説明

超音波処理に用いる装置および工程

超音波処理に用いる装置および工程を提供すること。微小気泡5と共に高周波数で低エネルギーの超音波4を用いて、切断またはインクだめ溶液からの微生物を処理し、成長を阻止し、抑制する装置および方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
特定の実施形態において、本発明は、切断流体を処理するための高周波で低エネルギーの超音波に関する。他の実施形態において、本発明はインクだめ溶液を処理するための高周波で低エネルギーの超音波の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
金属および他の硬質材料の切断は、作業物に所望の形状、サイズ、または表面を提供する切断工具を用いてしばしば行われる。これらの硬質材料を切断するとき、摩擦熱は切断工具を焼き、機械加工された作業片の表面を粗くする。さらに、熱膨張は作業物および工具の形状とサイズの精度を低下させ、それによって様々な他の問題を招く。上記問題を軽減するために、切断中、しばしば切断流体が利用される。
【0003】
金属および他の硬質材料を切断するとき、通常切断流体として油が使用される。切断流体として純粋な油を使用するひとつの欠点は、高い温度が火事と煙を招く恐れがあるので、通常低い温度で使用しなければならないことである。この問題の解決を助けるために、十分な潤滑性と冷却特性を有する油−水エマルジョン切断流体を切断流体として使用することができる。
【0004】
都合の悪いことに、切断流体、特に水系切断流体はバクテリアや他の細菌が繁殖し易い。バクテリア群体はしばしば不快な臭い、切断流体の劣化、および重大な健康障害を招く。一般に、切断流体中に成長するバクテリアには、酸素の存在で増殖する好気性と、酸素の不在で繁殖する嫌気性の2種類がある。嫌気性の種類は硫化水素の発生によって不快な臭気をもたらすことがあるが、それらの切断流体自体に与える実際の損害は典型的に非常に少ない。しかし、好気性の種類は流体を激しく劣化させ、浸食抑制および潤滑性の損失を招く。さらに、流体濃厚液を「食べる」バクテリアの寿命は様々な酸および塩の堆積を招く。これは動いている機械部品および機械加工される材料の両方に広範囲の腐食と侵食を招き得る。
【0005】
これらの付随する問題を阻止するために、切断流体に殺生物剤が加えられる。しかし、実際には、これらの薬剤は有用性に限界がある。経費がさらに増加することに加えて、切断流体中に組み込むことのできる殺生物剤の量に限界がある。さらに、これらの薬剤はしばしば効力がなく、経時劣化し、それらの交換は費用がかかる。さらに、これらの薬剤および物質はしばしば切断流体の品質を低下させる。
【0006】
したがって、当分野には、大量の殺生物剤を使用することなく、経時的に均一な保護または実質上均一な保護を提供することのできる、有効で新しい切断流体の処理方法が必要である。
【0007】
本明細書における教示の他の実施形態は印刷系に使用されるインクだめ溶液の処理に係わる。一般に、オフセットリソグラフ印刷は、ブランケットロールを介してインクを基板に転写しそれによって印刷された像を形成する平版プレートを利用する。プレートは像領域と非像領域が同じ面上にあるので平版と呼ばれる。インクを受容する像領域は、親油性(油に親和性がある)によってプレート上の非像領域と区別され、非像領域は親水性(水を許容する)である。
【0008】
典型的に、リソグラフ印刷プレートはインクだめ溶液の薄い膜で覆われ、非像領域のプレートがインクで被覆されることを防止する。さらに詳細には、インクだめ溶液はそれらの親水性性質を増加することによって印刷プレートの非像領域の維持を助ける。
【0009】
都合の悪いことに、インクだめ溶液は微生物の繁殖に適した媒体を提供する。望ましくない微生物は、例えばバクテリア、藻、カビ等を含み得る。この問題に対抗するために、抗細菌剤または有毒殺生物剤をインクだめ溶液に加えることができる。
【0010】
インクだめ溶液の濃厚液に加えられた殺生物剤は貯蔵および輸送中の製品の保護を提供することができるが、それらは希釈されると有用性に限界がある。希釈された状態でも、これらの殺生物剤のいくつかは皮膚に敏感であり、多量の摂取は皮膚の刺激官能性および他の皮膚の問題を招くことが報告されている。
【0011】
殺生物剤の有害な使用を避けるために、インクだめ溶液の微生物制御にUVが考えられた。典型的なUV処理は細胞溶解工程による微生物の殺傷を含み、細胞膜および細胞成分が分解される。UV光は比較的清浄な水ではいくらか有効であるが、溶液が汚れまたは多くの化合物を含むと、UV光の効率は低下する。この効率の低下は、一般にこれらの溶液中の追加の化合物がUVエネルギーを多量に吸収するために起きる。さらに、UV線の使用はその意図される目的に悪影響を与えるなど、インクだめ溶液を化学的または物理的に変化させることがある。
【0012】
Smithは、米国特許第6,503,449号の中で、高エネルギー、低周波の超音波処理で水系懸濁液を処理することを開示している。この工程は高エネルギーが必要であることに加えて、懸濁液を処理するために有害な殺生物剤に依存する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、当分野には、有害な殺生物剤を使用しない、または使用を制限した、インクだめ溶液の効率に妥協しない、有効で低エネルギーかつ高周波数のインクだめ溶液処理の方法が必要である。さらに、インクだめ溶液全体に微生物制御を提供し、実質上均一な経時保護を提供するであろう方法で処理を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
部門I:切断流体処理の装置および方法
本明細書の教示は、部分的に、切断流体中に存在する微生物の抑制、成長の阻止、および除去を行うことのできる装置および方法に関する。さらに他の実施形態において、本明細書に提供される装置および方法は、例えば微生物含有の疑いのある切断流体を処理することができる。
【0015】
切断流体は、部分的に細菌(例えばバクテリア)成長および機械加工作業からの汚染によって経時的に劣化する。規則的な補充作業によって切断流体を維持することが不経済的になると、典型的に切断流体は廃棄される。したがって、本明細書の実施形態は、細菌による劣化を防止することによる切断流体の有用な寿命の延長を包含する。さらに他の実施形態において、切断流体がその有用性を失効する点まで劣化した場合、本明細書の方法を用いて廃棄(例えば切断流体を下水系に放出する)の前に切断流体を安全なレベル(細菌繁殖の抑制)にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
装置および方法
本明細書に説明される装置の実施形態は、Cordemansらの米国特許出願第10/358445号、および米国特許第6,540,922号に見ることができ、両方ともその全体を参照して本明細書に明確に組み込まれている。切断流体の処理方法は、本明細書に開示される装置で実施することができる。切断流体の処理に用いることのできる装置の特定の実施形態のひとつは図1に示される。ある実施形態において、処理される切断流体は、例えばバクテリア、ウィルス、菌、原生生物等を含む微生物を含むことができる。
【0017】
図1を参照すれば、本明細書に説明される装置は、好ましくはシリンダー状または矩形断面形状の区画2を含むことができる。さらに他の実施形態において、区画2は処理される切断流体を保持する貯蔵器(示されていない)と連絡することができる。用語「貯蔵器」は広く解釈すべきであり、一般に切断流体を含む装置に関する。特定の実施形態において、本明細書に提供される装置は油だめを経由して再循環切断流体に接続される(例えば側部流を経て)。さらに他の実施形態において、本明細書に提供される装置は貯蔵器に連絡せず、直接処理される切断流体に接続される。
【0018】
さらに他の実施形態において、区画2は、区画2の中(好ましくはこの区画2の中心)へ超音波4を放射する1個または複数の高周波数超音波発生器1を含む(その壁に沿って)。他の実施形態において、容器は微小気泡5を発生するための1個または複数の微小気泡発生器3を有することもでき、区画2に放射された超音波4のフィールドの中へ微小気泡5を放射するように配置される。
【0019】
本明細書中に用いられる用語「微小気泡」は、平均直径1mm未満の気泡を指すことが意図される。いくつかの実施形態において、直径は50μm以下である。さらに他の実施形態において、微小気泡は約30μm未満の直径を有する。ある実施形態において、微小気泡は、空気、酸素、およびオゾン微小気泡から選択される。運転コストを低減するために、オゾン微小気泡ではなく、空気微小気泡などの微小気泡を用いることが有利である。
【0020】
用語「微生物」は細菌と同意であり、一般に切断装置(例えば機械、工具等)、人、哺乳動物、または他のあらゆる動物に有害な影響を与え得る病原性または非病原性微生物を指す。それらの微生物は、例えば、好気性バクテリアと嫌気性バクテリア(例えば、エルセニア(Yersenia)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus)、大腸菌(E.Coli)、緑膿菌スードモナスエロギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、スードモナスオレオボランス(Pseudomonas oleovorans)、パラコロバクトルム(Paracolobactrum)、プロテウスブルガリス(Proteus vulgaris)、クレブシエラニューモニア(Klebsiella pneumoniae)、ミクロコッカスピオジェネス(Micrococuus pyogenes)、アエロバクターアエロゲネス(Aerobacter aerogenes)、シトロバクター(Citrobacter)、アクロモバクター(Achromobacter))の両方、ウィルス(例えばHIV、HCV、HBV)、菌(例えばフサリウム(Fusarium)、セファロスポリウム(Cephalosporium)、クラドスポリウム(Cladosporium)、アスパーギルス(Aspergillus))、原生生物(例えば、カビ、藻)等を含むことができる。
【0021】
特定の実施形態において、本明細書の方法と装置は、切断流体を処理する低エネルギーの高周波数超音波を含む。用語「高周波数」は200kHz以上から数MHzまでの周波数を指すことが意図される。ある実施形態において、使用される高周波数は200kHz〜10MHzである。さらに他の実施形態において、高周波数は200kHz〜20MHzとすることができる。様々な他の実施形態において、高周波数は800kHz(少ないラジカル効果と多くの生物学的効果が達成される)〜5MHzとすることができる。他の実施形態において、使用される周波数は1MHz〜3MHzである。さらに詳細には、周波数は約1.8MHzとすることができる。
【0022】
本明細書に説明される方法および装置の様々な実施形態において、微小気泡5を発生するための微小気泡発生器3は、微小気泡が自然に上昇することによって、または切断流体の流れにガスが捕捉されることによって動くように、区画2の基底部11(すなわち区画2の底部)に配置される。
【0023】
さらに他の実施形態において、本明細書に提供される装置および方法は切断流体中の微生物の成長を抑制し、処理し、または阻止する。本教示は、その正確な作用機構によって制限されることは全くないが、さらに特定の実施形態において、本明細書に提供される装置はHOH、およびHOOなどのラジカルを生成することができる。また、これらのラジカルは、ラジカルと共に微生物に有害なH2O2を形成することができ、それらを不活性化し、および/または破壊することができる。
【0024】
形成される種は、水分子への高周波数の超音波の反応から誘導され、おそらく次の反応が起きると考えられる(特に酸素の存在下で)。
【0025】
H2O→HOH
H+O2→HOO
HOO+HOO→H2O2+O2
OH+OH→H2O2
【0026】
有利なことに、これらの有害な種を形成するために必要なエネルギーは、本明細書に説明するように微小気泡の存在下で工程を実施すれば、低減される。
【0027】
超音波フィールドへの微小気泡の注入は、超音波によって誘起された空隙気泡の上に微小気泡を重ね合わせることによって音ルミネセンス現象が増加し、励起された有害種を倍増することができることが最近認識された。超音波処理が適切なサイズの微小気泡の存在と相乗して組み合わされるとき、この現象は顕微鏡レベルで観察される。
【0028】
追加の実施形態において、本明細書に提供される装置および方法は、原位置で形成された生成物(例えばROS(反応性酸素種)、ラジカルおよび形成されたH2O2)を処理される切断流体の貯蔵器に向かって拡散することによって処理系が機能することが観察されるので、超音波を特定のゾーンに与える必要がないという利点を有する。
【0029】
さらに他の実施形態において、本明細書に説明される装置中の1個または複数の超音波発生器1は、実際にいかなる定常波現象も起きないように配列される。例えば、ある実施形態において、1個または複数の超音波発生器1は、区画2の軸9に対して、および切断流体の流れに対して、および微小気泡5の流れに対して斜めに(この軸9に対して直角ではない鋭角)配列することができる(図1参照)。この特徴は、区画2中に静止ゾーンを形成することなく、前記区画2中の全ての微小気泡5を統計的に同一な方法で処理することを可能にする。したがって、本明細書中のある実施形態は、均一な処理、または実質上均一な処理、および長期的な保護を提供する装置と方法に関する。
【0030】
他の実施形態によれば、本明細書に説明される装置と方法は、超音波4のフィールド中の区画2に大部分可視範囲の周波数を有する放射線を放射する光エミッター12(すなわち電磁気放射線発生器)を含むことができる。しかし、ある実施形態において、ある特定の微生物を除去するために、例えば、紫外線(例えばUVA、UVB、またはUVCの種類)、赤外、レーザー、マイクロウェーブ等、大部分非可視周波数の電磁気放射線を放射できることが有利である。
【0031】
超音波および光放射と一緒に微小気泡をフィールドに放射することは、切断流体中に存在する微生物の不活性化および除去、そしてその成長の阻止に特に有効であることが最近予期せずに発見された。光ルミネセンス現象は、過酸化ラジカル、OH、または一重項酸素など、非常に活性な酸化された種(しばしばROS(反応性酸素種)と呼ばれる)の生成を促進することができ、ある種の微生物にとって非常に毒性のある一連の生化学反応をもたらすことができる。
【0032】
様々な実施形態において、本明細書の教示は、切断流体からの微生物の抑制または成長を阻止するための追加の化学製品(例えば殺生物剤、増感剤)を必要としない装置に関する。他の実施形態において、本明細書の方法および装置は追加の化学薬品と一緒に用いることができる。
【0033】
他の実施形態において、本明細書に説明される方法および装置は、切断流体を再循環するためのポンプまたは他の装置、ならびに切断流体中に存在する微生物を回収するための装置を含むことができる。微生物を回収する装置の例は、非排他的に、濾過、遠心分離機、および沈澱(サイクロン等)用の装置を含むことができる。ある実施形態において、回収のためのポンプおよび/または装置は、処理される切断流体を収容する貯蔵器と区画2の間に配置される。
【0034】
ある実施形態において、本明細書に提供される装置は、切断流体分配器および/または切断流体収集系(例えば溝または油だめ)に接続することができる。例えば、図2は切断流体分配器20と切断流体収集装置22に接続された超音波/微小気泡処理装置を含む切断流体再循環系21を示す。さらに他の実施形態において、処理される切断流体は、工具の切断ゾーン24へ手動で加えることができ、または霧状に送達することができる。特定の実施形態において、切断流体はポンプで送達された連続的な流れで分配され、作業物の小片や削り屑を流し去るためにノズル26を経て機械工具の切断縁部28へ導かれ、または工具を経て作業物の上へ導かれる。他の実施形態において、必要な特定の用途に応じて様々な流体ノズル設計を用いることができる。さらに他の実施形態において、分配系20を用いて切断流体の流量および流れの圧力を制御することができる。他の実施形態において、切断流体は再循環系21中にあることができる。本明細書の装置と共に用いることのできる切断流体分配器の非排他的な例は、Ripleyらの米国特許第6,450,738号、およびKanebakoらの米国特許第4,514,149号に開示されており、両方ともその全体を参照して本明細書に明確に組み込まれている。
【0035】
さらに他の実施形態において、切断流体は重力流れ、速度をつけた流れ、または溝(例えばコンベヤー化した溝)によって収集することができる。特定の実施形態において、切断流体が収集された後、本明細書に提供される方法によって処理し、機械工具の切断ゾーンへ再循環することができる。他の実施形態において、切断流体は収集されず、処理のために切断ゾーンから本明細書に提供される装置へ直接移動する。本明細書の装置および方法と共に用いることのできる切断流体収集系の非排他的な例は、その全体を参照して本明細書に明確に組み込まれているBrattenらの米国特許第5,593,596号に開示されている。さらに他の態様において、本明細書の装置および方法は、例えばその全体を参照して本明細書に明確に組み込まれているJohnsonらの米国特許第5,224,051号に開示された、任意の適切な切断流体監視および/または制御系と共に用いることができる。
【0036】
本明細書の方法および装置は、例えば金属等の硬質材料の切断あるいは取り扱いが可能な任意の適切な装置(例えば機械)で使用される任意の種類の切断流体の処理に実際に用いることができる。用語「切断」は、広く解釈すべきであり、全ての種類の硬質材料(例えば金属)の取り扱いを包含する。ある実施形態において、用語「切断」は、例えば、平削り、穿孔、穴ぐり、逆穿孔、成形、ネジ加工、形状加工、穴押し出し、研削、鋸引き、ドリル穴あけ、点面付け、タッピング、押し型取り、引き抜き、彫刻、ピアシング、内部ブリーチング、拡孔、パンチ(例えばパンチプレスを用いる)、ロール成形、台座成形、スタンピング、回転、ダイアモンド薄葉加工等に関することができる。したがって、本明細書の方法および装置は、上記機能が可能な、または類似機能が可能な任意の適切な機器または機械と共に用いることができる。例えば、適切な機器および機械は、研削切断機、穴ぐり機械、穿孔機械、逆穿孔機械、成形機械、穿孔研削機、鋸(例えば円盤または帯)、研磨機(例えばベルトおよびホイール)、ドリル機械、パンチプレス等を含む。
【0037】
上述し、図4の一実施形態に示したように、ある特定の実施形態において、本明細書に説明する方法および装置は、ローリング油エマルジョンなどのロール成形系に使用される流体を処理することができる。さらに特定の実施形態において、本明細書の教示はアルミニウムロール成形に使用されるローリング油エマルジョンの処理に用いることができる。本明細書の方法および装置でのローリング油エマルジョンの処理は、流体の潤滑特性またはpHを劣化させない。さらに、本明細書の教示は、不快な臭気が広がるのを防止し、生物的廃棄物が系内のフィルターを閉塞させるのを防止する。好ましい実施形態において、本明細書の方法および装置は、ローリング油エマルジョンを35℃〜60℃の温度で処理することができる。
【0038】
ある実施形態において、本明細書に提供される方法および装置は、切断機器が1種または複数種の切断流体を使用するかどうか、または1個または複数の切断流体貯蔵器に接続されているかどうかに関わらず、特定の切断機器に使用される各切断流体を処理することができる。
【0039】
本明細書の方法および装置は、現在入手可能な任意の適切な種類の切断流体、または将来入手可能であろう切断流体を処理するのに用いることができる。用語「切断流体」は、広く解釈すべきであり、一般に金属等の硬質材料の切断において、潤滑剤、冷却剤、溶着防止剤、または侵食抑制剤として用いられる流体に関する。ある実施形態において、用語「切断流体」は、金属加工流体(MWF)を包含する。他の実施形態において、用語「切断流体」は、他の硬質材料の処理、例えばガラス、セラミック、カーバイド、鉱物、土器、ダイアモンドおよび他の貴石、プラスチック等の取り扱いまたは切断に使用される流体を包含する。
【0040】
上述の機能に基づいて、切断流体は、例えばより長い工具寿命、作業物の熱変形の低減、より良好な表面仕上げ、および小片と削りくずの容易な取り扱い等をもたらす。
【0041】
実際的に、溶解性油、半合成流体、合成流体の範疇の一般的な3種類の切断流体を含む任意の切断流体は、本明細書に説明される装置および方法と共に用いることができる。
【0042】
ある実施形態において、本明細書の装置および方法は、合成切断流体の処理に用いることができる。一般に合成流体は蛋白質または鉱物油ベースを含まず、代りにアルカリ性無機および有機化合物から処方される。合成切断流体は、合成された炭化水素、有機エステル、ポリグリコール、リン酸エステル、有機または無機塩、および他の合成潤滑流体を含むことができる。さらに、合成切断流体は、侵食を抑制する薬品などの添加剤を含むことができる。合成流体は、しばしば希釈された形で使用される。例えば、合成濃厚液の各部を約9〜41、10〜40、11〜40、11〜39、10〜35、10〜30部の水で希釈することができる。合成流体は全ての切断流体の中でしばしば最善の冷却性能を提供するが、一般に最適な潤滑は提供しない。
【0043】
さらに他の実施形態において、本明細書の方法および装置は溶解性油切断流体の処理に用いることができる。全ての産業において使用されているが、用語「溶解性油」は、一般的に構成成分が水に溶解性がないので、典型的な誤用である。溶解性油は一般に水に加えて攪拌されると水中油のエマルジョンを形成する乳化剤および/または他の添加剤と混合された油(例えば鉱物および石油)である。例えば、油および任意の他の添加剤が潤滑および侵食抑制特性を提供しながら、エマルジョンは金属加工工程に用いられる水冷却特性を良好にする。通常、濃厚液はベース鉱物油および安定なエマルジョンの生成を助ける1種または複数種の乳化剤を含む。過脂肪エマルジョンは典型的に脂肪油、脂肪酸、またはエステルの添加によって製造される。極圧エマルジョンは、例えば塩素、塩素化パラフィン、硫黄、リン等の添加剤を含むことができる。
【0044】
典型的に、溶解性油切断流体は良好な潤滑と熱伝達性能を提供する。さらに、溶解性油切断流体は産業で広く使用され、通常全ての切断流体中最も安価である。溶解性油切断流体は、水系油、水系溶解性油、水系乳化油、乳化油、水溶解性油等として知られる。
【0045】
油は典型的に溶解性油切断流体中に希釈される。例えば、ある実施形態において、油は切断流体の約3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、または10%を構成することができる。ある実施形態において、溶解性油切断流体に使用される水は、脱イオンまたは軟化される。他の実施形態において、使用される水は、約70〜140、80〜125、または90〜115ppmの炭酸カルシウムを含むことができる。
【0046】
他の実施形態において、本明細書の方法および装置は半合成切断流体の処理に用いることができる。半合成切断流体は一般に合成流体と溶解性油流体の組み合わせに関し、両方の種類に共通の特性を有する。半合成流体のコストおよび熱伝達性能は、典型的に合成流体と溶解性油流体の間にある。
【0047】
本明細書の方法で処理される切断流体の特定の種類に応じて、切断流体は、例えば、水、油、1種または複数種の乳化剤、キレート剤、結合剤、粘度指標改善剤、洗剤、可塑剤、ミスト防止剤、溶着防止剤、油化剤、界面湿潤剤、分散剤、不動態化剤、消泡剤、アルカリ保存剤、染料、消臭剤、侵食抑制剤、極圧添加剤、潤滑増強剤、洗剤、タッピングコンパウンド、指紋除去剤、または任意の他の適切な添加剤を含むことができる。
【0048】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供される方法および装置は、アミン、アミド、フェニル、グアニジン、プロクロラス、プロピコナゾール、アイオドカルブ、次亜臭素酸ナトリウム、5−クロロ−2−メチル4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、3−イソチアゾロン(アンチモン塩で安定化することができる)、トリス(ヒドロキシメチル)ニトロメタン、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−S−トリアジン、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリエチル−S−トリアジン、1−(3−クロロアリル)−3,5,7−トリアザ−1−アゾニアアダマンタンクロリド、4−(2−ニトロブチル)モルホリン−4,4’−(2−エチル−2−ニトロトリメチレン)ジモルホリン、O−フェニルフェノール、2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウム、1,2−BIT、6−アセトキシ−2,4−ジメチル−m−ジオキサン、2,2−ジブロモ−3−ニトロプロピナミド、p−クロロ−m−キシレノール等の抗菌剤と共に用いることができる。また、微生物殺菌剤の非排除的な例は、Masonらの米国特許第6,342,522号、McCarthyらの米国特許第6,322,749号、Sherbaらの米国特許第5,415,210号、Friedaman,Jrらの米国特許第4,975,109号および第5,256,182号、Willinghamらの米国特許第5,145,981号、Williamsらの米国特許第4,294,853号にも提供され、これらの全てはその全体を参照して本明細書に明確に組み込まれている。
【0049】
いくつかの実施形態において、本明細書の方法および装置は、上に述べた微生物殺菌剤と共に用いることができるが、微生物の処理、成長の阻止、または抑制に提供される方法および装置の効率は、追加の化学薬品(例えば殺生物剤)に依存しないことに注目することが重要である。したがって、本明細書に説明される方法および装置は、細菌殺菌剤なしで用いることができる。
【0050】
本明細書の方法および装置が処理できる切断流体の例は、非制限的に、Fukutaniらの米国特許第6,518,225号および第6,242,391号、Perryらの米国特許第5,534,172号、Kaburagiらの米国特許第6,221,814号、Windgassenらの米国特許第4,605,507号、Futahashiらの米国特許第6,258,759号、Kalotaらの米国特許第5,616,544号に開示された切断流体を含み、これらの全てはその全体を参照して本明細書に明確に組み込まれている。
【0051】
切断流体は任意の適切な硬質材料の切断、または取り扱いに用いることができる。ある実施形態において、本明細書の方法によって処理される切断流体は、任意の適切な種類の金属作業物の切断に用いることができる(例えば冷却剤または潤滑剤として)。特定の実施形態において、作業物は、例えば、カーボン、合金および工具鋼、ステンレス鋼、チタンおよび他の高温合金、グレイ鋳鉄および延性鋳鉄、アルミニウムおよびアルミニウム合金、非鉄材料、マグネシウム、銅および銅合金、青銅、真鍮、炭素鋼、ステンレス鋼、クロム−モリ鋼、バナジウム、チタン、ニタロイ、インコネル、モネル、ベリリウム銅、炭化ホウ素等とすることができ、或いは含むことができる。
【0052】
他の実施形態において、本明細書に説明される方法および装置によって処理される切断流体は、金属のほかに例えば、ガラス、セラミック、カーバイド、鉱物、土器、ダイアモンドおよび他の貴石、プラスチック等を非制限的に含む硬質材料の切断および取り扱いに用いることができる。
【0053】
さらに他の実施形態において、本明細書の方法および装置は、例えば、遠心分離、濾過、曝気、油だめの清掃、適切な切断流体濃度の維持、表面浮遊油の除去、および殺生物剤の添加を含む、細菌繁殖を阻止する1種または複数種の他の方法と一緒に用いることができる。したがって、ある実施形態において、本明細書の方法および装置は、高周波数の超音波を、1種または複数種の上記処理方法または他の抗菌処理の前、後、またはその間に加えることに関する。
【0054】
部門II:インクだめ溶液を処理するための装置および方法
別の実施形態において、本明細書の教示は、印刷系に用いられるインクだめ溶液を処理するための装置および方法を提供する。オフセット印刷は、印刷プレートの像領域(印刷領域としても知られる)がインクを受容し、非像領域(非印刷領域または背景としても知られる)はインクをはじく原理に基づく工程である。オフセット印刷を用いて、インクで被覆された像は最終的に紙などの基板に転写され、プレート上の像に対応する像を形成する。
【0055】
一般に、用語「インクだめ溶液」は、「湿し水」としても知られ、プレートの非像領域がインクをはじき、像領域がインクを受容するように印刷プレートの表面に加えられる溶液に関する。また、インクだめ溶液を用いて、印刷を開始する間に迅速にインクを非像領域から取り去り、プレート表面上への水の迅速な広がりを促進し、湿しローラーによって水が均一に流れることを助け、プレートとブランケットを潤滑し、またはインクと水等の乳化を制御することができる。
【0056】
図3を参照すれば、印刷系内のインクだめ溶液は、典型的に通常トレー32と呼ばれる1個または複数のインクだめ溶液貯蔵器中に集められる。一般に、トレー32に配置された1個または複数のローラー38はトレー32から印刷プレート34へインクだめ溶液を転写することができる。インクだめ溶液が印刷プレート34へ転写された後、インクローラー36はインクを印刷プレート34へ転写する。インクだめ溶液をトレー32のインクだめ溶液出口から油だめへ再循環し、インクだめ溶液入口を経由して印刷系のトレーへ戻すために、循環系30がしばしば用いられる。インクだめ溶液をインクだめ溶液トレーから油だめへ駆動する通常の方法は、重力供給または重力援用供給であり、ポンプがインクだめ溶液を油だめから印刷系のインクだめ溶液トレーへ戻す。
【0057】
インクだめ溶液の通常の問題は、部分的に細菌の成長と機械加工作業からの汚染物によってそれらが時間とともに劣化することである。規則的な補充作業によってインクだめ溶液を維持することが不経済的になると、典型的にインクだめ溶液は廃棄される。
【0058】
したがって、本明細書の教示は、部分的に、インクだめ溶液中の微生物を抑制し、成長を阻止し、除去することのできる装置および方法に関する。さらに詳細には、本明細書の実施形態は、微生物による劣化を防止することによってインクだめ溶液の有用な寿命を延ばすことを含む。更なる実施形態において、インクだめ溶液がその有用性を失効する点まで劣化した場合、本明細書の方法を用いて、廃棄の前にインクだめ溶液を安全なレベル(細菌繁殖の抑制)にすることができる。
【0059】
方法および装置
本明細書に提供される装置の実施形態は、Cordemansらの米国特許出願第10/358445号および米国特許第6,540,922号に見ることができ、この両方ともその全体を参照して本明細書に明確に組み込まれている。インクだめ溶液の処理方法は、本明細書に開示される装置で実施することができる。インクだめ溶液の処理に用いることのできる装置のひとつの特定の実施形態は図1に示される。ある実施形態において、処理されるインクだめ溶液は、例えばバクテリア、ウィルス、菌、原生生物等の微生物を含むことができる。
【0060】
図1を参照すれば、本明細書に説明される装置は、好ましくはシリンダーの形状または矩形断面の区画2を含むことができる。更なる実施形態において、区画2は、処理されるインクだめ溶液を保持する貯蔵器(図示せず)に連絡することができる。用語「貯蔵器」は、広く解釈すべきであり、一般にインクだめ溶液を収容する装置に関する。特定の実施形態において、本明細書に提供される装置は、インクだめ溶液の分配、供給、収集、混合、または循環系に接続(側部流を経由して)することができる。更なる実施形態において、本明細書に提供される装置は貯蔵器に連絡せず、処理されるインクだめ溶液に直接接続される。
【0061】
他の実施形態において、区画2は(例えば壁に沿って)超音波4を区画2中、好ましくは区画2の中心に放射する1個または複数の高周波数の超音波発生器1を含む。他の実施形態において、容器は微小気泡5を発生するための1個または複数の微小気泡発生器3を有することもでき、微小気泡5を区画2に放射された超音波4のフィールドの中へ放射するように配置される。
【0062】
本明細書中に用いられる用語「微小気泡」は、平均直径1mm未満の気泡を指すことが意図される。いくつかの実施形態において、直径は50μm以下である。さらに他の実施形態において、微小気泡は約30μm未満の直径を有する。ある実施形態において、微小気泡は、空気、酸素、およびオゾン微小気泡から選択される。運転コストを低減するために、オゾン微小気泡ではなく、空気微小気泡などの微小気泡を用いることが有利である。
【0063】
用語「微生物」は「細菌」と同意であり、一般に印刷系(例えばインクだめ溶液、印刷プレート、機械、機器)、人、哺乳動物、または他のあらゆる動物に有害な影響を与え得る病原性または非病原性微生物を指す。それらの微生物は、例えば、好気性バクテリアと嫌気性バクテリア(例えば、エルセニア(Yersenia)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus)、大腸菌(E.Coli)、緑膿菌スードモナスエロギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、スードモナスオレオボランス(Pseudomonas oleovorans)、パラコロバクトルム(Paracolobactrum)、プロテウスブルガリス(Proteus vulgaris)、クレブシエラニューモニア(Klebsiella pneumoniae)、ミクロコッカスピオジェネス(Micrococuus pyogenes)、アエロバクターアエロゲネス(Aerobacter aerogenes)、シトロバクター(Citrobacter)、アクロモバクター(Achromobacter))の両方、ウィルス(例えばHIV、HCV、HBV)、菌(例えばフサリウム(Fusarium)、セファロスポリウム(Cephalosporium)、クラドスポリウム(Cladosporium)、アスパーギルス(Aspergillus))、原生生物(例えば、カビ)等を含むことができる。
【0064】
特定の実施形態において、本明細書の方法と装置は、インクだめ溶液を処理する低エネルギー高周波数超音波を含む。用語「高周波数」は200kHz以上から数MHzまでの周波数を指すことが意図される。ある実施形態において、使用される高周波数は200kHz〜10MHzである。さらに他の態様において、高周波数は200kHz〜20MHzとすることができる。様々な他の実施形態において、高周波数は800kHz(少ないラジカル効果と多くの生物学的効果が達成される)〜5MHzとすることができる。他の実施形態において、使用される周波数は1MHz〜3MHzである。さらに詳細には、周波数は約1.8MHzとすることができる。
【0065】
本明細書に説明される方法および装置の様々な実施形態において、微小気泡5を発生するための微小気泡発生器3は、微小気泡が自然に上昇することによって、またはインクだめ溶液の流れにガスが捕捉されることによって動くように、区画2の基底部11(すなわち区画2の底部)に配置される。
【0066】
さらに他の実施形態において、本明細書に提供される装置および方法はインクだめ溶液中の微生物の成長を抑制し、処理し、または阻止することができる。本教示はその正確な作用機構によって制限されることは全くないが、さらに特定の実施形態において、本明細書に提供される装置はROO、HOH、およびHOOなどのラジカルを生成することができ、H2O2も形成することができる。この分子および/またはこれらのラジカルは微生物に対して有害であり、したがって、それらを不活性化し、および/または破壊する。
【0067】
形成される種は、水分子への高周波数の超音波の反応から誘導され、おそらく次の反応が起きると考えられる(特に酸素の存在下で)。
【0068】
H2O→HOH
H+O2→HOO
HOO+HOO→H2O2+O2
OH+OH→H2O2
【0069】
有利なことに、これらの有害な種を形成するために使用されるエネルギーは、本明細書に説明するように工程が微小気泡の存在下で実施されれば、低減される。
【0070】
微小気泡の超音波フィールドへの注入は、超音波によって誘起された空隙気泡の上に微小気泡を重ね合わせることによって音ルミネセンス現象が増加し、励起された有害種を倍増することができることが最近認識された。超音波処理が適切なサイズの微小気泡の存在と相乗して組み合わされるとき、この現象は顕微鏡レベルで観察される。
【0071】
追加の実施形態において、本明細書に提供される装置および方法は、原位置で形成された生成物(例えばROS(反応性酸素種)、ラジカルおよびH2O2)を処理されるインクだめ溶液の貯蔵器に向かって拡散することによって処理系が機能することが観察されるので、超音波を特定のゾーンに与える必要がないという利点を有する。
【0072】
更なる実施形態において、本明細書に説明される装置中の1個または複数の超音波発生器1は、いかなる定常波現象も起きないように配列される。例えば、ある実施形態において、1個または複数の超音波発生器は、区画2の軸9に対して、およびインクだめ溶液の流れに対して、および微小気泡5の流れに対して斜めに(この軸9に対して直角ではない鋭角)配列することができる(図1参照)。この特徴は、区画2中に静止ゾーンを形成することなく、前記区画2中の全ての微小気泡5を統計的に同一な方法で処理することを可能にする。したがって、本明細書中のある実施形態は、均一な処理、または実質上均一な処理、および長期的な保護を提供する装置と方法に関する。
【0073】
他の実施形態によれば、本明細書に説明される装置と方法は、超音波4のフィールド中の区画2に大部分可視範囲の周波数を有する放射線を放射する光エミッター12(すなわち電磁気放射線発生器)を含むことができる。しかし、ある用途において、ある特定の微生物を除去するために、例えば、紫外線(例えばUVA、UVB、またはUVCの種類)、赤外、レーザー、マイクロウェーブ等、大部分非可視の周波数の電磁気放射線を放射できることが有利である。
【0074】
超音波および光放射と一緒に微小気泡をフィールドに放射することは、インクだめ溶液中に存在する微生物の不活性化およびその成長の阻止に特に有効であることが最近予期せずに発見された。光ルミネセンス現象は、過酸化ラジカルOH、または一重項酸素など、非常に活性な酸化された種(しばしばROS(反応性酸素種)と呼ばれる)の生成を促進することができ、ある種の微生物にとって非常に毒性のある一連の生化学反応をもたらすことができる。
【0075】
様々な実施形態において、本明細書の教示は、インクだめ溶液からの微生物の抑制または成長を阻止するための追加の化学製品(例えば殺生物剤、増感剤)を必要としない装置に関する。他の実施形態において、本明細書の装置は、限られた量の化学製品(例えば殺生物剤、増感剤)と一緒に用いて、インクだめ溶液中の微生物の抑制または成長を阻止することができる。用語「限られた量」は5ppm未満の殺生物剤を含む溶液に関する。例えば、限られた量の殺生物剤は約4.9、4.5、4.0、3.0、2.0、1.0、および0ppm、およびこれらの値の間の任意の値または範囲を含むことができる。用語「殺生物剤」は広く解釈すべきであり、一般に例えばバクテリア、カビ、藻、菌、ウィルス、原生生物等を含む微生物の成長を阻止または停止することのできる任意の適切な薬品に関する。
【0076】
他の実施形態において、本明細書に説明される方法および装置は、インクだめ溶液を再循環するためのポンプまたは他の装置、ならびにインクだめ溶液中に存在する微生物を回収するための装置を含むことができる。微生物を回収する装置の例は、非排他的に、濾過、遠心分離機、および沈澱(サイクロン等)用の装置を含むことができる。ある実施形態において、回収のためのポンプおよび/または装置は、処理されるインクだめ溶液を収容する貯蔵器と区画2の間に配置される。
【0077】
ある実施形態において、本明細書に提供される装置および方法は、実際に任意のインクだめ溶液分配、混合、収集、供給、または循環系に接続することができる。さらに特定の実施形態において、本明細書の装置は、例えばSibiliaらの米国特許第6,508,069号、MacPheeらの米国特許第5,713,282号、MacPheeらの米国特許第5,619,920号、Hughesらの米国特許第4,969,480号、Juhaszらの米国特許第4,754,779号、Beckleyらの米国特許第4,523,854号、MacPheeらの米国特許第4,394,870号、Patskoらの米国特許第4,151,854号に開示されるインクだめ系に接続することができる。上記特許はその全体を参照して本明細書に明確に組み込まれている。
【0078】
新しい環境への関心ならびに厳しい廃棄規制は、系が比較的汚染なく維持されるように、インクだめ溶液を再循環する必要を生んだ。例えば、多くの地域で、消費されたインクだめ溶液は有害廃棄物として分類される。故に、頻繁に溶液の廃棄と交換を実施することはコスト的に高くなる。したがって、更なる実施形態において、再使用の前にインクだめ溶液を処理することに加えて、本明細書の方法および装置は、例えば適用される廃棄規制を満足するなど、インクだめ溶液を廃棄に適したものにするのに用いることができる。
【0079】
典型的に、インクだめ溶液は主として水と追加の物質を含む。一般に、追加の物質は意図されるインクだめ溶液の特定の用途に応じてインクだめ溶液に加えられる。したがって、更なる実施形態は、pHを調節し、印刷インクとの適合性を確実にし、あるいは印刷プレートを湿らせておく薬品を含むインクだめ溶液の処理方法を含む。更なる実施形態において、本明細書の方法は、キレート形成剤、溶媒、保存剤(殺生物剤を含む)、界面活性剤、侵食抑制剤(例えば、硝酸亜鉛、硝酸マグネシウム、硝酸アルミニウム)、消泡剤、染料、粘度調節剤、乳化調節剤、パイリング防止剤(例えばグリコール)、減感剤(例えばケイ酸塩、リン酸塩)、水溶性ゴム(例えばアラビアゴム、ラーチゴム、澱粉、CMC、PVP、アクリル樹脂)、または潤滑剤(例えば、アルコール、アルコール置換剤、ポリマー、グリコール)等の1種または複数種を含むインクだめ溶液を処理することができる。
【0080】
本明細書に説明される方法で限られた量を使用することのできる典型的な殺生物剤は、ブロモポル[1,3−プロパンジオール、2−ブロモ−2−ニトロ]、様々なイソチアゾロン、グルタルアルデヒド、安息香酸ナトリウム、フェノール、6−アセトキシ−2,4−ジメチル−m−ジオキサン、1,2−ベンズイソ−チアゾリン−3−オン、2−[(ヒドロキシメチル)アミノ]エタノール、ホルムアルデヒド、トリアルキルベンジル型の第四アンモニウム塩等を含む。
【0081】
さらに特定の実施形態において、本明細書に提供される方法および装置は、実際に任意の種類のオフセット印刷、または混合できない水と油に基づく印刷に使用されるインクだめ溶液の処理に用いることができる。さらにより特定の実施形態において、本明細書の方法および装置は、実際に任意のリソグラフ印刷系に使用されるインクだめ溶液の処理に用いることができる。
【0082】
本明細書の方法および装置が処理することのできるインクだめ溶液の例は、Whiteheadらの米国特許第5,897,693号、Matsumotoらの米国特許第5,720,800号、Marxらの米国特許第5,695,550号、Matsumotoらの米国特許第5,637,444号、Schellらの米国特許第5,308,388号、Chaseらの米国特許第5,279,648号、Gamblinらの米国特許第5,164,000号、Bassemirらの米国特許第4,854,969号等に開示されるインクだめ溶液を含むが制限されない。これらの特許の各々は、その全体を参照して本明細書に明確に組み込まれている。
【0083】
更なる実施形態において、本明細書の方法は、例えば、遠心分離、濾過、曝気、油だめ清掃、インクだめ溶液の適切な濃度の維持、殺生物剤の添加等を含んで、インクだめ溶液中の細菌の繁殖を阻止する1種または複数種の他の方法と共に用いることができる。
したがって、ある実施形態において、本明細書に提供される方法は、高周波数の超音波を、1種または複数種の上記処理方法または細菌処理等の前、その間、または後に加えることに関する。本明細書の方法で一緒に用いることのできる、インクだめ溶液の処理用の装置は、例えば、Mizunoらの米国特許第6,293,198号、およびMeenanらの米国特許第5,622,620号に開示されている。これらの特許の両方ともその全体を参照して本明細書に明確に組み込まれている。
【0084】
前述の説明は本明細書の教示のある実施形態を詳細にするが、前述の内容がいかに詳細であっても、本明細書の方法および装置は多くの方法で実施できることが理解されるであろう。また、上記のように、本明細書の教示において、ある特性または態様を説明するときの特定の用語の使用は、その用語が係わる本明細書の教示の特性または態様の任意の特定の特徴が包含されるよう制限するように該用語が本明細書で再定義されているということを意味すると解釈すべきではないことを留意すべきである。したがって、本明細書の教示の範囲は、添付の請求項およびその任意の等価のものによって解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本明細書に説明される超音波/微小気泡装置の一実施形態を示す図である。
【図2】切断流体分配器および切断流体収集装置に接続された超音波/微小気泡装置を含む切断流体再循環系を示す図である。
【図3】印刷装置に接続された超音波/微小気泡装置を含むインクだめ溶液再循環系を示す図である。
【図4】超音波/微小気泡装置を含むロール成形再循環系を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断流体を微小気泡と200kHzまたはそれ以上の周波数の超音波に同時に露出することを含む切断流体の処理方法。
【請求項2】
前記微小気泡が本質的に環境空気からなる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記微小気泡の直径が約50マイクロメートル未満である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
切断流体中の生きた微生物の存在を低減する装置であって、
切断流体の貯蔵器を保持する区画と、
前記区画中に200kHzよりも高い周波数で超音波信号を放射するように構成した超音波発生器と、
前記切断流体を収容する区画中の超音波フィールド中に平均直径1mm未満の微小気泡を放射するように構成した微小気泡発生器とを含む装置。
【請求項5】
前記微小気泡がオゾン微小気泡ではない請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記微小気泡が、空気と酸素微小気泡からなる群から選択される請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記切断流体が水溶性切断流体である請求項4に記載の装置。
【請求項8】
前記切断流体が合成切断流体である請求項4に記載の装置。
【請求項9】
前記切断流体が半合成切断流体である請求項4に記載の装置。
【請求項10】
前記微小気泡の平均直径が50μm未満である請求項4に記載の装置。
【請求項11】
前記微小気泡の平均直径が30μm未満である請求項4に記載の装置。
【請求項12】
前記区画中に放射された前記超音波が、定常場現象を発生させない請求項4に記載の装置。
【請求項13】
前記超音波フィールド中に可視範囲の電磁放射線を放射するように構成した電磁放射線発生器をさらに含む請求項4に記載の装置。
【請求項14】
前記微生物がバクテリアである請求項4に記載の装置。
【請求項15】
切断流体を流体経路回路から収集することと、
前記切断流体を区画中へ送ることと、
区画中の前記切断流体を微小気泡と200kHzまたはそれ以上の超音波に同時に露出することとを含む切断流体の処理方法。
【請求項16】
前記微小気泡が、本質的に環境空気からなる請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記微小気泡の直径が約50マイクロメートル未満である請求項15に記載の方法。
【請求項18】
切断装置と、
前記切断装置に接続された切断流体回路と、
それを経由して前記切断流体が送られる切断流体の貯蔵器を保持する区画と、
前記区画中に200kHzよりも高い周波数の超音波信号を放射するように構成した超音波発生器と、
前記切断流体を収容する前記区画中の超音波フィールド中に1mm未満の平均直径を有する微小気泡を放射するように構成した微小気泡発生器とを含む機械装置システム。
【請求項19】
前記微小気泡がオゾン微小気泡ではない請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記微小気泡が空気および酸素微小気泡からなる群から選択される請求項18に記載の装置。
【請求項21】
前記切断流体が水溶性切断流体である請求項18に記載の装置。
【請求項22】
前記切断流体が合成切断流体である請求項18に記載の装置。
【請求項23】
前記切断流体が半合成切断流体である請求項18に記載の装置。
【請求項24】
前記微小気泡の平均直径が50μm未満である請求項18に記載の装置。
【請求項25】
前記微小気泡の平均直径が30μm未満である請求項18に記載の装置。
【請求項26】
前記区画中に放射された前記超音波が、定常場現象を発生させない請求項18に記載の装置。
【請求項27】
前記超音波フィールド中に可視範囲の電磁放射線を放射するように構成した電磁放射線発生器をさらに含む請求項18に記載の装置。
【請求項28】
インクだめ溶液を微小気泡と100kHzまたはそれ以上の周波数の超音波に同時に露出することを含むインクだめ溶液の処理方法。
【請求項29】
前記微小気泡が、本質的に環境空気からなる請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記微小気泡の平均直径が約50μm未満である請求項28に記載の方法。
【請求項31】
インクだめ溶液中の生きた微生物の存在を低減する装置であって、
インクだめ溶液の貯蔵器を保持する区画と、
前記区画中に100kHzよりも高い周波数で超音波信号を放射するように構成した超音波発生器と、
前記インクだめ溶液を収容する前記区画中の超音波フィールド中に平均直径1mm未満の微小気泡を放射するように構成した微小気泡発生器とを含む装置。
【請求項32】
前記微小気泡がオゾン微小気泡ではない請求項31に記載の装置。
【請求項33】
前記微小気泡が空気および酸素微小気泡からなる群から選択される請求項31に記載の装置。
【請求項34】
前記微小気泡の平均直径が50μm未満である請求項31に記載の装置。
【請求項35】
前記微小気泡の平均直径が30μm未満である請求項31に記載の装置。
【請求項36】
前記区画中に放射された前記超音波が、定常場現象を発生させない請求項31に記載の装置。
【請求項37】
前記超音波フィールド中に可視範囲の電磁放射線を放射するように構成した電磁放射線発生器をさらに含む請求項31に記載の装置。
【請求項38】
前記微生物がバクテリアである請求項31に記載の装置。
【請求項39】
インクだめ溶液を流体経路回路から収集することと、
前記インクだめ溶液を区画中へ送ることと、
区画中の前記インクだめ溶液を微小気泡と100kHzまたはそれ以上の超音波に同時に露出することとを含むインクだめ溶液の処理方法。
【請求項40】
前記微小気泡が、本質的に環境空気からなる請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記微小気泡の平均直径が約50マイクロメートル未満である請求項39に記載の装置。
【請求項42】
印刷装置と、
前記印刷装置に接続されたインクだめ溶液回路と、
それを経由して前記インクだめ溶液が送られるインクだめ溶液の貯蔵器を保持する区画と、
前記区画中に100kHzよりも高い周波数の超音波信号を放射するように構成した超音波発生器と、
前記インクだめ溶液を収容する前記区画中の超音波フィールド中に1mm未満の平均直径を有する微小気泡を放射するように構成した微小気泡発生器とを含む機械装置システム。
【請求項43】
前記微小気泡がオゾン微小気泡ではない請求項42に記載の装置。
【請求項44】
前記微小気泡が空気および酸素微小気泡からなる群から選択される請求項42に記載の装置。
【請求項45】
前記微小気泡の平均直径が50μm未満である請求項42に記載の装置。
【請求項46】
前記微小気泡の平均直径が30μm未満である請求項42に記載の装置。
【請求項47】
前記区画中に放射された前記超音波が、定常場現象を発生させない請求項42に記載の装置。
【請求項48】
前記超音波フィールド中に可視範囲の電磁放射線を放射するように構成した電磁放射線発生器をさらに含む請求項42に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−537027(P2007−537027A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518852(P2006−518852)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/021664
【国際公開番号】WO2005/005322
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(504164295)アシュランド ライセンシング アンド インテレクチュアル プロパティー エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】