超音波プローブ装置及びその制御方法
【課題】送受信できる周波数帯域を広帯域化したcMUTを有する、超音波プローブ装置及びその制御方法を提供する。
【解決手段】cMUTアレイ100は、第1のcMUT130と第2のcMUT140とを有する。帯域制御部220は、異なる2種類のバイアス電圧を算出する。一方のバイアス電圧は、第1のバイアス調整器272を介して第1のcMUT130に印加され、他方は、第2のバイアス調整器274を介して第2のcMUT140に印加される。異なるバイアス電圧が印加された第1のcMUT130と第2のcMUT140とは、異なる周波数帯域で機能する。この異なる周波数帯域は、その一部が重なるか、隣接するように帯域制御部220によって決定されている。したがって、第1のcMUT130と第2のcMUT140とを有するcMUTアレイ100は全体として、広い周波数帯域で機能する。
【解決手段】cMUTアレイ100は、第1のcMUT130と第2のcMUT140とを有する。帯域制御部220は、異なる2種類のバイアス電圧を算出する。一方のバイアス電圧は、第1のバイアス調整器272を介して第1のcMUT130に印加され、他方は、第2のバイアス調整器274を介して第2のcMUT140に印加される。異なるバイアス電圧が印加された第1のcMUT130と第2のcMUT140とは、異なる周波数帯域で機能する。この異なる周波数帯域は、その一部が重なるか、隣接するように帯域制御部220によって決定されている。したがって、第1のcMUT130と第2のcMUT140とを有するcMUTアレイ100は全体として、広い周波数帯域で機能する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波プローブ装置、特に静電容量型超音波素子を有する超音波プローブ装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、超音波素子として、静電容量型の超音波素子(capasitive Micromachined Ultrasonic Transducers;cMUT)が注目されている。一般に、cMUTは、基板上に配置された下部電極と、下部電極と対向する薄膜内に配置された上部電極と、下部電極及び上部電極の間に位置する空洞部とを有する。下部電極と上部電極との間に電圧を印加すると、当該電極間で静電容量が変化し、前記薄膜が振動する。この振動により、cMUTは超音波を射出する。即ち、cMUTは、超音波を送信することができる。また、cMUTが超音波を受けると、前記薄膜は振動する。この振動により、下部電極と上部電極とに帯電する電荷が変化する。この電荷の変化を検出することで、cMUTは、超音波を検出することができる。即ち、cMUTは、超音波を受信することができる。cMUTが、上記のように超音波を送受信する際には、下部電極と上部電極との間に直流バイアス電圧を印加し、下部電極と上部電極を予め帯電させておくことが、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
そして、そのようなcMUTから超音波を送信し、当該cMUTでその反射波を受信することで、超音波画像を取得する超音波プローブ装置が知られている。このようなcMUTを用いた超音波画像の取得において、超音波の受信効率を向上させる技術が、例えば特許文献2に開示されている。短い距離を伝搬する超音波は受信時の振幅が十分大きい。このことを考慮して、特許文献2に開示されている技術においては、cMUTの近くで反射した超音波を当該cMUTが受信する際には、印加する前記直流バイアス電圧を小さく設定している。また、長い距離を伝搬する超音波は受信時の振幅が小さいため、前記直流バイアス電圧が低いと検出感度が低くなってしまう。このことを考慮して、cMUTの遠くで反射した超音波を当該cMUTが受信する際には、超音波に対して感度がよくなるように、印加する前記直流バイアス電圧を大きく設定している。また、特許文献2には、近くで反射した超音波と遠くで反射した超音波とを連続的に受信するために、直流バイアス電圧を徐々に大きくすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2005−510264号公報
【特許文献2】特開2006−122344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1及び特許文献2に係る技術では、送受信したい超音波の周波数に合わせてcMUTに印加する直流バイアス電圧を変化させている。しかしながら、cMUTにおいては、送受信できる超音波の周波数帯域をシフトさせるのみならず、送受信できる周波数帯域の幅を広くすることが好ましい。
【0006】
そこで本発明は、送受信できる周波数帯域を広帯域化したcMUTを有する、超音波プローブ装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を果たすため、本発明に係る超音波プローブ装置の一態様は、印加される直流バイアス電圧のバイアス電圧値に応じて送受信できる超音波の周波数範囲が変化する静電容量型超音波振動子を、複数具備する超音波プローブ装置であって、前記複数の静電容量型超音波振動子の各々は、複数のグループのうちの何れか1つに属し、該複数のグループの各々は、少なくとも1つの該静電容量型超音波振動子を含み、当該超音波プローブ装置の動作期間内で、連続した周波数帯である動作周波数に含まれる全ての周波数が、当該超音波プローブ装置によって送信及び/又は受信されるように、前記グループ毎に異なる前記バイアス電圧値と、当該バイアス電圧値を有する直流バイアス電圧を印加するタイミングとを決定する帯域制御部と、前記帯域制御部が決定する前記バイアス電圧値と前記タイミングとに応じて、前記静電容量型超音波振動子に印加する前記直流バイアス電圧を変更する、バイアス電圧変更手段と、を具備することを特徴とする。
【0008】
また、前記目的を果たすため、本発明に係る超音波プローブ装置の制御方法の一態様は、印加される直流バイアス電圧のバイアス電圧値に応じて、送受信できる超音波の周波数範囲が変化する、静電容量型超音波振動子を複数具備し、前記複数の静電容量型超音波振動子の各々は、m個(mは2以上の自然数)のグループのうちの何れか1つに属し、該m個のグループの各々は、少なくとも1つの前記静電容量型超音波振動子を含む、超音波プローブ装置の制御方法であって、n(nはm以下の自然数)が1のとき、前記直流バイアス電圧を印加したときに前記静電容量型超音波振動子によって送信及び/又は受信できる超音波の周波数範囲である送受信可能周波数と、前記バイアス電圧値との関係である、バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、当該超音波プローブ装置が送信及び/又は受信する連続した周波数帯である動作周波数の最低値が、前記送受信可能周波数の最低値となる第1のバイアス電圧値を算出し、nが2以上のとき、前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、第nのバイアス電圧値を、該第nのバイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの前記送受信可能周波数の最低値が、第(n−1)のバイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの前記送受信可能周波数の最高値以下となるように決定し、第n番目のグループに属する前記静電容量型超音波振動子に、前記第nのバイアス電圧値を有する前記直流バイアス電圧を印加する、ことを特徴とする。
【0009】
また、前記目的を果たすため、本発明に係る超音波プローブ装置の制御方法の別の一態様は、印加される直流バイアス電圧のバイアス電圧値に応じて、送受信できる超音波の周波数範囲が変化する、静電容量型超音波振動子を複数具備し、前記複数の静電容量型超音波振動子の各々は、m個(mは2以上の自然数)のグループのうちの何れか1つに属し、該m個のグループの各々は、少なくとも1つの前記静電容量型超音波振動子を含む超音波プローブ装置の制御方法であって、前記直流バイアス電圧を印加したときに前記静電容量型超音波振動子によって送信及び/又は受信できる超音波の周波数範囲である送受信可能周波数と、前記バイアス電圧値との関係である、バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、当該超音波プローブ装置が送信及び/又は受信する連続した周波数帯である動作周波数の最低値が、前記送受信可能周波数の最低値となる第1のバイアス電圧値を算出し、前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、第2のバイアス電圧値を、該第2のバイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの前記送受信可能周波数の最低値が、前記第1のバイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最高値以下となるように決定し、動作期間中の時間経過と共に、第n番目(nはm以下の自然数)のグループに属する前記静電容量型超音波振動子に印加する前記直流バイアス電圧の前記バイアス電圧値である、第n印加バイアス電圧値の、nが1であるときの値である第1印加バイアス電圧値を、前記第2のバイアス電圧値から前記第1のバイアス電圧値まで変化させ、nが2以上のとき、前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、第n印加バイアス電圧値を、該第n印加バイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの前記送受信可能周波数の最低値が、第(n−1)印加バイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最高値以下となるように決定し、第n番目のグループに属する前記静電容量型超音波振動子に、前記第n印加バイアス電圧値を有する前記直流バイアス電圧を印加する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、異なるcMUTに異なるバイアス電圧を印加することで、送受信できる周波数帯域を広帯域化した、複数のcMUTを有する、超音波プローブ装置及びその制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る超音波プローブ装置の構成例を示すブロック図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る超音波プローブ装置のcMUTに印加するバイアス電圧の決定に係る一部分の構成例を示すブロック図。
【図3】cMUTにおける、印加するバイアス電圧に応じたインピーダンスの周波数特性の一例を示す図。
【図4】cMUTにおける、印加するバイアス電圧と共振周波数との関係、及び印加するバイアス電圧と反共振周波数との関係の一例を示す図。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る超音波プローブ装置のcMUTに印加するバイアス電圧の決定方法の一例を説明するための図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る超音波プローブ装置のcMUTに印加するバイアス電圧の決定に係る一部分の構成例を示すブロック図。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る超音波プローブ装置のcMUTに印加するバイアス電圧の決定に係る一部分の構成例を示すブロック図。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る超音波プローブ装置のcMUTに印加するバイアス電圧の一例を説明するための図。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る超音波プローブ装置のcMUTに印加するバイアス電圧の概略を説明するための図であって、(a)は、第1のcMUTに印加するバイアス電圧の概略を示す図であり、(b)は、第2のcMUTに印加するバイアス電圧の概略を示す図。
【図10】本発明の第2の実施形態の変形例に係る超音波プローブ装置のcMUTに印加するバイアス電圧の一例を説明するための図。
【図11】本発明の第3の実施形態に係る超音波プローブ装置のcMUTに印加するバイアス電圧の決定に係る一部分の構成例を示すブロック図。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る超音波プローブ装置のcMUTに印加するバイアス電圧の決定に係る一部分の構成例を示すブロック図。
【図13】本発明の第3の実施形態に係る超音波プローブ装置のcMUTに印加するバイアス電圧の概略を説明するための図であって、(a)は、第1のcMUTに印加するバイアス電圧の概略を示す図であり、(b)は、第2のcMUTに印加するバイアス電圧の概略を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の実施形態]
まず、本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態に係る超音波プローブ装置の構成の概略を図1に示す。本超音波プローブ装置は、超音波源としてcapasitive Micromachined Ultrasonic Transducers(cMUT)を用いている。本超音波プローブ装置は、複数のcMUT110からなるcMUTアレイ100を有する。cMUTアレイ100において、cMUT110は、超音波の射出方向を一方向に揃えて、平面状に配置されている。
【0013】
各cMUT110は、互いに対向する上部電極112と下部電極114とを有している。上部電極112と下部電極114との間には、空隙116が設けられている。各cMUT110の、上部電極112と下部電極114との間に交流電圧が印加されると、当該電極間の電気容量が変化し、当該電極間に働く静電吸引力が変化する。下部電極114及びその周辺の構造物は固定されているので、静電吸引力の変化によって、上部電極112及びその周辺の構造物が振動する。したがって、各cMUT110は、上部電極112と下部電極114との間に交流電圧が印加されると、超音波を発生する。このように、cMUT110は、超音波を送信することができる。
【0014】
また、各cMUT110に超音波が入射すると、上部電極112及びその周辺の構造物は、振動する。その結果、上部電極112と下部電極114との間の電気容量が変化する。この上部電極112と下部電極114との間の電気容量の変化を計測することによって、超音波の入射を検出することができる。このように、cMUT110は、超音波を受信することができる。超音波プローブ装置は、このようなcMUT110の超音波送受信機能を利用して、超音波による物体の内部画像の取得を行うものである。
【0015】
cMUT110は、上部電極112と下部電極114との間に予めバイアス電圧を印加しておくと、上部電極112の振動の周波数特性が変化する。印加するバイアス電圧がより高い程、上部電極112の共振周波数がより低くなる。したがって、印加するバイアス電圧がより高い程、cMUT110は、より低い周波数の超音波を射出することができ、また、より低い周波数の超音波を受信することができる。逆に、印加するバイアス電圧がより低い程、上部電極112の共振周波数がより高くなる。したがって、印加するバイアス電圧がより低い程、cMUT110は、より高い周波数の超音波を射出することができ、また、より高い周波数の超音波を受信することができる。
【0016】
本実施形態では、cMUTアレイ100に属するcMUT110は、2つのグループに分けられている。即ち、cMUTアレイ100は、第1のグループを形成するcMUT110と、第2のグループを形成するcMUT110とを有している。第1のグループのcMUT110には高いバイアス電圧が印加され、第2のグループのcMUT110には低いバイアス電圧が印加される。これにより、cMUTアレイ100全体を1つの送受信部と見なしたときに、送受信できる超音波の周波数帯域が広げることができる。以下、第1のグループのcMUT110を第1のcMUT130と記し、第2のグループのcMUTを第2のcMUT140と記す。
【0017】
本超音波プローブ装置は、cMUTアレイ100から超音波を射出させるために、コントロール部210と、帯域制御部220と、パルス発生器260と、第1のバイアス調整器272と、第2のバイアス調整器274と、記憶部290とを有する。また、本超音波プローブ装置は、cMUTアレイ100に超音波を検出させるために、複数のアンプ310と、複数のA/D変換器320と、ビーム合成回路330と、デジタルスキャンコンバータ(DSC)340とを有する。また、本超音波プローブ装置は、入力部410と表示器420とを有する。
【0018】
入力部410は例えばキーボードであって、コントロール部210と接続している。ユーザはこのキーボードを使用して、画像取得を行いたい部分の深さ(所望の深さ)の情報を入力する。入力された深さ情報はコントロール部210に出力される。コントロール部210は、入力された深さ情報に基づいて、cMUTアレイ100が射出する超音波の周波数帯域を決定し、当該帯域に係る値を帯域制御部220に出力する。また、コントロール部210は、パルス発生器260を制御する。また、コントロール部210は、本超音波プローブ装置全体の制御を行う。したがって、コントロール部210は、例えばビーム合成回路330とも接続している。また、コントロール部210は記憶部290とも接続している。よって、本超音波プローブ装置の各部の制御を行う際に、コントロール部210は記憶部290に記憶されている情報を適宜用いることができる。また、コントロール部210は、表示器420に接続しており、表示器420に必要な情報を表示させることができる。
【0019】
帯域制御部220には、コントロール部210から周波数帯域に係る値が入力される。入力された値に基づいて、帯域制御部220は2種類のバイアス調整値を算出する。この2種類のバイアス調整値は、cMUTアレイ100が射出する超音波の周波数帯域が、所望の深さの画像取得するときの周波数帯域を満たすために必要な値である。帯域制御部220は、算出した2種類のバイアス調整値のうち、一方(第1)のバイアス調整値を第1のバイアス調整器272に出力し、他方(第2)のバイアス調整値を第2のバイアス調整器274に出力する。また、帯域制御部220は、2種類のバイアス調整値を、表示器420に出力する。なお、帯域制御部220も、コントロール部210を介して記憶部290と接続している。よって、帯域制御部220は記憶部290に記憶されている情報を適宜読みだして、読み出した情報を用いることができる。
【0020】
パルス発生器260は、コントロール部210の制御の下、パルス信号を発生し、それを第1のバイアス調整器272及び第2のバイアス調整器274に出力する。第1のバイアス調整器272には、帯域制御部220から第1のバイアス調整値が入力されると共に、パルス発生器260からパルス信号が入力される。そして、第1のバイアス調整器272は駆動信号を、第1のcMUT130の各々に出力する。この駆動信号は、第1のバイアス調整値に基づいて調整されたバイアス電圧にパルス信号が重畳した信号である。一方、第2のバイアス調整器274には、帯域制御部220から第2のバイアス調整値が入力されると共に、パルス発生器260からパルス信号が入力される。そして、第2のバイアス調整器274も第1のバイアス調整器272と同様に、駆動信号を各第2のcMUT140に出力する。この駆動信号は、第2のバイアス調整値に基づいて調整したバイアス電圧にパルス信号が重畳した信号である。この様に、例えば第1のバイアス調整器272及び第2のバイアス調整器274は、バイアス電圧変更手段として機能する。なお、帯域制御部220から表示器420までの信号線、帯域制御部220から第1のバイアス調整器272までの信号線、及び帯域制御部220からと第2のバイアス調整器274までの信号線は、最初から別々の信号線であっても良い。
【0021】
一方、複数のアンプ310は、それぞれ1つのcMUT110と接続している。各アンプ310には、各cMUT110の上部電極112と下部電極114との電位差がcMUT110の出力信号として入力され、各アンプ310は当該出力信号を増幅する。各アンプ310は、増幅した信号を、それぞれA/D変換器320に出力する。各A/D変換器320には、アンプ310から増幅信号が入力される。各A/D変換器320は、入力された信号をA/D変換し、変換により得られたデジタル信号(以降、デジタルエコー信号と称する)を、ビーム合成回路330に出力する。
【0022】
ビーム合成回路330には、各A/D変換器320からデジタルエコー信号が入力される。ビーム合成回路330は、各A/D変換器320から入力されたデジタルエコー信号を合成し、画像信号を生成する。ビーム合成回路330は、生成した画像信号を、コントロール部210やDSC340に出力する。DSC340には、ビーム合成回路330から画像信号が入力される。DSC340は、ビーム合成回路330から入力した画像信号に基づいて、表示用信号を作成する。この表示用信号は、例えばモニタである表示器420に表示させるための信号である。DSC340は、作成した表示用信号を、表示器420に出力する。表示器420には、DSC340から表示用信号が入力される。これにより、表示器420は、当該表示用信号に基づいて画像を表示する。また、表示器420には、帯域制御部220からバイアス調整値が入力される。これにより、表示器420は当該バイアス調整値を表示する。
【0023】
ここで、表示器420に表示されるのは、(1)2種類のバイアス調整値そのものの数値、(2)第1のcMUT130と第2のcMUT140とのそれぞれの周波数帯域の数値、(3)第1のcMUT130と第2のcMUT140とを合わせたときの周波数帯域の数値、(4)数値をグラフィカルに表わしたもの、(5)上記(1)〜(4)の組合せのいずれでもよい。
【0024】
帯域制御部220の構成を、図2を参照して更に説明する。帯域制御部220は、図2に示すように、Vdc算出部222と、fr,fa算出部224と、周波数判定部226と、周波数再設定部228と、Vdc決定部230とを有する。Vdc算出部222には、コントロール部210から、前記周波数帯域に係る値が入力される。Vdc算出部222と、fr,fa算出部224と、周波数判定部226と、周波数再設定部228は所定の演算を行ってバイアス調整値を算出し、Vdc決定部230は、バイアス調整値を決定する。Vdc決定部230は、決定したバイアス調整値を、第1のバイアス調整器272と、第2のバイアス調整器274と、表示器420とに出力する。帯域制御部220内の各部の詳細については、本実施形態に係る超音波プローブ装置の動作の説明とともに後述する。
【0025】
次に、本実施形態に係る超音波プローブ装置の動作を、図面を参照して説明する。まず、本実施形態に係る、超音波の射出について説明する。まず入力部410は、例えばcMUTアレイ100から画像を取得したい部分までの最も遠い位置までの距離、即ち、画像を取得したい部分の最も深い部分の深さLを、ユーザから取得する。入力部410は、例えばキーボードであり、ユーザは当該キーボードから深さLの値を入力する。入力部410は、取得した深さLの値を、コントロール部210に出力する。
【0026】
また、入力部410は、キーボードに限らず、ボタン、レバー、つまみを用いたもの等、深さLの値を入力できるものならば、どのようなものでもよい。また、入力部410は、マウスであってもよい。この場合、ユーザは、マウスを使って、表示器420に表示された画像から深さLの値を選択したり、増加又は減少を指示するボタンを選択して深さLの値を決定したりすることができる。また、表示器420に表示させた画像の一部を選択することで、当該画像と関連付けられた深さLの値を決定することができる。これらの場合、コントロール部210、マウスである入力部410、及び表示器420が連携して深さLの値を取得する。
【0027】
深さLの値を取得したコントロール部210は、深さLの値に基づいて、最小値frq_low及び最大値frq_upを決定する。最小値frq_low及び最大値frq_upは前述した周波数帯域に係る値であって、cMUTアレイ100が機能する周波数帯域を表わす値である。コントロール部210は、決定した最小値frq_low及び最大値frq_upを、帯域制御部220内のVdc算出部222に出力する。
【0028】
ここで、コントロール部210は、深さLの値から、最小値frq_low及び最大値frq_upを決定するために、例えば以下の方法を用いる。例えば、深さLと最小値frq_low及び最大値frq_upとの関係を、記憶部290にテーブルとして記憶しておき、当該関係に基づいて、深さLの値から、最小値frq_low及び最大値frq_upを決定してもよい。また、記憶部290に、深さLと最小値frq_low及び最大値frq_upとの関係を示す式を記憶しておき、当該式に基づいて、深さLの値から、最小値frq_low及び最大値frq_upを算出してもよい。このように、記憶部290は、距離(深さ)−周波数に関する記憶部として機能する。
【0029】
帯域制御部220内のVdc算出部222には、コントロール部210が出力した最小値frq_low及び最大値frq_upが入力される。Vdc算出部222は、最小値frq_lowに基づいて、第1のバイアス電圧値Vdc_1を算出し、最大値frq_upに基づいて、第2のバイアス電圧値Vdc_2を算出する。
【0030】
ここで、第1のバイアス電圧値Vdc_1及び第2のバイアス電圧値Vdc_2の算出について図面を参照して説明する。図3は、cMUT110における振動周波数と電気的インピーダンスとの関係(特性)の一例を示している。図3において、横軸は周波数で、縦軸はインピーダンスである。また、図3において、点線、一点鎖線、破線、実線、二点鎖線の各々は、上部電極112と下部電極114との間に印加するバイアス電圧(以下、単にバイアス電圧と称する)が、60V、90V、130V、165V、200Vのときの特性を示している。図3に示すように、バイアス電圧が異なっても、周波数とインピーダンスとの全体的な傾向は、類似である。即ち、cMUT110のインピーダンスは、周波数が増加するに従って、徐々に減少し、極小値をとり、その後上昇して極大値をとり、再び減少する。
【0031】
ここで、インピーダンスが極小値となる周波数は、当該cMUT110の共振周波数であり、インピーダンスが極大値となる周波数は、当該cMUT110の反共振周波数である。各cMUT110が機能する周波数帯域は、ここで示した共振周波数から反共振周波数までの周波数帯域である。
【0032】
図3に示すように、バイアス電圧が異なると、共振周波数及び反共振周波数も異なる。より詳しくは、cMUT110の共振周波数及び反共振周波数は、バイアス電圧が高い程、低くなり、バイアス電圧が低い程、高くなる。したがって、cMUT110が機能する周波数帯域は、バイアス電圧が高い程、低くなり、バイアス電圧が低い程、高くなる。
【0033】
図4に、バイアス電圧Vdcと共振周波数frとの関係、及びバイアス電圧Vdcと反共振周波数faとの関係の一例を示す。この図に示すように、cMUT110の特性に応じて、バイアス電圧Vdcと共振周波数frとの関係は、関数fによって、
fr=f(Vdc) ・・・(1)
と表される。また、cMUT110の特性に応じて、バイアス電圧Vdcと反共振周波数faとの関係は、関数gによって、
fa=g(Vdc) ・・・(2)
と表される。本実施形態において、上記式(1)及び上記式(2)は、記憶部290に記憶されており、帯域制御部220は、コントロール部210を介して、上記式(1)及び上記式(2)を読み出すことができる。
【0034】
再び図2を参照して、本実施形態に係る動作を説明する。本実施形態において、Vdc算出部222は、式(1)を用いて、コントロール部210から入力した最小値frq_lowより、第1のバイアス電圧値Vdc_1を、下記式(3)に基づいて算出する。
Vdc_1=f−1(frq_low) ・・・(3)
同様に、Vdc算出部222は、式(2)を用いて、コントロール部210から入力した最大値frq_upより、第2のバイアス電圧値Vdc_2を、下記式(4)に基づいて算出する。
Vdc_2=g−1(frq_up) ・・・(4)
Vdc算出部222は、算出した第1のバイアス電圧値Vdc_1及び第2のバイアス電圧値Vdc_2を、fr,fa算出部224に出力する。
【0035】
fr,fa算出部224には、Vdc算出部222から、第1のバイアス電圧値Vdc_1及び第2のバイアス電圧値Vdc_2が入力される。fr,fa算出部224は、第1のバイアス電圧値Vdc_1と式(2)とを用いて、判定用反共振周波数fa_dを下記式(5)により算出する。
fa_d=g(Vdc_1) ・・・(5)
また同様に、fr,fa算出部224は、第2のバイアス電圧値Vdc_2と式(1)とを用いて、判定用共振周波数fr_dを下記式(6)により算出する。
fr_d=f(Vdc_2) ・・・(6)
fr,fa算出部224は、算出した判定用共振周波数fr_d及び判定用反共振周波数fa_d、並びに第1のバイアス電圧値Vdc_1及び第2のバイアス電圧値Vdc_2を、周波数判定部226に出力する。
【0036】
周波数判定部226は、Vdc算出部222から入力した判定用共振周波数fr_d及び判定用反共振周波数fa_dについて、fr_d≦fa_dであるか否かを判定する。fr_d≦fa_dであるとき、周波数判定部226は、fr,fa算出部224から入力した第1のバイアス電圧値Vdc_1及び第2のバイアス電圧値Vdc_2を、Vdc決定部230に出力する。
【0037】
一方、fr_d≦fa_dでないとき、周波数判定部226は、周波数再設定部228に、fr_d≦fa_dでない旨の信号を出力する。周波数判定部226からfr_d≦fa_dでない旨の信号が入力した周波数再設定部228は、Vdc算出部222から最大値frq_upを取得し、取得した最大値frq_upよりも所定の値だけ小さな値を、新たな最大値frq_upに設定する。周波数再設定部228は、再設定した新たな最大値frq_upを、Vdc算出部222に出力する。周波数再設定部228から新たな最大値frq_upが入力されたVdc算出部222は、前述と同様に、第1のバイアス電圧値Vdc_1と第2のバイアス電圧値Vdc_2とを決定し、それらをfr,fa算出部224に出力する。以下、前述と同様に処理を進める。この際、第1のバイアス電圧値Vdc_1及び判定用反共振周波数fa_dは、変化しない。したがって、Vdc算出部222は、第1のバイアス電圧値Vdc_1を再度算出する必要は無く、前に算出した第1のバイアス電圧値Vdc_1を保持しているだけでよい。同様に、fr,fa算出部224は、判定用反共振周波数fa_dを再度算出する必要は無く、前に算出した判定用反共振周波数fa_dを保持しているだけでよい。
【0038】
このようにして、周波数判定部226がfr_d≦fa_dと判定するまで、周波数再設定部228は、最大値frq_upを低下させる再設定処理を繰り返す。fr_d≦fa_dであるとき、周波数判定部226は、Vdc決定部230に、第1のバイアス電圧値Vdc_1及び第2のバイアス電圧値Vdc_2を出力する。
【0039】
fr_d≦fa_dのとき、Vdc決定部230には、周波数判定部226から、第1のバイアス電圧値Vdc_1及び第2のバイアス電圧値Vdc_2が入力される。Vdc決定部230は、第1のcMUT130に印加するバイアス電圧を第1のバイアス電圧値Vdc_1に決定し、第2のcMUT140に印加するバイアス電圧を第2のバイアス電圧値Vdc_2に決定する。Vdc決定部230は、第1のバイアス調整器272に、第1のバイアス電圧値Vdc_1を出力し、第2のバイアス調整器274に、第2のバイアス電圧値Vdc_2を出力する。また、Vdc決定部230は、第1のバイアス電圧値Vdc_1と第2のバイアス電圧値Vdc_2とを表す信号を、表示器420に出力する。
【0040】
第1のバイアス調整器272は、第1のcMUT130に、Vdc決定部230から入力した第1のバイアス電圧値Vdc_1を印加する。同様に、第2のバイアス調整器274は、第2のcMUT140に、Vdc決定部230から入力した第2のバイアス電圧値Vdc_2を印加する。表示器420は、第1のバイアス電圧値Vdc_1と第2のバイアス電圧値Vdc_2との値を表示する。この際、第1のバイアス電圧値Vdc_1及び第2のバイアス電圧値Vdc_2に限らず、最小値frq_low及び判定用反共振周波数fa_d、並びに、判定用共振周波数fr_d及び最大値frq_upを表示器420に表示するようにしてもよい。
この様に、例えばVdc算出部222は、バイアス電圧算出部として機能し、例えばfr,fa算出部224は、周波数算出部として機能する。
【0041】
ここで、最小値frq_low及び最大値frq_up、判定用共振周波数fr_d及び判定用反共振周波数fa_d、並びに第1のバイアス電圧値Vdc_1及び第2のバイアス電圧値Vdc_2の関係を、図5に示す例を参照して説明する。図5に示す例では、最小値frq_lowは、22MHzであり、最大値frq_upは、24MHzであるとする。
【0042】
この場合、最小値frq_low=22MHzより、上記式(3)を用いて、第1のバイアス電圧値Vdc_1は、200Vと求まる。このとき、上記式(5)を用いて、判定用反共振周波数fa_dは、23.5MHzと求まる。一方、最大値frq_up=24MHzより、上記式(4)を用いて、第2のバイアス電圧値Vdc_2は、140Vと求まる。このとき、上記式(6)を用いて、判定用共振周波数fr_dは、23.3MHzと求まる。fr_d=23.3MHz≦fa_d=23.5MHzであるので、周波数判定部226は、Vdc決定部230に、第1のバイアス電圧値Vdc_1及び第2のバイアス電圧値Vdc_2を出力する。
【0043】
図5に示す例では、第1のバイアス電圧値Vdc_1=200Vが印加される第1のcMUT130は、共振周波数である最小値frq_low=22MHzから反共振周波数である判定用反共振周波数fa_d=23.5MHzまで機能する。また、第2のバイアス電圧値Vdc_2=140Vが印加される第2のcMUT140は、共振周波数である判定用共振周波数fr_d=23.3MHzから反共振周波数である最大値frq_up=24MHzまで機能する。したがって、第1のcMUT130及び第2のcMUT140を有するcMUTアレイ100は、22MHzから24MHzまでの周波数帯域で機能する(超音波の送受信ができる)。
【0044】
上記のとおり、fr_d≦fa_dであるとき、当該cMUTアレイ100は、最小値frq_lowから最大値frq_upまで途切れることなく連続した周波数帯域で送受信ができる。なお、fr_d≦fa_dでないとき、cMUTアレイ100が機能する周波数帯域は、不連続となり、最小値frq_lowから最大値frq_upの間に、機能しない周波数帯域が存在することになる。本実施形態では、このような不連続な周波数帯域が存在しないように、周波数判定部226における判定と、周波数再設定部228における周波数の再設定を行っている。
【0045】
再び図1を参照して、本実施形態にかる超音波プローブ装置の動作の続きを説明する。第1のバイアス調整器272は、第1のcMUT130に、Vdc決定部230から入力した第1のバイアス電圧値Vdc_1を印加する。同様に、第2のバイアス調整器274は、第2のcMUT140に、Vdc決定部230から入力した第2のバイアス電圧値Vdc_2を印加する。表示器420は、第1のバイアス電圧値Vdc_1と第2のバイアス電圧値Vdc_2との値を表示する。
【0046】
超音波画像取得時において、コントロール部210は、パルス発生器260に、パルスを発生させる指令を出力する。パルス発生器260は、コントロール部210の制御の下、パルスを生成する。パルス発生器260は、生成したパルスを第1のバイアス調整器272、及び第2のバイアス調整器274に出力する。第1のバイアス調整器272は、第1のバイアス電圧値Vdc_1に、パルス発生器260から入力したパルスを重畳し、重畳信号を第1のcMUT130に出力する。第2のバイアス調整器274は、第2のバイアス電圧値Vdc_2に、パルス発生器260から入力したパルスを重畳し、重畳信号を第2のcMUT140に出力する。
【0047】
第1のcMUT130は、第1のバイアス電圧値Vdc_1が印加された状態から、重畳されたパルス波に応じた振動をし、最小値frq_lowから判定用反共振周波数fa_dまでの周波数成分を有する超音波を射出する。同様に、第2のcMUT140は、第2のバイアス電圧値Vdc_2が印加された状態から、重畳されたパルス波に応じた振動をし、判定用共振周波数fr_dから最大値frq_upまでの周波数成分を有する超音波を射出する。その結果、第1のcMUT130及び第2のcMUT140を有するcMUTアレイ100は、最小値frq_lowから最大値frq_upまでの帯域の周波数成分を有する超音波を射出する。
【0048】
cMUTアレイ100から射出された超音波は、照射対象物内を伝搬する。照射対象物の音響インピーダンスに応じて、伝搬する超音波の一部は、反射する。なお、照射対象物内を伝搬する超音波は、周波数が高い程減衰しやすい。このため、周波数が低い超音波程、cMUTアレイ100から遠い位置まで伝搬する。本実施形態では、深さLに応じた位置まで超音波が到達するような超音波の周波数が選択されている。照射対象物内で反射した超音波は、再びcMUTアレイ100に到達する。cMUTアレイ100に到達した超音波は、cMUTアレイ100を構成するcMUT110の上部電極112を振動させる。上部電極112の振動により、上部電極112と下部電極114との電位差は変化する。
【0049】
ここで、第1のcMUT130は、第1のバイアス電圧値Vdc_1が印加された状態であるため、最小値frq_lowから判定用反共振周波数fa_dまでの帯域の超音波を受信することができる。一方、第2のcMUT140は、第2のバイアス電圧値Vdc_2が印加された状態であるため、判定用共振周波数fr_dから最大値frq_upまでの帯域の超音波を受信することができる。その結果、cMUTアレイ100は、最小値frq_lowから最大値frq_upまでの帯域の周波数成分を有する超音波を受信することができる。
【0050】
このように、例えば、最小値frq_lowから最大値frq_upまでの帯域は、動作周波数に対応し、例えば、第1のバイアス電圧値Vdc_1が印加された状態における最小値frq_lowから判定用反共振周波数fa_dまでの帯域は、例えば第1のバイアス電圧値Vdc_1が印加された状態における送受信可能周波数に対応する。
【0051】
各cMUT110における上部電極112と下部電極114との電位差は、各アンプ310に出力される。各アンプ310は、入力した電位差を増幅し、それぞれA/D変換器320に出力する。各A/D変換器320は、各アンプ310から入力した増幅信号をA/D変換し、変換により得られたデジタルエコー信号を、ビーム合成回路330に出力する。
【0052】
ビーム合成回路330には、各A/D変換器320からデジタルエコー信号が入力される。そして、ビーム合成回路330は、当該デジタルエコー信号を合成し、画像信号を形成する。その結果、所定の深さの画像を取得することができる。ビーム合成回路330は、取得した画像信号を、コントロール部210及びDSC340に出力する。DSC340は、ビーム合成回路330から入力した画像信号に基づいて、例えばモニタである表示器420に表示させるための表示用信号を作成する。DSC340は、作成した表示用信号を、表示器420に出力する。表示器420には、DSC340から表示用信号が入力され、表示器420は、当該表示用信号に基づいて画像を表示する。
【0053】
以上のようにして、本実施形態に係る超音波プローブ装置は、超音波照射対象物に超音波を照射し、超音波照射対象物からの反射超音波に基づいて、超音波照射対象物内の画像を取得することができる。
【0054】
本実施形態では、cMUTアレイ100を構成するcMUT110を、第1のcMUT130と第2のcMUT140との2つのグループに分け、グループによって異なるバイアス電圧を印加している。その結果、第1のcMUT130と第2のcMUT140とは、互いに異なる周波数帯域で機能する。しかも、当該2つの周波数帯域は、隣り合う又はその一部が重なり合うように、即ち、離れないように設定されている。このような本実施形態によれば、2つのグループの組み合わせによって、広い周波数帯域に渡って高いエネルギの超音波を送信(射出)することができ、また、広い周波数帯域の超音波を高効率で受信することができる。送信(射出)と受信の両方において広い周波数帯域の超音波を用いることができるので、本実施形態に係る超音波プローブ装置は、高効率に奥行きの広い画像を取得することができる。また、本実施形態によれば、cMUTアレイ100自身が、いわば周波数フィルタとしての機能を果たすので、受信回路等に別途周波数フィルタを設ける必要がなく、回路構成を簡略化することができる。
【0055】
なお、本実施形態では、バイアス電圧Vdcと共振周波数frとの関係、及びバイアス電圧Vdcと反共振周波数faとの関係は、前述の式(1)及び式(2)のように、式で表わされることとして説明したが、これらの関係を示すテーブルを用意して、それを用いてもよいことは勿論である。更に、バイアス電圧VdcとcMUT110が機能する周波数との関係として、本実施形態では、バイアス電圧Vdcと共振周波数fr及び反共振周波数faとの関係を用いる例を示したが、周波数に対するcMUT110の振動面の振幅の半値全幅等、その他のバイアス電圧Vdcに応じたcMUT110の周波数特性を示す関係も同様に用いることができる。
【0056】
[第1の実施形態の変形例]
次に、第1の実施形態の変形例について、第1の実施形態との相違点に限定して説明する。第1の実施形態では、cMUTアレイ100を構成するcMUT110を、第1のcMUT130と第2のcMUT140の2つのグループに分けている。本変形例では、cMUTアレイ100を構成するcMUT110を、3つのグループに分ける。
【0057】
したがって、cMUTアレイ100は、第1のcMUTと、第2のcMUTと、第3のcMUTとを有する。そして、第1のcMUTのバイアス電圧は、第1のバイアス調整器によって調整され、第2のcMUTのバイアス電圧は、第2のバイアス調整器によって調整され、第3のcMUTのバイアス電圧は、第3のバイアス調整器によって調整される。
【0058】
本変形例においても、コントロール部210は、深さLの値を取得し、深さLの値に基づいて、最小値frq_lowを決定し、それを帯域制御部220内のVdc算出部222に出力する。
【0059】
帯域制御部220内のVdc算出部222は、最小値frq_lowを第1の判定用共振周波数fr_1とし、第1の実施形態と同様に、第1の判定用共振周波数fr_1と関数fに基づいて、Vdc_1=f−1(fr_1)より、第1のバイアス電圧値Vdc_1を算出する。Vdc算出部222は、算出した第1のバイアス電圧値Vdc_1を、fr,fa算出部224に出力する。
【0060】
fr,fa算出部224は、第1のバイアス電圧値Vdc_1と関数gとに基づいて、fa_1=g(Vdc_1)より、第1の判定用反共振周波数fa_1を算出する。第1の実施形態の場合と異なり本変形例では、fr,fa算出部224は、算出した第1の判定用反共振周波数fa_1を、Vdc算出部222に出力する。
【0061】
Vdc算出部222は、次に、第1の判定用反共振周波数fa_1以下の周波数である第2の判定用共振周波数fr_2を設定する。その後、第2の判定用共振周波数fr_2と関数fに基づいて、Vdc_2=f−1(fr_2)より、第2のバイアス電圧値Vdc_2を算出する。Vdc算出部222は、算出した第2のバイアス電圧値Vdc_2を、fr,fa算出部224に出力する。
【0062】
fr,fa算出部224は、第2のバイアス電圧値Vdc_2と関数gに基づいて、fa_2=g(Vdc_2)より、第2の判定用反共振周波数fa_2を算出する。fr,fa算出部224は、前記と同様に、算出した第2の判定用反共振周波数fa_2を、Vdc算出部222に出力する。
【0063】
Vdc算出部222は、第2の判定用反共振周波数fa_2以下の周波数である第3の判定用共振周波数fr_3を設定する。その後、前述と同様に、第3の判定用共振周波数fr_3と関数fに基づいて、Vdc_3=f−1(fr_3)より、第3のバイアス電圧値Vdc_3を算出する。
【0064】
Vdc算出部222及びfr,fa算出部224は、第1のバイアス電圧値Vdc_1と、第2のバイアス電圧値Vdc_2と、第3のバイアス電圧値Vdc_3とを、Vdc決定部230に出力する。Vdc決定部230は、入力した第1のバイアス電圧値Vdc_1を、第1のバイアス調整器に出力し、入力した第2のバイアス電圧値Vdc_2を、第2のバイアス調整器に出力し、入力した第3のバイアス電圧値Vdc_3を、第3のバイアス調整器に出力する。
【0065】
第1のバイアス調整器は、入力した第1のバイアス電圧値Vdc_1を第1のcMUTに印加し、第2のバイアス調整器は、入力した第2のバイアス電圧値Vdc_2を第2のcMUTに印加し、第3のバイアス調整器は、入力した第3のバイアス電圧値Vdc_3を第3のcMUTに印加する。
【0066】
以上のようにすることで、cMUTアレイ100は、第1のcMUTが機能する周波数の最小値から、第3のcMUTが機能する周波数の最大値までの周波数帯域で、機能することができる。そして、この機能する周波数帯域は連続しており、途中機能しない周波数帯域はない。このように、2つのグループを有する第1の実施形態よりも、3つのグループを有する本変形例では、cMUTアレイ100全体では、より広い周波数帯域で機能するようになる。
【0067】
本変形例では、バイアス電圧値が大きい方から順に、第1乃至第3のバイアス電圧値を決定した。このようにすれば、低周波数側の周波数帯域で確実に機能することができるように、各バイアス電圧値を決定できる。即ち、このような決定方法は、cMUTアレイ100から遠い側で反射される情報を確実に取得したいときに有利である。
【0068】
なお、バイアス電圧値が小さい方から順に各バイアス電圧値を決定してもよい。その場合、cMUTアレイ100から近い側で反射される情報を確実に取得したいときに有利である。
【0069】
なお、グループの数は、本変形例と同様にして、4つ以上とすることもできる。グループの数がより増えれば、機能する周波数帯域をより増やすことができる。この場合、第1の実施形態と本変形例との違いと同様に、グループ数に合わせて、各構成要素の数を増減させて機能させればよい。
【0070】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。ここで第2の実施形態の説明では、第1の実施形態との相違点に限定して説明し、同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。第1の実施形態においては、cMUTアレイ100から遠いところの画像を取得することに重点を置いている。したがって、第1の実施形態においては、周波数判定部226において、fr_d≦fa_dでないと判定されたとき、周波数再設定部228は、周波数帯域の最大値frq_upを、下げるように再設定する。即ち、第1の実施形態においては、このような場合、cMUTアレイ100から近い部分の画像取得を犠牲にしている。
【0071】
これに対して、本実施形態は、音源から近い範囲の画像を精度よく取得するとともに、遠方、即ち深部までも感度よく画像化する。このために、本実施形態では、第1の実施形態におけるバイアス電圧を、時間経過と共に変化させる。本実施形態における超音波プローブ装置全体の構成は、図1を参照して説明した第1の実施形態におけるその構成とほぼ同じである。ただし、コントロール部210と帯域制御部220の構成の一部が異なる。
【0072】
本実施形態に係るコントロール部210の構成を、図6に示す。本実施形態に係るコントロール部210は、初期周波数設定部212と、最終周波数設定部214と、最大受信期間算出部216とを有する。
【0073】
例えばキーボードである入力部410は、ユーザから、画像を取得するcMUTアレイからの距離の範囲を取得する。ここで、当該範囲のcMUTアレイ100からcMUTアレイ100に近い方の端までの距離を深さL1、遠い方の端までの距離を深さL2とする。入力部410は、取得した深さL1及び深さL2の値を、コントロール部210に出力する。
【0074】
初期周波数設定部212は、入力した深さL1に基づいて、最大値frq_upを決定する。ここで、初期周波数設定部212は、深さL1と、最大値frq_upとの関係を示すテーブルに基づいて最大値frq_upを決定してもよいし、深さL1と、最大値frq_upとの関係式に基づいて最大値frq_upを算出してもよい。
【0075】
同様に、最終周波数設定部214は、入力した深さL2に基づいて、cMUTアレイ100が機能する最小値frq_lowを決定する。ここで、最終周波数設定部214は、深さL2と、最小値frq_lowとの関係を示すテーブルに基づいて最小値frq_lowを決定してもよいし、深さL2と、最小値frq_lowとの関係式に基づいて最小値frq_lowを算出してもよい。
【0076】
また、最大受信期間算出部216は、深さL2と、例えば次式(7)に基づいて、最大受信期間Tを算出する。
T=2×L2/c ・・・(7)
ここで、cは媒質の音速である。したがって、式(7)で求まる最大受信期間Tは、cMUTアレイ100から画像を取得したい最も遠い部位までの間(深さL2)を、超音波が往復する時間を示す。
コントロール部210は、図6に示すように、最大値frq_upと、最小値frq_lowと、最大受信期間Tとを、帯域制御部220に出力する。
【0077】
帯域制御部220は、図7に示すように、カウント制御部232と、Vdc算出部234と、fr,fa算出部236と、中間周波数算出部238と、周波数判定部240と、周波数再設定部242と、Vdc決定部244とを有する。
【0078】
まず、帯域制御部220内のカウント制御部232は、カウント用の変数iを0に設定する。また、カウント制御部232は、コントロール部210から入力した最大受信期間Tに基づいて、例えば定数αを用いて、N=αTより、バイアス刻み数Nを算出する。
【0079】
次に、Vdc算出部234は、下記式(8)に基づいて、最小値frq_lowよりバイアス電圧最大値Vdc_maxを算出する。
Vdc_max=f−1(frq_low) ・・・(8)
また、Vdc算出部234は、下記式(9)に基づいて、最大値frq_upよりバイアス電圧最小値Vdc_minを算出する。
Vdc_min=g−1(frq_up) ・・・(9)
以降、図8に一例を示しながら、各演算を説明する。本実施形態に係る超音波プローブ装置では、周波数帯域として(a)frq_lowから(b)frq_upまでの周波数でcMUTアレイ100を機能させる。そこで、上記のとおり本算出ではまず、例えば図8における、(a)frq_lowより、(c)Vdc_maxを求め、(b)frq_upより、(d)Vdc_minを求める。
【0080】
fr,fa算出部236は、Vdc算出部234が算出したバイアス電圧最大値Vdc_maxより、下記式(10)に基づいて、バイアス電圧がVdc_maxの時の判定用反共振周波数の値fa_0を算出する。
fa_0=g(Vdc_max) ・・・(10)
また、fr,fa算出部236は、Vdc算出部234が算出したバイアス電圧最小値Vdc_minより、下記式(11)に基づいて、バイアス電圧がVdc_minの時の判定用共振周波数の値fr_0を算出する。
fr_0=f(Vdc_min) ・・・(11)
本算出により、例えば図8における(d)fa_0と、(e)fr_0が求まる。なお、以下の説明では、判定用共振周波数及び判定用反共振周波数は、単に共振周波数及び反共振周波数とする。
【0081】
中間周波数算出部238は、下記式(12)に基づいて、fr,fa算出部236が算出した反共振周波数fa_0より、バイアス電圧Vdc_Xを算出する。
Vdc_X=f−1(fa_0) ・・・(12)
続いて、下記式(13)に基づいて、算出したバイアス電圧Vdc_Xより、バイアス電圧Vdc_Xを印加したときの反共振周波数fa_xを算出する。
fa_X=g(Vdc_X) ・・・(13)
本算出により、例えば図8における(f)Vdc_Xと、(g)fa_Xが求まる。
【0082】
周波数判定部240は、fr_0≦fa_Xであるか否かを判定する。fr_0≦fa_xであるとき、Vdc決定部244は、第1のバイアス電圧Vdc(t)_aを、Vdc_Xに設定する。また、第2のバイアス電圧Vdc(t)_bを、Vdc_minに設定する。Vdc決定部244は、設定した第1のバイアス電圧Vdc(t)_aを、第1のバイアス調整器272に出力し、設定した第2のバイアス電圧Vdc(t)_bを、第2のバイアス調整器274に出力する。図8に示す例では、fr_0≦fa_Xである。
【0083】
このように、i=0のとき、第1のバイアス調整器272が制御する第1のcMUT130には、共振周波数fa_0から反共振周波数fa_Xまで機能するように、バイアス電圧Vdc_Xが印加される(周波数fa_0はVdc_maxのときは反共振周波数であるが、Vdc_Xのときは共振周波数となる)。また、i=0のとき、第2のバイアス調整器274が制御する第2のcMUT140には、共振周波数fr_0から最大値frq_upまで機能するように、バイアス電圧最小値Vdc_minが印加される。以上により、第1のcMUT130と第2のcMUT140とを有するcMUTアレイ100は、i=0のとき、共振周波数fa_0から最大値frq_upまで機能する。
【0084】
一方、周波数判定部240における判定で、fr_0≦fa_Xでないとき、周波数再設定部242は、次式(14)により、Vdc_Xを再設定する。
Vdc_X=g−1(fr_0) ・・・(14)
本処理により、初めに候補としたバイアス電圧を印加しても、第1のcMUT130が機能する周波数帯域と第2のcMUT140が機能する周波数帯域とが重なり合わないときに、それら2つの周波数帯域が重なり合うように、Vdc_Xがより小さな値に再設定される。
【0085】
その後、Vdc決定部244は、第1のバイアス電圧Vdc(t)_aを、周波数再設定部242が再設定したVdc_Xに設定し、第2のバイアス電圧Vdc(t)_bを、Vdc_minに設定する。Vdc決定部244は、設定した第1のバイアス電圧Vdc(t)_aを、第1のバイアス調整器272に出力し、設定した第2のバイアス電圧Vdc(t)_bを、第2のバイアス調整器274に出力する。
【0086】
第1のバイアス調整器272及び第2のバイアス調整器274への出力が終わると、カウント制御部232は、i=i+1に再設定する。次に、カウント制御部232は、i≦Nであるか否かを判定する。i≦Nでないとき、当該第1のバイアス調整器272及び第2のバイアス調整器274への出力処理を終了する。
【0087】
一方、i≦Nであるとき、Vdc決定部244は、次式(15)により、第1のバイアス電圧Vdc(t)_aを決定する。
Vdc(t)_a=Vdc_X+(Vdc_max−Vdc_X)/N×i
・・・(15)
即ち、第1のcMUT130に印加するバイアス電圧Vdc(t)_aを、Vdc_XとVdc_maxとの差をバイアス刻み数Nで等分した電圧だけ増加させる。
【0088】
fr,fa算出部236は、下記式(16)に基づいて、第1のバイアス電圧Vdc(t)_aより、バイアス電圧Vdc(t)_aのときの反共振周波数fa_iの値を算出する。
fa_i=g(Vdc(t)_a) ・・・(16)
また、fr,fa算出部236は、下記式(17)に基づいて、第2のバイアス電圧Vdc(t)_bより、バイアス電圧Vdc(t)_bのときの共振周波数fr_iの値を算出する。
fr_i=f(Vdc(t)_b) ・・・(17)
周波数判定部240は、fr_i≦fa_iであるか否かを判定する。
【0089】
fr_i≦fa_iであるとき、Vdc決定部244は、第1のバイアス電圧Vdc(t)_aを、第1のバイアス調整器272に出力し、第2のバイアス電圧Vdc(t)_bを、第2のバイアス調整器274に出力する。即ち、増加させた第1のバイアス電圧バイアス電圧Vdc(t)_aを第1のcMUT130に印加し、変化させていない第2のバイアス電圧Vdc(t)_bを第2のcMUT140に印加させたとき、それぞれのcMUTが機能する周波数が、互いに重なり合うときには、第2のバイアス電圧Vdc(t)_bは、前回の値から変化させずに、第2のcMUT140に印加される。
【0090】
一方、fr_i≦fa_iでないとき、Vdc決定部244は、次式(18)により、Vdc(t)_bを再設定する。
Vdc(t)_b=f−1(fa_i) ・・・(18)
その後、Vdc決定部244は、Vdc(t)_aをバイアス電圧として、第1のバイアス調整器272に出力し、再設定したVdc(t)_bをバイアス電圧として、第2のバイアス調整器274に出力する。即ち、本処理により、第1のcMUT130が機能する周波数帯域と第2のcMUT140が機能する周波数帯域とが隣接するように、第2のバイアス電圧Vdc(t)_bが再設定される。
【0091】
Vdc決定部244による、第1のバイアス調整器272及び第2のバイアス調整器274への出力の後、カウント制御部232は、i=i+1に設定し、再びi≦Nであるか否かを判定する。以降i≦Nである間、上記の処理を繰り返す。尚、これらの処理は、カウント制御部232により、時間(1/α)毎に行われるように制御されている。
この様に例えば、Vdc決定部230は、バイアス電圧決定部として機能する。
【0092】
以上により、図9(a)に示すように、第1のcMUT130に印加されるバイアス電圧は、時間経過とともに、Vdc_XからVdc_maxまで一定の割合で増加する。また、図9(b)に示すように、第2のcMUT140に印加されるバイアス電圧は、時間経過とともに、Vdc_minからVdc_Xまで、第1のcMUT130に印加されるバイアス電圧の増加に応じて増加する。その結果、第1のcMUT130と第2のcMUT140とを有するcMUTアレイ100は全体として、時間経過と共に、共振周波数fa_0から最大値frq_upまで機能する状態から、最小値frq_lowから反共振周波数fa_Xまで機能する状態へと変化して、全期間を通じると、最小値frq_lowから最大値frq_upまで機能する。
【0093】
本実施形態においても、第1の実施形態の場合と同様に、超音波画像取得時において、パルス発生器260はパルスを生成し、このパルスは、第1のcMUT130及び第2のcMUT140に印加される。ここで、このパルスが第1のcMUT130及び第2のcMUT140に印加されるタイミングは、時間t=0(i=0)のときである。即ち、パルス波を射出するとき、第1のcMUT130には、Vdc_Xのバイアス電圧が印加されており、第2のcMUT140には、Vdc_minのバイアス電圧が印加されている。そして、パルス波を射出後、第1のcMUT130及び第2のcMUT140に印加されるバイアス電圧は、増加する。
【0094】
上記のとおり、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、超音波画像取得時において、パルス発生器260は、コントロール部210の制御の下、パルスを生成する。生成されたパルスは、第1のバイアス調整器272を介して、第1のcMUT130に印加され、また、第2のバイアス調整器274を介して、第2のcMUT140に印加される。
【0095】
第1のcMUT130は、バイアス電圧値Vdc_Xが印加された状態でパルス波を射出し、その後、印加されるバイアス電圧が増加しながら、照射対象物内で反射した、超音波を受信する。同様に、第2のcMUT140は、バイアス電圧値Vdc_minが印加された状態でパルス波を射出し、その後、印加されるバイアス電圧が増加しながら、照射対象物内で反射した、超音波を受信する。
【0096】
反射波を受信した各cMUT110の上部電極112の振動により、上部電極112と下部電極114との電位差は変化する。各cMUT110における上部電極112と下部電極114との電位差を、各アンプ310が増幅し、その増幅された信号を各A/D変換器320がA/D変換する。変換により得られたデジタルエコー信号に基づいて、ビーム合成回路330は画像信号を取得する。この画像信号はDSC340を介して表示器420に送信され、この画像信号に基づいて表示器420は画像を表示する。
【0097】
前述のとおり、時間経過とともに、第1のcMUT130に印加されるバイアス電圧は、Vdc_XからVdc_maxまで増加し、第2のcMUT140に印加されるバイアス電圧は、Vdc_minからVdc_Xまで増加する。その結果、第1のcMUT130及び第2のcMUT140により構成されるcMUTアレイ100は、パルス波を射出した直後は、機能する周波数帯域は比較的高く、その後、機能する周波数帯域は、徐々に低くなる。
【0098】
パルス波を射出した直後にcMUTアレイ100が受信する超音波は、cMUTアレイ100から近いところで反射された超音波であるので、当該超音波は、比較的高い周波数成分を多く含む。その後、時間が経過するとともに、cMUTアレイ100が受信する超音波は、cMUTアレイ100から徐々に遠いところで反射された超音波となるので、当該超音波は、徐々に低い周波数成分を多く含むことになる。
【0099】
即ち、本実施形態によれば、時間経過とともに変化する受信する超音波に含まれる周波数成分に合わせて、適切なタイミングで、cMUTアレイ100が機能する周波数帯域が変化する。その結果、当該cMUTアレイ100は、効率よく超音波を受信でき、受信感度は良好であり、取得する画像の品質も向上する。更に、本実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0100】
なお、本実施形態において、cMUTアレイ100に近い範囲を画像化したい場合には、frq_upとfrq_lowとは、共に高くなるので、Vdc_minと、Vdc_Xと、Vdc_maxとは、共に低くなり、Vdc(t)_a及びVdc(t)_aも、低い値で推移することになる。
【0101】
なお、上記説明においては、時間t=0から、バイアス電圧を増加させるようにしたが、例えば、パルス波を射出してから、cMUTアレイ100から画像を取得したい最も近い部位までの間を超音波が往復する時間、即ち、t1=2×L1/c(ここで、cは媒質の音速)だけ、待機時間を設け、その後バイアス電圧を増加させるように構成してもよい。この場合、バイアス電圧を増加させる時間は、最大受信期間Tよりt1だけ短くなる。したがって、その分バイアス刻み数Nは、N=α(T−t1)のように小さくする。
【0102】
[第2の実施形態の変形例]
次に、第2の実施形態の変形例について、第2の実施形態との相違点に限定して説明する。第2の実施形態では、cMUTアレイ100を構成するcMUT110を、第1のcMUT130と第2のcMUT140の2つのグループに分けている。本変形例では、cMUTアレイ100を構成するcMUT110を、3つのグループに分ける。
【0103】
したがって、cMUTアレイ100は、第1のcMUTと、第2のcMUTと、第3のcMUTとを有する。そして、第1のcMUTのバイアス電圧は、第1のバイアス調整器によって調整され、第2のcMUTのバイアス電圧は、第2のバイアス調整器によって調整され、第3のcMUTのバイアス電圧は、第3のバイアス調整器によって調整される。
【0104】
この場合も、図10に示すように、最小値frq_lowからの最大値frq_upまでの周波数帯域で機能するように、Vdc算出部234は、バイアス電圧Vdc_min及びVdc_maxを算出する。その後、第2の実施形態の場合と同様に、fr,fa算出部236と、中間周波数算出部238と、周波数判定部240と、周波数再設定部242とによって、図10に示すように、3つのグループのcMUT110にそれぞれ印加する電圧、即ち第1のバイアス電圧Vdc_a(t)と、第2のバイアス電圧Vdc_b(t)と、第3のバイアス電圧Vdc_c(t)について、t=0におけるバイアス電圧値である、Vdc_a(0)と、Vdc_b(0)と、Vdc_c(0)を算出する。
【0105】
例えば、Vdc算出部234は、入力した周波数帯域の最小値frq_lowと関数fに基づいて、Vdc_max=f−1(frq_low)より、最大バイアス電圧値Vdc_maxを算出する。Vdc算出部222は、算出した最大バイアス電圧値Vdc_maxを、fr,fa算出部236に出力する。
【0106】
fr,fa算出部236は、入力した最大バイアス電圧値Vdc_maxと関数gとに基づいて、fa_1=g(Vdc_max)より、第1の判定用反共振周波数fa_1を算出する。第2の実施形態の場合と異なり本変形例では、fr,fa算出部236は、算出した第1の判定用反共振周波数fa_1を、Vdc算出部234に出力する。
【0107】
Vdc算出部234は、次に、第1の判定用反共振周波数fa_1以下の周波数である第1の判定用共振周波数fr_1を設定する。その後、第1の判定用共振周波数fr_1と関数fに基づいて、Vdc_a(0)=f−1(fr_1)より、第1のバイアス電圧値Vdc_a(0)を算出する。Vdc算出部234は、算出した第1のバイアス電圧値Vdc_a(0)を、fr,fa算出部236に出力する。
【0108】
fr,fa算出部236は、入力した第1のバイアス電圧値Vdc_a(0)と関数gに基づいて、fa_2=g(Vdc_a(0))より、第2の判定用反共振周波数fa_2を算出する。fr,fa算出部236は、前記と同様に、算出した第2の判定用反共振周波数fa_2を、Vdc算出部234に出力する。
【0109】
Vdc算出部234は、次に、第2の判定用反共振周波数fa_2以下の周波数である第2の判定用共振周波数fr_2を設定する。その後、第2の判定用共振周波数fr_2と関数fに基づいて、Vdc_b(0)=f−1(fr_2)より、第2のバイアス電圧値Vdc_b(0)を算出する。Vdc算出部234は、算出した第2のバイアス電圧値Vdc_b(0)を、fr,fa算出部236に出力する。
【0110】
fr,fa算出部236は、入力した第2のバイアス電圧値Vdc_b(0)と関数gに基づいて、fa_3=g(Vdc_b(0))より、第3の判定用反共振周波数fa_3を算出する。fr,fa算出部236は、前記と同様に、算出した第3の判定用反共振周波数fa_3を、Vdc算出部234に出力する。
【0111】
Vdc算出部234は、次に、第3の判定用反共振周波数fa_3以下の周波数である第3の判定用共振周波数fr_3を設定する。その後、第3の判定用共振周波数fr_3と関数fに基づいて、Vdc_b(0)=f−1(fr_3)より、第3のバイアス電圧値Vdc_c(0)を算出する。Vdc算出部234は、算出した第3のバイアス電圧値Vdc_c(0)を、fr,fa算出部236に出力する。
【0112】
fr,fa算出部236は、入力した第3のバイアス電圧値Vdc_c(0)と関数gに基づいて、fa_3=g(Vdc_b(0))より、第4の判定用反共振周波数fa_4を算出する。
周波数判定部240は、第4の判定用反共振周波数fa_4が最大値frq_up以上であるかを判定する。第4の判定用反共振周波数fa_4が最大値frq_up以下であれば、第1のバイアス電圧値Vdc_a(0)と、第2のバイアス電圧値Vdc_b(0)と、第3のバイアス電圧値Vdc_c(0)とを小さな値に再設定する。
【0113】
周波数判定部240は、第4の判定用反共振周波数fa_4が最大値frq_up以上となったら、Vdc決定部244は、第1のバイアス電圧値Vdc_a(0)を第1のバイアス調整器に、第2のバイアス電圧値Vdc_b(0)を第2のバイアス調整器に、第3のバイアス電圧値Vdc_c(0)を第3のバイアス調整器に、それぞれ出力する。
【0114】
その後、Vdc決定部244は、第1のバイアス電圧値Vdc_a(t)を、Vdc_a(0)から、時間経過と共にt=TのときにVdc_maxとなるように、徐々に増加させる。また、Vdc決定部244は、例えば、
g(Vdc_a(t))=f(Vdc_b(t)) ・・・(19)
となるように、Vdc_b(t)を決定し、
g(Vdc_b(t))=f(Vdc_c(t)) ・・・(20)
となるように、Vdc_c(t)を決定する。このように、第1のcMUT、第2のcMUT及び第3のcMUTが射出する超音波の周波数帯域が連続するようにバイアス電圧を調整する。周波数帯域が連続するように設定されれば、この他の設定方法でもよい。
【0115】
Vdc決定部244は、第1のバイアス電圧Vdc_a(t)を第1のバイアス調整器に出力し、第2のバイアス電圧Vdc_b(t)を第2のバイアス調整器に出力し、第3のバイアス電圧Vdc_c(t)を第3のバイアス調整器に出力する。第1のバイアス調整器は、第1のcMUTにバイアス電圧を印加し、第2のバイアス調整器は、第2のcMUTにバイアス電圧を印加し、第3のバイアス調整器は、第3のcMUTにバイアス電圧を印加する。
【0116】
以上説明したとおり本変形例によれば、cMUTアレイ100を構成するcMUT110のグループの数を増やすことができる。グループ数をより増やせば、cMUTアレイ100は、全体としてより広い周波数帯域で機能することができる。更に、第2の実施形態と同様の効果も得られる。
【0117】
なお、図10に示す例は、g(Vdc_max)=f(Vdc_a(0))、g(Vdc_a(0))=f(Vdc_b(0))、g(Vdc_b(0))=f(Vdc_c(0))、g(Vdc_c(0))=f(Vdc_min)となる特殊な例である。
【0118】
また、前記のバイアス電圧値の決定方法では、周波数判定部240は、第4の判定用反共振周波数fa_4が最大値frq_up以上であるかを判定しているが、周波数帯域の最大値frq_upまで、cMUTアレイ100が機能する必要がない場合、この判定は、不要である。その場合、バイアス電圧値が大きい方から順に、バイアス電圧値を決定しているので、低周波数側の周波数帯域で確実に機能することができるように、各バイアス電圧値を決定できる。即ち、このような決定方法は、cMUTアレイ100から遠い側で反射される情報を確実に取得したいときに有利である。
【0119】
また、バイアス電圧値が小さい方から順に各バイアス電圧値を決定してもよい。その場合、cMUTアレイ100から近い側で反射される情報を確実に取得したいときに有利である。
【0120】
更に、グループの数は、本変形例と同様にして、4つ以上とすることもできる。グループの数がより増えれば、機能する周波数帯域をより増やすことができる。この場合、第2の実施形態と本変形例との違いと同様に、グループ数に合わせて、各構成要素の数を増減させて機能させればよい。
【0121】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。ここで第3の実施形態の説明では、第2の実施形態との相違点に限定して説明し、同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。第2の実施形態においては、第1のバイアス電圧Vdc_a(t)と第2のバイアス電圧Vdc_b(t)とを、同時に変化させている。これに対して、本実施形態においては、例えばcMUTアレイ100から近い部分を特に精度良く画像化したい場合などに適する実施形態である。
【0122】
即ち、第1のcMUT130と第2のcMUT140とのうち、比較的低いバイアス電圧が印加され、比較的高い周波数帯域で機能する第2のcMUT140に印加するバイアス電圧は、パルス波を射出してからしばらくの間は変化させない。その後、cMUTアレイ100から近い部分で反射した超音波が、cMUTアレイ100に全て到達したと思われる時間が経過したら、第2のcMUT140に印加するバイアス電圧を上昇させる。一方で、比較的高いバイアス電圧が印加され、比較的低い周波数帯域で機能する第1のcMUT130に印加するバイアス電圧は、パルス波を射出した直後から、第2のcMUT140に印加するバイアス電圧を上昇させ始めるまでの間、増加させる。その後、第2のcMUT140に印加するバイアス電圧を上昇させ始めてからは、第1のcMUT130に印加するバイアス電圧は、一定値に維持する。
【0123】
本実施形態に係るコントロール部210の構成を、図11に示す。本実施形態に係るコントロール部210は、図6を参照して説明した、第2の実施形態に係るコントロール部210の最大受信期間算出部216を、切替期間算出部218に置き換えたものである。切替期間算出部218は、深さL1及びL2と、例えば次式(21)に基づいて、切替期間Tcを算出する。
T=(L2−L1)/2c ・・・(21)
ここで、cは媒質の音速である。したがって、式(21)で求まる切替期間Tcは、cMUTアレイ100から、画像を取得したい最も遠い部位と最も近い部位との中間位置までを、超音波が往復する時間を示す。
コントロール部210は、図11に示すように、最大値frq_upと、最小値frq_lowと、切替期間Tcとを、帯域制御部220に出力する。
【0124】
帯域制御部220の動作について、第2の実施形態と異なる点を、図12を参照して説明する。まず、帯域制御部220内のカウント制御部232は、カウント用の変数iを0に設定する。また、カウント制御部232は、コントロール部210から入力した切替期間Tcに基づいて、例えば定数βを用いて、N=βTcより、バイアス刻み数Nを算出する。
【0125】
その後、第2の実施形態の場合と同様に、Vdc算出部234、fr,fa算出部236、中間周波数算出部238、周波数判定部240、及び周波数再設定部242によって、第1のバイアス電圧値Vdc(t)_aの初期値となるVdc_Xと、第2のバイアス電圧値Vdc(t)_bの初期値となるVdc_minとを算出する。
【0126】
その後、Vdc決定部244は、第1のバイアス電圧Vdc(t)_aを、Vdc_Xに設定し、第2のバイアス電圧Vdc(t)_bを、Vdc_minに設定する。Vdc決定部244は、設定した第1のバイアス電圧Vdc(t)_aを、第1のバイアス調整器272に出力し、設定した第2のバイアス電圧Vdc(t)_bを、第2のバイアス調整器274に出力する。
【0127】
Vdc決定部244による、第1のバイアス調整器272及び第2のバイアス調整器274への出力の後、カウント制御部232は、i=i+1に再設定する。次に、カウント制御部232は、i≦Nであるか否かを判定する。i≦Nのとき、Vdc決定部244は、下記式(22)により、第1のバイアス電圧Vdc(t)_aを決定し、下記式(23)により、第2のバイアス電圧Vdc(t)_bを決定する。
【0128】
Vdc(t)_a=Vdc_X+(Vdc_max−Vdc_X)/N×i
・・・(22)
Vdc(t)_b=Vdc(t)_b ・・・(23)
即ち、第1のcMUT130に印加するバイアス電圧Vdc(t)_aを、Vdc_XとVdc_maxとの差をバイアス刻み数Nで等分した電圧だけ増加させる。一方、第2のcMUT140に印加するバイアス電圧Vdc(t)_bは、変化させない。
【0129】
その後、Vdc決定部244は、Vdc(t)_aをバイアス電圧として、第1のバイアス調整器272に出力し、Vdc(t)_bをバイアス電圧として、第2のバイアス調整器274に出力する。
【0130】
Vdc決定部244による、第1のバイアス調整器272及び第2のバイアス調整器274への出力の後、カウント制御部232は、i=i+1に設定し、再びi≦Nであるか否かを判定する。以降i≦Nである間、上記の処理を繰り返す。尚、これらの処理は、カウント制御部232により、時間(1/2β)毎に行われるように制御されている。
一方、i≦Nでないとき、Vdc決定部244は、i≦2Nであるか否かを判定する。i≦2Nであるとき、Vdc決定部244は、次式(24)により、第1のバイアス電圧Vdc(t)_aを決定し、次式(25)により、第2のバイアス電圧Vdc(t)_bを決定する。
【0131】
Vdc(t)_a=Vdc(t)_a ・・・(24)
Vdc(t)_b=Vdc_min
+(Vdc_X−Vdc_min)/N×(i−N) ・・・(25)
即ち、第1のcMUT130に印加するバイアス電圧Vdc(t)_aは、変化させない。一方、第2のcMUT140に印加するバイアス電圧Vdc(t)_bを、Vdc_minとVdc_Xとの差をバイアス刻み数Nで等分した電圧だけ増加させる。
【0132】
その後、Vdc決定部244は、Vdc(t)_aをバイアス電圧として、第1のバイアス調整器272に出力し、Vdc(t)_bをバイアス電圧として、第2のバイアス調整器274に出力する。
【0133】
Vdc決定部244による、第1のバイアス調整器272及び第2のバイアス調整器274への出力の後、カウント制御部232は、i=i+1に設定し、再びi≦Nであるか否かと、i≦2Nであるか否かを判定する。以降i≦2Nである間、上記の処理を繰り返す。尚、これらの処理も、カウント制御部232により、時間(1/2β)毎に行われるように制御されている。その後、i≦2Nでなくなると、当該第1のバイアス調整器272及び第2のバイアス調整器274への出力処理を終了する。
【0134】
以上により、図13(a)に示すように、第1のcMUT130に印加されるバイアス電圧は、時刻t=0からt=Tcまで、時間経過とともに、Vdc_XからVdc_maxまで一定の割合で増加する。即ち、図8に示すように、時間経過とともに、第1のcMUT130は、共振周波数fa_0から反共振周波数fa_Xまで機能する状態から、最小値frq_lowから反共振周波数fa_0まで機能する状態へと変化する。その後、第1のcMUT130に印加されるバイアス電圧は、時刻t=Tcからt=2Tcまで、Vdc_maxで一定となる。即ち、第1のcMUT130は、最小値frq_lowからfa_0まで機能する状態で維持される。
【0135】
また、図13(b)に示すように、第2のcMUT140に印加されるバイアス電圧は、時刻t=0からt=Tcまで、Vdc_minで一定となる。即ち、第2のcMUT140は、図8に示すように、共振周波数fr_0から最大値frq_upまで機能する状態で維持される。その後、第2のcMUT140に印加されるバイアス電圧は、時刻t=Tcからt=2Tcまで、時間経過とともに、Vdc_minからVdc_Xまで一定の割合で増加する。即ち、時間経過とともに、第2のcMUT140は、共振周波数fr_0から最大値frq_upまで機能する状態から、共振周波数fa_0から反共振周波数fa_Xまで機能する状態へと変化する。
【0136】
本実施形態においても、第2の実施形態の場合と同様に、超音波画像取得時において、パルス発生器260は、パルスを生成し、このパルスは、第1のcMUT130及び第2のcMUT140に印加される。ここで、このパルスが第1のcMUT130及び第2のcMUT140に印加されるタイミングは、時間t=0(i=0)のときである。即ち、パルス波を射出するとき、第1のcMUT130には、Vdc_Xのバイアス電圧が印加されており、第2のcMUT140には、Vdc_minのバイアス電圧が印加されている。そして、パルス波を射出後、時間t=Tcまで、第1のcMUT130に印加されるバイアス電圧は増加し、その後一定となり、第2のcMUT140に印加されるバイアス電圧は、時間t=Tcまで一定であり、その後増加する。
【0137】
第1のcMUT130は、バイアス電圧値Vdc_Xが印加された状態でパルス波を射出し、その後、照射対象物内で反射した超音波を受信する。同様に、第2のcMUT140は、バイアス電圧値Vdc_minが印加された状態でパルス波を射出し、その後、照射対象物内で反射した超音波を受信する。第1のcMUT130及び第2のcMUT140が受信した信号に基づいて、超音波画像が得られる。
【0138】
本実施形態によれば、cMUTアレイ100から近い部分を特に精度良く画像化することができる。即ち、cMUTアレイ100から近い部分で反射して、cMUTアレイ100に到達する超音波は、比較的高い周波数を有している。本実施形態においては、第2のcMUT140に印加するバイアス電圧は、パルス波を射出してから時間Tcまでの間は、低い値であるVdc_minから変化させない。即ち、第2のcMUT140は、パルス波を射出してから時間Tcまでの間は、比較的高い周波数帯域で機能する。その間、比較的低い周波数を有する超音波は、バイアス電圧が徐々に上昇する第1のcMUTによって受信される。
【0139】
時間Tcが経過した後は、cMUTアレイ100に到達する超音波は、cMUTアレイ100から遠い部分で反射した超音波を多く含むので、比較的低い周波数の超音波を多く含む。そこで、第2のcMUT140が機能する周波数帯域を徐々に低下させるため、第2のcMUT140に印加されるバイアス電圧は徐々に上昇する。
【0140】
このように本実施形態によれば、cMUTアレイ100から近い部分を特に精度良く画像化することができるとともに、バイアス電圧の調整によって、低周波数の超音波も良好に受信することができるので、cMUTアレイ100から遠い部分も、良好な画像を得ることができる。
また、第2のcMUTに印加するバイアス電圧を変化させずに、一定に保っても同様の効果が得られる。
【0141】
なお、本実施形態においては、cMUTアレイ100から近い部分を特に精度良く画像化するため、高い周波数の超音波を効率よく捉えるよう、第2のcMUT140に印加するバイアス電圧は、低くしたまま維持するよう構成されている。これとは逆に、cMUTアレイ100から遠い部分を特に精度良く画像化するため、低い周波数の超音波を効率よく捉えるよう、例えば第1のcMUT130に印加するバイアス電圧を、高いまま維持するように構成してもよい。
【0142】
また、第1のcMUT130に印加するバイアス電圧を高いまま維持するとき、もう一方の第2のcMUT140に印加するバイアス電圧を、高いほうから低いほうに徐々に下げるようにしてもよい。このように、バイアス電圧を徐々に下げると、徐々に高い周波数に対する感度がよくなり、その結果、音の伝搬の非線形成に伴って生じる、高調波成分を有する超音波を受信することができるという効果が得られる。
【0143】
尚、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても、発明が解決しようとする課題の欄で述べられた課題が解決でき、かつ、発明の効果が得られる場合には、この構成要素が削除された構成も発明として抽出され得る。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0144】
100…cMUTアレイ、110…cMUT、112…上部電極、114…下部電極、116…空隙、130…第1のcMUT、140…第2のcMUT、210…コントロール部、212…初期周波数設定部、214…最終周波数設定部、216…最大受信期間算出部、218…切替期間算出部、220…帯域制御部、222…Vdc算出部、224…fr,fa算出部、226…周波数判定部、228…周波数再設定部、230…Vdc決定部、232…カウント制御部、234…Vdc算出部、236…fr,fa算出部、238…中間周波数算出部、240…周波数判定部、242…周波数再設定部、244…Vdc決定部、260…パルス発生器、272…第1のバイアス調整器、274…第2のバイアス調整器、290…記憶部、310…アンプ、320…D変換器、330…ビーム合成回路、340…デジタルスキャンコンバータ、410…入力部、420…表示器。
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波プローブ装置、特に静電容量型超音波素子を有する超音波プローブ装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、超音波素子として、静電容量型の超音波素子(capasitive Micromachined Ultrasonic Transducers;cMUT)が注目されている。一般に、cMUTは、基板上に配置された下部電極と、下部電極と対向する薄膜内に配置された上部電極と、下部電極及び上部電極の間に位置する空洞部とを有する。下部電極と上部電極との間に電圧を印加すると、当該電極間で静電容量が変化し、前記薄膜が振動する。この振動により、cMUTは超音波を射出する。即ち、cMUTは、超音波を送信することができる。また、cMUTが超音波を受けると、前記薄膜は振動する。この振動により、下部電極と上部電極とに帯電する電荷が変化する。この電荷の変化を検出することで、cMUTは、超音波を検出することができる。即ち、cMUTは、超音波を受信することができる。cMUTが、上記のように超音波を送受信する際には、下部電極と上部電極との間に直流バイアス電圧を印加し、下部電極と上部電極を予め帯電させておくことが、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
そして、そのようなcMUTから超音波を送信し、当該cMUTでその反射波を受信することで、超音波画像を取得する超音波プローブ装置が知られている。このようなcMUTを用いた超音波画像の取得において、超音波の受信効率を向上させる技術が、例えば特許文献2に開示されている。短い距離を伝搬する超音波は受信時の振幅が十分大きい。このことを考慮して、特許文献2に開示されている技術においては、cMUTの近くで反射した超音波を当該cMUTが受信する際には、印加する前記直流バイアス電圧を小さく設定している。また、長い距離を伝搬する超音波は受信時の振幅が小さいため、前記直流バイアス電圧が低いと検出感度が低くなってしまう。このことを考慮して、cMUTの遠くで反射した超音波を当該cMUTが受信する際には、超音波に対して感度がよくなるように、印加する前記直流バイアス電圧を大きく設定している。また、特許文献2には、近くで反射した超音波と遠くで反射した超音波とを連続的に受信するために、直流バイアス電圧を徐々に大きくすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2005−510264号公報
【特許文献2】特開2006−122344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1及び特許文献2に係る技術では、送受信したい超音波の周波数に合わせてcMUTに印加する直流バイアス電圧を変化させている。しかしながら、cMUTにおいては、送受信できる超音波の周波数帯域をシフトさせるのみならず、送受信できる周波数帯域の幅を広くすることが好ましい。
【0006】
そこで本発明は、送受信できる周波数帯域を広帯域化したcMUTを有する、超音波プローブ装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を果たすため、本発明に係る超音波プローブ装置の一態様は、印加される直流バイアス電圧のバイアス電圧値に応じて送受信できる超音波の周波数範囲が変化する静電容量型超音波振動子を、複数具備する超音波プローブ装置であって、前記複数の静電容量型超音波振動子の各々は、複数のグループのうちの何れか1つに属し、該複数のグループの各々は、少なくとも1つの該静電容量型超音波振動子を含み、当該超音波プローブ装置の動作期間内で、連続した周波数帯である動作周波数に含まれる全ての周波数が、当該超音波プローブ装置によって送信及び/又は受信されるように、前記グループ毎に異なる前記バイアス電圧値と、当該バイアス電圧値を有する直流バイアス電圧を印加するタイミングとを決定する帯域制御部と、前記帯域制御部が決定する前記バイアス電圧値と前記タイミングとに応じて、前記静電容量型超音波振動子に印加する前記直流バイアス電圧を変更する、バイアス電圧変更手段と、を具備することを特徴とする。
【0008】
また、前記目的を果たすため、本発明に係る超音波プローブ装置の制御方法の一態様は、印加される直流バイアス電圧のバイアス電圧値に応じて、送受信できる超音波の周波数範囲が変化する、静電容量型超音波振動子を複数具備し、前記複数の静電容量型超音波振動子の各々は、m個(mは2以上の自然数)のグループのうちの何れか1つに属し、該m個のグループの各々は、少なくとも1つの前記静電容量型超音波振動子を含む、超音波プローブ装置の制御方法であって、n(nはm以下の自然数)が1のとき、前記直流バイアス電圧を印加したときに前記静電容量型超音波振動子によって送信及び/又は受信できる超音波の周波数範囲である送受信可能周波数と、前記バイアス電圧値との関係である、バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、当該超音波プローブ装置が送信及び/又は受信する連続した周波数帯である動作周波数の最低値が、前記送受信可能周波数の最低値となる第1のバイアス電圧値を算出し、nが2以上のとき、前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、第nのバイアス電圧値を、該第nのバイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの前記送受信可能周波数の最低値が、第(n−1)のバイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの前記送受信可能周波数の最高値以下となるように決定し、第n番目のグループに属する前記静電容量型超音波振動子に、前記第nのバイアス電圧値を有する前記直流バイアス電圧を印加する、ことを特徴とする。
【0009】
また、前記目的を果たすため、本発明に係る超音波プローブ装置の制御方法の別の一態様は、印加される直流バイアス電圧のバイアス電圧値に応じて、送受信できる超音波の周波数範囲が変化する、静電容量型超音波振動子を複数具備し、前記複数の静電容量型超音波振動子の各々は、m個(mは2以上の自然数)のグループのうちの何れか1つに属し、該m個のグループの各々は、少なくとも1つの前記静電容量型超音波振動子を含む超音波プローブ装置の制御方法であって、前記直流バイアス電圧を印加したときに前記静電容量型超音波振動子によって送信及び/又は受信できる超音波の周波数範囲である送受信可能周波数と、前記バイアス電圧値との関係である、バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、当該超音波プローブ装置が送信及び/又は受信する連続した周波数帯である動作周波数の最低値が、前記送受信可能周波数の最低値となる第1のバイアス電圧値を算出し、前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、第2のバイアス電圧値を、該第2のバイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの前記送受信可能周波数の最低値が、前記第1のバイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最高値以下となるように決定し、動作期間中の時間経過と共に、第n番目(nはm以下の自然数)のグループに属する前記静電容量型超音波振動子に印加する前記直流バイアス電圧の前記バイアス電圧値である、第n印加バイアス電圧値の、nが1であるときの値である第1印加バイアス電圧値を、前記第2のバイアス電圧値から前記第1のバイアス電圧値まで変化させ、nが2以上のとき、前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、第n印加バイアス電圧値を、該第n印加バイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの前記送受信可能周波数の最低値が、第(n−1)印加バイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最高値以下となるように決定し、第n番目のグループに属する前記静電容量型超音波振動子に、前記第n印加バイアス電圧値を有する前記直流バイアス電圧を印加する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、異なるcMUTに異なるバイアス電圧を印加することで、送受信できる周波数帯域を広帯域化した、複数のcMUTを有する、超音波プローブ装置及びその制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る超音波プローブ装置の構成例を示すブロック図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る超音波プローブ装置のcMUTに印加するバイアス電圧の決定に係る一部分の構成例を示すブロック図。
【図3】cMUTにおける、印加するバイアス電圧に応じたインピーダンスの周波数特性の一例を示す図。
【図4】cMUTにおける、印加するバイアス電圧と共振周波数との関係、及び印加するバイアス電圧と反共振周波数との関係の一例を示す図。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る超音波プローブ装置のcMUTに印加するバイアス電圧の決定方法の一例を説明するための図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る超音波プローブ装置のcMUTに印加するバイアス電圧の決定に係る一部分の構成例を示すブロック図。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る超音波プローブ装置のcMUTに印加するバイアス電圧の決定に係る一部分の構成例を示すブロック図。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る超音波プローブ装置のcMUTに印加するバイアス電圧の一例を説明するための図。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る超音波プローブ装置のcMUTに印加するバイアス電圧の概略を説明するための図であって、(a)は、第1のcMUTに印加するバイアス電圧の概略を示す図であり、(b)は、第2のcMUTに印加するバイアス電圧の概略を示す図。
【図10】本発明の第2の実施形態の変形例に係る超音波プローブ装置のcMUTに印加するバイアス電圧の一例を説明するための図。
【図11】本発明の第3の実施形態に係る超音波プローブ装置のcMUTに印加するバイアス電圧の決定に係る一部分の構成例を示すブロック図。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る超音波プローブ装置のcMUTに印加するバイアス電圧の決定に係る一部分の構成例を示すブロック図。
【図13】本発明の第3の実施形態に係る超音波プローブ装置のcMUTに印加するバイアス電圧の概略を説明するための図であって、(a)は、第1のcMUTに印加するバイアス電圧の概略を示す図であり、(b)は、第2のcMUTに印加するバイアス電圧の概略を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の実施形態]
まず、本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態に係る超音波プローブ装置の構成の概略を図1に示す。本超音波プローブ装置は、超音波源としてcapasitive Micromachined Ultrasonic Transducers(cMUT)を用いている。本超音波プローブ装置は、複数のcMUT110からなるcMUTアレイ100を有する。cMUTアレイ100において、cMUT110は、超音波の射出方向を一方向に揃えて、平面状に配置されている。
【0013】
各cMUT110は、互いに対向する上部電極112と下部電極114とを有している。上部電極112と下部電極114との間には、空隙116が設けられている。各cMUT110の、上部電極112と下部電極114との間に交流電圧が印加されると、当該電極間の電気容量が変化し、当該電極間に働く静電吸引力が変化する。下部電極114及びその周辺の構造物は固定されているので、静電吸引力の変化によって、上部電極112及びその周辺の構造物が振動する。したがって、各cMUT110は、上部電極112と下部電極114との間に交流電圧が印加されると、超音波を発生する。このように、cMUT110は、超音波を送信することができる。
【0014】
また、各cMUT110に超音波が入射すると、上部電極112及びその周辺の構造物は、振動する。その結果、上部電極112と下部電極114との間の電気容量が変化する。この上部電極112と下部電極114との間の電気容量の変化を計測することによって、超音波の入射を検出することができる。このように、cMUT110は、超音波を受信することができる。超音波プローブ装置は、このようなcMUT110の超音波送受信機能を利用して、超音波による物体の内部画像の取得を行うものである。
【0015】
cMUT110は、上部電極112と下部電極114との間に予めバイアス電圧を印加しておくと、上部電極112の振動の周波数特性が変化する。印加するバイアス電圧がより高い程、上部電極112の共振周波数がより低くなる。したがって、印加するバイアス電圧がより高い程、cMUT110は、より低い周波数の超音波を射出することができ、また、より低い周波数の超音波を受信することができる。逆に、印加するバイアス電圧がより低い程、上部電極112の共振周波数がより高くなる。したがって、印加するバイアス電圧がより低い程、cMUT110は、より高い周波数の超音波を射出することができ、また、より高い周波数の超音波を受信することができる。
【0016】
本実施形態では、cMUTアレイ100に属するcMUT110は、2つのグループに分けられている。即ち、cMUTアレイ100は、第1のグループを形成するcMUT110と、第2のグループを形成するcMUT110とを有している。第1のグループのcMUT110には高いバイアス電圧が印加され、第2のグループのcMUT110には低いバイアス電圧が印加される。これにより、cMUTアレイ100全体を1つの送受信部と見なしたときに、送受信できる超音波の周波数帯域が広げることができる。以下、第1のグループのcMUT110を第1のcMUT130と記し、第2のグループのcMUTを第2のcMUT140と記す。
【0017】
本超音波プローブ装置は、cMUTアレイ100から超音波を射出させるために、コントロール部210と、帯域制御部220と、パルス発生器260と、第1のバイアス調整器272と、第2のバイアス調整器274と、記憶部290とを有する。また、本超音波プローブ装置は、cMUTアレイ100に超音波を検出させるために、複数のアンプ310と、複数のA/D変換器320と、ビーム合成回路330と、デジタルスキャンコンバータ(DSC)340とを有する。また、本超音波プローブ装置は、入力部410と表示器420とを有する。
【0018】
入力部410は例えばキーボードであって、コントロール部210と接続している。ユーザはこのキーボードを使用して、画像取得を行いたい部分の深さ(所望の深さ)の情報を入力する。入力された深さ情報はコントロール部210に出力される。コントロール部210は、入力された深さ情報に基づいて、cMUTアレイ100が射出する超音波の周波数帯域を決定し、当該帯域に係る値を帯域制御部220に出力する。また、コントロール部210は、パルス発生器260を制御する。また、コントロール部210は、本超音波プローブ装置全体の制御を行う。したがって、コントロール部210は、例えばビーム合成回路330とも接続している。また、コントロール部210は記憶部290とも接続している。よって、本超音波プローブ装置の各部の制御を行う際に、コントロール部210は記憶部290に記憶されている情報を適宜用いることができる。また、コントロール部210は、表示器420に接続しており、表示器420に必要な情報を表示させることができる。
【0019】
帯域制御部220には、コントロール部210から周波数帯域に係る値が入力される。入力された値に基づいて、帯域制御部220は2種類のバイアス調整値を算出する。この2種類のバイアス調整値は、cMUTアレイ100が射出する超音波の周波数帯域が、所望の深さの画像取得するときの周波数帯域を満たすために必要な値である。帯域制御部220は、算出した2種類のバイアス調整値のうち、一方(第1)のバイアス調整値を第1のバイアス調整器272に出力し、他方(第2)のバイアス調整値を第2のバイアス調整器274に出力する。また、帯域制御部220は、2種類のバイアス調整値を、表示器420に出力する。なお、帯域制御部220も、コントロール部210を介して記憶部290と接続している。よって、帯域制御部220は記憶部290に記憶されている情報を適宜読みだして、読み出した情報を用いることができる。
【0020】
パルス発生器260は、コントロール部210の制御の下、パルス信号を発生し、それを第1のバイアス調整器272及び第2のバイアス調整器274に出力する。第1のバイアス調整器272には、帯域制御部220から第1のバイアス調整値が入力されると共に、パルス発生器260からパルス信号が入力される。そして、第1のバイアス調整器272は駆動信号を、第1のcMUT130の各々に出力する。この駆動信号は、第1のバイアス調整値に基づいて調整されたバイアス電圧にパルス信号が重畳した信号である。一方、第2のバイアス調整器274には、帯域制御部220から第2のバイアス調整値が入力されると共に、パルス発生器260からパルス信号が入力される。そして、第2のバイアス調整器274も第1のバイアス調整器272と同様に、駆動信号を各第2のcMUT140に出力する。この駆動信号は、第2のバイアス調整値に基づいて調整したバイアス電圧にパルス信号が重畳した信号である。この様に、例えば第1のバイアス調整器272及び第2のバイアス調整器274は、バイアス電圧変更手段として機能する。なお、帯域制御部220から表示器420までの信号線、帯域制御部220から第1のバイアス調整器272までの信号線、及び帯域制御部220からと第2のバイアス調整器274までの信号線は、最初から別々の信号線であっても良い。
【0021】
一方、複数のアンプ310は、それぞれ1つのcMUT110と接続している。各アンプ310には、各cMUT110の上部電極112と下部電極114との電位差がcMUT110の出力信号として入力され、各アンプ310は当該出力信号を増幅する。各アンプ310は、増幅した信号を、それぞれA/D変換器320に出力する。各A/D変換器320には、アンプ310から増幅信号が入力される。各A/D変換器320は、入力された信号をA/D変換し、変換により得られたデジタル信号(以降、デジタルエコー信号と称する)を、ビーム合成回路330に出力する。
【0022】
ビーム合成回路330には、各A/D変換器320からデジタルエコー信号が入力される。ビーム合成回路330は、各A/D変換器320から入力されたデジタルエコー信号を合成し、画像信号を生成する。ビーム合成回路330は、生成した画像信号を、コントロール部210やDSC340に出力する。DSC340には、ビーム合成回路330から画像信号が入力される。DSC340は、ビーム合成回路330から入力した画像信号に基づいて、表示用信号を作成する。この表示用信号は、例えばモニタである表示器420に表示させるための信号である。DSC340は、作成した表示用信号を、表示器420に出力する。表示器420には、DSC340から表示用信号が入力される。これにより、表示器420は、当該表示用信号に基づいて画像を表示する。また、表示器420には、帯域制御部220からバイアス調整値が入力される。これにより、表示器420は当該バイアス調整値を表示する。
【0023】
ここで、表示器420に表示されるのは、(1)2種類のバイアス調整値そのものの数値、(2)第1のcMUT130と第2のcMUT140とのそれぞれの周波数帯域の数値、(3)第1のcMUT130と第2のcMUT140とを合わせたときの周波数帯域の数値、(4)数値をグラフィカルに表わしたもの、(5)上記(1)〜(4)の組合せのいずれでもよい。
【0024】
帯域制御部220の構成を、図2を参照して更に説明する。帯域制御部220は、図2に示すように、Vdc算出部222と、fr,fa算出部224と、周波数判定部226と、周波数再設定部228と、Vdc決定部230とを有する。Vdc算出部222には、コントロール部210から、前記周波数帯域に係る値が入力される。Vdc算出部222と、fr,fa算出部224と、周波数判定部226と、周波数再設定部228は所定の演算を行ってバイアス調整値を算出し、Vdc決定部230は、バイアス調整値を決定する。Vdc決定部230は、決定したバイアス調整値を、第1のバイアス調整器272と、第2のバイアス調整器274と、表示器420とに出力する。帯域制御部220内の各部の詳細については、本実施形態に係る超音波プローブ装置の動作の説明とともに後述する。
【0025】
次に、本実施形態に係る超音波プローブ装置の動作を、図面を参照して説明する。まず、本実施形態に係る、超音波の射出について説明する。まず入力部410は、例えばcMUTアレイ100から画像を取得したい部分までの最も遠い位置までの距離、即ち、画像を取得したい部分の最も深い部分の深さLを、ユーザから取得する。入力部410は、例えばキーボードであり、ユーザは当該キーボードから深さLの値を入力する。入力部410は、取得した深さLの値を、コントロール部210に出力する。
【0026】
また、入力部410は、キーボードに限らず、ボタン、レバー、つまみを用いたもの等、深さLの値を入力できるものならば、どのようなものでもよい。また、入力部410は、マウスであってもよい。この場合、ユーザは、マウスを使って、表示器420に表示された画像から深さLの値を選択したり、増加又は減少を指示するボタンを選択して深さLの値を決定したりすることができる。また、表示器420に表示させた画像の一部を選択することで、当該画像と関連付けられた深さLの値を決定することができる。これらの場合、コントロール部210、マウスである入力部410、及び表示器420が連携して深さLの値を取得する。
【0027】
深さLの値を取得したコントロール部210は、深さLの値に基づいて、最小値frq_low及び最大値frq_upを決定する。最小値frq_low及び最大値frq_upは前述した周波数帯域に係る値であって、cMUTアレイ100が機能する周波数帯域を表わす値である。コントロール部210は、決定した最小値frq_low及び最大値frq_upを、帯域制御部220内のVdc算出部222に出力する。
【0028】
ここで、コントロール部210は、深さLの値から、最小値frq_low及び最大値frq_upを決定するために、例えば以下の方法を用いる。例えば、深さLと最小値frq_low及び最大値frq_upとの関係を、記憶部290にテーブルとして記憶しておき、当該関係に基づいて、深さLの値から、最小値frq_low及び最大値frq_upを決定してもよい。また、記憶部290に、深さLと最小値frq_low及び最大値frq_upとの関係を示す式を記憶しておき、当該式に基づいて、深さLの値から、最小値frq_low及び最大値frq_upを算出してもよい。このように、記憶部290は、距離(深さ)−周波数に関する記憶部として機能する。
【0029】
帯域制御部220内のVdc算出部222には、コントロール部210が出力した最小値frq_low及び最大値frq_upが入力される。Vdc算出部222は、最小値frq_lowに基づいて、第1のバイアス電圧値Vdc_1を算出し、最大値frq_upに基づいて、第2のバイアス電圧値Vdc_2を算出する。
【0030】
ここで、第1のバイアス電圧値Vdc_1及び第2のバイアス電圧値Vdc_2の算出について図面を参照して説明する。図3は、cMUT110における振動周波数と電気的インピーダンスとの関係(特性)の一例を示している。図3において、横軸は周波数で、縦軸はインピーダンスである。また、図3において、点線、一点鎖線、破線、実線、二点鎖線の各々は、上部電極112と下部電極114との間に印加するバイアス電圧(以下、単にバイアス電圧と称する)が、60V、90V、130V、165V、200Vのときの特性を示している。図3に示すように、バイアス電圧が異なっても、周波数とインピーダンスとの全体的な傾向は、類似である。即ち、cMUT110のインピーダンスは、周波数が増加するに従って、徐々に減少し、極小値をとり、その後上昇して極大値をとり、再び減少する。
【0031】
ここで、インピーダンスが極小値となる周波数は、当該cMUT110の共振周波数であり、インピーダンスが極大値となる周波数は、当該cMUT110の反共振周波数である。各cMUT110が機能する周波数帯域は、ここで示した共振周波数から反共振周波数までの周波数帯域である。
【0032】
図3に示すように、バイアス電圧が異なると、共振周波数及び反共振周波数も異なる。より詳しくは、cMUT110の共振周波数及び反共振周波数は、バイアス電圧が高い程、低くなり、バイアス電圧が低い程、高くなる。したがって、cMUT110が機能する周波数帯域は、バイアス電圧が高い程、低くなり、バイアス電圧が低い程、高くなる。
【0033】
図4に、バイアス電圧Vdcと共振周波数frとの関係、及びバイアス電圧Vdcと反共振周波数faとの関係の一例を示す。この図に示すように、cMUT110の特性に応じて、バイアス電圧Vdcと共振周波数frとの関係は、関数fによって、
fr=f(Vdc) ・・・(1)
と表される。また、cMUT110の特性に応じて、バイアス電圧Vdcと反共振周波数faとの関係は、関数gによって、
fa=g(Vdc) ・・・(2)
と表される。本実施形態において、上記式(1)及び上記式(2)は、記憶部290に記憶されており、帯域制御部220は、コントロール部210を介して、上記式(1)及び上記式(2)を読み出すことができる。
【0034】
再び図2を参照して、本実施形態に係る動作を説明する。本実施形態において、Vdc算出部222は、式(1)を用いて、コントロール部210から入力した最小値frq_lowより、第1のバイアス電圧値Vdc_1を、下記式(3)に基づいて算出する。
Vdc_1=f−1(frq_low) ・・・(3)
同様に、Vdc算出部222は、式(2)を用いて、コントロール部210から入力した最大値frq_upより、第2のバイアス電圧値Vdc_2を、下記式(4)に基づいて算出する。
Vdc_2=g−1(frq_up) ・・・(4)
Vdc算出部222は、算出した第1のバイアス電圧値Vdc_1及び第2のバイアス電圧値Vdc_2を、fr,fa算出部224に出力する。
【0035】
fr,fa算出部224には、Vdc算出部222から、第1のバイアス電圧値Vdc_1及び第2のバイアス電圧値Vdc_2が入力される。fr,fa算出部224は、第1のバイアス電圧値Vdc_1と式(2)とを用いて、判定用反共振周波数fa_dを下記式(5)により算出する。
fa_d=g(Vdc_1) ・・・(5)
また同様に、fr,fa算出部224は、第2のバイアス電圧値Vdc_2と式(1)とを用いて、判定用共振周波数fr_dを下記式(6)により算出する。
fr_d=f(Vdc_2) ・・・(6)
fr,fa算出部224は、算出した判定用共振周波数fr_d及び判定用反共振周波数fa_d、並びに第1のバイアス電圧値Vdc_1及び第2のバイアス電圧値Vdc_2を、周波数判定部226に出力する。
【0036】
周波数判定部226は、Vdc算出部222から入力した判定用共振周波数fr_d及び判定用反共振周波数fa_dについて、fr_d≦fa_dであるか否かを判定する。fr_d≦fa_dであるとき、周波数判定部226は、fr,fa算出部224から入力した第1のバイアス電圧値Vdc_1及び第2のバイアス電圧値Vdc_2を、Vdc決定部230に出力する。
【0037】
一方、fr_d≦fa_dでないとき、周波数判定部226は、周波数再設定部228に、fr_d≦fa_dでない旨の信号を出力する。周波数判定部226からfr_d≦fa_dでない旨の信号が入力した周波数再設定部228は、Vdc算出部222から最大値frq_upを取得し、取得した最大値frq_upよりも所定の値だけ小さな値を、新たな最大値frq_upに設定する。周波数再設定部228は、再設定した新たな最大値frq_upを、Vdc算出部222に出力する。周波数再設定部228から新たな最大値frq_upが入力されたVdc算出部222は、前述と同様に、第1のバイアス電圧値Vdc_1と第2のバイアス電圧値Vdc_2とを決定し、それらをfr,fa算出部224に出力する。以下、前述と同様に処理を進める。この際、第1のバイアス電圧値Vdc_1及び判定用反共振周波数fa_dは、変化しない。したがって、Vdc算出部222は、第1のバイアス電圧値Vdc_1を再度算出する必要は無く、前に算出した第1のバイアス電圧値Vdc_1を保持しているだけでよい。同様に、fr,fa算出部224は、判定用反共振周波数fa_dを再度算出する必要は無く、前に算出した判定用反共振周波数fa_dを保持しているだけでよい。
【0038】
このようにして、周波数判定部226がfr_d≦fa_dと判定するまで、周波数再設定部228は、最大値frq_upを低下させる再設定処理を繰り返す。fr_d≦fa_dであるとき、周波数判定部226は、Vdc決定部230に、第1のバイアス電圧値Vdc_1及び第2のバイアス電圧値Vdc_2を出力する。
【0039】
fr_d≦fa_dのとき、Vdc決定部230には、周波数判定部226から、第1のバイアス電圧値Vdc_1及び第2のバイアス電圧値Vdc_2が入力される。Vdc決定部230は、第1のcMUT130に印加するバイアス電圧を第1のバイアス電圧値Vdc_1に決定し、第2のcMUT140に印加するバイアス電圧を第2のバイアス電圧値Vdc_2に決定する。Vdc決定部230は、第1のバイアス調整器272に、第1のバイアス電圧値Vdc_1を出力し、第2のバイアス調整器274に、第2のバイアス電圧値Vdc_2を出力する。また、Vdc決定部230は、第1のバイアス電圧値Vdc_1と第2のバイアス電圧値Vdc_2とを表す信号を、表示器420に出力する。
【0040】
第1のバイアス調整器272は、第1のcMUT130に、Vdc決定部230から入力した第1のバイアス電圧値Vdc_1を印加する。同様に、第2のバイアス調整器274は、第2のcMUT140に、Vdc決定部230から入力した第2のバイアス電圧値Vdc_2を印加する。表示器420は、第1のバイアス電圧値Vdc_1と第2のバイアス電圧値Vdc_2との値を表示する。この際、第1のバイアス電圧値Vdc_1及び第2のバイアス電圧値Vdc_2に限らず、最小値frq_low及び判定用反共振周波数fa_d、並びに、判定用共振周波数fr_d及び最大値frq_upを表示器420に表示するようにしてもよい。
この様に、例えばVdc算出部222は、バイアス電圧算出部として機能し、例えばfr,fa算出部224は、周波数算出部として機能する。
【0041】
ここで、最小値frq_low及び最大値frq_up、判定用共振周波数fr_d及び判定用反共振周波数fa_d、並びに第1のバイアス電圧値Vdc_1及び第2のバイアス電圧値Vdc_2の関係を、図5に示す例を参照して説明する。図5に示す例では、最小値frq_lowは、22MHzであり、最大値frq_upは、24MHzであるとする。
【0042】
この場合、最小値frq_low=22MHzより、上記式(3)を用いて、第1のバイアス電圧値Vdc_1は、200Vと求まる。このとき、上記式(5)を用いて、判定用反共振周波数fa_dは、23.5MHzと求まる。一方、最大値frq_up=24MHzより、上記式(4)を用いて、第2のバイアス電圧値Vdc_2は、140Vと求まる。このとき、上記式(6)を用いて、判定用共振周波数fr_dは、23.3MHzと求まる。fr_d=23.3MHz≦fa_d=23.5MHzであるので、周波数判定部226は、Vdc決定部230に、第1のバイアス電圧値Vdc_1及び第2のバイアス電圧値Vdc_2を出力する。
【0043】
図5に示す例では、第1のバイアス電圧値Vdc_1=200Vが印加される第1のcMUT130は、共振周波数である最小値frq_low=22MHzから反共振周波数である判定用反共振周波数fa_d=23.5MHzまで機能する。また、第2のバイアス電圧値Vdc_2=140Vが印加される第2のcMUT140は、共振周波数である判定用共振周波数fr_d=23.3MHzから反共振周波数である最大値frq_up=24MHzまで機能する。したがって、第1のcMUT130及び第2のcMUT140を有するcMUTアレイ100は、22MHzから24MHzまでの周波数帯域で機能する(超音波の送受信ができる)。
【0044】
上記のとおり、fr_d≦fa_dであるとき、当該cMUTアレイ100は、最小値frq_lowから最大値frq_upまで途切れることなく連続した周波数帯域で送受信ができる。なお、fr_d≦fa_dでないとき、cMUTアレイ100が機能する周波数帯域は、不連続となり、最小値frq_lowから最大値frq_upの間に、機能しない周波数帯域が存在することになる。本実施形態では、このような不連続な周波数帯域が存在しないように、周波数判定部226における判定と、周波数再設定部228における周波数の再設定を行っている。
【0045】
再び図1を参照して、本実施形態にかる超音波プローブ装置の動作の続きを説明する。第1のバイアス調整器272は、第1のcMUT130に、Vdc決定部230から入力した第1のバイアス電圧値Vdc_1を印加する。同様に、第2のバイアス調整器274は、第2のcMUT140に、Vdc決定部230から入力した第2のバイアス電圧値Vdc_2を印加する。表示器420は、第1のバイアス電圧値Vdc_1と第2のバイアス電圧値Vdc_2との値を表示する。
【0046】
超音波画像取得時において、コントロール部210は、パルス発生器260に、パルスを発生させる指令を出力する。パルス発生器260は、コントロール部210の制御の下、パルスを生成する。パルス発生器260は、生成したパルスを第1のバイアス調整器272、及び第2のバイアス調整器274に出力する。第1のバイアス調整器272は、第1のバイアス電圧値Vdc_1に、パルス発生器260から入力したパルスを重畳し、重畳信号を第1のcMUT130に出力する。第2のバイアス調整器274は、第2のバイアス電圧値Vdc_2に、パルス発生器260から入力したパルスを重畳し、重畳信号を第2のcMUT140に出力する。
【0047】
第1のcMUT130は、第1のバイアス電圧値Vdc_1が印加された状態から、重畳されたパルス波に応じた振動をし、最小値frq_lowから判定用反共振周波数fa_dまでの周波数成分を有する超音波を射出する。同様に、第2のcMUT140は、第2のバイアス電圧値Vdc_2が印加された状態から、重畳されたパルス波に応じた振動をし、判定用共振周波数fr_dから最大値frq_upまでの周波数成分を有する超音波を射出する。その結果、第1のcMUT130及び第2のcMUT140を有するcMUTアレイ100は、最小値frq_lowから最大値frq_upまでの帯域の周波数成分を有する超音波を射出する。
【0048】
cMUTアレイ100から射出された超音波は、照射対象物内を伝搬する。照射対象物の音響インピーダンスに応じて、伝搬する超音波の一部は、反射する。なお、照射対象物内を伝搬する超音波は、周波数が高い程減衰しやすい。このため、周波数が低い超音波程、cMUTアレイ100から遠い位置まで伝搬する。本実施形態では、深さLに応じた位置まで超音波が到達するような超音波の周波数が選択されている。照射対象物内で反射した超音波は、再びcMUTアレイ100に到達する。cMUTアレイ100に到達した超音波は、cMUTアレイ100を構成するcMUT110の上部電極112を振動させる。上部電極112の振動により、上部電極112と下部電極114との電位差は変化する。
【0049】
ここで、第1のcMUT130は、第1のバイアス電圧値Vdc_1が印加された状態であるため、最小値frq_lowから判定用反共振周波数fa_dまでの帯域の超音波を受信することができる。一方、第2のcMUT140は、第2のバイアス電圧値Vdc_2が印加された状態であるため、判定用共振周波数fr_dから最大値frq_upまでの帯域の超音波を受信することができる。その結果、cMUTアレイ100は、最小値frq_lowから最大値frq_upまでの帯域の周波数成分を有する超音波を受信することができる。
【0050】
このように、例えば、最小値frq_lowから最大値frq_upまでの帯域は、動作周波数に対応し、例えば、第1のバイアス電圧値Vdc_1が印加された状態における最小値frq_lowから判定用反共振周波数fa_dまでの帯域は、例えば第1のバイアス電圧値Vdc_1が印加された状態における送受信可能周波数に対応する。
【0051】
各cMUT110における上部電極112と下部電極114との電位差は、各アンプ310に出力される。各アンプ310は、入力した電位差を増幅し、それぞれA/D変換器320に出力する。各A/D変換器320は、各アンプ310から入力した増幅信号をA/D変換し、変換により得られたデジタルエコー信号を、ビーム合成回路330に出力する。
【0052】
ビーム合成回路330には、各A/D変換器320からデジタルエコー信号が入力される。そして、ビーム合成回路330は、当該デジタルエコー信号を合成し、画像信号を形成する。その結果、所定の深さの画像を取得することができる。ビーム合成回路330は、取得した画像信号を、コントロール部210及びDSC340に出力する。DSC340は、ビーム合成回路330から入力した画像信号に基づいて、例えばモニタである表示器420に表示させるための表示用信号を作成する。DSC340は、作成した表示用信号を、表示器420に出力する。表示器420には、DSC340から表示用信号が入力され、表示器420は、当該表示用信号に基づいて画像を表示する。
【0053】
以上のようにして、本実施形態に係る超音波プローブ装置は、超音波照射対象物に超音波を照射し、超音波照射対象物からの反射超音波に基づいて、超音波照射対象物内の画像を取得することができる。
【0054】
本実施形態では、cMUTアレイ100を構成するcMUT110を、第1のcMUT130と第2のcMUT140との2つのグループに分け、グループによって異なるバイアス電圧を印加している。その結果、第1のcMUT130と第2のcMUT140とは、互いに異なる周波数帯域で機能する。しかも、当該2つの周波数帯域は、隣り合う又はその一部が重なり合うように、即ち、離れないように設定されている。このような本実施形態によれば、2つのグループの組み合わせによって、広い周波数帯域に渡って高いエネルギの超音波を送信(射出)することができ、また、広い周波数帯域の超音波を高効率で受信することができる。送信(射出)と受信の両方において広い周波数帯域の超音波を用いることができるので、本実施形態に係る超音波プローブ装置は、高効率に奥行きの広い画像を取得することができる。また、本実施形態によれば、cMUTアレイ100自身が、いわば周波数フィルタとしての機能を果たすので、受信回路等に別途周波数フィルタを設ける必要がなく、回路構成を簡略化することができる。
【0055】
なお、本実施形態では、バイアス電圧Vdcと共振周波数frとの関係、及びバイアス電圧Vdcと反共振周波数faとの関係は、前述の式(1)及び式(2)のように、式で表わされることとして説明したが、これらの関係を示すテーブルを用意して、それを用いてもよいことは勿論である。更に、バイアス電圧VdcとcMUT110が機能する周波数との関係として、本実施形態では、バイアス電圧Vdcと共振周波数fr及び反共振周波数faとの関係を用いる例を示したが、周波数に対するcMUT110の振動面の振幅の半値全幅等、その他のバイアス電圧Vdcに応じたcMUT110の周波数特性を示す関係も同様に用いることができる。
【0056】
[第1の実施形態の変形例]
次に、第1の実施形態の変形例について、第1の実施形態との相違点に限定して説明する。第1の実施形態では、cMUTアレイ100を構成するcMUT110を、第1のcMUT130と第2のcMUT140の2つのグループに分けている。本変形例では、cMUTアレイ100を構成するcMUT110を、3つのグループに分ける。
【0057】
したがって、cMUTアレイ100は、第1のcMUTと、第2のcMUTと、第3のcMUTとを有する。そして、第1のcMUTのバイアス電圧は、第1のバイアス調整器によって調整され、第2のcMUTのバイアス電圧は、第2のバイアス調整器によって調整され、第3のcMUTのバイアス電圧は、第3のバイアス調整器によって調整される。
【0058】
本変形例においても、コントロール部210は、深さLの値を取得し、深さLの値に基づいて、最小値frq_lowを決定し、それを帯域制御部220内のVdc算出部222に出力する。
【0059】
帯域制御部220内のVdc算出部222は、最小値frq_lowを第1の判定用共振周波数fr_1とし、第1の実施形態と同様に、第1の判定用共振周波数fr_1と関数fに基づいて、Vdc_1=f−1(fr_1)より、第1のバイアス電圧値Vdc_1を算出する。Vdc算出部222は、算出した第1のバイアス電圧値Vdc_1を、fr,fa算出部224に出力する。
【0060】
fr,fa算出部224は、第1のバイアス電圧値Vdc_1と関数gとに基づいて、fa_1=g(Vdc_1)より、第1の判定用反共振周波数fa_1を算出する。第1の実施形態の場合と異なり本変形例では、fr,fa算出部224は、算出した第1の判定用反共振周波数fa_1を、Vdc算出部222に出力する。
【0061】
Vdc算出部222は、次に、第1の判定用反共振周波数fa_1以下の周波数である第2の判定用共振周波数fr_2を設定する。その後、第2の判定用共振周波数fr_2と関数fに基づいて、Vdc_2=f−1(fr_2)より、第2のバイアス電圧値Vdc_2を算出する。Vdc算出部222は、算出した第2のバイアス電圧値Vdc_2を、fr,fa算出部224に出力する。
【0062】
fr,fa算出部224は、第2のバイアス電圧値Vdc_2と関数gに基づいて、fa_2=g(Vdc_2)より、第2の判定用反共振周波数fa_2を算出する。fr,fa算出部224は、前記と同様に、算出した第2の判定用反共振周波数fa_2を、Vdc算出部222に出力する。
【0063】
Vdc算出部222は、第2の判定用反共振周波数fa_2以下の周波数である第3の判定用共振周波数fr_3を設定する。その後、前述と同様に、第3の判定用共振周波数fr_3と関数fに基づいて、Vdc_3=f−1(fr_3)より、第3のバイアス電圧値Vdc_3を算出する。
【0064】
Vdc算出部222及びfr,fa算出部224は、第1のバイアス電圧値Vdc_1と、第2のバイアス電圧値Vdc_2と、第3のバイアス電圧値Vdc_3とを、Vdc決定部230に出力する。Vdc決定部230は、入力した第1のバイアス電圧値Vdc_1を、第1のバイアス調整器に出力し、入力した第2のバイアス電圧値Vdc_2を、第2のバイアス調整器に出力し、入力した第3のバイアス電圧値Vdc_3を、第3のバイアス調整器に出力する。
【0065】
第1のバイアス調整器は、入力した第1のバイアス電圧値Vdc_1を第1のcMUTに印加し、第2のバイアス調整器は、入力した第2のバイアス電圧値Vdc_2を第2のcMUTに印加し、第3のバイアス調整器は、入力した第3のバイアス電圧値Vdc_3を第3のcMUTに印加する。
【0066】
以上のようにすることで、cMUTアレイ100は、第1のcMUTが機能する周波数の最小値から、第3のcMUTが機能する周波数の最大値までの周波数帯域で、機能することができる。そして、この機能する周波数帯域は連続しており、途中機能しない周波数帯域はない。このように、2つのグループを有する第1の実施形態よりも、3つのグループを有する本変形例では、cMUTアレイ100全体では、より広い周波数帯域で機能するようになる。
【0067】
本変形例では、バイアス電圧値が大きい方から順に、第1乃至第3のバイアス電圧値を決定した。このようにすれば、低周波数側の周波数帯域で確実に機能することができるように、各バイアス電圧値を決定できる。即ち、このような決定方法は、cMUTアレイ100から遠い側で反射される情報を確実に取得したいときに有利である。
【0068】
なお、バイアス電圧値が小さい方から順に各バイアス電圧値を決定してもよい。その場合、cMUTアレイ100から近い側で反射される情報を確実に取得したいときに有利である。
【0069】
なお、グループの数は、本変形例と同様にして、4つ以上とすることもできる。グループの数がより増えれば、機能する周波数帯域をより増やすことができる。この場合、第1の実施形態と本変形例との違いと同様に、グループ数に合わせて、各構成要素の数を増減させて機能させればよい。
【0070】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。ここで第2の実施形態の説明では、第1の実施形態との相違点に限定して説明し、同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。第1の実施形態においては、cMUTアレイ100から遠いところの画像を取得することに重点を置いている。したがって、第1の実施形態においては、周波数判定部226において、fr_d≦fa_dでないと判定されたとき、周波数再設定部228は、周波数帯域の最大値frq_upを、下げるように再設定する。即ち、第1の実施形態においては、このような場合、cMUTアレイ100から近い部分の画像取得を犠牲にしている。
【0071】
これに対して、本実施形態は、音源から近い範囲の画像を精度よく取得するとともに、遠方、即ち深部までも感度よく画像化する。このために、本実施形態では、第1の実施形態におけるバイアス電圧を、時間経過と共に変化させる。本実施形態における超音波プローブ装置全体の構成は、図1を参照して説明した第1の実施形態におけるその構成とほぼ同じである。ただし、コントロール部210と帯域制御部220の構成の一部が異なる。
【0072】
本実施形態に係るコントロール部210の構成を、図6に示す。本実施形態に係るコントロール部210は、初期周波数設定部212と、最終周波数設定部214と、最大受信期間算出部216とを有する。
【0073】
例えばキーボードである入力部410は、ユーザから、画像を取得するcMUTアレイからの距離の範囲を取得する。ここで、当該範囲のcMUTアレイ100からcMUTアレイ100に近い方の端までの距離を深さL1、遠い方の端までの距離を深さL2とする。入力部410は、取得した深さL1及び深さL2の値を、コントロール部210に出力する。
【0074】
初期周波数設定部212は、入力した深さL1に基づいて、最大値frq_upを決定する。ここで、初期周波数設定部212は、深さL1と、最大値frq_upとの関係を示すテーブルに基づいて最大値frq_upを決定してもよいし、深さL1と、最大値frq_upとの関係式に基づいて最大値frq_upを算出してもよい。
【0075】
同様に、最終周波数設定部214は、入力した深さL2に基づいて、cMUTアレイ100が機能する最小値frq_lowを決定する。ここで、最終周波数設定部214は、深さL2と、最小値frq_lowとの関係を示すテーブルに基づいて最小値frq_lowを決定してもよいし、深さL2と、最小値frq_lowとの関係式に基づいて最小値frq_lowを算出してもよい。
【0076】
また、最大受信期間算出部216は、深さL2と、例えば次式(7)に基づいて、最大受信期間Tを算出する。
T=2×L2/c ・・・(7)
ここで、cは媒質の音速である。したがって、式(7)で求まる最大受信期間Tは、cMUTアレイ100から画像を取得したい最も遠い部位までの間(深さL2)を、超音波が往復する時間を示す。
コントロール部210は、図6に示すように、最大値frq_upと、最小値frq_lowと、最大受信期間Tとを、帯域制御部220に出力する。
【0077】
帯域制御部220は、図7に示すように、カウント制御部232と、Vdc算出部234と、fr,fa算出部236と、中間周波数算出部238と、周波数判定部240と、周波数再設定部242と、Vdc決定部244とを有する。
【0078】
まず、帯域制御部220内のカウント制御部232は、カウント用の変数iを0に設定する。また、カウント制御部232は、コントロール部210から入力した最大受信期間Tに基づいて、例えば定数αを用いて、N=αTより、バイアス刻み数Nを算出する。
【0079】
次に、Vdc算出部234は、下記式(8)に基づいて、最小値frq_lowよりバイアス電圧最大値Vdc_maxを算出する。
Vdc_max=f−1(frq_low) ・・・(8)
また、Vdc算出部234は、下記式(9)に基づいて、最大値frq_upよりバイアス電圧最小値Vdc_minを算出する。
Vdc_min=g−1(frq_up) ・・・(9)
以降、図8に一例を示しながら、各演算を説明する。本実施形態に係る超音波プローブ装置では、周波数帯域として(a)frq_lowから(b)frq_upまでの周波数でcMUTアレイ100を機能させる。そこで、上記のとおり本算出ではまず、例えば図8における、(a)frq_lowより、(c)Vdc_maxを求め、(b)frq_upより、(d)Vdc_minを求める。
【0080】
fr,fa算出部236は、Vdc算出部234が算出したバイアス電圧最大値Vdc_maxより、下記式(10)に基づいて、バイアス電圧がVdc_maxの時の判定用反共振周波数の値fa_0を算出する。
fa_0=g(Vdc_max) ・・・(10)
また、fr,fa算出部236は、Vdc算出部234が算出したバイアス電圧最小値Vdc_minより、下記式(11)に基づいて、バイアス電圧がVdc_minの時の判定用共振周波数の値fr_0を算出する。
fr_0=f(Vdc_min) ・・・(11)
本算出により、例えば図8における(d)fa_0と、(e)fr_0が求まる。なお、以下の説明では、判定用共振周波数及び判定用反共振周波数は、単に共振周波数及び反共振周波数とする。
【0081】
中間周波数算出部238は、下記式(12)に基づいて、fr,fa算出部236が算出した反共振周波数fa_0より、バイアス電圧Vdc_Xを算出する。
Vdc_X=f−1(fa_0) ・・・(12)
続いて、下記式(13)に基づいて、算出したバイアス電圧Vdc_Xより、バイアス電圧Vdc_Xを印加したときの反共振周波数fa_xを算出する。
fa_X=g(Vdc_X) ・・・(13)
本算出により、例えば図8における(f)Vdc_Xと、(g)fa_Xが求まる。
【0082】
周波数判定部240は、fr_0≦fa_Xであるか否かを判定する。fr_0≦fa_xであるとき、Vdc決定部244は、第1のバイアス電圧Vdc(t)_aを、Vdc_Xに設定する。また、第2のバイアス電圧Vdc(t)_bを、Vdc_minに設定する。Vdc決定部244は、設定した第1のバイアス電圧Vdc(t)_aを、第1のバイアス調整器272に出力し、設定した第2のバイアス電圧Vdc(t)_bを、第2のバイアス調整器274に出力する。図8に示す例では、fr_0≦fa_Xである。
【0083】
このように、i=0のとき、第1のバイアス調整器272が制御する第1のcMUT130には、共振周波数fa_0から反共振周波数fa_Xまで機能するように、バイアス電圧Vdc_Xが印加される(周波数fa_0はVdc_maxのときは反共振周波数であるが、Vdc_Xのときは共振周波数となる)。また、i=0のとき、第2のバイアス調整器274が制御する第2のcMUT140には、共振周波数fr_0から最大値frq_upまで機能するように、バイアス電圧最小値Vdc_minが印加される。以上により、第1のcMUT130と第2のcMUT140とを有するcMUTアレイ100は、i=0のとき、共振周波数fa_0から最大値frq_upまで機能する。
【0084】
一方、周波数判定部240における判定で、fr_0≦fa_Xでないとき、周波数再設定部242は、次式(14)により、Vdc_Xを再設定する。
Vdc_X=g−1(fr_0) ・・・(14)
本処理により、初めに候補としたバイアス電圧を印加しても、第1のcMUT130が機能する周波数帯域と第2のcMUT140が機能する周波数帯域とが重なり合わないときに、それら2つの周波数帯域が重なり合うように、Vdc_Xがより小さな値に再設定される。
【0085】
その後、Vdc決定部244は、第1のバイアス電圧Vdc(t)_aを、周波数再設定部242が再設定したVdc_Xに設定し、第2のバイアス電圧Vdc(t)_bを、Vdc_minに設定する。Vdc決定部244は、設定した第1のバイアス電圧Vdc(t)_aを、第1のバイアス調整器272に出力し、設定した第2のバイアス電圧Vdc(t)_bを、第2のバイアス調整器274に出力する。
【0086】
第1のバイアス調整器272及び第2のバイアス調整器274への出力が終わると、カウント制御部232は、i=i+1に再設定する。次に、カウント制御部232は、i≦Nであるか否かを判定する。i≦Nでないとき、当該第1のバイアス調整器272及び第2のバイアス調整器274への出力処理を終了する。
【0087】
一方、i≦Nであるとき、Vdc決定部244は、次式(15)により、第1のバイアス電圧Vdc(t)_aを決定する。
Vdc(t)_a=Vdc_X+(Vdc_max−Vdc_X)/N×i
・・・(15)
即ち、第1のcMUT130に印加するバイアス電圧Vdc(t)_aを、Vdc_XとVdc_maxとの差をバイアス刻み数Nで等分した電圧だけ増加させる。
【0088】
fr,fa算出部236は、下記式(16)に基づいて、第1のバイアス電圧Vdc(t)_aより、バイアス電圧Vdc(t)_aのときの反共振周波数fa_iの値を算出する。
fa_i=g(Vdc(t)_a) ・・・(16)
また、fr,fa算出部236は、下記式(17)に基づいて、第2のバイアス電圧Vdc(t)_bより、バイアス電圧Vdc(t)_bのときの共振周波数fr_iの値を算出する。
fr_i=f(Vdc(t)_b) ・・・(17)
周波数判定部240は、fr_i≦fa_iであるか否かを判定する。
【0089】
fr_i≦fa_iであるとき、Vdc決定部244は、第1のバイアス電圧Vdc(t)_aを、第1のバイアス調整器272に出力し、第2のバイアス電圧Vdc(t)_bを、第2のバイアス調整器274に出力する。即ち、増加させた第1のバイアス電圧バイアス電圧Vdc(t)_aを第1のcMUT130に印加し、変化させていない第2のバイアス電圧Vdc(t)_bを第2のcMUT140に印加させたとき、それぞれのcMUTが機能する周波数が、互いに重なり合うときには、第2のバイアス電圧Vdc(t)_bは、前回の値から変化させずに、第2のcMUT140に印加される。
【0090】
一方、fr_i≦fa_iでないとき、Vdc決定部244は、次式(18)により、Vdc(t)_bを再設定する。
Vdc(t)_b=f−1(fa_i) ・・・(18)
その後、Vdc決定部244は、Vdc(t)_aをバイアス電圧として、第1のバイアス調整器272に出力し、再設定したVdc(t)_bをバイアス電圧として、第2のバイアス調整器274に出力する。即ち、本処理により、第1のcMUT130が機能する周波数帯域と第2のcMUT140が機能する周波数帯域とが隣接するように、第2のバイアス電圧Vdc(t)_bが再設定される。
【0091】
Vdc決定部244による、第1のバイアス調整器272及び第2のバイアス調整器274への出力の後、カウント制御部232は、i=i+1に設定し、再びi≦Nであるか否かを判定する。以降i≦Nである間、上記の処理を繰り返す。尚、これらの処理は、カウント制御部232により、時間(1/α)毎に行われるように制御されている。
この様に例えば、Vdc決定部230は、バイアス電圧決定部として機能する。
【0092】
以上により、図9(a)に示すように、第1のcMUT130に印加されるバイアス電圧は、時間経過とともに、Vdc_XからVdc_maxまで一定の割合で増加する。また、図9(b)に示すように、第2のcMUT140に印加されるバイアス電圧は、時間経過とともに、Vdc_minからVdc_Xまで、第1のcMUT130に印加されるバイアス電圧の増加に応じて増加する。その結果、第1のcMUT130と第2のcMUT140とを有するcMUTアレイ100は全体として、時間経過と共に、共振周波数fa_0から最大値frq_upまで機能する状態から、最小値frq_lowから反共振周波数fa_Xまで機能する状態へと変化して、全期間を通じると、最小値frq_lowから最大値frq_upまで機能する。
【0093】
本実施形態においても、第1の実施形態の場合と同様に、超音波画像取得時において、パルス発生器260はパルスを生成し、このパルスは、第1のcMUT130及び第2のcMUT140に印加される。ここで、このパルスが第1のcMUT130及び第2のcMUT140に印加されるタイミングは、時間t=0(i=0)のときである。即ち、パルス波を射出するとき、第1のcMUT130には、Vdc_Xのバイアス電圧が印加されており、第2のcMUT140には、Vdc_minのバイアス電圧が印加されている。そして、パルス波を射出後、第1のcMUT130及び第2のcMUT140に印加されるバイアス電圧は、増加する。
【0094】
上記のとおり、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、超音波画像取得時において、パルス発生器260は、コントロール部210の制御の下、パルスを生成する。生成されたパルスは、第1のバイアス調整器272を介して、第1のcMUT130に印加され、また、第2のバイアス調整器274を介して、第2のcMUT140に印加される。
【0095】
第1のcMUT130は、バイアス電圧値Vdc_Xが印加された状態でパルス波を射出し、その後、印加されるバイアス電圧が増加しながら、照射対象物内で反射した、超音波を受信する。同様に、第2のcMUT140は、バイアス電圧値Vdc_minが印加された状態でパルス波を射出し、その後、印加されるバイアス電圧が増加しながら、照射対象物内で反射した、超音波を受信する。
【0096】
反射波を受信した各cMUT110の上部電極112の振動により、上部電極112と下部電極114との電位差は変化する。各cMUT110における上部電極112と下部電極114との電位差を、各アンプ310が増幅し、その増幅された信号を各A/D変換器320がA/D変換する。変換により得られたデジタルエコー信号に基づいて、ビーム合成回路330は画像信号を取得する。この画像信号はDSC340を介して表示器420に送信され、この画像信号に基づいて表示器420は画像を表示する。
【0097】
前述のとおり、時間経過とともに、第1のcMUT130に印加されるバイアス電圧は、Vdc_XからVdc_maxまで増加し、第2のcMUT140に印加されるバイアス電圧は、Vdc_minからVdc_Xまで増加する。その結果、第1のcMUT130及び第2のcMUT140により構成されるcMUTアレイ100は、パルス波を射出した直後は、機能する周波数帯域は比較的高く、その後、機能する周波数帯域は、徐々に低くなる。
【0098】
パルス波を射出した直後にcMUTアレイ100が受信する超音波は、cMUTアレイ100から近いところで反射された超音波であるので、当該超音波は、比較的高い周波数成分を多く含む。その後、時間が経過するとともに、cMUTアレイ100が受信する超音波は、cMUTアレイ100から徐々に遠いところで反射された超音波となるので、当該超音波は、徐々に低い周波数成分を多く含むことになる。
【0099】
即ち、本実施形態によれば、時間経過とともに変化する受信する超音波に含まれる周波数成分に合わせて、適切なタイミングで、cMUTアレイ100が機能する周波数帯域が変化する。その結果、当該cMUTアレイ100は、効率よく超音波を受信でき、受信感度は良好であり、取得する画像の品質も向上する。更に、本実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0100】
なお、本実施形態において、cMUTアレイ100に近い範囲を画像化したい場合には、frq_upとfrq_lowとは、共に高くなるので、Vdc_minと、Vdc_Xと、Vdc_maxとは、共に低くなり、Vdc(t)_a及びVdc(t)_aも、低い値で推移することになる。
【0101】
なお、上記説明においては、時間t=0から、バイアス電圧を増加させるようにしたが、例えば、パルス波を射出してから、cMUTアレイ100から画像を取得したい最も近い部位までの間を超音波が往復する時間、即ち、t1=2×L1/c(ここで、cは媒質の音速)だけ、待機時間を設け、その後バイアス電圧を増加させるように構成してもよい。この場合、バイアス電圧を増加させる時間は、最大受信期間Tよりt1だけ短くなる。したがって、その分バイアス刻み数Nは、N=α(T−t1)のように小さくする。
【0102】
[第2の実施形態の変形例]
次に、第2の実施形態の変形例について、第2の実施形態との相違点に限定して説明する。第2の実施形態では、cMUTアレイ100を構成するcMUT110を、第1のcMUT130と第2のcMUT140の2つのグループに分けている。本変形例では、cMUTアレイ100を構成するcMUT110を、3つのグループに分ける。
【0103】
したがって、cMUTアレイ100は、第1のcMUTと、第2のcMUTと、第3のcMUTとを有する。そして、第1のcMUTのバイアス電圧は、第1のバイアス調整器によって調整され、第2のcMUTのバイアス電圧は、第2のバイアス調整器によって調整され、第3のcMUTのバイアス電圧は、第3のバイアス調整器によって調整される。
【0104】
この場合も、図10に示すように、最小値frq_lowからの最大値frq_upまでの周波数帯域で機能するように、Vdc算出部234は、バイアス電圧Vdc_min及びVdc_maxを算出する。その後、第2の実施形態の場合と同様に、fr,fa算出部236と、中間周波数算出部238と、周波数判定部240と、周波数再設定部242とによって、図10に示すように、3つのグループのcMUT110にそれぞれ印加する電圧、即ち第1のバイアス電圧Vdc_a(t)と、第2のバイアス電圧Vdc_b(t)と、第3のバイアス電圧Vdc_c(t)について、t=0におけるバイアス電圧値である、Vdc_a(0)と、Vdc_b(0)と、Vdc_c(0)を算出する。
【0105】
例えば、Vdc算出部234は、入力した周波数帯域の最小値frq_lowと関数fに基づいて、Vdc_max=f−1(frq_low)より、最大バイアス電圧値Vdc_maxを算出する。Vdc算出部222は、算出した最大バイアス電圧値Vdc_maxを、fr,fa算出部236に出力する。
【0106】
fr,fa算出部236は、入力した最大バイアス電圧値Vdc_maxと関数gとに基づいて、fa_1=g(Vdc_max)より、第1の判定用反共振周波数fa_1を算出する。第2の実施形態の場合と異なり本変形例では、fr,fa算出部236は、算出した第1の判定用反共振周波数fa_1を、Vdc算出部234に出力する。
【0107】
Vdc算出部234は、次に、第1の判定用反共振周波数fa_1以下の周波数である第1の判定用共振周波数fr_1を設定する。その後、第1の判定用共振周波数fr_1と関数fに基づいて、Vdc_a(0)=f−1(fr_1)より、第1のバイアス電圧値Vdc_a(0)を算出する。Vdc算出部234は、算出した第1のバイアス電圧値Vdc_a(0)を、fr,fa算出部236に出力する。
【0108】
fr,fa算出部236は、入力した第1のバイアス電圧値Vdc_a(0)と関数gに基づいて、fa_2=g(Vdc_a(0))より、第2の判定用反共振周波数fa_2を算出する。fr,fa算出部236は、前記と同様に、算出した第2の判定用反共振周波数fa_2を、Vdc算出部234に出力する。
【0109】
Vdc算出部234は、次に、第2の判定用反共振周波数fa_2以下の周波数である第2の判定用共振周波数fr_2を設定する。その後、第2の判定用共振周波数fr_2と関数fに基づいて、Vdc_b(0)=f−1(fr_2)より、第2のバイアス電圧値Vdc_b(0)を算出する。Vdc算出部234は、算出した第2のバイアス電圧値Vdc_b(0)を、fr,fa算出部236に出力する。
【0110】
fr,fa算出部236は、入力した第2のバイアス電圧値Vdc_b(0)と関数gに基づいて、fa_3=g(Vdc_b(0))より、第3の判定用反共振周波数fa_3を算出する。fr,fa算出部236は、前記と同様に、算出した第3の判定用反共振周波数fa_3を、Vdc算出部234に出力する。
【0111】
Vdc算出部234は、次に、第3の判定用反共振周波数fa_3以下の周波数である第3の判定用共振周波数fr_3を設定する。その後、第3の判定用共振周波数fr_3と関数fに基づいて、Vdc_b(0)=f−1(fr_3)より、第3のバイアス電圧値Vdc_c(0)を算出する。Vdc算出部234は、算出した第3のバイアス電圧値Vdc_c(0)を、fr,fa算出部236に出力する。
【0112】
fr,fa算出部236は、入力した第3のバイアス電圧値Vdc_c(0)と関数gに基づいて、fa_3=g(Vdc_b(0))より、第4の判定用反共振周波数fa_4を算出する。
周波数判定部240は、第4の判定用反共振周波数fa_4が最大値frq_up以上であるかを判定する。第4の判定用反共振周波数fa_4が最大値frq_up以下であれば、第1のバイアス電圧値Vdc_a(0)と、第2のバイアス電圧値Vdc_b(0)と、第3のバイアス電圧値Vdc_c(0)とを小さな値に再設定する。
【0113】
周波数判定部240は、第4の判定用反共振周波数fa_4が最大値frq_up以上となったら、Vdc決定部244は、第1のバイアス電圧値Vdc_a(0)を第1のバイアス調整器に、第2のバイアス電圧値Vdc_b(0)を第2のバイアス調整器に、第3のバイアス電圧値Vdc_c(0)を第3のバイアス調整器に、それぞれ出力する。
【0114】
その後、Vdc決定部244は、第1のバイアス電圧値Vdc_a(t)を、Vdc_a(0)から、時間経過と共にt=TのときにVdc_maxとなるように、徐々に増加させる。また、Vdc決定部244は、例えば、
g(Vdc_a(t))=f(Vdc_b(t)) ・・・(19)
となるように、Vdc_b(t)を決定し、
g(Vdc_b(t))=f(Vdc_c(t)) ・・・(20)
となるように、Vdc_c(t)を決定する。このように、第1のcMUT、第2のcMUT及び第3のcMUTが射出する超音波の周波数帯域が連続するようにバイアス電圧を調整する。周波数帯域が連続するように設定されれば、この他の設定方法でもよい。
【0115】
Vdc決定部244は、第1のバイアス電圧Vdc_a(t)を第1のバイアス調整器に出力し、第2のバイアス電圧Vdc_b(t)を第2のバイアス調整器に出力し、第3のバイアス電圧Vdc_c(t)を第3のバイアス調整器に出力する。第1のバイアス調整器は、第1のcMUTにバイアス電圧を印加し、第2のバイアス調整器は、第2のcMUTにバイアス電圧を印加し、第3のバイアス調整器は、第3のcMUTにバイアス電圧を印加する。
【0116】
以上説明したとおり本変形例によれば、cMUTアレイ100を構成するcMUT110のグループの数を増やすことができる。グループ数をより増やせば、cMUTアレイ100は、全体としてより広い周波数帯域で機能することができる。更に、第2の実施形態と同様の効果も得られる。
【0117】
なお、図10に示す例は、g(Vdc_max)=f(Vdc_a(0))、g(Vdc_a(0))=f(Vdc_b(0))、g(Vdc_b(0))=f(Vdc_c(0))、g(Vdc_c(0))=f(Vdc_min)となる特殊な例である。
【0118】
また、前記のバイアス電圧値の決定方法では、周波数判定部240は、第4の判定用反共振周波数fa_4が最大値frq_up以上であるかを判定しているが、周波数帯域の最大値frq_upまで、cMUTアレイ100が機能する必要がない場合、この判定は、不要である。その場合、バイアス電圧値が大きい方から順に、バイアス電圧値を決定しているので、低周波数側の周波数帯域で確実に機能することができるように、各バイアス電圧値を決定できる。即ち、このような決定方法は、cMUTアレイ100から遠い側で反射される情報を確実に取得したいときに有利である。
【0119】
また、バイアス電圧値が小さい方から順に各バイアス電圧値を決定してもよい。その場合、cMUTアレイ100から近い側で反射される情報を確実に取得したいときに有利である。
【0120】
更に、グループの数は、本変形例と同様にして、4つ以上とすることもできる。グループの数がより増えれば、機能する周波数帯域をより増やすことができる。この場合、第2の実施形態と本変形例との違いと同様に、グループ数に合わせて、各構成要素の数を増減させて機能させればよい。
【0121】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。ここで第3の実施形態の説明では、第2の実施形態との相違点に限定して説明し、同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。第2の実施形態においては、第1のバイアス電圧Vdc_a(t)と第2のバイアス電圧Vdc_b(t)とを、同時に変化させている。これに対して、本実施形態においては、例えばcMUTアレイ100から近い部分を特に精度良く画像化したい場合などに適する実施形態である。
【0122】
即ち、第1のcMUT130と第2のcMUT140とのうち、比較的低いバイアス電圧が印加され、比較的高い周波数帯域で機能する第2のcMUT140に印加するバイアス電圧は、パルス波を射出してからしばらくの間は変化させない。その後、cMUTアレイ100から近い部分で反射した超音波が、cMUTアレイ100に全て到達したと思われる時間が経過したら、第2のcMUT140に印加するバイアス電圧を上昇させる。一方で、比較的高いバイアス電圧が印加され、比較的低い周波数帯域で機能する第1のcMUT130に印加するバイアス電圧は、パルス波を射出した直後から、第2のcMUT140に印加するバイアス電圧を上昇させ始めるまでの間、増加させる。その後、第2のcMUT140に印加するバイアス電圧を上昇させ始めてからは、第1のcMUT130に印加するバイアス電圧は、一定値に維持する。
【0123】
本実施形態に係るコントロール部210の構成を、図11に示す。本実施形態に係るコントロール部210は、図6を参照して説明した、第2の実施形態に係るコントロール部210の最大受信期間算出部216を、切替期間算出部218に置き換えたものである。切替期間算出部218は、深さL1及びL2と、例えば次式(21)に基づいて、切替期間Tcを算出する。
T=(L2−L1)/2c ・・・(21)
ここで、cは媒質の音速である。したがって、式(21)で求まる切替期間Tcは、cMUTアレイ100から、画像を取得したい最も遠い部位と最も近い部位との中間位置までを、超音波が往復する時間を示す。
コントロール部210は、図11に示すように、最大値frq_upと、最小値frq_lowと、切替期間Tcとを、帯域制御部220に出力する。
【0124】
帯域制御部220の動作について、第2の実施形態と異なる点を、図12を参照して説明する。まず、帯域制御部220内のカウント制御部232は、カウント用の変数iを0に設定する。また、カウント制御部232は、コントロール部210から入力した切替期間Tcに基づいて、例えば定数βを用いて、N=βTcより、バイアス刻み数Nを算出する。
【0125】
その後、第2の実施形態の場合と同様に、Vdc算出部234、fr,fa算出部236、中間周波数算出部238、周波数判定部240、及び周波数再設定部242によって、第1のバイアス電圧値Vdc(t)_aの初期値となるVdc_Xと、第2のバイアス電圧値Vdc(t)_bの初期値となるVdc_minとを算出する。
【0126】
その後、Vdc決定部244は、第1のバイアス電圧Vdc(t)_aを、Vdc_Xに設定し、第2のバイアス電圧Vdc(t)_bを、Vdc_minに設定する。Vdc決定部244は、設定した第1のバイアス電圧Vdc(t)_aを、第1のバイアス調整器272に出力し、設定した第2のバイアス電圧Vdc(t)_bを、第2のバイアス調整器274に出力する。
【0127】
Vdc決定部244による、第1のバイアス調整器272及び第2のバイアス調整器274への出力の後、カウント制御部232は、i=i+1に再設定する。次に、カウント制御部232は、i≦Nであるか否かを判定する。i≦Nのとき、Vdc決定部244は、下記式(22)により、第1のバイアス電圧Vdc(t)_aを決定し、下記式(23)により、第2のバイアス電圧Vdc(t)_bを決定する。
【0128】
Vdc(t)_a=Vdc_X+(Vdc_max−Vdc_X)/N×i
・・・(22)
Vdc(t)_b=Vdc(t)_b ・・・(23)
即ち、第1のcMUT130に印加するバイアス電圧Vdc(t)_aを、Vdc_XとVdc_maxとの差をバイアス刻み数Nで等分した電圧だけ増加させる。一方、第2のcMUT140に印加するバイアス電圧Vdc(t)_bは、変化させない。
【0129】
その後、Vdc決定部244は、Vdc(t)_aをバイアス電圧として、第1のバイアス調整器272に出力し、Vdc(t)_bをバイアス電圧として、第2のバイアス調整器274に出力する。
【0130】
Vdc決定部244による、第1のバイアス調整器272及び第2のバイアス調整器274への出力の後、カウント制御部232は、i=i+1に設定し、再びi≦Nであるか否かを判定する。以降i≦Nである間、上記の処理を繰り返す。尚、これらの処理は、カウント制御部232により、時間(1/2β)毎に行われるように制御されている。
一方、i≦Nでないとき、Vdc決定部244は、i≦2Nであるか否かを判定する。i≦2Nであるとき、Vdc決定部244は、次式(24)により、第1のバイアス電圧Vdc(t)_aを決定し、次式(25)により、第2のバイアス電圧Vdc(t)_bを決定する。
【0131】
Vdc(t)_a=Vdc(t)_a ・・・(24)
Vdc(t)_b=Vdc_min
+(Vdc_X−Vdc_min)/N×(i−N) ・・・(25)
即ち、第1のcMUT130に印加するバイアス電圧Vdc(t)_aは、変化させない。一方、第2のcMUT140に印加するバイアス電圧Vdc(t)_bを、Vdc_minとVdc_Xとの差をバイアス刻み数Nで等分した電圧だけ増加させる。
【0132】
その後、Vdc決定部244は、Vdc(t)_aをバイアス電圧として、第1のバイアス調整器272に出力し、Vdc(t)_bをバイアス電圧として、第2のバイアス調整器274に出力する。
【0133】
Vdc決定部244による、第1のバイアス調整器272及び第2のバイアス調整器274への出力の後、カウント制御部232は、i=i+1に設定し、再びi≦Nであるか否かと、i≦2Nであるか否かを判定する。以降i≦2Nである間、上記の処理を繰り返す。尚、これらの処理も、カウント制御部232により、時間(1/2β)毎に行われるように制御されている。その後、i≦2Nでなくなると、当該第1のバイアス調整器272及び第2のバイアス調整器274への出力処理を終了する。
【0134】
以上により、図13(a)に示すように、第1のcMUT130に印加されるバイアス電圧は、時刻t=0からt=Tcまで、時間経過とともに、Vdc_XからVdc_maxまで一定の割合で増加する。即ち、図8に示すように、時間経過とともに、第1のcMUT130は、共振周波数fa_0から反共振周波数fa_Xまで機能する状態から、最小値frq_lowから反共振周波数fa_0まで機能する状態へと変化する。その後、第1のcMUT130に印加されるバイアス電圧は、時刻t=Tcからt=2Tcまで、Vdc_maxで一定となる。即ち、第1のcMUT130は、最小値frq_lowからfa_0まで機能する状態で維持される。
【0135】
また、図13(b)に示すように、第2のcMUT140に印加されるバイアス電圧は、時刻t=0からt=Tcまで、Vdc_minで一定となる。即ち、第2のcMUT140は、図8に示すように、共振周波数fr_0から最大値frq_upまで機能する状態で維持される。その後、第2のcMUT140に印加されるバイアス電圧は、時刻t=Tcからt=2Tcまで、時間経過とともに、Vdc_minからVdc_Xまで一定の割合で増加する。即ち、時間経過とともに、第2のcMUT140は、共振周波数fr_0から最大値frq_upまで機能する状態から、共振周波数fa_0から反共振周波数fa_Xまで機能する状態へと変化する。
【0136】
本実施形態においても、第2の実施形態の場合と同様に、超音波画像取得時において、パルス発生器260は、パルスを生成し、このパルスは、第1のcMUT130及び第2のcMUT140に印加される。ここで、このパルスが第1のcMUT130及び第2のcMUT140に印加されるタイミングは、時間t=0(i=0)のときである。即ち、パルス波を射出するとき、第1のcMUT130には、Vdc_Xのバイアス電圧が印加されており、第2のcMUT140には、Vdc_minのバイアス電圧が印加されている。そして、パルス波を射出後、時間t=Tcまで、第1のcMUT130に印加されるバイアス電圧は増加し、その後一定となり、第2のcMUT140に印加されるバイアス電圧は、時間t=Tcまで一定であり、その後増加する。
【0137】
第1のcMUT130は、バイアス電圧値Vdc_Xが印加された状態でパルス波を射出し、その後、照射対象物内で反射した超音波を受信する。同様に、第2のcMUT140は、バイアス電圧値Vdc_minが印加された状態でパルス波を射出し、その後、照射対象物内で反射した超音波を受信する。第1のcMUT130及び第2のcMUT140が受信した信号に基づいて、超音波画像が得られる。
【0138】
本実施形態によれば、cMUTアレイ100から近い部分を特に精度良く画像化することができる。即ち、cMUTアレイ100から近い部分で反射して、cMUTアレイ100に到達する超音波は、比較的高い周波数を有している。本実施形態においては、第2のcMUT140に印加するバイアス電圧は、パルス波を射出してから時間Tcまでの間は、低い値であるVdc_minから変化させない。即ち、第2のcMUT140は、パルス波を射出してから時間Tcまでの間は、比較的高い周波数帯域で機能する。その間、比較的低い周波数を有する超音波は、バイアス電圧が徐々に上昇する第1のcMUTによって受信される。
【0139】
時間Tcが経過した後は、cMUTアレイ100に到達する超音波は、cMUTアレイ100から遠い部分で反射した超音波を多く含むので、比較的低い周波数の超音波を多く含む。そこで、第2のcMUT140が機能する周波数帯域を徐々に低下させるため、第2のcMUT140に印加されるバイアス電圧は徐々に上昇する。
【0140】
このように本実施形態によれば、cMUTアレイ100から近い部分を特に精度良く画像化することができるとともに、バイアス電圧の調整によって、低周波数の超音波も良好に受信することができるので、cMUTアレイ100から遠い部分も、良好な画像を得ることができる。
また、第2のcMUTに印加するバイアス電圧を変化させずに、一定に保っても同様の効果が得られる。
【0141】
なお、本実施形態においては、cMUTアレイ100から近い部分を特に精度良く画像化するため、高い周波数の超音波を効率よく捉えるよう、第2のcMUT140に印加するバイアス電圧は、低くしたまま維持するよう構成されている。これとは逆に、cMUTアレイ100から遠い部分を特に精度良く画像化するため、低い周波数の超音波を効率よく捉えるよう、例えば第1のcMUT130に印加するバイアス電圧を、高いまま維持するように構成してもよい。
【0142】
また、第1のcMUT130に印加するバイアス電圧を高いまま維持するとき、もう一方の第2のcMUT140に印加するバイアス電圧を、高いほうから低いほうに徐々に下げるようにしてもよい。このように、バイアス電圧を徐々に下げると、徐々に高い周波数に対する感度がよくなり、その結果、音の伝搬の非線形成に伴って生じる、高調波成分を有する超音波を受信することができるという効果が得られる。
【0143】
尚、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても、発明が解決しようとする課題の欄で述べられた課題が解決でき、かつ、発明の効果が得られる場合には、この構成要素が削除された構成も発明として抽出され得る。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0144】
100…cMUTアレイ、110…cMUT、112…上部電極、114…下部電極、116…空隙、130…第1のcMUT、140…第2のcMUT、210…コントロール部、212…初期周波数設定部、214…最終周波数設定部、216…最大受信期間算出部、218…切替期間算出部、220…帯域制御部、222…Vdc算出部、224…fr,fa算出部、226…周波数判定部、228…周波数再設定部、230…Vdc決定部、232…カウント制御部、234…Vdc算出部、236…fr,fa算出部、238…中間周波数算出部、240…周波数判定部、242…周波数再設定部、244…Vdc決定部、260…パルス発生器、272…第1のバイアス調整器、274…第2のバイアス調整器、290…記憶部、310…アンプ、320…D変換器、330…ビーム合成回路、340…デジタルスキャンコンバータ、410…入力部、420…表示器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印加される直流バイアス電圧のバイアス電圧値に応じて送受信できる超音波の周波数範囲が変化する静電容量型超音波振動子を、複数具備する超音波プローブ装置であって、
前記複数の静電容量型超音波振動子の各々は、複数のグループのうちの何れか1つに属し、該複数のグループの各々は、少なくとも1つの該静電容量型超音波振動子を含み、
当該超音波プローブ装置の動作期間内で、連続した周波数帯である動作周波数に含まれる全ての周波数が、当該超音波プローブ装置によって送信及び/又は受信されるように、前記グループ毎に異なる前記バイアス電圧値と、当該バイアス電圧値を有する直流バイアス電圧を印加するタイミングとを決定する帯域制御部と、
前記帯域制御部が決定する前記バイアス電圧値と前記タイミングとに応じて、前記静電容量型超音波振動子に印加する前記直流バイアス電圧を変更する、バイアス電圧変更手段と、
を具備することを特徴とする超音波プローブ装置。
【請求項2】
前記バイアス電圧値は、前記動作期間中に変化せず、
前記動作周波数に含まれる全ての周波数は、前記動作期間中を通して前記複数のグループに属する静電容量型超音波振動子によって送信及び/又は受信される、
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波プローブ装置。
【請求項3】
前記直流バイアス電圧を印加したときに前記静電容量型超音波振動子によって送信及び/又は受信できる超音波の周波数範囲である送受信可能周波数と、前記バイアス電圧値との関係を示す、バイアス電圧−周波数関係情報を記憶する記憶部を更に具備し、
前記帯域制御部は、前記記憶部に記憶された前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、前記バイアス電圧値を決定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の超音波プローブ装置。
【請求項4】
前記グループの数はm個(mは2以上の自然数)であり、
前記帯域制御部は、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、前記動作周波数の最低値が前記送受信可能周波数の最低値となる第1のバイアス電圧値を決定し、
n(nはm以下の自然数)が2以上のとき、前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、第nのバイアス電圧値を、該第nのバイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの前記送受信可能周波数の最低値が、第(n−1)のバイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの前記送受信可能周波数の最高値以下となるように決定し、
前記バイアス電圧変更手段は、第n番目のグループに属する前記静電容量型超音波振動子に、前記第nのバイアス電圧値を有する直流バイアス電圧を印加する、
ことを特徴とする請求項3に記載の超音波プローブ装置。
【請求項5】
前記第nのバイアス電圧値を、nが小さい方から順に決定していくことを特徴とする請求項4に記載の超音波プローブ装置。
【請求項6】
前記グループの数は2つであり、
前記帯域制御部は、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、
前記動作周波数の最低値が前記送受信可能周波数の最低値となる第1のバイアス電圧値と、
前記動作周波数の最高値が前記送受信可能周波数の最高値となる第2のバイアス電圧値と、
を算出するバイアス電圧算出部と、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、
前記第1のバイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最高値である判定用最高周波数と、
前記第2のバイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最低値である判定用最低周波数と、
を算出する周波数算出部と、
前記判定用最高周波数が前記判定用最低周波数以上であるか否かを判定する周波数判定部と、
前記判定用最高周波数が前記判定用最低周波数以上でないとき、前記最高周波数をより小さな値に再設定し、前記バイアス電圧算出部による算出と、前記周波数算出部による算出と、前記周波数判定部による判定とを繰り返させる、周波数再設定部と、
を有し、
前記判定用最高周波数が前記判定用最低周波数以上であるとき、前記バイアス電圧変更手段は、2つある前記グループのうち一方に属する前記静電容量型超音波振動子に、前記第1のバイアス電圧値を有する直流バイアス電圧を印加し、他方に属する前記静電容量型超音波振動子に、前記第2のバイアス電圧値を有する直流バイアス電圧を印加する、
ことを特徴とする請求項3に記載の超音波プローブ装置。
【請求項7】
前記グループの数はm個(mは2以上の自然数)であり、
前記帯域制御部は、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、第nのバイアス電圧値(nはm以下の自然数)を算出するバイアス電圧算出部と、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、第nの判定用最高周波数を算出する周波数算出部と、
を有し、
前記バイアス電圧算出部は、
nが1のとき、前記動作周波数の最低値が前記送受信可能周波数の最低値となる前記第nのバイアス電圧値を算出し、
nが2以上のとき、前記第(n−1)の判定用最高周波数が前記送受信可能周波数の最低値以上となる前記第nのバイアス電圧値を算出し、
前記周波数算出部は、
nが1以上(m−1)以下のとき、前記第nのバイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最高値である前記第nの判定用最高周波数を算出し、
前記バイアス電圧変更手段は、第n番目のグループに属する前記静電容量型超音波振動子に、前記第nのバイアス電圧値を有する直流バイアス電圧を印加する、
ことを特徴とする請求項3に記載の超音波プローブ装置。
【請求項8】
前記バイアス電圧−周波数関係情報は、
前記バイアス電圧値と前記送受信可能周波数の最小値との関係が、該バイアス電圧値と前記静電容量型超音波振動子の共振周波数との関係を示す情報であり、
前記バイアス電圧値と前記送受信可能周波数の最大値との関係が、該バイアス電圧値と前記静電容量型超音波振動子の反共振周波数との関係を示す情報である、
ことを特徴とする請求項3乃至7のうち何れか1項に記載の超音波プローブ装置。
【請求項9】
前記超音波が到達する距離と該超音波の周波数との関係を示す情報を記憶する距離−周波数関係記憶部と、
前記超音波が到達する距離と該超音波の周波数との関係に基づいて、ユーザが指定する前記超音波の到達距離から、前記動作周波数の最低値を決定するコントロール部と、
を更に具備することを特徴とする請求項1乃至7のうち何れか1項に記載の超音波プローブ装置。
【請求項10】
前記動作期間の開始時に、当該超音波プローブ装置は、超音波を送信し、
前記動作期間中に、当該超音波プローブ装置は、超音波を受信し、
前記バイアス電圧値は、前記超音波を受信している前記動作期間中に変化し、
前記動作期間中の各時点での当該超音波プローブ装置が送信及び/又は受信する連続した周波数帯である瞬間動作周波数に含まれる全ての周波数は、前記複数のグループに属する静電容量型超音波振動子によって送信及び/又は受信される、
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波プローブ装置。
【請求項11】
前記動作期間中の時間経過に従って、
前記瞬間動作周波数の最高値である前記瞬間最高周波数は、前記動作周波数の最高値から単調減少し、
前記瞬間動作周波数の最低値である前記瞬間最低周波数は、初期値から単調減少して前記動作周波数の最低値に達する、
ことを特徴とする請求項10に記載の超音波プローブ装置。
【請求項12】
前記直流バイアス電圧を印加したときに前記静電容量型超音波振動子によって送信及び/又は受信できる超音波の周波数範囲である送受信可能周波数と、前記バイアス電圧値との関係を示す、バイアス電圧−周波数関係情報を記憶する記憶部を更に具備し、
前記帯域制御部は、前記記憶部に記憶された前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、前記バイアス電圧値と前記タイミングとを決定する、
ことを特徴とする請求項11に記載の超音波プローブ装置。
【請求項13】
前記グループの数はm個(mは2以上の自然数)であり、
前記帯域制御部は、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、前記動作周波数の最低値が前記送受信可能周波数の最低値となる第1のバイアス電圧値を決定し、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、第2のバイアス電圧値を、該第2のバイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの前記送受信可能周波数の最低値が、前記第1のバイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最高値以下となるように決定し、
前記動作期間中の時間経過と共に、第n番目(nはm以下の自然数)のグループに属する前記静電容量型超音波振動子に印加する前記直流バイアス電圧の前記バイアス電圧値である、第n印加バイアス電圧値の、nが1であるときの値である第1印加バイアス電圧値を、前記第2のバイアス電圧値から前記第1のバイアス電圧値まで変化させ、
nが2以上のとき、前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、第n印加バイアス電圧値を、該第n印加バイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの前記送受信可能周波数の最低値が、第(n−1)印加バイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最高値以下となるように決定し、
前記バイアス電圧変更手段は、第n番目のグループに属する前記静電容量型超音波振動子に、前記第n印加バイアス電圧値を有する直流バイアス電圧を印加する、
ことを特徴とする請求項12に記載の超音波プローブ装置。
【請求項14】
前記第nのバイアス電圧値を、nが小さい方から順に決定していくことを特徴とする請求項13に記載の超音波プローブ装置。
【請求項15】
前記グループの数は2つであり、
前記帯域制御部は、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、
前記動作周波数の最低値が前記送受信可能周波数の最低値となる最大バイアス電圧値と、
前記動作周波数の最高値が前記送受信可能周波数の最高値となる最小バイアス電圧値と、
を算出するバイアス電圧算出部と、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、
前記最大バイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最高値である第1の判定用最高周波数と、
前記最小バイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最低値である第1の判定用最低周波数と、
を算出する周波数算出部と、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、
第1の判定用最高周波数が前記送受信可能周波数の最高値となる中間バイアス電圧値と、
前記中間バイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最高値である第2の判定用最高周波数と、
を算出する中間周波数算出部と、
前記第2の判定用最高周波数が前記第1の判定用最低周波数以上であるか否かを判定する周波数判定部と、
前記第2の判定用最高周波数が前記第1の判定用最低周波数以上でないとき、前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、前記第1の判定用最低周波数が前記送受信可能周波数の最高値となる前記バイアス電圧値を算出し、該バイアス電圧値を中間バイアス電圧値に再設定する周波数再設定部と、
2つある前記グループのうち一方に属する前記静電容量型超音波振動子に印加する前記直流バイアス電圧の前記バイアス電圧値である第1印加バイアス電圧値と、
他方に属する前記静電容量型超音波振動子に印加する前記直流バイアス電圧の前記バイアス電圧値である第2印加バイアス電圧値と、
を決定するバイアス電圧決定部と、
を有し、
前記バイアス電圧決定部は、第1印加バイアス電圧値を、前記動作期間中の時間経過と共に、前記中間バイアス電圧値から、前記最大バイアス電圧値まで変化させ、
前記周波数算出部は、前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、前記第1印加バイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの前記送受信可能周波数の最高値である第3の判定用最高周波数を算出し、
前記周波数判定部は、前記第3の判定用最高周波数が前記第1の判定用最低周波数以上であるか否かを判定し、
前記第3の判定用最高周波数が前記第1の判定用最低周波数以上であるとき、前記バイアス電圧変更手段は、2つある前記グループのうち一方に属する前記静電容量型超音波振動子に、前記第1印加バイアス電圧値を有する直流バイアス電圧を印加し、他方に属する前記静電容量型超音波振動子に、前記最小バイアス電圧値を有する直流バイアス電圧を印加し、
前記第3の判定用最高周波数が前記第1の判定用最低周波数以上でないとき、
前記バイアス電圧決定部は、前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、前記送受信可能周波数の最低値が前記第3の判定用最高周波数以下となる第2印加バイアス電圧値を算出し、
前記バイアス電圧変更手段は、2つある前記グループのうち一方に属する前記静電容量型超音波振動子に、前記第1印加バイアス電圧値を有する直流バイアス電圧を印加し、他方に属する前記静電容量型超音波振動子に、前記第2印加バイアス電圧値を有する直流バイアス電圧を印加する、
ことを特徴とする請求項12に記載の超音波プローブ装置。
【請求項16】
前記グループの数はm個(mは2以上の自然数)であり、
前記帯域制御部は、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、前記動作周波数の最低値が前記送受信可能周波数の最低値となる第1のバイアス電圧値を算出するバイアス電圧算出部と、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、前記第1のバイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最高値を算出する周波数算出部と、
前記動作期間中の前記静電容量型超音波振動子に印加する前記バイアス電圧値を決定するバイアス電圧決定部と、
を有し、
前記バイアス電圧決定部は、第n番目(nはm以下の自然数)のグループに属する前記静電容量型超音波振動子に印加する前記直流バイアス電圧の前記バイアス電圧値である、第n印加バイアス電圧値のnが1であるときの値である第1印加バイアス電圧値を、前記第2のバイアス電圧値から、前記第1のバイアス電圧値まで変化させ、
前記周波数算出部は、nが2以上(m−1)以下のとき、前記第nのバイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの前記送受信可能周波数の最高値である第nの判定用最高周波数を算出し、
前記バイアス電圧決定部は、nが2以上のとき、前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、第n印加バイアス電圧値を、該第n印加バイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの前記送受信可能周波数の最低値が、前記第(n−1)の判定用最高周波数以下となるように決定し、
前記バイアス電圧変更手段は、第n番目のグループに属する前記静電容量型超音波振動子に印加する直流バイアス電圧の前記バイアス電圧値を、前記第n印加バイアス電圧値とする、
ことを特徴とする請求項12に記載の超音波プローブ装置。
【請求項17】
前記バイアス電圧−周波数関係情報は、
前記バイアス電圧値と前記送受信可能周波数の最小値との関係が、該バイアス電圧値と前記静電容量型超音波振動子の共振周波数との関係を示す情報であり、
前記バイアス電圧値と前記送受信可能周波数の最大値との関係が、該バイアス電圧値と前記静電容量型超音波振動子の反共振周波数との関係を示す情報である、
ことを特徴とする請求項12乃至16のうち何れか1項に記載の超音波プローブ装置。
【請求項18】
前記超音波が到達する距離と該超音波の周波数との関係を示す情報を記憶する距離−周波数関係記憶部と、
前記超音波が到達する距離と該超音波の周波数との関係に基づいて、ユーザが指定する前記超音波の到達距離から、前記動作周波数の最低値を決定するコントロール部と、
を更に具備することを特徴とする請求項10乃至16のうち何れか1項に記載の超音波プローブ装置。
【請求項19】
前記動作期間の開始時に、当該超音波プローブ装置は、超音波を送信し、
前記動作期間中に、当該超音波プローブ装置は、超音波を受信し、
前記バイアス電圧値は、前記超音波を受信している前記動作期間中に変化し、
前記直流バイアス電圧を印加したときに前記静電容量型超音波振動子によって送信及び/又は受信できる超音波の周波数範囲である送受信可能周波数と、前記バイアス電圧値との関係を示す、バイアス電圧−周波数関係情報を記憶する記憶部を更に具備し、
前記グループの数は2つであり、
前記前記帯域制御部は、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、
前記動作周波数の最低値が前記送受信可能周波数の最低値となる最大バイアス電圧値と、
前記動作周波数の最高値が前記送受信可能周波数の最高値となる最小バイアス電圧値と、
を算出するバイアス電圧算出部と、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、
前記最大バイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最高値である第1の判定用最高周波数と、
前記最小バイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最低値である第1の判定用最低周波数と、
を算出する周波数算出部と、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、
第1の判定用最高周波数が前記送受信可能周波数の最高値となる中間バイアス電圧値と、
前記中間バイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最高値である第2の判定用最高周波数と、
を算出する中間周波数算出部と、
前記第2の判定用最高周波数が前記第1の判定用最低周波数以上であるか否かを判定する周波数判定部と、
前記第2の判定用最高周波数が前記第1の判定用最低周波数以上でないとき、前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、前記第1の判定用最低周波数が前記送受信可能周波数の最高値となる前記バイアス電圧値を算出し、該バイアス電圧値を中間バイアス電圧値に再設定する周波数再設定部と、
2つある前記グループのうち一方に属する前記静電容量型超音波振動子に印加する前記直流バイアス電圧の前記バイアス電圧値である第1印加バイアス電圧値と、
他方に属する前記静電容量型超音波振動子に印加する前記直流バイアス電圧の前記バイアス電圧値である第2印加バイアス電圧値と、
を決定するバイアス電圧決定部と、
を有し、
前記バイアス電圧決定部は、前記動作期間中の時間経過と共に、
前記第1印加バイアス電圧値を前記中間バイアス電圧値から前記最大バイアス電圧値まで変化させ、前記第2印加バイアス電圧値を前記最小バイアス電圧値に維持し、
前記第1印加バイアス電圧値を前記最大バイアス電圧値にした後は、前記第1印加バイアス電圧値を前記最大バイアス電圧値に維持し、前記第2印加バイアス電圧値を前記最小バイアス電圧値から前記中間バイアス電圧値まで変化させ、
前記バイアス電圧変更手段は、2つある前記グループのうち一方に属する前記静電容量型超音波振動子に、前記第1印加バイアス電圧値を有する直流バイアス電圧を印加し、他方に属する前記静電容量型超音波振動子に、前記第2印加バイアス電圧値を有する直流バイアス電圧を印加する、
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波プローブ装置。
【請求項20】
印加される直流バイアス電圧のバイアス電圧値に応じて、送受信できる超音波の周波数範囲が変化する、静電容量型超音波振動子を複数具備し、前記複数の静電容量型超音波振動子の各々は、m個(mは2以上の自然数)のグループのうちの何れか1つに属し、該m個のグループの各々は、少なくとも1つの前記静電容量型超音波振動子を含む、超音波プローブ装置の制御方法であって、
n(nはm以下の自然数)が1のとき、前記直流バイアス電圧を印加したときに前記静電容量型超音波振動子によって送信及び/又は受信できる超音波の周波数範囲である送受信可能周波数と、前記バイアス電圧値との関係である、バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、当該超音波プローブ装置が送信及び/又は受信する連続した周波数帯である動作周波数の最低値が、前記送受信可能周波数の最低値となる第1のバイアス電圧値を算出し、
nが2以上のとき、前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、第nのバイアス電圧値を、該第nのバイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの前記送受信可能周波数の最低値が、第(n−1)のバイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの前記送受信可能周波数の最高値以下となるように決定し、
第n番目のグループに属する前記静電容量型超音波振動子に、前記第nのバイアス電圧値を有する前記直流バイアス電圧を印加する、
ことを特徴とする超音波プローブ装置の制御方法。
【請求項21】
印加される直流バイアス電圧のバイアス電圧値に応じて、送受信できる超音波の周波数範囲が変化する、静電容量型超音波振動子を複数具備し、前記複数の静電容量型超音波振動子の各々は、2つのグループのうちの何れか1つに属し、該2つのグループの各々は、少なくとも1つの前記静電容量型超音波振動子を含む、超音波プローブ装置の制御方法であって、
前記直流バイアス電圧を印加したときに前記静電容量型超音波振動子によって送信及び/又は受信できる超音波の周波数範囲である送受信可能周波数と、前記バイアス電圧値との関係である、バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、当該超音波プローブ装置が送信及び/又は受信する連続した周波数帯である動作周波数の最低値が、前記送受信可能周波数の最低値となる第1のバイアス電圧値を算出し、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、前記動作周波数の最高値が、前記送受信可能周波数の最高値となる第2のバイアス電圧値を算出し、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、前記第1のバイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最高値である判定用最高周波数を算出し、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、前記第2のバイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最低値である判定用最低周波数を算出し、
前記判定用最高周波数が前記判定用最低周波数以上であるか否かを判定し、
前記判定用最高周波数が前記判定用最低周波数以上でないとき、前記最高周波数をより小さな値に再設定し、前記第2のバイアス電圧値の算出と、前記判定用最高周波数の算出と、前記判定用最低周波数の算出と、前記判定とを繰り返し、
前記判定用最高周波数が前記判定用最低周波数以上であるとき、2つある前記グループのうち一方に属する前記静電容量型超音波振動子に、前記第1のバイアス電圧値を有する直流バイアス電圧を印加し、他方に属する前記静電容量型超音波振動子に、前記第2のバイアス電圧値を有する前記直流バイアス電圧を印加する、
ことを特徴とする超音波プローブ装置の制御方法。
【請求項22】
印加される直流バイアス電圧のバイアス電圧値に応じて、送受信できる超音波の周波数範囲が変化する、静電容量型超音波振動子を複数具備し、前記複数の静電容量型超音波振動子の各々は、m個(mは2以上の自然数)のグループのうちの何れか1つに属し、該m個のグループの各々は、少なくとも1つの前記静電容量型超音波振動子を含む超音波プローブ装置の制御方法であって、
前記直流バイアス電圧を印加したときに前記静電容量型超音波振動子によって送信及び/又は受信できる超音波の周波数範囲である送受信可能周波数と、前記バイアス電圧値との関係である、バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、当該超音波プローブ装置が送信及び/又は受信する連続した周波数帯である動作周波数の最低値が、前記送受信可能周波数の最低値となる第1のバイアス電圧値を算出し、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、第2のバイアス電圧値を、該第2のバイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの前記送受信可能周波数の最低値が、前記第1のバイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最高値以下となるように決定し、
動作期間中の時間経過と共に、第n番目(nはm以下の自然数)のグループに属する前記静電容量型超音波振動子に印加する前記直流バイアス電圧の前記バイアス電圧値である、第n印加バイアス電圧値の、nが1であるときの値である第1印加バイアス電圧値を、前記第2のバイアス電圧値から前記第1のバイアス電圧値まで変化させ、
nが2以上のとき、前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、第n印加バイアス電圧値を、該第n印加バイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの前記送受信可能周波数の最低値が、第(n−1)印加バイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最高値以下となるように決定し、
第n番目のグループに属する前記静電容量型超音波振動子に、前記第n印加バイアス電圧値を有する前記直流バイアス電圧を印加する、
ことを特徴とする超音波プローブ装置の制御方法。
【請求項23】
印加される直流バイアス電圧のバイアス電圧値に応じて、送受信できる超音波の周波数範囲が変化する、静電容量型超音波振動子を複数具備し、前記複数の静電容量型超音波振動子の各々は、2つのグループのうちの何れか1つに属し、該2つのグループの各々は、少なくとも1つの前記静電容量型超音波振動子を含む、超音波プローブ装置の制御方法であって、
前記直流バイアス電圧を印加したときに前記静電容量型超音波振動子によって送信及び/又は受信できる超音波の周波数範囲である送受信可能周波数と、前記バイアス電圧値との関係である、バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、当該超音波プローブ装置が送信及び/又は受信する連続した周波数帯である動作周波数の最低値が、前記送受信可能周波数の最低値となる最大バイアス電圧値を算出し、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、前記動作周波数の最高値が、前記送受信可能周波数の最高値となる最小バイアス電圧値を算出し、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、前記最大バイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最高値である第1の判定用最高周波数を算出し、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、前記最小バイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最低値である第1の判定用最低周波数を算出し、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、第1の判定用最高周波数が前記送受信可能周波数の最高値となる中間バイアス電圧値を算出し、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、前記中間バイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最高値である第2の判定用最高周波数を算出し、
前記第2の判定用最高周波数が前記第1の判定用最低周波数以上であるか否かを判定し、
前記第2の判定用最高周波数が前記第1の判定用最低周波数以上でないとき、前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、前記第1の判定用最低周波数が前記送受信可能周波数の最高値となる前記バイアス電圧値を算出し、該バイアス電圧値を中間バイアス電圧値に再設定し、
前記動作期間中の時間経過と共に、第1印加バイアス電圧値を、前記中間バイアス電圧値から、前記最大バイアス電圧値まで変化させ、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて算出した、前記第1印加バイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの前記送受信可能周波数の最高値である第3の判定用最高周波数が前記第1の判定用最低周波数以上であるか否かを判定し、
前記第3の判定用最高周波数が前記第1の判定用最低周波数以上であるとき、2つある前記グループのうち一方に属する前記静電容量型超音波振動子に、前記第1印加バイアス電圧値を有する直流バイアス電圧を印加し、他方に属する前記静電容量型超音波振動子に、前記最小バイアス電圧値を有する直流バイアス電圧を印加し、
前記第3の判定用最高周波数が前記第1の判定用最低周波数以上でないとき、前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、前記送受信可能周波数の最低値が前記第3の判定用最高周波数以下となる第2印加バイアス電圧値を算出し、2つある前記グループのうち一方に属する前記静電容量型超音波振動子に、前記第1印加バイアス電圧値を有する直流バイアス電圧を印加し、他方に属する前記静電容量型超音波振動子に、前記第2印加バイアス電圧値を有する直流バイアス電圧を印加する、
ことを特徴とする超音波プローブ装置の制御方法。
【請求項24】
前記バイアス電圧−周波数関係情報は、
前記バイアス電圧値と前記送受信可能周波数の最小値との関係が、前記バイアス電圧値と前記静電容量型超音波振動子の共振周波数との関係を示す情報であり、
前記バイアス電圧値と前記送受信可能周波数の最大値との関係が、前記バイアス電圧値と前記静電容量型超音波振動子の反共振周波数との関係を示す情報である、
ことを特徴とする請求項20乃至23のうち何れか1項に記載の超音波プローブ装置の制御方法。
【請求項25】
前記超音波が到達する距離と該超音波の周波数との関係に基づいて、ユーザが指定する前記超音波の到達距離から、前記動作周波数の最低値を決定することを特徴とする請求項20乃至23のうち何れか1項に記載の超音波プローブ装置の制御方法。
【請求項1】
印加される直流バイアス電圧のバイアス電圧値に応じて送受信できる超音波の周波数範囲が変化する静電容量型超音波振動子を、複数具備する超音波プローブ装置であって、
前記複数の静電容量型超音波振動子の各々は、複数のグループのうちの何れか1つに属し、該複数のグループの各々は、少なくとも1つの該静電容量型超音波振動子を含み、
当該超音波プローブ装置の動作期間内で、連続した周波数帯である動作周波数に含まれる全ての周波数が、当該超音波プローブ装置によって送信及び/又は受信されるように、前記グループ毎に異なる前記バイアス電圧値と、当該バイアス電圧値を有する直流バイアス電圧を印加するタイミングとを決定する帯域制御部と、
前記帯域制御部が決定する前記バイアス電圧値と前記タイミングとに応じて、前記静電容量型超音波振動子に印加する前記直流バイアス電圧を変更する、バイアス電圧変更手段と、
を具備することを特徴とする超音波プローブ装置。
【請求項2】
前記バイアス電圧値は、前記動作期間中に変化せず、
前記動作周波数に含まれる全ての周波数は、前記動作期間中を通して前記複数のグループに属する静電容量型超音波振動子によって送信及び/又は受信される、
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波プローブ装置。
【請求項3】
前記直流バイアス電圧を印加したときに前記静電容量型超音波振動子によって送信及び/又は受信できる超音波の周波数範囲である送受信可能周波数と、前記バイアス電圧値との関係を示す、バイアス電圧−周波数関係情報を記憶する記憶部を更に具備し、
前記帯域制御部は、前記記憶部に記憶された前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、前記バイアス電圧値を決定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の超音波プローブ装置。
【請求項4】
前記グループの数はm個(mは2以上の自然数)であり、
前記帯域制御部は、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、前記動作周波数の最低値が前記送受信可能周波数の最低値となる第1のバイアス電圧値を決定し、
n(nはm以下の自然数)が2以上のとき、前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、第nのバイアス電圧値を、該第nのバイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの前記送受信可能周波数の最低値が、第(n−1)のバイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの前記送受信可能周波数の最高値以下となるように決定し、
前記バイアス電圧変更手段は、第n番目のグループに属する前記静電容量型超音波振動子に、前記第nのバイアス電圧値を有する直流バイアス電圧を印加する、
ことを特徴とする請求項3に記載の超音波プローブ装置。
【請求項5】
前記第nのバイアス電圧値を、nが小さい方から順に決定していくことを特徴とする請求項4に記載の超音波プローブ装置。
【請求項6】
前記グループの数は2つであり、
前記帯域制御部は、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、
前記動作周波数の最低値が前記送受信可能周波数の最低値となる第1のバイアス電圧値と、
前記動作周波数の最高値が前記送受信可能周波数の最高値となる第2のバイアス電圧値と、
を算出するバイアス電圧算出部と、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、
前記第1のバイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最高値である判定用最高周波数と、
前記第2のバイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最低値である判定用最低周波数と、
を算出する周波数算出部と、
前記判定用最高周波数が前記判定用最低周波数以上であるか否かを判定する周波数判定部と、
前記判定用最高周波数が前記判定用最低周波数以上でないとき、前記最高周波数をより小さな値に再設定し、前記バイアス電圧算出部による算出と、前記周波数算出部による算出と、前記周波数判定部による判定とを繰り返させる、周波数再設定部と、
を有し、
前記判定用最高周波数が前記判定用最低周波数以上であるとき、前記バイアス電圧変更手段は、2つある前記グループのうち一方に属する前記静電容量型超音波振動子に、前記第1のバイアス電圧値を有する直流バイアス電圧を印加し、他方に属する前記静電容量型超音波振動子に、前記第2のバイアス電圧値を有する直流バイアス電圧を印加する、
ことを特徴とする請求項3に記載の超音波プローブ装置。
【請求項7】
前記グループの数はm個(mは2以上の自然数)であり、
前記帯域制御部は、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、第nのバイアス電圧値(nはm以下の自然数)を算出するバイアス電圧算出部と、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、第nの判定用最高周波数を算出する周波数算出部と、
を有し、
前記バイアス電圧算出部は、
nが1のとき、前記動作周波数の最低値が前記送受信可能周波数の最低値となる前記第nのバイアス電圧値を算出し、
nが2以上のとき、前記第(n−1)の判定用最高周波数が前記送受信可能周波数の最低値以上となる前記第nのバイアス電圧値を算出し、
前記周波数算出部は、
nが1以上(m−1)以下のとき、前記第nのバイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最高値である前記第nの判定用最高周波数を算出し、
前記バイアス電圧変更手段は、第n番目のグループに属する前記静電容量型超音波振動子に、前記第nのバイアス電圧値を有する直流バイアス電圧を印加する、
ことを特徴とする請求項3に記載の超音波プローブ装置。
【請求項8】
前記バイアス電圧−周波数関係情報は、
前記バイアス電圧値と前記送受信可能周波数の最小値との関係が、該バイアス電圧値と前記静電容量型超音波振動子の共振周波数との関係を示す情報であり、
前記バイアス電圧値と前記送受信可能周波数の最大値との関係が、該バイアス電圧値と前記静電容量型超音波振動子の反共振周波数との関係を示す情報である、
ことを特徴とする請求項3乃至7のうち何れか1項に記載の超音波プローブ装置。
【請求項9】
前記超音波が到達する距離と該超音波の周波数との関係を示す情報を記憶する距離−周波数関係記憶部と、
前記超音波が到達する距離と該超音波の周波数との関係に基づいて、ユーザが指定する前記超音波の到達距離から、前記動作周波数の最低値を決定するコントロール部と、
を更に具備することを特徴とする請求項1乃至7のうち何れか1項に記載の超音波プローブ装置。
【請求項10】
前記動作期間の開始時に、当該超音波プローブ装置は、超音波を送信し、
前記動作期間中に、当該超音波プローブ装置は、超音波を受信し、
前記バイアス電圧値は、前記超音波を受信している前記動作期間中に変化し、
前記動作期間中の各時点での当該超音波プローブ装置が送信及び/又は受信する連続した周波数帯である瞬間動作周波数に含まれる全ての周波数は、前記複数のグループに属する静電容量型超音波振動子によって送信及び/又は受信される、
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波プローブ装置。
【請求項11】
前記動作期間中の時間経過に従って、
前記瞬間動作周波数の最高値である前記瞬間最高周波数は、前記動作周波数の最高値から単調減少し、
前記瞬間動作周波数の最低値である前記瞬間最低周波数は、初期値から単調減少して前記動作周波数の最低値に達する、
ことを特徴とする請求項10に記載の超音波プローブ装置。
【請求項12】
前記直流バイアス電圧を印加したときに前記静電容量型超音波振動子によって送信及び/又は受信できる超音波の周波数範囲である送受信可能周波数と、前記バイアス電圧値との関係を示す、バイアス電圧−周波数関係情報を記憶する記憶部を更に具備し、
前記帯域制御部は、前記記憶部に記憶された前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、前記バイアス電圧値と前記タイミングとを決定する、
ことを特徴とする請求項11に記載の超音波プローブ装置。
【請求項13】
前記グループの数はm個(mは2以上の自然数)であり、
前記帯域制御部は、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、前記動作周波数の最低値が前記送受信可能周波数の最低値となる第1のバイアス電圧値を決定し、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、第2のバイアス電圧値を、該第2のバイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの前記送受信可能周波数の最低値が、前記第1のバイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最高値以下となるように決定し、
前記動作期間中の時間経過と共に、第n番目(nはm以下の自然数)のグループに属する前記静電容量型超音波振動子に印加する前記直流バイアス電圧の前記バイアス電圧値である、第n印加バイアス電圧値の、nが1であるときの値である第1印加バイアス電圧値を、前記第2のバイアス電圧値から前記第1のバイアス電圧値まで変化させ、
nが2以上のとき、前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、第n印加バイアス電圧値を、該第n印加バイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの前記送受信可能周波数の最低値が、第(n−1)印加バイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最高値以下となるように決定し、
前記バイアス電圧変更手段は、第n番目のグループに属する前記静電容量型超音波振動子に、前記第n印加バイアス電圧値を有する直流バイアス電圧を印加する、
ことを特徴とする請求項12に記載の超音波プローブ装置。
【請求項14】
前記第nのバイアス電圧値を、nが小さい方から順に決定していくことを特徴とする請求項13に記載の超音波プローブ装置。
【請求項15】
前記グループの数は2つであり、
前記帯域制御部は、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、
前記動作周波数の最低値が前記送受信可能周波数の最低値となる最大バイアス電圧値と、
前記動作周波数の最高値が前記送受信可能周波数の最高値となる最小バイアス電圧値と、
を算出するバイアス電圧算出部と、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、
前記最大バイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最高値である第1の判定用最高周波数と、
前記最小バイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最低値である第1の判定用最低周波数と、
を算出する周波数算出部と、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、
第1の判定用最高周波数が前記送受信可能周波数の最高値となる中間バイアス電圧値と、
前記中間バイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最高値である第2の判定用最高周波数と、
を算出する中間周波数算出部と、
前記第2の判定用最高周波数が前記第1の判定用最低周波数以上であるか否かを判定する周波数判定部と、
前記第2の判定用最高周波数が前記第1の判定用最低周波数以上でないとき、前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、前記第1の判定用最低周波数が前記送受信可能周波数の最高値となる前記バイアス電圧値を算出し、該バイアス電圧値を中間バイアス電圧値に再設定する周波数再設定部と、
2つある前記グループのうち一方に属する前記静電容量型超音波振動子に印加する前記直流バイアス電圧の前記バイアス電圧値である第1印加バイアス電圧値と、
他方に属する前記静電容量型超音波振動子に印加する前記直流バイアス電圧の前記バイアス電圧値である第2印加バイアス電圧値と、
を決定するバイアス電圧決定部と、
を有し、
前記バイアス電圧決定部は、第1印加バイアス電圧値を、前記動作期間中の時間経過と共に、前記中間バイアス電圧値から、前記最大バイアス電圧値まで変化させ、
前記周波数算出部は、前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、前記第1印加バイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの前記送受信可能周波数の最高値である第3の判定用最高周波数を算出し、
前記周波数判定部は、前記第3の判定用最高周波数が前記第1の判定用最低周波数以上であるか否かを判定し、
前記第3の判定用最高周波数が前記第1の判定用最低周波数以上であるとき、前記バイアス電圧変更手段は、2つある前記グループのうち一方に属する前記静電容量型超音波振動子に、前記第1印加バイアス電圧値を有する直流バイアス電圧を印加し、他方に属する前記静電容量型超音波振動子に、前記最小バイアス電圧値を有する直流バイアス電圧を印加し、
前記第3の判定用最高周波数が前記第1の判定用最低周波数以上でないとき、
前記バイアス電圧決定部は、前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、前記送受信可能周波数の最低値が前記第3の判定用最高周波数以下となる第2印加バイアス電圧値を算出し、
前記バイアス電圧変更手段は、2つある前記グループのうち一方に属する前記静電容量型超音波振動子に、前記第1印加バイアス電圧値を有する直流バイアス電圧を印加し、他方に属する前記静電容量型超音波振動子に、前記第2印加バイアス電圧値を有する直流バイアス電圧を印加する、
ことを特徴とする請求項12に記載の超音波プローブ装置。
【請求項16】
前記グループの数はm個(mは2以上の自然数)であり、
前記帯域制御部は、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、前記動作周波数の最低値が前記送受信可能周波数の最低値となる第1のバイアス電圧値を算出するバイアス電圧算出部と、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、前記第1のバイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最高値を算出する周波数算出部と、
前記動作期間中の前記静電容量型超音波振動子に印加する前記バイアス電圧値を決定するバイアス電圧決定部と、
を有し、
前記バイアス電圧決定部は、第n番目(nはm以下の自然数)のグループに属する前記静電容量型超音波振動子に印加する前記直流バイアス電圧の前記バイアス電圧値である、第n印加バイアス電圧値のnが1であるときの値である第1印加バイアス電圧値を、前記第2のバイアス電圧値から、前記第1のバイアス電圧値まで変化させ、
前記周波数算出部は、nが2以上(m−1)以下のとき、前記第nのバイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの前記送受信可能周波数の最高値である第nの判定用最高周波数を算出し、
前記バイアス電圧決定部は、nが2以上のとき、前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、第n印加バイアス電圧値を、該第n印加バイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの前記送受信可能周波数の最低値が、前記第(n−1)の判定用最高周波数以下となるように決定し、
前記バイアス電圧変更手段は、第n番目のグループに属する前記静電容量型超音波振動子に印加する直流バイアス電圧の前記バイアス電圧値を、前記第n印加バイアス電圧値とする、
ことを特徴とする請求項12に記載の超音波プローブ装置。
【請求項17】
前記バイアス電圧−周波数関係情報は、
前記バイアス電圧値と前記送受信可能周波数の最小値との関係が、該バイアス電圧値と前記静電容量型超音波振動子の共振周波数との関係を示す情報であり、
前記バイアス電圧値と前記送受信可能周波数の最大値との関係が、該バイアス電圧値と前記静電容量型超音波振動子の反共振周波数との関係を示す情報である、
ことを特徴とする請求項12乃至16のうち何れか1項に記載の超音波プローブ装置。
【請求項18】
前記超音波が到達する距離と該超音波の周波数との関係を示す情報を記憶する距離−周波数関係記憶部と、
前記超音波が到達する距離と該超音波の周波数との関係に基づいて、ユーザが指定する前記超音波の到達距離から、前記動作周波数の最低値を決定するコントロール部と、
を更に具備することを特徴とする請求項10乃至16のうち何れか1項に記載の超音波プローブ装置。
【請求項19】
前記動作期間の開始時に、当該超音波プローブ装置は、超音波を送信し、
前記動作期間中に、当該超音波プローブ装置は、超音波を受信し、
前記バイアス電圧値は、前記超音波を受信している前記動作期間中に変化し、
前記直流バイアス電圧を印加したときに前記静電容量型超音波振動子によって送信及び/又は受信できる超音波の周波数範囲である送受信可能周波数と、前記バイアス電圧値との関係を示す、バイアス電圧−周波数関係情報を記憶する記憶部を更に具備し、
前記グループの数は2つであり、
前記前記帯域制御部は、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、
前記動作周波数の最低値が前記送受信可能周波数の最低値となる最大バイアス電圧値と、
前記動作周波数の最高値が前記送受信可能周波数の最高値となる最小バイアス電圧値と、
を算出するバイアス電圧算出部と、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、
前記最大バイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最高値である第1の判定用最高周波数と、
前記最小バイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最低値である第1の判定用最低周波数と、
を算出する周波数算出部と、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、
第1の判定用最高周波数が前記送受信可能周波数の最高値となる中間バイアス電圧値と、
前記中間バイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最高値である第2の判定用最高周波数と、
を算出する中間周波数算出部と、
前記第2の判定用最高周波数が前記第1の判定用最低周波数以上であるか否かを判定する周波数判定部と、
前記第2の判定用最高周波数が前記第1の判定用最低周波数以上でないとき、前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、前記第1の判定用最低周波数が前記送受信可能周波数の最高値となる前記バイアス電圧値を算出し、該バイアス電圧値を中間バイアス電圧値に再設定する周波数再設定部と、
2つある前記グループのうち一方に属する前記静電容量型超音波振動子に印加する前記直流バイアス電圧の前記バイアス電圧値である第1印加バイアス電圧値と、
他方に属する前記静電容量型超音波振動子に印加する前記直流バイアス電圧の前記バイアス電圧値である第2印加バイアス電圧値と、
を決定するバイアス電圧決定部と、
を有し、
前記バイアス電圧決定部は、前記動作期間中の時間経過と共に、
前記第1印加バイアス電圧値を前記中間バイアス電圧値から前記最大バイアス電圧値まで変化させ、前記第2印加バイアス電圧値を前記最小バイアス電圧値に維持し、
前記第1印加バイアス電圧値を前記最大バイアス電圧値にした後は、前記第1印加バイアス電圧値を前記最大バイアス電圧値に維持し、前記第2印加バイアス電圧値を前記最小バイアス電圧値から前記中間バイアス電圧値まで変化させ、
前記バイアス電圧変更手段は、2つある前記グループのうち一方に属する前記静電容量型超音波振動子に、前記第1印加バイアス電圧値を有する直流バイアス電圧を印加し、他方に属する前記静電容量型超音波振動子に、前記第2印加バイアス電圧値を有する直流バイアス電圧を印加する、
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波プローブ装置。
【請求項20】
印加される直流バイアス電圧のバイアス電圧値に応じて、送受信できる超音波の周波数範囲が変化する、静電容量型超音波振動子を複数具備し、前記複数の静電容量型超音波振動子の各々は、m個(mは2以上の自然数)のグループのうちの何れか1つに属し、該m個のグループの各々は、少なくとも1つの前記静電容量型超音波振動子を含む、超音波プローブ装置の制御方法であって、
n(nはm以下の自然数)が1のとき、前記直流バイアス電圧を印加したときに前記静電容量型超音波振動子によって送信及び/又は受信できる超音波の周波数範囲である送受信可能周波数と、前記バイアス電圧値との関係である、バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、当該超音波プローブ装置が送信及び/又は受信する連続した周波数帯である動作周波数の最低値が、前記送受信可能周波数の最低値となる第1のバイアス電圧値を算出し、
nが2以上のとき、前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、第nのバイアス電圧値を、該第nのバイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの前記送受信可能周波数の最低値が、第(n−1)のバイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの前記送受信可能周波数の最高値以下となるように決定し、
第n番目のグループに属する前記静電容量型超音波振動子に、前記第nのバイアス電圧値を有する前記直流バイアス電圧を印加する、
ことを特徴とする超音波プローブ装置の制御方法。
【請求項21】
印加される直流バイアス電圧のバイアス電圧値に応じて、送受信できる超音波の周波数範囲が変化する、静電容量型超音波振動子を複数具備し、前記複数の静電容量型超音波振動子の各々は、2つのグループのうちの何れか1つに属し、該2つのグループの各々は、少なくとも1つの前記静電容量型超音波振動子を含む、超音波プローブ装置の制御方法であって、
前記直流バイアス電圧を印加したときに前記静電容量型超音波振動子によって送信及び/又は受信できる超音波の周波数範囲である送受信可能周波数と、前記バイアス電圧値との関係である、バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、当該超音波プローブ装置が送信及び/又は受信する連続した周波数帯である動作周波数の最低値が、前記送受信可能周波数の最低値となる第1のバイアス電圧値を算出し、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、前記動作周波数の最高値が、前記送受信可能周波数の最高値となる第2のバイアス電圧値を算出し、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、前記第1のバイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最高値である判定用最高周波数を算出し、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、前記第2のバイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最低値である判定用最低周波数を算出し、
前記判定用最高周波数が前記判定用最低周波数以上であるか否かを判定し、
前記判定用最高周波数が前記判定用最低周波数以上でないとき、前記最高周波数をより小さな値に再設定し、前記第2のバイアス電圧値の算出と、前記判定用最高周波数の算出と、前記判定用最低周波数の算出と、前記判定とを繰り返し、
前記判定用最高周波数が前記判定用最低周波数以上であるとき、2つある前記グループのうち一方に属する前記静電容量型超音波振動子に、前記第1のバイアス電圧値を有する直流バイアス電圧を印加し、他方に属する前記静電容量型超音波振動子に、前記第2のバイアス電圧値を有する前記直流バイアス電圧を印加する、
ことを特徴とする超音波プローブ装置の制御方法。
【請求項22】
印加される直流バイアス電圧のバイアス電圧値に応じて、送受信できる超音波の周波数範囲が変化する、静電容量型超音波振動子を複数具備し、前記複数の静電容量型超音波振動子の各々は、m個(mは2以上の自然数)のグループのうちの何れか1つに属し、該m個のグループの各々は、少なくとも1つの前記静電容量型超音波振動子を含む超音波プローブ装置の制御方法であって、
前記直流バイアス電圧を印加したときに前記静電容量型超音波振動子によって送信及び/又は受信できる超音波の周波数範囲である送受信可能周波数と、前記バイアス電圧値との関係である、バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、当該超音波プローブ装置が送信及び/又は受信する連続した周波数帯である動作周波数の最低値が、前記送受信可能周波数の最低値となる第1のバイアス電圧値を算出し、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、第2のバイアス電圧値を、該第2のバイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの前記送受信可能周波数の最低値が、前記第1のバイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最高値以下となるように決定し、
動作期間中の時間経過と共に、第n番目(nはm以下の自然数)のグループに属する前記静電容量型超音波振動子に印加する前記直流バイアス電圧の前記バイアス電圧値である、第n印加バイアス電圧値の、nが1であるときの値である第1印加バイアス電圧値を、前記第2のバイアス電圧値から前記第1のバイアス電圧値まで変化させ、
nが2以上のとき、前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、第n印加バイアス電圧値を、該第n印加バイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの前記送受信可能周波数の最低値が、第(n−1)印加バイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最高値以下となるように決定し、
第n番目のグループに属する前記静電容量型超音波振動子に、前記第n印加バイアス電圧値を有する前記直流バイアス電圧を印加する、
ことを特徴とする超音波プローブ装置の制御方法。
【請求項23】
印加される直流バイアス電圧のバイアス電圧値に応じて、送受信できる超音波の周波数範囲が変化する、静電容量型超音波振動子を複数具備し、前記複数の静電容量型超音波振動子の各々は、2つのグループのうちの何れか1つに属し、該2つのグループの各々は、少なくとも1つの前記静電容量型超音波振動子を含む、超音波プローブ装置の制御方法であって、
前記直流バイアス電圧を印加したときに前記静電容量型超音波振動子によって送信及び/又は受信できる超音波の周波数範囲である送受信可能周波数と、前記バイアス電圧値との関係である、バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、当該超音波プローブ装置が送信及び/又は受信する連続した周波数帯である動作周波数の最低値が、前記送受信可能周波数の最低値となる最大バイアス電圧値を算出し、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、前記動作周波数の最高値が、前記送受信可能周波数の最高値となる最小バイアス電圧値を算出し、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、前記最大バイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最高値である第1の判定用最高周波数を算出し、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、前記最小バイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最低値である第1の判定用最低周波数を算出し、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、第1の判定用最高周波数が前記送受信可能周波数の最高値となる中間バイアス電圧値を算出し、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、前記中間バイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの、前記送受信可能周波数の最高値である第2の判定用最高周波数を算出し、
前記第2の判定用最高周波数が前記第1の判定用最低周波数以上であるか否かを判定し、
前記第2の判定用最高周波数が前記第1の判定用最低周波数以上でないとき、前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、前記第1の判定用最低周波数が前記送受信可能周波数の最高値となる前記バイアス電圧値を算出し、該バイアス電圧値を中間バイアス電圧値に再設定し、
前記動作期間中の時間経過と共に、第1印加バイアス電圧値を、前記中間バイアス電圧値から、前記最大バイアス電圧値まで変化させ、
前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて算出した、前記第1印加バイアス電圧値の直流バイアス電圧を印加したときの前記送受信可能周波数の最高値である第3の判定用最高周波数が前記第1の判定用最低周波数以上であるか否かを判定し、
前記第3の判定用最高周波数が前記第1の判定用最低周波数以上であるとき、2つある前記グループのうち一方に属する前記静電容量型超音波振動子に、前記第1印加バイアス電圧値を有する直流バイアス電圧を印加し、他方に属する前記静電容量型超音波振動子に、前記最小バイアス電圧値を有する直流バイアス電圧を印加し、
前記第3の判定用最高周波数が前記第1の判定用最低周波数以上でないとき、前記バイアス電圧−周波数関係情報に基づいて、前記送受信可能周波数の最低値が前記第3の判定用最高周波数以下となる第2印加バイアス電圧値を算出し、2つある前記グループのうち一方に属する前記静電容量型超音波振動子に、前記第1印加バイアス電圧値を有する直流バイアス電圧を印加し、他方に属する前記静電容量型超音波振動子に、前記第2印加バイアス電圧値を有する直流バイアス電圧を印加する、
ことを特徴とする超音波プローブ装置の制御方法。
【請求項24】
前記バイアス電圧−周波数関係情報は、
前記バイアス電圧値と前記送受信可能周波数の最小値との関係が、前記バイアス電圧値と前記静電容量型超音波振動子の共振周波数との関係を示す情報であり、
前記バイアス電圧値と前記送受信可能周波数の最大値との関係が、前記バイアス電圧値と前記静電容量型超音波振動子の反共振周波数との関係を示す情報である、
ことを特徴とする請求項20乃至23のうち何れか1項に記載の超音波プローブ装置の制御方法。
【請求項25】
前記超音波が到達する距離と該超音波の周波数との関係に基づいて、ユーザが指定する前記超音波の到達距離から、前記動作周波数の最低値を決定することを特徴とする請求項20乃至23のうち何れか1項に記載の超音波プローブ装置の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−95111(P2012−95111A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240786(P2010−240786)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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