5cbは、第2構造体303の薄肉部305の上面における可動厚肉部308の近傍に取り付けられ、歪みゲージ5tbは、第2構造体303の薄肉部305の上面における荷重印加部301の近傍に取り付けられる。
【0053】
図11は、荷重印加部301に+Z方向の荷重が加わった際に起歪体3Bが歪む様子を示す底面斜視図である。図11に示されるように、起歪体3Bにおいては、荷重印加部301が、固定厚肉部300に対して、加わった荷重に応じて主に荷重方向(+Z方向)にだけ相対的に変位するように、薄肉部305〜307がS字状に曲がっている。そして、歪みゲージ5caが貼り付けられる、第1構造体302の薄肉部305の上面における可動厚肉部308の近傍には圧縮応力が発生し、歪みゲージ5taが貼り付けられる、第1構造体302の薄肉部305の上面における荷重印加部301の近傍には引っ張り応力が発生する。また、歪みゲージ5cbが貼り付けられる、第2構造体303の薄肉部305の上面における可動厚肉部308の近傍には圧縮応力が発生し、歪みゲージ5tbが貼り付けられる、第2構造体303の薄肉部305の上面における荷重印加部301の近傍には引っ張り応力が発生する。これにより、ホイートストンブリッジ回路を構成する4つの歪みゲージ5ca,5cb,5ta,5tbを有するロードセル10からの一対の計量信号は、被計量物TGの部分重量を示すようになる。
【0054】
このように、本例に係る起歪体3Bは、上述の起歪体3Aと同様の構造を有していることから、起歪体3Aと同様の効果を生じる。
【0055】
<起歪体の第3の構造例>
図12は、第3の構造例に係る起歪体3(以後、「起歪体3C」と呼ぶ)を示す底面斜視図である。図13は、起歪体3Cの構造が理解し易いように、起歪体3Cを厚み方向に切断して、その一部を除去した様子を示す底面斜視図である。本例に係る起歪体3Cは、上述の起歪体3Bにおいて、第1構造体302及び第2構造体303のそれぞれが薄肉部310〜312をさらに備えるものである。以下では、起歪体3Cについて、起歪体3Bとの相違点を中心に説明する。
【0056】
図12,13に示されるように、薄肉部310は、薄肉部305と同じ形状の板状部分であって、厚み方向をZ軸方向としてX軸方向に沿って延在している。第1構造体302及び第2構造体303の薄肉部310は、X軸方向に沿って荷重印加部301を間に挟んで一直線上に並んでいる。つまり、第1構造体302及び第2構造体303の薄肉部310は、荷重印加部301の周縁に等間隔(180度間隔)で配置されている。
【0057】
第1構造体302では、薄肉部310が、荷重印加部301の+X側の側面から、可動厚肉部308の−X側の側面まで延びており、薄肉部305の−Z側において薄肉部305と対向するように配置されている。第2構造体303では、薄肉部310が、荷重印加部301の−X側の側面から、可動厚肉部308の+X側の側面まで延びており、薄肉部305の−Z側において薄肉部305と対向するように配置されている。第1構造体302及び第2構造体303のそれぞれでは、薄肉部310の一方端が、荷重印加部301の側面における−Z側端部に接続されており、薄肉部310の他方端が、可動厚肉部308の側面における−Z側端部に接続されている。
【0058】
薄肉部311,312は、薄肉部306,307と同じ形状の板状部分であって、厚み方向をZ軸方向としてX軸方向に沿って延在している。第1構造体302では、薄肉部311が、固定厚肉部300の+Y側の突出部分300cにおける+X側の側面から、可動厚肉部308の−X側の側面まで延びており、薄肉部306の+Z側で薄肉部306と対向するように配置されている。第2構造体303では、薄肉部311が、固定厚肉部300の−Y側の突出部分300cにおける−X側の側面から、可動厚肉部308の+X側の側面まで延びており、薄肉部306の+Z側で薄肉部306と対向するように配置されている。第1構造体302及び第2構造体303のそれぞれでは、薄肉部311の一方端が、突出部分300cの側面における+Z側の端部に接続されており、薄肉部311の他方端が、可動厚肉部308の側面における+Z側の端部に接続されている。
【0059】
また、第1構造体302では、薄肉部312が、固定厚肉部300の−Y側の突出部分300cにおける+X側の側面から、可動厚肉部308の−X側の側面まで延びており、薄肉部307の+Z側で薄肉部307と対向するように配置されている。第2構造体303では、薄肉部312が、固定厚肉部300の+Y側の突出部分300cにおける−X側の側面から、可動厚肉部308の+X側の側面まで延びており、薄肉部307の+Z側で薄肉部307と対向するように配置されている。第1構造体302及び第2構造体303のそれぞれでは、薄肉部312の一方端が、突出部分300cの側面における+Z側の端部に接続されており、薄肉部312の他方端が、可動厚肉部308の側面における+Z側の端部に接続されている。
【0060】
以上のような構造を有する起歪体3Cは、図14に示される構造体30Cを同じ面で2つ貼り合わせることによって形成することができる。構造体30Cは、枠状部分600と、複数の板状部分601〜609とで構成されている。2つの構造体30Cが同じ面で張り合わされて得られる構造においては、互いに重ね合わされた2つの枠状部分600が固定厚肉部300を構成し、互いに重ね合わされた2つの板状部分601が荷重印加部301を構成し、互いに重ね合わされた2つの板状部分605が第2構造体303の可動厚肉部308を構成し、互いに重ね合わされた2つの板状部分609が第1構造体302の可動厚肉部308を構成する。そして、2つの構造体30Cが同じ面で張り合わされて得られる構造においては、対向配置された2つの板状部分602がそれぞれ第2構造体303の薄肉部305,310を構成し、対向配置された2つの板状部分603がそれぞれ第2構造体303の薄肉部307,312を構成し、対向配置された2つの板状部分604がそれぞれ第2構造体303の薄肉部306,311を構成する。また、当該構造においては、対向配置された2つの板状部分606がそれぞれ第1構造体302の薄肉部305,310を構成し、対向配置された2つの板状部分607がそれぞれ第1構造体302の薄肉部306,311を構成し、対向配置された2つの板状部分608がそれぞれ第1構造体302の薄肉部307,312を構成する。
【0061】
以上のような構造を有する起歪体3Cは、起歪体3Bと同様にして計量皿1に取り付けられる。そして、起歪体3Cの荷重印加部301の底面の中央には足部材5が取り付けられる。したがって、計量皿1に被計量物TGが搭載されると、被計量物TGの重量によって固定厚肉部300が−Z方向に沈み、荷重印加部301には+Z方向に荷重が加わるようになる。荷重印加部301は、荷重が加わると、固定厚肉部300に対してほぼ荷重方向にだけ相対的に変位する。
【0062】
また、起歪体3Cにおいては、起歪体3Bと同様に、歪みゲージ5ca,5taが例えば第1構造体302の薄肉部305の上面に貼り付けられ、歪みゲージ5cb,5tbが例えば第2構造体303の薄肉部305の上面に貼り付けられる。
【0063】
図15は、荷重印加部301に+Z方向の荷重が加わった際に起歪体3Cが歪む様子を示す底面斜視図である。図15に示されるように、起歪体3Cにおいては、荷重印加部301が、固定厚肉部300に対して、加わった荷重に応じて主に荷重方向(+Z方向)に相対的に変位するように、薄肉部305〜307,310〜312がS字状に曲がっている。そして、歪みゲージ5caが貼り付けられる、第1構造体302の薄肉部305の上面における可動厚肉部308の近傍には圧縮応力が発生し、歪みゲージ5taが貼り付けられる、第1構造体302の薄肉部305の上面における荷重印加部301の近傍には引っ張り応力が発生する。また、歪みゲージ5cbが貼り付けられる、第2構造体303の薄肉部305の上面における可動厚肉部308の近傍には圧縮応力が発生し、歪みゲージ5tbが貼り付けられる、第2構造体303の薄肉部305の上面における荷重印加部301の近傍には引っ張り応力が発生する。これにより、ホイートストンブリッジ回路を構成する4つの歪みゲージ5ca,5cb,5ta,5tbを有するロードセル10からの一対の計量信号は、被計量物TGの部分重量を示すようになる。
【0064】
このように、本例に係る起歪体3Cでは、上述の起歪体3A,3Bと同様の構造を有しているため、起歪体3A,3Bと同様の効果を生じる。
【0065】
さらに、本例に係る起歪体3Cにおいては、荷重印加部301と可動厚肉部308との間と、可動厚肉部308と固定厚肉部300との間は、起歪体3Cの厚み方向に並んだ2つの薄肉部で接続されているため、荷重印加部301に印加できる荷重をさらに大きくすることができ、起歪体3Cで検出可能な重量の上限値を増加させることができる。その結果、本例に係る起歪体3Cを使用する多点式秤100においては、測定可能な被計量物TGの重量の上限値が増加する。
【0066】
<起歪体の第4の構造例>
図16は、第4の構造例に係る起歪体3(以後、「起歪体3D」と呼ぶ)を示す底面斜視図である。図16に示されるように、起歪体3Dは、平面視において、一方向にやや長い長方形を成し、計量皿1に固定される固定厚肉部320と、計量皿1に搭載された被計量物TGの重量によって荷重が加わって固定厚肉部320に対して相対的に変位する厚肉の荷重印加部321と、荷重印加部321と固定厚肉部320とを接続する第1構造体322及び第2構造体323とを備えている。
【0067】
第1構造体322及び第2構造体323は、互いに同じ形状を有しており、それぞれ、荷重印加部321に荷重が加わると歪む薄肉部325,326と、荷重印加部321に荷重が加わると固定厚肉部320に対して相対的に変位する可動厚肉部327とを備えている。起歪体3Dにおいては、固定厚肉部320、荷重印加部321及び可動厚肉部327は、薄肉部325,326に対して十分に厚く形成されており、計量皿1に被計量物TGが搭載されて薄肉部325,326が歪んだとしてもほとんど歪むことはない。したがって、起歪体3Dを用いて被計量物TGを計量する際には、固定厚肉部320、荷重印加部321及び可動厚肉部327は剛体と見なすことができる。
【0068】
固定厚肉部320は、平面視の外形がX軸方向にやや長い長方形を成す枠状部分である。固定厚肉部320は、X軸方向に沿って延在する、互いに平行な一対の長辺部分320aと、Y軸方向に沿って延在する、互いに平行な一対の短辺部分320bと、一対の短辺部分320bから内側にそれぞれ突出する2つの突出部分320cとで構成されている。一方の突出部分320cは、−X側の短辺部分320bにおける+Y側端部から+X方向に突出しており、+Y側の長辺部分320aにも接続されている。他方の突出部分320cは、+X側の短辺部分320bにおける−Y側端部から−X方向に突出しており、−Y側の長辺部分320aにも接続されている。荷重印加部321、第1構造体322及び第2構造体323は、この枠状の固定厚肉部320の内側に配置されている。
【0069】
荷重印加部321は、上述の荷重印加部301と同様の形状を有しており、平面視において、起歪体3Dの中央に位置している。
【0070】
第1構造体322及び第2構造体323は、荷重印加部321の周辺において、荷重印加部301を中心にして180°回転させた位置関係を有している。これにより、第1構造体322及び第2構造体323は、平面視において、荷重印加部321を中心にして点対称に配置されている。
【0071】
第1構造体322及び第2構造体323の可動厚肉部327のそれぞれは、平面視L字形の板状部分であって、Y軸方向に沿って延びる比較的短い第1部分327aと、当該第1部分327aにおけるY軸方向の一方端部からX軸方向に沿って延びる比較的長い第2部分327bとで構成されている。
【0072】
第1構造体322及び第2構造体323の薄肉部325,326は、互いに同じ形状であって、平面視四角形の板状部分である。薄肉部325,326は、厚み方向をZ軸方向として配置されている。
【0073】
第1構造体322では、薄肉部325が、荷重印加部321の−X側の側面から、可動厚肉部327の第1部分327aの+X側の側面まで延びており、薄肉部326が、可動厚肉部327の第2部分327bの+X側の側面から、固定厚肉部320の−Y側の突出部分320cにおける−X側の側面まで延びている。第2構造体323では、薄肉部325が、荷重印加部321の+X側の側面から、可動厚肉部327の第1部分327aの−X側の側面まで延びており、薄肉部326が、可動厚肉部327の第2部分327bの−X側の側面から、固定厚肉部320の+Y側の突出部分320cにおける+X側の側面まで延びている。第1構造体322及び第2構造体323のそれぞれでは、薄肉部325の一方端が、荷重印加部321の側面におけるZ軸方向の中央部に接続されており、薄肉部325の他方端が、可動厚肉部327の第1部分327aの側面におけるZ軸方向の中央部に接続されている。
【0074】
第1構造体322及び第2構造体323の薄肉部325は、X軸方向に沿って荷重印加部321を間に挟んで一直線上に並んでいる。つまり、第1構造体322及び第2構造体323の薄肉部325は、荷重印加部321の周縁に等間隔(180度間隔)で配置されている。第2構造体323の薄肉部326は、第1構造体322の薄肉部325に対して+Y側に位置しており、第1構造体322の薄肉部326は、第2構造体323の薄肉部325に対して−Y側に位置している。
【0075】
平面視において、荷重印加部321の中心と第1構造体322の薄肉部325の中心との間のX軸方向の距離D1と、荷重印加部321の中心と第1構造体322の薄肉部326の中心との間のX軸方向の距離D2とは一致している。つまり、X軸方向において、第1構造体322の薄肉部325,326は、荷重印加部321に対して等距離に配置されている。同様に、X軸方向において、第2構造体323の薄肉部325,326は、荷重印加部321に対して等距離に配置されている。
【0076】
第1構造体322では、薄肉部325が荷重印加部321から可動厚肉部327まで延びる方向(−X方向)が、薄肉部326が可動厚肉部327から固定厚肉部320まで延びる方向(+X方向)とは逆方向となっている。同様に、第2構造体323では、薄肉部325が荷重印加部321から可動厚肉部327まで延びる方向(+X方向)が、薄肉部326が可動厚肉部327から固定厚肉部320まで延びる方向(−X方向)とは逆方向となっている。
【0077】
以上のような構造を有する起歪体3Dにおいては、足部材5が荷重印加部321の底面の中央に取り付けられる。そして、固定厚肉部320の上面が、複数の固定部材4を介して計量皿1の底面に取り付けられる。例えば、一対の長辺部分320a、一対の短辺部分320b及び2つの突出部分320cのそれぞれの上面が、少なくとも一つの固定部材4を介して計量皿1の底面に取り付けられる。これにより、計量皿1に被計量物TGが搭載されると、被計量物TGの重量によって固定厚肉部320が−Z方向に沈み、荷重印加部321には+Z方向に荷重が加わるようになる。そして、荷重印加部321は、+Z方向の荷重が加わると、固定厚肉部320に対してほぼ+Z方向にだけ相対的に変位する。多点式秤100に設けられる4つの起歪体3Dは、それらの長手方向が計量皿1の長手方向と一致し、かつそれらの向きが同じとなるように、計量皿1の底面の4隅に取り付けられる。
【0078】
また、起歪体3Dにおいては、歪みゲージ5ca,5taが、例えば第1構造体322の薄肉部325の上面及び底面にそれぞれ貼り付けられる。また、歪みゲージ5cb,5tbが、例えば第2構造体323の薄肉部325の上面及び底面にそれぞれ貼り付けられる。なお、歪みゲージ5ca,5cb,5ta,5tbは、薄肉部326に貼り付けても良い。
【0079】
図17は、荷重印加部321に+Z方向の荷重が加わった際に起歪体3Dが歪む様子を示す底面斜視図である。図17に示されるように、起歪体3Dにおいては、荷重印加部321が、固定厚肉部320に対して、加わった荷重に応じて主に荷重方向(+Z方向)に相対的に変位するように、薄肉部325,326が曲がっている。このとき、本構造例に係る薄肉部325,326のそれぞれは、S字状に曲がるのではなく、その底面が凸となるようにほぼ湾曲するように曲がる。その結果、歪みゲージ5ca,5cbがそれぞれ貼り付けられる、第1構造体322及び第2構造体323の薄肉部325の上面には圧縮応力が発生し、歪みゲージ5ta,5tbがそれぞれ貼り付けられる、第1構造体322及び第2構造体323の薄肉部325の底面には引っ張り応力が発生する。これにより、ホイートストンブリッジ回路を構成する4つの歪みゲージ5ca,5cb,5ta,5tbを有するロードセル10からの一対の計量信号は、被計量物TGの部分重量を示すようになる。
【0080】
以上のように、本例に係る起歪体3Dにおいては、荷重印加部321が、固定厚肉部320に対して、薄肉部325、可動厚肉部327及び薄肉部326を介して接続されており、薄肉部325が荷重印加部321から可動厚肉部327まで延びる方向が、薄肉部326が可動厚肉部327から固定厚肉部320まで延びる方向とは逆方向である。したがって、図17に示されるように、荷重印加部321が、固定厚肉部320に対して、加わった荷重に応じて主に荷重方向に相対的に変位するように、薄肉部325,326を歪ませることができる。よって、荷重印加部321が、固定厚肉部320に対して、加わった荷重に応じて主に荷重方向に相対的に変位することが可能な、薄型の重量測定用の起歪体3Dを実現することができる。
【0081】
また、起歪体3Dにおいては、荷重印加部321に対して、その周縁に沿って等間隔で配置された複数の薄肉部325が接続されているため、固定厚肉部320に対して、荷重印加部321を安定して荷重方向に相対的に変位させることができる。さらに、荷重印加部321に印加できる荷重を大きくすることができ、起歪体3Dで検出可能な重量の上限値を増加させることができる。その結果、本例に係る起歪体3Dを使用する多点式秤100においては、測定可能な被計量物TGの重量の上限値が増加する。
【0082】
なお、図18に示されるように、可動厚肉部327を第1部分327aだけで構成し、突出部分320cを可動厚肉部327に向けて延ばしても良い。図18の起歪体3Dの変形例においては、第1構造体322では、薄肉部325の一方端が、荷重印加部321の−X側の側面に接続されており、薄肉部325の他方端が、可動厚肉部327の第1部分327aにおける+X側の側面の+Y側半分に接続されている。また、第1構造体322では、薄肉部326の一方端が、可動厚肉部327の第1部分327aにおける+X側の側面の−Y側半分に接続されており、薄肉部326の他方端が、固定厚肉部320の−Y側の突出部分320cにおける−X側の側面に接続されている。これにより、第1構造体322では、薄肉部325,326がY軸方向で並ぶようになる。
【0083】
同様に、第2構造体323では、薄肉部325の一方端が、荷重印加部321の+X側の側面に接続されており、薄肉部325の他方端が、可動厚肉部327の第1部分327aにおける−X側の側面の−Y側半分に接続されている。また、第2構造体323では、薄肉部326の一方端が、可動厚肉部327の第1部分327aにおける−X側の側面の+Y側半分に接続されており、薄肉部326の他方端が、固定厚肉部320の+Y側の突出部分320cにおける+X側の側面に接続されている。これにより、第2構造体323でも、薄肉部325,326がY軸方向で並ぶようになる。
【0084】
図19は、荷重印加部321に+Z方向の荷重が加わった際に、図18の起歪体3Dの変形例が歪む様子を示す底面斜視図である。図19に示されるように、起歪体3Dの変形例においても、図17の起歪体3Dと同様に、荷重印加部321が、固定厚肉部320に対して、加わった荷重に応じてほぼ荷重方向(+Z方向)にだけ相対的に変位するように、薄肉部325,326が曲がっている。このとき、本変形例の起歪体3Dに係る薄肉部325,326のそれぞれは、湾曲するのではなく、ねじれるように曲がっている。
【0085】
このように、図18の起歪体3Dの変形例においても、図16の起歪体3Dと同様に、荷重印加部321を、固定厚肉部320に対して、薄肉部325、可動厚肉部327及び薄肉部326を介して接続し、薄肉部325が荷重印加部321から可動厚肉部327まで延びる方向を、薄肉部326が可動厚肉部327から固定厚肉部320まで延びる方向と逆方向にしている。したがって、荷重印加部321が、固定厚肉部320に対して、加わった荷重に応じて主に荷重方向に相対的に変位するように、薄肉部325,326を歪ませることができる。よって、荷重印加部321が、固定厚肉部320に対して、加わった荷重に応じて主に荷重方向に相対的に変位することが可能な、薄型の重量測定用の起歪体3Dを実現することができる。
【0086】
ここで、図18の本変形例に係る起歪体3Dにおいては、上述のように、荷重印加部321に荷重が加わると、薄肉部325,326は、ねじれるように曲がるため、薄肉部325,326がほぼ湾曲するように曲がる図16の起歪体3Dと比較して、薄肉部325,326に歪みゲージ5ca,5cb,5ta,5tbが貼りにくくなる。これは、図18の起歪体3Dの変形例の方が、図16の起歪体3Dよりも、可動厚肉部327がX軸方向に沿った軸の周りに回転し易いからである。以下にこの点について詳細に説明する。
【0087】
図20は、図18の変形例において、荷重印加部321に荷重が加わった際に第1構造体322の可動厚肉部327が回転する様子を説明するための図である。図18の変形例に係る第1構造体322では、可動厚肉部327の第1部分327aにおける+Y側部分に、薄肉部325を介して荷重印加部321が接続されているため、図20に示されるように、当該+Y側部分における、薄肉部325との接続箇所328aに対して、−Z方向の力Fが加わると考えることができる。そして、可動厚肉部327の第1部分327aにおける−Y側部分に、薄肉部326を介して固定厚肉部320が接続されているため、可動厚肉部327の回転を考える上では、当該−Y側部分における、薄肉部326との接続箇所328bが支点であると見なすことができる。したがって、可動厚肉部327は、接続箇所328aに力Fが加わることによって、接続箇所328bを通る、X軸に沿った軸RXを回転軸として回転することになる。なお、図18の変形例に係る第1構造体322の可動厚肉部327では、薄肉部325との接続箇所328aに力Fが加わることから、つまり接続箇所328aが作用点となることから、接続箇所328aを通る、Y軸方向に沿った軸RYを回転軸として回転しない。
【0088】
図21は、図16の起歪体3Dにおいて、荷重印加部321に荷重が加わった際の第1構造体322の可動厚肉部327が回転する様子を説明するための図である。図16の起歪体3Dにおいても、可動厚肉部327の第1部分327aにおける+Y側部分に、薄肉部325を介して荷重印加部321が接続されているため、図21に示されるように、当該+Y側部分における薄肉部325との接続箇所328aに対して、−Z方向の力Fが加わると考えることができる。そして、可動厚肉部327の第2部分327bの+X側の側面に、薄肉部326を介して固定厚肉部320が接続されているため、可動厚肉部327の回転を考える上では、当該第2部分327bの+X側端を支点と考えることができる。したがって、可動厚肉部327は、接続箇所328aに力Fが加わることによって、その第2部分327bにおける薄肉部326との接続箇所328cを通る、X軸に沿った軸RXを回転軸として回転することになる。
【0089】
ここで、物体の回転のしにくさを示す慣性モーメントIは、連続体については以下の式(1)で表すことができる。
【0090】
【数1】

【0091】
式(1)では、dmは、連続体の微小部分の質量を表し、rは微小部分と回転軸(中心軸)との距離を表している。
【0092】
図16の起歪体3Dにおいては、図18の変形例と比較して、可動厚肉部327の大きさが、第2部分327b(図21において斜線で示している部分)の分だけ大きくなっている。したがって、軸RX周りの慣性モーメントIは、図16の起歪体3Dに係る可動厚肉部327の方が、図18の変形例に係る可動厚肉部327よりも大きくなる。つまり、図16の起歪体3Dに係る可動厚肉部327の方が、図18の変形例に係る可動厚肉部327よりも、軸RXの周りに回転しにくくなる。図16の起歪体3Dに係る第1構造体322の可動厚肉部327では、第2部分327bが、X軸方向に沿って、第1部分327aから荷重印加部321の+X側端まで延びているため、軸RXの周りにはほとんど回転しなくなる。図16の起歪体3Dに係る第1構造体322の可動厚肉部327では、第2部分327bが+X方向に延びれば延びるほど、軸RXの周りには回転しにくくなる。
【0093】
一方で、図16の起歪体3Dに係る可動厚肉部327では、図21に示されるように、作用点たる接続箇所328aと、支点たる接続箇所328cを通る、Y軸方向に沿った軸RYとの間に距離D3が存在するため、軸RYを回転軸として回転するようになる。
【0094】
このように、図16の起歪体3Dに係る第1構造体322の可動厚肉部327では、第1部分327aから+X方向に突出する第2部分327bを有しているため、力Fが加わると、軸RXの周りにほとんど回転せず、軸RYの周りに回転する。言い換えれば、図16の起歪体3Dでは、平面視において、可動厚肉部327と薄肉部326との接続箇所(支点)は、可動厚肉部327と薄肉部325との接続箇所(作用点)を通る、Y軸方向に沿った仮想線VL(図21参照)に対して、荷重印加部321側に位置しているため、荷重印加部321に荷重が加わると、軸RXの周りにほとんど回転せず、軸RYの周りに回転する。これにより、薄肉部325,326がねじれにくくなり、薄肉部325,326のそれぞれはほぼ湾曲するように曲がることになる。その結果、薄肉部325,326に対して、歪みゲージ5ca,5cb,5ta,5tbを貼り付けやすくなる。
【0095】
第2構造体323の可動厚肉部327についても同様のことが言え、図16の起歪体3Dでは、平面視において、可動厚肉部327と薄肉部326との接続箇所は、可動厚肉部327と薄肉部325との接続箇所を通る、Y軸方向に沿った仮想線に対して、荷重印加部321側に位置しているため、薄肉部325,326がねじれにくくなり、薄肉部325,326に対して、歪みゲージ5ca,5cb,5ta,5tbを貼り付けやすくなる。
【0096】
<起歪体の第5の構造例>
図22は、第5の構造例に係る起歪体3(以後、「起歪体3E」と呼ぶ)を示す底面斜視図である。図22に示されるように、起歪体3Eは、平面視において、一方向にやや長い長方形を成し、計量皿1に固定される固定厚肉部330と、計量皿1に搭載された被計量物TGの重量によって荷重が加わって固定厚肉部330に対して相対的に変位する厚肉の荷重印加部331と、荷重印加部331と固定厚肉部330とを接続する第1構造体332〜第4構造体335とを備えている。
【0097】
第1構造体332〜第4構造体335は、互いに同じ形状を有しており、それぞれ、荷重印加部331に荷重が加わると歪む薄肉部340,341と、荷重印加部321に荷重が加わると固定厚肉部330に対して相対的に変位する可動厚肉部342とを備えている。起歪体3Eにおいては、固定厚肉部330、荷重印加部331及び可動厚肉部342は、薄肉部340,341に対して十分に厚く形成されており、計量皿1に被計量物TGが搭載されて薄肉部340,341が歪んだとしてもほとんど歪むことはない。したがって、起歪体3Eを用いて被計量物TGを計量する際には、固定厚肉部330、荷重印加部331及び可動厚肉部342は剛体と見なすことができる。
【0098】
固定厚肉部330は、平面視の外形がX軸方向にやや長い長方形を成す枠状部分である。荷重印加部331及び第1構造体332〜第4構造体335は、この枠状の固定厚肉部330の内側に配置されている。固定厚肉部330は、X軸方向に沿って延在する、互いに平行な一対の長辺部分330aと、Y軸方向に沿って延在する、互いに平行な一対の短辺部分330bと、固定厚肉部330の内側四隅に設けられた4つの突出部分330cとで構成されている。4つの突出部分330cは、第1構造体332〜第4構造体335にそれぞれ接続されている。
【0099】
第1構造体332に接続されている突出部分330c(以後、「左下突出部分330c」と呼ぶことがある)は、−Y側の長辺部分330aにおける−X側端部から+Y方向に沿って内側に突出しており、−X側の短辺部分330bにも接続されている。第2構造体333に接続されている突出部分330c(以後、「左上突出部分330c」と呼ぶことがある)は、−X側の短辺部分330bにおける+Y側端部から+X方向に沿って内側に突出しており、+Y側の長辺部分330aにも接続されている。第3構造体334に接続されている突出部分330c(以後、「右上突出部分330c」と呼ぶことがある)は、+Y側の長辺部分330aにおける+X側端部から−Y方向に沿って内側に突出しており、+X側の短辺部分330bにも接続されている。第4構造体335に接続されている突出部分330c(以後、「右下突出部分330c」と呼ぶことがある)は、+X側の短辺部分330bにおける−Y側端部から−X方向に沿って内側に突出しており、−Y側の長辺部分330aにも接続されている。
【0100】
荷重印加部331は、上述の荷重印加部301等と同様の形状を有しており、平面視において、起歪体3Eの中央に位置している。
【0101】
第1構造体332〜第4構造体335は、荷重印加部331の周辺において、荷重印加部331を中心にして90°ずつ回転させた位置関係を有している。これにより、第1構造体332及び第3構造体334は、平面視において、荷重印加部331を中心にして点対称に配置されており、第2構造体333及び第4構造体335は、平面視において、荷重印加部331を中心にして点対称に配置されている。
【0102】
薄肉部340,341は、互いに同じ形状であって、一方向に長い板状部分である。薄肉部340,341は、厚み方向をZ軸方向として配置されている。薄肉部340の長手方向の一方端及び他方端が、荷重印加部331及び可動厚肉部342にそれぞれ接続されており、薄肉部341の長手方向の一方端及び他方端が、固定厚肉部330及び可動厚肉部342にそれぞれ接続されている。第1構造体332〜第4構造体335の薄肉部340は、荷重印加部331の周縁に等間隔(90度間隔)で配置されている。そして、第1構造体332〜第4構造体335のそれぞれでは、薄肉部340が荷重印加部331から可動厚肉部342まで延びる方向DR1は、薄肉部341が可動厚肉部342から固定厚肉部330まで延びる方向DR2とは逆方向となっている。
【0103】
可動厚肉部342は、一方向に延在する第1部分342aと、当該第1部分342aの延在方向の一方端部からL字形を成すように延びる第2部分342bと、第1部分342aから内側に突出する突出部分342cとで構成されている。
【0104】
第1構造体332及び第3構造体334では、可動厚肉部342の第1部分342aはX軸方向に沿って延在し、可動厚肉部342の第2部分342bはY軸方向に沿って延在している。第2構造体333及び第4構造体335では、可動厚肉部342の第1部分342aはY軸方向に沿って延在し、可動厚肉部342の第2部分342bはX軸方向に沿って延在している。
【0105】
第1構造体332では、薄肉部340が、荷重印加部331の+Y側の側面から、可動厚肉部342における第1部分342aの−Y側の側面まで延びている。また、第1構造体332では、薄肉部341が、可動厚肉部342における第2部分342bの−Y側の側面から、固定厚肉部330の左下突出部分330cの+Y側の側面まで延びている。
【0106】
第2構造体333では、薄肉部340が、荷重印加部331の+X側の側面から、可動厚肉部342における第1部分342aの−X側の側面まで延びている。また、第2構造体333では、薄肉部341が、可動厚肉部342における第2部分342bの−X側の側面から、固定厚肉部330の左上突出部分330cの+X側の側面まで延びている。
【0107】
第3構造体334では、薄肉部340が、荷重印加部331の−Y側の側面から、可動厚肉部342における第1部分342aの+Y側の側面まで延びている。また、第3構造体334では、薄肉部341が、可動厚肉部342における第2部分342bの+Y側の側面から、固定厚肉部330の右上突出部分330cの−Y側の側面まで延びている。
【0108】
第4構造体335では、薄肉部340が、荷重印加部331の−X側の側面から、可動厚肉部342における第1部分342aの+X側の側面まで延びている。また、第4構造体335では、薄肉部341が、可動厚肉部342における第2部分342bの+X側の側面から、固定厚肉部330の右下突出部分330cの−X側の側面まで延びている。
【0109】
第1構造体332〜第4構造体335のそれぞれでは、薄肉部340の一方端が、荷重印加部331の側面におけるZ軸方向の中央部に接続されており、薄肉部340の他方端が、可動厚肉部342の第1部分342aの側面におけるZ軸方向の中央部に接続されている。また、第1構造体332〜第4構造体335のそれぞれでは、薄肉部341の一方端が、可動厚肉部342の第2部分342bの側面におけるZ軸方向の中央部に接続されており、薄肉部341の他方端が、固定厚肉部330の突出部分330cの側面におけるZ軸方向の中央部に接続されている。
【0110】
第1構造体332〜第4構造体335のそれぞれでは、平面視において、荷重印加部331の中心と薄肉部340の中心との間の方向DR1,DR2に沿った距離D4と、荷重印加部331の中心と薄肉部341の中心との間の方向DR1,DR2に沿った距離D5とが一致している。つまり、第1構造体332〜第4構造体335のそれぞれでは、方向DR1,DR2に平行な方向においては、薄肉部340,341は、荷重印加部331に対して等距離に配置されている。
【0111】
第1構造体332の薄肉部340と、第3構造体334の薄肉部341とは、第2構造体333の可動厚肉部342を間に挟んで互いに対向している。第2構造体333の薄肉部340と、第4構造体335の薄肉部341とは、第3構造体334の可動厚肉部342を間に挟んで互いに対向している。第3構造体334の薄肉部340と、第1構造体332の薄肉部341とは、第4構造体335の可動厚肉部342を間に挟んで互いに対向している。そして、第4構造体335の薄肉部340と、第2構造体333の薄肉部341とは、第1構造体332の可動厚肉部342を間に挟んで互いに対向している。
【0112】
以上のような構造を有する起歪体3Eにおいては、足部材5が荷重印加部331の底面に取り付けられる。そして、固定厚肉部330の上面が、複数の固定部材4を介して計量皿1の底面に取り付けられる。例えば、一対の長辺部分330a、一対の短辺部分330b及び4つの突出部分330cのそれぞれの上面が、少なくとも一つの固定部材4を介して計量皿1の底面に取り付けられる。これにより、計量皿1に被計量物TGが搭載されると、被計量物TGの重量によって固定厚肉部330が−Z方向に沈み、荷重印加部331には+Z方向に荷重が加わるようになる。そして、荷重印加部331は、荷重が加わると、固定厚肉部330に対してほぼ荷重方向にだけ相対的に変位する。多点式秤100に設けられる4つの起歪体3Eは、それらの長手方向が計量皿1の長手方向と一致し、かつそれらの向きが同じとなるように、計量皿1の底面の4隅に取り付けられる。
【0113】
また、起歪体3Eにおいては、歪みゲージ5ca,5taが、例えば第1構造体332の薄肉部340の上面及び底面にそれぞれ貼り付けられる。また、歪みゲージ5cb,5tbが、例えば第3構造体334の薄肉部340の上面及び底面にそれぞれ貼り付けられる。なお、歪みゲージ5ca,5cb,5ta,5tbは、薄肉部341に貼り付けても良い。
【0114】
図23は、荷重印加部331に+Z方向の荷重が加わった際に起歪体3Eが歪む様子を示す底面斜視図である。図23に示されるように、起歪体3Eにおいては、荷重印加部331が、固定厚肉部330に対して、加わった荷重に応じて主に荷重方向(+Z方向)に相対的に変位するように、第1構造体332〜第4構造体335の薄肉部340,341が曲がっている。このとき、本構造例に係る薄肉部340,341は、S字状に曲がるのではなく、その底面が凸となるようにほぼ湾曲するように曲がる。その結果、歪みゲージ5ca,5cbが貼り付けられる、第1構造体332及び第3構造体334の薄肉部340の上面には圧縮応力が発生し、歪みゲージ5ta,5tbが貼り付けられる、第1構造体332及び第3構造体334の薄肉部340の底面には引っ張り応力が発生する。これにより、ホイートストンブリッジ回路を構成する4つの歪みゲージ5ca,5cb,5ta,5tbを有するロードセル10からの一対の計量信号は、被計量物TGの部分重量を示すようになる。
【0115】
以上のように、本例に係る起歪体3Eにおいては、荷重印加部331が、固定厚肉部330に対して、薄肉部340、可動厚肉部342及び薄肉部341を介して接続されており、薄肉部340が荷重印加部331から可動厚肉部342まで延びる方向DR1が、薄肉部341が可動厚肉部342から固定厚肉部330まで延びる方向DR2とは逆方向である。したがって、図23に示されるように、荷重印加部331が、固定厚肉部330に対して、加わった荷重に応じて主に荷重方向に相対的に変位するように、薄肉部340,341を歪ませることができる。よって、荷重印加部331が、固定厚肉部330に対して、加わった荷重に応じてほぼ荷重方向に相対的に変位することが可能な、薄型の重量測定用の起歪体3Eを実現することができる。
【0116】
また、起歪体3Eにおいては、荷重印加部331に対して、その周縁に沿って等間隔で配置された複数の薄肉部340が接続されているため、固定厚肉部330に対して、荷重印加部331を安定して荷重方向に相対的に変位させることができる。さらに、荷重印加部331に印加できる荷重を大きくすることができ、起歪体3Eで検出可能な重量の上限値を増加させることができる。その結果、本例に係る起歪体3Eを使用する多点式秤100においては、測定可能な被計量物TGの重量の上限値が増加する。
【0117】
なお、図24に示されるように、第1構造体332〜第4構造体335のそれぞれにおいて、可動厚肉部342を、第1部分342aと、当該第1部分342aにおける中央部から内側に突出する突出部分342cとだけで構成し、左上突出部分330cを+X方向に、右上突出部分330cを−Y方向に、右下突出部分330cを−X方向に、左下突出部分330cを+Y方向にそれぞれ延ばしても良い。図24の起歪体3Eの変形例では、薄肉部340の一方端は荷重印加部331に接続されており、薄肉部340の他方端は、可動厚肉部342の第1部分342aにおける延在方向の一方側端部に接続されている。また、図24の起歪体3Eの変形例では、薄肉部341の一方端は、可動厚肉部342の第1部分342aにおける延在方向の他方端部に接続されており、薄肉部341の他方端は、固定厚肉部330の突出部分330cに接続されている。これにより、第1構造体332〜第4構造体335のそれぞれでは、平面視において、薄肉部340が荷重印加部331から可動厚肉部342まで延びる方向DR1及び薄肉部341が可動厚肉部342から固定厚肉部330まで延びる方向DR2に対して垂直方向において、薄肉部340,341が対向するようになる。
【0118】
図25は、荷重印加部331に+Z方向の荷重が加わった際に、図24の起歪体3Eの変形例が歪む様子を示す底面斜視図である。図25に示されるように、起歪体3Eの変形例においても、図22の起歪体3Eと同様に、荷重印加部331が、固定厚肉部330に対して、加わった荷重に応じてほぼ荷重方向(+Z方向)にだけ相対的に変位するように、第1構造体332〜第4構造体335の薄肉部340,341が曲がっている。このとき、本変形例の起歪体3Eに係る薄肉部340,341のそれぞれは、湾曲するのではなく、ねじれるように曲がっている。
【0119】
このように、図24の起歪体3Eの変形例においても、図22の起歪体3Eと同様に、荷重印加部331を、固定厚肉部330に対して、薄肉部340、可動厚肉部342及び薄肉部341を介して接続し、薄肉部340が荷重印加部331から可動厚肉部342まで延びる方向DR1を、薄肉部341が可動厚肉部342から固定厚肉部330まで延びる方向DR2と逆方向にしている。したがって、荷重印加部331が、固定厚肉部330に対して、加わった荷重に応じて主に荷重方向に相対的に変位するように、薄肉部340,341を歪ませることができる。よって、荷重印加部331が、固定厚肉部330に対して、加わった荷重に応じて主に荷重方向に相対的に変位することが可能な、薄型の重量測定用の起歪体3Eを実現することができる。
【0120】
なお、図17の起歪体3Dと同様に、図22の起歪体3Eの第1構造体332では、図26に示されるように、平面視において、可動厚肉部342と薄肉部341との接続箇所346は、可動厚肉部342と薄肉部340との接続箇所345を通る、X軸方向に沿った仮想線VLに対して、荷重印加部331側に位置しているため、荷重印加部331に荷重が加わると、接続箇所346を通るY軸方向に並行な軸RYを回転軸として回転しにくくなる。よって、図22の起歪体3Eの第1構造体332では、接続箇所346が仮想線VL上に位置する、図24の起歪体3Eの変形例に係る第1構造体332と比較して、薄肉部340,341がねじれにくくなり、薄肉部340,341のそれぞれはほぼ湾曲するように曲がることになる。その結果、薄肉部340,341に対して、歪みゲージ5ca,5cb,5ta,5tbを貼り付けやすくなる。その他の第2構造体333〜第4構造体335についても同様のことが言える。
【0121】
<起歪体の第6の構造例>
図27は、第6の構造例に係る起歪体3(以後、「起歪体3F」と呼ぶ)を示す底面図である。図27に示されるように、起歪体3Fは、計量皿1に固定される固定厚肉部350と、計量皿1に搭載された被計量物TGの重量によって荷重が加わって固定厚肉部350に対して相対的に変位する厚肉の荷重印加部351と、荷重印加部351と固定厚肉部350とを接続する第1構造体352〜第3構造体354とを備えている。
【0122】
第1構造体352〜第3構造体354は、互いに同じ形状を有しており、それぞれ、荷重印加部351に荷重が加わると歪む薄肉部360,361と、荷重印加部351に荷重が加わると固定厚肉部350に対して相対的に変位する可動厚肉部362とを備えている。起歪体3Fにおいては、固定厚肉部350、荷重印加部351及び可動厚肉部362は、薄肉部360,361に対して十分に厚く形成されており、計量皿1に被計量物TGが搭載されて薄肉部360,361が歪んだとしてもほとんど歪むことはない。したがって、起歪体3Fを用いて被計量物TGを計量する際には、固定厚肉部350、荷重印加部351及び可動厚肉部362は剛体と見なすことができる。
【0123】
固定厚肉部350は、平面視の外形が円形を成す枠状部分である。固定厚肉部350は、リング状の周縁部350aと、当該周縁部350aの内側側面から内側に突出する複数の突出部分350bとで構成されている。複数の突出部分350bは、周縁部350aの中心の周りに120°ずつ回転させた位置関係を有している。荷重印加部351及び第1構造体352〜第3構造体354は、この枠状の固定厚肉部350の内側に配置されている。
【0124】
荷重印加部351は、円盤状を成しており、平面視において、起歪体3Fの中央に位置している。
【0125】
第1構造体352〜第3構造体354は、荷重印加部351の周辺において、荷重印加部351を中心にして120°ずつ回転させた位置関係を有している。薄肉部360,361は、互いに同じ形状であって、一方向に長い板状部分である。薄肉部360,361は、厚み方向をZ軸方向として配置されている。第1構造体352〜第3構造体354のそれぞれでは、薄肉部360の長手方向の一方端及び他方端が、荷重印加部351及び可動厚肉部362にそれぞれ接続されており、薄肉部361の長手方向の一方端及び他方端が、固定厚肉部350及び可動厚肉部362にそれぞれ接続されている。第1構造体352〜第3構造体354の薄肉部360は、荷重印加部351の周縁に等間隔(120度間隔)で配置されている。そして、第1構造体352〜第3構造体354のそれぞれでは、薄肉部360が荷重印加部351から可動厚肉部362まで延びる方向DR3は、薄肉部361が可動厚肉部362から固定厚肉部350まで延びる方向DR4とは逆方向となっている。
【0126】
可動厚肉部362は、一方向に長い第1部分362aと、当該第1部分362aの長手方向の一方端部から当該第1部分362aとL字形を成すように延びる第2部分362bとで構成されている。第1構造体352〜第3構造体354のそれぞれでは、薄肉部360の一方端は、荷重印加部351の側面に接続されており、薄肉部360の他方端は、可動厚肉部362における第1部分362aの短手方向の側面に接続されている。また、第1構造体352〜第3構造体354のそれぞれでは、薄肉部361の一方端は、可動厚肉部362において第2部分362bが第1部分362aから延びる方向における当該第2部分262bの側面に接続されており、薄肉部361の他方端は、固定厚肉部350における突出部分350bの側面に接続されている。
【0127】
第1構造体352〜第3構造体354のそれぞれでは、平面視において、薄肉部360の中心と荷重印加部351の中心との間における方向DR3,DR4に沿った距離D6と、薄肉部361の中心と荷重印加部351の中心との間における方向DR1,DR2に沿った距離D7とが一致している。つまり、方向DR1,DR2に平行な方向において、薄肉部360,361は、荷重印加部351に対して等距離に配置されている。
【0128】
以上のような構造を有する起歪体3Fにおいては、足部材5が荷重印加部351の底面に取り付けられる。そして、固定厚肉部350の上面が、複数の固定部材4を介して計量皿1の底面に取り付けられる。これにより、計量皿1に被計量物TGが搭載されると、被計量物TGの重量によって固定厚肉部350が−Z方向に沈み、荷重印加部351には+Z方向に荷重が加わるようになる。そして、荷重印加部351は、荷重が加わると、固定厚肉部350に対してほぼ荷重方向にだけ相対的に変位する。多点式秤100に設けられる4つの起歪体3Fは、それらの向きが同じとなるように、計量皿1の底面の4隅に取り付けられる。
【0129】
また、起歪体3Fにおいては、歪みゲージ5ca,5taが、例えば第1構造体352の薄肉部360の上面及び底面にそれぞれ貼り付けられる。また、歪みゲージ5cb,5tbが、例えば第2構造体353の薄肉部360の上面及び底面にそれぞれ貼り付けられる。なお、歪みゲージ5ca,5cb,5ta,5tbは薄肉部361に貼り付けても良い。
【0130】
以上のように、本例に係る起歪体3Fにおいては、荷重印加部351が、固定厚肉部350に対して、薄肉部360、可動厚肉部362及び薄肉部361を介して接続されており、薄肉部360が荷重印加部351から可動厚肉部362まで延びる方向DR3が、薄肉部361が可動厚肉部362から固定厚肉部330まで延びる方向DR4とは逆方向である。したがって、上記の各構造例と同様に、荷重印加部351が、固定厚肉部350に対して、加わった荷重に応じて主に荷重方向に相対的に変位するように、薄肉部360,361を歪ませることができる。よって、荷重印加部351が、固定厚肉部350に対して、加わった荷重に応じて主に荷重方向に相対的に変位することが可能な、薄型の重量測定用の起歪体3Fを実現することができる。
【0131】
また、起歪体3Fにおいては、荷重印加部351に対して、その周縁に沿って等間隔で配置された複数の薄肉部360が接続されているため、固定厚肉部350に対して、荷重印加部351を安定して荷重方向に相対的に変位させることができる。さらに、荷重印加部351に印加できる荷重を大きくすることができ、起歪体3Fで検出可能な重量の上限値を増加させることができる。その結果、本例に係る起歪体3Fを使用する多点式秤100においては、測定可能な被計量物TGの重量の上限値が増加する。
【0132】
なお、図28に示されるように、第1構造体352〜第3構造体354のそれぞれにおいて、可動厚肉部362を、第1部分362aだけで構成し、固定厚肉部350の突出部分350bを可動厚肉部362に向けて延ばしても良い。図28の起歪体3Fの変形例では、薄肉部360の一方端は、荷重印加部351の側面に接続されており、薄肉部360の他方端は、可動厚肉部342の第1部分362aにおける長手方向の一方端部の側面に接続されている。また、図28の起歪体3Fの変形例では、薄肉部361の一方端は、可動厚肉部342の第1部分362aにおける長手方向の他方端部の側面に接続されており、薄肉部361の他方端は、固定厚肉部350の突出部分350bの側面に接続されている。これにより、第1構造体352〜第3構造体354のそれぞれでは、平面視において、方向DR3,DR4に対して垂直方向において、薄肉部360,361が対向するようになる。
【0133】
このような図28の起歪体3Fの変形例においても、荷重印加部351が、固定厚肉部350に対して、加わった荷重に応じて主に荷重方向に相対的に変位するように、薄肉部360,361を歪ませることができる。よって、荷重印加部351が、固定厚肉部350に対して、加わった荷重に応じて主に荷重方向に相対的に変位することが可能な、薄型の重量測定用の起歪体3Fを実現することができる。
【0134】
なお、図17の起歪体3D及び図22の起歪体3Eと同様に、図27の起歪体3Fの第1構造体352〜第3構造体354のそれぞれでは、平面視において、可動厚肉部362と薄肉部361との接続箇所は、可動厚肉部362と薄肉部360との接続箇所を通る、方向DR3,DR4に対して垂直な方向に沿った仮想線に対して、荷重印加部351側に位置している。そのため、荷重印加部351に荷重が加わると、可動厚肉部362と薄肉部361との接続箇所を通る、方向DR3,DR4に並行な軸を回転軸として回転しにくくなる。よって、図27の起歪体3Fでは、可動厚肉部362と薄肉部361との接続箇所が上記仮想線上に位置する、図28の起歪体3Fの変形例と比較して、薄肉部360,361がねじれにくくなり、薄肉部360,361のそれぞれはほぼ湾曲するように曲がることになる。その結果、薄肉部360,361に対して、歪みゲージ5ca,5cb,5ta,5tbを貼り付けやすくなる。
【0135】
<変形例>
上記の例では、起歪体3の荷重印加部の底面に足部材5を取り付け、起歪体3の固定厚肉部350の上面に固定部材4を介して計量皿1を取り付けていたが、起歪体3の固定厚肉部の底面に足部材5を取り付け、起歪体3の荷重印加部の上面に固定部材4を介して計量皿1を取り付けも良い。この場合には、計量皿1に被計量物TGが搭載されると、被計量物TGの重量によって荷重印加部には−Z方向の荷重が加わるようになる。その結果、荷重印加部は、固定厚肉部に対して主に−Z方向(荷重方向)に相対的に変位するようになる。
【0136】
また、多点式秤などの計量器については、日本国及び外国において、外部電波による計量値の変動についての許容変動範囲が法律で定められており、この許容変動範囲は、厳しくなっていく傾向にある。
【0137】
外部電波が計量値に与える影響を抑制するためには、一般的には、外部電波の影響を受けにくい部品の選定、外部電波の影響を受けにくい基板の設計、外部電波に対する対策部品の追加、ロードセル及びアナログ回路に対する金属シールドなどが行われる。しかしながら、このような対策では、効果が十分であるとは言えず、コストが増加する傾向にある。
【0138】
そこで、上述の多点式秤100において、ロードセル10を停止させたときのA/D変換器14の出力値を、外部電波が計量値に与える影響度とみなして、当該出力値を、ロードセル10を動作させたときのA/D変換器14の出力値から差し引き、それによって得られた値を、当該ロードセル10で検出された被計量物TGの部分重量とする。これにより、安価な構成によって、外部電波が計量値に与える影響を確実に抑制することができる。以下にこの変形例について詳細に説明する。
【0139】
図29は本変形例のロードセル10の構成を示す図である。図29に示されるロードセル10は、図4に示されるロードセル10において、スイッチ素子30をさらに設けたものである。スイッチ素子30の一方端は、互いに接続された歪みゲージ5ta,5tbの一方端に接続されており、スイッチ素子30の他方端は接地される。そして、スイッチ素子30の動作はCPU15によって制御される。つまり、CPU15は、スイッチ素子30のオン/オフを切り替えることができる。
【0140】
このようなロードセル10においては、スイッチ素子30がオン状態となると、電流が流れて動作状態となり、スイッチ素子30がオフ状態となると、電流が流れずに停止状態となる。
【0141】
CPU15は、被計量物TGの全体重量を求める際には、まず、各ロードセル10のスイッチ素子30をオフ状態として、そのときの各A/D変換器14の出力値を読み取る。
【0142】
次に、CPU15は、各ロードセル10のスイッチ素子30をオン状態として、そのときの各A/D変換器14の出力値を読み取る。
【0143】
そして、CPU15は、各A/D変換器14について、対応するロードセル10のスイッチ素子30をオフ状態にしたときの出力値を、当該スイッチ素子30をオン状態にしたときの出力値から差し引いて、これを当該ロードセル10が検出した被計量物TGの部分重量とする。その後、CPU15は、得られた複数の部分重量を足し合わせて、被計量物TGの全体重量を求める。
【0144】
以上のように、多点式秤100において、ロードセル10を停止させたときのA/D変換器14の出力値を、ロードセル10を動作させたときのA/D変換器14の出力値から差し引き、それによって得られた値を、当該ロードセル10で検出された被計量物TGの部分重量とすることによって、多点式秤100を電波環境の悪い場所でも使用することができる。また、設計変更等によって、差動アンプ12やフィルタ13などのアナログ部品を変更した場合であっても、外部電波に対する耐性の変化を抑制することができる。また、スイッチ素子30という比較的安価な部材で、外部電波の計量値に対する影響を抑制できることから、外部電波に対する対策部品やシールド部材などの比較的高価な部品の使用を抑制することができ、コストダウンをはかることができる。
【0145】
なお本例は、多点式秤だけではなく、ロードセル10、差動アンプ12、フィルタ13及びA/D変換器14を一組だけ備えるような、一点で被計量物TGの重量を測定する計量器においても適用することができる。つまり、ロードセル10を停止させたときのA/D変換器14の出力値を、ロードセル10を動作させたときのA/D変換器14の出力値から差し引き、それによって得られた値を、当該ロードセル10で検出された被計量物TGの重量とすれば良い。
【符号の説明】
【0146】
3,3A〜3F 起歪体
5ca,5cb,5ta,5tb 歪みゲージ
10 ロードセル
100 多点式秤
300,320,330,350 固定厚肉部
301,321,331,351 荷重印加部
305〜307,310〜312,325,326,340,341,360,361 薄肉部
308,327,342,362 可動厚肉部
DR1〜DR4 方向
TR 被計量物
VL 仮想線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計量物の重量を測定するための平板状の起歪体であって、
前記被計量物の重量によって荷重が加わる厚肉の荷重印加部と、
第1厚肉部と、
前記荷重印加部から前記第1厚肉部まで延びる第1薄肉部と、
第2厚肉部と、
前記第1厚肉部から前記第2厚肉部まで延びる第2薄肉部と
を備え、
前記第1薄肉部が前記荷重印加部から前記第1厚肉部まで延びる方向である第1方向は、前記第2薄肉部が前記第1厚肉部から前記第2厚肉部まで延びる方向である第2方向とは逆方向である、起歪体。
【請求項2】
請求項1に記載の起歪体であって、
前記第1厚肉部を含む複数の第3厚肉部と、
前記荷重印加部の周縁に沿って等間隔で配置されるとともに、前記荷重印加部から前記複数の第3厚肉部までそれぞれ延びる、前記第1薄肉部を含む複数の第3薄肉部と、
前記複数の第3厚肉部から前記第2厚肉部までそれぞれ延びる、前記第2薄肉部を含む複数の第4薄肉部と
を備え、
前記複数の第3薄肉部のそれぞれに関して、当該第3薄肉部が前記荷重印加部からそれが接続された第3厚肉部まで延びる方向は、当該第3厚肉部に接続された第4薄肉部が当該第3厚肉部から前記第2厚肉部まで延びる方向とは逆方向である、起歪体。
【請求項3】
請求項1に記載の起歪体であって、
平面視において、前記第2薄肉部と前記第1厚肉部との接続箇所は、前記第1薄肉部と前記第1厚肉部との接続箇所を通る、前記第1及び第2方向に垂直な仮想線に対して、前記荷重印加部側に位置している、起歪体。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の起歪体と、
前記起歪体に貼り付けられた歪みゲージと
を備える、ロードセル。
【請求項5】
請求項4に記載のロードセルを複数備え、
複数の前記ロードセルからの出力信号に基づいて、前記被計量物の全体重量を求める重量算出部をさらに備える、多点式秤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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