説明

超純水製造方法

【課題】 原水中の尿素を高度に除去することの可能な超純水製造方法を提供する。
【解決手段】 1は図示しない原水貯槽から供給される原水Wの前処理システムであり、この前処理システム1で処理された原水Wは、熱交換器2で所定の温度に調整された後、第一の生物処理手段3に供給され、さらに第二の生物処理手段4に連続している。そして、この第二の生物処理手段4は、菌体分離装置5に連続していて、これらの各種装置で処理された後、処理水W1として一次純水装置に供給される。第二の生物処理手段4の前段には、栄養源としての窒素源、及び酸化剤(殺菌剤)を添加する第二の供給機構7が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物を含有する原水を生物処理して得られた処理水を1次純水装置及び2次純水装置で処理する超純水製造方法に関し、特に原水中の尿素を高度に除去することができる超純水製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、市水、地下水、工水等の原水から超純水を製造する超純水製造装置は、基本的に前処理装置、一次純水製造装置及び二次純水製造装置から構成される。このうち、前処理装置は、凝集、浮上、濾過装置で構成される。一次純水製造装置は、例えば、2基の逆浸透膜分離装置及び混床式イオン交換装置、あるいはイオン交換純水装置及び逆浸透膜分離装置で構成される。また、二次純水製造装置は、例えば、低圧紫外線酸化装置、混床式イオン交換装置及び限外濾過膜分離装置で構成される。
【0003】
このような超純水製造装置においては、その純度の向上への要求が高まってきており、これに伴いTOC成分の除去が求められている。超純水中のTOC成分のうち、特に尿素はその除去が困難であり、TOC成分を低減すればするほど尿素の除去がTOC成分の含有率に与える影響が大きい。そこで、超純水製造装置に供給される水中から尿素を除去することにより、超純水中のTOCを十分に低減することが特許文献1〜3に記載されている。
【0004】
特許文献1には、前処理装置に生物処理装置を組み込み、この生物処理装置で尿素を分解することが開示されている。また、特許文献2には、前処理装置に生物処理装置を組み込み、被処理水(工業用水)と半導体洗浄回収水との混合水を通水する。この半導体洗浄回収水中に含有される有機物が生物処理反応の炭素源となり、尿素の分解速度を向上させることが開示されている。なお、この半導体洗浄回収水中にはアンモニウムイオン(NH4+)が多量に含有されている場合があり、これが尿素と同様に窒素源となり、尿素の分解を阻害することがある。さらに、特許文献3には、特許文献2の上記問題点を解決するために、被処理水(工業用水)と半導体洗浄回収水とを別々に生物処理した後に混合し、一次純水製造装置及び二次純水製造装置に通水することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−63592号公報
【特許文献2】特開平6−233997号公報
【特許文献3】特開平7−313994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の水処理方法のように、被処理水に炭素源を添加すると、生物処理装置の尿素分解除去効率は向上するものの、生物処理装置内の菌体の増殖量が増加し、当該生物処理装置からの菌体の流出量が増加する、という問題点がある。これは、特許文献2の水処理方法は、硝化菌ではなく、BOD資化細菌(従属栄養細菌)が有機物を分解・資化するにあたり、窒素源として尿素及び尿素誘導体を分解し、アンモニアとして摂取することで、尿素及び尿素誘導体を分解し、アンモニアとして摂取することで、尿素及び尿素誘導体を除去する機構であるためであると考えられる。
【0007】
そこで、本発明者らは、原水に窒素源を添加した後、生物処理を実施することにより、尿素を短時間でより低濃度まで除去することが可能な水処理方法及び超純水を提案した(特願2010−105151号等)。
【0008】
ところがこの方法では、硝化菌群の関与により尿素分解効率の向上は得られるが故に、原水の有機物濃度が高い場合、特に易分解性の有機物濃度が高いときには、BOD資化細菌(従属栄養細菌)の増殖・活性が高まるため、硝化菌群の増殖・活性が低下し、尿素分解効率が低下し、十分に尿素が低減された超純水を得にくいことがあることがわかった。具体的には、BOD資化細菌の増殖・活性が高まることにより、栄養源として添加する窒素源がBOD資化細菌に利用されてしまうこと、またその他の原水中に含まれるリンや微量金属(ミネラル成分など)等の栄養源もBOD資化細菌に利用されてしまうことなどにより、硝化菌群の増殖・活性が低下する。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、原水中のTOC、特に尿素を高度に分解・除去することができ、より高純度な超純水を製造することの可能な超純水の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、有機物を含有する原水を生物処理して得られた処理水を純水製造装置で処理する超純水製造方法において、前記生物処理が、第一の生物処理手段と、第二の生物処理手段とからなり、前記第一の生物処理手段の処理水に、前記第二の生物処理手段の栄養源を添加することを特徴とする超純水製造方法を提供する(発明1)。
【0011】
かかる発明(発明1)によれば、まず第一の生物処理手段において、原水中の有機物、特に易分解性の有機物を除去することにより、次の第二の生物処理手段に供給される易分解性の有機物量を削減し、BOD資化細菌の増殖・活性の高まりを抑制することができる。このようにBOD資化細菌の増殖・活性の高まりを抑制しつつ、第一の生物処理手段の処理水に、第二の生物処理手段のアンモニア性の窒素源などの栄養源を添加することで、硝化菌群を主体とする生物処理を施すことができ、高い尿素除去効率とすることができる。また、第二の生物処理手段でのBOD資化細菌による栄養源の消費を抑制することができるので、より少ない栄養源で処理を行うことができる、という効果も奏する。
【0012】
上記発明(発明1)においては、前記第一の生物処理が、生物担持担体の固定床を有する生物処理手段であるのが好ましい(発明2)。また、上記発明(発明1)においては、前記第二の生物処理が、生物担持担体の固定床を有する生物処理手段であるのが好ましい(発明3)。
【0013】
かかる発明(発明2、3)によれば、生物処理手段が生物担持担体の固定床よりなるため、流動床の場合よりも生物処理手段からの菌体の流出を抑制することができ、処理の効果が高く、かつその効果を長期間維持することができる。
【0014】
上記発明(発明1〜3)においては、前記第二の生物処理手段の栄養源が、窒素源であるのが好ましい(発明4)。
【0015】
かかる発明(発明4)によれば、塩化アンモニウムなどのアンモニウム塩は、硝化菌群の活性化に好適であり、また、その添加・制御も容易であり、尿素の濃度を低く維持するのに好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の超純水製造方法によれば、有機物を含有する原水を生物処理して得られた処理水を純水製造装置で処理して超純水を製造するに際し、前記生物処理が、第一の生物処理手段と、第二の生物処理手段とからなり、前記第一の生物処理手段の処理水に、前記第二の生物処理手段の栄養源を添加しているので、高い尿素除去効率で超純水を製造することができる。また、第二の生物処理手段でのBOD資化細菌による栄養源の消費を抑制することができるので、より少ない栄養源で処理を行うことができる、という効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る超純水製造方法における生物処理装置を示す系統図である。
【図2】前記実施の形態に係る生物処理装置を利用した超純水製造方法を実施可能な装置を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の超純水製造方法の一実施形態に係る水処理方法を実施する生物処理装置を示す概略図である。
【0019】
図1において、1は図示しない原水貯槽から供給される原水Wの前処理システムであり、この前処理システム1で処理された原水Wは、熱交換器2で所定の温度に調整された後、第一の生物処理手段3に供給され、さらに第二の生物処理手段4に連続している。そして、この第二の生物処理手段4は、菌体分離装置5に連続していて、これらの各種装置で処理された後、処理水W1として一次純水装置に供給される。
【0020】
そして、第一の生物処理手段3の前段には、易分解性有機物と酸化剤と殺菌剤とを添加する第一の供給機構6が設けられているとともに、第二の生物処理手段4の前段には、栄養源としての窒素源、及び酸化剤(殺菌剤)を添加する第二の供給機構7が設けられている。さらに、第二の生物処理手段4の後段には還元剤及びスライムコントロール剤を供給する第三の供給機構8が設けられている。なお、9は原水W等を送給する配管である。
【0021】
上述したような構成の生物処理装置において、処理対象となる原水Wとしては、地下水、河川水、市水、その他の工業用水、半導体製造工程からの回収水等を用いることができる。原水(処理対象水)W中の尿素濃度は、5〜200μg/L、特に5〜100μg/L程度が好適である。
【0022】
また、前処理システム1としては、超純水の製造工程における一般的な前処理システム又はこれと同様の処理が好適である。具体的には、凝集・加圧浮上・濾過等からなる処理システムを用いることができる。
【0023】
第一の生物処理手段3は、下水等の廃水中の汚濁物質を生物学的作用により分解、安定化させる処理を行う手段であり、好気性処理と嫌気性処理とに区別される。一般的に有機物は、生物処理により酸素呼吸・硝酸呼吸・発酵過程等で分解されて、ガス化されるか、微生物の体内に取り込まれ、汚泥として除去される。また、窒素(硝化脱窒法)やリン(生物学的リン除去法)の除去処理もできる。このような生物処理を行う手段を一般に生物反応槽という。このような第一の生物処理手段3としては、特に制限はないが、生物担持担体の固定床を有するものが好ましい。特に、菌体の流出が少ない下向流方式の固定床が好ましい。
【0024】
第一の生物処理手段3を固定床とする場合、固定床を必要に応じて洗浄するのが好ましい。これにより、生物(菌体)の増殖による固定床の閉塞、マッドボール化、尿素の分解除去効率の低下等が生じることが防止される。この洗浄方法には特に制限はなく、例えば逆洗、すなわち、原水の通水方向と逆方向に洗浄水を通水して担体を流動化させ、堆積物の系外への排出、マッドボールの粉砕、生物の一部の剥離等を行うようにするのが好ましい。
【0025】
また、固定床の担体の種類に特に制限はなく、活性炭、アンスラサイト、砂、ゼオライト、イオン交換樹脂、プラスチック製成形品等が用いられるが、酸化剤の存在下で生物処理を実施するためには、酸化剤の消費量の少ない担体を用いるのが好ましい。ただし、生物処理手段に高濃度の酸化剤流入する可能性がある場合には、酸化剤を分解し得る活性炭等の担体を用いるのが好ましい。このように活性炭等を用いた場合、被処理水中の酸化剤の濃度が高い場合であっても、菌体が失活、死滅することが防止される。
【0026】
この第一の生物処理手段3に第一の供給機構6から添加される易分解性有機物としては、酢酸、クエン酸などの有機酸、酢酸ナトリウムなど有機酸塩、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトンなど有機溶媒、その他の汎用的な易生分解性の有機物を好適に用いることができる。これらの中では、添加した有機物が処理しきれずに生物処理水に残留した場合にも、後段処理として実施する逆浸透膜処理やイオン交換樹脂によるイオン交換処理において除去可能であるという観点から、イオン性のある有機物である酢酸ナトリウムなどの有機酸塩をより好適に用いることができる。
【0027】
また、酸化剤としては、次亜塩素酸ナトリウム、二酸化塩素等の塩素系酸化剤などを用いることができる。さらに、殺菌剤としては、例えば、塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とからなる結合塩素剤(クロラミンより安定性が高い結合塩素剤)、過酸化水素などを用いることができる。
【0028】
次に、第二の生物処理手段4としては、前述した第一の生物処理手段3と同じものを用いることができ、同様に生物担持担体の固定床を有するものが好ましい。特に、菌体の流出が少ない下向流方式の固定床が好ましい。
【0029】
この第二の生物処理手段4の前段に第二の供給機構7から添加される栄養源としての窒素源としては、アンモニア性の窒素源が好ましく、有機性、無機性いずれのアンモニア性窒素源も好適に用いることができる。これらのなかでは添加したアンモニア性の窒素源が処理しきれずに生物処理水に残留した場合にも、後段の処理において除去が容易であるという観点から、イオン性を有するアンモニア性の窒素源である塩化アンモニウム、硫酸アンモニウムなどのアンモニウム塩を好適に用いることができる。
【0030】
なお、本実施形態の目的は尿素除去であり、より尿素除去性に優れた菌体を獲得・保持することが好ましく、この観点からアンモニア性の窒素源として、尿素および尿素誘導体を添加しても良い。ただし、尿素および尿素誘導体の一部は、イオン性がないため、後段の処理での除去が期待できないので、多量に添加した場合には、生物処理および後段処理でも除去できず末端まで残留してしまう可能性が高い。したがって、尿素および尿素誘導体を添加する場合には、添加濃度は最小限とし、アンモニウム塩等でアンモニア性の窒素源としての必要量を補完する方法が好ましい。
【0031】
また、酸化剤としては、次亜塩素酸ナトリウム、二酸化塩素等の塩素系酸化剤などを用いることができる。また、殺菌剤としては、例えば、塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とからなる結合塩素剤(クロラミンより安定性が高い結合塩素剤)、過酸化水素などを用いることができる。
【0032】
さらに、第二の生物処理手段4の後段における第三の供給機構8からの還元剤及び/又はスライムコントロール剤の配管9への添加、及び菌体分離装置5は、必ずしも必要ではなく、状況に応じていずれか1以上を適宜設けることができるものである。具体的には、第二の生物処理手段4の後段で酸化剤等の流出が認められる場合や、菌体の流出が認められる場合には、必要に応じ第三の供給機構8から還元剤及び/又はスライムコントロール剤を配管9に添加することができる。
【0033】
この還元剤及びスライムコントロール剤のうち、還元剤としては、前述した第二の供給機構7から供給するものと同じものを用いることができる。また、スライムコントロール剤としては、後述するRO膜処理、イオン交換処理などで酸化劣化などによる悪影響を及ぼさない殺菌剤が好ましく、例えば、塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とからなる結合塩素剤(クロラミンより安定性が高い結合塩素剤)、過酸化水素などを用いることができる。
【0034】
さらに、菌体の流出が認められる場合には、菌体分離装置5を設けるのが望ましい。この菌体分離装置5は、第二の生物処理手段4の処理水中に含まれる菌体(生物担体より剥離してしまった菌体)により引き起こされる一次純水装置などの後段処理での障害(配管の詰まり、差圧上昇といったスライム障害、RO膜のバイオファウリングなど)の回避を目的に必要に応じて設けられるものであり、具体的には、膜ろ過(孔径0.1μm程度のカートリッジフィルタを用いた膜ろ過処理)、凝集ろ過などを用いることができる。
【0035】
次に上述したような構成の装置及び添加剤等を用いた水処理方法について説明する。
【0036】
まず、原水Wを前処理システム1に供給して、原水W中の濁質成分を除去することにより、該濁質成分により後段の第一の生物処理手段3での有機物の分解除去効率が低下するのを抑制するとともに、第一の生物処理手段3の圧力損失の増加を抑制する。
【0037】
そして、熱交換器2により、この前処理した原水Wを該原水Wの水温が低い場合には加温し、高い場合には冷却して所定の水温となるように、必要に応じ温度調節を実施する。すなわち、原水Wの水温が高いほど反応速度が高まり分解効率が向上する。一方、水温が高い場合には、第一の生物処理手段3の処理槽や配管9等に耐熱性を持たせる必要が生じ、設備コストの増大に繋がる。また、原水Wの水温が低い場合には、加温コストの増大につながる。具体的には、生物反応は水温が40℃以下であれば、基本的には水温が高いほど生物活性および除去速度は向上する。しかしながら、水温が40℃を超えると、逆に生物活性および除去効率は低下する傾向を示すことがある。以上の理由より、処理水温は20〜40℃程度が好ましい。したがって、原水Wの初期の温度が上記範囲内であれば、何もしなくてもよい。
【0038】
このようにして、必要に応じ温度調整を行った原水Wを第一の生物処理手段3に供給し、まず有機物、特に易分解性の有機物を除去、後段の第二の生物処理手段4に供給される供給水中の易分解性の有機物量を削減し、BOD資化細菌の増殖・活性の高まりを抑制する。このとき、第一の供給機構6にから必要に応じ第一の生物処理手段3に易分解性有機物、酸化剤及び/又は殺菌剤を添加する。
【0039】
ここで、上記易分解性有機物の添加量は、0.1〜2mg/L(asC=炭素)とすればよい。易分解性有機物の添加量が0.1mg/L未満では、この有機物を分解、資化する際に必要となる窒素源(N源)としての尿素を摂取・分解する能力が十分でない一方、2mg/Lを超えても、さらなる尿素の分解が得られないばかりか、第一の生物処理手段3からのリーク量が多くなりすぎるため好ましくない。
【0040】
また、酸化剤の添加量は、使用する酸化剤の種類によって異なるが、例えば、塩素系酸化剤を用いる場合、遊離有効塩素濃度で1〜10mg/L程度、特に1〜5mgmg/L程度とすればよい。酸化剤の添加量が1mg/L未満では、有機物成分の酸化分解が十分でない一方、10mg/Lを超えても、それ以上の効果の向上が得られないばかりか、残存する酸化剤(遊離塩素を含む)が増加するため、この遊離塩素の除去のために必要となる還元剤の量が多くなりすぎる。なお、殺菌剤は、第一の生物処理手段3の処理水中に含まれる菌体により引き起こされる後段処理での障害(配管の詰まり、差圧上昇といったスライム障害、RO膜のバイオファウリングなど)の回避を目的に必要に応じて適宜添加すればよい。
【0041】
この第一の生物処理手段3で処理した原水Wを供給水として、第二の生物処理手段4でさらに生物処理を行う。このとき、第二の供給機構7から窒素源を添加することにより、硝化菌群を主体とする生物処理を施すことができ、尿素を効率的に分解・除去することができる。
【0042】
ここで、窒素源の添加量は、0.1〜5mg/L(NH4+換算)とすればよい。原水W中のアンモニウムイオン濃度が0.1mg/L(NH4+換算)未満では、硝化菌群の活性を維持するのが困難となる一方、5mg/L(NH4+換算)を超えても、さらなる硝化菌群の活性が得られないばかりか、第二の生物処理手段4からのリーク量が多くなりすぎるため好ましくない。
【0043】
窒素源、特にアンモニア性の窒素源を、第一の生物処理手段3で処理した原水Wに対して上記範囲で添加することにより、例えば、易分解性有機物を多く含む原水WのTOC濃度が1.0mg/L以上、特に約1.5〜2.0mg/Lと高い場合であっても、尿素の濃度を2μg/L以下に維持することができる。
【0044】
上記窒素源、特にアンモニア性の窒素源は、常時添加する必要はなく、例えば、第二の生物処理手段4の生物担体交換時の立上げ期間のみ添加する方法、あるいは一定期間毎に添加、無添加を繰り返す方法等を用いることができる。このように常時窒素源を添加しないことにより、窒素源の添加コストを低減することもできる、という効果も奏する。さらに、第一の生物処理手段3において、易分解性の有機物を除去することで、第一の生物処理手段4におけるBOD資化細菌の活性を抑制しているので、第二の生物処理手段4でのBOD資化細菌による栄養源の消費を抑制することができるので、より少ない栄養源で処理を行うことができる、という効果も奏する。
【0045】
なお、殺菌剤は、第二の生物処理手段4の処理水中に含まれる菌体により引き起こされる後段処理での障害(配管の詰まり、差圧上昇といったスライム障害、RO膜のバイオファウリングなど)の回避を目的に必要に応じて適宜添加すればよい。
【0046】
続いて、この第二の生物処理手段4で処理した原水Wに、第三の供給機構8から、必要に応じて、還元剤及び/又はスライムコントロール剤を添加する。
【0047】
具体的には、生物処理の給水中に遊離塩素が存在し、アンモニア性の窒素源としてアンモニウム塩等を添加する場合、遊離塩素とアンモニウムイオンとが反応し結合塩素(クロラミン)が生成する。結合塩素は遊離塩素と比較して活性炭でも除去し難い成分であり、生物処理水に結合塩素がリークすることとなる。結合塩素は遊離塩素と比較して酸化力は低い成分と言われているが、平衡反応により結合塩素から再度遊離塩素が生成することも知られており、後段の一次純水処理システム等での酸化劣化を引き起こす可能性がある。還元剤を添加する場合、還元剤の添加量は、例えば、亜硫酸ナトリウムを用いて残留塩素を還元する場合、亜硫酸イオン(SO2−)と次亜塩素酸イオン(ClO)とが等モルとなるように添加すればよく、安全性を考慮して1.2〜3.0倍量を添加すればよい。処理水の酸化剤濃度には変動があることから、より好ましくは、処理水の酸化剤濃度を監視し、酸化剤濃度に応じ還元剤添加量を制御することが好ましい。また、簡易的には、定期的に酸化剤濃度を測定し、測定濃度に応じた添加量を適宜設定する方法を用いてもよい。
【0048】
また、スライムコントロール剤は、第二の生物処理手段4の処理水中に含まれる菌体(生物担体より剥離してしまった菌体)により引き起こされる後段処理での障害(配管の詰まり、差圧上昇といったスライム障害、RO膜のバイオファウリングなど)の回避を目的に必要に応じて適宜添加すればよい。
【0049】
さらに、必要に応じて菌体分離装置5により、第二の生物処理手段4の処理水中に含まれる菌体を除去する。
【0050】
これら還元剤及び/又はスライムコントロール剤の添加や菌体分離装置5による処理は、第二の生物処理手段4からの生物処理水の水質に応じて、1又は2以上を適宜行えばよく、水質が良好であれば行わなくてもよい。
【0051】
このようにして尿素を高度に除去した処理水W1が得られるので、これを純水製造装置によりさらに処理することで、尿素が高度に除去された超純水を製造することができる。
【0052】
次に、本発明の一実施形態に係る水処理方法を利用した超純水製造方法について、図2を参照して説明する。本実施形態における超純水製造方法では、原水Wを、前述した第一の生物処理装置3及び第一の生物処理装置4を備えた水処理装置21で処理した後、処理水W1を一次純水装置22及びサブシステム(二次純水装置)23を備えた純水製造装置でさらに処理する。
【0053】
一次純水装置22は、第1の逆浸透膜(RO)分離装置24と、混床式イオン交換装置25と、第2の逆浸透膜(RO)分離装置26とをこの順に配置してなる。ただし、この一次純水装置22の装置構成はこのような構成に制限されるものではなく、例えば、逆浸透膜分離装置、イオン交換処理装置、電気脱イオン交換処理装置、UV酸化処理装置等を適宜組み合わせて構成されていてもよい。
【0054】
サブシステム23は、サブタンク27と、熱交換器28と、低圧紫外線酸化装置29と、膜脱気装置30と、混床式イオン交換装置31と、限外濾過膜装置(微粒子除去)32とをこの順に配置してなる。ただし、このサブシステム23の装置構成はこのような構成に制限されるものではなく、例えば、UV酸化処理装置、イオン交換処理装置(非再生式)、UF膜分離装置等を組み合わせて構成されていてもよい。
【0055】
このような超純水製造システムによる超純水製造方法を以下に説明する。まず、水処理装置21で処理した処理水W1を一次純水装置22で、第1の逆浸透膜(RO)分離装置24と、混床式イオン交換装置25と、第2の逆浸透膜(RO)分離装置26とにより、処理水W1中に残存するイオン成分等を除去する。
【0056】
さらに、サブシステム23では、一次純水装置22の処理水をサブタンク27及び熱交換器28を経て低圧紫外線酸化装置29に導入し、含有されるTOC成分をイオン化又は分解する。さらに膜脱気装置30で、酸素や炭酸ガスを除去し、続いてイオン化された有機物を後段の混床式イオン交換装置31で除去する。この混床式イオン交換装置31の処理水は更に限外濾過膜装置(微粒子除去)32で膜分離処理され、超純水を得ることができる。
【0057】
上述したような超純水製造方法によると、生物処理手段5において、尿素を十分に分解除去し、その後段の一次純水装置22及びサブシステム23でその他のTOC成分、金属イオン、その他の無機・有機イオン成分を除去することにより、高純度の超純水を効率よく製造することができる。
【0058】
以上、本発明について添付図面を参照して説明してきたが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の変形実施が可能である。例えば、第一の生物処理手段3は、通常の生物処理装置としてもよく、また、第二の生物処理手段4の供給水に添加する栄養源は、アンモニア性の窒素源に限らず、それ以外の窒素源を添加してもよく、場合によっては、易分解性有機物を添加してもよい。
【実施例】
【0059】
以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0060】
〔実施例1〕
模擬原水1として、市水(野木町水:平均尿素濃度10μg/L、平均TOC濃度0.7mg/L、アンモニア性窒素濃度0.1mg/L未満、平均全残留塩素濃度0.6mg/LasCl)に試薬尿素(キシダ化学社製)を必要に応じ適量添加したものを用いた。
【0061】
模擬原水2として、模擬原水1に、さらに酢酸ナトリウム(キシダ化学製)を添加し、TOC濃度を約2mg/Lに調整したものを用いた。
【0062】
試験期間中市水の水温は25〜30℃であったため、熱交換器2により模擬原水1及び模擬原水2の水温調整は行わなかった。また、市水のpHは6.8〜7.3であったため、硫酸(工業用希硫酸、鶴見曹達社製)を添加して、模擬原水1及び模擬原水2のpHを約6.0に調整した。
【0063】
図1に示す構成の装置において、第一の生物処理手段3として、生物担体としての粒状活性炭(「クリコール WG160、10/32メッシュ」、栗田工業社製)を円筒容器に2L充填して固定床としたものを用いた。なお、第一生物処理手段3の粒状活性炭としては、有機物の分解能が既に発現しているものを用いた。
【0064】
さらに、第二の生物処理手段4としては、生物担体としての粒状活性炭(「クリコール WG160、10/32メッシュ」、栗田工業社製)を円筒容器に2L充填して固定床としたものを用いた。なお、第二の生物処理手段4の粒状活性炭としては、試薬尿素にて馴養を実施し、尿素分解能が既に発現しているものを用いた。
【0065】
このような生物処理装置において、模擬原水1を前処理システム1で前処理した後、第一の供給機構6からは何も添加せずに、第一の生物処理手段3に下向流にて通水した。通水速度SVは20/hr(毎時通水流量÷充填活性炭量)とした。なお、上記第一の生物処理手段3における通水処理においては、1日1回、10分間の逆洗を実施した。逆洗は、生物処理水にて、円筒容器下部から上部に向けて上向流にて、LV=25m/hr(毎時通水流量÷円筒容器断面積)にて実施した。この第一の生物処理手段の処理水(第二の生物処理手段4の給水)のTOC濃度は0.4〜0.6mg/Lであった。
【0066】
次に、この第一の生物処理手段3の処理水に対し、第二の供給機構7からはアンモニア性の窒素源として塩化アンモニウム(キシダ化学社製)を添加し、アンモニア性窒素(NH−N)濃度を約0.2mg/LasNとした。また、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウム(商品名:サンラック、工業用12%次亜塩素酸ナトリウム、本町化学工業社製)を添加し、全残留塩素濃度を約0.5mg/LasClとした。これらを添加した処理水を第二の生物処理手段4に下向流にて通水した。通水速度SVは20/hr(毎時通水流量÷充填活性炭量)とした。なお、上記第二の生物処理手段4における通水処理においては、1日1回、10分間の逆洗を実施した。逆洗は、生物処理水にて、円筒容器下部から上部に向けて上向流にて、LV=25m/hr(毎時通水流量÷円筒容器断面積)にて実施した。なお、第二の生物処理手段4の後段の第三の供給機構8から還元剤及びスライムコントロール剤の添加は実施しなかった。
【0067】
上述したような通水条件において、模擬原水1の連続通水を2週間実施した後の処理水W1の尿素濃度を測定した結果を表1に示す。また、処理水W1を模擬原水2に切り替えて、同様の条件によりさらに2週間の連続通水を行った。得られた処理水W1の尿素濃度を測定した結果を表1にあわせて示す。なお、この際の第一の生物処理手段の処理水(第二の生物処理手段4の給水)のTOC濃度は0.3〜0.5mg/Lであった。
【0068】
尿素濃度の分析の手順は以下の通りである。すなわち、まず、検水の全残留塩素濃度をDPD法にて測定し、相当量の重亜硫酸ナトリウムで還元処理する(その後、DPD法にて全残留塩素を測定して、0.02mg/L未満であることを確認する。)。次に、この還元処理した検水をイオン交換樹脂(「KR−UM1」、栗田工業社製)にSV50/hrで通水し、脱イオン処理してロータリーエバポレータにて10〜100倍に濃縮した後、ジアセチルモノオキシム法にて尿素濃度を定量する。
【0069】
〔比較例1〕
実施例1において、第一の生物処理手段3を設けなかった以外は、同様にして模擬原水1及び模擬原水2の処理を行った。なお、この際、第二の供給機構7からは、塩化アンモニウムは添加したが、次亜塩素酸ナトリウムの添加は行わなかった。これらの模擬原水1及び模擬原水2の処理水W1の尿素濃度を測定した結果を表1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
表1から明らかなように、二段で生物処理を行った実施例1では、TOC濃度の低い模擬原水1の場合で処理水W1の尿素濃度2μg/L未満であり、TOC濃度の高い模擬原水2の場合でも処理水W1の尿素濃度2μg/L未満と尿素濃度を低く維持することができた。これに対し、一段で生物処理を行った比較例1では、TOC濃度の低い模擬原水1の場合には処理水W1の尿素濃度2μg/L未満であったが、TOC濃度の高い模擬原水2では、処理水W1の尿素濃度10〜20μg/Lとなった。
【0072】
これは実施例1では、原水Wに易分解性の有機物が含まれていても第一の生物処理手段3でこれを除去することで、第二の生物処理手段4での尿素分解性能を維持できたのに対し、比較例1では第一の生物処理手段3を有しないので、易分解性の有機物により第二の生物処理手段4でBOD資化細菌の増殖・活性が高まることにより、尿素除去効率の高い硝化菌群の失活に繋がり、尿素除去性能が低下したためと考えられる。
【0073】
このような生物処理装置を超純水の製造に適用することで、原水中の尿素を高度に除去することができる超純水製造方法とすることができる。
【符号の説明】
【0074】
3…第一の生物処理手段
4…第二の生物処理手段
7…第二の供給機構(栄養源添加)
W…原水
W1…処理水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を含有する原水を生物処理して得られた処理水を純水製造装置で処理する超純水製造方法において、
前記生物処理が、第一の生物処理手段と、第二の生物処理手段とからなり、前記第一の生物処理手段の処理水に、前記第二の生物処理手段の栄養源を添加することを特徴とする超純水製造方法。
【請求項2】
前記第一の生物処理手段が、生物担持担体の固定床を有する生物処理手段であることを特徴とする請求項1に記載の超純水製造方法。
【請求項3】
前記第二の生物処理手段が、生物担持担体の固定床を有する生物処理手段であることを特徴とする請求項1に記載の超純水製造方法。
【請求項4】
前記第二の生物処理手段の栄養源が、窒素源であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の超純水製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−86124(P2012−86124A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233530(P2010−233530)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】