説明

超分子組織体およびその製造方法

【課題】 超撥水性を有する超分子組織体およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 本発明による超撥水性超分子組織体はフラーレン誘導体からなる。フラーレン誘導体は、フラーレン部位と、フラーレン部位に結合したベンゼン環と、ベンゼン環の3,4,5位それぞれに結合した第1〜第3の置換基R、RおよびRとを含み、第1および第2の置換基R、Rのそれぞれは、少なくとも20個の炭素原子を含むアルキル鎖であり、第3の置換基Rは、水素原子であるか、または、少なくとも20個の炭素原子を含むアルキル鎖のいずれかである。フラーレン誘導体は二分子膜構造を形成しており、二分子膜構造をナノ組織基礎骨格とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラーレン誘導体からなる超分子組織体およびその製造方法に関し、より詳細には特殊な機能を有する超分子組織体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンに代表されるナノカーボンは、電子材料、触媒、生体材料への応用が期待され、注目されている。
【0003】
近年、本願発明者らは、このようなナノカーボンの中でもフラーレン誘導体を単位として種々の次元(0次元〜3次元)の構造体を任意に製造できることを報告している(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
特許文献1によれば、フラーレン誘導体は、球状のフラーレン部位と、アルキル鎖部位と、それらを結合する結合部位とからなり、アルキル鎖部位が平面性を保持することができる。それにより、フラーレン部位のπ−π相互作用による集合力と、アルキル鎖部位の疎水性相互作用による集合力との間のバランスを利用して、種々の次元を有するナノサイズの構造体の構築が可能となる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のフラーレン誘導体による構造体は、ナノカーボンに起因した特性および応用を開示するに過ぎず、さらなる特性の発現、さらには、その特性を利用した応用が望まれる。
【0006】
一方、ハスの葉は、その表面がフラクタル構造であることによって、超撥水性・自己洗浄能を有することが知られている。具体的には、ハスの葉上の水滴は、フラクタルな表面によって球面上の形状となり(すなわち超撥水性)、ハスの葉を覆うことができない。その結果、埃が水を介して表面に付着する機会が失われ、表面上の水滴とともに除去される。
【0007】
このようなハスの葉の形態を真似した表面構造を人工的に作って、超撥水性表面を作成する試みも数多くある(例えば、非特許文献1を参照。)。しかしながら、このようにして得られた人工的な構造は、熱および応力に対する耐性および安定性が乏しいという問題を有する。なお、フラーレン誘導体を用いて、このようなハスの葉の表面構造を真似た報告・実例はない。
【特許文献1】特願2005−332390
【非特許文献1】Barbieriら, Langmuir 23, 1723〜1734(2007)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上より、本発明の目的は、フラーレン誘導体を組織化した超分子組織体におけるさらなる特性の発現、より詳細には、超撥水性を有する超分子組織体およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明1は、二分子膜構造を有するフラーレン誘導体が組織化されたフラーレン構造体であって、フラワー状またはジプサム状の形状を有するとともに、前記フラーレン誘導体の有する各アルキル鎖の炭素が20以上でかつ前記フラーレン構造体が層状に組織化されてなることを特徴する。
【0010】
発明2は、発明1の超分子組織体において、前記フラーレン誘導体は、式(1)で示される、フラーレン部位(A)と、前記フラーレン部位(A)に結合したベンゼン環と、前記ベンゼン環の3,4,5位それぞれに結合した第1〜第3の置換基R、RおよびRとを含み、
【化1】


ここで、前記式(1)において、Xは、水素原子またはメチル基であり、前記第1および第2の置換基R、Rのそれぞれは、少なくとも20個の炭素原子を含むアルキル鎖であり、前記第3の置換基Rは、水素原子であるか、または、少なくとも20個の炭素原子を含むアルキル鎖のいずれかであることを特徴とする。
【0011】
発明3は、発明2の超分子組織体において、前記フラーレン部位(A)に結合するフラーレンは、C60、C70、C76、および、C84からなる群から選択されることを特徴とする超分子組織体。
【0012】
発明4は、発明2又は3の超分子組織体であって、前記第1〜第3の置換基R、RおよびRのアルキル鎖は、それぞれ、アルキル(C2n+1)、アルコキシル(OC2n+1)、および、チオアルキル(SC2n+1)からなる群から選択され、ここで、nは、20以上の整数であることを特徴とすることを特徴とする超分子組織体。
【0013】
発明5は、発明1から4のいずれかの超分子組織体の製造方法であって、フラーレン誘導体と、1,4−ジオキサンとを混合するステップであって、前記フラーレン誘導体は、式(1)に示される、フラーレン部位(A)と、前記フラーレン部位(A)に結合したベンゼン環と、前記ベンゼン環の3,4,5位それぞれに結合した第1〜第3の置換基R、RおよびRとを含み、
【化2】


ここで、前記式(1)において、Xは、水素原子またはメチル基であり、前記第1および第2の置換基R、Rのそれぞれは、少なくとも20個の炭素原子を含むアルキル鎖であり、前記第3の置換基Rは、水素原子であるか、または、少なくとも20個の炭素原子を含むアルキル鎖のいずれかである、ステップと、前記混合するステップによって得られた混合物を加熱するステップと、前記混合物をエージングするステップと、前記エージングするステップによって生じた沈殿を含む溶液を塗布するステップとからなることを特徴とする、製造方法。
【0014】
発明6は、発明5の方法において、前記フラーレン部位(A)に結合するフラーレンは、C60、C70、C76、および、C84からなる群から選択されることを特徴とする。
【0015】
発明7は、発明5又は6の方法において、前記第1〜第3の置換基R、RおよびRのアルキル鎖は、それぞれ、アルキル(C2n+1)、アルコキシル(OC2n+1)、および、チオアルキル(SC2n+1)からなる群から選択され、ここで、nは、20以上の整数であることを特徴とする。
【0016】
発明8は、発明5から7のいずれかの方法において、前記加熱するステップは、60℃〜70℃の温度範囲で、1〜2時間行うことを特徴とする。
【0017】
発明9は、発明5から8のいずれかの方法において、前記エージングするステップは、室温にて12時間〜24時間行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明による超分子組織体は、二分子膜構造を有するフラーレン誘導体が組織化されたフラーレン構造体からなる。上記フラーレン誘導体は、フラーレン部位に結合したベンゼン環の3,4位または3,4,5位にそれぞれ結合された20以上の炭素原子を有するアルキル鎖を含む。さらに、本発明による超分子組織体は、このようなフラーレン構造体が層状に組織化されている。これにより、本発明の超分子組織体は、フラクタル構造を有し、高い比表面積を有するので、例えば、燃料電池触媒の吸着担体に好ましい。さらに、フラクタル構造が超撥水性を発現するので、撥水性膜だけでなく、それを利用し且つフラーレンの機能が備わった新規デバイスへの応用が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、同様の要素には同様の番号を付し、その説明を省略する。
【0020】
本願発明者らは、式(1)で示される特定のフラーレン誘導体からなる超分子組織体において、フラーレン誘導体が二分子膜構造によるフラクタル構造を形成し、ナノ組織基礎骨格として機能させることにより、超撥水性を示すことを見出した。
【0021】
まず、超分子組織体が超撥水性を示すための特定のフラーレン誘導体について説明する。
【化3】


フラーレン誘導体は、フラーレン部位(A)と、フラーレン部位(A)に結合したベンゼン環と、ベンゼン環の3,4,5位にそれぞれ結合した第1〜第3の置換基R、RおよびRとを含む。
【0022】
フラーレン部位(A)は、低表面エネルギーを示すsp炭素からなるフラーレンと、含窒素五員環部とを含む。詳細には、フラーレンは、C60、C70、C76およびC84からなる群から選択される。これらのフラーレンは、工業的に製造されており、入手可能である。好ましくは、フラーレンは、C60である。これは、C60が、極めて高いI対象性を有し、最も安定かつ安価であるので、取り扱いが簡便であるとともに、化学修飾も容易であるためである。
【0023】
含窒素五員環部は、式(1)において、ベンゼン環とフラーレンとを結合するように機能しており、Xは、水素原子またはメチル基である。
【0024】
第1および第2の置換基RおよびRは、sp炭素からなるアルキル鎖である。より詳細には、第1の置換基Rおよび第2の置換基Rのそれぞれは、少なくとも20個の炭素原子を含むアルキル鎖である。炭素原子数が19個以下の場合、超分子組織体は、撥水性を示すものの超撥水性を示すまでは至らない。第1の置換基Rおよび第2の置換基Rのそれぞれが有する炭素原子数に上限は特にないが、試料の入手の容易さ、コスト等から炭素原子数の上限は22個程度である。
【0025】
第3の置換基Rは、水素原子、または、少なくとも20個の炭素原子を含むアルキル鎖のいずれかである。第3の置換基Rが、19個以下の炭素原子を含むアルキル鎖の場合、超分子組織体は、撥水性を示すものの超撥水性を示すまでは至らない。また、第3の置換基Rがアルキル鎖の場合の超撥水能は、第3の置換基Rが水素原子の場合の超撥水能とほぼ同程度である。
【0026】
また、第1〜第3の置換基R、RおよびRの例示的なアルキル鎖(ただし、第3の置換基Rが水素原子でない場合)は、それぞれ、アルキル(C2n+1)、アルコキシル(OC2n+1)、および、チオアルキル(SC2n+1)からなる群から選択される。ここでも上述したように、n≧20を満たす。
【0027】
次に、上述のフラーレン誘導体から構成された超撥水性を示す超分子組織体の構造について説明する。
【0028】
図1は、本発明による超分子組織体における(A)二分子膜構造、(B)フラワー状のフラーレン構造体および(C)層状構造を模式的に示す。
【0029】
図1(A)は、式(1)に示すフラーレン誘導体110が形成する二分子膜構造100を模式的に示す。図1(B)は、二分子膜構造100が組織化したフラワー状のフラーレン構造体120を模式的に示す。図1(C)は、フラワー状のフラーレン構造体120を積層させた層状構造130を模式的に示す。
【0030】
より詳細には、二分子膜構造100は、上述のフラーレン誘導体110が、フラーレン部位(A)のπ−π相互作用により互いに集合するように、かつ、第1〜第3の置換基R、RおよびRのファンデルワールス力により互いに集合するように配列した構造を有する。これは、上述のフラーレン誘導体110間におけるπ−π相互作用およびファンデルワールス力のバランスに起因している。また、二分子膜構造100にける膜間距離Dは、フラーレン誘導体110のアルキル鎖の長さによって制御できる。また、二分子膜構造100は、隣接フラーレン間距離が、0.87nm程度と非常に近接している。これにより、超分子組織体の剛性が向上する。
【0031】
フラワー状のフラーレン構造体120は、二分子膜構造100がランダムに組織化した構造体であり、フラワー状またはジプサム状の形状を有する。これは、二分子膜構造100が、後述する特定の条件(溶媒、温度等)によって自己組織化的に形成することによって得られる。層状構造130は、フラワー状のフラーレン構造体120を、例えば、基材140上に積層させた構造である。積層の回数は、1回以上であり、特に限定されない。基材140は、例えば、シリコン基板、ガラス基板等任意の基板であり、フラワー状のフラーレン構造体120が積層できれば、材料、形状は限定されない。
【0032】
本願発明者らは、上述したように、式(1)で示されるフラーレン誘導体110から構成された超分子組織体において、二分子膜構造100をナノ組織基礎骨格とすることにより、超撥水性を示すことを発見した。本明細書において、「二分子膜構造100をナノ組織基礎骨格とする」とは、二分子膜構造100を基本単位として構築された超分子組織体を意図しており、より詳細には、本発明による超分子組織体は、二分子膜構造100を一次構造、その組織化構造のフラワー状のフラーレン構造体(図1(B))を二次構造、それを積層させた層状構造(図1(C))を三次構造とした階層的組織構造を有することを言う。このような層状構造を有する階層的組織構造は、例えば、膜状であり、(超撥水性)組織化膜と呼ぶ。
【0033】
本願発明者らは、超分子組織体が、上述のフラーレン誘導体110からなる階層的組織構造を有することにより、超撥水性を示すことを初めて見出した。このような超撥水性は、フラーレン誘導体110を階層的自己組織化することによって、低表面エネルギーかつフラクタル界面モルフォロジを有する表面が、形成されるために発現する。すなわち、超分子組織体の表面は、ハスの葉の表面構造と同様のフラクタルな表面であり、フラーレン誘導体を用いたハスの葉の表面構造を真似た人工系(生体模倣系)として初めての報告であることに留意されたい。
【0034】
本発明の超分子組織体は、フラーレン誘導体110のみで達成されるので環境対応型の超撥水性材料、さらに、フラーレンの機能と超撥水性とを融合させた新素材材料としても期待される。
【0035】
次に、本発明による超分子組織体を製造する方法を説明する。
【0036】
図2は、本発明による超分子組織体を製造するフローチャートを示す図である。ステップごとに説明する。
【0037】
ステップS210:フラーレン誘導体と1,4−ジオキサンとを混合する。フラーレン誘導体は、上述のフラーレン誘導体と同一であるため、重複して説明するのを避ける。また、上述のフラーレン誘導体は、例えば、本願発明者らによる特願2005−332390に記載される製造方法によって製造される。1,4−ジオキサンは、フラーレン誘導体に対して貧溶媒である。
【0038】
フラーレン誘導体は、以下のようにして製造される。式(a)で示される結合要素と、フラーレンと、式(b)で示されるN−メチルグリシンとを反応させるステップを含む。
【化4】


ここで、RおよびRは、それぞれ、アルキル置換基であり、Rは、水素原子、または、アルキル置換基であり、Xは、水素原子またはメチル基である。
【0039】
、RおよびR(ただし、Rが水素原子でない場合)のアルキル置換基は、それぞれ、アルキル(C2n+1)、アルコキシル(OC2n+1)、および、チオアルキル(SC2n+1)からなる群から選択される。ここで、nは、20以上の整数である。
【0040】
フラーレンは、C60、C70、C76およびC86からなる群から選択される。反応させるステップは、より詳細には、溶媒としてトルエン中、110℃の温度で、12〜24時間(12時間、24時間を含む)還流させる。反応させるステップで得られた反応物を冷却し、トルエン、次いで溶離剤としてトルエン/n−ヘキサン(1:1で混合)を用いて、クロマトグラフ処理してもよい。
【0041】
再度、図2を参照し、ステップS210に続いて説明する。
ステップS220:混合物を加熱する。加熱によって、フラーレン誘導体を1,4−ジオキサン中に均一に溶解させることができる。均一に溶解させるために、加熱は、60℃〜70℃の温度範囲で、1時間〜2時間行われる。加熱もマイルドな条件かつ短時間でよいため、高価な装置を必要とせず、工業的に好ましい。
【0042】
ステップS230:加熱後溶解した混合物をエージングする。これにより自己組織化的に図1(B)を参照して説明したフラワー状のフラーレン構造体120が得られる。十分に自己組織化させるためには、エージングは、室温(15℃〜30℃の温度範囲)にて、12時間〜24時間行われる。なお、自己組織化したフラワー状のフラーレン構造体120は、黒茶色の沈殿(析出物)として目視できる。この際の収率は、100%であるので、歩留まりもよく、大量生産も可能である。
【0043】
ステップS240:沈殿を含む溶液を基材に塗布する。これにより、本発明による階層的組織構造、すなわち、フラワー状のフラーレン構造体120の層状構造130(図1(C))を有した超分子組織体が得られる。基材への塗布は、滴下、浸漬、スピンコート等の任意の方法を採用できる。基材への塗布の回数は限定されない。用途に応じて複数回行ってもよいし、1回でもよい。基材は、例えば、シリコン基板、ガラス基板等任意の基板であり、その形状は、板状であってもよいし、球状であってもよいし、塗布可能であれば任意である。以上、ステップS210〜S240を経て、本発明による超分子組織体が得られる。
【0044】
このようにして得られた超分子組織体(例えば、組織化膜)は、クロロホルム、トルエン、ベンゼン等の良溶媒に容易に溶解するので、回収が可能である。また、回収した超分子組織体に再度ステップS210〜S240を行うことにより、再利用もできる。この場合も収率100%で超分子組織体が再生成されるので、環境フレンドリーである。
【0045】
本発明による超分子組織体は、超撥水性を有するので、当然のことながら超撥水性材料として、防水性、防曇性、防湿性、防着氷雪性などが要求される各種部材や製品に利用可能である。さらに、本発明による超分子組織体は、任意の基材に付与できるので、用途に制限がないことに加えて、耐薬品性、耐酸・アルカリ性および耐熱性を有しているので、任意の環境でも適用できる。また、本発明による超分子組織体は、超撥水性とともにフラーレン(ナノカーボン)の機能も有するので、例えば、超撥水性を備えた高力学耐久材料、超撥水性を備えた光電子材料としても利用可能である。さらに、本発明の超分子組織体を低摩擦、不濡れが要求されるMEMS/NEMS、マイクロ流路等へ適用してもよい。
【0046】
次に具体的な実施例を用いて本発明を詳述するが、本発明がこれら実施例に限定されないことに留意されたい。
【実施例1】
【0047】
式(2)で示されるフラーレン誘導体3,4,5C2060を特願2005−332390に基づいて合成した。得られたフラーレン誘導体6〜8mgを1,4−ジオキサン4mLに溶解させた(図2のステップS210)。
【化5】

【0048】
次に、ホットプレートを用いて、混合物を70℃まで加熱し、2時間保持した(図2のステップS220)。フラーレン誘導体が1,4−ジオキサンに完全に溶解したのを目視にて確認した。その後、溶液を室温(20℃)まで放冷し、12時間エージングした(図2のステップS230)。溶液の底部に黒茶色の析出物が目視にて確認できた。70℃の加熱直後の混合の状態およびエージングした後の析出した状態を撮影した。結果を図3に示し後述する。
【0049】
析出物の観察を走査型電子顕微鏡SEM(S−4800, Hitachi)、デジタルカメラ(MP5Mc/OL)を備えた光学顕微鏡(BX51, Olympus)、および、クライオポンプを備えた透過型電子顕微鏡TEM(JEM−4000SFX, JEOL)を用いて行った。
【0050】
SEM用試料は、析出物をシリコン基板(100)上に配置し、次いで、イオンスパッタ(E−1030, Hitachi)を用いて白金コーティングすることによって調製した。SEMの観察条件は、加速電圧10kVであった。
【0051】
TEM用試料は、カーボンコーティングされた銅製グリッド(弾性カーボンコーティングされたCu 200−Aメッシュ, Ouken Shoji)に析出物を含む1,4−ジオキサン溶液を滴下し、過剰の溶液をろ紙を用いて除去し、100K以下に保持された液体プロパンに入れることによって調製した。TEMの観察条件は、加速電圧400kVであり、試料保持温度4Kであった。SEM、光学顕微鏡およびTEMの結果を図4〜図6に示し後述する。
【0052】
析出物が二分子膜構造(図1(A)の100)を有していることを確認するため、粉末X線回折装置(RINT Ultima III, Rigaku)を用いた構造解析、示差走査熱量計(DSC6220, SII)を用いた示差走査熱量測定(DSC)、および、温度制御セルを備えた分光光度計(NICOLET NEXUS 670FT−IRおよびShimadzu U−3600)を用いたFT−IRスペクトル測定ならびに紫外・可視スペクトル測定を行った。これらの結果を図7および図8に示し後述する。
【0053】
次いで、析出物を含む1,4−ジオキサン溶液をスポイトにて取り出し、Si基板上に塗布した(図2のステップS240)。塗布は、滴下によって行った。塗布後、Si基板を自然乾燥させ、余剰の溶液を除去した。なお、ここでは、塗布は、1回のみ行った。塗布後に形成された膜(層とも呼ぶ)の表面を、SEMを用いて観察した。観察結果を図9に示す。
【0054】
得られた膜に水滴を滴下し、撥水性能を接触角計(Drop Master, Kyowa Interface Science)を用いて評価した。評価環境は、気温21℃、湿度12%であった。結果を図10に示し後述する。
【0055】
得られた膜の耐熱性について検討した。膜を大気中100℃、12時間および36時間保持した後に、膜の表面を観察するとともに、撥水性能を評価した。12時間保持した後の結果を図11に示し後述する。
【0056】
得られた膜の耐薬品性について検討した。汎用的な有機溶媒であるアセトンおよびエタノールそれぞれに、膜を60秒間浸漬させた後、真空下で12時間乾燥させた。その後、水の接触角を測定した。また、膜の耐酸・アルカリ性についても検討した。pH=2である酸性溶液、および、pH=12であるアルカリ性溶液それぞれに、膜を60秒間浸漬させた後、純水、次いでアセトンで洗浄し、真空下で12時間乾燥させた。その後、接触角を測定した。これらの結果を図12〜図15に示し後述する。
【比較例1】
【0057】
実施例1において式(2)のフラーレン誘導体に替えて、式(3)のフラーレン誘導体3,4,5C1660を用いた以外は同様であるため説明を省略する。
【化6】


実施例1と同様に、エージング後の析出物のSEMによる表面観察、および、X線回折による構造解析を行った。結果をそれぞれ図16および図17に示し後述する。実施例1と同様に、析出物を含む溶液をSi基板上に塗布し、膜を形成した。膜の撥水性能を評価した。結果を図18に示し後述する。
【比較例2】
【0058】
実施例1において、1,4−ジオキサンに替えてクロロホルムを用いた。式(2)に示すフラーレン誘導体は、クロロホルムに室温にて容易に溶解した。なお、クロロホルムはフラーレン誘導体に対して良溶媒であるため、析出物は生じなかった。スピンコート(回転数1200rpm)を用いて、溶液をSi基板上に塗布し、乾燥させた。得られた膜の表面構造を、プローブ台(SPI4000)を備えた原子間力顕微鏡AFM(SPA400, SII)を用いて観察した。観察は、タッピングモードで行った。結果を図19に示し後述する。次いで、得られた膜の撥水性能を評価した。結果を図20に示し後述する。
【実施例2】
【0059】
実施例1において式(2)のフラーレン誘導体に替えて、式(4)のフラーレン誘導体3,4C2060を用いた以外は同様であるため説明を省略する。
【化7】


実施例1と同様に、エージング後の析出物のSEMによる表面観察、X線回折による構造解析、DSC、FT−IR、UV測定を行った。結果をそれぞれ図21〜図23および図24に示し後述する。実施例1と同様に、析出物を含む溶液をSi基板上に塗布し、膜を形成した。膜の撥水性能を評価した。結果を図25に示し後述する。
【比較例3】
【0060】
実施例1において、式(2)のフラーレン誘導体に替えて、式(5)のフラーレン誘導体3,4C1660を用いた以外は同様であるため説明を省略する。
【化8】


実施例1と同様に、エージング後の析出物のSEMならびに光学顕微鏡による表面観察、および、X線回折による構造解析を行った。結果をそれぞれ図26および図27に示し後述する。
【0061】
以上の実施例1、2および比較例1〜3の実験条件を表1にまとめる。
【表1】

【0062】
図3は、実施例1における加熱直後の溶液の様子、および、エージング後の溶液の様子を示す写真である。
写真左は、70℃の加熱直後の様子を示す。薄茶色の透明であり、フラーレン誘導体3,4,5C2060が、1,4−ジオキサンに完全に溶解することが分かった。写真右は、エージング後の様子を示す。溶液は、透明な領域Aおよび黒茶色の領域B(析出物と1,4−ジオキサン)に分かれた。領域Bは、析出物であり、自己組織化がエージングにより進行したことが確認できた。
【0063】
図4は、実施例1における析出物のSEM画像および光学顕微鏡画像を示す。
図4から、析出物は、直径数μmの球形を有しており、その表面は皺が寄ったフレーク状(フラワー状)であるが分かる。
【0064】
図5は、実施例1における析出物のTEM画像を示す。
図5は、図4で見られたフレーク(皺)の端部をより詳細に示す。皺が寄った状態が明瞭に示される。
【0065】
図6は、実施例1における析出物のcryo−TEM画像およびフーリエ変換パターンを示す。
cryo−TEMは、溶液中での観察が可能であることに加えて、電子線照射による試料への損傷が少ないため、さらなる細部の観察に好ましい。図6のcryo−TEM画像から、析出物のフレークの端部は、多層ラメラ二分子膜からなるナノ構造を有している。さらに、図6のフーリエ変換パターンから4.4nmと2.2nmとの周期性が確認された。これらの値は、それぞれ、互いにアルキル鎖(実施例1ではエイコシルオキシ基)がかみ合った状態の二分子膜一層の長さと、二分子膜の半分の長さとに相当する。また、図6のスポット状のフーリエ変換パターンは、二分子膜構造が高い結晶性を保持していることを示唆する。
【0066】
以上、図4〜図6から、析出物は、二分子膜構造(一次構造)が組織化したフラワー状のフラーレン構造体(二次構造)を有していることが示唆される。
【0067】
図7は、実施例1における析出物のXRDパターンを示す。
XRDパターンは、(001)、(002)の明瞭なピークを示した。また、詳細に検討した結果、(003)、(004)、(005)、(006)、(007)の周期的なピークを確認できた。(001)ピークから算出される面間隔(図1(A)のD)は、4.85nmであった。この値は、図6で説明した周期4.4nmと比較してわずかに大きな値であったが、比較的良好な一致を示した。なお、この誤差は、図6のTEM観察のための試料として用いた溶媒(1,4−ジオキサン)、および、TEM観察時の環境(超高真空下)の影響による。またXRDパターンは、2θ=10.2°付近にブロードなピークを示すが、これは、近接するフラーレン部位間の距離(0.87nm)に相当することが分かった。このことは、同じ層内でフラーレン部位同士が強い相互作用を有することを示唆する。
【0068】
図8は、実施例1における析出物の示差熱量の温度依存性を示す図である。
【0069】
低温側から高温側へと温度を変化させた場合に、56.4℃と59.1℃とに吸熱ピークが観察された。高温側から低温側へと温度を変化させた場合に、52.0℃に発熱ピークが観察された。このピークは、生体膜等の典型的な二分子膜構造でよく見られる相転移挙動と同様であった。
【0070】
室温におけるFT−IRスペクトル(図示せず)によれば、メチレン基の対称伸縮ピークおよび非対称伸縮ピークが、それぞれ、2918cm−1および2849cm−1に見られた。これらのピークは、結晶性を有した、オールトランス型アルキル鎖(実施例1ではエイコシルオキシ基)に相当する。次いで、FT−IRスペクトルの温度依存性を調べた。70℃におけるFT−IRスペクトル(図示せず)によれば、メチレン基の対称伸縮ピークおよび非対称伸縮ピークが、アルキル鎖のオールトランス型からゴーシュ型への変化に起因して、それぞれ、2918cm−1から2923cm−1へ、および、2849cm−1から2852cm−1へピークシフトした。これは、図8を参照して説明した相転移挙動に一致する。
【0071】
室温における紫外・可視スペクトル(図示せず)は、330nm、270nmおよび222nmに最大吸収値を有する3つのピークを示した。これらの最大吸収値は、1,4−ジオキサンに替えてn−ヘキサンに式(2)に示すフラーレン誘導体を溶解させた場合と比較して、それぞれ、22nm、15nmおよび10nm長波長側にシフトしていることが分かった。これらのシフトは、フラーレン部位間の電子相互作用の存在を意味する。また、70℃における紫外・可視スペクトル(図示せず)は、室温における紫外・可視スペクトルと同一であった。アルキル鎖における構造変化と異なり、超分子組織内においてフラーレン部位間のπ−π電子相互作用が、熱に対して不活性、つまり非常に強い相互作用を保持していることが分かった。
【0072】
以上、図4〜図8から、析出物は、二分子膜構造(一次構造)を有していることが確認された。
【0073】
図9は、実施例1におけるSi基板上の膜の表面のSEM画像を示す。
【0074】
図9から、球状の析出物の配列が、コロイド結晶材料における六方晶充填した二次元構造に類似しており、その表面は、フラクタル構造を有していることが分かる。このように、析出物をSi基板上に堆積させて容易に膜状(三次構造)に形成することができる。また、膜の表面は、析出物の表面が有するフレーク状を維持・反映することにより、フラクタルな表面であった。
【0075】
図10は、実施例1におけるSi基板上の膜の水液滴の様子を示す図である。
【0076】
膜上の水液滴は球形を維持しており、その接触角は152.0°であった。このことから、実施例1で得られた膜は、超撥水性(接触角が150°以上)を有していることが分かった。
【0077】
図11は、実施例1におけるSi基板上の膜の耐熱性を示す図である。
【0078】
図11は、100℃12時間大気中で膜を加熱した後の表面のSEM画像と水液滴の様子を示す。図9と比較して、100℃12時間加熱しても、表面の状態は変化が見られなかった。加熱後の膜上の水液滴も球形を維持しており、その接触角は152.6°であった。図示しないが、100℃36時間加熱した後の表面の状態もまた、図9および図11からの変化は見られなかった。同様に、水の接触角は152.6°であった。このことから、実施例1で得られた膜は、超撥水性を有するだけでなく、耐熱性を有することが分かった。
【0079】
図12は、実施例1におけるSi基板上の膜の耐薬品性を示す図である。
【0080】
図12は、膜をアセトンに浸漬させた後の膜上の水液滴の様子を示す。膜上の水液滴は、図9と同様に、球形を維持しており、その接触角は151.5°であった。
【0081】
図13は、実施例1におけるSi基板上の膜の耐薬品性を示す別の図である。
【0082】
図13は、膜をエタノールに浸漬させた後の膜上の水液滴の様子を示す。膜上の水液滴は、図9と同様に、球形を維持しており、その接触角は153.1°であった。以上、図12および図13から、実施例1で得られた膜は、超撥水性を有するだけでなく、耐薬品性を有することが分かった。
【0083】
図14は、実施例1におけるSi基板上の膜の耐酸性を示す図である。
【0084】
図14は、膜をpH=2の酸性溶液に浸漬させた後の膜上の水液滴の様子を示す。膜上の水液滴は、図9と同様に、球形を維持しており、その接触角は152.1°であった。
【0085】
図15は、実施例1におけるSi基板上の膜の耐アルカリ性を示す図である。
【0086】
図15は、(Si基板とともに)膜をpH=12のアルカリ性溶液に浸漬させた後の膜上の水液滴の様子を示す。膜上の水液滴は、図9と同様に、球形を維持しており、その接触角は151.0°であった。以上、図14および図15から、実施例1で得られた膜は、超撥水性を有するだけでなく、耐酸・アルカリ性を有することが分かった。
【0087】
図16は、比較例1における析出物のSEM画像を示す。
比較例1の析出物もまた球状であり、その表面がフレーク状(フラワー状)であった。しかしながら、実施例1の図4と比較すると、フレーク状(皺)の程度が小さいことが分かる。
【0088】
図17は、比較例1における析出物のXRDパターンを示す。
XRDパターンは、実施例1の図4と同様に、(001)、(002)、(003)、(004)、(005)、(006)、(007)の周期的なピークを示した。(001)ピークから算出される面間隔(二分子膜構造の膜間距離)は、4.12nmであった。
【0089】
図18は、比較例1におけるSi基板上の膜の水液滴の様子を示す図である。
膜上の水液滴はわずかに変形した球形であり、その接触角は127.3°であった。このことから、比較例1で得られた膜は、超撥水性を示さなかった。実施例1および比較例1の比較から、フラーレン誘導体の有する各アルキル鎖の炭素が20以上において超撥水性を示すことが示唆される。
【0090】
図19は、比較例2におけるSi基板上の膜の表面のAFM画像を示す。
膜表面の粗さ(ラフネス)は5nm程度と非常に小さく、フラクタル形状を持たない平滑な表面構造であることが分かった。
【0091】
図20は、比較例2における石英基板上の膜の液滴の様子を示す図である。
膜上の液滴は大きく変形した楕円形状であり、その接触角は103.5°であった。このことから、比較例2で得られた膜は、超撥水性を示さなかった。実施例1および比較例2の比較から、超撥水性を発現させるための、フラーレン誘導体に用いる溶媒として1,4−ジオキサンが好適であり、ハスの葉の表面に類似したフラクタル表面の形成が重要であることが示唆される。
【0092】
図21は、実施例2における析出物のSEM画像を示す。
図22は、実施例2における析出物の別のSEM画像を示す。
図23は、実施例2における析出物のさらに別のSEM画像を示す。
図21〜図23から、実施例2の析出物もまた、実施例1と同様に、直径数μmの球形もしくはフラワー状を有しており、その表面は皺が寄ったフレーク状であることが分かる。
【0093】
図24は、実施例2における析出物のXRDパターンを示す。
XRDパターンは、実施例1の図4と同様に、(001)、(002)、(003)、(004)、(005)の周期的なピークを示した。(001)ピークから算出される面間隔(二分子膜構造の膜間距離)は、3.9nmであった。また、DSC、FT−IRおよびUVスペクトルも、実施例1と同様の結果を示し、実施例2の析出物が二分子膜構造を有していることを確認した。
【0094】
図25は、実施例2におけるSi基板上の膜の水液滴の様子を示す図である。
膜上の水液滴は球形を維持しており、その接触角は150.6°であった。このことから、実施例2で得られた膜は、超撥水性を有していることが分かった。実施例1と実施例2とを比較すると、式(1)における第3の置換基Rが水素よりも炭素数20以上のアルキル鎖の方が、撥水性能がわずかながら高いことが示された。
【0095】
図26は、比較例3における析出物のSEM画像および光学顕微鏡画像を示す。
比較例3の析出物もまた、実施例2と同様に、直径数μmの球形を有しており、その表面は皺が寄ったフレーク状(フラワー状)であることが分かる。しかしながら、実施例2の図21〜図23と比較すると、フレーク状(皺)の程度が極端に小さいことが分かる。
【0096】
図27は、比較例3における析出物のXRDパターンを示す。
XRDパターンは、実施例2の図24と同様に、(001)、(002)、(003)、(004)、(005)の周期的なピークを示した。(001)ピークから算出される面間隔(二分子膜構造の膜間距離)は、3.5nmであった。
図示しないが、比較例3の析出物から得られる膜は、超撥水性を示さないことを確認した。ここでもやはり、実施例2および比較例3の比較から、フラーレン誘導体の有する各アルキル鎖の炭素が20以上において超撥水性を示すことが示唆される。
【産業上の利用可能性】
【0097】
上述したように、本発明による超分子組織体は、特定のフラーレン誘導体からなる。このような特定のフラーレン誘導体は、超分子組織体において二分子膜構造を形成し、ナノ組織基礎骨格として機能する。この結果、超分子組織体は、超撥水性を示す。本発明による超分子組織体は、防水性、防曇性、防湿性、防着氷雪性などが要求される各種部材や製品に利用可能である。さらに、本発明による超分子組織体は、耐薬品性、耐酸・アルカリ性および耐熱性を有しているので、任意の環境、任意の基材に適用できる。また、本発明による超分子組織体は、超撥水性を備えた高力学耐久材料、超撥水性を備えた光電子材料としても利用可能である。さらに、本発明の超分子組織体を低摩擦、不濡れが要求されるMEMS/NEMS、マイクロ流路等へ適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明による超分子組織体における(A)二分子膜構造、(B)フラワー状のフラーレン構造体および(C)層状構造の超分子組織体
【図2】本発明による超分子組織体を製造するフローチャートを示す図
【図3】実施例1における加熱直後の溶液の様子、および、エージング後の溶液の様子を示す写真
【図4】実施例1における析出物のSEM画像および光学顕微鏡画像
【図5】実施例1における析出物のTEM画像
【図6】実施例1における析出物のcryo−TEM画像およびフーリエ変換パターン
【図7】実施例1における析出物のXRDパターン
【図8】実施例1における析出物の示差熱量の温度依存性を示す図
【図9】実施例1におけるSi基板上の膜の表面のSEM画像
【図10】実施例1におけるSi基板上の膜の水液滴の様子を示す図
【図11】実施例1におけるSi基板上の膜の耐熱性を示す図
【図12】実施例1におけるSi基板上の膜の耐薬品性を示す図
【図13】実施例1におけるSi基板上の膜の耐薬品性を示す別の図
【図14】実施例1におけるSi基板上の膜の耐酸性を示す図
【図15】実施例1におけるSi基板上の膜の耐アルカリ性を示す図
【図16】比較例1における析出物のSEM画像
【図17】比較例1における析出物のXRDパターン
【図18】比較例1におけるSi基板上の膜の水液滴の様子を示す図
【図19】比較例2におけるSi基板上の膜の表面のAFM画像
【図20】比較例2における石英基板上の膜の水液滴の様子を示す図
【図21】実施例2における析出物のSEM画像
【図22】実施例2における析出物の別のSEM画像
【図23】実施例2における析出物のさらに別のSEM画像
【図24】実施例2における析出物のXRDパターン
【図25】実施例2におけるSi基板上の膜の水液滴の様子を示す図
【図26】比較例3における析出物のSEM画像および光学顕微鏡画像
【図27】比較例3における析出物のXRDパターン
【符号の説明】
【0099】
100 二分子膜構造
110 フラーレン誘導体
120 フラワー状のフラーレン構造体
130 層状構造
140 基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二分子膜構造を有するフラーレン誘導体が組織化されたフラーレン構造体であって、フラワー状またはジプサム状の形状を有するとともに、前記フラーレン誘導体の有する各アルキル鎖の炭素が20以上でかつ前記フラーレン構造体が層状に組織化されてなることを特徴する超分子組織体。
【請求項2】
請求項1に記載の超分子組織体において、前記フラーレン誘導体は、式(1)で示される、フラーレン部位(A)と、前記フラーレン部位(A)に結合したベンゼン環と、前記ベンゼン環の3,4,5位それぞれに結合した第1〜第3の置換基R、RおよびRとを含み、
【化1】


ここで、前記式(1)において、Xは、水素原子またはメチル基であり、
前記第1および第2の置換基R、Rのそれぞれは、少なくとも20個の炭素原子を含むアルキル鎖であり、
前記第3の置換基Rは、水素原子であるか、または、少なくとも20個の炭素原子を含むアルキル鎖のいずれかであることを特徴とする超分子組織体。
【請求項3】
請求項2に記載の超分子組織体において、前記フラーレン部位(A)に結合するフラーレンは、C60、C70、C76、および、C84からなる群から選択されることを特徴とする超分子組織体。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の超分子組織体において、前記第1〜第3の置換基R、RおよびRのアルキル鎖は、それぞれ、アルキル(C2n+1)、アルコキシル(OC2n+1)、および、チオアルキル(SC2n+1)からなる群から選択され、ここで、nは、20以上の整数であることを特徴とすることを特徴とする超分子組織体。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の超分子組織体の製造方法であって、
フラーレン誘導体と、1,4−ジオキサンとを混合するステップであって、前記フラーレン誘導体は、式(1)に示される、フラーレン部位(A)と、前記フラーレン部位(A)に結合したベンゼン環と、前記ベンゼン環の3,4,5位それぞれに結合した第1〜第3の置換基R、RおよびRとを含み、
【化2】


ここで、前記式(1)において、Xは、水素原子またはメチル基であり、前記第1および第2の置換基R、Rのそれぞれは、少なくとも20個の炭素原子を含むアルキル鎖であり、前記第3の置換基Rは、水素原子であるか、または、少なくとも20個の炭素原子を含むアルキル鎖のいずれかである、ステップと、
前記混合するステップによって得られた混合物を加熱するステップと、
前記混合物をエージングするステップと、
前記エージングするステップによって生じた沈殿を含む溶液を塗布するステップと
からなることを特徴とする、製造方法。
【請求項6】
前記フラーレン部位(A)に結合するフラーレンは、C60、C70、C76、および、C84からなる群から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1〜第3の置換基R、RおよびRのアルキル鎖は、それぞれ、アルキル(C2n+1)、アルコキシル(OC2n+1)、および、チオアルキル(SC2n+1)からなる群から選択され、ここで、nは、20以上の整数であることを特徴とする、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記加熱するステップは、60℃〜70℃の温度範囲で、1〜2時間行うことを特徴とする、請求項5から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記エージングするステップは、室温にて12時間〜24時間行うことを特徴とする、請求項5から8のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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