説明

超速硬セメント組成物、超速硬モルタル組成物、及び超速硬グラウトモルタル

【課題】流動性、ブリーディングの防止、充分な可使時間の確保などの他、低温時の初期強度発現性と、硬化前の沈下現象の改善や乾燥状態に置かれた際のひび割れ抵抗性などの効果を奏する超速硬セメント組成物、超速硬モルタル組成物及び超速硬グラウトモルタルを提供する。
【解決手段】ポルトランドセメントと、CaO/Alモル比が1.25〜1.75の非晶質カルシウムアルミネートと、無水セッコウと、アルカリ金属アルミン酸塩と、凝結調整剤と、ガス発泡物質とを含有してなる超速硬セメント組成物である。非晶質カルシウムアルミネートの強熱減量が0.3〜2%であることが好ましい。さらに、超速硬セメント組成物に最骨材を配合した超速硬モルタル組成物と、これに水を加えた超速硬グラウトモルタルを構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、土木・建築業界において使用される超速硬セメント組成物、超速硬モルタル組成物及び超速硬グラウトモルタルに関する。
【背景技術】
【0002】
超速硬性で自己充填性やセルフレベリング性をもつ超速硬グラウトモルタルは合理化施工には欠かすことのできない材料である。超速硬グラウトモルタルは様々なものが提案されている(特許文献1〜特許文献4)。超速硬グラウトモルタルは、材齢3時間で所要の強度を発現し、硬化後に程よい膨張性を示すことから、構造物との強固な一体化を早期に実現可能な魅力ある材料である。
【0003】
しかしながら、従来の超速硬グラウトモルタルは、15℃を下回る低温条件下では、殊に、10℃以下では、初期の強度発現性が乏しいという課題を有するものであった。また、硬化時には程よい膨張性を呈すること、さらに硬化が迅速に進むことから、通常のグラウトモルタルと比べるとひび割れを生じにくい材料であるが、硬化する前の“まだ固まらない状態”の段階で極度の乾燥状態におかれると、ひび割れを生じる場合もあり、そのひび割れ抵抗性の更なる向上が求められていた。
【0004】
近年では、超速硬グラウトモルタルに対する要求は益々高まっており、従来の超速硬グラウトモルタルの要求性能である、優れた流動性、ブリーディングの防止、充分な可使時間の確保などについても更なる向上が求められている現状にある。
【0005】
【特許文献1】特開平3−12350号公報
【特許文献2】特開平1−230455号公報
【特許文献3】特開平11−21160号公報
【特許文献4】特開平11−139859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、流動性、ブリーディングの防止、充分な可使時間の確保などの要求性能をより高めることに加えて、従来の超速硬グラウトモルタルに要求されていた低温時の初期強度発現性と、硬化前の沈下現象の改善や乾燥状態に置かれた際のひび割れ抵抗性の向上を達成できる超速硬セメント組成物、超速硬モルタル組成物及び超速硬グラウトモルタルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(1)ポルトランドセメントと、CaO/Alモル比が1.25〜1.75の非晶質カルシウムアルミネートと、無水セッコウと、アルカリ金属アルミン酸塩と、凝結調整剤と、ガス発泡物質とを含有してなる超速硬セメント組成物、(2)非晶質カルシウムアルミネートの強熱減量が0.3〜2%である(1)の超速硬セメント組成物、(3)ポルトランドセメントと非晶質カルシウムアルミネートと無水セッコウからなる結合材100部中、非晶質カルシウムアルミネートと無水セッコウからなる急硬成分が10〜50部である(1)又は(2)に記載の超速硬セメント組成物、(4)非晶質カルシウムアルミネートと無水セッコウからなる急硬成分100部中、非晶質カルシウムアルミネート30〜70部である(1)〜(3)のいずれかの超速硬セメント組成物、(5)ポルトランドセメントと非晶質カルシウムアルミネートと無水セッコウからなる結合材100部に対して、アルカリ金属アルミン酸塩が0.01〜0.3部である(1)〜(4)のいずれかの超速硬セメント組成物、(6)凝結調整剤が、アルカリ金属炭酸塩と有機酸の混合物である(1)〜(5)のいずれかの超速硬セメント組成物、(7)ポルトランドセメントが早強セメントである(1)〜(6)のいずれかの超速硬セメント組成物、(8)(1)〜(7)いずれかの超速硬セメント組成物と細骨材を含有してなる超速硬モルタル組成物、(9)(8)の超速硬モルタル組成物と水とを含有してなるJ14ロート流下値が8±3秒である超速硬グラウトモルタル、である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の超速硬セメント組成物、超速硬モルタル組成物及び超速硬グラウトモルタルは、流動性、ブリーディングの防止、充分な可使時間の確保などの他、低温時の初期強度発現性と、硬化前の沈下現象の改善や乾燥状態に置かれた際のひび割れ抵抗性などの効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明における部や%は特に規定しない限り質量基準で示す。
【0010】
本発明の非晶質カルシウムアルミネートは、CaOとAlを主成分とする非晶質の化合物を総称するものである。そのCaO/Alモル比が1.25〜1.75の範囲にあることが必要である。CaO/Alモル比が1.25未満では、初期の強度発現性が充分でなく。1.75を超えると可使時間の確保や流動性が充分でない場合がある。
【0011】
本発明の非晶質カルシウムアルミネートを得る方法としては、CaO原料とAl原料を電気炉等によって溶融した後急冷して得る方法が挙げられる。非晶質カルシウムアルミネートを製造する際のCaO原料としては、例えば、石灰石や貝殻等の炭酸カルシウム、消石灰等の水酸化カルシウム、あるいは生石灰等の酸化カルシウムを挙げることができる。また、Al原料としては、例えば、ボーキサイトやアルミ残灰と呼ばれる産業副産物の他、アルミ粉等が挙げられる。
【0012】
本発明の非晶質カルシウムアルミネートを工業的に得る場合、不純物が含まれることがある。その具体例としては、例えば、SiO、Fe、MgO、TiO、MnO、NaO、KO、LiO、S、P、及びF等が挙げられる。これらの不純物の存在は本発明の目的を実質的に阻害しない範囲では特に問題とはならない。具体的には、これらの不純物の合計が10%以下の範囲では特に問題とはならず、むしろ非晶質化を促すものもあり、好ましい側面もある。
【0013】
本発明の非晶質カルシウムアルミネートの粒度は、特に限定されるものではないが、通常、ブレーン比表面積値で3000〜9000cm/gの範囲にあり、4000〜8000cm/g程度のものがより好ましく、5000〜7000cm/gのものが最も好ましい。3000cm/g未満では初期強度発現性が充分でない場合があり、9000cm/gを超えるようなものは流動性や可使時間の確保が困難になる場合がある。
【0014】
本発明では、非晶質カルシウムアルミネートの強熱減量が0.3〜2%のものを使用することが好ましく、強熱減量が0.5〜1.5%の非晶質カルシウムアルミネートを使用することがより好ましい。非晶質カルシウムアルミネートの強熱減量が0.3%未満であると、流動性や可使時間の確保が充分でない場合や、硬化体に“斑点”が発生し易くなる場合がある。強熱減量が2%を超えると、初期強度の発現性が低下する場合がある。強熱減量を0.3〜2%とする方法は、特に限定されるものではないが、非晶質カルシウムアルミネートの粉砕時や保存時に水分や湿分を供給する方法や炭酸ガスを供給する方法などが挙げられる。ここで、強熱減量とは、800℃で30分間強熱したときの減量である。
【0015】
本発明の無水セッコウとは、特に限定されるものではないが、II型無水セッコウを選定することが可使時間を確保しつつ強度発現性に優れることから好ましく、殊に酸性の無水セッコウを使用することが好ましい。ここで、酸性の無水セッコウとは、1gの無水セッコウを純水100ccに入れて攪拌した際の上澄み液のpHが4.5以下となるものを意味する。
【0016】
本発明の無水セッコウの粒度は、特に限定されるものではないが、通常、ブレーン比表面積値で3000〜9000cm/gの範囲にあり、4000〜8000cm/g程度のものがより好ましい。3000cm/g未満では寸法安定性が悪くなる場合があり、9000cm/gを超えるようなものは流動性の確保が困難になる場合がある。
【0017】
本発明のポルトランドセメントとしては、普通、早強、超早強、低熱、及び中庸熱等の各種ポルトランドセメント、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ、又はシリカを混合した各種混合セメント、また、石灰石粉末等や高炉徐冷スラグ微粉末を混合したフィラーセメント、各種の産業廃棄物を主原料として製造される環境調和型セメント、いわゆるエコセメント等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上が併用可能である。本発明では、初期強度発現性の観点から、また、材料分離抵抗性の観点から、早強セメントを選定することが好ましい。
【0018】
本発明の非晶質カルシウムアルミネートと無水セッコウからなる急硬成分の配合割合は、ポルトランドセメントと非晶質カルシウムアルミネートと無水セッコウからなる結合材100部中、10〜50部が好ましく、20〜40部がより好ましい。10部未満では初期強度発現性や材料分離抵抗性が良好とならない場合があり、50部を超えると可使時間の確保が充分でない場合や、寸法安定性が悪くなる場合がある。
【0019】
ここで、非晶質カルシウムアルミネートと無水セッコウの配合割合は、非晶質カルシウムアルミネートと無水セッコウからなる急硬成分100部中、非晶質カルシウムアルミネート30〜70部が好ましく、40〜60部がより好ましい。30部未満では初期強度の発現性が充分でない場合や寸法安定性が悪くなる場合があり、70部を超えると、可使時間の確保が困難となる場合がある。無水セッコウは30〜70部が好ましく、40〜60部がより好ましい。30部未満では可使時間の確保が困難となる場合があり、70部を超えると初期強度の発現性が充分でない場合や寸法安定性が悪くなる場合がある。
【0020】
本発明のアルカリ金属アルミン酸塩とは、ROとAlとの化合物を総称するものであり、一般式、mRO・Al・nHOで示される。ここで、Rは、ナトリウムやカリウムを意味する。また、式中のmは0.5〜2の範囲にある。そして、nは0〜10の範囲にある。
【0021】
本発明では、アルカリ金属アルミン酸塩が低温時の初期強度の発現性を顕著にする効果を担う。特に無水塩の使用が流動性確保の面から好ましい。また、RO/Alモル比は0.8〜1.2の範囲が好ましい。RO/Alモル比が0.8未満では、低温でも初期強度発現性を改善する効果が小さく、逆に1.2を超えると、流動性を確保することが困難な場合がある。
【0022】
本発明のアルカリ金属アルミン酸塩の配合割合は、0.01〜0.3部が好ましく、より好ましくは0.03〜0.2部である。0.01部未満では、低温での初期強度発現性が充分に得られない。0.3部を超えて使用しても更なる効果の増進が期待できない。
【0023】
本発明では、ガス発泡物質を用いる。ガス発泡物質は、本発明の超速硬グラウトモルタルをグラウト材料として利用する場合、構造物を一体化させるために、まだ固まらない状態の超速硬グラウトモルタルが沈下や収縮するのを抑止する働きを担う。
ガス発泡物質の具体例としては、例えば、アルミ粉や炭素物質の他、過炭酸塩、過硫酸塩、過ホウ酸塩及び過マンガン酸塩等の過酸化物質が挙げられる。本発明では、炭素物質や、過炭酸塩、過硫酸塩、過ホウ酸塩及び過マンガン酸塩等の過酸化物質を用いることが、沈下抑制効果が大きいことから好ましい。中でも、過炭酸塩の使用が最も好ましい。
【0024】
本発明のガス発泡物質の配合割合は、特に限定されるものではないが、通常、アルミ粉ならば、ポルトランドセメントと非晶質カルシウムアルミネートと無水セッコウからなる結合材100部に対して、0.0001〜0.1部の範囲で使用でき、0.001〜0.01部の範囲がより好ましい。0.0001部未満では、充分な初期膨張効果を付与することができない場合があり、0.1部を超えて使用すると、過膨張となって強度発現性が悪くなる場合がある。ガス発泡物質が過酸化物ならば、0.001〜1部が好ましく、0.01〜0.1部がより好ましい。0.001部未満では充分な初期膨張効果を付与できない場合があり、1部を超えて使用すると、過膨張となり強度発現性が悪くなる場合がある。
また、ガス発泡物質が炭素質物質ならば、ポルトランドセメントと非晶質カルシウムアルミネートと無水セッコウからなる結合材100部に対して、1〜15部の範囲で使用でき、3〜10部の範囲がより好ましい。1部未満では、充分な初期膨張効果を付与することができない場合があり、15部を超えて使用すると、過膨張となって強度発現性が悪くなる場合がある。
【0025】
本発明の凝結調整剤とは、特に限定されるものではない。その具体例としては、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、コハク酸等のオキシカルボン酸及びそれらのナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、アルミニウム等の塩等の有機酸、さらに、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸リチウム、重炭酸アンモニウム等が挙げられる。本発明では、十分な可使時間と初期強度発現性の双方を満足する観点から、有機酸とアルカリ炭酸塩の併用が好ましい。
【0026】
本発明の凝結調整剤の使用量は、特に限定されるものではないが、通常、ポルトランドセメントと非晶質カルシウムアルミネートと無水セッコウからなる結合材100部に対して、0.1〜2部の範囲で使用でき、0.3〜1部の範囲が好ましい。0.1部未満では可使時間の確保が困難な場合があり、2部を超えて使用すると、強度発現性が悪くなる場合がある。
【0027】
本発明では必要に応じて流動化剤を併用できる。本発明で言う流動化剤とは、特に限定されるものではない。その具体例としては、例えば、ナフタレン系としては、エヌエムビー社製商品名「レオビルドSP−9シリーズ」、花王社製商品名「マイティ2000シリーズ」、及び日本製紙社製商品名「サンフローHS−100」等が挙げられる。また、メラミン系としては、日本シーカ社製商品名「シーカメント1000シリーズ」や日本製紙社製商品名「サンフローHS−40」等が挙げられる。さらに、アミノスルホン酸系としては、藤沢薬品工業社製商品名「パリックFP−200シリーズ」等が挙げられる。ポリカルボン酸系としては、エヌエムビー社製商品名「レオビルドSP−Sシリーズ」、グレースケミカルズ社製商品名「ダーレックススーパー100PHX」、及び竹本油脂社製商品名「チューポールHP−Sシリーズ」や「チューポールHP−11シリーズ」等が挙げられる。本発明ではこれら流動化剤のうちの一種又は二種以上が使用可能である。
【0028】
上記の流動化剤には粉末状のものも存在する。具体的には、ポリアルキルアリルスルホン酸塩の縮合物としては、第一工業製薬社製商品名「セルフロー110P」や出光石油化学社製商品名「IPC」等が、また、ナフタレンスルホン酸塩の縮合物としては、花王社製商品名「マイティ100」や三洋化成工業社製商品名「三洋レベロンP」等が、メラミン系のものとしては、シーカ社製「シーカメントFF」などが、さらに、ポリカルボン酸系としては、例えば、三菱化成社製商品名「クインフロー750」や花王社製商品名「CSD9000P」等が、リグニンスルホン酸系としては、例えば、日本製紙社製商品名「バニレックス」等が挙げられる。
【0029】
流動化剤の使用量は、特に限定されるものではないが、通常、ポルトランドセメントと非晶質カルシウムアルミネートと無水セッコウからなる結合材100部に対して、固形分換算で0.1部〜2部の範囲にあることが好ましい。0.1部未満では、流動性が充分でなく、2部を超えると材料分離を起す場合がある。
【0030】
本発明の細骨材は、発熱量や寸法変化の低減や耐久性の確保の観点から重要な役割を果たす。骨材の具体例としては、例えば、ケイ砂系、石灰石系、高炉水砕スラグ系、再生骨材系等に分類される。本発明では、耐酸性等の観点からケイ砂系を選定することが好ましい。
【0031】
本発明のポルトランドセメントと非晶質カルシウムアルミネートと無水セッコウからなる結合材100部に対して、細骨材の配合割合が50部未満では、発熱量が大きくなる場合がある。また、収縮が大きくなり、ひび割れが生じ易くなる傾向にある。逆に、200部を超えると優れた流動性や初期強度発現性が得られない場合がある。
【0032】
本発明の水の使用量は、使用する目的、用途や各材料の配合割合によって変化するため特に限定されるものではないが、通常、水結合材比で30〜40%の範囲が好ましく、33〜37%がより好ましい。水結合材比が30%未満では流動性を得ることが難しく、また、発熱量が極めて大きくなる。逆に40%を超えると強度発現性を確保することが困難な場合がある。また、本発明の超速硬モルタル組成物と水とを含有してなる超速硬グラウトモルタルの流動性は、J14ロート流下値(JSCEに準じて測定)が8±3秒であることが好ましい。
【0033】
本発明では、高炉水砕スラグ微粉末、フライアッシュ及びシリカヒューム等の潜在水硬性物質やポゾラン物質、石灰石微粉末、高炉徐冷スラグ微粉末、下水汚泥焼却灰やその溶融スラグ、都市ゴミ焼却灰やその溶融スラグ、パルプスラッジ焼却灰等の混和材料、消泡剤、増粘剤、防錆剤、防凍剤、収縮低減剤、スチールファイバー、ビニロンファイバー、炭素繊維、ワラストナイト繊維等の繊維物質、ポリマー、ベントナイト等の粘土鉱物、並びに、ハイドロタルサイト等のアニオン交換体等のうちの1種又は2種以上を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で使用することが可能である。
【0034】
本発明において、各材料の混合方法は特に限定されるものではなく、それぞれの材料を施工時に混合しても良いし、あらかじめ一部を、あるいは全部を混合しておいても差し支えない。
混合装置としては、既存の如何なる装置も使用可能であり、例えば、傾胴ミキサ、オムニミキサ、ヘンシェルミキサ、V型ミキサ、及びナウタミキサ等の使用が可能である。
【実施例1】
【0035】
ポルトランドセメント70部と、表1に示す各種の非晶質カルシウムアルミネート15部と無水セッコウ15部とを配合し、さらに、ポルトランドセメントと、非晶質カルシウムアルミネートと無水セッコウからなる結合材の合計100部に対して、アルカリ金属アルミン酸塩α0.05部と凝結調整剤0.7部とガス発泡物質イ0.05部を配合して超速硬セメント組成物を調製した。この超速硬セメント組成物100部に対して、細骨材150部を配合して超速硬モルタル組成物を調製した。混練り水は、ポルトランドセメントと非晶質カルシウムアルミネートと無水セッコウからなる結合材の合計100部に対して、35部を使用して調製した超速硬グラウトモルタルの流動性、可使時間、圧縮強度を10℃の低温環境下で測定した。また、非晶質カルシウムアルミネートの強熱減量の測定、モルタルのブリーディング、ひび割れ抵抗性の評価を行った。結果を表1に併記する。
【0036】
<使用材料>
ポルトランドセメント:市販の早強ポルトランドセメント、ブレーン比表面積4500cm/g
非晶質カルシウムアルミネートA:CaO/Alモル比1.0、SiO含有量3%、非晶質、ブレーン比表面積5000cm/g、強熱減量1.0%。
非晶質カルシウムアルミネートB:CaO/Alモル比1.25、SiO含有量3%、非晶質、ブレーン比表面積5000cm/g、強熱減量1.0%
非晶質カルシウムアルミネートC:CaO/Alモル比1.50、SiO含有量3%、非晶質、ブレーン比表面積5000cm/g、強熱減量1.0%
非晶質カルシウムアルミネートD:CaO/Alモル比1.75、SiO含有量3%、非晶質、ブレーン比表面積5000cm/g、強熱減量1.0%
非晶質カルシウムアルミネートE:CaO/Alモル比2.00、SiO含有量3%、非晶質、ブレーン比表面積5000cm/g、強熱減量1.0%
無水セッコウ:酸性のII型無水セッコウ、ブレーン比表面積4000cm/g、市販品
アルカリ金属アルミン酸塩α:アルミン酸ナトリウム、NaO/Alモル比1.0、無水塩
ガス発泡物質イ:試薬1級の過炭酸ナトリウム
凝結調整剤:試薬1級のクエン酸25部と試薬1級の炭酸カリウム75部の混合物
水:水道水
細骨材:石灰砂、4mm下品
【0037】
<測定方法>
結晶性:粉末X線回折法で確認した。
強熱減量:800℃で30分間強熱したときの減量を測定した。
流動性:JSCEに準じて、J14ロート流下値を測定して評価した。
可使時間:可使時間はJ14ロート流下値が20秒を超え、充分な流し込み出来なくなった時点とした。
初期膨張率:土木学会「膨張コンクリート設計施工指針(案)」付録2.付属書「膨張材を用いた充填モルタルの施工要領(案)」に従い測定。ただし、表中の−は収縮側、+は膨張側を示す。
圧縮強度:モルタルを型枠に詰めて4cm×4cmm×16cmの成形体を作成し、材齢3時間の圧縮強度をJIS R 5201に準じて測定した。
材料分離抵抗性:JSCE−F522−1999に準じ、5cmφ×50cmの円筒型ビニール袋にモルタルを充填して吊し、ブリーディング率を測定することによって材料分離抵抗性を評価した。
プラスティックひび割れ抵抗性:既設コンクリート上にグラウトモルタルを厚さ2cm、縦2m、横50cmの面積で打設し、送風機によって打設したグラウトモルタル表面に温風を吹き込んだ。材齢3間後にひび割れの有無を観察した。×は2本を超えてひび割れが発生。△はひび割れが1〜2本発生。○はひび割れの発生無し。
【0038】
【表1】

【0039】
表1より、本発明の超速硬セメント組成物を使用したモルタルは、流動性に優れ、可使時間が充分とれ、しかも低温での強度発現性が良好で初期に収縮が無く、さらに、ブリーディングが無く、ひび割れ抵抗性に優れていることが分かる。
【実施例2】
【0040】
非晶質カルシウムアルミネートCを使用し、強熱減量を表2に示すように変化したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に併記する。
【0041】
【表2】

【0042】
表2より、本発明の超速硬セメント組成物を使用したモルタルは、流動性に優れ、可使時間が充分とれ、しかも低温での強度発現性が良好で初期に収縮が無く、さらに、ブリーディングが無く、ひび割れ抵抗性に優れていることが分かる。
【実施例3】
【0043】
非晶質カルシウムアルミネートCを使用し、結合材100部中の急硬成分の配合割合を表3に示すように変化したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表3に併記する。
【表3】

【0044】
表3より、本発明の超速硬セメント組成物を使用したモルタルは、流動性に優れ、可使時間が充分とれ、しかも低温での強度発現性が良好で初期に収縮が無く、さらに、ブリーディングが無く、ひび割れ抵抗性に優れていることが分かる。
【実施例4】
【0045】
非晶質カルシウムアルミネートCと、無水セッコウや無水セッコウの代わりに半水セッコウ、二水セッコウを使用し、配合割合を非晶質カルシウムアルミネートと無水セッコウからなる急硬成分100部中、表4に示すように変化したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表4に併記する。
【0046】
<使用材料>
半水セッコウ:市販品、ブレーン比表面積4000cm/g
二水セッコウ:市販品、ブレーン比表面積4000cm/g
【0047】
【表4】

【0048】
表4より、本発明の超速硬セメント組成物を使用したモルタルは、流動性に優れ、可使時間が充分とれ、しかも低温での強度発現性が良好で初期に収縮が無く、さらに、ブリーディングが無く、ひび割れ抵抗性に優れていることが分かる。
【実施例5】
【0049】
非晶質カルシウムアルミネートCを使用し、アルカリ金属アルミン酸塩の種類と使用量を表5に示すように変化したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表5に併記する。
【0050】
<使用材料>
アルカリ金属アルミン酸塩β:アルミン酸ナトリウム、NaO/Alモル比1.0、含水塩、含水率20%
アルカリ金属アルミン酸塩γ:アルミン酸ナトリウム、NaO/Alモル比1.2、無水塩
アルカリ金属アルミン酸塩δ:アルミン酸カリウム、KO/Alモル比1.0、無水塩
【0051】
【表5】

【0052】
表5より、本発明の超速硬セメント組成物を使用したモルタルは、流動性に優れ、可使時間が充分とれ、しかも低温での強度発現性が良好で初期に収縮が無く、さらに、ブリーディングが無く、ひび割れ抵抗性に優れていることが分かる。
【実施例6】
【0053】
非晶質カルシウムアルミネートCを使用し、ガス発泡物質の種類と使用量を表6に示すように変化したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表6に併記する。
<使用材料>
ガス発泡物質ロ:市販コークス
ガス発泡物質ハ:試薬1級過ホウ酸ナトリウム
ガス発砲物質ニ:市販アルミ粉
【0054】
【表6】

【0055】
表6より、本発明の超速硬セメント組成物を使用したモルタルは、流動性に優れ、可使時間が充分とれ、しかも低温での強度発現性が良好で初期に収縮が無く、さらに、ブリーディングが無く、ひび割れ抵抗性に優れていることが分かる。
【実施例7】
【0056】
非晶質カルシウムアルミネートCを使用し、細骨材の配合割合を表7に示すように変化したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表7に併記する。
【0057】
【表7】

【0058】
表7より、本発明の超速硬セメント組成物を使用したモルタルは、流動性に優れ、可使時間が充分とれ、しかも低温での強度発現性が良好で初期に収縮が無く、さらに、ブリーディングが無く、ひび割れ抵抗性に優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の超速硬セメント組成物、超速硬モルタル組成物及び超速硬グラウトモルタルは、流動性、ブリーディングの防止、充分な可使時間の確保などの他、低温時の初期強度発現性と、硬化前の沈下現象の改善や乾燥状態に置かれた際のひび割れ抵抗性などの効果を奏するので、例えば、橋脚の鋼板巻き立て工法、大型しゅう座の充填工法、その他の間隙充填、セルフレベリング床材等、土木、建築分野において広範に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポルトランドセメントと、CaO/Alモル比が1.25〜1.75の非晶質カルシウムアルミネートと、無水セッコウと、アルカリ金属アルミン酸塩と、凝結調整剤と、ガス発泡物質とを含有してなる超速硬セメント組成物。
【請求項2】
非晶質カルシウムアルミネートの強熱減量が0.3〜2%である請求項1に記載の超速硬セメント組成物。
【請求項3】
ポルトランドセメントと非晶質カルシウムアルミネートと無水セッコウからなる結合材100部中、非晶質カルシウムアルミネートと無水セッコウからなる急硬成分が10〜50部である請求項1又は2に記載の超速硬セメント組成物。
【請求項4】
非晶質カルシウムアルミネートと無水セッコウからなる急硬成分100部中、非晶質カルシウムアルミネート30〜70部である請求項1〜3のいずれか1項に記載の超速硬セメント組成物。
【請求項5】
ポルトランドセメントと非晶質カルシウムアルミネートと無水セッコウからなる結合材100部に対して、アルカリ金属アルミン酸塩が0.01〜0.3部である請求項1〜4のいずれか1項に記載の超速硬セメント組成物。
【請求項6】
凝結調整剤が、アルカリ金属炭酸塩と有機酸の混合物である請求項1〜5のいずれか1項に記載の超速硬セメント組成物。
【請求項7】
ポルトランドセメントが早強セメントである請求項1〜6のいずれか1項に記載の超速硬セメント組成物。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか1項に記載の超速硬セメント組成物と細骨材を含有してなる超速硬モルタル組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の超速硬モルタル組成物と水とを含有してなるJ14ロート流下値が8±3秒である超速硬グラウトモルタル。

【公開番号】特開2007−297250(P2007−297250A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−128298(P2006−128298)
【出願日】平成18年5月2日(2006.5.2)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】