説明

超音波診断システム

【課題】診断装置本体と無線通信される超音波プローブの管理を確実に行うことができる超音波診断システムを提供する。
【解決手段】診断装置本体2に設置されたハンドル手段7が、オペレータが把持して持ち運ぶための把持部8と、超音波プローブ1を保持するためのプローブホルダ9と、把持部8の把持動作に連動してプローブホルダ9による超音波プローブ1の保持をロックするロック機構10とを備えることにより、超音波プローブ1と診断装置本体2を一体として持ち運ぶ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超音波診断システムに係り、特に、超音波プローブと診断装置本体とが無線接続された超音波診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療分野において、超音波画像を利用した超音波診断システムが実用化されている。一般に、この種の超音波診断システムは、振動子アレイを内蔵した超音波プローブと、この超音波プローブに接続された診断装置本体とを有しており、超音波プローブから被検体に向けて超音波を送信し、被検体からの超音波エコーを超音波プローブで受信して、その受信信号を診断装置本体で電気的に処理することにより超音波画像が生成される。
【0003】
近年、様々な場所での診断に対応できるように持ち運び可能に構成された超音波診断システムが開発されている。このような超音波診断システムでは、例えば、特許文献1に記載のように、診断装置本体にプローブホルダとハンドルとが設けられ、診断装置本体を閉じると共に超音波プローブをプローブホルダに保持させた状態でハンドルを把持することで、これらが一体に持ち運ばれる。
一方、超音波プローブと診断装置本体との間を接続する通信ケーブルの煩わしさを解消して操作性を向上させるために、例えば、特許文献2に記載されるように、超音波プローブと診断装置本体とを無線通信により接続する超音波診断システムが開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−253602号公報
【特許文献2】特開2002−530175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に示されたような無線通信の機能を持ち運び可能に構成された超音波診断システムに適用できれば、診断環境の異なる様々な場所において操作性の向上した超音波プローブを使用することができる。しかしながら、このような超音波診断システムでは診断装置本体と超音波プローブとがケーブル等により接続されていないため、診断終了後に超音波プローブをプローブホルダに収納せずに移動してしまい、そのまま紛失してしまうおそれがある。
【0006】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、診断装置本体と無線通信される超音波プローブの管理を確実に行うことができる超音波診断システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る超音波診断システムは、超音波ビームを被検体に向けて送信すると共に被検体からの超音波エコーを受信して超音波エコーに基づく受信信号を無線伝送する超音波プローブと、前記超音波プローブと無線接続され、前記超音波プローブからの前記受信信号に基づいて超音波画像を生成する診断装置本体と、前記診断装置本体に設置され、前記超音波プローブと前記診断装置本体を一体として持ち運びするためのハンドル手段とを有し、前記ハンドル手段は、把持部と、前記超音波プローブを保持するためのプローブホルダと、前記把持部の把持動作に連動して前記プローブホルダによる前記超音波プローブの保持をロックするロック機構とを備えたものである。
【0008】
ここで、前記ロック機構は、ラチェット構造により前記超音波プローブが前記プローブホルダから脱落しないようにロックするのが好ましい。また、前記プローブホルダは、保持した前記超音波プローブが内蔵するバッテリに対して給電を行う給電部を有してもよい。
【0009】
また、前記ハンドル手段は、前記把持部が把持された際に前記プローブホルダにおける前記超音波プローブの有無を検出するプローブ検出部を有することができる。また、前記診断装置本体は、前記プローブ検出部による前記超音波プローブの検出結果をオペレータに通知する通知部を有することもできる。
【0010】
また、前記診断装置本体を接続して移動する移動式カートをさらに備えることができる。また、前記移動式カートは、前記診断装置本体との接続に伴って、前記ロック機構による前記超音波プローブのロックを解除するロック解除手段を有することもできる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、把持部の把持動作に連動してプローブホルダによる超音波プローブの保持をロックするので、診断装置本体と無線通信される超音波プローブの管理を確実に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(A)および(B)は、この発明の実施形態1に係る超音波診断システムを示す図である。
【図2】実施形態1におけるロック機構を示す平面図である。
【図3】実施形態1に係る超音波診断システムの構成を示すブロック図である。
【図4】(A)および(B)は、この発明の実施形態2に係る超音波診断システムを示す図である。
【図5】実施形態2における診断装置本体の構成を示すブロック図である。
【図6】実施形態2における給電制御部の動作を示すフローチャートである。
【図7】実施形態3におけるロック機構を示す平面図である。
【図8】実施形態3における診断装置本体の構成を示すブロック図である。
【図9】実施形態4に係る超音波診断システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施形態1
図1(A)および(B)に、実施形態1に係る超音波診断システムの構成を示す。超音波診断システムは、超音波プローブ1と、この超音波プローブ1と無線接続された診断装置本体2とを備えている。超音波プローブ1は、被検体に当接させる当接部3とオペレータにより把持される握り部4とを有し、オペレータが握り部4を把持して走査しつつ当接部3が超音波ビームを被検体に向けて送信すると共に被検体からの超音波エコーを受信する。
【0014】
診断装置本体2は、本体上部と本体下部が開閉軸5を軸に開閉する筐体6を有し、筐体6の側面に超音波プローブ1と筐体6とを一体に持ち運びするためのハンドル手段7が設置されている。筐体6には、超音波画像を表示するための表示部やオペレータが入力操作するための操作部などが備えられている。また、ハンドル手段7は、オペレータが把持して持ち運ぶための開口部8aが形成された把持部8と、超音波プローブ1を保持するためのプローブホルダ9と、把持部8の把持動作に連動してプローブホルダ9による超音波プローブ1の保持をロックするロック機構10とを有する。
【0015】
ロック機構10は、ハンドル手段7の内部に設けられ、図2に示されるように、把持部8と共にオペレータにより把持される把持レバー11と、把持レバー11の把持動作に連動してプローブホルダ9との間で超音波プローブ1を保持する保持部材12と、プローブホルダ9と保持部材12による超音波プローブ1の保持をロックするロック部材13とを有する。
把持レバー11は、図2において鉛直方向に延びる回動軸14を有し、回動軸14の周りに回動可能に設けられている。また、把持レバー11は、一方の端部に凸部15を有すると共に、凸部15に対して回動軸14を挟んだ反対側にはハンドル手段7の開口部8aに露出された把持面16を有する。オペレータが把持部8と共に把持レバー11の把持面16を把持することで把持レバー11が図2において時計回りに回動し、把持レバー11の凸部15で保持部材12をプローブホルダ9の方向に押圧する。
【0016】
保持部材12は、一方の端部において鉛直方向に延びる回動軸17を有し、回動軸17の周りに回動可能に設けられている。把持レバー11の凸部15で押圧された保持部材12は、図2において反時計回りに回動し、プローブホルダ9の内側面との間で超音波プローブ1の握り部4を挟持することで超音波プローブ1が保持される。超音波プローブ1と接触する保持部材12の表面には弾性を有する接触面17が形成されており、接触面17が超音波プローブ1の握り部4の形状に応じて変形することでプローブホルダ9との間で超音波プローブ1が確実に保持される。
また、保持部材12は、図2において時計回りに回動してプローブホルダ9との間での保持力が緩まないように、保持部材12とロック部材13とがラチェット構造により係合している。すなわち、保持部材12が図2において反時計回りにしか回動しないように、保持部材12の一方の端部の側面に設けられた歯車状に並ぶ複数の歯18と、ロック部材13の一方の端部に形成された凹部19とが係合される。ロック部材13は保持部材12の方向へ図示しないバネなどにより付勢されると共に、ロック部材13の凹部19にはロック部材13に対して垂直な面と緩やかに傾斜する面とが形成されている。このため、保持部材12が図2において反時計回りに回動する時には保持部材12の歯18が凹部19の緩やかに傾斜する面に沿って移動していくのに対し、保持部材12が図2において時計回りに回動する時には保持部材12の歯18が凹部19の垂直な面に引っ掛かることで移動できない。これにより、保持部材12は図2において反時計回りにのみ回動することになり、保持部材12とプローブホルダ9とによる保持力が緩まないように確実に超音波プローブ1を挟持することで、プローブホルダ9による超音波プローブ1の保持がロックされる。
【0017】
なお、ロック部材13の他方の端部には、超音波プローブ1のロックを解除するための凸状の解除手段20が設けられている。解除手段20がハンドル手段7の側面に形成された開口部21を介して図2において右方向に押圧されると、ロック部材13が解除手段20と凹部19との間に設けられた回動軸22の周りに時計回りに回動し、保持部材12の歯18が凹部19から外される。保持部材12の歯18が凹部19から外れることで保持部材12が図2において時計回りに回動可能となり、保持部材12とプローブホルダ9との間で超音波プローブ1を挟持する圧力が緩められ、超音波プローブ1のロックが解除される。
【0018】
ここで、超音波プローブと診断装置本体の内部構成を図3に示す。
超音波プローブ1は、1次元又は2次元の振動子アレイを構成する複数の超音波トランスデューサ31を有し、これらトランスデューサ31にそれぞれ対応して受信信号処理部32が接続され、さらに受信信号処理部32にパラレル/シリアル変換部33を介して無線通信部34が接続されている。また、複数のトランスデューサ31に送信駆動部35を介して送信制御部36が接続され、複数の受信信号処理部32に受信制御部37が接続され、無線通信部34に通信制御部38が接続されている。そして、パラレル/シリアル変換部33、送信制御部36、受信制御部37および通信制御部38にプローブ制御部39が接続されている。さらに、プローブ制御部39には、バッテリ制御部40を介してバッテリ41が接続され、バッテリ41に充電のための受電部42が接続されている。
【0019】
複数のトランスデューサ31は、それぞれ送信駆動部35から供給される駆動信号に従って超音波を送信すると共に被検体からの超音波エコーを受信して受信信号を出力する。各トランスデューサ31は、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミックや、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電素子等からなる圧電体の両端に電極を形成した振動子によって構成される。
そのような振動子の電極に、パルス状又は連続波の電圧を印加すると、圧電体が伸縮し、それぞれの振動子からパルス状又は連続波の超音波が発生して、それらの超音波の合成により超音波ビームが形成される。また、それぞれの振動子は、伝搬する超音波を受信することにより伸縮して電気信号を発生し、それらの電気信号は、超音波の受信信号として出力される。
【0020】
送信駆動部35は、例えば、複数のパルサを含んでおり、送信制御部36によって選択された送信遅延パターンに基づいて、複数のトランスデューサ31から送信される超音波が被検体内の組織のエリアをカバーする幅広の超音波ビームを形成するようにそれぞれの駆動信号の遅延量を調節して複数のトランスデューサ31に供給する。
【0021】
各チャンネルの受信信号処理部32は、受信制御部37の制御の下で、対応するトランスデューサ31から出力される受信信号に対して直交検波処理又は直交サンプリング処理を施すことにより複素ベースバンド信号を生成し、複素ベースバンド信号をサンプリングすることにより、組織のエリアの情報を含むサンプルデータを生成して、サンプルデータをパラレル/シリアル変換部33に供給する。受信信号処理部32は、複素ベースバンド信号をサンプリングして得られるデータに高能率符号化のためのデータ圧縮処理を施すことによりサンプルデータを生成してもよい。
パラレル/シリアル変換部33は、複数チャンネルの受信信号処理部32によって生成されたパラレルのサンプルデータを、シリアルのサンプルデータに変換する。
【0022】
無線通信部34は、シリアルのサンプルデータに基づいてキャリアを変調して伝送信号を生成し、伝送信号をアンテナに供給してアンテナから電波を送信することにより、シリアルのサンプルデータを送信する。変調方式としては、例えば、ASK(Amplitude Shift Keying)、PSK(Phase Shift Keying)、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)、16QAM(16 Quadrature Amplitude Modulation)等が用いられる。
無線通信部34は、診断装置本体2との間で無線通信を行うことにより、サンプルデータを診断装置本体2に送信すると共に、診断装置本体2から各種の制御信号を受信して、受信された制御信号を通信制御部38に出力する。通信制御部38は、プローブ制御部39によって設定された送信電波強度でサンプルデータの送信が行われるように無線通信部34を制御すると共に、無線通信部34が受信した各種の制御信号をプローブ制御部39に出力する。
【0023】
プローブ制御部39は、診断装置本体2から送信される各種の制御信号に基づいて、超音波プローブ1の各部の制御を行う。
バッテリ41は、超音波プローブ1の電源として機能し、超音波プローブ1内の電力を必要とする各部に電力を供給する。バッテリ制御部40は、バッテリ41から超音波プローブ1内各部への電力供給を制御すると共に、バッテリ41の電力残量を監視する。
なお、超音波プローブ1は、リニアスキャン方式、コンベックススキャン方式、セクタスキャン方式等の体外式プローブでもよいし、ラジアルスキャン方式等の超音波内視鏡用プローブでもよい。
【0024】
一方、診断装置本体2は、無線通信部43を有し、この無線通信部43にシリアル/パラレル変換部44を介してデータ格納部45が接続され、データ格納部45に画像生成部46が接続されている。さらに、画像生成部46に表示制御部47を介して表示部48が接続されている。また、無線通信部43に通信制御部49が接続され、シリアル/パラレル変換部44、画像生成部46、表示制御部47および通信制御部49に本体制御部50が接続されている。本体制御部50には、オペレータが入力操作を行うための操作部51と、動作プログラムを格納する格納部52がそれぞれ接続されている。
さらに、本体制御部50には、給電制御部53を介して電源部54が接続されている。また、診断装置本体2には、不使用時の超音波プローブ1を保持するためのプローブホルダ9が形成されており、このプローブホルダ9に給電部55が配設されている。
【0025】
無線通信部43は、超音波プローブ1との間で無線通信を行うことにより、各種の制御信号を超音波プローブ1に送信する。また、無線通信部43は、アンテナによって受信される信号を復調することにより、シリアルのサンプルデータを出力する。
通信制御部49は、本体制御部50によって設定された送信電波強度で各種の制御信号の送信が行われるように無線通信部43を制御する。
シリアル/パラレル変換部44は、無線通信部43から出力されるシリアルのサンプルデータを、パラレルのサンプルデータに変換する。データ格納部45は、メモリまたはハードディスク等によって構成され、シリアル/パラレル変換部44によって変換された少なくとも1フレーム分のサンプルデータを格納する。
【0026】
画像生成部46は、データ格納部45から読み出される1フレーム毎のサンプルデータに受信フォーカス処理を施して、超音波診断画像を表す画像信号を生成する。画像生成部46は、整相加算部56と画像処理部57とを含んでいる。
整相加算部56は、本体制御部50において設定された受信方向に応じて、予め記憶されている複数の受信遅延パターンの中から1つの受信遅延パターンを選択し、選択された受信遅延パターンに基づいて、サンプルデータによって表される複数の複素ベースバンド信号にそれぞれの遅延を与えて加算することにより、受信フォーカス処理を行う。この受信フォーカス処理により、超音波エコーの焦点が絞り込まれたベースバンド信号(音線信号)が生成される。
【0027】
画像処理部57は、整相加算部56によって生成される音線信号に基づいて、被検体内の組織に関する断層画像情報であるBモード画像信号を生成する。画像処理部57は、STC(sensitivity time control)部と、DSC(digital scan converter:デジタル・スキャン・コンバータ)とを含んでいる。STC部は、音線信号に対して、超音波の反射位置の深度に応じて、距離による減衰の補正を施す。DSCは、STC部によって補正された音線信号を通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号に変換(ラスター変換)し、階調処理等の必要な画像処理を施すことにより、Bモード画像信号を生成する。
表示制御部47は、画像生成部46によって生成される画像信号に基づいて、表示部48に超音波診断画像を表示させる。表示部48は、例えば、LCD等のディスプレイ装置を含んでおり、表示制御部47の制御の下で、超音波診断画像を表示する。
【0028】
本体制御部50は、診断装置本体2内の各部の制御を行うものである。
電源部54は、ACアダプタを経由して商用電源に接続されており、診断装置本体2内の電力を必要とする各部に電力を供給する。給電制御部53は、本体制御部50を介して入力された診断装置本体2による検査状況と、超音波プローブ1から無線通信により伝送されたバッテリ41の電力残量に基づき、必要に応じて電源部54をプローブホルダ9の給電部55に接続して、超音波プローブ1のバッテリ41の充電を行わせる。プローブホルダ9の給電部55は、プローブホルダ9に保持された超音波プローブ1の受電部42に対し、電磁誘導等により非接触で電力を供給するものである。
【0029】
このような診断装置本体2において、シリアル/パラレル変換部44、画像生成部46、表示制御部47、通信制御部49、本体制御部50および給電制御部53は、CPUと、CPUに各種の処理を行わせるための動作プログラムから構成されるが、それらをデジタル回路で構成してもよい。上記の動作プログラムは、格納部52に格納される。格納部52における記録媒体としては、内蔵のハードディスクの他に、フレキシブルディスク、MO、MT、RAM、CD−ROMまたはDVD−ROM等を用いることができる。
【0030】
診断時には、まず、超音波プローブ1の送信駆動部35から供給される駆動信号に従って複数のトランスデューサ31から超音波が送信され、被検体からの超音波エコーを受信した各トランスデューサ31から出力された受信信号がそれぞれ対応する受信信号処理部32に供給されてサンプルデータが生成され、パラレル/シリアル変換部33でシリアル化された後に無線通信部34から診断装置本体2へ無線伝送される。診断装置本体2の無線通信部43で受信されたサンプルデータは、シリアル/パラレル変換部44でパラレルのデータに変換され、データ格納部45に格納される。さらに、データ格納部45から1フレーム毎のサンプルデータが読み出され、画像生成部46で画像信号が生成され、この画像信号に基づいて表示制御部47により超音波診断画像が表示部48に表示される。
【0031】
このようにして超音波診断が行われるが、超音波プローブ1において、バッテリ41の電力残量がバッテリ制御部40で監視されており、診断装置本体2の給電制御部53は、本体制御部50および通信制御部49を介して無線通信によりこれらバッテリ41の電力残量を認識することができる。
【0032】
次に、実施形態1の動作について説明する。
まず、オペレータにより超音波プローブが走査されて被検体の超音波診断が行われる。超音波プローブの走査を一旦止めて超音波プローブがプローブホルダに戻された際には、図3に示すように、商用電源に接続された診断装置本体2の電源部54からプローブホルダ9の給電部55を介して超音波プローブ1の受電部42に電磁誘導等により非接触で電力が供給され、超音波プローブ1のバッテリ41が充電される。このようにして、超音波プローブ1のバッテリ41の充電を行いつつ超音波診断が続けられる。
【0033】
超音波診断が終了すると商用電源と電源部54との接続が遮断され、図1(A)および(B)に示すように、診断装置本体2の筐体6が閉じられると共に超音波プローブ1の握り部4がハンドル手段7のプローブホルダ9に挿入される。
続いて、オペレータによりハンドル手段7の把持部8が把持される。この際に、オペレータは、把持部8の位置に備えられたロック機構10の把持レバー11も同時に把持する。この把持動作により把持レバー11は図2において時計回りに回動すると共に把持レバー11の凸部15が保持部材12を図2において上方向に押圧する。把持レバー11の凸部15により押圧された保持部材12は、図2において反時計回りに回動して、保持部材12の接触面17とプローブホルダ9の内側面との間で超音波プローブ1の握り部4を挟持することで超音波プローブ1を保持する。また、保持部材12は、図2において反時計回りにしか回動できないように、ロック部材13と共にラチェット構造をなしている。これにより、保持部材12は超音波プローブ1をプローブホルダ9との間で一旦挟持するとその挟持する圧力を緩める方向に回動しないため、確実に超音波プローブ1が挟持され、プローブホルダ9による超音波プローブ1の保持がロックされる。
【0034】
このようにして、プローブホルダ9による超音波プローブ1の保持がロックされるため、例えばオペレータが把持部8を放した場合でも超音波プローブ1をプローブホルダ9から脱落させずにそのまま保持することができる。また、超音波プローブ1はプローブホルダ9と保持部材12との間で挟持することで保持されるため、超音波プローブ1の形状が異なる場合でもその形状に応じて両者の幅が適宜調整されるため、様々な形状の超音波プローブ1を保持することができる。
また、超音波プローブ1をプローブホルダ9に保持させていない状態でオペレータが把持部8を把持した際には、保持部材12の回動が止まらずに進んでいくため、オペレータが把持した把持レバー11が所定量以上に移動される。このように、超音波プローブ1を置き忘れたまま超音波診断システムを持ち運ぶような場合には、把持部8を把持した際の違和感によりオペレータに超音波プローブ1をプローブホルダ9に保持させていないことを感知させることもできる。
【0035】
一方、プローブホルダ9による超音波プローブ1の保持のロックを解除する際には、ハンドル手段7の開口部21に指などを挿入し、ロック部材13の解除手段20を押圧する。解除手段20の押圧によりロック部材13が図2において時計回りに回動され、ラチェット構造による保持部材12の歯18とロック部材13の凹部19との係合が外される。これにより、保持部材12は図2において時計回りに回動可能となり、プローブホルダ9による超音波プローブ1の保持のロックが解除される。
【0036】
この実施形態によれば、超音波診断システムを持ち運ぶ際には必ず超音波プローブ1のロック動作を伴うため、超音波プローブ1の紛失を防止すると共に超音波診断システムを収納する際にオペレータに超音波プローブ1に対する意識付けを行うことができる。
【0037】
なお、診断装置本体2は、電源部54の代わりにバッテリを用いてもよい。これにより、超音波診断システムを持ち運んでいる時でもプローブホルダ9に保持された超音波プローブ1のバッテリを充電することができる。
【0038】
実施形態2
図4(A)および(B)に、実施形態2に係る超音波診断システムの構成を示す。この超音波診断システムでは、図1に示した実施形態1のシステムを搭載して移動するためのカート61をさらに有する。カート61は、超音波診断システムを搭載するための搭載台62と、超音波診断システムの搭載位置において診断装置本体2と接続するための接続部63とを有する。接続部63は商用電源と接続されており、接続部63と診断装置本体2が接続されると診断装置本体2の電源部に電力が供給される。また、接続部63はハンドル手段7の開口部21より径の小さい解除凸部64を有し、診断装置本体2が接続部63に接続されるのに伴い解除凸部64が開口部21の内側に挿入され、解除手段20が押圧される。これにより、プローブホルダ9により保持された超音波プローブ1のロックが、カート61に超音波診断システムを搭載すると同時に解除される。
また、実施形態2で用いられる診断装置本体2の内部構成を図5に示す。図3に示した実施形態1のプローブホルダ9にプローブ検出部65がさらに配設されると共にプローブ検出部65が本体制御部50に接続されている。プローブ検出部65は、プローブホルダ9における超音波プローブ1の有無を検出するためのもので、例えば光センサなどが利用できる。
【0039】
ここで、図6のフローチャートを参照して、実施形態2で用いられる診断装置本体2の給電制御部53の動作について説明する。
まず、ステップS1で、プローブ検出部65による検出結果に基づいてプローブホルダ9における超音波プローブ1の有無が判定される。超音波プローブ1がプローブホルダ9に存在すると判定されると、ステップS2に進み、診断装置本体2とカート61の接続部63との接続状態から診断装置本体2がカート61にセットされているか否かが判定される。
【0040】
ステップS2で、カート61にセットされていると判定されると、商用電源を用いて超音波プローブ1のバッテリ41に充電可能であると判断され、ステップS3で、プローブホルダ9の給電部55からプローブホルダ9に保持されている超音波プローブ1の受電部42に電磁誘導等により非接触で電力が供給され、バッテリ41の充電動作が実行される。この充電動作は、次のステップS4で、バッテリ41の充電が完了したと判断されるまで続行される。これにより、プローブホルダ9に保持された超音波プローブ1の充電が完了する。
【0041】
なお、ステップS1で超音波プローブ1がプローブホルダ9に存在しないと判定された場合およびステップS2で診断装置本体2がカート61にセットされていないと判定された場合には、超音波プローブ1の充電を実行すべきでないと判断され、充電は実行されずに一連の処理を終了する。
【0042】
この実施形態2によれば、超音波診断システムをカート61に搭載して超音波診断を行うため、超音波診断システムの操作性を向上させることができる。また、超音波診断システムをカート61に搭載すると同時にプローブホルダ9による超音波プローブ1のロックが解除されるため、ロック解除時の煩わしさを解消させることができる。
また、診断装置本体2は電源部54の代わりにバッテリを用いてもよい。この場合には、診断装置本体2の給電制御部52が商用電源など外部から給電可能であることを確認して超音波プローブ1の充電を行うため、診断装置本体2のバッテリの電力を消費せずに効果的に超音波プローブ1の充電を行うことができる。
【0043】
なお、カート61には、超音波診断に必要なプリンターなどの外部機器を搭載してもよく、接続部63を介して外部機器と超音波診断システムとを接続させることができる。
【0044】
実施形態3
図7に、実施形態3に係る超音波診断システムの構成を示す。この超音波診断システムは、超音波プローブ1の管理をさらに確実に行うためのもので、図1に示した実施形態1のシステムにおけるプローブホルダ9にプローブ検出部71をさらに配設すると共にロック機構10にロック検出部72をさらに配設したものである。プローブ検出部71は、プローブホルダ9における超音波プローブ1の有無を検出するためのもので、例えば光センサなどが利用できる。また、ロック検出部72は、ハンドル手段7の把持部8がオペレータにより把持されたか否かを検出するためのもので、例えば把持動作に連動した保持部材12の回動を検出するための回転検出器などが利用できる。
この実施形態3で用いられる診断装置本体2の内部構成を、図8に示す。プローブホルダ9のプローブ検出部71とロック機構10のロック検出部72とがそれぞれ本体制御部50に接続されている。また、本体制御部50には通知部73が接続されている。通知部73は、プローブホルダ9における超音波プローブ1の保持の状態を外部に通知するためのものであり、例えば光や音などで通知するものが利用できる。
【0045】
実施形態1と同様にして、超音波診断が終了すると、診断装置本体2の筐体6が閉じられると共に超音波プローブ1がハンドル手段7のプローブホルダ9に挿入される。続いて、オペレータによりハンドル手段2の把持部8が把持されると、把持レバー11が回動されて保持部材12が押圧される。この押圧により、保持部材12は、図7において反時計回りに回動してプローブホルダ9の内側面との間で超音波プローブ1を挟持する。また、保持部材12はその挟持を緩める方向に回動しないようにロック部材13とラチェット構造をなすことで、プローブホルダ9による超音波プローブ1の保持がロックされる。
この時、オペレータの把持動作に連動して保持部材12が回動したことをロック検出部72が検出すると、本体制御部50はプローブ検出部71の検出結果に基づいてプローブホルダ9における超音波プローブ1の有無を判断する。その結果、本体制御部50はプローブホルダ9に超音波プローブ1が保持されていないと判定すると、その結果をオペレータが感知できるように通知部73により外部に通知する。一方、本体制御部50は超音波プローブ1がプローブホルダ9に保持されていると判定した時には、通知部73からの通知は行わない。
【0046】
この実施形態3によれば、オペレータが把持部8を把持した際にプローブホルダ9における超音波プローブ1の有無を確認して通知するため、超音波プローブ1の管理をさらに確実に行うことができる。
【0047】
実施形態4
診断装置本体2の筐体6に設置されるハンドル手段7の位置は、超音波診断システムの操作環境または持ち運び易さ等の使用環境に応じて変えることができる。
例えば、図9に示すように、ハンドル手段7は、筐体6において開閉軸5が設けられた背面側に設置してもよい。このような超音波診断システムを実施形態2で用いられたカート61に搭載する場合、カート61の接続部63と診断装置本体2との接続を容易に行うことができる。また、超音波診断が終了して診断装置本体2を接続部63から外す際にも、ハンドル手段7の把持部8を把持しながら診断装置本体2をカート61から引き抜くことができ、容易に診断装置本体2を取り外すことができ、診断装置本体2の取り外しに伴いロック機構10を作動させて超音波プローブ1をプローブホルダ9に保持することが可能となる。
【符号の説明】
【0048】
1 超音波プローブ、2 診断装置本体、3 当接部、4 握り部、5 開閉軸、6 筐体、7 ハンドル手段、8 把持部、8a 開口部、9 プローブホルダ、10 ロック機構、11 把持レバー、12 保持部材、13 ロック部材、14,17,22 回動軸、15 凸部、16 把持面、17 接触面、18 歯、19 凹部、20 解除手段、21 開口部、31 トランスデューサ、32 受信信号処理部、33 パラレル/シリアル変換部、34 無線通信部、35 送信駆動部、36 送信制御部、37 受信制御部、38 通信制御部、39 プローブ制御部、40 バッテリ制御部、41 バッテリ、42 受電部、43 無線通信部、44 シリアル/パラレル変換部、45 データ格納部、46 画像生成部、47 表示制御部、48 表示部、49 通信制御部、50 本体制御部、51 操作部、52 格納部、53 給電制御部、54 電源部、55 給電部、56 整相加算部、57 画像処理部、61 カート、62 搭載台、63 接続部、64 解除凸部、65,71 プローブ検出部、72 ロック検出部、73 通知部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波ビームを被検体に向けて送信すると共に被検体からの超音波エコーを受信して超音波エコーに基づく受信信号を無線伝送する超音波プローブと、
前記超音波プローブと無線接続され、前記超音波プローブからの前記受信信号に基づいて超音波画像を生成する診断装置本体と、
前記診断装置本体に設置され、前記超音波プローブと前記診断装置本体を一体として持ち運びするためのハンドル手段と
を有し、
前記ハンドル手段は、
把持部と、
前記超音波プローブを保持するためのプローブホルダと、
前記把持部の把持動作に連動して前記プローブホルダによる前記超音波プローブの保持をロックするロック機構と
を備えたことを特徴とする超音波診断システム。
【請求項2】
前記ロック機構は、ラチェット構造により前記超音波プローブが前記プローブホルダから脱落しないようにロックする請求項1に記載の超音波診断システム。
【請求項3】
前記プローブホルダは、保持した前記超音波プローブが内蔵するバッテリに対して給電を行う給電部を有する請求項1または2に記載の超音波診断システム。
【請求項4】
前記ハンドル手段は、前記把持部が把持された際に前記プローブホルダにおける前記超音波プローブの有無を検出するプローブ検出部を有する請求項1〜3のいずれかに記載の超音波診断システム。
【請求項5】
前記診断装置本体は、前記プローブ検出部による前記超音波プローブの検出結果をオペレータに通知する通知部を有する請求項4に記載の超音波診断システム。
【請求項6】
前記診断装置本体を接続して移動する移動式カートをさらに備えた請求項1〜5のいずれかに記載の超音波診断システム。
【請求項7】
前記移動式カートは、前記診断装置本体との接続に伴って、前記ロック機構による前記超音波プローブのロックを解除するロック解除手段を有する請求項6に記載の超音波診断システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−61126(P2012−61126A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207562(P2010−207562)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】