説明

超音波放射を擬似体感させる超音波歯ブラシ

【課題】 超音波歯ブラシにおいて、人間の五感では通常感じることができない超音波の放射を機械振動や音(またはその両方)により擬似的に体感するものを提供する。
【解決手段】 超音波歯ブラシが、超音波振動体4から超音波を放射中に、把持体9内の振動用モータ16を動作させ振動分銅17を断続的に回転させることにより得られたごく弱い機械振動を、使用者は把持体9から有感し、前記ごく弱い機械振動を超音波の振動であると擬似的に体感できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波歯ブラシが超音波を放射している状態を、使用者が歯ブラシを持つ手に感じる程度のごく弱い振動や音を利用し、超音波の放射状態を知らせる超音波歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、細菌のかたまりである歯垢(プラーク)を落とし、歯の清潔を保つことが虫歯や歯周病を予防する上で有効であることが知られている。この歯垢は糊のように歯の表面に強く粘り付いた汚れであるため、比較的大まかな人手によるブラッシングでは毛先が届きにくい部分では磨き残しが生じてしまう。この毛先が届かない歯垢の除去を行うのに超音波振動を用いる超音波歯ブラシが実用化されている。
【0003】
例えば、超音波歯ブラシとしては、特許文献1のようなものが知られている。この超音波歯ブラシでは、歯ブラシ先端に埋設された圧電変換器により超音波を放射させ、その超音波エネルギーで歯の表面と歯根部の周囲の歯茎に形成されているポケットとにおける歯垢をゆるめ、ブラシで除去するものである。
【0004】
【特許文献1】特許番号3313715号公報
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現存する超音波歯ブラシにおいては、超音波放射中に機械的な強い振動が与えられているものがある。この強い振動は超音波によるプラーク除去と共にブラシ振動によるプラーク除去の相乗効果を目的としているが、使用者からは振動が強すぎ歯茎を傷めるのではないか、超音波のプラーク除去効果だけで十分ではないのか疑問を提起されるケースが多々ある。しかし、超音波のみを放射し振動が無い超音波歯ブラシにおいては、周知のとおり超音波は可聴範囲よりも周波数が高く耳に聞こえず、目にも見えないなど人間がその放射を感じ取れず、超音波が放射されていても使用者が本当に超音波が放射されているのが疑問を持つケースもある。また、超音波の放射中に発光ダイオードを点灯もしくは点滅させて、光で使用者へ超音波放射中であることを知らせようとしている超音波歯ブラシがあるが、一般的に歯ブラシは磨く方向が一定でないため、使用者が常時光を認識することは困難である。
【0006】
本発明は、このような従来の超音波歯ブラシが有していた問題を解決しようとするものであり、超音波が放射されていることを擬似的に体感することにより、使用者の超音波放射への疑問を解決することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
目的を達成するための本発明の超音波歯ブラシは、超音波放射体、超音波発振手段、ごく弱い振動を発生させる微振動発生手段もしくは発音手段を有する歯ブラシからなり、前記超音波発振手段によって前記ブラシ先端にある前記超音波放射体から超音波を放射させると共に、前記微振動発生手段は、前記ブラシ部を実質的に振動させず、前記歯ブラシを持つ手には感じる程度のごく弱い振動を発生させるか、前記発音手段により音を発生させ、超音波を擬似的に体感できるようにして、超音波が放射していることを使用者に知らせる。
【0008】
前記歯ブラシを持つ手には感じる程度のごく弱い振動を発生させる手段として、モータ軸に偏心した分銅を取り付け、そのモータ軸を低回転させることにより振動を発生させる方法や、振動を起こせる程度の重さを持ったおもりを電磁石などで引き付けたり離したりすることにより振動を発生する方法などを使用できる。
【0009】
前記発音手段として、ブザーやスピーカなどの発音装置を使用できる。
【0010】
また、超音波放射体、超音波発振手段、前記微振動発生手段もしくは前記発音手段、前記ブラシ部を縦方向に往復運動させる手段および前記ブラシ部を強振動させる手段を有する歯ブラシからなり、前記超音波発振手段によって前記ブラシ部先端に向かって超音波を放射させると共に、前記ブラシ部を縦方向に往復させるモード、前記ブラシ部を強振動させるモード、もしくは少なくとも前記縦方向に往復させるモードまたは前記強振動のモード、および前記ブラシ部を実質的に振動させず、前記歯ブラシを持つ手には感じる程度のごく弱い振動を発生させるか、前記発音手段により音を発生させるモードとを択一的に選択して使用できるようにする。
【0011】
前記ブラシ部を縦方向に往復運動させる手段として、開口部を有する把持体に、その開口から突出されかつ先端にブラシを持つ軸体を往復運動させる駆動機構を設ける方法がある。
【0012】
前記ブラシ部を強振動させる手段として、モータ軸に偏心した分銅を取り付け、そのモータ軸を回転させることにより振動を発生する方法がある。
【0013】
前記歯ブラシを持つ手には感じる程度のごく弱い振動を発生させる手段および発音手段は、前記に示したとおりである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の超音波歯ブラシを実施するための最良の形態の例を図1〜図2を参照して説明する。
【0015】
図1において、手で把持される把持体9は、プラスチック等の合成樹脂材料により射出成形法などで略円筒状に成形されており、その一端が閉成され、他端に開口9aが設けられている。
把持体9には、開口9aから突出するように歯ブラシ駆動軸体3が設けられ、歯ブラシ駆動軸体3の先端に超音波振動体4が埋設・固定された歯ブラシ固定部3aが形成されている。そして、把持体9内で歯ブラシ駆動軸体3の後端に、この歯ブラシ駆動軸体3を往復運動させる駆動機構が設けられる。
【0016】
歯ブラシ駆動軸体3は中空パイプ状のステンレススチールなどで作製される。歯ブラシ駆動軸体3の先端に設けた歯ブラシ固定部3aに、一定方向にブラシの毛2aが植毛された歯ブラシ2が着脱自在に装着される。また、この歯ブラシ固定部3aには、超音波振動体4が埋設されてプラスチックなどで一体に形成される。
【0017】
また、歯ブラシ駆動軸体3は、図1AおよびBに示すように、ガイド部品15に移動自在に挿通され、歯ブラシ駆動軸体3を軸方向に往復動自在としている。
把持体9内側の歯ブラシ駆動軸体3の後端に、図1に示すように、歯ブラシ駆動軸体3を往復運動させる駆動機構を構成するスライダ13を設ける。
【0018】
スライダ13に、大径のベベルギア12に立設した偏心円柱12aが係合される。
偏心円柱12aは、大径のベベルギア12の回転中心に対して、例えば0.5〜1.5mm偏心させた円柱であり、この大径のベベルギア12とプラスチック成型などで一体に形成される。この大径のベベルギア12に、歯形と歯すじが同一で歯数の少ない小径のベベルギア11が歯合される。
【0019】
小径のベベルギア11は、プラスチック成型などで形成され、その中心にモータ5の軸が圧入固定されたものであり、モータ5の回転駆動力を大径のベベルギア12を介して偏心円柱12aに伝達する働きを有する。
【0020】
偏心円柱12aが回転すると、図1Bに示すように、偏心円柱12aの回転中心が大径のベベルギア12の回転中心に対して偏心しているため、偏心円柱12aと係合するスライダ13を振り回すような力が働く。しかし、スライダ13に立設されている歯ブラシ駆動軸体3がガイド部品15によって軸方向のみに摺動されるため、結局スライダ13は歯ブラシ駆動軸体3の軸方向に駆動され、歯ブラシ2に縦の往復運動を行うものである。なお、この縦の往復運動の詳細は、本発明の本質とは関係ないため、説明を省略するので特願2003−338154の明細書を参照されたい。
【0021】
把持体9内に装着した強振動及び有感振動用モータ(以下単に「振動用モータ」)16の回転軸に固着した偏心分銅17を回すことにより、把持体9および歯ブラシ駆動軸体3、歯ブラシ2に強振動の伝達を行う。
【0022】
また、振動用モータ16を、図2に示すように回路基板7内の振動用モータ16の制御回路19から駆動回路18へパルス波形20の信号を入力することにより、パルス波形20がONのときのみ振動用モータ16が回転するので、その回転は断続的になり、前記歯ブラシを持つ手には感じる程度のごく弱い振動を行わせるようにした。なお、前記歯ブラシを持つ手には感じる程度のごく弱い振動を行う応用動作として、振動用モータ16の駆動電圧や電流を低くし、振動用モータ16の回転を遅くすることもできる。
【0023】
回路基板7は、電気配線7cでモータ5と接続され、電気配線7eで振動用モータ16と接続され、電気配線7dにより二次電池6から直流電圧を供給され、この回路基板7には、モータ制御回路と超音波発振回路とスイッチ7aが設けられる。
【0024】
把持体9の外面に設けた操作釦8は、押すことにより把持体9の内側に突出されている操作桿が回路基板7上に設けられたスイッチ7aの操作子を押下し、回路基板7の超音波発振回路、モータ5の制御回路、振動用モータ16の制御回路の作動または停止のモード切り替え動作を行う。
【0025】
超音波発振回路から生成された超音波信号は、回路基板7のスルーホール、ピン状の接続端子から、中空の歯ブラシ駆動軸体3の中を通っている電気配線7bを介して、超音波振動体4に超音波振動を起こさせる。
【0026】
なお、本発明を実施する形態には各種の変形が可能であり、以上説明した実施の形態によって本発明を限定的に解釈することはできず、本発明の本質を変更しない限り各種の態様で実施することができることは言うまでもない。
【0027】
以上説明した図1の超音波歯ブラシに、ブザーなどの発音器を装着し、図2のブロック回路図に代えて前記発音器を電源に接続して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】Aは本発明の一実施の形態による超音波歯ブラシの平面図であり、Bはその側面図である。
【図2】図に示す微振動歯ブラシを微振動させるためのブロック回路図である。
【符号の説明】
【0029】
2・・・・歯ブラシ、3・・・・歯ブラシ駆動軸体、3a・・・・歯ブラシ固定部、4・・・・超音波振動体、5・・・・モータ、6・・・・二次電池、7・・・・回路基板、8・・・・操作釦、9・・・・把持体、9a・・・・開口、11,12・・・・ベベルギア、12a・・・・偏心円柱、13・・・・スライダ、15・・・・ガイド部品、16・・・・振動用モータ、17・・・・偏心分銅、18・・・・駆動回路、19・・・・制御回路、20・・・・パルス波形

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波放射体、超音波発振手段、ごく弱い振動を発生させる微振動発生手段もしくは発音手段を有する歯ブラシからなり、前記超音波発振手段によって前記ブラシ先端にある前記超音波放射体から超音波を放射させると共に、前記微振動発生手段は、前記ブラシ部を実質的に振動させず、前記歯ブラシを持つ手には感じる程度のごく弱い振動を発生させるか、前記発音手段により音を発生させ、超音波を擬似的に体感できるようにして、超音波が放射していることを使用者に知らせるようにした超音波歯ブラシ。
【請求項2】
超音波放射体、超音波発振手段、前記微振動発生手段もしくは前記発音手段、前記ブラシ部を縦方向に往復運動させる手段および前記ブラシ部を強振動させる手段を有する歯ブラシからなり、前記超音波発振手段によって前記ブラシ部先端に向かって超音波を放射させると共に、前記ブラシ部を縦方向に往復させるモード、前記ブラシ部を強振動させるモード、もしくは少なくとも前記縦方向に往復させるモードまたは前記強振動のモード、および前記ブラシ部を実質的に振動させず、前記歯ブラシを持つ手には感じる程度のごく弱い振動を発生させるか、前記発音手段により音を発生させるモードとを択一的に選択して使用できるようにした請求項1記載の超音波歯ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−280877(P2006−280877A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−132989(P2005−132989)
【出願日】平成17年4月4日(2005.4.4)
【出願人】(000213817)朝日医理科株式会社 (13)
【Fターム(参考)】