説明

超音波プローブおよび超音波診断装置

【課題】 単極パルス駆動でありながら正負の対称性が良いバイポーラ波形を送信可能とする。
【解決手段】 電位点P1と超音波振動子71の第1の電極71aとの間に介挿される第1のトランジスタ72-1と、電位点P1とは異なる電位を持つ電位点P2と第1の電極71aとの間に介挿される第2のトランジスタ72-2と、電位点P1と第2の電極71bとの間に介挿される第3のトランジスタ72-3と、電位点P2と同じ電位を持つ電位点P3と第2の電極71bとの間に介挿される第4のトランジスタ72-4とを備える。パルサ74-1,74-2は、第1の送信期間に第1および第4のトランジスタ72-1,72-4をONし、第1の送信期間とは異なる第2の送信期間に第2および第3のトランジスタ72-2,72-3をONする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信回路を内蔵する超音波プローブおよび超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置本体のチャンネル数(例えば128ch)より多い素子を持つ1.5次元アレイや2次元アレイ等を備えた超音波プローブが開発されている。
【0003】
特許文献1には、超音波振動子を複数のサブアレイにグループ分けして信号処理する例が記載されている。
【0004】
これらの超音波プローブでは、プローブハンドル部分に各振動子に対応した送信回路や受信回路を配置し、プローブハンドル内で複数のサブアレイにグループ分けして受信信号を束ね、超音波診断装置本体との接続信号数を増やさない工夫がされている。
【0005】
例えば、3200素子の2次元アレイプローブで、受信素子を25素子を1つのグループにすると、128グループで3200素子を制御でき、128チャネルの本体にそのまま接続できる。グループ内では受信ビームの方向にあわせて微小な遅延時間制御を行うことで、電子スキャンを行うことができる。
【0006】
送信回路は、プローブハンドル内に備えた送信ビームフォーマで遅延時間を制御し、各素子毎に備えた送信回路で高電圧パルスを発生させる。装置本体から送信ビームフォーマへはシリアルバスを使うことで数本の制御線で遅延データや波形データを転送することができる。
【0007】
ところで、このようにプローブハンドル内に送受信回路を備える超音波プローブは、超音波振動子の変換ロスによる発熱の他、電子回路自身の電力消費による発熱が避けられないため、これらの低減が要求される。また、プローブハンドルの大きさおよび重さも、長時間手に持って疲れないように小さく抑えることが要求される。このため、プローブ内の電子回路には小型・低電力の回路が用いられ、送信回路はシンプルな単極パルス駆動回路で構成されている。
【0008】
一方、臨床的には分解能の良い高調波イメージングの要求が高く、パルスインバージョン映像法等の手法が好まれて用いられている。パルスインバージョン映像法は、180度位相をずらして2回送信し、これらの2回の送信に基づく2つのエコー信号を加算することによって、高調波成分のみを抽出して画像化する。
【0009】
しかし単極パルス駆動回路では、一般にバイポーラ波形を出力することができないため、パルスインバージョン映像法のような手法が使えない。このため、送信回路を単極パルス駆動回路で構成した場合には、ハイパスフィルタで基本波を除去するフィルタ法を用いた高調波イメージングが使われる。フィルタ法では、送信の基本波が除去しきれず、パルスインバージョン映像法に比べて画質が劣る。
【0010】
特許文献2には、超音波振動子の送信回路を接続した電極と反対側に受信回路を接続することで、単極パルス駆動回路でもパルスインバージョン影像法ができるようにする構成も提案されている。
【0011】
しかしながら特許文献2の構成であると、PchトランジスタとNchトランジスタとの特性差により、立上り時間および立下り時間が異なってしまうために、正負波形の対称性が悪いという不具合があった。
【特許文献1】特開2000−33087
【特許文献2】特開2004−89694
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上のように従来は、単極パルス駆動を採用した場合には、バイポーラ波形が出力できないか、出力できるとしてもその波形の対称性が悪く、パルスインバージョン影像法により高画質な画像を得ることが困難であった。
【0013】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、
単極パルス駆動でありながら正負の対称性が良いバイポーラ波形を送信できる超音波プローブおよび超音波診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以上の目的を達成するために本発明は、第1および第2の電極を有する超音波振動子と、第1の電位を持つ第1の電位点と前記第1の電極との間に介挿される第1のスイッチング素子と、前記第1の電位とは異なる第2の電位を持つ第2の電位点と前記第1の電極との間に介挿される第2のスイッチング素子と、前記第1の電位を持つ第3の電位点と前記第2の電極との間に介挿される第3のスイッチング素子と、前記第2の電位を持つ第4の電位点と前記第2の電極との間に介挿される第4のスイッチング素子と、第1の送信期間に前記第1および第4のスイッチング素子をONし、前記第1の送信期間とは異なる第2の送信期間に前記第2および第3のスイッチング素子をONする駆動手段とを備えて超音波プローブまたは超音波診断装置を構成した。
【0015】
前記の目的を達成するために別の本発明の超音波プローブは、所定方向に超音波を放射するための超音波振動子と、前記超音波振動子の超音波放射面に設けられる第1の電極と、前記超音波放射面と反対側の背面に設けられる第2の電極と、第1の電位点及び第2の電位点に対し、前記第1の電極と前記第2の電極を切り換えて接続するスイッチング手段とを備え、前記スイッチング手段は、前記第1の電位点が前記第1の電極と接続される時は前記第2の電位点を前記第2の電位点と接続し、前記第1の電位点が前記第2の電極と接続される時は前記第2の電位点を前記第1の電位点と接続することとした。
【0016】
前記の目的を達成するために別の本発明の超音波診断装置は、所定方向に超音波を放射するための超音波振動子と、前記超音波振動子の超音波放射面に設けられる第1の電極と、前記超音波放射面と反対側の背面に設けられる第2の電極と、第1の電位点及び第2の電位点に対し、前記第1の電極と前記第2の電極を切り換えて接続するスイッチング手段と、前記スイッチング手段を切り換えて前記超音波振動子を駆動させることにより、互いに極性の異なる複数回の超音波送受信を行うための送受信制御手段と、前記複数回の超音波送受信によってそれぞれ得られた複数の受信信号に基づいて、前記超音波送受信における超音波の基本波に対する高調波の受信信号成分を抽出する高調波信号抽出手段とを備えた。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、単極パルス駆動でありながら正負の対称性が良いバイポーラ波形を送信することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0019】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成を示す図である。
【0020】
第1の実施形態に係る超音波診断装置は、装置本体100および超音波プローブ200を備える。
【0021】
装置本体100はさらに、システムコントローラ1、ビームフォーマ2、スキャンコンバータ3および表示装置4を含む。超音波プローブ200はさらに、送信ビームフォーマ5、サブアレイビームフォーマ6および複数の振動子セット7を含む。
【0022】
システムコントローラ1は、送信ビームフォーマ5に遅延データおよび送信波形データを転送する。送信ビームフォーマ5は、遅延データおよび送信波形データに基づいて、所要の著音波ビームを形成するように複数の振動子セット7のそれぞれを制御する。
【0023】
サブアレイビームフォーマ6は、複数の振動子セット7のそれぞれから出力されるエコー信号を、複数の振動子セット7を複数にグループ分けして形成されたサブグループ内で微少遅延加算する。サブアレイビームフォーマ6は、サブグループ毎に得られる加算エコー信号をビームフォーマ2に送る。ビームフォーマ2は、サブグループ毎に得られる加算エコー信号の全てを遅延加算して、所要の受信ビームに関するエコー信号を得る。またビームフォーマ2は、パルスインバージョン映像法を適用するべきときには、上記のエコー信号から高調波成分を抽出する処理を行う。すなわちビームフォーマ2は、後述するように180度位相をずらした2回の送信に基づく2つのエコー信号を加算して基本波成分を相殺することによって、高調波成分を抽出する。スキャンコンバータ3は、ビームフォーマ2で得られたエコー信号を表示装置4での表示に適するデータに変換する。表示装置4は、スキャンコンバータ3で変換されたデータに基づいて超音波画像を表示する。
【0024】
さて複数の振動子セット7は、いずれも同じ構成を持つ。すなわち振動子セット7は、超音波振動子71、第1乃至第4のトランジスタ72-1〜72-4、パルサ74-1,74-2、第1乃至第4のダイオード73-1〜73-4および受信アンプ75を含む。
【0025】
超音波振動子71は、第1および第2の電極71a,71bを含み、この電極間に印加される電圧の変化に応じて超音波を放出する。第1の電極71aは、超音波放射面側に位置し、第2の電極71bは、超音波放射面と反対側の背面に位置する。複数の振動子セット7のそれぞれに含まれた超音波振動子71が配列されて、1.5次元アレイまたは2次元アレイを形成している。
【0026】
第1のトランジスタ72-1は、電圧がVppである電位点P1と第1の電極71aとの間に介挿されている。第2のトランジスタ72-2は、グランド電位である電位点P2と第1の電極71aとの間に介挿されている。第3のトランジスタ72-3は、電位点P1と第2の電極71bとの間に介挿されている。第4のトランジスタ72-4は、グランド電位である電位点P3と第2の電極71bとの間に介挿されている。第1および第2のトランジスタ72-1,72-2のゲートは、パルサ74-1に接続される。第3および第4のトランジスタ72-3,72-4のゲートは、パルサ74-2に接続される。第1乃至第4のトランジスタ72-1〜72-4としては、いずれも同種の素子を用いる。すなわち第1乃至第4のトランジスタ72-1〜72-4は、いずれも同じ特性を持つ。ここでは、同型のpチャネルトランジスタを採用している。
【0027】
第1および第2のダイオード73-1,73-2は、ともに電位点P2と第2のトランジスタ72-2との間に介挿される。第1および第2のダイオード73-1,73-2は、互いに逆向きで並列している。第3および第4のダイオード73-3,73-4は、ともに電位点P3と第4のトランジスタ72-4との間に介挿される。第3および第4のダイオード73-3,73-4は、互いに逆向きで並列している。
【0028】
パルサ74-1,74-2には、送信ビームフォーマ5から出力される制御信号が入力される。パルサ74-1は、上記の制御信号に基づいて、駆動信号S1,S2を第1および第2のダイオード73-1,73-2に送る。パルサ74-2は、上記の制御信号に基づいて、駆動信号S3,S4を第3および第4のダイオード73-3,73-4に送る。
【0029】
受信アンプ75は、差増増幅回路であって、2つの入力端子を備えている。一方の入力端子は、第2のトランジスタ72-2を介して第1の電極71aに接続されている。他方の入力端子は、第4のトランジスタ72-4を介して第2の電極71bに接続されている。つまり受信アンプ75には、超音波振動子71が受信したエコー信号が、第2および第4のトランジスタ72-2,72-4を介して入力される。受信アンプ75はこのエコー信号を増幅した上で、サブアレイビームフォーマ6へ送る。
【0030】
次に以上のように構成された超音波診断装置の動作について説明する。なお、この超音波診断装置の動作において従来よりの動作と異なるのは、超音波送信の際の超音波振動子71の駆動に関する動作であるので、以下ではこの点を中心として説明し、これ以外の動作の説明は省略する。
【0031】
図2は1回目と2回目の送信で180度反転させた波形を送信するシーケンスを示したタイミングチャートである。
【0032】
1回目の送信開始タイミングである時点t1から時間Tに渡る期間Paにおいて、パルサ74-1,74-2は駆動信号S1,S4をハイレベルとするとともに、駆動信号S2,S3をローレベルとする。なお、時間Tは、1/2波長に相当する時間である。例えば2MHzの超音波振動子であれば、時間Tは250nsecとなる。そうすると、第1のトランジスタ72-1および第4のトランジスタ72-4がオン状態となる。このときには図3に示すように、パルス電流が電位点P1から第1のトランジスタ72-1、超音波振動子71、第4のトランジスタ72-4および第4のダイオード73-4を通って電位点P3に流れ込む。
【0033】
期間Paが終了する時点t2から時間Tに渡る期間Pbにおいて、パルサ74-1,74-2は駆動信号S2,S3をハイレベルとするとともに、駆動信号S1,S4をローレベルとする。そうすると、第2のトランジスタ72-2および第3のトランジスタ72-3がオン状態となる。このときには図4に示すように、パルス電流が電位点P1から第3のトランジスタ72-3、超音波振動子71、第2のトランジスタ72-2および第1のダイオード73-1を通って電位点P2に流れ込む。
【0034】
このように、期間Pa,Pbにおいては、ともに同じ電圧が超音波振動子71に印加されるが、パルス電流の向きは逆になる。このため図2に示す送信音圧の波形から分かるように、音響出力は期間Paと期間Pbとでその正負が逆になる。
【0035】
音響出力を行わない期間Pc,Pfにおいては、パルサ74-1,74-2は駆動信号S2,S4をハイレベルとするとともに、駆動信号S1,S3をローレベルとする。そうすると、第2のトランジスタ72-2および第4のトランジスタ72-4がオン状態となる。このときには図5に示すように、超音波振動子71が超音波エコーを受けて発生するエコー信号は、第2のトランジスタ72-2または第4のトランジスタ72-4を介して受信アンプ75に入力される。第1乃至第4のダイオード73-1〜73-4は、高インピーダンスで超音波振動子71からのエコー信号を受信アンプ75に入力する。すなわち、第1乃至第4のダイオード73-1〜73-4は、T/Rスイッチの働きをする。
【0036】
2回目の送信開始タイミングである時点t3から時間Tに渡る期間Pdにおいて、パルサ74-1,74-2は駆動信号S2,S3をハイレベルとするとともに、駆動信号S1,S4をローレベルとする。従って、この期間Pdにおける状態は、期間Pbと同じである。
【0037】
期間Pdが終了する時点t4から時間Tに渡る期間Peにおいて、パルサ74-1,74-2は駆動信号S1,S4をハイレベルとするとともに、駆動信号S2,S3をローレベルとする。従って、この期間Peにおける状態は、期間Paと同じである。このため図2に示す送信音圧の波形から分かるように、音響出力は期間Pa,Pbと期間Pd,Peとで位相が180度反転する。
【0038】
このように第1の実施形態によれば、パルサ74-1,74-2が出力する駆動信号S1〜S4はいずれも単極パルスでありながら、音響出力を図2に示すようなバイポーラ波形にすることができ、さらにそのバイポーラ波形の位相を180度反転させることができる。そして、位相が180度異なる波形のいずれを送信する場合でも、その波形の立ち上がりを作るトランジスタは同じ特性を持つため、両波形の対称性が優れている。
【0039】
2回の送受信で高調波イメージングを行う映像法は、180度反転させたときの送信波形の対称性が画質性能に大きく影響する。このため、第1の実施形態の超音波診断装置によれば、高調波イメージングの画質を向上することができる。
【0040】
さらに、例えば従来の単極パルサで送信電圧100Vp-pを出力するためには、電源電圧100Vが必要であるが、第1の実施形態では、電源電圧は50Vで良い。また、両極パルサで同様に100Vp-pを出力するには、+50Vおよび−50Vの2種類の電圧源が必要であるが、本発明では+50Vの1種類の電圧源のみで良い。すなわち第1の実施形態によれば、電源回路の電圧出力が送信電圧のピーク値の1/2で良い。
【0041】
さらに、送信電圧が100Vp-pである場合、従来の単極パルサを作るためには、トランジスタの耐圧は100V以上が必要であるが、第1の実施形態では第1乃至第4のトランジスタ72-1〜72-4の耐圧は50Vで良い。すなわち第1の実施形態によれば、第1乃至第4のトランジスタ72-1〜72-4の耐圧が送信電圧のピーク値の1/2で良い。電源電圧を1/2とすれば、電流も1/2となるので、第1乃至第4のトランジスタ72-1〜72-4としては、安価で小型な素子を使用できる。
【0042】
なお、パルサ74-1,74-2が図6に示すように、1回目は駆動信号S1,S4をハイレベルとし、2回目は駆動信号S2,S3のみをハイレベルとすれば、1回目は正の1波、2回目は負の1波とした広帯域パルスを180度反転させて送信することが可能である。
【0043】
また、パルサ74-1,74-2が図7に示すように、パルス幅変調したパルスを各駆動信号に生じさせるようにすれば、高調波を抑えた送信をしたり、送信チャンネル毎に関数を与えて送信ウェイティングをすることもできる。
【0044】
(第2の実施形態)
図8は第2の実施形態に係る超音波診断装置の構成を示す図である。なお、図8において図1と同一部分は図示を省略するか、あるいは同一符号を付して示し、その詳細な説明は省略する。なお、第2の実施形態に係る超音波診断装置が第1の実施形態と異なるのは、振動子セット7に代えて振動子セット8を備えている点であるので、図8では1つの振動子セット8の構成のみを示している。
【0045】
振動子セット8は、超音波振動子71、第1乃至第4のトランジスタ72-1〜72-4、パルサ74-1,74-2、第1および第2のダイオード73-1,73-2および受信アンプ75を含む。
【0046】
すなわち振動子セット8は、振動子セット7における第3および第4のダイオード73-3,73-4を省略し、第4のトランジスタ72-4を直接に電位点P3に接続している。
【0047】
そして、受信アンプ75の反転入力端子には受信アンプ75の出力をフィードバックし、受信アンプ75の非反転入力端子を第2のトランジスタ72-2を介して第1の電極71aに接続している。
【0048】
振動子セット7をこのような構成の振動子セット8に変更しても、第1の実施形態で述べたような効果が同様に達成できる。
【0049】
そして受信エコーの検出は、図8に示すように受信アンプ75への片側入力によっても実現できる。
【0050】
(第3の実施形態)
図9は第3の実施形態に係る超音波診断装置の構成を示す図である。なお、図9において図1と同一部分は図示を省略するか、あるいは同一符号を付して示し、その詳細な説明は省略する。なお、第3の実施形態に係る超音波診断装置が第1の実施形態と異なるのは、振動子セット7に代えて振動子セット9を備えている点であるので、図9では1つの振動子セット9の構成のみを示している。
【0051】
振動子セット9は、超音波振動子71、第1乃至第4のトランジスタ72-1〜72-4、パルサ74-1,74-2、第1乃至第2のダイオード73-1〜73-4、受信アンプ75、コンデンサ91-1,91-2および抵抗器92-1,92-2を含む。
【0052】
すなわち振動子セット9は、振動子セット7にコンデンサ91-1,91-2および抵抗器92-1,92-2を追加している。コンデンサ91-1,91-2は、第2および第4のダイオード72-2,72-4と受信アンプ75の2つの入力端子との間にそれぞれ介挿されている。抵抗器92-1,92-2は、受信アンプ75の2つの入力端子とグランド電位の電位点との間に介挿されている。
【0053】
さらに振動子セット9においては、第1の電極71aが、第2のトランジスタ72-2と第1および第2のダイオード73-1,73-2を介して、電圧がVnnである電位点P4に接続されている。第2の電極71bも、第4のトランジスタ72-4と第3および第4のダイオード73-3,73-4を介して、電位点P4に接続されている。電圧Vnnは電圧Vppとは異なる値である。
【0054】
このような構成であると、2種類の電圧源が必要にはなるが、それ以外は第1の実施形態で述べたような効果が同様に達成できる。
【0055】
なお、エコー信号は、コンデンサ91-1および抵抗器92-1またはコンデンサ91-2および抵抗器92-2によって構成される交流カップリングを介して受信アンプ75へと導かれる。
【0056】
(第4の実施形態)
図10は第4の実施形態に係る超音波診断装置の構成を示す図である。なお、図10において図1と同一部分は図示を省略するか、あるいは同一符号を付して示し、その詳細な説明は省略する。なお、第4の実施形態に係る超音波診断装置が第1の実施形態と異なるのは、振動子セット7に代えて振動子セット10を備えている点であるので、図10では1つの振動子セット10の構成のみを示している。
【0057】
振動子セット10は、超音波振動子71、第1乃至第6のトランジスタ72-1〜72-6、第1乃至第2のダイオード73-1〜73-4、パルサ74-3,74-4および受信アンプ75を含む。
【0058】
すなわち振動子セット9は、振動子セット7に第5および第6のトランジスタ72-5,72-6を追加するとともに、パルサ74-1,74-2に代えてパルサ74-3,74-4を備えている。
【0059】
第5のトランジスタ72-5は、電圧がVnnである電位点P5と第1の電極71aとの間に介挿されている。第6のトランジスタ72-6は、電位点P5と第2電極71bとの間に介挿されている。第1、第2および第5のトランジスタ72-1,72-2,72-5のゲートは、パルサ74-3に接続される。第3、第4および第6のトランジスタ72-3,72-4,72-6のゲートは、パルサ74-4に接続される。第5および第6のトランジスタ72-5,72-6としては、いずれも第1乃至第4のトランジスタ72-1〜72-4と同種の素子を用いる。電圧Vnnは、電圧Vppとは逆極性である。
【0060】
パルサ74-3,74-4には、送信ビームフォーマ5から出力される制御信号が入力される。パルサ74-3は、上記の制御信号に基づいて、駆動信号S1,S2,S5を第1、第2および第5のダイオード73-1,73-2,73-5に送る。パルサ74-4は、上記の制御信号に基づいて、駆動信号S3,S4,S6を第3、第4および第6のダイオード73-3,73-4,73-6に送る。
【0061】
次に以上のように構成された超音波診断装置の動作について説明する。なお、この超音波診断装置の動作において従来よりの動作と異なるのは、超音波送信の際の超音波振動子71の駆動に関する動作であるので、以下ではこの点を中心として説明し、これ以外の動作の説明は省略する。
【0062】
図11は1回目と2回目の送信で180度反転させた波形を送信するシーケンスを示したタイミングチャートである。
【0063】
1回目の送信開始タイミングである時点t11から時間Tに渡る期間Pgにおいて、パルサ74-3,74-4は駆動信号S1,S4をハイレベルとするとともに、その他の駆動信号S2,S3,S5,S6をローレベルとする。そうすると、第1のトランジスタ72-1および第4のトランジスタ72-4がオン状態となり、パルス電流が電位点P1から第1のトランジスタ72-1、超音波振動子71、第4のトランジスタ72-4および第4のダイオード73-4を通って電位点P3に流れ込む。この様子は図3と同様である。
【0064】
期間Pgが終了する時点t12から時間Tに渡る期間Phにおいて、パルサ74-3,74-4は駆動信号S4,S5をハイレベルとするとともに、その他の駆動信号S1,S2,S3,S6をローレベルとする。そうすると、第4のトランジスタ72-4および第5のトランジスタ72-5がオン状態となり、パルス電流が電位点P5から第5のトランジスタ72-5、超音波振動子71、第4のトランジスタ72-4および第4のダイオード73-4を通って電位点P3に流れ込む。
【0065】
このように、期間Pg,Phにおいては、超音波振動子71におけるパルス電流の向きは同じになるが、超音波振動子71に印加される電圧は互いに逆極性になる。このため図11に示す送信音圧の波形から分かるように、音響出力は期間Pgと期間Phとでその正負が逆になる。
【0066】
音響出力を行わない期間Pi,Pmにおいては、パルサ74-3,74-4は駆動信号S2,S4をハイレベルとし、その他の駆動信号S1,S3,S5,S6をローレベルとする。そうすると、第2のトランジスタ72-2および第4のトランジスタ72-4がオン状態となる。この様子は図5と同様である。
【0067】
2回目の送信開始タイミングである時点t13から時間Tに渡る期間Pjにおいて、パルサ74-3,74-4は駆動信号S2,S3をハイレベルとし、その他の駆動信号S1,S4,S5,S6をローレベルとする。そうすると、第2のトランジスタ72-2および第3のトランジスタ72-3がオン状態となり、パルス電流が電位点P1から第3のトランジスタ72-3、超音波振動子71、第2のトランジスタ72-2および第1のダイオード73-1を通って電位点P2に流れ込む。この様子は図4と同様である。
【0068】
期間Pjが終了する時点t14から時間Tに渡る期間Pkにおいて、パルサ74-3,74-4は駆動信号S2,S6をハイレベルとするとともに、その他の駆動信号S1,S3,S4,S5をローレベルとする。そうすると、第2のトランジスタ72-2および第6のトランジスタ72-6がオン状態となり、パルス電流が電位点P5から第6のトランジスタ72-6、超音波振動子71、第2のトランジスタ72-2および第1のダイオード73-1を通って電位点P2に流れ込む。
【0069】
このように、期間Pj,Pkにおいては、超音波振動子71におけるパルス電流の向きは同じになるが、超音波振動子71に印加される電圧は互いに逆極性になる。このため図11に示す送信音圧の波形から分かるように、音響出力は期間Pjと期間Pkとでその正負が逆になる。
【0070】
そして、期間Pj,Pkにおけるパルス電流の向きは、期間Pg,Phにおけるそれとは逆になり、印加される電圧の変化は同様になるので、図11に示す送信音圧の波形から分かるように、音響出力は期間Pg,Phと期間Pj,Pkとで位相が180度反転する。
【0071】
かくして第4の実施形態においても、パルサ74-3,74-4が出力する駆動信号S1〜S6はいずれも単極パルスでありながら、音響出力を図11に示すようなバイポーラ波形にすることができ、さらにそのバイポーラ波形の位相を180度反転させることができる。そして、位相が180度異なる波形のいずれを送信する場合でも、その波形の立ち上がりを作るトランジスタは同じ特性を持つため、両波形の対称性が優れている。
【0072】
以上の各実施形態は、次のような種々の変形実施が可能である。
【0073】
超音波プローブ200に実装される回路の一部を装置本体100の側に備えることも可能である。例えば、超音波振動子71の両極から信号を引き出し本体に接続し、超音波振動子71以外の全ての回路を装置本体100の側に備えることも可能である。
【0074】
第1および第3のトランジスタ72-1,72-3は、ともに電圧がVppである別々の電位点に接続されても良い。第5および第6のトランジスタ72-5,72-6は、ともに電圧がVnnである別々の電位点に接続されても良い。
【0075】
なお、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、各実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成を示す図。
【図2】第1の実施形態において1回目と2回目の送信で180度反転させた波形を送信するシーケンスを示したタイミングチャート。
【図3】図1に示す振動子セット7におけるパルス電流の経路を示す図。
【図4】図1に示す振動子セット7におけるパルス電流の経路を示す図。
【図5】図1に示す振動子セット7においてエコー信号が流れる経路を示す図。
【図6】第1の実施形態において1回目と2回目の送信で180度反転させた波形を送信するシーケンスの変形例を示したタイミングチャート。
【図7】第1の実施形態において1回目と2回目の送信で180度反転させた波形を送信するシーケンスの変形例を示したタイミングチャート。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る超音波診断装置の構成を示す図。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る超音波診断装置の構成を示す図。
【図10】本発明の第4の実施形態に係る超音波診断装置の構成を示す図。
【図11】第4の実施形態において1回目と2回目の送信で180度反転させた波形を送信するシーケンスを示したタイミングチャート。
【符号の説明】
【0077】
1…システムコントローラ、2…ビームフォーマ、3…スキャンコンバータ、4…表示装置、5…送信ビームフォーマ、6…サブアレイビームフォーマ、7,8,9,10…振動子セット、71…超音波振動子、71a…第1の電極、71b…第2の電極、72-1…第1のトランジスタ、72-2…第2のトランジスタ、72-3…第3のトランジスタ、72-4…第4のトランジスタ、72-5…第5のトランジスタ、72-6…第6のトランジスタ、73-1…第1のダイオード、73-2…第2のダイオード、73-3…第3のダイオード、73-4…第4のダイオード、74-1〜74-4…パルサ、75…受信アンプ、91-1,91-2…コンデンサ、92-1,92-2…抵抗器、100…装置本体、200…超音波プローブ、P1,P2,P3,P4,P5…電位点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の電極を有する超音波振動子と、
第1の電位を持つ第1の電位点と前記第1の電極との間に介挿される第1のスイッチング素子と、
前記第1の電位とは異なる第2の電位を持つ第2の電位点と前記第1の電極との間に介挿される第2のスイッチング素子と、
前記第1の電位を持つ第3の電位点と前記第2の電極との間に介挿される第3のスイッチング素子と、
前記第2の電位を持つ第4の電位点と前記第2の電極との間に介挿される第4のスイッチング素子と、
第1の送信期間に前記第1および第4のスイッチング素子をONし、前記第1の送信期間とは異なる第2の送信期間に前記第2および第3のスイッチング素子をONする駆動手段とを具備したことを特徴とする超音波プローブ。
【請求項2】
第1および第2の電極を有する超音波振動子と、
第1の電位を持つ第1の電位点と前記第1の電極との間に介挿される第1のスイッチング素子と、
前記第1の電位とは異なる第2の電位を持つ第2の電位点と前記第1の電極との間に介挿される第2のスイッチング素子と、
前記第1の電位を持つ第3の電位点と前記第2の電極との間に介挿される第3のスイッチング素子と、
前記第2の電位を持つ第4の電位点と前記第2の電極との間に介挿される第4のスイッチング素子と、
第1の送信期間に前記第1および第4のスイッチング素子をONし、前記第1の送信期間とは異なる第2の送信期間に前記第2および第3のスイッチング素子をONする駆動手段とを具備したことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
2つの入力端子の一方が前記第2のスイッチング素子を介して前記第1の電極に接続され、前記2つの入力端子の他方が前記第4のスイッチング素子を介して前記第2の電極に接続された増幅器をさらに備え、
前記駆動手段は、受信期間に前記第2および第4のスイッチング素子をONすることを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記第1の電位とは逆極性の第3の電位を持つ第5の電位点と前記第1の電極との間に介挿された第5のスイッチング素子と、
前記第3の電位を持つ第6の電位点と前記第2の電極との間に介挿された第6のスイッチング素子とをさらに具備し、
かつ前記駆動手段は、前記第1および第2の送信期間とは異なる第3の送信期間に前記第4および第5のスイッチング素子をONし、前記第1乃至第3の送信期間とは異なる第4の送信期間に前記第2および第6のスイッチング素子をONすることを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
第1および第2の交流カップリング回路と、
2つの入力端子の一方が前記第2のスイッチング素子および第1の交流カップリング回路を介して前記第1の電極に接続され、前記2つの入力端子の他方が前記第4のスイッチング素子および第2の交流カップリング回路を介して前記第2の電極に接続された増幅器とをさらに具備し、
前記駆動手段は、受信期間に前記第2および第4のスイッチング素子をONすることを特徴とする請求項4に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
互いに逆向きかつ並列で、前記第2のスイッチング素子と前記第2の電位点との間に介挿された第1および第2の整流素子と、
互いに逆向きかつ並列で、前記第4のスイッチング素子と前記第4の電位点との間に介挿された第3および第4の整流素子とをさらに具備したことを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
所定方向に超音波を放射するための超音波振動子と、
前記超音波振動子の超音波放射面に設けられる第1の電極と、
前記超音波放射面と反対側の背面に設けられる第2の電極と、
第1の電位点及び第2の電位点に対し、前記第1の電極と前記第2の電極を切り換えて接続するスイッチング手段とを具備し、
前記スイッチング手段は、
前記第1の電位点が前記第1の電極と接続される時は前記第2の電位点を前記第2の電位点と接続し、前記第1の電位点が前記第2の電極と接続される時は前記第2の電位点を前記第1の電位点と接続することを特徴とする超音波プローブ。
【請求項8】
所定方向に超音波を放射するための超音波振動子と、
前記超音波振動子の超音波放射面に設けられる第1の電極と、
前記超音波放射面と反対側の背面に設けられる第2の電極と、
第1の電位点及び第2の電位点に対し、前記第1の電極と前記第2の電極を切り換えて接続するスイッチング手段と、
前記スイッチング手段を切り換えて前記超音波振動子を駆動させることにより、互いに極性の異なる複数回の超音波送受信を行うための送受信制御手段と、
前記複数回の超音波送受信によってそれぞれ得られた複数の受信信号に基づいて、前記超音波送受信における超音波の基本波に対する高調波の受信信号成分を抽出する高調波信号抽出手段とを具備したことを特徴とする超音波プローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−117668(P2007−117668A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−317651(P2005−317651)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】