説明

超音波内視鏡の先端部

【課題】挿入部先端へのバルーンの取り付け固定作業を何度もやり直すことなく、超音波走査方向の背面方向へのバルーンの膨らみを確実に規制することができる超音波内視鏡の先端部を提供すること。
【解決手段】挿入部先端を構成する先端部本体2の超音波走査方向Uの背面側の、バルーン20が膨らんでいない状態ではバルーン20の外表面との間に隙間11が生じる位置に、バルーン20が超音波走査方向Uの背面側に向かって膨らみ始めるとバルーン20の外表面が面状に当接してその方向へのバルーン20の膨らみが規制される板状部材9を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は超音波内視鏡の先端部に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波は液体中は伝わり易いが空気中は伝わり難い特性がある。そこで超音波内視鏡の先端部には一般に、超音波プローブが取り付けられている挿入部先端を囲む状態に膨縮自在なサック状のバルーンを取り付けて、バルーン内に脱気水等を送り込んで膨らませるようにしている。
【0003】
ただし、バルーンが超音波走査方向の背面側に膨らむと超音波走査方向への膨らみが不十分になるので、バルーンが超音波走査方向の背面側に膨らむのを規制する部材を設けて、超音波走査方向に効率よく膨らむようにしている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−169805
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された発明等においては、図6に示されるように、バルーン91で囲まれた挿入部先端90の超音波走査方向Uの背面部分に、外方からバルーン91に押し付けられる単品の固定部材92をバルーン91と共に嵌め込むことができる溝93が形成されている。
【0005】
そして、バルーン91を間に挟んだ状態で固定部材92を溝93に着脱することにより、挿入部先端90の超音波走査方向Uの背面部分にバルーン91を任意に固定/解除することができ、固定状態にすることで、図6に示されるようにバルーン91が超音波走査方向Uの背面方向に膨らむ動作が規制されるようになっている。
【0006】
しかし、サック状に形成されてその開口部分側が挿入部先端に緊縛固定されたバルーン91は、固定部材92による挿入部先端90への固定位置が少しでもずれると挿入部先端90に対する膨らみ方に歪みが発生してしまう。したがって、固定部材92を何度が装着し直さなければならなくなる場合があり、取り扱いが面倒であった。
【0007】
そこで本発明は、挿入部先端へのバルーンの取り付け固定作業を何度もやり直すことなく、超音波走査方向の背面方向へのバルーンの膨らみを確実に規制することができる超音波内視鏡の先端部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の超音波内視鏡の先端部は、挿入部先端の側方を超音波走査方向とする超音波プローブが挿入部先端の側面に配置され、弾力性のある薄膜状部材からなる膨縮自在なサック状のバルーンが、その開口部分を挿入部先端に緊縛することにより挿入部先端を囲む状態に着脱自在に取り付けられた超音波内視鏡の先端部において、挿入部先端を構成する先端部本体の超音波走査方向の背面側の、バルーンが膨らんでいない状態ではバルーンの外表面との間に隙間が生じる位置に、バルーンが超音波走査方向の背面側に向かって膨らみ始めるとバルーンの外表面が面状に当接してその方向へのバルーンの膨らみが規制される板状部材を設けたものである。
【0009】
なお、板状部材が先端部本体に固定的に設けられているとよく、先端部本体に一体に形成されていてもよい。そして、板状部材が、先端部本体の先端より前方に突出しない範囲で後方から前方に向かって突出する状態に配置されているとよい。
【0010】
また、板状部材の前方位置にあたる先端部本体の最先端部分に、板状部材の先端面との間に隙間をあけて先端壁が形成されていると、体内挿入動作の際に板状部材の先端が粘膜等にぶつからず挿入を円滑かつ安全に行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、挿入部先端を構成する先端部本体の超音波走査方向の背面側の、バルーンが膨らんでいない状態ではバルーンの外表面との間に隙間が生じる位置に、バルーンが超音波走査方向の背面側に向かって膨らみ始めるとバルーンの外表面に面状が当接してその方向へのバルーンの膨らみが規制される板状部材を設けたことにより、バルーンを超音波走査方向の背面側で固定することなく背面方向へのバルーンの膨らみを規制することができるので、挿入部先端へのバルーンの取り付け固定作業を何度もやり直すことなく、超音波走査方向の背面方向へのバルーンの膨らみを確実に規制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
挿入部先端の側方を超音波走査方向とする超音波プローブが挿入部先端の側面に配置され、弾力性のある薄膜状部材からなる膨縮自在なサック状のバルーンが、その開口部分を挿入部先端に緊縛することにより挿入部先端を囲む状態に着脱自在に取り付けられた超音波内視鏡の先端部において、挿入部先端を構成する先端部本体の超音波走査方向の背面側の、バルーンが膨らんでいない状態ではバルーンの外表面との間に隙間が生じる位置に、バルーンが超音波走査方向の背面側に向かって膨らみ始めるとバルーンの外表面が面状に当接してその方向へのバルーンの膨らみが規制される板状部材を設ける。
【実施例】
【0013】
図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図3は超音波内視鏡の挿入部の先端部分にバルーンが取り付けられていない状態を示しており、可撓性の挿入部1の先端を構成する先端部本体2の先側半部の側面には、矢印Uで超音波走査方向の範囲が示されるように側方を扇形に超音波走査して超音波断層像を得るためのいわゆるコンベックスタイプの超音波プローブ3が配置されている。
【0014】
その後側に隣接する先端部本体2の後側半部に超音波走査方向Uに向けて形成された斜面4には、光学観察像を取り込むための観察窓5が配置されて、図示されていない対物光学系や固体撮像素子等が観察窓5の内側に内蔵されている。6は照明窓、7は処置具突出口である。
【0015】
先端部本体2の中間位置の超音波プローブ3の後端に隣接する部分には、図示されていないバルーンの開口部分を緊縛して固定するための受けになる円周溝状のバルーン固定溝8が形成されている。
【0016】
先端部本体2の超音波走査方向Uの背面位置にあたる部分には、バルーンが超音波走査方向Uの背面側に向かって膨らみ始めたときにバルーンの外表面に面状に当接してその方向へのバルーンの膨らみを規制する板状部材9が設けられている。
【0017】
10は、板状部材9の前方位置にあたる先端部本体2の最先端部分に形成された先端壁であり、超音波内視鏡の先端部を体内に挿入する動作の際に板状部材9の先端が粘膜等にぶつからず挿入動作を円滑かつ安全に行うことができる。
【0018】
図4は、超音波プローブ3が設けられた先端部本体2の先側半部と、そこに取り付けられる前の状態のバルーン20と、バルーン固定溝8にバルーン20の開口部分を緊縛固定するためのOリング30とを示している。
【0019】
バルーン20とOリング30は、共にシリコンゴム等のような弾力性に富んだ材料によって形成され、バルーン20は薄膜状の部材で指サック状に形成されてその開口端の縁部に口元リング21が形成され、Oリング30は単純な環状に形成されている。
【0020】
板状部材9は、先端部本体2の背部側(即ち、超音波プローブ3による超音波走査方向の背面側)に沿って先端部本体2の後側半部部分から前方に向かって延出する状態に先端部本体2に一体に突出形成されている。
【0021】
板状部材9の先端は先端部本体2の先端より後方位置にあって、板状部材9の内側部分には、先端部本体2に対して先端側から被せられるバルーン20が緩く通過できる溝状の隙間11が形成され、その隙間11と一つながりに、板状部材9の先端面と先端壁10との間にも隙間12が形成されている。
【0022】
図5は、先端部本体2の先側半部にバルーン20が取り付けられて膨らんでいない状態を示しており、バルーン20は、超音波プローブ3を包み込む状態に先端部本体2の先側半部に被せられ、超音波プローブ3の背面側では隙間12,11内に位置している。
【0023】
そしてバルーン20は、開口部分がOリング30によりきつく締め付けられてバルーン固定溝8に緊縛固定され、Oリング30をバルーン固定溝8から離脱させればバルーン20を先端部本体2から取り外すことができる。なお、図5に示されるように、各隙間12,11は、バルーン20の口元リング21とOリング30が共に引っ掛かりなく通過できる寸法に形成されている。
【0024】
そのように構成された超音波内視鏡の先端部において、バルーン20内に脱気水等が注入されてバルーン20が膨らむと、図1及びそのII−II断面を図示する図2に示されるように、バルーン20が超音波プローブ3による超音波走査方向Uとその側方とに膨らむ。
【0025】
しかし、超音波プローブ3による超音波走査方向Uの背面側においては、バルーン20が膨らみ始めると板状部材9にバルーン20の外表面が面状に当接してその方向へのバルーン20の膨らみが規制されるので、バルーン20が超音波走査方向U側に効率よく膨らむ。
【0026】
そして、バルーン20は開口部分がOリング30で先端部本体2に固定されているだけで、超音波走査方向Uの背面側においては板状部材9に面状に当接しているだけなので、先端部本体2に対するバルーン20の膨らみ方に全体的に歪みが発生せず、先端部本体2に対するバルーン20の取り付け固定作業をやり直す必要が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例の超音波内視鏡の先端部のバルーンが膨らんだ状態の側面図である。
【図2】本発明の実施例の超音波内視鏡の先端部のバルーンが膨らんだ状態の正面断面図(図1におけるII−II断面図)である。
【図3】本発明の実施例の超音波内視鏡の先端部のバルーンが取り付けられていない状態の斜視図である。
【図4】本発明の実施例の超音波内視鏡の先端部にバルーンを取り付ける際の状態の側面図である。
【図5】本発明の実施例の超音波内視鏡の先端部にバルーンが取り付けられて膨らんでいない状態の側面図である。
【図6】従来の超音波内視鏡の先端部のバルーンが膨らんだ状態の正面断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 挿入部
2 先端部本体
3 超音波プローブ
8 バルーン固定溝
9 板状部材
10 先端壁
11 隙間
12 隙間
20 バルーン
30 Oリング
U 超音波走査方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入部先端の側方を超音波走査方向とする超音波プローブが上記挿入部先端の側面に配置され、弾力性のある薄膜状部材からなる膨縮自在なサック状のバルーンが、その開口部分を上記挿入部先端に緊縛することにより上記挿入部先端を囲む状態に着脱自在に取り付けられた超音波内視鏡の先端部において、
上記挿入部先端を構成する先端部本体の上記超音波走査方向の背面側の、上記バルーンが膨らんでいない状態では上記バルーンの外表面との間に隙間が生じる位置に、上記バルーンが上記超音波走査方向の背面側に向かって膨らみ始めると上記バルーンの外表面が面状に当接してその方向への上記バルーンの膨らみが規制される板状部材を設けたことを特徴とする超音波内視鏡の先端部。
【請求項2】
上記板状部材が、上記先端部本体に固定的に設けられている請求項1記載の超音波内視鏡の先端部。
【請求項3】
上記板状部材が、上記先端部本体に一体に形成されている請求項2記載の超音波内視鏡の先端部。
【請求項4】
上記板状部材が、上記先端部本体の先端より前方に突出しない範囲で後方から前方に向かって突出する状態に配置されている請求項1、2又は3記載の超音波内視鏡の先端部。
【請求項5】
上記板状部材の前方位置にあたる上記先端部本体の最先端部分に、上記板状部材の先端面との間に隙間をあけて先端壁が形成されている請求項4記載の超音波内視鏡の先端部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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