説明

超伝導マグネットのための冷媒システム及び方法

【課題】完全な閉鎖系で包含する冷媒体積が非常に小さい冷媒システムを提供すること。
【解決手段】超伝導マグネット向けの冷媒システムは閉ループ冷却経路を備える。閉ループ冷却経路は超伝導マグネットに熱的に結合させたマグネット冷却チューブを備える。マグネット冷却チューブは冷媒流通路を備える。閉ループ冷却チューブはさらに、チューブ区画を通じてマグネット冷却チューブに流体結合させた再凝縮器と、マグネット冷却チューブと再凝縮器の間に流体結合させた液体冷媒コンテナと、を備える。接続チューブを通じてマグネット冷却チューブに少なくとも1つの気体タンクを流体結合させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は超伝導マグネットのための冷媒システムに関する。
【背景技術】
【0002】
超伝導マグネットは、マグネットが以下において「超伝導温度」と呼ぶような適当な低い温度に維持されている限りにおいて抵抗なしに電気を導通させる。したがって、超伝導マグネットを確実に超伝導温度未満で動作させるために冷媒システムが用いられる。
【0003】
従来の冷媒システムの1つは、超伝導マグネットに装着させた冷却コールドヘッドを使用している。超伝導マグネットに対してこうして冷却コールドヘッドを装着することには、コールドヘッドモータに対する浮遊磁場の有害な影響、コールドヘッドから超伝導マグネットへの振動伝達、コールドヘッドと超伝導マグネットの間の熱接続に沿った温度勾配を含む幾つかの欠点が存在する。
【0004】
従来式の別の冷媒システムは、超伝導マグネットを冷却するために冷媒浴内で大体積の液体冷媒を使用している。超伝導マグネットの熱は液体冷媒を気体冷媒にボイルオフさせることによって除去される。幾つかのマグネットでは、ボイルオフさせた冷媒気体は大気中に排出されており、冷媒を補充するために定期的な冷媒保守が必要である。ある種のマグネットでは冷凍機またはクライオクーラを用いてボイルオフ冷媒気体を再凝縮させて液体に戻している。しかし、電力の停止やシステムメンテナンス中などで冷凍が停止となった場合や、マグネットがクエンチ状態になりマグネットが蓄えた電磁気エネルギーがダンプされて熱に変わった場合には、多くの量のボイルオフ冷媒気体が大気中に排出されて失われる。冷凍がオン状態に戻った後にも冷媒保守及び冷媒補充が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
完全な閉鎖系で包含する冷媒体積が非常に小さい(また冷媒をなくしてさらに冷媒システムから排出される気体冷媒を最小限にした目下利用可能なシステムと異ならせた)別の冷媒システムがあることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、超伝導マグネット向けの冷媒システムを提供する。本冷媒システムは閉ループ冷却経路を備える。この閉ループ冷却経路は、超伝導マグネットに熱的に結合されたマグネット冷却チューブを備える。このマグネット冷却チューブは冷媒流通路を備える。閉ループ冷却チューブはさらに、チューブ区画を通じてマグネット冷却チューブに流体結合させた再凝縮器と、マグネット冷却チューブと再凝縮器の間に流体結合させた液体冷媒コンテナと、を備える。マグネット冷却チューブに対しては接続チューブを通じて少なくとも1つの気体タンクを流体結合させている。
【0007】
別の実施形態では、磁気共鳴撮像システムを提供する。本磁気共鳴撮像システムは、中央のボアを画定する超伝導マグネットと、超伝導マグネットを囲繞する熱シールドと、該熱シールド内部にある閉ループ冷却経路と、を備える。この閉ループ冷却チューブは超伝導マグネットに熱的に結合させたマグネット冷却チューブを備える。このマグネット冷却チューブは冷媒流通路を備える。マグネット冷却チューブに対してはチューブ区画を通じて再凝縮器を流体結合させており、これを冷凍機に関連付けさせている。マグネット冷却チューブと再凝縮器の間には液体冷媒コンテナを流体結合させている。熱シールドに対して少なくとも1つの気体タンクを熱的接触させると共に、これを接続チューブを通じてマグネット冷却チューブに流体結合させている。
【0008】
さらに別の実施形態では、超伝導マグネット向けの冷媒冷却方法を提供する。本方法は、マグネット冷却チューブを超伝導マグネットに熱的接触させるステップと、マグネット冷却チューブの少なくとも一部分を通じて液体冷媒を流すステップと、液体冷媒をボイルオフ気体冷媒に変換する気化によって超伝導マグネットの熱を除去するステップと、ボイルオフ気体冷媒の一部を液体冷媒に戻すように変換し該液体冷媒をマグネット冷却チューブに戻して満たすためにボイルオフ気体冷媒を再凝縮器と接触させるステップと、接続チューブを通じてマグネット冷却チューブに流体結合された少なくとも1つの気体タンク内にボイルオフ気体冷媒の一部を蓄積するステップと、を含む。
【0009】
本発明に関するこれらの特徴、態様及び利点、並びにその他の特徴、態様及び利点については、添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読むことによってより理解が深まるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態による超伝導マグネット向けの冷媒システムの図である。
【図2】本発明の一実施形態による冷媒システムを用いた磁気共鳴撮像システムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態は超伝導マグネット向けの冷媒システムに関する。本冷媒システムは少なくとも1つの閉ループ冷却経路を備えており、またこの閉ループ冷却経路は、超伝導マグネットに熱的に結合させた少なくとも1つの冷却チューブと、チューブ区画を通じてマグネット冷却チューブに流体結合させると共に冷凍機と関連付けさせた再凝縮器と、マグネット冷却チューブと再凝縮器の間に流体結合させた少なくとも1つの液体冷媒コンテナと、接続チューブを通じてマグネット冷却チューブに流体結合させた少なくとも1つの気体タンクと、を備える。閉ループ冷却経路内には、マグネット冷却チューブの少なくとも一部分を通って流れる液体冷媒と、液体冷媒から気化した気体冷媒と、からなる冷媒が流れている。
【0012】
図1を参照すると、超伝導マグネット111を冷却するための例示的な冷媒システム110を図示しているが、例証を目的として非常に誇張しており縮尺通りに表していない。図示した冷媒システム110は閉ループ冷却経路を備える。閉ループ冷却経路内には液体冷媒と気体冷媒の両者から成る冷媒が流れている。図示した実施形態では閉ループ冷却経路は、超伝導マグネット111と熱的に結合されたマグネット冷却チューブ112と、通常の冷却動作の間に液体冷媒を蓄積しておきマグネット冷却チューブ112の少なくとも一部分を通じて流れるように液体冷媒を送っている少なくとも1つの液体冷媒コンテナ114と、マグネット冷却チューブ112からのボイルオフ気体を液体冷媒コンテナ114に戻して満たすための液体に戻すように再凝縮させている再凝縮器116と、通常の冷却動作が崩壊したときの冷媒システムのライドスルー動作時に気体冷媒を蓄積するための少なくとも1つの気体タンク118と、を備える。
【0013】
図示した実施形態では、マグネット冷却チューブ112は実質的に円形であると共に冷媒流通路113と該冷媒経路113内の第1及び第2の開口部120、121とを含む。通常の冷却動作の間に冷媒システム110は、マグネット冷却チューブ112内の液体冷媒を気体冷媒に変換することによる気化潜熱よって超伝導マグネット111の熱を除去する。したがって超伝導マグネット111はその超伝導温度に維持されると共に、その超伝導状態で動作される。ある種の実施形態ではその閉ループ冷却経路内を流れる冷媒は、窒素、ネオン、水素、ヘリウム、あるいはこうした気体、蒸気または液体の組み合わせ、あるいは超伝導マグネット111から十分な熱を引き出す能力をもつ適当な別の任意の冷媒とすることができる。
【0014】
図示した実施形態ではその再凝縮器116を冷凍機126に関連付けさせており、この冷凍機126は、例えば約2ケルビン(K)〜約4Kなど十分に低い温度まで再凝縮器116を冷却して気体冷媒を液体相に戻すように変換している。再凝縮器116は、気体冷媒をその液体相に戻すように変換するように気体冷媒と接触した熱伝達表面積(図示せず)を有する。ある種の実施形態ではその再凝縮器116は良好な熱伝導率を有する銅またはアルミニウムを含む。
【0015】
図示した実施形態ではその再凝縮器116は、再凝縮器116とマグネット冷却チューブ112の間の第1のチューブ区画122及び流体冷媒コンテナ114とマグネット冷却チューブ112の間の第2のチューブ区画124を通じてマグネット冷却チューブ112の第1の開口部120に流体結合させている。したがって、マグネット冷却チューブ112の第1の開口部120からの気体冷媒は第2のチューブ区画124と通じて液体冷媒コンテナ114まで流れ、またさらに第1のチューブ区画122を通じて再凝縮器116と接触するように流れて再凝縮器116により液体冷媒に変換される。代替的な一実施形態ではその再凝縮器116は、液体冷媒コンテナ114をバイパスするような1つのチューブ区画を通じて直接マグネット冷却チューブ112に結合されることがある。
【0016】
図示した実施形態ではその再凝縮器116は、液体冷媒を液体冷媒コンテナ114内に送り込むために第3のチューブ区画128を通じて液体冷媒コンテナ114に流体結合させている。図示した実施形態ではその再凝縮器116は液体冷媒コンテナ114の上方に配置させている。したがって、液体冷媒は重力によって液体冷媒コンテナ114内に流れ込む。ある種の実施形態ではさらに、気体冷媒が再凝縮器116まで第3のチューブ区画128を通って流れることや、またさらに液体冷媒が第2のチューブ区画124を通って流れることがある。したがって、マグネット冷却チューブ112を通って流れる冷媒は、液体冷媒と気体冷媒の混合体となることがある。
【0017】
図示した実施形態では液体冷媒コンテナ114は、マグネット冷却チューブ112の上方に位置決めされると共に、第4のチューブ区画129を通じてマグネット冷却チューブ112の第2の開口部121に結合されている。したがって液体冷媒は重力によって、第2の開口部121を通って液体冷媒コンテナ114からマグネット冷却チューブ112まで流れる。ある種の実施形態ではその液体冷媒コンテナ114は、ステンレス鋼、アルミニウムまたは複合材料を含む。ある種の実施形態では冷媒システム110は、再凝縮器116から液体冷媒を受け取りこの液体冷媒をマグネット冷却チューブ112を通して流している複数の液体冷媒コンテナ114を備える。
【0018】
ある種の実施形態ではそのマグネット冷却チューブ112は、円周方向に沿った超伝導マグネット111の外側表面上に配列させている。別の実施形態ではそのマグネット冷却チューブ112は、超伝導マグネット111の実質的に長さ方向に沿って超伝導マグネット111の外側表面上に配列させることがある。ある種の実施形態では、超伝導マグネット111の外側表面上に複数の冷却チューブ112を配列させることがある。一実施形態ではそのマグネット冷却チューブ112は、マグネットコイルを直接冷却するために超伝導マグネット111のマグネットコイルと接触している電気絶縁層を有する。別の実施形態ではそのマグネット冷却チューブ112は、超伝導マグネット111の支持部分または冷却用素子と接触している。したがって、マグネットコイルからの熱は支持部分または冷却用素子と通ってマグネット冷却チューブ112まで送られると共に、この熱はさらに、冷却マグネットチューブ112内で液体冷媒を気体冷媒に変換する気化潜熱によって除去される。ある種の実施形態ではそのマグネット冷却チューブ112は、ステンレス鋼、アルミニウム、銅または真鍮材料を含む。
【0019】
図示した実施形態では、マグネット冷却チューブ112の冷媒流通路113に対して接続チューブ130を通じて少なくとも1つの気体タンク118を流体結合させている。ある種の実施形態ではその気体タンク118は、ステンレス鋼、アルミニウム、真鍮、銅または複合材料を含む。図示した実施形態ではシステム110は複数の気体タンク118を備えていると共に、この複数の気体タンク118は接続チューブ133を通じて接続されている。気体タンク118はボイルオフ気体冷媒を受け取るために接続チューブ130を通じてマグネット冷却チューブ112に結合されている。図示した実施形態ではその接続チューブ130は、その最上部が実質的に水平方向でありかつより下側の部分が実質的に上から下の方向に向いたL字形を成している。図示した実施形態では、接続チューブ130の最上部は再凝縮器116とマグネット冷却チューブ112の間で第1のチューブ区画112に結合されている。代替的な一実施形態ではその気体タンク118は、液体冷媒コンテナ114をバイパスするように第2のチューブ区画124からルート設定された1つの接続チューブを通じてマグネット冷却チューブに直接接続されることがある。別の実施形態ではシステム110は、その各々がマグネット冷却チューブ112を対応する気体タンク118に接続している複数の接続チューブを備える。図示した実施形態ではその気体タンク118は、マグネット冷却チューブ112より下側の位置に配列されている。別の実施形態ではその気体タンク118はマグネット冷却チューブ112より上方に位置決めされることがある。
【0020】
ある種の実施形態ではその冷媒システム110はさらに、マグネット111を周囲温度から熱的に切り離している熱シールド132を備える。熱シールド132は、銅やアルミニウムなど熱伝導性材料から製作されることがある。図示した実施形態ではその気体タンク118は、熱シールド132の内側表面に沿って分布させると共に、熱シールド132と熱的に結合させている。ある種の実施形態ではその熱シールド132は、約40K〜約80Kの温度における超伝導マグネット111に対する低温放射シールドを含む。したがって、気体タンク118内の気体冷媒はライドスルー動作中により大きな温度上昇を受けることができる。別の実施形態ではその気体タンク118は、熱シールドの外側表面上に配置させることがある。
【0021】
ある種の実施形態ではその冷媒システム110は、液体冷媒が気体タンク118内に流れ込むのを防止するために接続チューブ130内に阻止機構を備える。図示した実施形態ではその阻止機構は、通常の冷却動作中に気体タンク118に液体が流れ込むのを防止するために接続チューブ130の最上部にあるn字形コネクタ138である。
【0022】
図示した実施形態ではその冷媒システム110はさらに、通常の冷却動作の開始前に超伝導マグネット111を室温などのより高い温度から超伝導マグネット111の超伝導温度まで冷却するために、スタートアップ動作中に閉ループ冷却経路内に気体冷媒または液体冷媒を導入するためのインレット134を備える。ある種の実施形態ではそのインレット134はさらに、閉ループ冷却経路内に冷媒を補充すなわち補給するためにも使用される。
【0023】
ある種の実施形態では、スタートアップ動作中に気体冷媒がインレット134から閉ループ冷却経路内に連続して押入れられると共に再凝縮器116によってこれが液体冷媒に変換され、さらにこれがマグネット冷却チューブ112を通って流れて超伝導マグネット111から熱を除去する。ある種の実施形態では、スタート時に気体冷媒のすべてを高圧で閉ループ冷却経路内に充填しており、またこの高圧気体冷媒をインレット134から閉ループ冷却経路内に進めるために外部ポンプ(図示せず)を用いることが可能である。超伝導マグネット111の温度が4Kなどの超伝導温度に達したとき圧力は動作圧力まで到達し、冷媒システム110はその通常の冷却動作を開始させる。
【0024】
ある種の実施形態では、冷凍機126が再凝縮器116に対する冷却を停止しているときや超伝導マグネット111が予期しないクエンチを受けているときなど冷媒システム110のライドスルー動作中では、再凝縮器116は十分なボイルオフ気体冷媒を液体冷媒に変換するだけの有効な冷却動作を提供することが不可能であり、また通常の冷却動作の継続は不可能である。閉ループ冷却経路の温度は上昇し、またボイルオフ気体冷媒は気体タンク118内に蓄積される。
【0025】
ある種の実施形態では、気体タンク118の総体積(V)は、ライドスルー動作中に液体冷媒コンテナ内のすべての液体冷媒が気相に変換されたときも気体圧力を冷媒超臨界圧未満に維持するのに十分な体積となるように設計される。この超臨界圧を超えると、冷媒は熱を吸収しても液体から気体への相変化を生じない。冷媒潜熱はゼロになると共に、もはや超伝導コイルを安定した極低温に維持することはできない。したがって超臨界圧は選択した冷媒のタイプに依存する。ライドスルー動作中に圧力が超臨界圧に達する前にすべての液体冷媒が気体冷媒に変化し終わること、したがって冷媒が完全に冷却に利用できることが望ましい。閉ループ冷却システム内の所与の冷媒量に関するシステムの体積は、液体がすべて気体に変わった時点での冷媒の熱力学的状態(例えば、圧力や温度)によって決定することが可能である。
【0026】
ある種の実施形態ではそのシステムは、室温まで温まっても閉じた状態を維持している。このシステムの機械的強度は気体圧力を抑えるだけの強さが必要であり、これは次式の理想気体の法則に従って得ることができる。
【0027】
PV=nRT
上式において、「P」は気体となるものの超臨界圧、「V」は気体の体積(すなわち、閉ループ冷却経路の体積)、「n」は通常モル単位で計測される気体物質の量、「R」は8.314472JK−1mol−1である気体定数、また「T」は室温まで温度上昇したときのシステムの絶対温度である。
【0028】
図示した実施形態ではそのシステムはさらに圧力がしきい値を超えたときに気体を出すための出口を備える。図示した実施形態ではその出口はインレット134と同じである。別の実施形態ではその出口は、例えば気体タンク118に隣接して配列させた別のアウトレットである。ある種の実施形態ではその冷媒システム110は、安全を目的として閉ループ冷却経路と出口の間に圧力逃がし弁及び/またはバーストディスク136を備える。ある種の実施形態ではその冷媒システム110は、ヒータ熱入力を制御し冷媒システム110の圧力及び温度を調節するように動作可能な制御器(図示せず)を備える。
【0029】
図2を参照すると、冷媒システム110は医学的診断のための磁気共鳴撮像(MRI)システム10内で使用されている。図示した実施形態では、MRIシステム10はオペレータがシステム10の動作を制御できるようにするためのオペレータコンソール12を備える。この例示的なオペレータコンソール12は、キーボードその他の入力デバイス13、制御パネル14及び表示画面16を含む。コンソール12は、オペレータが画像の作成及び表示画面16上への画像表示を制御できるようにする単独のコンピュータシステム20と、リンク18を介して連絡している。コンピュータシステム20は、バックプレーン20aを介して互いに連絡している多くのモジュールを含んでいる。これらのモジュールには、画像プロセッサモジュール22、CPUモジュール24、並びに当技術分野でフレームバッファとして知られている画像データアレイを記憶するためのメモリモジュール26が含まれる。コンピュータシステム20は、画像データ及びプログラムを記憶するためにディスク記憶装置28及びテープ駆動装置30とリンクしており、さらに高速シリアルリンク34を介して単独のシステム制御部32と連絡している。入力デバイス13は、マウス、ジョイスティック、キーボード、トラックボール、タッチ作動スクリーン、光学読取り棒、音声制御器、あるいは同様な任意の入力デバイスや同等の入力デバイスを含むことができ、また入力デバイス13は対話式幾何学指定のために使用することができる。
【0030】
図示した実施形態では、システム制御部32は、バックプレーン32aにより互いに接続させたモジュールの組を含んでいる。これらのモジュールには、CPUモジュール36や、シリアルリンク40を介してオペレータコンソール12に接続させたパルス発生器モジュール38が含まれる。システム制御部32は、実行すべきスキャンシーケンスを指示するオペレータからのコマンドをこのリンク40を介して受け取っている。パルス発生器モジュール38は、各システムコンポーネントを動作させて所望のスキャンシーケンスを実行させ、発生させる無線周波数(RF)パルスのタイミング、強度及び形状、並びにデータ収集ウィンドウのタイミング及び長さを指示するデータを発生させている。パルス発生器モジュール38は、スキャン中に発生させる傾斜パルスのタイミング及び形状を指示するために1組の傾斜増幅器42と接続させている。パルス発生器モジュール38はさらに、生理学的収集制御器44から患者データを受け取ることができ、この生理学的収集制御器44は、患者に装着した電極からのECG信号など患者に接続した異なる多数のセンサからの信号を受け取っている。パルス発生器モジュール38はスキャン室インタフェース回路46と接続されており、スキャン室インタフェース回路46はさらに、患者及びマグネット系の状態に関連付けした様々なセンサからの信号を受け取っている。このスキャン室インタフェース回路46を介して、患者位置決めシステム48はスキャンのために患者を所望の位置に移動させるコマンドを受け取っている。パルス発生器モジュール38が発生させる傾斜波形は、Gx増幅器、Gy増幅器及びGz増幅器を有する傾斜増幅器システム42に加えられる。
【0031】
マグネットアセンブリ50は、傾斜コイルアセンブリ52、偏向マグネット54及び全身用RFコイル56を含む。傾斜コイルアセンブリ52の物理的に対応する傾斜コイルを各傾斜増幅器によって励起させ、収集した信号の空間エンコードに使用される磁場傾斜を生成させている。システム制御部32内の送受信器モジュール58は、RF増幅器60により増幅を受けて送信/受信スイッチ62によりRFコイル56に結合されるようなパルスを発生させている。患者内の励起された原子核が放出して得られた信号は、同じRFコイル56により検知し、送信/受信スイッチ62を介して前置増幅器64に結合させることができる。増幅したMR信号は、送受信器58の受信器部分で復調され、フィルタ処理され、さらにディジタル化される。送信/受信スイッチ62は、パルス発生器モジュール38からの信号により制御し、送信モードではRF増幅器60をRFコイル56と電気的に接続させ、受信モードでは前置増幅器64をコイル56に接続させている。送信/受信スイッチ62によりさらに、送信モードと受信モードのいずれに関しても独立したRFコイル(例えば、表面コイル)を使用することが可能となる。
【0032】
RFコイル56により取り込まれたMR信号は送受信器モジュール58によりディジタル化され、システム制御部32内のメモリモジュール66に転送される。未処理のk空間データのアレイをメモリモジュール66内に収集し終わると1回のスキャンが完了となる。この未処理のk空間データは、各画像を再構成させるように別々のk空間データアレイの形に配置し直しており、これらの各々は、データをフーリエ変換して画像データのアレイにするように動作するアレイプロセッサ68に入力される。この画像データはシリアルリンク34を介してコンピュータシステム20に送られ、コンピュータシステム20において画像データはディスク記憶装置28内などの記憶装置内に格納される。この画像データは、オペレータコンソール12から受け取ったコマンドに応じて、テープ駆動装置30上などの長期記憶装置内にアーカイブしたり、画像プロセッサ22によりさらに処理してオペレータコンソール12に伝達しディスプレイ16上に表示させたりすることができる。
【0033】
図示した実施形態では、マグネットアセンブリ50はさらにボア74を画定する真空容器72を含む。撮像用途では、撮像のために対象がこのボア74内に配置されることは当業者であれば理解されよう。したがってボア74は対象の撮像ボリュームへのアクセスを提供している。
【0034】
熱シールド132は真空容器72の内部に配置されている。超伝導マグネット111は機械的支持構造(図示せず)によって熱シールド132内部に配置させている。超伝導マグネット111の一実施形態は、円筒状のボビン76と該円筒状ボビン76の外側表面上に巻きつけた複数の超伝導マグネットコイル78とを含む。ある種の実施形態ではそのボビン76はプラスチックその他など非導電材料から製作することがある。超伝導コイル78は、NbTiワイヤやNbSnワイヤなどの超伝導ワイヤのコイルから製作することがある。
【0035】
図示した実施形態では冷媒システム110のインレット134は冷却経路内に冷媒を満たすために真空容器72及び熱シールド132の最上部を通過して延びている。一実施形態ではそのインレット134はさらに、冷却経路内の圧力が高くなり過ぎたときに気体冷媒を放出するためのアウトレットにもなる。冷媒システムの冷凍機126は真空容器72の最上部に配置させると共に、再凝縮器116は熱シールド132内まで延びている。冷却経路内の液体冷媒コンテナ114及び各チューブ区画は図示を簡略にするために図2から省略してある。複数の気体タンク118は熱シールド132の内側表面と熱的に接触させている。気体タンク118は、第4のチューブ区画133を通じてマグネット冷却チューブ112に至るように互いに流体結合させている。気体タンク118の総体積は、超臨界圧またはこの圧未満において液体冷媒のすべてが気化して気体冷媒になれるようにボイルオフ気体冷媒を収容できるだけの十分な大きさとなるように決定される。したがって、ライドスルー動作中における超伝導マグネット111の冷却のために液体冷媒を完全に利用できると共に、冷媒システムはより長時間のライドスルー動作を提供することが可能となる。
【0036】
別の実施形態ではその冷媒システムは、例えば発電機や電動機の回転子、列車輸送のための磁気浮上装置などの別の用途の超伝導マグネット向けに用いることが可能である。
【0037】
本明細書に記載した実施形態は、本発明の特許請求の範囲に記載した要素に対応する要素を有する組成、構造、システム及び方法に関する例である。ここに記載した説明によって当業者は本発明の特許請求の範囲に記載した要素に同様に対応する別の要素を有する実施形態の製作及び利用が可能となろう。したがって本発明の範囲は、本特許請求の範囲の文字表記と異ならない組成、構造、システム及び方法を含み、かつさらに本特許請求の範囲の文字表記と実質的に差がない別の構造、システム及び方法を含む。本明細書ではある種の特徴及び実施形態についてのみ図示し記載しているが、当業者によれば多くの修正形態や変形形態がなされよう。添付の特許請求の範囲は、こうした修正形態や変形形態をすべて包含するものである。
【符号の説明】
【0038】
10 MRIシステム
12 オペレータコンソール
13 入力デバイス
14 制御パネル
16 表示画面
18 リンク
20 コンピュータシステム
20a バックプレーン
22 プロセッサモジュール
24 CPUモジュール
26 メモリモジュール
28 ディスク記憶装置
30 テープ記憶装置
32 システム制御部
32a バックプレーン
34 シリアルリンク
36 CPUモジュール
38 パルス発生器モジュール
40 シリアルリンク
42 傾斜増幅器
44 収集制御器
46 インタフェース回路
48 患者位置決めシステム
50 マグネットアセンブリ
52 傾斜コイルアセンブリ
54 偏向マグネット
56 RFコイル
58 送受信器モジュール
60 RF増幅器
62 スイッチ
64 前置増幅器
66 メモリモジュール
68 アレイプロセッサ
72 真空容器
74 ボア
76 円筒状ボビン
78 超伝導マグネットコイル
110 冷媒コンテナ
111 超伝導マグネット
112 マグネット冷却チューブ
113 冷媒流通路
114 液体冷媒コンテナ
116 再凝縮器
118 気体タンク
120 冷却チューブの第1の開口部
121 冷却チューブの第2の開口部
122 第1のチューブ区画
124 第2のチューブ区画
126 冷凍機
128 第3のチューブ区画
129 第4のチューブ区画
130 接続チューブ
131 L字形チューブ区画
133 第5のチューブ区画
132 熱シールド
134 インレット
136 弁
138 n字形コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉ループ冷却経路を備えた超伝導マグネット向けの冷媒システムであって、該閉ループ冷却経路は、
超伝導マグネットに熱的に結合させた冷媒流通路を備えたマグネット冷却チューブと、
チューブ区画を通じてマグネット冷却チューブに流体結合させた再凝縮器と、
マグネット冷却チューブと再凝縮器の間に流体結合させた液体冷媒コンテナと、
接続チューブを通じてマグネット冷却チューブに流体結合させた少なくとも1つの気体タンクと、
を備えている、冷媒システム。
【請求項2】
前記液体冷媒コンテナは再凝縮器の下方に配列させている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記液体冷媒コンテナはマグネット冷却チューブの上方に配列させている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記マグネット冷却チューブは超伝導マグネットの外側表面に接して配列させている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記マグネット冷却チューブは、ステンレス鋼、真鍮、銅またはアルミニウム材料を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記閉ループ冷却経路は相互接続した複数の気体タンクを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記複数の気体タンクは互いに流体結合されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの気体タンクは、ステンレス鋼、真鍮、銅、アルミニウムまたは複合材料を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記超伝導マグネットを囲繞する熱シールドをさらに備えると共に、前記少なくとも1つの気体タンクが該熱シールドに熱的に結合されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記熱シールドは、超伝導マグネットを約40ケルビン〜約80ケルビンの温度にする低温放射シールドを備える、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記閉ループ冷却経路は、気体冷媒の圧力が決定した値を超えたときに気体冷媒を放出するための出口を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
中央のボアを画定する超伝導マグネットと、
超伝導マグネットを囲繞する熱シールドと、
熱シールド内部にある閉ループ冷却経路であって、
超伝導マグネットに熱的に結合させた冷媒流通路を備えたマグネット冷却チューブと、
チューブ区画を通じてマグネット冷却チューブに流体結合されると共に冷凍機に関連付けされた再凝縮器と、
マグネット冷却チューブと再凝縮器の間に流体結合させた液体冷媒コンテナと、
熱シールドと熱的接触すると共に接続チューブを通じてマグネット冷却チューブに流体結合させた少なくとも1つの気体タンクと、
を備えている閉ループ冷却経路と、
を備える磁気共鳴撮像システム。
【請求項13】
熱シールドを囲繞する真空容器をさらに備える請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
傾斜コイルアセンブリ、偏向マグネット及び全身用RFコイルを中央のボアの内側表面に隣接して含むマグネットアセンブリをさらに備える請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記気体タンクは熱シールドの内側または外側表面に沿って配列させている、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
超伝導マグネット向けの冷媒冷却方法であって、
マグネット冷却チューブを超伝導マグネットに熱的接触させるステップと、
マグネット冷却チューブの少なくとも一部分を通じて液体冷媒を流すステップと、
液体冷媒をボイルオフ気体冷媒に変換する気化によって超伝導マグネットの熱を除去するステップと、
ボイルオフ気体冷媒の一部を液体冷媒に戻すように変換し該液体冷媒をマグネット冷却チューブ内に戻して満たすためにボイルオフ気体冷媒を再凝縮器と接触させるステップと、
接続チューブを通じてマグネット冷却チューブに流体結合させた少なくとも1つの気体タンク内にボイルオフ気体冷媒の一部を蓄積するステップと、
を含む方法。
【請求項17】
液体冷媒がすべて気体冷媒に変換されかつシステム内の気体圧力が気体冷媒の超臨界圧またはこれ未満であるときにボイルオフ気体冷媒のすべてが冷媒システム内に蓄積されることに基づいてボイルオフ気体冷媒の体積を決定するステップをさらに含む請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−92710(P2011−92710A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236943(P2010−236943)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】