説明

超電導ケーブル線路

【課題】ケーブルが損傷しても、液体冷媒の流出量を少なくできる超電導ケーブル線路を提供する。
【解決手段】コア10と、その外側を覆う断熱管20とを備える超電導ケーブル線路である。この線路において、前記コア10は、冷媒の循環流路となるフォーマ11と、フォーマ11の外側に設けられる超電導導体層12と、この導体層12の外側に設けられる絶縁層13とを備える。そして、コア10と断熱管20との間に空間30が形成され、その空間内物質は流通されていない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導ケーブル線路に関するものである。特に、コアと断熱管とを有する超電導ケーブルにおいて、事故などにより断熱管が破損された場合でも、冷媒の漏洩量を少なくできる超電導ケーブル線路に関する。
【背景技術】
【0002】
3心一括超電導ケーブルとして、図4に記載のものがある(例えば特許文献1参照)。この超電導ケーブル100Pは、断熱管120内に3本のケーブルコア110を撚り合わせて収納させた構成である。
【0003】
断熱管120は、内管121と外管122とからなる二重管の間に断熱材(図示せず)が配置され、かつ二重管内が真空引きされた構成である。このうち、外管122の上には防食層123が形成されている。各ケーブルコア110は、中心から順にフォーマ111、超電導導体層112、絶縁層113、シールド層114、保護層115を備えている。
【0004】
ここで、フォーマ111は、例えば金属パイプで構成されており、そのパイプ内が液体窒素などの冷媒の流路となっている。超電導導体層112は、フォーマ111上に超電導線材を螺旋状に多層に巻回して構成される。絶縁層113は、半合成絶縁紙を巻回して構成される。シールド層114は、絶縁層113上に超電導導体層112と同様の超電導線材を螺旋状に巻回して構成される。このシールド層114には、ケーブル運転時、超電導導体層112に流れる電流と逆向きでほぼ同じ大きさの電流が誘起される。この誘導電流により生じる磁場にて、超電導導体層112から生じる磁場を打ち消し合い、ケーブルコア110外部への漏れ磁場をほぼゼロにすることができる。そして、通常、内管121と各ケーブルコア110とで囲まれる空間130が冷媒の流路となる。例えばフォーマ111内を冷媒の往路とした場合、内管121と各ケーブルコア110とで囲まれる空間130は冷媒の復路となり、超電導ケーブルに冷媒が循環される。
【0005】
【特許文献1】特開2006−156328号公報(図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の超電導ケーブルでは、外的損傷を受けた場合、多量の液体冷媒が漏洩し、種々の問題を発生させる。
【0007】
一般に、液体冷媒の循環は、ポンプで液体冷媒を圧送することにより行っている。そのため、コアと断熱管の間の空間が冷媒流路となっている上述のケーブルで断熱管が損傷すれば、冷媒流路の途中に開口部が形成されることになり、ポンプで圧送されてくる液体冷媒がどんどん開口部から流出することになる。つまり、極低温の液体冷媒が多量に流出することになり、開口部近傍の人が危険にさらされる虞や、物が損傷する虞がある。
【0008】
また、流出した液体冷媒は常温域にさらされるため、経時的に気化する。特に、液体冷媒が液体窒素で、その流出・気化がトンネルや建物内などの閉鎖空間で起こった場合、通常、このような閉鎖空間内には換気装置が設けられているが、それでも流出箇所近傍が一時的に酸欠状態となる可能性はより確実に排除しておきたい。
【0009】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、ケーブルが損傷しても、冷媒の流出量を少なくできる超電導ケーブル線路を提供することにある。
【0010】
本発明の別の目的は、ケーブルの損傷に伴って冷媒が流出しても、流出箇所近傍が酸欠状態とならない超電導ケーブル線路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明超電導ケーブル線路は、コアと、その外側を覆う断熱管とを備える超電導ケーブル線路である。この線路において、前記コアは、冷媒の循環流路となるフォーマと、フォーマの外側に設けられる超電導導体層と、この導体層の外側に設けられる絶縁層とを備える。そして、コアと断熱管との間に空間が形成され、その空間内物質が流通されないことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、コアと断熱管の間の空間には空間内物質が流通されていない。そのため、万一、断熱管が損傷して開口部があいても、冷媒は絶縁層の内側にあるフォーマ内を流通しているため、フォーマまで損傷しなければ冷媒が流出することがない。また、コアと断熱管の間の空間に、空間内物質が充填されていても、この空間内物質はポンプで圧送されていないため、断熱管から流出する量が限られる。
【0013】
本発明ケーブル線路の一形態としては、前記冷媒が液体空気であることが挙げられる。
【0014】
冷媒が液体空気であれば、フォーマに開口部が形成されるほどの大きな損傷をケーブルが受けたとしても、流出する冷媒は液体空気である。そのため、液体空気が流出して気化しても、流出箇所近傍が酸欠状態となることが回避できる。
【0015】
本発明ケーブル線路の一形態としては、空間内物質が液体であることが挙げられる。
【0016】
コアと断熱管の間の空間に液体があれば、この液体は断熱管内に位置するため、通常、液体空気に近い極低温状態となり、超電導導体層を冷却する冷媒と同様の機能を果たすことができる。また、この液体は循環されていない。つまり、この液体はポンプで圧送されていないため、万一、断熱管が損傷して開口部ができても、その開口部から次々と液体が外部に流出することはなく、流出量が低減できる。さらに、この液体が絶縁性であれば、超電導ケーブルの絶縁特性の安定化に寄与することができる。
【0017】
本発明ケーブル線路の一形態としては、前記空間内物質が絶縁気体であることが挙げられる。
【0018】
この構成によれば、コアと断熱管の間の空間に絶縁気体が充填されていることで、超電導ケーブルの絶縁特性の安定化を図ることができる。また、この絶縁気体は循環されていないため、万一、断熱管が損傷して開口部ができても、その開口部からの流出量は限定される。
【0019】
本発明ケーブル線路の一形態としては、前記空間内物質が絶縁気体である場合、その絶縁気体は冷媒温度で液化しない気体であることが挙げられる。
【0020】
断熱管とコアの間の空間内は、断熱管で常温域と隔離されるため、冷媒温度に近い極低温となるが、その状態でも内部の絶縁気体が液化しないため、空間内物質が液体の場合に比べてより高い断熱特性を得ることができる。
【0021】
本発明ケーブル線路の一形態としては、前記冷媒の循環流路が金属パイプで構成されていることが挙げられる。
【0022】
冷媒の循環流路が金属パイプであれば、熱伝導性に優れるため、フォーマ外周の超電導線材を効率的に冷却でき、かつ流路からの冷媒の漏洩を確実に防止することができる。
【0023】
本発明ケーブル線路の一形態としては、前記フォーマと超電導導体層との間にクッション層を備えることが挙げられる。
【0024】
この構成によれば、線路の運転時にケーブルを冷却した際、超電導導体層の熱収縮分の少なくとも一部をクッション層で吸収することができ、超電導線材に過大な張力が作用することを抑制できる。
【0025】
本発明ケーブル線路の一形態としては、前記超電導ケーブル線路が、DCケーブル線路であることが挙げられる。
【0026】
DCケーブル線路の場合、電車などの電力供給線路や、施設間、施設内に設けられる電力供給線路として好適に利用することができる。特に、単心ケーブル線路は、フォーマ内の冷媒流路を構成しやすい点で好適である。
【0027】
本発明ケーブル線路の一形態としては、実質的に閉鎖された空間に布設されてなることが挙げられる。
【0028】
実質的に閉鎖された空間内でケーブルが損傷し、冷媒が流出することがあっても、冷媒は空気であるため、閉鎖空間が酸欠状態になることがない。実質的に閉鎖された空間には、完全に内部と外部とが隔てられた建造物はもちろん、トンネルのように一部が開口していても、内部の自然換気が十分に行いにくい空間も含む。
【発明の効果】
【0029】
本発明超電導ケーブル線路によれば、冷媒流路は、絶縁層の内側のみであり、絶縁層の外側の空間では、空間内物質が循環されていないため、万一、断熱管が損傷しても、流出する空間内物質の量が限定され、冷媒が断熱管の外部に直ちに漏洩することはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0031】
本発明の超電導ケーブル線路には、コアと断熱管とを備える超電導ケーブルが利用される。ここでは、直流超電導ケーブル線路を例として、同線路の各構成要件を図1に基づいて詳しく説明する。
【0032】
[超電導ケーブル]
コア10は、断熱管20内に収納されて送電路を構成する部材で、図1では単心の超電導ケーブル100Sを示している。このコア10は、内側から順に、フォーマ11、内側超電導導体層12、絶縁層13を備える。図1では、さらに外側超電導導体層14、保護層15を順に備えている。そして、フォーマ11と内側超電導導体層12との間にはクッション層16を備える。
【0033】
<冷媒の循環流路>
まず、フォーマ11は、冷媒の循環流路11Aを構成する。そのため、フォーマ11の形態はパイプが好適である。パイプの場合、可とう性を考慮して、コルゲート管とすることが好ましい。特に、内外に連通する孔のないパイプであれば、フォーマ11外に冷媒が出ることを確実に防止し、コア10と断熱管20の間に形成される空間30と冷媒の流路11Aとを確実に隔離することができる。
【0034】
一方、内外に連通する孔のあるパイプやスパイラル帯の場合、冷媒はフォーマ11の外側に出て、絶縁層13に含浸され、さらにコア10の外側にも達する。その場合でも、コア10の外側に達した冷媒は、循環流通されていないため、万一、断熱管20が損傷して外部に漏れても、比較的少ない流出量で済む。フォーマ11の形態がパイプ、スパイラル帯のいずれの場合であっても、その材質は金属とすることが好ましい。具体的には、ステンレスや銅(銅合金)、鋼、アルミニウム(アルミニウム合金)などが挙げられる。特に、ケーブル事故時、フォーマ11を事故電流の流路とする場合は、冷媒通路の外側を銅などの高導電性常電導導体で構成し、フォーマ11とすることが好ましい。
【0035】
冷媒は、液体窒素や液体空気などが好適に利用できる。特に、超電導ケーブル線路の布設箇所が実質的に閉鎖空間であれば液体空気が好ましく、布設箇所が開放空間であれば液体窒素も利用できる。通常、冷媒はポンプと冷凍機とを備える冷却機構により、フォーマ内に循環流通される。
【0036】
<コアと断熱管との間の空間>
コア10の外径は、断熱管20の内径よりも小さいため、コア10と断熱管20との間には空間30が形成される。この空間30内は、液体や気体などの空間内物質が存在しても、その空間内物質が流通されていなければよい。
【0037】
例えば、内外に連通する孔のない金属パイプでフォーマ11を構成すれば、コア10と断熱管20の間の空間30には、冷媒が存在しないことになる。この場合、空間30内には、液体が充填される場合と、気体が充填される場合がある。空間内物質が液体の場合、冷媒と同じ物質であってもよいし、冷媒と異なる物質であっても良い。液体の空間内物質は、冷媒温度において液体である物質が好適である。例えば、冷媒が液体空気の場合、空間内物質には液体空気や液体窒素が選択できる。液体窒素や液体空気は、万一、断熱管20の外側に流出しても、循環供給されていないため、流出量が限られ外部環境に及ぼす影響が小さい。空間内物質が気体の場合、窒素ガスなどの絶縁性の気体とする。一方、内外に連通可能なフォーマ11とすれば、フォーマ11内の冷媒は絶縁層13に含浸され、さらにコア10と断熱管20の間の空間30にも充填されることになる。その場合でも、空間30内の冷媒は、絶縁層13などで実質的にフォーマ11内と区画されるため、流通されない。これらの空間内物質は、コア10と断熱管20とのクリアランスを十分にとることで、空間30内への充填作業を容易に行うことができる。
【0038】
また、空間内物質が気体の場合、空間30内が負圧の場合もありうる。例えば、窒素ガスを空間30内に充填していても、空間30内はフォーマ11内の冷媒により相当程度の低温に冷却されるため、窒素ガスが収縮して空間30内が負圧になることが想定される。空間30内が負圧になる場合、ケーブルの使用電圧が低い場合(例えば7kV以下程度)に適した構成である。
【0039】
冷媒が液体空気で空間内物質が気体の場合、この気体にはヘリウム、ネオンなど、冷媒温度で液化しない元素を利用することができる。冷媒温度で液化しない物質なら、空間30内を気体状態で満たすことができ、空間内物質が液体の場合に比べてより高い断熱性を実現することができる。
【0040】
<内側超電導導体層>
内側超電導導体層12には、酸化物超電導体からなるフィラメントが安定化材に包み込まれた超電導線材や、薄膜超電導線材の利用が考えられる。前者の一例としては、パウダーインチューブ法で作製されるBi系超電導線材が挙げられ、後者の一例としては、YBCO系薄膜超電導線材が挙げられる。いずれの場合も、フォーマ11の外側に螺旋状に多層に巻回されることで、内側超電導導体層12を形成する。
【0041】
<絶縁層>
絶縁層13は、クラフト紙、クラフト紙とプラスチックテープがラミネートされた複合紙、プラスチックテープなどが利用できる。これらは単独でまたは複数種を複合させて内側超電導導体層12の外側に巻回することで絶縁層13を構成できる。
【0042】
<外側超電導導体層>
絶縁層13の外側には、外側超電導導体層14が形成されている。この外側超電導導体層14も内側超電導導体層12と同様の超電導線材を螺旋状に巻回することで形成できる。本例の場合、直流ケーブルなので、内側超電導導体層12を電流往路とし、外側超電導導体層14を電流帰路とすることができる。交流ケーブルの場合、外側超電導導体層14をシールド層として利用することができる。
【0043】
<保護層>
保護層15は、外側超電導導体層14に流れる電流と断熱管20との絶縁を確保すると共に、外側超電導導体層15の機械的保護を図る。この保護層15には、絶縁性を備え、ある程度クッション性にも優れる材質が好適に利用できる。
【0044】
<断熱管>
一方、断熱管20はコア10の外側を全長に亘って覆って、断熱を確保する。ここでは、内管21と外管22の二重構造の断熱管としている。内管21と外管22との間には、輻射断熱材(図示せず)が配されると共に、両管21,22の間の空間が真空引きされている。
【0045】
[その他の構成]
<クッション層>
さらに、本例では、フォーマ11と内側超電導導体層12との間にクッション層16を形成している。クッション層には、厚さ方向へのクッション性に優れる材質が好適に利用できる。クッション層16により、ケーブルを冷却した際、内側超電導導体層12の熱収縮分を吸収して、同導体層12を形成する超電導線材に過度の張力が作用することを抑制している。
【0046】
<接続部、端末部、循環冷却機構>
ケーブル線路の形成には、超電導ケーブル100Sの他、図2に示すように、中間接続部40、端末部50、循環冷却機構60が利用される。中間接続部40は、上記構成の単位長からなる超電導ケーブル100Sを、複数本接続することに利用される。端末部50は、接続された複数本の超電導ケーブル100Sの端部から常温側に電力を取り出すための構成である。また、循環冷却機構60は、超電導ケーブル100Sのフォーマ内に液体空気を循環させる。より詳しくは、冷凍機61、ポンプ62、復路配管63を備える。例えば、フォーマ内を液体空気の往路とし、冷凍機61、ポンプ62を介して線路の一端の端末部50Sからフォーマ内に液体空気を圧送する。そして、他端側の端末部50Eを経て復路配管63を通って再度冷凍機61にまで液体空気を戻し、以下同様に液体空気の循環を行う。
【0047】
その他、図3に示すように、2条の超電導ケーブル100G、100Rを並列した線路構成とし、一方のケーブル100Gの冷媒流路を冷媒往路、他方のケーブル100Rの冷媒流路を冷媒復路に用いる構成も好適である。
【0048】
<ケーブル線路の種類>
本発明超電導ケーブル線路は、直流線路を例として説明したが、交流線路にも利用できる。その場合、外側超電導導体層がシールド層として機能することになる。
【実施例1】
【0049】
上記実施の形態で示した超電導ケーブル線路の一実施例を説明する。この実施例の基本構成は図1と同じである。以下、線路を構成する超電導ケーブルの構成を中心に説明する。
【0050】
実施例1では、フォーマ11をステンレス製のコルゲートパイプで構成した。このパイプには、内外に連通する孔は形成されていない。その外側にクラフト紙のクッション層16を介してBi2223系の超電導線材を螺旋状に巻回して内側超電導導体層12を形成する。次に、この導体層12の上に、ポリプロピレンとクラフト紙がラミネートされたPPLP(住友電気工業株式会社の登録商標)を内側超電導導体層12の外周側に巻回して絶縁層13を形成する。続いて、絶縁層13の外側に、内側超電導導体層12と同じ超電導線材を螺旋状に巻回して、外側超電導導体層14を形成する。さらに、外側超電導導体層14の外側にクラフト紙を巻回して保護層15を形成する。続いて、以上の構成の単心コアを真空二重構造の断熱管20内に収納して、超電導ケーブル100Sとした。そして、コア10と断熱管20との間の空間30には液体窒素を充填する。この充填に伴い、絶縁層13には液体窒素が含浸されるが、空間30内には液体窒素は充填されているだけで、循環されてはいない。断熱管20の内管21と外管22は、各々ステンレス製のコルゲートパイプで構成され、輻射断熱材にはスーパーインシュレーション(商品名)を用いた。
【0051】
このようなケーブルを用いて超電導ケーブル線路を構成すれば、冷媒となる液体空気はフォーマ11内だけを流れ、フォーマ11の外側に存在する液体窒素は全く流れない。そのため、万一、断熱管20が損傷しても、液体窒素は循環機構で圧送されているわけではないため、前記空間30から漏洩する液体窒素の量は限定される。そして、仮にケーブルがフォーマ11まで至るような損傷を受けた場合でも、漏洩するものは液体空気であり、気化しても周囲の環境に影響を及ぼすことがほとんどない。
【0052】
本例の変形例としては、空間30内の充填物質を液体窒素の代わりにガス窒素とすることが挙げられる。この場合、断熱管20が損傷しても空間30から流出するものの温度が液体窒素よりも高く、万一、周囲の人に流出ガスが接触しても、液体窒素の場合よりも安全性が高い。また、空間30内がガス窒素であるため、液体窒素の場合に比べて、より高い断熱特性を得ることができる。
【実施例2】
【0053】
次に、フォーマにスパイラル鋼帯を用いた本発明の一実施例を説明する。この実施例も基本的な構成は図1と同様である。以下、実施例1との相違点を中心に説明する。
【0054】
本例では、フォーマ11にスパイラル鋼帯を用いた点が最大の相違点である。この相違に伴って、液体空気はフォーマ11の外側に進出するため、絶縁層13に含浸され、さらにコア10と断熱管20との間の空間30にも充満される。但し、内側(外側)超電導導体層12(14)や絶縁層13を介してフォーマ11内の液体空気と前記空間30内の液体空気とは実質的に分離されるため、フォーマ11内の液体空気だけが循環され、前記空間30内の液体空気は循環されないことになる。
【0055】
本例の場合、断熱管20が損傷すれば、前記空間30内の液体空気が流出する。しかし、この空間30内の液体空気は循環機構で圧送されているわけではないため、損傷箇所からどんどんと流出することがなく、流出量は限られる。その上、流出する液体は空気であるため、流出しても周囲の環境に及ぼす影響が非常に小さい。そして、仮にフォーマ11まで損傷しても、やはりフォーマ11内から流出するものは液体空気であるため、流出箇所近傍の酸欠を回避できる。
【0056】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、上記実施例では単心の直流ケーブルについて説明したが、3心一括超電導ケーブルとすることや、交流ケーブルとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明超電導ケーブル線路は、電力輸送路として利用できる。特に、一般建造物などの実質的に閉鎖された空間を布設経路中に有する場合に、好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明線路に用いる超電導ケーブルの一例を示す断面図である。
【図2】本発明線路に係る実施例を示す概略構成図である。
【図3】本発明線路に係る別の実施例を示す概略構成図である。
【図4】従来の線路に用いる超電導ケーブルの断面図である。
【符号の説明】
【0059】
100S 単心超電導ケーブル
10 ケーブルコア
11 フォーマ 11A 循環流路 12 内側超電導導体層 13 絶縁層
14 外側超電導導体層 15 保護層 16 クッション層
20 断熱管 21 内管 22 外管 23 防食層
30 空間
40 中間接続部 50、50S、50E 端末部
60 循環冷却機構 61 冷凍機 62 ポンプ 63 復路配管
100G、100R 超電導ケーブル
100P 三心超電導ケーブル
120 断熱管 121 内管 122 外管 123 防食層
110 ケーブルコア
111 フォーマ 112 超電導導体層 113 絶縁層 114 シールド層
115 保護層
130 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、その外側を覆う断熱管とを備える超電導ケーブル線路であって、
前記コアは、
冷媒の循環流路となるフォーマと、
フォーマの外側に設けられる超電導導体層と、
この導体層の外側に設けられる絶縁層とを備え、
前記コアと断熱管との間に空間が形成され、その空間内物質が流通されないことを特徴とする超電導ケーブル線路。
【請求項2】
前記冷媒が液体空気であることを特徴とする請求項1に記載の超電導ケーブル線路。
【請求項3】
前記空間内物質が液体であることを特徴とする請求項1または2に記載の超電導ケーブル線路。
【請求項4】
前記空間内物質が絶縁気体であることを特徴とする請求項1または2に記載の超電導ケーブル線路。
【請求項5】
前記絶縁気体が冷媒温度で液化しない気体であることを特徴とする請求項4に記載の超電導ケーブル線路。
【請求項6】
前記冷媒の循環流路が金属パイプで構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の超電導ケーブル線路。
【請求項7】
前記フォーマと超電導導体層との間にクッション層を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の超電導ケーブル線路。
【請求項8】
前記超電導ケーブル線路が、DCケーブル線路であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の超電導ケーブル線路。
【請求項9】
実質的に閉鎖された空間に布設されてなることを特徴とする請求項2〜8のいずれか1項に記載の超電導ケーブル線路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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