説明

超音波を組織に照射するための方法および装置

【課題】超音波パルスを用いて、措置すべき組織部位に超音波を照射するための方法および装置の提供。
【解決手段】組織における予備設定された熱作用Tおよび予備設定された機械的作用Mを有する組織内への超音波照射用照射手段2を制御するための方法において、それぞれのパルス幅を持つ順次の超音波パルスが照射され、さらにこれらの超音波パルスのデューティ比が超音波の熱および機械的作用(T,M)に応じて設定されることを特徴とする方法および装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波パルスを用いて、措置すべき組織部位に超音波を照射するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波は医療技術において、一方では撮像法における診断用補助手段として使用され、他方では治療的にも適用される。超音波は組織において、振動および熱として作用する密度波を生じる。そのため、超音波照射により一方では、軟質組織におけるマイクロマッサージのように機能する機械的作用を発揮するが、それは例えば組織ホルモンの放出を刺激して、物質代謝および筋肉状態に対する影響を及ぼす。治療用超音波のこの機械的成分の刺激作用は、組織再生に好影響を与え得る。治療用超音波の熱的成分は、例えば温熱療法において利用される組織加熱をもたらす。
【0003】
治療用超音波は、連続的にも、またパルス形態でも使用される。連続照射では、適切な振動発生装置が予備設定された超音波周波数を有する超音波を連続的に生成する。パルス状超音波では、超音波のパルスが生成される。これらの超音波パルスは時間的なパルス幅または長さを有するが、それぞれの超音波周波数の超音波が照射される。
【0004】
次に来るのは、何らの照射も行われない照射休止期間である。このような超音波パルスの時間単位あたり回数が、パルス周波数となる。照射休止が消滅する境界では、連続的超音波が生じる。
【0005】
照射された超音波の治療的作用は、特に選択された超音波周波数、適用時間並びに照射された超音波パルスの性質による。パルス・パラメータとして挙げられるのは、例えばパルス幅、照射休止の長さ、超音波周波数、超音波振幅、パルス周波数などである。その際に療法士は、治療用超音波のどのような出力および信号形状を適用すべきかを考慮しなければならないが、個別ケースにおける判断は容易でない。超音波治療による組織における処置深さの厳密な設定も、困難であることがしばしばである。
【0006】
これまでに提案されているのは、例えば種々の超音波周波数を持つ超音波エネルギーが複数の超音波送信器により同時に処置すべき組織に照射することである。ドイツ特許出願DE 10306795 A1では、種々の周波数の複数の超音波が同時に組織内の共通焦点領域において作用するそのような超音波装置が開示されている。但し、そこで不利となるのは、複数の超音波源による実施コスト、並びに周波数、パルス長さ、照射出力などの多くのパラメータを確定しなければならない療法士自身による操作である。
【特許文献1】ドイツ特許出願DE 10306795 A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的はそれぞれの治療上の要求事項に対して療法士により特に容易に適合できる超音波照射方法を提供することにある。さらに、処置深さに関する自在な設定が可能であればよい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は特許請求の範囲1項に基づく組織内への超音波照射方法により達成され、さらにこの目的を達成するのは、特許請求の範囲14項の特徴を有する組織内への超音波照射装置である。
【0009】
当該請求項によれば、組織における予備設定された熱作用および予備設定された機械的作用を有する組織内への超音波照射用照射手段を制御するための方法が提案されており、その際にそれぞれのパルス幅を持つ順次の超音波パルスが照射され、さらに超音波パルスのデューティ比が超音波の熱および機械的作用に応じて設定される。
【0010】
本発明にしたがって、各療法士は処置すべき組織における熱作用および所望の機械的作用のいずれも、自己の治療要件にしたがってプリセットできる。さらに本発明にしたがって、逐次超音波を組織内に照射するが、特に超音波の周期的パルス状照射におけるそのデューティ比、つまり超音波出力が照射される時間に対する周期時間の比率が自動的に決定される。照射手段として公知なのは、適切な振動発生装置を備えた超音波ヘッドである。常用されるのは、ピエゾ式振動発生装置を備えた音響ヘッドである。
【0011】
本発明に基づく方法の好ましい実施形態において、下記の手順が実施される。
−機械的作用に対する機械的作用パラメータの予備設定
−熱作用に対する熱作用パラメータの予備設定
−熱作用パラメータおよび機械的作用パラメータに応じたデューティ比の決定
−決定されたデューティ比を有する超音波パルスを照射するための照射手段の稼働および停止。
【0012】
この照射手段の稼働および停止により、本発明に基づくパルス幅およびシーケンスが達成される。
【0013】
この場合に特に好適なのは、発せられた超音波出力の振幅を機械的作用パラメータとして使用することである。それは通常はW/cm単位で表され、基本的に音波の振幅に左右される。超音波のこの機械的成分の生物学的作用は、組織における可逆的マイクロ・キャビテーションおよび液体移動に基づく。したがって、振幅は療法士にとって視覚的に理解しやすい有利な機械的作用パラメータである。
【0014】
熱作用パラメータとして好適に使用されるのは、組織内に有効に照射される超音波出力である。大半が摩擦に変る照射された超音波出力によりブラウン運動および分子摩擦が増大するが、それにより組織では温度上昇が生じる。それぞれの加熱は、超音波の振幅だけでなく、周波数および投入された総エネルギー、さらに適用時間によっても影響される。
【0015】
予備設定された機械的作用または対応する作用パラメータから、有利には最大可能な熱作用が算定される。
【0016】
超音波照射のための本発明に基づく方法の別の構成において、超音波パルスが異なる超音波周波数を有する。したがって、それぞれ本発明にしたがって決定されたデューティ比により順次に照射された超音波パルスは、浸透深さの特に精確な決定を、したがって超音波の温度、機械的および局所的な作用に関して調整しやすい治療形態を可能にする。
【0017】
組織における予備設定された組織深さでの予備設定された熱作用を有する組織内への超音波照射用照射手段を制御するための本発明に基づく方法の変更形態では、それぞれのパルス幅およびそれぞれの超音波周波数を持つ順次の超音波パルスが照射され、その際にこれらの超音波パルスのパルス幅比は予備設定された組織深さおよび超音波周波数に応じて調整される仕様である。
【0018】
好適には、下記の方法手順が実施される。
a)組織における超音波の熱作用に対する組織深さの予備設定;
b)少なくとも第1および第2の超音波周波数の予備設定、その際に各超音波周波数に対して組織内のそれぞれの浸透深さが割り当てられている;
c)熱作用および割り当てられた浸透深さに応じたパルス幅比の確定;並びに
d)確定されたパルス幅比を有する超音波パルスを逐次照射するための照射手段の起動および停止。
【0019】
ここで好適なのは、各超音波周波数に対して組織内のそれぞれの浸透深さが割り当てられることであり、2つの異なる超音波周波数は、組織における予備設定された処置深さ領域が2つの割り当てられた浸透深さの間にあるように選択される。
【0020】
特に好適には、異なる超音波周波数の周波数比は、組織における予備設定された処置深さが達成されるように選択される。異なる周波数を持つ複数の超音波パルスの本発明に基づく逐次照射は、治療中にいくつかの処置深さを達成するために所要の超音波出力を実質的に増加させる必要がないという利点を有する。これは、予備設定された単独の超音波周波数のみがパルス状に照射される場合である。
【0021】
有利には、熱作用パラメータおよび機械的作用パラメータ、デューティ比、周波数比および/または処置深さがディスプレイを介して表示される。
【0022】
該方法の特に好適な実施形態において、それぞれのデューティ比、パルス幅、周波数比、振幅および/または組織の種類がデータバンクに保存される。それにより、本発明に基づく方法では治療要件にしたがって特に簡便かつ適切な処置が可能となるが、前記要件は基本的に所望の熱作用および機械的作用を包括すると共に、場合によっては処置すべき各身体部位により左右される。
【0023】
さらに本発明により、少なくとも機械的作用、熱作用および/または組織における超音波の処置深さを設定するための入力装置、超音波パルスに対するデューティ比、パルス幅比および/または周波数比を算定して適切な制御信号を生成する制御装置、さらに該制御信号に応じて稼働および停止し、超音波パルスを発する少なくともひとつの超音波ヘッドを具備した組織内に超音波を照射するための装置が提供される。
【0024】
前記制御装置は、超音波を照射するための本発明に基づく方法を実施する。
【0025】
その際に好適には、設定された機械的作用および/または熱作用に対する表示手段が設けられる。例えば棒グラフとして作成される表示手段は、療法士に対して、超音波パルスの内部決定されたデューティ比および/または周波数比を導く設定済みおよび予備設定された機械的作用および熱作用のパラメータを極めて確実に表示することができる。それにより、当該超音波装置の特に簡便かつ視覚的な操作が可能となる。
【0026】
有利には、超音波ヘッドは多周波数ヘッドとして構成される。
【0027】
好適な実施形態において、制御装置に接続された保存装置が設けられるが、該装置には設定された機械的作用に対して、治療形態および組織種別、デューティ比および超音波周波数データが保存されている。したがって、所望の熱作用および機械的作用のあらゆる組み合わせに対して、デューティ比、周波数あるいはその他のパラメータに関する適切なパラメータ・セットをプログラミングすることができる。その際に、一方では実験シリーズから得られた経験値も使用できる。あるいは代案的に制御装置は予備設定された決定アルゴリズムにしたがってデューティ比を算定する。デューティ比に対する熱作用および機械的作用の好適な関係は、デューティ比が機械的作用パラメータと熱作用パラメータの比に比例していることを示している。
【0028】
さらに本発明は、保存手段上でマシン読取り可能な保存されたコンピュータ・プログラムを備えたコンピュータ・プログラム製品に関するが、該製品はコンピュータ上で本発明に基づく方法を実施させると共に、インターフェイスを介して照射手段制御用の該当制御信号をコンピュータに伝える。コンピュータ・プログラム製品として例示されるのは、フロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROM、あるいは本発明に基づく方法手順をコード化形式でコンピュータ・プログラムされた仕様として提供できるその他の記憶媒体である。
【0029】
本発明のその他の有利な構成および展開は、従請求の範囲並びに以下に図面を参照して説明されるいくつかの実施例の対象である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
図面において、特に他に指定がなければ、同一ないし機能の等しい要素には同じ参照記号が付けられている。
【0031】
図1は、超音波を照射するための本発明に基づく装置のブロック図を示す。装置1は、ここに示された実施例では、コントローラ3に接続された超音波ヘッド2を有する。コンピュータなどを使用して実現され得るコントローラ3は,制御信号CTRを超音波ヘッド2に送るが、該ヘッドはそれに応じて超音波を組織16に照射する。
【0032】
コントローラは制御装置4を有するが、該装置は適切なバスDBを介して保存装置5に接続されている。さらに入力装置6が設けられており、それにより例えば療法士は、各超音波治療法に対する所望の機械的作用パラメータおよび所望の熱作用パラメータを入力できる。表示装置7は例えば棒グラフ8,9により設定済みの作用パラメータを表示するが、別の表示装置つまりディスプレイ10,11を備えており、それらにより例えば浸透深さ、組織16への超音波の結合あるいは具体的な超音波治療法の詳細などが表示される。表示装置7および入力装置6は、適切な制御回路CT1,CT2を介して制御装置4に接続されている。両方の棒グラフ8,9は、操作者または療法士に対して、有効出力Peffの形式での治療すべき組織16に対する設定済みの熱生物学的作用Tを例えばW/cmなどの適切な単位で、さらに出力振幅Ppeakの形式での照射されるべき組織16に対する設定済みの機械生物学的作用Mを同様にW/cm単位で表示する。所要浸透深さも、総処置時間と同様に設定できる。
【0033】
作用パラメータPeffおよびPpeakとは別に、制御装置4は同様に予備設定された周波数の超音波のパルス状照射に対する適切なデューティ比を計算または決定する。その際に例えば保存装置5には相関表が保存されており、それにより超音波周波数、有効出力Peffおよび最大出力振幅Ppeakの組み合わせに対して、それぞれのデューティ比T1/T2が記載されている。
【0034】
図2には、超音波パルスPの可能な時間シーケンスが例示されている。周期長さT2を持つ超音波パルスPが超音波ヘッド2により照射され、時間T1の間に予備設定された周波数、例えば800MHzの超音波パルスが発せられる。それに続くのが、超音波照射を持たない時間T3である。比T1/T2はデューティ比を表す。
【0035】
図3A−3Cには、本発明に基づく方法のフローチャートが示されている。方法および計算手順は基本的にコントローラ3の制御装置4により実施されるが、該装置は図3に示されている。シーケンスS0−S6に示されているのは、治療的超音波応用を実施するための主要手順である。
【0036】
手順S0において、超音波治療が開始される。手順S1では、超音波治療により達成されるべき所望の機械的作用の設定が行われる。図3Bは関連手順S10−S14を示す。療法士は手順S10において入力装置6のキー12,13を用いて機械的作用Mを入力する(手順S11)が、それは同時にディスプレイ7により棒グラフ8として定性的に表示される。要するに、療法士は、照射すべき出力の振幅Ppeakを入力する。それにより、手順S12ではそれから生じる超音波出力が決定され、手順S13において更新される。手順S14では最大可能な熱作用が決定されるが、それは設定された振幅Ppeakに依存する有効出力Peffから得られるものである。
【0037】
次の手順S2では、療法士により選択された組織内に照射すべき出力に基づいて所望の熱作用Tの設定が行われる。手順S20では、Peffの形式の熱作用パラメータとしての所望の熱作用Tの入力が行われる。これは、手順S21において入力装置6から制御装置4に伝達される。設定された所望の出力つまり線量から、適切な有効出力が決定される(手順S22)。
【0038】
次の手順S23では、制御装置4がパルス状超音波照射に対する該当デューティ比T1/T2を決定する。ここで、比Ppeak/Peffはデューティ比T1/T2に合致する。それぞれの超音波周波数を考慮した熱作用および機械的作用T,Mのデューティ比T1/T2に対する関係が、保存装置5に保存される。最終的に手順S24において、このように決定された超音波周波数とデューティ比T1/T2の組み合わせが実行され、さらに制御信号CTRにより超音波ヘッド2に伝達される。
【0039】
このようにして、操作者の治療的要件に正確に合致した超音波のパルス状照射が行われるが、操作者または療法士はパルス・シーケンスをデューティ比T1/T2に関して如何に設定すべきかを特に考慮する必要がない。
【0040】
治療中に機械的作用Mが手順S3において設定された作用パラメータの変更により変更されるならば、結果として所望の熱作用Tも作用パラメータの変更により変更されて実行されるのであり、改めて図3Cに示されたようなシーケンスが行われる。
【0041】
治療すべき組織が適切に照射されたならば、治療が終了し(手順S5)、超音波照射が停止される(手順S6)。
【0042】
図3Aに示された手順、特に各機械的作用および熱作用の実行(手順S3,S4)はプログラム形式でも存在し得るため、制御装置4は保存装置5から該当治療シーケンスを読み出して、超音波ヘッド2による超音波照射を行う。したがって、手順S5ではすべての治療手順が実行済みであるか、あるいは手順S3−S4を新たに遂行すべきであるかのチェックが行われる。
【0043】
本発明では、組織における機械的作用および熱作用M,Tに関して療法士にとって信頼の置ける作用パラメータからデューティ比T1/T2を自動的に決定および設定するだけでなく、異なる周波数を持つ超音波パルスの照射により特に優れた深部効果を実現すると共に、予備設定された処置深さ領域を特定的に照射することができる。
【0044】
超音波の浸透深さZは基本的に選択された超音波周波数fに依存しており、通常は周波数の増加につれて低下する。対象は半減値深さであり、そこでは組織における超音波照射の強さI(Z)が半分に減少する。800KHzでは、筋肉組織において超音波照射の強さはおよそ2.9cm後に半減する。しかし、3MHzでは、この半減値深さは0.77cmにすぎない。組織深さに応じた強さ低下は、ほとんど補間関係を示す。
I(Z)= I0 e-α・f・z (1式)
ここで、I0は深さz=0における実効値であり、αは組織に関係する崩壊パラメータ、またfは超音波周波数を表す。
【0045】
照射された超音波による組織深さzにおける熱発生については、加熱すべき各組織深さに対して最適な超音波周波数の存在することが実証できる。発生する熱は、組織深さおよび超音波周波数に応じた出力密度低下に関係する。その際に可能なのは、一定の深さ、例えば骨格筋組織で2cm以下の場合には、高周波数の方が低周波数よりも多くの出力を熱に変えることである。2cmを超える組織深さでは、当然ながら低周波数の方が高周波数よりも多くの熱を発生させる。したがって、超音波周波数の調整により、最大発熱を有する組織深さが選択できる。
【0046】
通常では、0.5−1.5MHzの低周波数が発熱に関してその最適作用をより深部において発揮する。3MHz以上の周波数では、最適深さは1cm台で、周波数への依存度は僅少である。特許出願人の調査によれば、0.7−2.5MHzの周波数範囲が超音波により生じる熱の調整のために有利である。
【0047】
通常では、超音波を照射するための超音波振動発生装置および超音波ヘッドは単一超音波周波数仕様となっている。いずれにしても、超音波ヘッドのこの基本周波数の整数倍が照射される。代表的な周波数は、800KHzの整数倍つまり1.6および2.4MHzである。発熱に対する最適深さは、0.8MHzでは4.17cm、また2.4MHzでは1.39cmである。但し、これらの深度間に位置する組織層を超音波適用による熱で効果的に治療するためには、0.8−2.4MHzの中間値を実現せねばならないであろう。これは、実際には不可能である。
【0048】
本発明では、超音波による熱発生に対する最適深さを模擬するために、基本周波数およびその3倍の周波数つまり2.4MHzを持つ超音波パルスを交互に照射することを提供する。それにより、照射さらた周波数間の切換えが組織における加熱時間定数よりも速く行われるかぎりは、境界深さ1.39cmと4.17cmとの間の深さが実現できる。加熱時間定数とは、蓄熱体つまりここでは組織領域の温度が熱損失により原温度のおよそ63%となる時間である。
【0049】
例えば2.78cmの発熱のための最適深さを模擬するために、本発明にしたがって例えば0.8MHzの超音波パルスを1秒間照射し、次に2.4MHzの超音波パルスを1秒間照射する。それにより、最適深さ2.78cm=(4.17cm+1.39cm)/2が得られる。この単純例では、各超音波パルスに対するデューティ比T1/T2=1である。所望の処置深さは、原則的に下記方程式にしたがって決定される。
Z(TG) = 1/TG [Z(TPI)/TPI + Z(TP2/TP2) (2式)
ここで、Z(TG)は所望の処置深さ、TG =TP1+TP2は本発明に基づく超音波サイクル時間、TP1およびTP2はそれぞれ周波数f1,f2を持つ両超音波パルスP1,P2のパルス長さである。Z(TP1)は最適な作用深さ、つまり超音波パルスP1に対して最大出力密度が熱に変る組織深さであり、TP2に対するZ(TP2)も同様である。
【0050】
図4には、本発明にしたがって得られた対応する超音波パルス・シーケンスが示されている。方程式2に基づく組織深さを得るために、それぞれTP1のパルス時間並びに周波数f1およびf2を有する超音波パルスP1およびP2が交互に提供される。図4には、さらにこれらの超音波パルスP1およびP2に対するそれぞれのデューティ比が示されているが、それは1ではない。
【0051】
したがって、本発明により、治療に対する精確な処置深さ並びに所望の熱作用および機械的作用が設定できる。操作者により予備設定された処置深さ並びに通常は超音波ヘッドにより予備設定された周波数において治療を実施するために、操作者はコントローラにおいて作用パラメータと処置深さを入力するだけでよい。適切な超音波パルス長さ、周波数およびデューティ比は、本発明に基づくコントローラ3により自動的に決定される。
【0052】
本発明は、療法士により設定された超音波治療に対する要件を特に簡便な方法で実施することができる。所望の処置深さを確定するための照射すべき超音波パルス並びにパルス時間および周波数のデューティ比の自動的決定は、正に自動的に行われる。種々の周波数の超音波パルスを逐次照射する本発明に基づく方法により、限定された数の異なる超音波周波数しか利用できない場合でも、連続可変処置深さを確定することができる。したがって、実地治療における超音波ヘッドの個数を低減することもできる。
【0053】
本発明は好ましい実施例に基づいて詳細に説明されたが、本発明はそれらに限定されるものではなく、多岐にわたる方法により変更可能である。図示された信号形態は、例示として理解すべきである。当然ながら、異なる超音波周波数も適用可能であり、また作用パラメータに対する種々の公知の表示手段が使用できる。作用パラメータとして、PpeakおよびPeffから導かれる当該値、例えばJ/cm単位で表される各照射エネルギーなども挙げられる。特に、本発明に基づくコントローラは、本発明に基づく信号形態を有する超音波信号を直接的に生成することもできる。したがって、制御信号を超音波信号として理解することさえ可能である。当然ながら、本発明のコンピュータ装備仕様をコンピュータ・プログラムとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】超音波を照射するための本発明に基づく装置のブロック図である。
【図2】超音波パルスの例示的な信号形状の図である。
【図3A】超音波を照射するための本発明に基づく方法のフローチャートである。
【図3B】超音波を照射するための本発明に基づく方法のフローチャートである。
【図3C】超音波を照射するための本発明に基づく方法のフローチャートである。
【図4】本発明に基づいて生成された超音波パルスの概略図である。
【符号の説明】
【0055】
S1−S24 方法手順
CT1,CT2,CTR 制御信号
DB データバス
M 機械的作用パラメータ
T 熱作用パラメータ
P1,P2 超音波パルス
T1,T2,T3 時間
TP1,TP2 パルス時間
TG サイクル時間
1 超音波発生装置
2 超音波ヘッド
3 コントローラ
4 制御装置
5 保存装置
6 入力装置
7 表示装置
8,9 棒グラフ
10,11 ディスプレイ
12,13 キー
14,15 キー
16 (人体)組織

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織(16)における予備設定された熱作用(T)および予備設定された機械的作用(M)を有する組織(16)内への超音波照射用照射手段(2)を制御するための方法において、それぞれのパルス幅(T1)を持つ順次の超音波パルス(P)が照射され、さらにこれらの超音波パルス(P)のデューティ比(T1/T2)が超音波の熱および機械的作用(T,M)に応じて設定されることを特徴とする方法。
【請求項2】
下記の方法手順が実施されることを特徴とする請求項1記載の方法:
(a)機械的作用に対する機械的作用パラメータ(Ppeak)の予備設定;
(b)熱作用に対する熱作用パラメータ(Peff)の予備設定;
(c)熱作用パラメータ(Peff)および機械的作用パラメータ(Ppeak)に応じたデューティ比(T1/T2)の決定;並びに
(d)決定されたデューティ比(T1/T2)を有する超音波パルスを照射するための照射手段の稼働および停止。
【請求項3】
発せられた超音波出力の振幅(Ppeak)が機械的作用パラメータとして使用されることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
有効に照射された超音波出力(Peff)が熱作用パラメータとして使用されることを特徴とする請求項1ないし3の少なくともいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
予備設定された機械的作用から、最大熱作用が算定されることを特徴とする請求項1ないし4の少なくともいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
音波パルスが異なる超音波周波数(f1,f2)を有することを特徴とする請求項1ないし5の少なくともいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
組織(16)における予備設定された組織深さ(z)での予備設定された熱作用(T)を有する組織(16)内への超音波照射用照射手段(2)を制御するための方法において、それぞれのパルス幅(TP1,TP2)およびそれぞれの超音波周波数(f1,f2)を持つ順次の超音波パルス(P1,P2)が照射され、その際にこれらの超音波パルス(P1,P2)のパルス幅比(TP1/TP2)は予備設定された組織深さ(z)および超音波周波数(f1,f2)に応じて調整されることを特徴とする方法。
【請求項8】
下記の方法手順が実施されることを特徴とする請求項7記載の方法:
(a)組織(16)における超音波の熱作用(T)に対する組織深さ(Z(TG))の予備設定;
(b)少なくとも第1および第2の超音波周波数(f1,f2)の予備設定、その際に各超音波周波数(f1,f2)に対して組織(16)内のそれぞれの浸透深さ(Z(TP1),Z(TP2))が割り当てられている;
(c)熱作用(T)および割り当てられた浸透深さ(Z(TP1),Z(TP2))に応じたパルス幅比(TP1/TP2)の確定;並びに
(d)確定されたパルス幅比(TP1/TP2)を有する超音波パルス(P1,P2)を逐次照射するための照射手段(2)の起動および停止。
【請求項9】
各超音波周波数(f1,f2)に対して組織内のそれぞれの浸透深さが割り当てられていること、また2つの異なる超音波周波数(f1,f2)は組織における予備設定された処置深さ領域が前記2つの割り当てられた浸透深さの間にあるように選択されることを特徴とする請求項6ないし8の少なくともいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
異なる超音波周波数(f1,f2)の周波数比(f1/f2)は組織における予備設定された処置深さ(z)が達成されるように選択されることを特徴とする請求項6ないし9の少なくともいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
デューティ比が1として設定されることを特徴とする請求項1ないし10の少なくともいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
熱作用パラメータ、機械的作用パラメータ、デューティ比、周波数比および/または処置深さがディスプレイ(7)を用いて表示されることを特徴とする請求項1ないし11の少なくともいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
予備設定された治療形態および/または組織種別に対するそれぞれのデューティ比、パルス幅、周波数比、および/または振幅がデータバンク(5)に保存されることを特徴とする請求項1ないし12の少なくともいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
下記装置を具備した組織内へ超音波を照射するための装置(1):
(a)少なくとも機械的作用、熱作用(M,T)および/または組織(16)における超音波の処置深さ(z)を調整するための入力装置(6);
(b)請求項1ないし13の少なくともいずれか一項に記載の方法が実施されるように構成され、超音波パルスに対するデューティ比(T1/T2)、パルス幅比(TP1/TP2)および/または周波数比(f1/f2)を算定して適切な制御信号(CTR)を生成する制御装置(4);
(c)該制御信号(CTR)に応じて稼働および停止し、超音波パルスを発する少なくともひとつの超音波ヘッド(2)。
【請求項15】
設定された機械的作用、熱作用および/または処置深さ(z)を表示する少なくとも一つの表示手段(8,9,10,11)が設けられていることを特徴とする請求項14記載の装置(1)。
【請求項16】
超音波ヘッド(2)は多周波数ヘッドとして構成されることを特徴とする請求項14または15記載の装置(1)。
【請求項17】
制御装置(4)に接続された保存装置(5)が設けられており、該装置は設定された機械的および熱作用、治療形態および組織種別のそれぞれのデューティ比および超音波周波数データを保存することを特徴とする請求項14ないし16の少なくともいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項18】
制御装置(4)は予備設定された決定アルゴリズムにしたがってデューティ比(T1/T2)を算定することを特徴とする請求項14ないし17の少なくともいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項19】
保存手段上でマシン読取り可能な保存されたコンピュータ・プログラムを備えたコンピュータ・プログラム製品であって、コンピュータ上で請求項1ないし13のいずれか一項に基づく方法を実施させると共に、コンピュータがインターフェイスを介して照射手段制御用の制御信号を出力することを特徴とするコンピュータ・プログラム製品。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−130484(P2007−130484A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−306803(P2006−306803)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(506161212)ツィマー メディツィンシステム ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】