説明

超音波診断装置及びその制御プログラム

【課題】超音波画像の輝度変化をより実感することができる超音波診断装置を提供する。
【解決手段】超音波診断装置1は、超音波画像に設定された関心領域の平均輝度の情報に基づいて、音のデータを作成する音作成部7と、音作成部7から出力された音のデータに基づいて、輝度に応じた音を出すスピーカ8とを備えることを特徴とする。スピーカ8から出力される音は、音量及び音質の少なくともいずれかが輝度に応じて異なっている。超音波画像の全体の平均輝度に応じた音をスピーカ8から出力するようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置及びその制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、被検体に対して超音波のスキャン(scan)を行なって得られたエコー信号に基づく超音波画像を表示する装置である。このような超音波診断装置において、超音波画像の輝度の変化を観察する場合がある。例えば、被検体に造影剤を注入して、造影剤の流入により観察対象部位の輝度が次第に上昇していく超音波画像を観察する場合がある。このような輝度変化の観察を容易にするため、超音波画像内に設定された関心領域の輝度変化曲線を表示する超音波診断装置が例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−115457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、従来は視覚情報のみから超音波画像の輝度変化を観察していた。しかし、超音波画像の輝度変化をより実感することができる超音波診断装置及びその制御プログラムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決するためになされた発明は、超音波画像における所定領域の輝度に応じた音を出力する音出力部を備えることを特徴とする超音波診断装置である。
【発明の効果】
【0006】
上記観点の発明によれば、前記音出力部により、超音波画像の輝度に応じた音が出力されるので、視覚的な観点のみならず、聴覚によっても輝度変化の様子を知ることができ、輝度変化をより実感することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る超音波診断装置の実施の形態の一例を示すブロック図である。
【図2】図1に示す超音波診断装置における表示制御部の構成を示すブロック図である。
【図3】実施形態の超音波診断装置の作用を示すフローチャートである。
【図4】超音波画像が表示された表示部の一例を示す図である。
【図5】超音波画像に関心領域が設定された表示部の一例を示す図である。
【図6】関心領域に設定されたブロックの説明図である。
【図7】実施形態の第三変形例における表示制御部の構成を示すブロック図である。
【図8】第三変形例における作用を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図1〜図6に基づいて説明する。図1に示す超音波診断装置1は、超音波プローブ2、送受信部3、エコーデータ処理部4、表示制御部5、表示部6、音作成部7、スピーカ8、操作部9、制御部10及びHDD(Hard Disk Drive)11を備える。
【0009】
前記超音波プローブ2は、複数の超音波振動子(図示省略)から被検体に対して超音波のスキャンを行なう。また、前記超音波プローブ2は、超音波のエコー信号を受信する。
【0010】
前記送受信部3は、前記超音波プローブ2から所定のスキャン条件で超音波を送信するための電気信号を、前記制御部10からの制御信号に基づいて前記超音波プローブ2に供給する。また、前記送受信部3は、前記超音波プローブ2で受信したエコー信号について、A/D変換、整相加算処理等の信号処理を行なう。
【0011】
前記エコーデータ処理部4は、前記送受信部3から出力されたエコーデータに対し、超音波画像を作成するための処理を行なう。例えば、前記エコーデータ処理部4は、対数圧縮処理、包絡線検波処理等のBモード処理を行ってBモードデータを作成する。
【0012】
前記表示制御部5は、図2に示すように、画像データ作成部51及び平均輝度算出部52を有している。前記画像データ作成部51は、前記エコーデータ処理部4から入力されたデータをスキャンコンバータ(Scan Converter)によって走査変換して超音波画像データを作成し、この超音波画像データに基づく超音波画像G(図4等参照)を前記表示部6に表示させる。前記画像データ作成部51は、例えばBモードデータに基づいてBモード画像データを作成し、Bモード画像を前記表示部6に表示させる。
【0013】
また、前記画像データ作成部51は、前記操作部9における関心領域Rを設定する入力に基づいて、前記超音波画像Gに関心領域R(図5参照)を設定する。
【0014】
前記平均輝度算出部52は、後述するように超音波画像Gに設定された関心領域Rの平均輝度を算出する。詳細は後述する。平均輝度の情報は前記音作成部7へ出力される。
【0015】
前記表示部6は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)などで構成される。
【0016】
前記音作成部7は、前記平均輝度算出部52によって算出された輝度情報に基づいて、音のデータを作成する(音作成機能)。詳細は後述する。音のデータは前記スピーカ8へ出力される。前記音作成部7は、本発明における音作成部の実施の形態の一例である。
【0017】
前記スピーカ8は、前記音作成部7から出力された音の信号に基づいて音を出力する。このスピーカ8から出力される音は、前記関心領域Rの輝度に応じた音である。詳細は後述する。前記スピーカ8は、本発明における音出力部の実施の形態の一例である。
【0018】
前記操作部9は、操作者が指示や情報を入力するためのキーボード及びポインティングデバイス(図示省略)などを含んで構成されている。
【0019】
前記制御部10は、特に図示しないがCPU(Central Processing Unit)を有して構成される。この制御部10は、前記HDD11に記憶された制御プログラムを読み出し、前記送受信部3、前記エコーデータ処理部4、前記表示制御部5及び前記音作成部7の機能を実行させる。
【0020】
さて、本例の超音波診断装置1の作用について図3のフローチャートに基づいて説明する。本例では、被検体に造影剤を注入し、超音波画像における観察部位の輝度変化を観察する場合を例に挙げて説明する。
【0021】
先ず、ステップS1では、図4に示すように前記表示部6に超音波画像Gが表示される。本例では、前記超音波画像GはBモード画像である。具体的には、先ず前記エコーデータ処理部4が、前記超音波プローブ2による超音波のスキャンによって得られたエコー信号に基づいてBモードデータを作成する。そして、このBモードデータに基づいて、前記画像データ作成部51がBモード画像データを作成しこのBモード画像データに基づくBモード画像を前記表示部6に表示させる。
【0022】
次に、ステップS2では、図5に示すように前記画像データ作成部51は、前記超音波画像Gに関心領域Rを設定する。具体的には、操作者は前記操作部9のトラックボール等を操作して、所望の領域に関心領域Rを設定する入力を行なう。前記画像データ作成部51は、前記操作部9における入力に基づいて前記超音波画像Gに前記関心領域Rを設定する。
【0023】
前記関心領域Rは、前記表示部6に表示されたBモード画像において、操作者が造影剤の注入による輝度変化を観察したい領域に設定される。
【0024】
次に、ステップS3では、図6に示すように前記平均輝度算出部52が前記関心領域R内を複数のブロックBlに分割する。ちなみに、図6では説明の便宜上前記ブロックBlが図示されているが、実際の超音波画像Gには前記ブロックBlは表示されないものとする。
【0025】
次に、ステップS4では、操作者が前記操作部9において音出力機能をスタートさせる入力を行なうと、前記制御部10は音出力機能をスタートさせる。また、操作者は、被検体に造影剤を注入する。音出力機能は、前記関心領域R内の輝度に応じた音を前記スピーカ8から出力する機能であり、操作者が前記操作部9を操作することによりスタートする。
【0026】
前記ステップS4において音出力機能がスタートすることにより、ステップS5では前記平均輝度算出部52が前記各ブロックBlの平均輝度を算出する。次に、ステップS6では、前記平均輝度算出部52は、各ブロックBlの平均輝度に基づいて、前記関心領域Rの全体の平均輝度を算出する。前記平均輝度算出部52は、算出された平均輝度のデータBDavを前記音作成部7へ出力する。
【0027】
次に、ステップS7では、前記音作成部7は、関心領域Rの平均輝度のデータBDavに基づいて音のデータSDを作成する。具体的には、音のデータSDの作成関数をfとした場合、
SD=f(BDav)
である。前記音作成部7は、作成された前記音のデータSDを前記スピーカ8へ出力する。
【0028】
本例では、前記音のデータSDは、ノイズ音のデータである。例えば、ノイズ音はピンクノイズ(pink noise)やホワイトノイズ(white noise)などである。前記作成関数fは、輝度が低いほど、作成される音のデータの音量が小さく、輝度が高いほど、音量が大きくなるような関数になっている。
【0029】
次に、ステップS8では、前記スピーカ8から音が出力される。出力される音はノイズ音であり、前記関心領域R内の平均輝度が低いほど音量が小さく、平均輝度が高くなるほど音量が大きい。従って、造影剤の注入後、前記関心領域R内の平均輝度が大きくなるにつれて、前記スピーカ8から出力されるノイズ音が大きくなる。
【0030】
次に、ステップS9では、音停止要求があったか否かを前記制御部10が判定する。前記操作部9において音の出力を停止する入力が行われると、前記制御部10に音停止要求が入力される。音停止要求がない場合(ステップS9で「NO」)、ステップS5へ戻る。一方、音停止要求があった場合(ステップS9で「YES」)、ステップS10へ移行し、前記制御部10は音出力機能を停止させる。
【0031】
以上説明した本例の超音波診断装置によれば、前記スピーカ8により、前記関心領域Rの平均輝度に応じた音が出力されるので、視覚的な観点のみならず、聴覚によっても輝度変化の様子を知ることができ、輝度変化をより実感することができる。
【0032】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。先ず、第一変形例について説明すると、前記関心領域R内の平均輝度に応じて、音量ではなく音質が異なっていてもよい。音質には、ノイズ音の種類が含まれる。この場合、前記作成関数fは、例えば平均輝度が低くなるほどピンクノイズの要素が強いノイズ音のデータが作成され、平均輝度が高くなるほどホワイトノイズの要素が強いノイズ音のデータが作成される関数である。従って、被検体に造影剤が注入されると、前記関心領域R内の平均輝度が低い場合にはピンクノイズの要素が強いノイズ音が前記スピーカ8から出力され、次第に平均輝度が高くなると、ホワイトノイズの要素が強いノイズ音が前記スピーカ8から出力される。
【0033】
前記音作成部7で作成される音のデータは、ノイズ音のデータに限られるものではなく、ノイズ音以外の複合音や純音のデータであってもよい。また、前記関心領域R内の平均輝度に応じて音の高低を変えてもよい。すなわち、音質には音の高低が含まれる。
【0034】
前記関心領域R内の平均輝度に応じて音量と音質の両方を変えてもよい。
【0035】
次に、第二変形例について説明する。上記実施形態では、前記平均輝度算出部52は、前記超音波画像Gに設定された関心領域Rの平均輝度を算出しているがこれに限られるものではない。前記平均輝度算出部52は、前記表示部6に表示された超音波画像Gの全体の平均輝度を算出してもよい。
【0036】
次に、第三変形例について説明する。この第三変形例では、図7に示すように、前記表示制御部5は前記平均輝度算出部52の代わりに最大輝度検出部53を有している。この最大輝度検出部53は、前記関心領域R内の最大輝度又は前記表示部6に表示された超音波画像Gの全体における最大輝度を検出する。
【0037】
本例では、図8に示すように、前記ステップS4の処理の後、ステップS5′において前記最大輝度検出部53が前記関心領域R内の最大輝度又は前記超音波画像Gの全体における最大輝度を検出する。
【0038】
ステップS5′において最大輝度が検出されると、ステップS7では前記音作成部7は、最大輝度のデータBDmaxに基づいて、前記作成関数fに従って音のデータSDを作成する。
【0039】
以上、本発明を前記実施形態によって説明したが、本発明はその主旨を変更しない範囲で種々変更実施可能なことはもちろんである。例えば、上記実施形態では、前記関心領域Rの平均輝度を算出するために前記ブロックBlを設定しているが、前記ブロックBlを設定せず、前記関心領域R内の全ての画素を対象にして平均輝度を算出する演算を行なってもよい。
【0040】
また、前記超音波画像GとしてBモード画像の例を挙げて説明したが、これに限られるものではない。例えば、前記エコーデータ処理部4は、Bモード処理とともに、直交検波処理や自己相関演算処理等のドプラ処理を行なうことによりカラードプラデータ(color doppler data)を作成してもよい。この場合、前記画像データ作成部51は、Bモード画像データとともに、カラードプラデータに基づいてカラードプラ画像データを作成し、Bモード画像の上にカラードプラ画像が重畳された画像を前記表示部6に表示させる。
【0041】
また、前記エコーデータ処理部4は、Bフロー(B−flow)処理を行なってBフローデータを作成してもよい。この場合、前記画像データ作成部51は、Bフローデータに基づいてBフロー画像データを作成し、Bフロー画像を前記表示部6に表示させる。
【0042】
カラードプラ画像やBフロー画像が前記表示部6に表示される場合、カラードプラ画像やBフロー画像の輝度に応じた音を前記スピーカ8から出力するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 超音波診断装置
7 音作成部
8 スピーカ(音出力部)
G 超音波画像
R 関心領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波画像における所定領域の輝度に応じた音を出力する音出力部を備えることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記音出力部から出力される音は、音量及び音質の少なくともいずれかが輝度に応じて異なることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
超音波画像の輝度情報に基づいて、音のデータを作成する音作成部を備え、
前記音出力部は、前記音作成部から出力された音のデータに基づいて、音を出すスピーカで構成される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記所定領域は、前記超音波画像の一部に設定された関心領域又は超音波画像全体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記超音波画像の輝度は、前記関心領域内又は前記超音波画像全体の平均輝度であることを特徴とする請求項4に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記超音波画像の輝度は、前記関心領域内又は前記超音波画像全体における最大輝度であることを特徴とする請求項4に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記超音波画像は、Bモード画像、カラードプラ画像又はBフロー画像であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
コンピュータに、
音出力部から出力する音のデータであって、超音波画像における所定領域の輝度に応じた音のデータを作成する音作成機能を実行させる
ことを特徴とする超音波診断装置の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−27468(P2013−27468A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164144(P2011−164144)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】