説明

超音波診断装置および保持装置

【課題】超音波診断の信頼性をより向上させる。
【解決手段】本発明の超音波診断装置は、貼着具により被検体の体表に貼着されるプローブ12を備える。このプローブ12および貼着具は、保持具16により、その貼着位置が保持される。保持具16は、貼着具およびプローブ12の周囲の体表に当接して当該体表を押圧する当接板18と、当該当接板18を体表に当接した状態で保持するベルト部材20と、から構成される。当接板18がプローブ12の周囲の体表に当接して押圧することにより、貼着位置周辺の皮膚の動きが制限されて、プローブ12および貼着具の位置が保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の体表に貼着される超音波探触子を備えた超音波診断装置、および、貼着された超音波探触子の位置を保持する保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被検体の内部にある診断対象部位に対して超音波を送信し、その際、得られる反射信号に基づいて、診断対象部位の状態を取得する超音波診断装置が広く知られている。この超音波診断装置では、超音波を送受波する超音波探触子を診断対象部位近傍の体表に当接して診断を行う。
【0003】
ところで、近年、超音波診断において、診断対象部位の一時的な状態だけでなく、その経時変化や、被検体に何らかの負荷を加えた前後での変化を取得したいという要望がある。かかる要望を満たすためには、超音波探触子の位置を固定した状態で保持する必要がある。しかし、人の手で超音波探触子を所定位置で保持することは困難であった。
【0004】
そこで、特許文献1には、被検体の脚等に巻かれるアームバンドと、当該アームバンドに固定された単振動子と、を備えた装着型プローブが開示されている。このアームバンドを脚等に装着することにより、単振動子が所定位置に保持される。また、特許文献2には、超音波探触子を保持する保持部と、保持部の外周に設けられた保持脚とを備えた超音波探触子装置が開示されている。保持脚は、被検体の体表形状に応じて自由に変形可能となっている。そして、この保持脚を粘着テープなどで被検体体表に貼着することにより、超音波探触子の位置を保持している。
【0005】
【特許文献1】特開2004−298205号公報
【特許文献2】特許第2664562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記技術は、いずれも、被検体の体表に対する超音波探触子の位置を保持するには有効であるが、被検体内部にある診断対象部位に対する位置の保持には必ずしも有効ではない。上記技術は、被検体の体表に固定されているため、体表、すなわち、皮膚等が診断対象部位に対して動いた場合、超音波探触子も動くことになり、超音波探触子と診断対象部位との相対位置関係がずれることになる。この体表の動きに伴う超音波探触子と診断対象部位との相対移動量は比較的小さいことが多い。しかし、診断対象部位の微小な変化を取得したい場合には、かかる小さな移動も問題となる。
【0007】
例えば、骨折した骨の癒合度合いを診断する場合は、荷重を加えた際の骨の変位量に基づいて行われることがある。この場合、診断対象部位は骨であるが、その変位量は微小であることが多い。かかる微小な変位を診断する場合には、体表の動きに伴う超音波探触子と診断対象部位との相対移動が大きな問題となり、結果として超音波診断の信頼性低下の原因となる。
【0008】
そこで、本発明は、超音波診断の信頼性をより向上でき得る超音波診断装置および保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の超音波診断装置は、被検体の内部の診断部位に対して超音波を送信するともに、そのエコー信号を受信する超音波探触子と、前記超音波探触子を、前記診断部位の近傍の体表に貼着する貼着手段と、前記貼着手段および超音波探触子の周囲の体表に当接して、当該体表を押圧する当接板と、前記当接板を体表に当接した状態で保持する保持部材と、を有することを特徴とする。
【0010】
好適な態様では、前記保持部材は、前記体表の形状に応じて変形可能な材料からなり、前記当接板を前記体表との間に挟みこんだ状態で前記被検体の外周に巻かれる帯部材である。この保持部材は、前記被検体の外周囲長に応じて、その内径が調節可能であることが望ましい。また、前記保持部材は、少なくとも一部に、前記被検体の周方向に伸縮可能な材料からなる伸縮部を有することが望ましい。
【0011】
他の好適な態様では、前記当接板は、所定の間隙を開けて前記超音波探触子および前記貼着具を囲む開口部を備えた板材である。この当接板は、前記体表と当接する当接面に、前記体表の内側方向に突出した凸部が設けられていることが望ましい。
【0012】
他の好適な態様では、前記貼着手段は、超音波の送受信面を露出した状態で前記超音波探触子を収容する収容体と、前記収容体の下端から外側方向に広がる鍔部材と、前記鍔部材を体表に貼着する接着部材と、を有する。
【0013】
他の本発明である保持装置は、被検体の体表に貼着される超音波探触子の貼着位置を保持する保持装置であって、前記被検体の体表に貼着された前記超音波探触子の周囲の体表に当接して、当該体表を押圧する当接板と、前記当接板を体表に当接した状態で保持する保持部材と、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、当接板が超音波探触子および貼着手段の周辺の体表を押圧することにより、当該周辺の体表の動きが制限される。その結果、超音波探触子の診断対象部位に対する相対的位置関係が保持され、信頼性のより高い超音波診断が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1に本発明の実施形態である超音波診断装置10のブロック図を示す。この超音波診断装置10は、特定の診断対象部位を一定時間、継続して診断する場合に好適であり、以下では、特に骨折した骨の癒合(結合)診断を行う場合を例に説明する。
【0016】
プローブ12は、超音波を送受波する超音波探触子であり、九つの単振動子が3×3のアレイ状に配されている。各単振動子は、後述する送受信部24からの指示に応じて、超音波を送信するとともに、その反射波を受信する。受信された反射波は、プローブ12と装置本体部22とを接続するプローブケーブル13を介して、エコー信号として送受信部24へと出力される。
【0017】
ここで、プローブ12は、通常のプローブに比べ、振動子数が非常に少ない構成となっているが、これは、プローブを小型、軽量化するためである。すなわち、骨の癒合診断の際には、プローブ12を被検体の体表に貼着した状態で、骨折部位に負荷がかかるように被検体に運動をさせる。その際、プローブ12が被検体の運動を阻害しないように、また、自重によるプローブ12の位置ずれを防止するために、本実施形態では、振動子の数を低減して、プローブ12を小型、軽量化している。
【0018】
このプローブ12は、貼着具14によって被検体の体表に貼着される。貼着具14は、後に詳説するが、粘着性を備えたスタンドオフが用いられる。スタンドオフは、超音波を透過するゲル上の媒体である。本実施形態では、このスタンドオフに粘着性のある材質を選択し、プローブの貼着具として利用している。
【0019】
保持具16は、貼着されたプローブ12と診断対象部位(骨)との相対的位置関係を保持するもので、被検体の体表に当接される当接板18と、当該当接板18を保持するベルト部材20と、に大別される。当接板18は、貼着位置周辺の体表に当接することにより、当該体表の動きを制限する。そして、体表の動きを制限することにより、貼着されたプローブ12と診断対象部位(骨)との相対的位置関係を保持する。この保持具16の具体的構成については後に詳説する。
【0020】
装置本体部22は、送受信部24や信号処理部26、制御部32、表示器34などがユニット化されて構成されている。送受信部24は、制御部32からの指示に応じて、プローブ12の単振動子に超音波の送信を指示する送信信号を供給する。また、プローブ12から出力されるエコー信号を受信し、これに整相加算や、ゲイン調整、ダイナミックレンジ調整等の信号処理を施す。
【0021】
信号処理部26は、受信信号に対して必要な処理を実行する回路であり、表示モードに応じてBモード形成用の信号処理、Mモード形成用の信号処理などが実行される。また、この信号処理部26は、得られたエコー信号から骨表面部を抽出してトラッキングをする、いわゆるエコートラッキング処理を行う。具体的には、骨の特定ポイント、いわゆる、トラッキングポイントに対して超音波を送信して得られたエコー信号の振幅から、当該トラッキングポイントの位置を検出する。このエコートラッキング処理には、周知の技術、例えば、特開2004−298205号公報に詳述される技術などが利用できる。
【0022】
出力処理部28は、エコー信号に対して送受波座標系から表示座標系への座標変換や補間処理などを実行し、超音波画像データを形成する。形成された超音波画像データは、表示器34に出力される。また、出力処理部28は、得られたトラッキングポイントの位置、すなわち、骨の表面位置も数値やグラフに変換して表示器に出力する。制御部32は、装置本体部22全体を制御するものである。この制御部32には、操作部30を介してユーザからの指示が入力される。制御部32は、このユーザからの指示に応じて装置本体部22を構成する各部に制御信号を出力し、制御する。
【0023】
図2は、この超音波診断装置10で被検体11の下腿の骨の癒合診断を行う場合の様子を示す図である。骨の癒合診断を行う場合は、診断対象部位である骨折部位近傍の体表15にプローブ12を貼着する。その際、貼着されたプローブ12の位置ずれを防止するために、ベルト部材20および当接板18からなる保持具16を装着する。この状態で、被検体11に診断対象の骨に荷重がかかるような運動、具体的には、歩行などをさせるとともに、超音波の送受波を実行する。荷重を受けた骨は、その癒合の度合いに応じて変位を生じる。すなわち、癒合度合いが低い場合は少しの荷重で大きく変位し、癒合度合いの高い場合は荷重をかけても、その変位が小さい。癒合診断の際には、この荷重を受けた骨の変位量をエコートラッキングにより検出し、さらに、その変位量から傾斜角度を求める。そして、得られた傾斜角度に基づいて癒合度合いを診断する。
【0024】
図3は、本実施形態におけるプローブ12と、当該プローブ12を体表に貼着する貼着具14の斜視図である。本実施形態では、スタンドオフ36を貼着具14として利用している。スタンドオフ36は、超音波を透過するゲル状の媒体であり、その音響インピーダンスが生体に近い素材を用いている。かかるスタンドオフ36は、通常の超音波診断でも用いられており、超音波診断の際には、被検体の体表とプローブ12との間にこのスタンドオフ36を介在させている。本実施形態では、このスタンドオフ36を貼着具14として用いるために、当該スタンドオフ36の材質に粘着性のある材質を採用し、スタンドオフ36自体が両面接着テープとして機能するようにしている。そして、このスタンドオフ36を、プローブ12の底面および被検体体表15に接着させることにより、プローブ12を被検体の体表に貼着させている。
【0025】
なお、当然ながら、プローブ12を被検体11の体表15に貼着できるなら、貼着具14として他の部材、構成を用いてもよい。例えば、プローブ12の上側から粘着テープを貼り、体表に貼着してもよい。この場合、粘着テープが貼着具14となる。また、図4,5に示すような貼着具14を用いてもよい。この貼着具14は、プローブ12を上方から覆う貼着用金具38と、この貼着用金具38を体表に貼着する接着シール42と、を備えている。貼着用金具38は、硬質材料からなり、プローブ12を収容できるように、その下方が開口した箱形状となっている。この貼着用金具38は、スタンドオフ36の形状変形、より具体的には、厚み変化を考慮して、スタンドオフ36がセットされたプローブ12の厚みより、僅かに、浅く形成されている。また、貼着用金具38には、その底面から周囲に広がる鍔部40が形成されている。接着シール42は、貼着用金具38より十分に広い表面積を有しており、その中心部には、貼着用金具38の箱状部分、換言すれば、プローブ12の収容部分が貫通するための開口44が形成されている。そして、この接着シール42で、貼着用金具38、より正確には、その鍔部40を体表に貼着する。これによりプローブ12が、被検体体表に貼着される。この貼着の際には、貼着用金具38の上側から力を加えて、スタンドオフ36の底面と鍔部40の底面の高さが一致するようにスタンドオフ36を弾性変形させる。この弾性変形によりプローブ12とスタンドオフ36、および、スタンドオフ36と体表との密着性が向上し、より好適な状態での超音波診断が可能となる。
【0026】
次に、貼着されたプローブ12の位置を保持する保持具16について説明する。図6は保持具16の斜視図であり、図7は保持具16の分解斜視図である。この保持具16は、プローブ12の貼着位置の周囲の体表を当接する当接板18と、当該当接板18を保持するベルト部材20と、に大別される。当接板18は、硬質材料からなる平板である。この当接板18は、骨の軸方向に長い略長方形となっている。かかる形状とするのは、皮膚は、骨の軸方向により動きやすい性質があるからである。すなわち、後述するように、当接板18は、プローブの周囲の皮膚の動きを制限する目的で設けられる。かかる目的をより確実に達成するために、皮膚の動きが生じやすい方向、すなわち、骨の軸方向への皮膚の動きを制限できるよう当接板18は骨の軸方向に長い形状となっている。当接板18を骨の軸に直行する方向に長い形状とすることが望ましい。当接板18のほぼ中央には、体表を外部に露出するための開口部19が設けられている。プローブ12は、この開口部19の内部に貼着される。この開口部19は、プローブ12および貼着具14より十分に広い面積を有しており、貼着されたプローブ12および貼着具14との間に間隙が形成されるようになっている。この当接板18は、ベルト部材20の裏面に固着されており、ベルト部材20を被検体に巻きつけることにより生じる締め付け力により、被検体の体表に当接し、その状態で保持される。
【0027】
ベルト部材20は、当接板18を体表に当接させた状態で保持する保持部材として機能する。このベルト部材20は、当接板18を覆うカバー部46と、これに接続された複数の伸縮帯50からなる。カバー部46は、被検体の体表形状に応じて変形可能な程度の可撓性を備えた材質、例えば、布などからなる。このカバー部46は、当接板18の全体を覆える程度の大きさを有している。そして、その中央には、開口部47が形成されている。このカバー部46は、被検体の周囲に巻かれて使用されるが、その巻方向の一端には、複数の伸縮帯50が固着されている。また、他方端にはメスの面状ファスナー48が設けられており、後述する伸縮帯の一端と着脱自在となっている。
【0028】
伸縮帯50は、伸縮性と可撓性とを備えた材料、例えば、ゴムなどからなる帯部材である。この伸縮帯50の一端はカバー部46の一端に固着されている。また、伸縮帯50の他端にはオスの面状ファスナー(図示せず)が設けられており、カバー部46の面状ファスナー48における所望の位置に着脱自在となっている。そして、このような面状ファスナーによる着脱構造を用いることにより、ベルト部材20の内径を自由に調節することができ、被検体の体表形状に柔軟に対応することができる。なお、当然ながら、伸縮帯50の取り付け位置が可変できる形態であれば、面状ファスナー以外の手段、例えば、複数のホックなどを用いてもよい。
【0029】
また、伸縮帯50として伸縮性のある材質を用いることにより、簡易に締め付け力を生じさせることができる。すなわち、このベルト部材20は、被検体の体表に巻きつけられて使用されるが、その際、位置ずれを防止でき得る程度の締め付け力を発揮する必要がある。このとき、伸縮帯を伸縮させて、ベルト部材20の周囲長を、被検体の周囲長より若干短くすることにより、被検体に対して締め付け力を生じさせることができる。この締め付け力によりベルト部材20の位置ずれが防止されるとともに、当接板18が所定の当接圧で被検体の体表に当接される。
【0030】
なお、ここで説明した保持具の形態は一例であり、適宜、その形状や構成を変更できる。具体的には、当接板18は、貼着されたプローブ12の周囲を囲み、以下で説明する皮膚の動きを制限できる程度の圧力での当接が可能であれば、その形状、材質等は上記説明に限定されない。したがって、例えば、本実施形態で当接板18は、一枚の板材で構成されているが、複数の板材で構成されてもよい。また、形状も診断対象部位に応じて適宜変更してもよい。また、本実施形態では、材質を硬質材料としているが、適度な圧力での当接が可能であれば、多少の弾性を有する材質でもよい。ただし、皮膚の動きを制限するためには、その弾性が皮膚より低いことが望ましい。また、ベルト部材20は、当接板18を体表に当接した状態で保持でき、かつ、被検体の運動を阻害しない構成あれば、他の構成でもよい。したがって、本実施形態のようにカバー部46と伸縮帯50に大別されている必要は無く、伸縮性のある一枚の布でベルト部材を構成してもよい。また、その形状等も適用される診断部位に応じて適宜変更可能である。また、ベルト部材20の少なくとも一部に伸縮性を有することが好適であるが、場合によっては、伸縮性を有さなくてもよい。
【0031】
次に、この保持具16の作用について図8、9を用いて説明する。図8は、保持具16の無い状態、すなわち、当接板18による体表当接が無い状態で、プローブ12を貼着した場合の概略断面図である。
【0032】
周知のとおり、被検体の体表15は、皮膚52で覆われている。皮膚52は、筋肉等の動きに追従するために、適度な弾性を有している。そのため、筋肉等の動きが生じた場合、皮膚52は、これに追従するために移動し、被検体内部に位置する骨54との相対位置関係が変動する。
【0033】
図8に示すように、保持具16無しでプローブ12を被検体の体表15に貼着した場合、当該貼着位置62の直下の皮膚52が押下される。一方で、その周囲の皮膚52はなんら制限を受けない自由な状態のままとなる。つまり、貼着位置62の周辺の皮膚52は、筋肉等の動きに応じて移動可能となっており、周辺の皮膚52が移動すれば、当然、貼着位置62の直下の皮膚52および当該皮膚52に貼着されたプローブ12も移動する。その結果、プローブ12と骨54との相対位置関係が変動する。このように、プローブ12と骨54との相対位置関係が変動した場合、次のような問題が生じる。
【0034】
既述したように、骨折した骨54の癒合(結合)診断を行う場合は、被検体の体表15にプローブ12を貼着し、その状態で、骨54に荷重を付加する。荷重が付加された骨は、その癒合度合いに応じた変位を生じる。具体的には、癒合度合いが低い状態では変位量は大きくなり、逆に癒合度合いが高い場合は変位量は小さくなる。この骨54の変位量を検出するために、骨54に荷重を付加した際に、骨折位置56近傍の骨54の表面に位置するトラッキングポイント58に超音波60を送信し、その際、得られるエコー信号に基づいてトラッキングポイント58の位置を検出する。そして、トラッキングポイント58の変位量から荷重の付加による骨54の傾斜角度を取得し、当該傾斜角度に基づいて骨の癒合度合いを診断する。
【0035】
したがって、骨54の癒合診断を行う場合には、プローブ12から送信される超音波60が適切にトラッキングポイント58に到達することが重要となる。換言すれば、信頼性の高い超音波診断を行うためには、診断対象部位(トラッキングポイント58)とプローブ12との相対位置関係が維持される必要がある。特に、本実施形態では、プローブ小型化に伴い振動子の数を低減しているため、トラッキングポイント58の数も限定されている。そのため、他の計測値との比較により誤差を推定するなどの対応が取れないため、より高い位置精度が求められる。しかし、既述したように、保持具16無しでプローブ12を貼着した場合、プローブ12と骨54との相対位置のずれが生じ、結果として信頼性の高い癒合診断が困難であった。
【0036】
これに対し、本実施形態の保持具16のある状態、すなわち、当接板18の体表当接がある状態で、プローブ12を貼着した場合の概略断面図を図9に示す。この場合、プローブ12は、当接板18の開口部19によって体表15が露出される部分の略中央に貼着される。一方、当接板18は、ベルト部材20の締め付けにより、被検体内部方向に押圧され、被検体の体表15に当接することになる。この当接により、当接板18で囲まれる部分の皮膚52が引っ張られることになる。その結果、皮膚の弾性が低減し、皮膚52の移動が制限される。また、当接板18は、貼着されたプローブ12の周囲を取り囲んでいる。換言すれば、プローブ12の周囲は、すべて、所定の圧力で押圧されている。したがって、貼着位置62の周辺の皮膚52は、当接板18の外側にある皮膚52の動きの影響を受けにくい状態となる。その結果、当接板18の外側にある皮膚52が筋肉等の動きに追従して移動しても、貼着位置62の周辺の皮膚52の位置は移動しにくい。つまり、当接板18の体表当接により、プローブ12の貼着位置62周辺の皮膚52の移動が制限される。その結果、筋肉等が動いても、プローブ12の位置は骨54に対して変動することなく、トラッキングポイント58との相対位置関係が維持される。そして、これにより、正確な骨54の癒合診断が可能となる。
【0037】
以上、本実施形態によれば、信頼性のより高い超音波診断が可能となる。特に、超音波の走査範囲が狭い場合や、微小な位置精度が要求される場合には特に有効となる。また、本実施形態は、当接板18とベルト部材20という簡易な構成で保持具16を構成している。したがって、簡易、かつ、低コストで信頼性の高い超音波診断を実現できる。
【0038】
なお、本実施形態では、骨の癒合診断に用いる場合を例に説明したが、診断対象部位とプローブ12との相対位置関係の保持が要求される場合であれば、当然、他の超音波診断にも有効となる。また、本実施形態では、当接板18を平板状としているが、当接圧の向上のために、当接板18の裏面、すなわち、体表と当接する当接面に突出する凸部を設けてもよい。
【0039】
例えば、図10(A)に示すように、開口部19の両側に、当接板18の短軸方向に延びるリブ64を設けてもよい。かかるリブ64を設けることにより、被検体の体表への当接圧が向上し、より確実に皮膚の動きを制限できる。そして、その結果、信頼性のより高い超音波診断が可能となる。また、下腿などは略円筒形状であるため、当接板18を平板とした場合、適切な当接圧が得られない場合がある。その場合は、図10(B)に示すように、診断対象部位の周辺部位の形状に応じて当接板18に湾曲板を用いることも望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態である超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本超音波診断装置を用いて骨の癒合診断を行う様子を示す図である。
【図3】本実施形態におけるプローブと貼着具の斜視図である。
【図4】他の貼着具を示す斜視図である。
【図5】図4の貼着具の分解斜視図である。
【図6】本実施形態における保持具の斜視図である。
【図7】図6の貼着具の分解斜視図である。
【図8】保持具を用いない場合のプローブ周辺の概略断面図である。
【図9】保持具を用いた場合のプローブ周辺の概略断面図である。
【図10】他の当接板の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
10 超音波診断装置、11 被検体、12 プローブ、14 貼着具、15 体表、16 保持具、18 当接板、20 ベルト部材、22 装置本体部、24 送受信部、26 信号処理部、28 出力処理部、30 操作部、32 制御部、34 表示器、36 スタンドオフ、52 皮膚、54 骨、56 骨折位置、58 トラッキングポイント、60 超音波、62 貼着位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の内部の診断部位に対して超音波を送信するともに、そのエコー信号を受信する超音波探触子と、
前記超音波探触子を、前記診断部位の近傍の体表に貼着する貼着手段と、
前記貼着手段および超音波探触子の周囲の体表に当接して、当該体表を押圧する当接板と、
前記当接板を体表に当接した状態で保持する保持部材と、
を有することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波診断装置であって、
前記保持部材は、前記体表の形状に応じて変形可能な材料からなり、前記当接板を前記体表との間に挟みこんだ状態で前記被検体の外周に巻かれる帯部材であることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波診断装置であって、
前記保持部材は、前記被検体の外周囲長に応じて、その内径が調節可能であることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の超音波診断装置であって、
前記保持部材は、少なくとも一部に、前記被検体の周方向に伸縮可能な材料からなる伸縮部を有することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の超音波診断装置であって、
前記当接板は、所定の間隙を開けて前記超音波探触子および前記貼着具を囲む開口部を備えた板材であることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の超音波診断装置であって、
前記当接板は、前記体表と当接する当接面に、前記体表の内側方向に突出した凸部が設けられていることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の超音波診断装置であって、
前記貼着手段は、
超音波の送受信面を露出した状態で前記超音波探触子を収容する収容体と、
前記収容体の下端から外側方向に広がる鍔部材と、
前記鍔部材を体表に貼着する接着部材と、
を有することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項8】
被検体の体表に貼着される超音波探触子の貼着位置を保持する保持装置であって、
前記被検体の体表に貼着された前記超音波探触子の周囲の体表に当接して、当該体表を押圧する当接板と、
前記当接板を体表に当接した状態で保持する保持部材と、
を有することを特徴とする保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−230911(P2006−230911A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−53495(P2005−53495)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】