超音波変換器
1つまたは複数の超音波放射ユニットを含む超音波変換器が開示される。1つまたは複数の超音波放射ユニットから放射される超音波の波面は、均一な半径を有する球面であり、1つまたは複数の超音波放射ユニットは、超音波を反射することができる。1つの超音波放射ユニットは、球面共振空洞を形成するように構成され、または、複数の超音波放射ユニットは、共同で球面共振空洞を形成するように構成される。球面共振空洞の内部空洞は、球面シェル形状、または球中心を含む横断球面シェル形状を有する。1つまたは複数の超音波放射ユニットから放射された超音波は、球面共振空洞の球中心が位置する領域に焦点される。超音波変換器は、大きな超音波放射領域と、超音波焦点におけるエネルギを大幅に向上させる大きな焦点利得を得るだけでなく、超音波源の作動周波数の影響から解放される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、超音波治療技術の分野に属し、より特定的には超音波変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
病気の治療に超音波が使用される場合、超音波エネルギが伝達経路において大きく損失することにより、病巣に集束する超音波の強度が過度に低くなり、必要とされる臨床治療効果を実現できないことがある。超音波治療装置に関して現在解決することが求められれている厳しい技術的難点は、如何にして伝達経路上での超音波の大きな減衰を出来る限り多く減らすか、および如何にして治療部位での超音波強度を高めるかである。
【0003】
先行技術において、上記の技術的課題を解決するための方法は、通常は超音波変換器の設計によって得られる。既存の超音波変換器に関しては、超音波エネルギの焦点領域の大きさおよび強度は、超音波変換器の放射領域と作動周波数とに関連している。放射領域が大きければ大きいほど、領域に集束する超音波エネルギが大きくなり、超音波変換器の作動周波数が高ければ高いほど、放射される超音波の波長が短くなる。これにより、焦点領域が小さくなり、超音波強度が高まる。
【0004】
超音波変換器の放射領域を大きくするために、米国特許出願公開第2006/0058678A1号には、超音波源を環状支持体に固定して超音波の放射領域を大きくする超音波変換器が開示されている。超音波源の相互作用を回避するために、以下の技術的解決手法が設計に採用される。各超音波源に対向するリング面がノッチとして構成され、これにより、単一の超音波源を有する変換器と比して、超音波変換器の焦点利得が向上する。しかし、超音波変換器の超音波源に対向するリング面にノッチが設けられるため、リング面上の超音波源の有効な放射領域が減少し、ノッチが超音波エネルギの分散を引き起こし得て、このような一体型環状体として機能する超音波治療装置の焦点領域におけるエネルギが減少する。これは、超音波変換器の焦点性能を向上させるには不利である。一方で、この技術的解決法は、単に超音波変換器の放射領域を拡大することによって焦点においてエネルギを重合させるものである。周波数が比較的低い場合、波長は比較的長いため、超音波の焦点性能が乏しくなり、焦点領域は比較的大きくなる。これにより、焦点領域の超音波強度が弱くなり、超音波治療の際に標的領域の凝固壊死を素早く効果的に形成することができなくなる。人体などの深部組織に対する超音波治療において、超音波は、焦点位置に到達するまでに、皮膚、骨組織、空気含有組織、神経組織などを通過する必要がある。比較的高い周波数が作動のために採用される場合、超音波の組織を貫通する性能が乏しくなる。上記の組織は伝達された超音波を吸収するよう作用し、焦点領域においてエネルギの減少および分散を引き起こす。組織が超音波を吸収すると、組織の温度が上昇する。超音波変換器の出力が非常に大きい場合、組織の温度が上昇すると、偶発的な損傷が引き起こされ得る。人体組織は、超音波に対して非常に大きい非線形効果を有する。人体の組織に高い強度の超音波が伝達されると、超音波の大部分は、超音波の高周波に変換され、組織によって吸収される。このとき、超音波変換器の超音波出力が継続して増加した場合、より大きい非線形効果がもたらされる。これにより、増大した超音波エネルギは、所望の焦点領域に効果的に伝達されなくなり、音響飽和現象が起こる。これにより、超音波の集中化に影響が及ぼされる。
【0005】
単に超音波変換器の放射領域を拡大し、エネルギの重合を行なうだけでは、先行技術において上記の技術的課題を効果的に解決できないことがわかる。
【0006】
実際は、超音波源の対向する面における放射と反射は、焦点利得を向上させるために使用することができる。たとえば、本件出願人によって以前に出願された中国特許(公開番号CN101140354A号)は、互いに対向する超音波変換器と超音波反射ユニットとを含む共振空洞を有する共振超音波変換器を開示している。超音波反射ユニットは、超音波変換器と同等の物であるため、共振空洞は、2つの対称に設けられた超音波変換器によって実質的に形成される。共振空洞における超音波の共振によって、音響軸の方向における超音波の焦点領域の長さは、単一の超音波変換器を単に使用した場合と比較して短くなる。(同じ周波数を有する2つの超音波が対向した場合、これらの超音波が交わる領域で干渉が発生する。この干渉が現われると、超音波は中心点で同相となり、他の点で異相となる。2つの超音波が重合することにより、中心からの分散が弱まり、超音波の焦点領域が短くなる。)これにより、エネルギはより圧縮され、焦点利得が大きく向上する。共振超音波変換器の作動モードによって、変換器の放射領域が増大することなく、変換器の焦点領域に大きな利得がもたらされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような構造の超音波変換器には、多くの欠点がある。第1に、2つの変換器によって形成される共振空洞は、封止された環状球面ではなく、効果的な音響共振を実現することができず、互いに対向する2つの変換器の間の開放部分からエネルギの一部が逃げ得る。これにより、変換器から放射される超音波エネルギは、十分に使用することができない。第2に、2つの変換器が互いに対向して設けられるため、それらの間の接続は固定されていない。この結果、2つの変換器は容易に共振状態から脱してしまう。このため、2つの変換器が超音波を放射する超音波経路が他の要因によって遮られないように保証するべきである。そうでなければ、互いに対向して設けられた2つの変換器の間に望ましい共振空洞を形成することができなず、焦点領域において十分な利得を得ることができない、または他の焦点領域が形成されて他の正常な組織に損傷を与え得る。第3に、焦点領域の長さは、共振空洞の音響軸の方向にのみ圧縮され、共振空洞の音響軸の方向から外れる他の方向における焦点領域の長さは圧縮されない。つまり、形成される焦点領域の長さは、超音波の音響軸の方向にのみ圧縮され、焦点領域の大きさは十分に小さくならない。第4に、超音波変換器の焦点領域の大きさは、依然として周波数の影響を受け、超音波は、低い周波数の作動条件下において組織貫通性が乏しくなる。これにより、伝達経路上においてエネルギの損失が大きくなるという技術的課題を解決することができない。第5に、超音波変換器の焦点領域の大きは十分でない。
【0008】
発明の概要
本発明により解決される技術的課題は、先行技術に存在する上記の欠陥に鑑み、大きな超音波放射領域と、超音波源の作動周波数による影響を受け難い焦点性能とを有する超音波変換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の技術的課題を解決するための技術的解決法は、超音波変換器が1つまたは複数の超音波放射ユニットを含むことにある。1つまたは複数の超音波放射ユニットから放射される超音波の波面は、均一な半径を有する球面であり、1つまたは複数の超音波放射ユニットは、超音波を反射する機能を有する。1つの超音波放射ユニットは、球面共振空洞を形成するように構成され、または、複数の超音波放射ユニットは、共同で球面共振空洞を形成するように構成される。球面共振空洞の内部空洞は、球面シェル形状、または球中心を含む横断球面シェル形状を有する。1つまたは複数の超音波放射ユニットから放射される超音波は、球面共振空洞の球中心が位置する領域に焦点される。
【0010】
本発明において、超音波放射ユニットによって形成される球面共振空洞の内部空洞は、球面シェル形状、または球中心を含む横断球面シェル形状を有し、球面共振空洞の全体の空洞面は、超音波の放射面および反射面として機能する。これにより、有効な超音波放射領域が増大し、反射の回数が増加する。その一方で、各超音波放射ユニットの波面における球面波が当初の放射経路とは反対方向に沿って反射した後、同じ周波数を有する反射した超音波および放射された超音波は、球面共振空洞に共振をもたらす。2つの超音波は、球中心に同時に到達する。これにより、複数の共振点が球面共振空洞内の全体にもたらされる。球面共振空洞内の媒体によって少しの超音波が吸収され(通常は、超音波が比較的低い周波数を有する場合に、少しの超音波が媒体に吸収される)、かつ超音波放射ユニットによって好適に超音波が反射される場合、超音波放射ユニットから放射される超音波は、球面共振空洞内で複数回にわたって反射される。これにより、超音波は、球面共振空洞内において複数回の共振をもたらすことができる。球面共振空洞の球中心は、共振点でもあるため、球面共振空洞の空洞面から放射される超音波と、この空洞面に対向する面で反射された超音波とによって、球中心において共鳴増幅焦点領域が形成される。これにより、球中心における超音波の強度が高まり、超音波の利用率が大きく向上する。1つまたは複数の超音波放射ユニットから放射された超音波エネルギと、反射した超音波のエネルギとは、複数回にわたって共振が高められた球中心に集中し、エネルギが数回にわたって増加する。これにより、球中心での共振が高まり、焦点領域のエネルギが増大する。しかし、球中心に位置していない共振が高められる点においては、共振の回数に限りがある。これにより、球面共振空洞内における球中心以外の位置での超音波エネルギは、球中心における超音波エネルギと比べて非常に低い。治療部位が球中心にある場合は、治療が必要でない他の部位への損傷が効果的に避けられる。
【0011】
人体の治療のために既存の従来の超音波変換器を使用して直接的に焦点する場合、焦点における音圧をPと仮定し、音強度をIと仮定する。人体の治療のために本発明の超音波変換器を使用する場合、超音波放射ユニットから放射される超音波の周波数は、従来の超音波変換器を使用して治療を行なう場合の周波数と同じと仮定し、本発明の超音波変換器の超音波の減衰は約10%と仮定する。最初の反射の後、超音波の音圧は、初期の音圧の0.9倍に減衰される。すなわち、音圧は0.9Pに減衰される。音圧は、2回にわたる減衰の後、初期の音圧の0.81倍に減衰される(反射が2回のみ行なわれたと仮定しているが、実際の反射回数は2回よりもはるかに多い)。すなわち、音圧は0.81Pに減衰される。このとき、球中心で重合された後の音圧は、P+0.9P+0.81P=2.71Pとなる。超音波の放射と反射とが両方とも2回ずつ行なわれるため(超音波放射ユニットは、超音波を放射および反射することができる)、球中心での全体的な音圧は、2×2.71P=5.42Pとなる。音の強度は、音圧と平方の関係にあるため、焦点領域内の球中心における音強度は、5.422I=29.3764Iとなる。2回のみの超音波の反射が計算された場合、本発明の超音波変換器のエネルギは、従来の超音波変換器のエネルギの約30倍に到達する。しかし、実際に実施される際には、反射回数の増加と減衰量のさらなる低下を伴うことから、焦点されたエネルギは、より大きくなる。本発明における超音波変換器の焦点領域での超音波エネルギは、既存の超音波変換器のエネルギよりもはるかに大きくなることが分かる。
【0012】
本発明における超音波変換器によって形成される球面共振空洞は、球面シェル形状、または球中心を含む横断球面シェル形状を有する。球面共振空洞の内部空洞が球面シェル形状を有する場合、球面共振空洞は完全に閉じられた音響経路(または封止された音響経路)を有し、超音波は、共振空洞の外に分散されることなく、共振空洞内においてのみ伝達される。球面共振空洞の内部空洞が、球中心を有する横断球面シェル形状を有する場合、「球中心を有する」の表現は、球面共振空洞によって形成される内部空洞の形状が、中心軸に対して垂直であって球中心を通る周方向において閉じられた音響経路を有することを意味する。換言すると、内部空洞を形成する曲線は、球中心を通る周方向の曲線を有し、これにより、中心軸に垂直な周方向における閉じられた音響経路(または封止された音響経路、すなわち周方向における音波の漏洩がない音場分布のモードであり、これにより、周方向において回折が現われず、好ましい焦点が実現する)が球面共振空洞によって形成されることが保証される。これにより、以前の超音波変換器(たとえば、中国特許番号CN101140354A)と比較して、本発明による超音波変換器は、すべてまたは大部分の超音波エネルギが共振空洞から出ることを防ぐことができる。
【0013】
焦点超音波変換器の超音波エネルギ焦点領域は、超音波変換器の振動放射面におけるエッジ回折によって引き起こされるため、従来の焦点超音波変換器は、超音波放射面のエッジ効果によって超音波エネルギ焦点領域の分散を引き起こし得て、超音波変換器の作動周波数の減少を伴い、エッジ効果の影響がより強まる。これにより、超音波焦点性能が弱まる。(すなわち、焦点領域が拡大する。)超音波治療を行なう場合、治療部位に凝固壊死を形成するために、一般の超音波変換器は、通常の0.8MHZから10MHZの範囲内の比較的高い作動周波数で作動する必要がある。しかし、本発明における超音波変換器によって形成される球面共振空洞においては、1つまたはそれ以上の数の超音波進行方向において音響経路が閉じられるため、焦点領域の周方向において回折はもたらされない。これにより、超音波周波数の減少によって引き起こされる超音波焦点の性能の減少は現われない。このため、本発明における焦点領域の大きさは、超音波変換器の放射周波数による影響を受け難い。(当然ながら、球面共振空洞の内部空洞が球中心を含む横断球面シェル形状を有する超音波変換器に関しては、球中心を通って音響軸に垂直な周囲方向のみにおいて超音波焦点領域が確実に圧縮される。すなわち、焦点領域は、音響進行面のすべての方向においてのみ圧縮される。これにより、中心軸の方向に沿って所定のエッジ回折がもたらされる。)このため、本発明における超音波放射ユニットの作動周波数の下限範囲値は、既存の超音波変換器の超音波放射ユニットの下限値と比較して適切に小さくすることができる。超音波放射ユニットの作動周波数の範囲は、20kHzから10MHzの範囲であり、好ましい作動周波数の範囲は、0.1MHzから0.8MHzである。
【0014】
本発明における超音波変換器の焦点性能は、従来の超音波変換器の焦点性能よりもはるかに良好である。このため、20kHzのような低い周波数で作動した場合であっても、本発明の超音波変換器は効果的に作動し、人体への効果的な治療を実現する。これに対して、従来の超音波変換器は、このような低い周波数において高い音場をもたらすことができない。作動周波数が低く、組織の温度上昇が小さいため、本発明の超音波変換器は、空気含有組織および骨組織を含む組織臓器、または人体の他の組織によって覆われる組織臓器に対して安全で効果的な治療を行なうことができる。これに加え、実際の治療において超音波の反射回数は制限され、本発明における超音波変換器の超音波放射ユニットは、超音波反射ユニット(超音波放射ユニットは超音波を反射することができる)としても機能し、強い焦点性能を有するため、超音波放射ユニットは、周波数が低い状態でも作動することができる。超音波放射ユニットの作動周波数を減らすことによって、超音波の反射回数の増加が支持され(周波数が低ければ低いほど、組織によって吸収される超音波は小さくなり、より多くの反射が発生する)、これにより、焦点領域(球中心)における超音波強度がさらに高まる。
【0015】
本発明の球面共振空洞を設計する際、球面波を放射する超音波放射ユニットによって形成される球面共振空洞が超音波共振重合の原理を満たすことを保証する必要がある。換言すると、球面共振空洞の直径が、放射される超音波の波長の半分の整数倍である必要がある。
【0016】
本発明において、球面共振空洞の内部空洞が、球中心を含む横断球面シェル形状を有する場合、球中心を含む横断球面シェル形状を有する内部空洞は、切頂横断球面シェル形状の内部空洞(空洞の高さは、球の半径よりも大きい)、または錐台形横断球面シェル形状の内部空洞とすることができる。
【0017】
球面共振空洞の内部空洞が、球中心を含む錐台形横断球面シェル形状の内部空洞である場合、以下の形態を使用することができる。
【0018】
1つの形態においては、上記の内部空洞の上側底面S1と下側底面S2とが互いに平行であり、上側底面と球中心との間の距離が、下側底面と球中心との間の距離に等しくない。
【0019】
他の形態においては、上記の内部空洞の上側底面S1と下側底面S2とは互いに平行であり、上側底面と球中心との間の距離は、下側底面と球中心との間の距離に等しく、球中心における焦点利得を可能な限り大きく保つことができる。
【0020】
当然ながら、実際の適用時において、錐台形横断球面シェル形状の内部空洞を有する球面共振空洞の上記2つの形態を治療に使用することができない場合(例えば、子宮筋腫のような病気を治療する場合)、球面共振空洞の内部空洞は、不規則錐台形横断球面シェル形状となり得る。このような場合、内部空洞の上側底面は、下側底面に対して平行ではなく、上側底面と球中心との間の距離は、下側底面と球中心との間の距離に等しい、または等しくない。
【0021】
球面共振空洞の内部空洞が、切頂横断球面シェル形状の内部空洞である場合、内部空洞は、冠形球面空洞と、球中心を含む錐台形球面空洞とを有する。冠形球面空洞の底面は、錐台形球面空洞の1つの底面に接合される。冠形球面空洞と錐台形球面空洞とは、取り外し可能に、または固定して接続される。
【0022】
球面共振空洞の内部空洞は、完全な球面シェル形状を有してもよい。
本発明において、1つの超音波放射ユニットは、1つの波源であり、1つまたはそれ以上の数の超音波放射ユニットによって形成される球面共振空洞は、任意の形状のハウジングを有しても良い。球面共振空洞の内部空洞は、球面シェル形状、または球中心を含む横断球面シェル形状を有することのみを保証する必要がある。製造された球面共振空洞の内部空洞が完全な球面シェル形状を有する場合、球面共振空洞は、球面シェル形状を有する1つの超音波放射ユニットのみによって形成することができる、または、球面シェル形状を有する空洞は、各々が超音波放射ユニットである複数の小さい部品に分割することができ、すべての超音波放射ユニットは、等しい半径を有する球面波を放射することができる。換言すると、球面シェル形状を有する球面共振空洞は、等しい半径を有する球面波を放射する複数の超音波放射ユニットによって形成することができる。超音波放射ユニットは、超音波放射ユニットの球面から放射される超音波が球面波であるという条件が満たされる限りにおいて、任意のタイプの圧電材料から製造することができる。たとえば、平面超音波を放射することができる圧電材料と、レンズ焦点超音波変換器ユニットを形成する焦束レンズとを組み合せて使用することができ、球面シェル形状を有する内部空洞を形成するために、複数のレンズ焦点超音波変換器ユニットを併せて使用することができる。焦束レンズは、球中心からの距離が等しく、すべての焦束レンズの内側面を結合することによって形成される球面共振空洞の内部空洞は併せて球面シェル形状、または球中心を含む横断球面シェル形状を有する。このようなタイプの超音波放射ユニットも球面波を放射することができ、本発明における超音波放射ユニットの条件が満たされる。
【0023】
球面共振空洞を設計する場合、超音波放射ユニットは超音波共振重合の原理を満たす必要がある。換言すると、形成される球面共振空洞の直径は、超音波の波長の半分の整数倍である。
【0024】
上記の球面共振空洞の内部空洞が完全な球面シェル形状を有する場合、球中心における超音波エネルギが最大限に向上するが、超音波変換器が非常に大きい容積(たとえば、人間の体の全体を収容することができるほどの大きさ)を有する場合においてのみこのような球面共振空洞を有する超音波変換器が実際の適用において病巣を効果的に治療することができる。治療の要件に基づき、たとえば、人間の頭部を治療する場合、球面シェル形状を有する球面共振空洞の内部空洞は、切頂球面空洞(空洞の高さが球の半径よりも大きい)と、冠形共面空洞(空洞の高さが球の半径よりも小さい)とを含むのが好ましい。切頂球面空洞の底面は、冠形球面空洞の底面に接合される。切頂球面空洞と冠形球面空洞とは、取り外し可能に、または固定して接続される。切頂球面空洞と冠形球面空洞とが取り外し可能に接続される場合、人間の頭部を治療する際には切頂球面空洞のみを使用してもよい。超音波放射ユニットから放射されて反射する超音波は、共鳴増幅焦点領域を球中心に形成する。
【0025】
超音波変換器によって形成される球面共振空洞の内部空洞が切頂球面共振空洞である場合、このような超音波変換器の焦点領域は、音響軸(球面共振空洞の中心軸)の方向に垂直な方向においてのみ圧縮され、音響軸の方向には圧縮されない。したがって、球中心における超音波変換器の焦点利得は、球面シェル形状を有する内部空洞を含む超音波変換器の焦点利得よりも弱い。
【0026】
あるいは、球面共振空洞の球面シェル形状の内部空洞は、球中心を有する錐台形球面空洞と、錐台形球面空洞の上側および下側の端部にそれぞれ設けられた2つの冠形球面空洞とを含む。
【0027】
球面共振空洞の球面シェル形状の内部空洞は、球中心を有する錐台形球面空洞と、錐台形球面空洞の上側および下側の端部にそれぞれ設けられた2つの冠形球面空洞とを含むことができる。2つの冠形球面空洞の底面は、錐台形球面空洞の上側底面と下側底面とにそれぞれ接合される。錐台形球面空洞と各冠形球面空洞とは、取り外し可能に接続される、または固定して接続される。錐台形球面空洞と各冠形球面空洞とが取り外し可能に接続される場合、錐台形球面空洞のみが人間の胴部および四肢の治療を行なう際に使用することができ、超音波放射ユニットから放射されて反射する超音波は、共鳴増幅焦点領域を球中心に形成する。
【0028】
好ましくは、上記の錐台形球面共振空洞の2つの底面は互いに平行であり、球中心に対して等しいまたは異なる距離を有し、具体的な距離は、実際の用途における要件に基づいて設計することができる。球中心における焦点利得を可能な限り大きく保つために、錐台形球面空洞の2つの底面は、球中心に対して等しい距離を有するのが好ましい。
【0029】
超音波変換器によって形成される球面共振空洞の内部空洞が錐台形球面共振空洞である場合、超音波焦点領域は円周内のみにおいて圧縮される。換言すると、音響進行面のすべての方向においてのみ圧縮されるため、所定のエッジ回折が超音波変換器の中心軸の方向に沿って存在する。したがって、超音波変換器の球中心における焦点利得は、切頂球面内部空洞を含む球面共振空洞を有する超音波変換器よりも弱くなる。
【0030】
画像監視装置を通す穴が上記形成された球面共振空洞に開けられるのが好ましい。
本発明における超音波変換器は、1つまたは複数の超音波放射ユニットを含む。超音波放射ユニットが1つである場合、超音波放射ユニットは、完全な球面シェル形状の球面共振空洞を形成する。
【0031】
本発明においては、複数の超音波放射ユニットを使用することができ、異なる超音波放射ユニットは、異なる周波数の超音波を放射することができる。超音波放射ユニットよって放射される超音波の周波数が互いに異なる場合、異なる周波数を有するすべての超音波放射ユニットがエネルギの重合を焦点に形成するが、このようなエネルギの重合は、可干渉性の重合ではない。可干渉性重合によってもたらされるような高いエネルギは、焦点(球中心)で得ることはできないが、焦点においては高いエネルギ重合を形成することができる。なぜなら、このような態様の重合による放射エネルギは、単一の波源を使用する場合よりもはるかに大きいためである。焦点領域において超音波エネルギを高めて安定した超音波共振を形成するために、超音波放射ユニットによって放射される球面波の周波数の差は、20%以内であるのが好ましい。さらには、超音波放射ユニットよって放射される球面波が同じ周波数を有して共振を形成し、これによって球中心において可干渉性重合を形成し、さらに超音波エネルギを高めるのが好ましい。
【0032】
本発明における超音波変換器が1つの超音波放射ユニット、または同じ周波数を有する複数の超音波放射ユニットを備える場合、球面共振空洞が形成される。この球面共振空洞内において放射されて反射するすべての超音波は球中心を通過し、球中心における超音波エネルギは、同相重合によって重合される。これにより、超音波エネルギが大きく向上する。球面共振空洞における球中心にない共振点に関しては、共振点における超音波エネルギの重合が同相重合ではないため、共振点における超音波エネルギが弱まる。人体の治療のために本発明における超音波変換器を使用する場合、焦点における病巣組織は大きな超音波エネルギを受け、焦点に位置していない人体の組織が安全であることが最大限に保証される。
【0033】
本発明における超音波変換器の回折機構は、光学における回折機構に類似する。本発明における超音波変換器が球中心を含む横断球面シェル形状の球面共振空洞を有する場合、開放型超音波変換器は、音響軸に対して垂直な周方向における回折現象伴うため、その方向における焦点領域の長さは圧縮されない。本発明の超音波変換器が、球面シェル形状を有する球面共振空洞を有する場合、音響経路の全体が完全に閉じられ、回折は発生しない。これにより、焦点におけるエネルギが最大となる。
【0034】
本発明における超音波変換器は、人体の深部組織への超音波治療および頭蓋内の超音波治療における課題を良好に解決する。人体の安全が保証される条件下において、十分な超音波エネルギが人体の深部組織に到達することができ、超音波経路上にある骨組織による超音波の吸収によって引き起こされる熱損傷が回避される。したがって、本発明における超音波変換器は、人体の深部組織および頭蓋内の病巣を治療することに特に適している。
【0035】
本発明における超音波変換器は、超音波の焦点のエネルギを大幅に向上させる、大きな超音波放射領域および高い焦点利得が提供されるだけでなく、超音波源の作動周波数の影響から解放される。
【0036】
既存の超音波変換器と比較し、本発明における超音波変換器は、以下の利点を有する。(1)本発明における超音波変換器から放射される超音波の焦点領域の大きさは、超音波放射ユニットの周波数による影響を受け難く、低い周波数の超音波を使用することによって、病巣に凝固壊死を良好に形成することができる。(2)超音波の焦点領域のすべての方向に沿った長さは、効果的に圧縮され、焦点領域の大きさを大幅に減らし、これにより、焦点領域における超音波強度を向上させる。(3)焦点領域における超音波強度は、超音波の放射力を増加させる必要なく、超音波の共振を利用することによって向上し、これにより、非焦点領域における超音波強度の向上が避けられ、治療しない部位の安全が保証される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施例におけるシェル形状の球面共振空洞の構造を概略的に示す図である。
【図2】本発明の第2の実施例におけるシェル形状の球面共振空洞の構造を概略的に示す図である。
【図3】本発明の第2の実施例における切頂球面共振空洞の構造(1つの超音波放射ユニットが使用される)を概略的に示す図である。
【図4】本発明の第2の実施例における切頂球面共振空洞の構造(複数の超音波放射ユニットが使用される)を概略的に示す図である。
【図5】本発明の第3の実施例における(規則)錐台形球面共振空洞の構造(1つの超音波放射ユニットが使用される)を概略的に示す図である。
【図6】本発明の第3の実施例における(規則)錐台形球面共振空洞(互いに平行な2つの底面を有する)の構造(単一の層に配置された複数の超音波放射ユニットが使用される)を概略的に示す図である。
【図7】本発明の第3の実施例における(規則)錐台形球面共振空洞(互いに平行な2つの底面を有する)の構造(複数の相に配置された複数の超音波放射ユニットが使用される)を概略的に示す図である。
【図8】本発明の第4の実施例における(不規則)錐台形球面共振空洞(平行でない2つの底面を有する)の構造を概略的に示す図である。
【図9】本発明の第5の実施例における超音波変換器の構造を概略的に示す図である。
【図10】図9における超音波変換器の上面図である。
【図11】図9における超音波変換器の半断面図である。
【0038】
図面においては、以下の参照番号および符号が使用される。
1−超音波放射ユニット、10−シェル形球面空洞、11−冠形球面空洞、12−切頂球面空洞、13,14−錐台形球面空洞、15−平面圧電ウエハ、16−焦束レンズ、20−穴、h1−冠形球面空洞の高さ、h2−切頂球面空洞の高さ、R−球の半径、S1−上側底面、S2−下側底面。
【発明を実施するための形態】
【0039】
好ましい実施例の詳細な記載
本発明は、図面および実施例に関連付けられ、以下でさらに詳細に記載される。
【0040】
本発明の超音波変換器は、1つまたは複数の超音波放射ユニットを含む。1つまたはそれ以上の数の超音波放射ユニットから放射される超音波の波面は、均一な半径を有する球面であり、1つまたは複数の超音波放射ユニットは、超音波を反射する機能を有する。1つの超音波ユニットは、球面共振空洞を形成するように構成され、または、複数の超音波放射ユニットは、共同で球面共振空洞を形成するように構成される。球面共振空洞の内部空洞は、球面シェル形状、または球中心を含む横断球面シェル形状を有する。1つまたは複数の超音波放射ユニットから放射される超音波は、球面共振空洞の球中心が位置する領域において焦点される。
【0041】
以下の実施例は、本発明の限定されない実施例である。
第1の実施例:
この実施例において、超音波変換器は、超音波を反射する機能を有する1つの超音波放射ユニットを含み、超音波放射ユニットは、自動焦点超音波変換器ユニットである。超音波放射ユニットから放射される超音波の波面は、均一な半径を有する球面であり、放射される超音波は球面波である。超音波放射ユニットは、球面共振空洞を形成するように構成され、その内部空洞は、完全な球面シェル形状を有し、これによって完全に閉じられた音響経路を有するシェル形球面共振空洞を形成する。シェル形球面共振空洞の焦点領域は、球面共振空洞の球中心が位置する領域である。
【0042】
本発明の超音波変換器において、超音波放射ユニットから放射される超音波と、放射される超音波またはその対向する面に反射される超音波とによって、球中心において共鳴増幅焦点領域が形成される。
【0043】
超音波放射ユニットは、さまざまな形状の自己焦点超音波圧電材料から製造することができる。製造の際の便宜のために、本発明における超音波変換器は、図1に示されるシェル形球面空洞10の形態で直接的に製造することができる。当然ながら、製造された球面共振空洞の外に任意の形状のハウジングを加えることができる。換言すれば、球面共振空洞の内部空洞が完全な球面シェル形状を有することのみが必要とされる。
【0044】
この実施例におけるシェル形球面空洞10は、内部に対象物を配置するために開閉式となっており、開閉部分の具体的な位置は、シェル形球面空洞10の中に配置する必要のある対象物に基づいて設定することができる。
【0045】
この実施例における超音波変換器は、封止された環境において行なうことのできる医療的実験に主に適している。たとえば、立体器官、実験用の人体模型、または他の対象物がまず超音波変換器のシェル形球面空洞10の内部に置かれ、シェル形球面空洞10の全体が閉じられ、治療または実験が開始される。治療または実験の後、シェル形球面空洞10は、治療または実験の効果を確認するために開けられる。治療または実験の状況は、医療使用に対するガイドとして考慮される。
【0046】
シェル形球面空洞10の容積が非常に大きい場合、たとえば、人体の全体を収容することが可能なほど大きい場合、超音波変換器は、人体への治療に使用することもできる。
【0047】
第2の実施例
図2に示されるように、この実施例においては、超音波変換器によって形成される球面共振空洞の内部空洞は、完全な球面シェル形状を有し、第2の実施例と第1の実施例との違いは、球面シェル形状を有する球面共振空洞が、超音波放射ユニット1つのみによって形成されていないことである。球面シェル形状を有する球面共振空洞の内部空洞は、切頂球面空洞12(図3および図4に示される)と冠形球面空洞11とによって形成される。切頂球面空洞12の底面は、冠形状の球面空洞11の底面に接合され、切頂球面空洞12と冠形球面空洞11との間の接続は、取り外しが可能である。
【0048】
冠形球面空洞11の高さh1は、球の半径Rより小さく、切頂球面空洞12の高さh2は、球の半径Rより大きい。
【0049】
時間内に標的領域を都合よく配置し、治療処理を監視し、有効性評価を行なうために、この実施例においては、図3および図4に示されるように、画像監視装置を通す穴20が切頂球面空洞12に開けられる、または、冠形球面空洞11に穴20を開けることができる。
【0050】
この実施例において、切頂球面空洞12は、1つの超音波ユニット1によって形成することができ(図3に示す)、製造工程を簡易化するために、複数の超音波放射ユニットを結合して形成することができる(図4に示される)。同じ理由により、冠形球面空洞11は、1つの超音波放射ユニット1によって形成することができ、これは複数の超音波放射ユニットを結合することによって形成することもできる。1つまたは複数の超音波放射ユニットは、超音波を反射することができる自動焦点超音波変換器として構成される。1つまたは複数の超音波放射ユニットから放射される超音波の波面は、均一な半径を有する球面である。
【0051】
複数の超音波放射ユニットを有する切頂球面空洞12において、複数の超音波放射ユニットから放射される超音波の周波数の差は20%以内であり、複数の超音波放射ユニットから放射される超音波の周波数は同じであるのが好ましい。
【0052】
この実施例において、切頂球面空洞12は、人間の頭部を治療するのに適している。人間の頭部を治療する場合には、切頂球面空洞12のみが使用される。人間の頭部は、切頂球面空洞12にまず入るようにする。超音波放射ユニットから放射されて反射した超音波は、球中心において増幅共鳴焦点領域を形成することから、人間の病巣は球中心に配置される。その後、切頂球面空洞12を形成する超音波放射ユニットは、治療を行うために始動する。
【0053】
実際には、上記の切頂球面空洞12は、内部空洞が切頂球面共振空洞である超音波変換器をそれ自体が形成することができる。超音波変換器において、任意の形のハウジングをも要件に応じて加えることができる(またはハウジングは加えられない)。
【0054】
第3の実施例
図5、図6、および図7に示されるように、この実施例においては、超音波変換器によって形成される球面共振空洞の内部空洞は、球中心を含む横断球面シェル形状を有し、内部空洞は、規則錐台形球面空洞13として構成される。
【0055】
この実施例において、錐台形球面空洞13の上側底面S1と下側底面S2とは、互いに平行であり、上側底面S1と球中心Oとの間の距離は、下側底面S2と球中心Oとの間の距離に等しい。
【0056】
この実施例において、錐台形球面空洞13は、1つの超音波放射ユニット1(図5に示される)または、1つの層に配置された複数の超音波放射ユニット1(図6に示される)、または複数の層に配置された複数の超音波放射ユニット1(図7に示される)から形成することができる。1つまたは複数の超音波放射ユニットは、超音波を反射することができる自己焦点超音波変換器ユニットとして構成することができる。図5に示されるZ軸の方向は、錐台形球面空洞13の音響軸の方向であり、Z軸は、錐台形球面空洞13の中心軸と一致する。
【0057】
複数の超音波放射ユニットを結合して錐台形球面空洞13が形成される場合、複数の超音波放射ユニットによって放射される超音波は同じ周波数を有する。超音波放射ユニットにから放射される超音波の波面は、均一な半径を有する球面である。
【0058】
この実施例における超音波変換器は、人体の胴部または四肢を治療するのに適している。人体の胴部または四肢を治療する場合、人体の胴部または四肢は、まず錐台形球面空洞13を通され、病巣は球中心に配置され、その後に超音波放射ユニットが治療のために始動される。
【0059】
第4の実施例
図8に示されるように、この実施例においては、超音波変換器によって形成された球面共振空洞の内部空洞は、球中心を含む横断球面シェル形状を有し、内部空洞は、不規則錐台形球面空洞14として構成される。
【0060】
この実施例において、錐台形球面空洞14の上側底面S1と下側底面S2とは互いに平行ではない。上側底面S1と球中心Oとの間の距離は、下側底面S2と球中心Oとの間の距離に等しい。
【0061】
この実施例において、錐台形球面空洞14は、1つの超音波放射ユニット1、または単一の層に配置された複数の超音波放射ユニット1、または複数の層に配置された複数の超音波放射ユニット1によって形成することができる。1つまたは複数の超音波放射ユニットは、超音波を反射することができる自己焦点超音波変換器ユニットとして構成することができる。図8に示されるZ軸は、錐台形球面空洞14の音響軸の方向であり、Z軸は、錐台形球面空洞14の中心軸と一致する。
【0062】
複数の超音波放射ユニットを結合することによって錐台形球面空洞14が形成される場合、複数の超音波放射ユニットによって放射される超音波は、同じ周波数を有する。超音波放射ユニットによって放射される超音波の波面は、均一の半径を有する球面である。
【0063】
この実施例における超音波変換器は、子宮筋腫および他の病気の治療に適している。子宮筋腫および他の病気を治療する場合、特別な姿勢で行なわれる治療に適合させるために、この実施例における不規則錐台形球面共振空洞を有する超音波変換器を使用することができる。
【0064】
第5の実施例
この実施例と第3の実施例との間の違いは、この実施例における超音波変換器の超音波放射ユニットが、平面超音波を放射することが可能な圧電材料と焦束レンズとを組み合わせることによって形成される点にある。換言すると、超音波放射ユニットは、レンズ焦点超音波変換器ユニットとして構成される。図9、図10、および図11に示されるように、この実施例においては、球面共振空洞は、4つの平面圧電ウェハ15および4つの焦束レンズ16によって形成される。換言すると、各平面圧電ウェハ15に対して、1つの焦束レンズ16が取り付けられる。4つのレンズ焦点超音波変換器ユニットから放射される超音波もまた球面波であり、放射される超音波の波面は、均一な半径を有する球面である。
【0065】
上記の4つの焦束レンズ16の各々の内面は、球面の一部であり、全ての焦束レンズは、球中心に対して等しい距離で離れており、錐台形球面空洞および球中心は、それらを結合することによって形成することができる(当然のことながら、シェル形球面空洞または切頂球面空洞もまた、それらを結合することによって形成することができる)。換言すると、超音波変換器によって形成される球面共振空洞の内部空洞は、球中心を含む横断球面シェル形状を有し、横断球面シェル形状を有する球面共振空洞の内部空洞は、錐台形球面空洞として構成される。
【0066】
この実施例における他の構造および適用は、第3の実施例と同じであり、ここでは説明しない。
【0067】
上記の実施例は本発明の原理を説明するための例示的な実施形態を示しているが、本発明は上記に限定されないことを理解すべきである。当業者は、本発明の精神および実体から逸脱することなく、様々な変形や改良を行なうことができ、これらの変形や改良は、本発明の保護範囲に含まれるとみなす。
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、超音波治療技術の分野に属し、より特定的には超音波変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
病気の治療に超音波が使用される場合、超音波エネルギが伝達経路において大きく損失することにより、病巣に集束する超音波の強度が過度に低くなり、必要とされる臨床治療効果を実現できないことがある。超音波治療装置に関して現在解決することが求められれている厳しい技術的難点は、如何にして伝達経路上での超音波の大きな減衰を出来る限り多く減らすか、および如何にして治療部位での超音波強度を高めるかである。
【0003】
先行技術において、上記の技術的課題を解決するための方法は、通常は超音波変換器の設計によって得られる。既存の超音波変換器に関しては、超音波エネルギの焦点領域の大きさおよび強度は、超音波変換器の放射領域と作動周波数とに関連している。放射領域が大きければ大きいほど、領域に集束する超音波エネルギが大きくなり、超音波変換器の作動周波数が高ければ高いほど、放射される超音波の波長が短くなる。これにより、焦点領域が小さくなり、超音波強度が高まる。
【0004】
超音波変換器の放射領域を大きくするために、米国特許出願公開第2006/0058678A1号には、超音波源を環状支持体に固定して超音波の放射領域を大きくする超音波変換器が開示されている。超音波源の相互作用を回避するために、以下の技術的解決手法が設計に採用される。各超音波源に対向するリング面がノッチとして構成され、これにより、単一の超音波源を有する変換器と比して、超音波変換器の焦点利得が向上する。しかし、超音波変換器の超音波源に対向するリング面にノッチが設けられるため、リング面上の超音波源の有効な放射領域が減少し、ノッチが超音波エネルギの分散を引き起こし得て、このような一体型環状体として機能する超音波治療装置の焦点領域におけるエネルギが減少する。これは、超音波変換器の焦点性能を向上させるには不利である。一方で、この技術的解決法は、単に超音波変換器の放射領域を拡大することによって焦点においてエネルギを重合させるものである。周波数が比較的低い場合、波長は比較的長いため、超音波の焦点性能が乏しくなり、焦点領域は比較的大きくなる。これにより、焦点領域の超音波強度が弱くなり、超音波治療の際に標的領域の凝固壊死を素早く効果的に形成することができなくなる。人体などの深部組織に対する超音波治療において、超音波は、焦点位置に到達するまでに、皮膚、骨組織、空気含有組織、神経組織などを通過する必要がある。比較的高い周波数が作動のために採用される場合、超音波の組織を貫通する性能が乏しくなる。上記の組織は伝達された超音波を吸収するよう作用し、焦点領域においてエネルギの減少および分散を引き起こす。組織が超音波を吸収すると、組織の温度が上昇する。超音波変換器の出力が非常に大きい場合、組織の温度が上昇すると、偶発的な損傷が引き起こされ得る。人体組織は、超音波に対して非常に大きい非線形効果を有する。人体の組織に高い強度の超音波が伝達されると、超音波の大部分は、超音波の高周波に変換され、組織によって吸収される。このとき、超音波変換器の超音波出力が継続して増加した場合、より大きい非線形効果がもたらされる。これにより、増大した超音波エネルギは、所望の焦点領域に効果的に伝達されなくなり、音響飽和現象が起こる。これにより、超音波の集中化に影響が及ぼされる。
【0005】
単に超音波変換器の放射領域を拡大し、エネルギの重合を行なうだけでは、先行技術において上記の技術的課題を効果的に解決できないことがわかる。
【0006】
実際は、超音波源の対向する面における放射と反射は、焦点利得を向上させるために使用することができる。たとえば、本件出願人によって以前に出願された中国特許(公開番号CN101140354A号)は、互いに対向する超音波変換器と超音波反射ユニットとを含む共振空洞を有する共振超音波変換器を開示している。超音波反射ユニットは、超音波変換器と同等の物であるため、共振空洞は、2つの対称に設けられた超音波変換器によって実質的に形成される。共振空洞における超音波の共振によって、音響軸の方向における超音波の焦点領域の長さは、単一の超音波変換器を単に使用した場合と比較して短くなる。(同じ周波数を有する2つの超音波が対向した場合、これらの超音波が交わる領域で干渉が発生する。この干渉が現われると、超音波は中心点で同相となり、他の点で異相となる。2つの超音波が重合することにより、中心からの分散が弱まり、超音波の焦点領域が短くなる。)これにより、エネルギはより圧縮され、焦点利得が大きく向上する。共振超音波変換器の作動モードによって、変換器の放射領域が増大することなく、変換器の焦点領域に大きな利得がもたらされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような構造の超音波変換器には、多くの欠点がある。第1に、2つの変換器によって形成される共振空洞は、封止された環状球面ではなく、効果的な音響共振を実現することができず、互いに対向する2つの変換器の間の開放部分からエネルギの一部が逃げ得る。これにより、変換器から放射される超音波エネルギは、十分に使用することができない。第2に、2つの変換器が互いに対向して設けられるため、それらの間の接続は固定されていない。この結果、2つの変換器は容易に共振状態から脱してしまう。このため、2つの変換器が超音波を放射する超音波経路が他の要因によって遮られないように保証するべきである。そうでなければ、互いに対向して設けられた2つの変換器の間に望ましい共振空洞を形成することができなず、焦点領域において十分な利得を得ることができない、または他の焦点領域が形成されて他の正常な組織に損傷を与え得る。第3に、焦点領域の長さは、共振空洞の音響軸の方向にのみ圧縮され、共振空洞の音響軸の方向から外れる他の方向における焦点領域の長さは圧縮されない。つまり、形成される焦点領域の長さは、超音波の音響軸の方向にのみ圧縮され、焦点領域の大きさは十分に小さくならない。第4に、超音波変換器の焦点領域の大きさは、依然として周波数の影響を受け、超音波は、低い周波数の作動条件下において組織貫通性が乏しくなる。これにより、伝達経路上においてエネルギの損失が大きくなるという技術的課題を解決することができない。第5に、超音波変換器の焦点領域の大きは十分でない。
【0008】
発明の概要
本発明により解決される技術的課題は、先行技術に存在する上記の欠陥に鑑み、大きな超音波放射領域と、超音波源の作動周波数による影響を受け難い焦点性能とを有する超音波変換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の技術的課題を解決するための技術的解決法は、超音波変換器が1つまたは複数の超音波放射ユニットを含むことにある。1つまたは複数の超音波放射ユニットから放射される超音波の波面は、均一な半径を有する球面であり、1つまたは複数の超音波放射ユニットは、超音波を反射する機能を有する。1つの超音波放射ユニットは、球面共振空洞を形成するように構成され、または、複数の超音波放射ユニットは、共同で球面共振空洞を形成するように構成される。球面共振空洞の内部空洞は、球面シェル形状、または球中心を含む横断球面シェル形状を有する。1つまたは複数の超音波放射ユニットから放射される超音波は、球面共振空洞の球中心が位置する領域に焦点される。
【0010】
本発明において、超音波放射ユニットによって形成される球面共振空洞の内部空洞は、球面シェル形状、または球中心を含む横断球面シェル形状を有し、球面共振空洞の全体の空洞面は、超音波の放射面および反射面として機能する。これにより、有効な超音波放射領域が増大し、反射の回数が増加する。その一方で、各超音波放射ユニットの波面における球面波が当初の放射経路とは反対方向に沿って反射した後、同じ周波数を有する反射した超音波および放射された超音波は、球面共振空洞に共振をもたらす。2つの超音波は、球中心に同時に到達する。これにより、複数の共振点が球面共振空洞内の全体にもたらされる。球面共振空洞内の媒体によって少しの超音波が吸収され(通常は、超音波が比較的低い周波数を有する場合に、少しの超音波が媒体に吸収される)、かつ超音波放射ユニットによって好適に超音波が反射される場合、超音波放射ユニットから放射される超音波は、球面共振空洞内で複数回にわたって反射される。これにより、超音波は、球面共振空洞内において複数回の共振をもたらすことができる。球面共振空洞の球中心は、共振点でもあるため、球面共振空洞の空洞面から放射される超音波と、この空洞面に対向する面で反射された超音波とによって、球中心において共鳴増幅焦点領域が形成される。これにより、球中心における超音波の強度が高まり、超音波の利用率が大きく向上する。1つまたは複数の超音波放射ユニットから放射された超音波エネルギと、反射した超音波のエネルギとは、複数回にわたって共振が高められた球中心に集中し、エネルギが数回にわたって増加する。これにより、球中心での共振が高まり、焦点領域のエネルギが増大する。しかし、球中心に位置していない共振が高められる点においては、共振の回数に限りがある。これにより、球面共振空洞内における球中心以外の位置での超音波エネルギは、球中心における超音波エネルギと比べて非常に低い。治療部位が球中心にある場合は、治療が必要でない他の部位への損傷が効果的に避けられる。
【0011】
人体の治療のために既存の従来の超音波変換器を使用して直接的に焦点する場合、焦点における音圧をPと仮定し、音強度をIと仮定する。人体の治療のために本発明の超音波変換器を使用する場合、超音波放射ユニットから放射される超音波の周波数は、従来の超音波変換器を使用して治療を行なう場合の周波数と同じと仮定し、本発明の超音波変換器の超音波の減衰は約10%と仮定する。最初の反射の後、超音波の音圧は、初期の音圧の0.9倍に減衰される。すなわち、音圧は0.9Pに減衰される。音圧は、2回にわたる減衰の後、初期の音圧の0.81倍に減衰される(反射が2回のみ行なわれたと仮定しているが、実際の反射回数は2回よりもはるかに多い)。すなわち、音圧は0.81Pに減衰される。このとき、球中心で重合された後の音圧は、P+0.9P+0.81P=2.71Pとなる。超音波の放射と反射とが両方とも2回ずつ行なわれるため(超音波放射ユニットは、超音波を放射および反射することができる)、球中心での全体的な音圧は、2×2.71P=5.42Pとなる。音の強度は、音圧と平方の関係にあるため、焦点領域内の球中心における音強度は、5.422I=29.3764Iとなる。2回のみの超音波の反射が計算された場合、本発明の超音波変換器のエネルギは、従来の超音波変換器のエネルギの約30倍に到達する。しかし、実際に実施される際には、反射回数の増加と減衰量のさらなる低下を伴うことから、焦点されたエネルギは、より大きくなる。本発明における超音波変換器の焦点領域での超音波エネルギは、既存の超音波変換器のエネルギよりもはるかに大きくなることが分かる。
【0012】
本発明における超音波変換器によって形成される球面共振空洞は、球面シェル形状、または球中心を含む横断球面シェル形状を有する。球面共振空洞の内部空洞が球面シェル形状を有する場合、球面共振空洞は完全に閉じられた音響経路(または封止された音響経路)を有し、超音波は、共振空洞の外に分散されることなく、共振空洞内においてのみ伝達される。球面共振空洞の内部空洞が、球中心を有する横断球面シェル形状を有する場合、「球中心を有する」の表現は、球面共振空洞によって形成される内部空洞の形状が、中心軸に対して垂直であって球中心を通る周方向において閉じられた音響経路を有することを意味する。換言すると、内部空洞を形成する曲線は、球中心を通る周方向の曲線を有し、これにより、中心軸に垂直な周方向における閉じられた音響経路(または封止された音響経路、すなわち周方向における音波の漏洩がない音場分布のモードであり、これにより、周方向において回折が現われず、好ましい焦点が実現する)が球面共振空洞によって形成されることが保証される。これにより、以前の超音波変換器(たとえば、中国特許番号CN101140354A)と比較して、本発明による超音波変換器は、すべてまたは大部分の超音波エネルギが共振空洞から出ることを防ぐことができる。
【0013】
焦点超音波変換器の超音波エネルギ焦点領域は、超音波変換器の振動放射面におけるエッジ回折によって引き起こされるため、従来の焦点超音波変換器は、超音波放射面のエッジ効果によって超音波エネルギ焦点領域の分散を引き起こし得て、超音波変換器の作動周波数の減少を伴い、エッジ効果の影響がより強まる。これにより、超音波焦点性能が弱まる。(すなわち、焦点領域が拡大する。)超音波治療を行なう場合、治療部位に凝固壊死を形成するために、一般の超音波変換器は、通常の0.8MHZから10MHZの範囲内の比較的高い作動周波数で作動する必要がある。しかし、本発明における超音波変換器によって形成される球面共振空洞においては、1つまたはそれ以上の数の超音波進行方向において音響経路が閉じられるため、焦点領域の周方向において回折はもたらされない。これにより、超音波周波数の減少によって引き起こされる超音波焦点の性能の減少は現われない。このため、本発明における焦点領域の大きさは、超音波変換器の放射周波数による影響を受け難い。(当然ながら、球面共振空洞の内部空洞が球中心を含む横断球面シェル形状を有する超音波変換器に関しては、球中心を通って音響軸に垂直な周囲方向のみにおいて超音波焦点領域が確実に圧縮される。すなわち、焦点領域は、音響進行面のすべての方向においてのみ圧縮される。これにより、中心軸の方向に沿って所定のエッジ回折がもたらされる。)このため、本発明における超音波放射ユニットの作動周波数の下限範囲値は、既存の超音波変換器の超音波放射ユニットの下限値と比較して適切に小さくすることができる。超音波放射ユニットの作動周波数の範囲は、20kHzから10MHzの範囲であり、好ましい作動周波数の範囲は、0.1MHzから0.8MHzである。
【0014】
本発明における超音波変換器の焦点性能は、従来の超音波変換器の焦点性能よりもはるかに良好である。このため、20kHzのような低い周波数で作動した場合であっても、本発明の超音波変換器は効果的に作動し、人体への効果的な治療を実現する。これに対して、従来の超音波変換器は、このような低い周波数において高い音場をもたらすことができない。作動周波数が低く、組織の温度上昇が小さいため、本発明の超音波変換器は、空気含有組織および骨組織を含む組織臓器、または人体の他の組織によって覆われる組織臓器に対して安全で効果的な治療を行なうことができる。これに加え、実際の治療において超音波の反射回数は制限され、本発明における超音波変換器の超音波放射ユニットは、超音波反射ユニット(超音波放射ユニットは超音波を反射することができる)としても機能し、強い焦点性能を有するため、超音波放射ユニットは、周波数が低い状態でも作動することができる。超音波放射ユニットの作動周波数を減らすことによって、超音波の反射回数の増加が支持され(周波数が低ければ低いほど、組織によって吸収される超音波は小さくなり、より多くの反射が発生する)、これにより、焦点領域(球中心)における超音波強度がさらに高まる。
【0015】
本発明の球面共振空洞を設計する際、球面波を放射する超音波放射ユニットによって形成される球面共振空洞が超音波共振重合の原理を満たすことを保証する必要がある。換言すると、球面共振空洞の直径が、放射される超音波の波長の半分の整数倍である必要がある。
【0016】
本発明において、球面共振空洞の内部空洞が、球中心を含む横断球面シェル形状を有する場合、球中心を含む横断球面シェル形状を有する内部空洞は、切頂横断球面シェル形状の内部空洞(空洞の高さは、球の半径よりも大きい)、または錐台形横断球面シェル形状の内部空洞とすることができる。
【0017】
球面共振空洞の内部空洞が、球中心を含む錐台形横断球面シェル形状の内部空洞である場合、以下の形態を使用することができる。
【0018】
1つの形態においては、上記の内部空洞の上側底面S1と下側底面S2とが互いに平行であり、上側底面と球中心との間の距離が、下側底面と球中心との間の距離に等しくない。
【0019】
他の形態においては、上記の内部空洞の上側底面S1と下側底面S2とは互いに平行であり、上側底面と球中心との間の距離は、下側底面と球中心との間の距離に等しく、球中心における焦点利得を可能な限り大きく保つことができる。
【0020】
当然ながら、実際の適用時において、錐台形横断球面シェル形状の内部空洞を有する球面共振空洞の上記2つの形態を治療に使用することができない場合(例えば、子宮筋腫のような病気を治療する場合)、球面共振空洞の内部空洞は、不規則錐台形横断球面シェル形状となり得る。このような場合、内部空洞の上側底面は、下側底面に対して平行ではなく、上側底面と球中心との間の距離は、下側底面と球中心との間の距離に等しい、または等しくない。
【0021】
球面共振空洞の内部空洞が、切頂横断球面シェル形状の内部空洞である場合、内部空洞は、冠形球面空洞と、球中心を含む錐台形球面空洞とを有する。冠形球面空洞の底面は、錐台形球面空洞の1つの底面に接合される。冠形球面空洞と錐台形球面空洞とは、取り外し可能に、または固定して接続される。
【0022】
球面共振空洞の内部空洞は、完全な球面シェル形状を有してもよい。
本発明において、1つの超音波放射ユニットは、1つの波源であり、1つまたはそれ以上の数の超音波放射ユニットによって形成される球面共振空洞は、任意の形状のハウジングを有しても良い。球面共振空洞の内部空洞は、球面シェル形状、または球中心を含む横断球面シェル形状を有することのみを保証する必要がある。製造された球面共振空洞の内部空洞が完全な球面シェル形状を有する場合、球面共振空洞は、球面シェル形状を有する1つの超音波放射ユニットのみによって形成することができる、または、球面シェル形状を有する空洞は、各々が超音波放射ユニットである複数の小さい部品に分割することができ、すべての超音波放射ユニットは、等しい半径を有する球面波を放射することができる。換言すると、球面シェル形状を有する球面共振空洞は、等しい半径を有する球面波を放射する複数の超音波放射ユニットによって形成することができる。超音波放射ユニットは、超音波放射ユニットの球面から放射される超音波が球面波であるという条件が満たされる限りにおいて、任意のタイプの圧電材料から製造することができる。たとえば、平面超音波を放射することができる圧電材料と、レンズ焦点超音波変換器ユニットを形成する焦束レンズとを組み合せて使用することができ、球面シェル形状を有する内部空洞を形成するために、複数のレンズ焦点超音波変換器ユニットを併せて使用することができる。焦束レンズは、球中心からの距離が等しく、すべての焦束レンズの内側面を結合することによって形成される球面共振空洞の内部空洞は併せて球面シェル形状、または球中心を含む横断球面シェル形状を有する。このようなタイプの超音波放射ユニットも球面波を放射することができ、本発明における超音波放射ユニットの条件が満たされる。
【0023】
球面共振空洞を設計する場合、超音波放射ユニットは超音波共振重合の原理を満たす必要がある。換言すると、形成される球面共振空洞の直径は、超音波の波長の半分の整数倍である。
【0024】
上記の球面共振空洞の内部空洞が完全な球面シェル形状を有する場合、球中心における超音波エネルギが最大限に向上するが、超音波変換器が非常に大きい容積(たとえば、人間の体の全体を収容することができるほどの大きさ)を有する場合においてのみこのような球面共振空洞を有する超音波変換器が実際の適用において病巣を効果的に治療することができる。治療の要件に基づき、たとえば、人間の頭部を治療する場合、球面シェル形状を有する球面共振空洞の内部空洞は、切頂球面空洞(空洞の高さが球の半径よりも大きい)と、冠形共面空洞(空洞の高さが球の半径よりも小さい)とを含むのが好ましい。切頂球面空洞の底面は、冠形球面空洞の底面に接合される。切頂球面空洞と冠形球面空洞とは、取り外し可能に、または固定して接続される。切頂球面空洞と冠形球面空洞とが取り外し可能に接続される場合、人間の頭部を治療する際には切頂球面空洞のみを使用してもよい。超音波放射ユニットから放射されて反射する超音波は、共鳴増幅焦点領域を球中心に形成する。
【0025】
超音波変換器によって形成される球面共振空洞の内部空洞が切頂球面共振空洞である場合、このような超音波変換器の焦点領域は、音響軸(球面共振空洞の中心軸)の方向に垂直な方向においてのみ圧縮され、音響軸の方向には圧縮されない。したがって、球中心における超音波変換器の焦点利得は、球面シェル形状を有する内部空洞を含む超音波変換器の焦点利得よりも弱い。
【0026】
あるいは、球面共振空洞の球面シェル形状の内部空洞は、球中心を有する錐台形球面空洞と、錐台形球面空洞の上側および下側の端部にそれぞれ設けられた2つの冠形球面空洞とを含む。
【0027】
球面共振空洞の球面シェル形状の内部空洞は、球中心を有する錐台形球面空洞と、錐台形球面空洞の上側および下側の端部にそれぞれ設けられた2つの冠形球面空洞とを含むことができる。2つの冠形球面空洞の底面は、錐台形球面空洞の上側底面と下側底面とにそれぞれ接合される。錐台形球面空洞と各冠形球面空洞とは、取り外し可能に接続される、または固定して接続される。錐台形球面空洞と各冠形球面空洞とが取り外し可能に接続される場合、錐台形球面空洞のみが人間の胴部および四肢の治療を行なう際に使用することができ、超音波放射ユニットから放射されて反射する超音波は、共鳴増幅焦点領域を球中心に形成する。
【0028】
好ましくは、上記の錐台形球面共振空洞の2つの底面は互いに平行であり、球中心に対して等しいまたは異なる距離を有し、具体的な距離は、実際の用途における要件に基づいて設計することができる。球中心における焦点利得を可能な限り大きく保つために、錐台形球面空洞の2つの底面は、球中心に対して等しい距離を有するのが好ましい。
【0029】
超音波変換器によって形成される球面共振空洞の内部空洞が錐台形球面共振空洞である場合、超音波焦点領域は円周内のみにおいて圧縮される。換言すると、音響進行面のすべての方向においてのみ圧縮されるため、所定のエッジ回折が超音波変換器の中心軸の方向に沿って存在する。したがって、超音波変換器の球中心における焦点利得は、切頂球面内部空洞を含む球面共振空洞を有する超音波変換器よりも弱くなる。
【0030】
画像監視装置を通す穴が上記形成された球面共振空洞に開けられるのが好ましい。
本発明における超音波変換器は、1つまたは複数の超音波放射ユニットを含む。超音波放射ユニットが1つである場合、超音波放射ユニットは、完全な球面シェル形状の球面共振空洞を形成する。
【0031】
本発明においては、複数の超音波放射ユニットを使用することができ、異なる超音波放射ユニットは、異なる周波数の超音波を放射することができる。超音波放射ユニットよって放射される超音波の周波数が互いに異なる場合、異なる周波数を有するすべての超音波放射ユニットがエネルギの重合を焦点に形成するが、このようなエネルギの重合は、可干渉性の重合ではない。可干渉性重合によってもたらされるような高いエネルギは、焦点(球中心)で得ることはできないが、焦点においては高いエネルギ重合を形成することができる。なぜなら、このような態様の重合による放射エネルギは、単一の波源を使用する場合よりもはるかに大きいためである。焦点領域において超音波エネルギを高めて安定した超音波共振を形成するために、超音波放射ユニットによって放射される球面波の周波数の差は、20%以内であるのが好ましい。さらには、超音波放射ユニットよって放射される球面波が同じ周波数を有して共振を形成し、これによって球中心において可干渉性重合を形成し、さらに超音波エネルギを高めるのが好ましい。
【0032】
本発明における超音波変換器が1つの超音波放射ユニット、または同じ周波数を有する複数の超音波放射ユニットを備える場合、球面共振空洞が形成される。この球面共振空洞内において放射されて反射するすべての超音波は球中心を通過し、球中心における超音波エネルギは、同相重合によって重合される。これにより、超音波エネルギが大きく向上する。球面共振空洞における球中心にない共振点に関しては、共振点における超音波エネルギの重合が同相重合ではないため、共振点における超音波エネルギが弱まる。人体の治療のために本発明における超音波変換器を使用する場合、焦点における病巣組織は大きな超音波エネルギを受け、焦点に位置していない人体の組織が安全であることが最大限に保証される。
【0033】
本発明における超音波変換器の回折機構は、光学における回折機構に類似する。本発明における超音波変換器が球中心を含む横断球面シェル形状の球面共振空洞を有する場合、開放型超音波変換器は、音響軸に対して垂直な周方向における回折現象伴うため、その方向における焦点領域の長さは圧縮されない。本発明の超音波変換器が、球面シェル形状を有する球面共振空洞を有する場合、音響経路の全体が完全に閉じられ、回折は発生しない。これにより、焦点におけるエネルギが最大となる。
【0034】
本発明における超音波変換器は、人体の深部組織への超音波治療および頭蓋内の超音波治療における課題を良好に解決する。人体の安全が保証される条件下において、十分な超音波エネルギが人体の深部組織に到達することができ、超音波経路上にある骨組織による超音波の吸収によって引き起こされる熱損傷が回避される。したがって、本発明における超音波変換器は、人体の深部組織および頭蓋内の病巣を治療することに特に適している。
【0035】
本発明における超音波変換器は、超音波の焦点のエネルギを大幅に向上させる、大きな超音波放射領域および高い焦点利得が提供されるだけでなく、超音波源の作動周波数の影響から解放される。
【0036】
既存の超音波変換器と比較し、本発明における超音波変換器は、以下の利点を有する。(1)本発明における超音波変換器から放射される超音波の焦点領域の大きさは、超音波放射ユニットの周波数による影響を受け難く、低い周波数の超音波を使用することによって、病巣に凝固壊死を良好に形成することができる。(2)超音波の焦点領域のすべての方向に沿った長さは、効果的に圧縮され、焦点領域の大きさを大幅に減らし、これにより、焦点領域における超音波強度を向上させる。(3)焦点領域における超音波強度は、超音波の放射力を増加させる必要なく、超音波の共振を利用することによって向上し、これにより、非焦点領域における超音波強度の向上が避けられ、治療しない部位の安全が保証される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施例におけるシェル形状の球面共振空洞の構造を概略的に示す図である。
【図2】本発明の第2の実施例におけるシェル形状の球面共振空洞の構造を概略的に示す図である。
【図3】本発明の第2の実施例における切頂球面共振空洞の構造(1つの超音波放射ユニットが使用される)を概略的に示す図である。
【図4】本発明の第2の実施例における切頂球面共振空洞の構造(複数の超音波放射ユニットが使用される)を概略的に示す図である。
【図5】本発明の第3の実施例における(規則)錐台形球面共振空洞の構造(1つの超音波放射ユニットが使用される)を概略的に示す図である。
【図6】本発明の第3の実施例における(規則)錐台形球面共振空洞(互いに平行な2つの底面を有する)の構造(単一の層に配置された複数の超音波放射ユニットが使用される)を概略的に示す図である。
【図7】本発明の第3の実施例における(規則)錐台形球面共振空洞(互いに平行な2つの底面を有する)の構造(複数の相に配置された複数の超音波放射ユニットが使用される)を概略的に示す図である。
【図8】本発明の第4の実施例における(不規則)錐台形球面共振空洞(平行でない2つの底面を有する)の構造を概略的に示す図である。
【図9】本発明の第5の実施例における超音波変換器の構造を概略的に示す図である。
【図10】図9における超音波変換器の上面図である。
【図11】図9における超音波変換器の半断面図である。
【0038】
図面においては、以下の参照番号および符号が使用される。
1−超音波放射ユニット、10−シェル形球面空洞、11−冠形球面空洞、12−切頂球面空洞、13,14−錐台形球面空洞、15−平面圧電ウエハ、16−焦束レンズ、20−穴、h1−冠形球面空洞の高さ、h2−切頂球面空洞の高さ、R−球の半径、S1−上側底面、S2−下側底面。
【発明を実施するための形態】
【0039】
好ましい実施例の詳細な記載
本発明は、図面および実施例に関連付けられ、以下でさらに詳細に記載される。
【0040】
本発明の超音波変換器は、1つまたは複数の超音波放射ユニットを含む。1つまたはそれ以上の数の超音波放射ユニットから放射される超音波の波面は、均一な半径を有する球面であり、1つまたは複数の超音波放射ユニットは、超音波を反射する機能を有する。1つの超音波ユニットは、球面共振空洞を形成するように構成され、または、複数の超音波放射ユニットは、共同で球面共振空洞を形成するように構成される。球面共振空洞の内部空洞は、球面シェル形状、または球中心を含む横断球面シェル形状を有する。1つまたは複数の超音波放射ユニットから放射される超音波は、球面共振空洞の球中心が位置する領域において焦点される。
【0041】
以下の実施例は、本発明の限定されない実施例である。
第1の実施例:
この実施例において、超音波変換器は、超音波を反射する機能を有する1つの超音波放射ユニットを含み、超音波放射ユニットは、自動焦点超音波変換器ユニットである。超音波放射ユニットから放射される超音波の波面は、均一な半径を有する球面であり、放射される超音波は球面波である。超音波放射ユニットは、球面共振空洞を形成するように構成され、その内部空洞は、完全な球面シェル形状を有し、これによって完全に閉じられた音響経路を有するシェル形球面共振空洞を形成する。シェル形球面共振空洞の焦点領域は、球面共振空洞の球中心が位置する領域である。
【0042】
本発明の超音波変換器において、超音波放射ユニットから放射される超音波と、放射される超音波またはその対向する面に反射される超音波とによって、球中心において共鳴増幅焦点領域が形成される。
【0043】
超音波放射ユニットは、さまざまな形状の自己焦点超音波圧電材料から製造することができる。製造の際の便宜のために、本発明における超音波変換器は、図1に示されるシェル形球面空洞10の形態で直接的に製造することができる。当然ながら、製造された球面共振空洞の外に任意の形状のハウジングを加えることができる。換言すれば、球面共振空洞の内部空洞が完全な球面シェル形状を有することのみが必要とされる。
【0044】
この実施例におけるシェル形球面空洞10は、内部に対象物を配置するために開閉式となっており、開閉部分の具体的な位置は、シェル形球面空洞10の中に配置する必要のある対象物に基づいて設定することができる。
【0045】
この実施例における超音波変換器は、封止された環境において行なうことのできる医療的実験に主に適している。たとえば、立体器官、実験用の人体模型、または他の対象物がまず超音波変換器のシェル形球面空洞10の内部に置かれ、シェル形球面空洞10の全体が閉じられ、治療または実験が開始される。治療または実験の後、シェル形球面空洞10は、治療または実験の効果を確認するために開けられる。治療または実験の状況は、医療使用に対するガイドとして考慮される。
【0046】
シェル形球面空洞10の容積が非常に大きい場合、たとえば、人体の全体を収容することが可能なほど大きい場合、超音波変換器は、人体への治療に使用することもできる。
【0047】
第2の実施例
図2に示されるように、この実施例においては、超音波変換器によって形成される球面共振空洞の内部空洞は、完全な球面シェル形状を有し、第2の実施例と第1の実施例との違いは、球面シェル形状を有する球面共振空洞が、超音波放射ユニット1つのみによって形成されていないことである。球面シェル形状を有する球面共振空洞の内部空洞は、切頂球面空洞12(図3および図4に示される)と冠形球面空洞11とによって形成される。切頂球面空洞12の底面は、冠形状の球面空洞11の底面に接合され、切頂球面空洞12と冠形球面空洞11との間の接続は、取り外しが可能である。
【0048】
冠形球面空洞11の高さh1は、球の半径Rより小さく、切頂球面空洞12の高さh2は、球の半径Rより大きい。
【0049】
時間内に標的領域を都合よく配置し、治療処理を監視し、有効性評価を行なうために、この実施例においては、図3および図4に示されるように、画像監視装置を通す穴20が切頂球面空洞12に開けられる、または、冠形球面空洞11に穴20を開けることができる。
【0050】
この実施例において、切頂球面空洞12は、1つの超音波ユニット1によって形成することができ(図3に示す)、製造工程を簡易化するために、複数の超音波放射ユニットを結合して形成することができる(図4に示される)。同じ理由により、冠形球面空洞11は、1つの超音波放射ユニット1によって形成することができ、これは複数の超音波放射ユニットを結合することによって形成することもできる。1つまたは複数の超音波放射ユニットは、超音波を反射することができる自動焦点超音波変換器として構成される。1つまたは複数の超音波放射ユニットから放射される超音波の波面は、均一な半径を有する球面である。
【0051】
複数の超音波放射ユニットを有する切頂球面空洞12において、複数の超音波放射ユニットから放射される超音波の周波数の差は20%以内であり、複数の超音波放射ユニットから放射される超音波の周波数は同じであるのが好ましい。
【0052】
この実施例において、切頂球面空洞12は、人間の頭部を治療するのに適している。人間の頭部を治療する場合には、切頂球面空洞12のみが使用される。人間の頭部は、切頂球面空洞12にまず入るようにする。超音波放射ユニットから放射されて反射した超音波は、球中心において増幅共鳴焦点領域を形成することから、人間の病巣は球中心に配置される。その後、切頂球面空洞12を形成する超音波放射ユニットは、治療を行うために始動する。
【0053】
実際には、上記の切頂球面空洞12は、内部空洞が切頂球面共振空洞である超音波変換器をそれ自体が形成することができる。超音波変換器において、任意の形のハウジングをも要件に応じて加えることができる(またはハウジングは加えられない)。
【0054】
第3の実施例
図5、図6、および図7に示されるように、この実施例においては、超音波変換器によって形成される球面共振空洞の内部空洞は、球中心を含む横断球面シェル形状を有し、内部空洞は、規則錐台形球面空洞13として構成される。
【0055】
この実施例において、錐台形球面空洞13の上側底面S1と下側底面S2とは、互いに平行であり、上側底面S1と球中心Oとの間の距離は、下側底面S2と球中心Oとの間の距離に等しい。
【0056】
この実施例において、錐台形球面空洞13は、1つの超音波放射ユニット1(図5に示される)または、1つの層に配置された複数の超音波放射ユニット1(図6に示される)、または複数の層に配置された複数の超音波放射ユニット1(図7に示される)から形成することができる。1つまたは複数の超音波放射ユニットは、超音波を反射することができる自己焦点超音波変換器ユニットとして構成することができる。図5に示されるZ軸の方向は、錐台形球面空洞13の音響軸の方向であり、Z軸は、錐台形球面空洞13の中心軸と一致する。
【0057】
複数の超音波放射ユニットを結合して錐台形球面空洞13が形成される場合、複数の超音波放射ユニットによって放射される超音波は同じ周波数を有する。超音波放射ユニットにから放射される超音波の波面は、均一な半径を有する球面である。
【0058】
この実施例における超音波変換器は、人体の胴部または四肢を治療するのに適している。人体の胴部または四肢を治療する場合、人体の胴部または四肢は、まず錐台形球面空洞13を通され、病巣は球中心に配置され、その後に超音波放射ユニットが治療のために始動される。
【0059】
第4の実施例
図8に示されるように、この実施例においては、超音波変換器によって形成された球面共振空洞の内部空洞は、球中心を含む横断球面シェル形状を有し、内部空洞は、不規則錐台形球面空洞14として構成される。
【0060】
この実施例において、錐台形球面空洞14の上側底面S1と下側底面S2とは互いに平行ではない。上側底面S1と球中心Oとの間の距離は、下側底面S2と球中心Oとの間の距離に等しい。
【0061】
この実施例において、錐台形球面空洞14は、1つの超音波放射ユニット1、または単一の層に配置された複数の超音波放射ユニット1、または複数の層に配置された複数の超音波放射ユニット1によって形成することができる。1つまたは複数の超音波放射ユニットは、超音波を反射することができる自己焦点超音波変換器ユニットとして構成することができる。図8に示されるZ軸は、錐台形球面空洞14の音響軸の方向であり、Z軸は、錐台形球面空洞14の中心軸と一致する。
【0062】
複数の超音波放射ユニットを結合することによって錐台形球面空洞14が形成される場合、複数の超音波放射ユニットによって放射される超音波は、同じ周波数を有する。超音波放射ユニットによって放射される超音波の波面は、均一の半径を有する球面である。
【0063】
この実施例における超音波変換器は、子宮筋腫および他の病気の治療に適している。子宮筋腫および他の病気を治療する場合、特別な姿勢で行なわれる治療に適合させるために、この実施例における不規則錐台形球面共振空洞を有する超音波変換器を使用することができる。
【0064】
第5の実施例
この実施例と第3の実施例との間の違いは、この実施例における超音波変換器の超音波放射ユニットが、平面超音波を放射することが可能な圧電材料と焦束レンズとを組み合わせることによって形成される点にある。換言すると、超音波放射ユニットは、レンズ焦点超音波変換器ユニットとして構成される。図9、図10、および図11に示されるように、この実施例においては、球面共振空洞は、4つの平面圧電ウェハ15および4つの焦束レンズ16によって形成される。換言すると、各平面圧電ウェハ15に対して、1つの焦束レンズ16が取り付けられる。4つのレンズ焦点超音波変換器ユニットから放射される超音波もまた球面波であり、放射される超音波の波面は、均一な半径を有する球面である。
【0065】
上記の4つの焦束レンズ16の各々の内面は、球面の一部であり、全ての焦束レンズは、球中心に対して等しい距離で離れており、錐台形球面空洞および球中心は、それらを結合することによって形成することができる(当然のことながら、シェル形球面空洞または切頂球面空洞もまた、それらを結合することによって形成することができる)。換言すると、超音波変換器によって形成される球面共振空洞の内部空洞は、球中心を含む横断球面シェル形状を有し、横断球面シェル形状を有する球面共振空洞の内部空洞は、錐台形球面空洞として構成される。
【0066】
この実施例における他の構造および適用は、第3の実施例と同じであり、ここでは説明しない。
【0067】
上記の実施例は本発明の原理を説明するための例示的な実施形態を示しているが、本発明は上記に限定されないことを理解すべきである。当業者は、本発明の精神および実体から逸脱することなく、様々な変形や改良を行なうことができ、これらの変形や改良は、本発明の保護範囲に含まれるとみなす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の超音波放射ユニットを備える超音波変換器であって、1つまたは複数の超音波放射ユニットから放射される超音波の波面は、均一な半径を有する球面であって、1つまたは複数の超音波放射ユニットは、超音波を反射する機能を有し、1つの超音波放射ユニットは、球面共振空洞を形成するように構成され、または、複数の超音波放射ユニットは、共同で球面共振空洞を形成するように構成され、前記球面共振空洞の内部空洞は、球面シェル形状、または球中心を含む横断球面シェル断面を有し、1つまたは複数の超音波放射ユニットから放射される超音波は、前記球面共振空洞の球中心が位置する領域に焦束される、超音波変換器。
【請求項2】
球面共振空洞の内部空洞は、球中心を含む横断球面シェル形状を有し、横断球面シェル形状を有する前記内部空洞は、切頂横断球面シェル形状の内部空洞、または錐台形横断球面シェル形状の内部空洞として構成される、請求項1に記載の超音波変換器。
【請求項3】
前記球面共振空洞の内部空洞は、球中心を含む錐台形横断球面シェル形状の内部空洞であって、前記錐台形横断球面シェル形状の内部空洞の上側底面(S1)と下側底面(S2)とは互いに平行であり、上側底面と球中心との間の距離は、下側底面と球中心との間の距離に等しい、または、前記球面共振空洞の内部空洞は、球中心を含む錐台形横断球面シェル形状の内部空洞であって、前記錐台形横断球面シェル形状の内部空洞の上側底面(S1)と下側底面(S2)とは互いに平行であり、上側底面と球中心との間の距離は、下側底面と球中心との間の距離に等しくない、請求項2に記載の超音波変換器。
【請求項4】
前記球面共振空洞の内部空洞は、球中心を含む錐台形横断球面シェル形状の内部空洞であって、前記錐台形横断球面シェル形状の内部空洞の上側底面(S1)と下側底面(S2)とは互いに平行ではなく、上側底面と球中心との間の距離は、下側底面と球中心との間の距離に等しい、または等しくない、請求項2に記載の超音波変換器。
【請求項5】
切頂横断球面シェル形状の内部空洞は、冠形球面空洞と球中心を有する錐台形球面空洞とを含み、前記冠形球面空洞の底面は、前記錐台形球面空洞の底面の1つと接合し、前記冠形球面空洞と前記錐台形球面空洞とは、取り外し可能に接続されている、または固定して接続されている、請求項2に記載の超音波変換器。
【請求項6】
球面共振空洞の内部空洞は、球面シェル形状を有し、球面シェル形状を有する前記内部空洞は、切頂球面空洞と冠形球面空洞とを含み、前記切頂球面空洞の底面は、前記冠形球面空洞の底面と接合し、前記切頂球面空洞と前記冠形球面空洞とは、取り外し可能に接続され、または固定して接続され、または、球面シェル形状を有する前記内部空洞は、球中心を有する錐台形球面空洞と、前記錐台形球面空洞の上端および下端にそれぞれ設けられる2つの冠形球面空洞とを含み、前記2つの冠形球面空洞の底面はそれぞれ錐台形球面空洞の上側底面と下側底面とに接合し、前記錐台形球面空洞と2つの冠形球面空洞とは、取外し可能に接続される、または固定して接続される、請求項1に記載の超音波変換器。
【請求項7】
複数の超音波放射ユニットが使用され、複数の超音波放射ユニットから放射される超音波は、同じ周波数を有する、請求項1から6のいずれか1項に記載の超音波変換器。
【請求項8】
複数の超音波放射ユニットの作動周波数の範囲は、20kHzから10MHzの間である、請求項7に記載の超音波変換器。
【請求項9】
複数の超音波放射ユニットの作動周波数の範囲は、0.1MHzから0.6MHzの間である、請求項8に記載の超音波変換器。
【請求項10】
画像監視装置が通る穴(20)は、前記球面共振空洞に開けられる、請求項7に記載の超音波変換器。
【請求項11】
複数の超音波放射ユニットは、自己焦点超音波変換器ユニットまたはレンズ焦点超音波変換器ユニットとして構成される、請求項7に記載の超音波変換器。
【請求項12】
1つまたは複数の超音波放射ユニットの作動周波数の範囲は、20kHzから10MHzの間である、請求項1から6のいずれか1項に記載の超音波変換器。
【請求項13】
1つまたは複数の超音波放射ユニットの作動周波数の範囲は、0.1MHzから0.6MHzの間である、請求項12に記載の超音波変換器。
【請求項14】
画像監視装置が通る穴(20)は、前記球面共振空洞に開けられる、請求項1から6のいずれか1項に記載の超音波変換器。
【請求項15】
1つまたは複数の超音波放射ユニットは、自己焦点超音波変換器ユニットまたはレンズ焦点超音波変換器ユニットとして構成される、請求項1から6のいずれか1項に記載の超音波変換器。
【請求項1】
1つまたは複数の超音波放射ユニットを備える超音波変換器であって、1つまたは複数の超音波放射ユニットから放射される超音波の波面は、均一な半径を有する球面であって、1つまたは複数の超音波放射ユニットは、超音波を反射する機能を有し、1つの超音波放射ユニットは、球面共振空洞を形成するように構成され、または、複数の超音波放射ユニットは、共同で球面共振空洞を形成するように構成され、前記球面共振空洞の内部空洞は、球面シェル形状、または球中心を含む横断球面シェル断面を有し、1つまたは複数の超音波放射ユニットから放射される超音波は、前記球面共振空洞の球中心が位置する領域に焦束される、超音波変換器。
【請求項2】
球面共振空洞の内部空洞は、球中心を含む横断球面シェル形状を有し、横断球面シェル形状を有する前記内部空洞は、切頂横断球面シェル形状の内部空洞、または錐台形横断球面シェル形状の内部空洞として構成される、請求項1に記載の超音波変換器。
【請求項3】
前記球面共振空洞の内部空洞は、球中心を含む錐台形横断球面シェル形状の内部空洞であって、前記錐台形横断球面シェル形状の内部空洞の上側底面(S1)と下側底面(S2)とは互いに平行であり、上側底面と球中心との間の距離は、下側底面と球中心との間の距離に等しい、または、前記球面共振空洞の内部空洞は、球中心を含む錐台形横断球面シェル形状の内部空洞であって、前記錐台形横断球面シェル形状の内部空洞の上側底面(S1)と下側底面(S2)とは互いに平行であり、上側底面と球中心との間の距離は、下側底面と球中心との間の距離に等しくない、請求項2に記載の超音波変換器。
【請求項4】
前記球面共振空洞の内部空洞は、球中心を含む錐台形横断球面シェル形状の内部空洞であって、前記錐台形横断球面シェル形状の内部空洞の上側底面(S1)と下側底面(S2)とは互いに平行ではなく、上側底面と球中心との間の距離は、下側底面と球中心との間の距離に等しい、または等しくない、請求項2に記載の超音波変換器。
【請求項5】
切頂横断球面シェル形状の内部空洞は、冠形球面空洞と球中心を有する錐台形球面空洞とを含み、前記冠形球面空洞の底面は、前記錐台形球面空洞の底面の1つと接合し、前記冠形球面空洞と前記錐台形球面空洞とは、取り外し可能に接続されている、または固定して接続されている、請求項2に記載の超音波変換器。
【請求項6】
球面共振空洞の内部空洞は、球面シェル形状を有し、球面シェル形状を有する前記内部空洞は、切頂球面空洞と冠形球面空洞とを含み、前記切頂球面空洞の底面は、前記冠形球面空洞の底面と接合し、前記切頂球面空洞と前記冠形球面空洞とは、取り外し可能に接続され、または固定して接続され、または、球面シェル形状を有する前記内部空洞は、球中心を有する錐台形球面空洞と、前記錐台形球面空洞の上端および下端にそれぞれ設けられる2つの冠形球面空洞とを含み、前記2つの冠形球面空洞の底面はそれぞれ錐台形球面空洞の上側底面と下側底面とに接合し、前記錐台形球面空洞と2つの冠形球面空洞とは、取外し可能に接続される、または固定して接続される、請求項1に記載の超音波変換器。
【請求項7】
複数の超音波放射ユニットが使用され、複数の超音波放射ユニットから放射される超音波は、同じ周波数を有する、請求項1から6のいずれか1項に記載の超音波変換器。
【請求項8】
複数の超音波放射ユニットの作動周波数の範囲は、20kHzから10MHzの間である、請求項7に記載の超音波変換器。
【請求項9】
複数の超音波放射ユニットの作動周波数の範囲は、0.1MHzから0.6MHzの間である、請求項8に記載の超音波変換器。
【請求項10】
画像監視装置が通る穴(20)は、前記球面共振空洞に開けられる、請求項7に記載の超音波変換器。
【請求項11】
複数の超音波放射ユニットは、自己焦点超音波変換器ユニットまたはレンズ焦点超音波変換器ユニットとして構成される、請求項7に記載の超音波変換器。
【請求項12】
1つまたは複数の超音波放射ユニットの作動周波数の範囲は、20kHzから10MHzの間である、請求項1から6のいずれか1項に記載の超音波変換器。
【請求項13】
1つまたは複数の超音波放射ユニットの作動周波数の範囲は、0.1MHzから0.6MHzの間である、請求項12に記載の超音波変換器。
【請求項14】
画像監視装置が通る穴(20)は、前記球面共振空洞に開けられる、請求項1から6のいずれか1項に記載の超音波変換器。
【請求項15】
1つまたは複数の超音波放射ユニットは、自己焦点超音波変換器ユニットまたはレンズ焦点超音波変換器ユニットとして構成される、請求項1から6のいずれか1項に記載の超音波変換器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2013−517853(P2013−517853A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550306(P2012−550306)
【出願日】平成23年4月2日(2011.4.2)
【国際出願番号】PCT/CN2011/000575
【国際公開番号】WO2011/120340
【国際公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(507232087)重▲慶▼海扶医▲療▼科技股▲ふん▼有限公司 (11)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月2日(2011.4.2)
【国際出願番号】PCT/CN2011/000575
【国際公開番号】WO2011/120340
【国際公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(507232087)重▲慶▼海扶医▲療▼科技股▲ふん▼有限公司 (11)
【Fターム(参考)】
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