説明

超音波診断装置及びプログラム

【課題】標準的な超音波診断装置を用いた検査環境において穿刺針の視認性を向上させることができる超音波診断装置及びプログラムを提供すること。
【解決手段】実施の形態の超音波画像診断装置1では、歪算出部は、超音波画像の所定の領域ごとに、当該超音波画像に描出された被検体の組織の歪を算出する。そして、特徴量算出部は、歪算出部によって所定の領域ごとに算出された歪が所定の閾値を超えるか否かを判定する。そして、制御部は、特徴量算出部によって歪が所定の閾値を超えたと判定された領域の位置に穿刺針を示す情報を表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、超音波診断装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波診断装置は、超音波画像をリアルタイムで表示できることから、生体組織検査やラジオ波焼灼治療(RFA:Radio Frequency Ablation)などの穿刺が行なわれる場合に多く用いられる。例えば、生体組織検査のために組織採取を行う場合には、医師は、ターゲットとなる病変をリアルタイムで超音波画像により確認しながら、穿刺針を体内に刺し、組織採取を行う。また、RFAを行う場合には、医師は、ターゲットとなる病変をリアルタイムで超音波画像により確認しながら、穿刺針を病変部位まで刺し、その後、穿刺針からラジオ波を照射する。
【0003】
ところで、このような超音波診断装置を用いた穿刺術では、超音波画像上で穿刺針が明瞭に描出されず、穿刺針がどこまで進入しているのかを把握することが困難になる場合があった。そこで、近年、穿刺針の視認性を向上させるためのいくつかの技術が開発されている。かかる場合では、専用のハードウェアを用いて穿刺針の視認性を向上させている。
【0004】
しかしながら、従来技術においては、専用のハードウェアが必要であり、利用可能な環境が限られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−178589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、標準的な超音波診断装置を用いた検査環境において穿刺針の視認性を向上させることができる超音波診断装置及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施の形態の超音波画像診断装置は、算出手段と、判定手段と、表示制御手段とを備える。算出手段は、超音波画像の所定の領域ごとに、当該超音波画像に描出された被検体の組織の歪を算出する。判定手段は、前記算出手段によって所定の領域ごとに算出された歪が所定の閾値を超えるか否かを判定する。表示制御手段は、前記判定手段によって歪が所定の閾値を超えたと判定された判定領域の位置に穿刺針を示す情報を表示させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の全体構成を説明するための図である。
【図2】図2は、第1の実施形態に係る画像データ制御部の構成の一例を説明するための図である。
【図3】図3は、穿刺針進入に伴う組織の歪を説明するための図である。
【図4】図4は、第1の実施形態に係る超音波診断装置による処理を説明するための図である。
【図5】図5は、穿刺針の進入が停止した状態を説明するための図である。
【図6】図6は、穿刺針の進入が停止した場合の画像データ生成部の処理を説明するための図である。
【図7】図7は、穿刺針が抜かれる場合の画像データ生成部150の処理を説明するための図である。
【図8】図8は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1による処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】図9は、歪を算出する領域の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る超音波診断装置の全体構成について、図1を用いて説明する。図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の全体構成を説明するための図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、超音波プローブ11と、入力装置12と、モニタ13と、装置本体100とを有し、ネットワークに接続されている。
【0010】
超音波プローブ11は、複数の圧電振動子を有し、これら複数の圧電振動子は、後述する装置本体100が有する送受信部110から供給される駆動信号に基づき超音波を発生し、さらに、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ11は、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材などを有する。
【0011】
超音波プローブ11から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ11が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが移動している血流や心臓壁などの表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
【0012】
そして、実施例1に係る超音波プローブ11には、医師が超音波画像を参照しながら生体組織検査やラジオ波焼灼治療などの穿刺を行なうために、穿刺アダプタ11aが取り付けられる。そして、穿刺アダプタ11aには、穿刺針11bが取り付けられている。医師は、超音波画像を参照しながら、穿刺アダプタ11aに取り付けられた穿刺針11bを被検体Pのターゲット部位まで挿入する。
【0013】
なお、本実施形態は、複数の圧電振動子が一列で配置された1次元超音波プローブである超音波プローブ11により、被検体Pを2次元でスキャンする場合であっても、1次元超音波プローブの複数の圧電振動子を機械的に揺動する超音波プローブ11や複数の圧電振動子が格子状に2次元で配置された2次元超音波プローブである超音波プローブ11により、被検体Pを3次元でスキャンする場合であっても、適用可能である。
【0014】
入力装置12は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボールなどを有し、超音波診断装置1の操作者からの各種設定要求を受け付け、装置本体100に対して受け付けた各種設定要求を転送する。
【0015】
モニタ13は、超音波診断装置1の操作者が入力装置12を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体100において生成された超音波画像などを表示したりする。例えば、モニタ13は、被検体Pに刺された穿刺針の位置を示した超音波画像を表示する。
【0016】
装置本体100は、超音波プローブ11が受信した反射波に基づいて超音波画像を生成する装置であり、図1に示すように、送受信部110と、Bモード処理部120と、ドプラ処理部130と、画像データ制御部140と、画像データ生成部150と、画像メモリ160と、制御部170と、内部記憶部180とを有する。
【0017】
送受信部110は、トリガ発生回路、遅延回路およびパルサ回路などを有し、超音波プローブ11に駆動信号を供給する。パルサ回路は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、遅延回路は、超音波プローブ11から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルサ回路が発生する各レートパルスに対し与える。また、トリガ発生回路は、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ11に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、遅延回路は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面からの送信方向を任意に調整する。
【0018】
また、送受信部110は、アンプ回路、A/D変換器、加算器などを有し、超音波プローブ1が受信した反射波信号に対して各種処理を行なって反射波データを生成する。アンプ回路は、反射波信号をチャンネルごとに増幅してゲイン補正処理を行ない、A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をA/D変換して受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与え、加算器は、A/D変換器によって処理された反射波信号の加算処理を行なって反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。
【0019】
このように、送受信部110は、超音波の送受信における送信指向性と受信指向性とを制御する。なお、送受信部110は、後述する制御部160の制御により、遅延情報、送信周波数、送信駆動電圧、開口素子数などを瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更においては、瞬時に値を切り替えることが可能であるリニアアンプ型の発振回路、又は、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。また、送受信部110は、1フレームもしくはレートごとに、異なる波形を送信して受信することも可能である。
【0020】
Bモード処理部120は、送受信部110からゲイン補正処理、A/D変換処理および加算処理が行なわれた処理済み反射波信号である反射波データを受信し、対数増幅、包絡線検波処理などを行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
【0021】
ここで、Bモード処理部120は、検波周波数を変化させることで、映像化する周波数帯域を変えることができる。また、Bモード処理部120は、1つの受信データに対して、2つの検波周波数による検波処理を並列して行うことができる。
【0022】
このBモード処理部120の機能を用いることにより、超音波造影剤が注入された被検体Pの関心領域における1つの受信データから、関心領域を流動する超音波造影剤(微小気泡、バブル)を反射源とする反射波データと、関心領域に存在する組織を反射源とする反射波データとを分離することができ、後述する画像データ生成部150は、流動するバブルを高感度に映像化した造影像および形態を観察するために組織を映像化した組織像を生成することができる。
【0023】
ドプラ処理部130は、送受信部110から受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワーなどの移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。
【0024】
より具体的には、ドプラ処理部130は、組織ドプラ法(TDI:Tissue Doppler Imaging)及びカラードプラ法を実行可能な処理部である。すなわち、ドプラ処理部130は、走査範囲内にある組織の運動情報(組織運動情報)を取得して、組織の動態を示す組織ドプラ画像を生成するための組織ドプラデータを生成する処理部である。また、ドプラ処理部130は、走査範囲内にある血流の運動情報(血流運動情報)を取得して、血流の動態を示すカラードプラ画像を生成するためのカラードプラデータを生成する処理部である。
【0025】
画像データ制御部140は、Bモード処理部120によって生成されたBモードデータ及びドプラ処理部130によって生成されたドプラデータから表示用の画像を生成するための各種制御を実行する。例えば、画像データ制御部140は、ドプラデータに基づいて、穿刺針11bを強調表示するために用いられる特徴量を算出する。なお、特徴量については後に詳述する。
【0026】
画像データ生成部150は、Bモード処理部120が生成したBモードデータや、ドプラ処理部130が生成したドプラデータから、超音波画像を生成する。具体的には、画像データ生成部150は、超音波スキャンの走査線信号列を、テレビなどに代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)することで、Bモードデータやドプラデータから表示用の超音波画像(Bモード画像やドプラ画像)を生成する。また、画像データ生成部150は、画像データ制御部140の処理結果を用いて、被検体Pに刺された穿刺針11bを強調表示した表示用の超音波画像を生成する。そして、画像データ生成部150は、生成した表示用の超音波画像を画像メモリ160に格納する。なお、画像データ生成部による穿刺針11bを強調表示した表示用画像の生成については後に詳述する。
【0027】
画像メモリ160は、Bモード処理部120及びドプラ処理部130によって生成されたRawデータ(Bモードデータ及びドプラデータ)、画像データ生成部150によって生成された表示用超音波画像を記憶する。また、画像メモリ160は、画像データ制御部140による処理結果を記憶する。さらに、画像メモリ160は、送受信部110を経た直後の出力信号(RF:Radio Frequency)や画像の輝度信号、種々の生データなどを必要に応じて記憶する。
【0028】
制御部170は、超音波診断装置1における処理全体を制御する。具体的には、制御部170は、入力装置12を介して操作者から入力された各種設定要求や、内部記憶部180から読込んだ各種制御プログラムおよび各種設定情報に基づき、送受信部110、Bモード処理部120、ドプラ処理部130、画像データ制御部140および画像データ生成部150の処理を制御したり、画像メモリ160が記憶する超音波画像などをモニタ13にて表示するように制御したりする。
【0029】
内部記憶部180は、超音波送受信、画像処理および表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見など)や、診断プロトコルなどの各種データを記憶する。また、内部記憶部180は、必要に応じて、画像メモリ160が記憶する画像の保管などにも使用される。
【0030】
以上、第1の実施形態に係る超音波診断装置の全体構成について説明した。かかる構成のもと、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、以下、詳細に説明する画像データ制御部140の処理により、標準的な超音波診断装置を用いた検査環境において穿刺針の視認性を向上させることが可能となるように構成されている。
【0031】
以下、第1の実施形態に係る画像データ制御部140の処理について、図2などを用いて詳細に説明する。なお、第1の実施形態では、操作者が穿刺針11bを用いた穿刺術を開始した後の処理について説明する。
【0032】
図2は、第1の実施形態に係る画像データ制御部140の構成の一例を説明するための図である。画像データ制御部140は、図2に示すように、白黒画像データ処理部141と、カラー画像データ処理部142とを有し、図示しないバスを介して、画像データ生成部150及び画像メモリ160と接続される。
【0033】
白黒画像データ処理部141は、白黒画像の生成に関する各種処理を実行する。カラー画像データ処理部142は、図2に示すように、速度平均抽出部142aと、歪算出部142bと、特徴量算出部142cとを有し、組織ドプラ法により生成された組織ドプラデータを用いて穿刺針の視認性を向上させるための各種処理を実行する。
【0034】
具体的には、カラー画像データ処理部142においては、速度平均抽出部142a、歪算出部142b及び特徴量算出部142cが、組織ドプラデータに含まれる速度成分に基づいて、穿刺針が体表から刺されることによって生じる組織の歪を算出して、算出した歪から穿刺針の位置を特定する。
【0035】
図3は、穿刺針進入に伴う組織の歪を説明するための図である。図3においては、被検体Pの体表30に対して超音波プローブ11を当てながら穿刺針11bによる穿刺術を実行している場合について示している。また、図3においては、組織ドプラ法を用いて穿刺針11bの位置を特定する場合について示している。また、図3に示す矢印21は、穿刺針11bの進行方向を示す。また、図3に示す矢印22は、穿刺針11bが組織を押す力を示す。また、図3に示す矢印23は、ラスタの超音波プローブ11が送信する超音波ビームの方向を示す。また、図3に示す円24は、組織ドプラデータのサンプリング位置を示す。
【0036】
例えば、図3に示すように、体表30から矢印21の方向に穿刺針11bが進入すると、穿刺針11bを中心とした周囲の組織に押す力22が発生する。すなわち、穿刺針11bの進入に伴って、穿刺針11bの周囲の組織に歪が発生することとなる。また、組織ドプラ法を用いたスキャンでは、サンプリングの位置24などにおいて収集される組織ドプラデータに速度成分が含まれることとなる。第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、組織ドップラデータに含まれる速度成分に基づいて、穿刺針11bの周囲の組織に発生した歪を算出することにより穿刺針の位置を特定する。
【0037】
図2に戻って、速度平均抽出部142aは、超音波画像の所定の領域ごとに、当該所定の領域に対応する位置のドプラデータに含まれる速度成分に基づいて速度平均を抽出する。例えば、速度平均抽出部142aは、超音波画像の画素ごとに、当該画素に対応する位置のドプラデータに含まれる速度成分に基づいて速度平均を抽出する。一例を挙げると、速度平均抽出部142aは、組織ドプラ法を用いたスキャンの1サンプルごとに速度平均を抽出する。
【0038】
図4は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1による処理を説明するための図である。図4の(A)は、速度平均抽出部142aによる処理を模式的に示す図である。図4の(B)及び(C)は、後述する画像データ生成部150の処理を示す図である。なお、図4の(B)及び(C)については、後に詳述する。
【0039】
例えば、速度平均抽出部142aは、図4の(A)に示すように、「ラスタ:1、サンプル:1」の速度成分、分散成分、パワー成分から「ラスタ:1、サンプル:1」の速度平均を抽出する。そして、速度平均抽出部142aは、抽出した分散成分及びパワー成分を用いて、サンプルの所定の位相における座標(フェーズCos、フェーズSin)を算出する。
【0040】
その後、速度平均抽出部142aは、算出した座標それぞれと分散成分との積をとった値をスムージング値とする。そして、速度平均抽出部142aは、スムージング値から超音波画像の総画素数の商を取った値を速度平均値として算出する。すなわち、図3に示すように、穿刺針11bがラスタの方向に対して斜めに侵入することから、ベクトルを考慮するために、速度平均抽出部142aは、速度平均を座標として抽出する。そして、速度平均抽出部142aは、抽出した「ラスタ:1、サンプル:1」の速度平均のデータを画像メモリ160に格納する。同様に、速度平均抽出部142aは、すべてのラスタのサンプルに対して上述した処理を実行して、サンプルごとに速度平均を抽出して画像メモリ160に格納する。そして、速度平均抽出部142aは、スキャンされたフレームにおけるサンプルの速度平均を順次抽出して、画像メモリ160に格納する。
【0041】
図2に戻って、歪算出部142bは、超音波画像の所定の領域ごとに、当該超音波画像に描出された被検体の組織の歪を算出する。具体的には、歪算出部142bは、速度平均抽出部142aによって抽出された速度平均を用いて歪を算出する。例えば、歪算出部142bは、画像メモリ160によって記憶されたサンプルごとの速度平均を用いて、各サンプルの位置における歪を算出する。
【0042】
例を挙げると、歪算出部142bは、画像メモリ160によって記憶されたサンプルごとの速度平均を読み出し、読み出した速度平均の逆正接の逆数をとる。そして、歪算出部142bは、走査線の時間間隔から円周率の商を取った結果と負の値を正の値に変換する128とを積算した値を、当該逆数の値に積算した値を歪として算出する。そして、歪算出部142bは、算出した歪の情報を画像メモリ160に格納する。同様に、歪算出部142bは、画像メモリ160によって記憶されたすべての速度平均を用いて、各サンプルの位置における歪を算出する。そして、歪算出部142bは、スキャンされたフレームにおける各サンプルの歪を順次算出して、画像メモリ160に格納する。
【0043】
特徴量算出部142cは、歪算出部142bによって所定の領域ごとに算出された歪が所定の閾値を超えるか否かを判定する。例えば、特徴量算出部142cは、画像メモリ160によって記憶された各サンプルの位置の歪が所定の閾値を越えるか否かをスキャンされたフレームについて順次判定する。そして、特徴量算出部142cは、判定したフレームの超音波画像に判定結果を対応付けて画像メモリ160に順次格納する。
【0044】
ここで、特徴量算出部142cは、歪算出部142bによって算出された歪が穿刺針の移動に起因する歪であるか否かをさらに判定し、穿刺針の移動に起因する歪であると判定した場合に、当該歪が所定の閾値を超えるか否かを判定する。具体的には、特徴量算出部142cは、歪が生じている位置や歪の仕方などが穿刺針の移動に起因する場合に、当該歪が所定の閾値を超えるか否かを判定する。例えば、特徴量算出部142cは、算出された歪が被検体Pの動きによって生じた歪である場合には、当該歪が所定の閾値を超えるか否かを判定しない。すなわち、特徴量算出部142cは、穿刺針の移動に起因する歪を対象として判定処理を行う。なお、穿刺針の移動に起因する歪であるか否かを判定するための情報としては、例えば、歪が生じている位置や、歪の程度、自発的に動く部位などが用いられる。
【0045】
画像データ生成部150は、特徴量算出部142cによって歪が所定の閾値を超えたと判定された判定領域の位置に穿刺針を示す情報を描出した画像を生成する。例えば、画像データ生成部150は、画像メモリ160によって記憶された超音波画像において、歪が所定の閾値を越えたサンプルの位置を穿刺針の先端とした画像を生成する。すなわち、画像データ生成部150は、時系列で連続する複数の超音波画像において、歪が所定の閾値を越えたサンプルの位置を順次穿刺針の先端として画像を生成する。その際、直前の画像に描出された穿刺針を継続して描出する画像を生成する。
【0046】
例えば、画像データ生成部150は、穿刺針を示す情報として、判定領域の位置を強調させた強調画像を生成する。表示の一例を示すと、画像データ生成部150は、時系列で連続する複数の超音波画像それぞれの歪の位置に順次穿刺針を示す情報を描出していくことで、例えば、図4の(B)に示すように、穿刺針の位置を強調させた画像を生成する。
【0047】
また、画像データ生成部150は、判定領域の位置を強調させるとともに当該判定領域に描出された組織が透過される透過画像を生成する。表示の一例を示すと、画像データ生成部150は、時系列で連続する複数の超音波画像それぞれの歪の位置に透過性の情報を順次重畳させることで、例えば、図4の(C)に示すように、超音波画像に描出された組織が透過された透過画像を生成する。すなわち、制御部170は、特徴量算出部142cによって歪が所定の閾値を超えたと判定された判定画素の位置に穿刺針を示す情報を表示させることとなる。また、制御部170は、穿刺針を示す情報として、判定画素の位置を強調させた強調画像、又は、判定画素の位置を強調させるとともに当該判定画素に描出された組織が透過される透過画像を表示させることとなる。
【0048】
ここで、穿刺針の進入が停止した場合について説明する。図5は、穿刺針の進入が停止した状態を説明するための図である。例えば、図5の(A)に示すように、穿刺針11bが矢印21の方向に進入している場合には、穿刺針11bに組織を押す力22が発生している。すなわち、組織に歪が生じていることから、穿刺針の位置を特定することができず5の(A)に示すように、穿刺針を示す情報を表示させることが可能である。
【0049】
一方、例えば、図5の(B)に示すように、矢印21の方向への進入が停止して、組織を押す力22が生じていない場合には、穿刺針の先端の位置がわからなくなる。すなわち、図5の(B)に示すように、穿刺針が停止した場合には、穿刺針を示す情報を描出しなくなる。
【0050】
そこで、画像データ生成部150は、穿刺針を描出した画像を生成した直後に、特徴量算出部142cによってすべての歪が所定の閾値を超えていないと判定された場合には、現時点で表示させている穿刺針を示す情報を描出した動画を継続して生成する。具体的には、画像データ生成部150は、穿刺針が停止した場合には、直前に生成した画像を継続して生成する。
【0051】
図6は、穿刺針の進入が停止した場合の画像データ生成部150の処理を説明するための図である。例えば、画像データ生成部150は、図6に示すように、穿刺針11bの矢印21の方向への進入が停止した場合には、過去の画像から歪の位置を取得して、取得した歪の位置に穿刺針を示す情報を描出した画像を生成する。
【0052】
次に、穿刺針が抜かれる場合について説明する。穿刺針が抜かれる場合には、穿刺針は一旦停止した後に、進入とは逆向きの力が発生する。すなわち、組織は穿刺針から押す力とは逆の力がかかることとなり、速度平均が負の値となる。そこで、画像データ生成部150は、過去に表示させた穿刺針を示す情報を継続して生成した後に、特徴量算出部142cによって進入時の歪とは異なる方向の歪が所定の閾値を超えたと判定された場合には、穿刺針の移動量と画像の特徴とに基づいて、現時点で表示させている穿刺針を示す情報を一部削除した画像を生成する。
【0053】
図7は、穿刺針が抜かれる場合の画像データ生成部150の処理を説明するための図である。例えば、画像データ生成部150は、図7に示すように、穿刺針11bが体表30の方向に抜かれる力25で抜かれた場合には、速度平均とパターンマッチングにより抜かれた領域を算出し、算出した領域に相当する穿刺針の情報を削除した画像を生成する。
【0054】
このように、カラー画像データ処理部142が、組織ドプラデータに含まれる速度成分、分散成分及びパワー成分に基づいて、組織の歪を算出し、算出した歪の位置を穿刺針の先端とすることで、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、標準的な超音波診断装置を用いた検査環境において穿刺針の視認性を向上させることを可能にする。なお、上述した第1の実施形態に係る超音波診断装置1において実行される速度平均及び歪みの算出については、種々の公知の手法を用いて実現するものであっても構わない。
【0055】
次に、図8を用いて、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の処理について説明する。なお、図8においては、穿刺針を用いた穿刺術が行われている場合の処理について示す。
【0056】
図8は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1による処理の手順を示すフローチャートである。図8に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1においては、穿刺針の視認性を向上させる機能が起動されると(ステップS101肯定)、速度平均抽出部142aは、組織ドプラデータから、サンプルごとの速度、分散、パワーを抽出する(ステップS102)。そして、速度平均抽出部142aは、速度平均を算出する(ステップS103)。
【0057】
その後、歪算出部142bは、全サンプルの歪を算出して(ステップS104)、歪が最大となる領域を穿刺針の先端と決定する(ステップS105)。そして、画像データ生成部150は、各フレームにおける穿刺針の先端の領域を繋げた画像を生成して、制御部170は、穿刺針として表示する(ステップS106)。
【0058】
そして、歪算出部142bは、速度平均が算出されるか否かを判定する(ステップS107)。ここで、速度平均が算出されなかった場合に(ステップS107否定)、画像データ生成部150は、穿刺針の動きが停止したと判定し、直近の穿刺針の位置に穿刺針を示す情報を描出した画像を生成し、制御部170は、生成された画像を表示させる(ステップS108)。
【0059】
その後、歪算出部142bは、速度平均が負の値を示すか否かを判定する(ステップS109)。ここで、速度平均が負の値を示す場合には(ステップS109肯定)、画像データ生成部150は、穿刺針が抜かれていると判定し、速度平均とパターンマッチングにより穿刺針が抜かれた領域を算出して、算出した領域の穿刺針を削除した画像を生成し、制御部170は、生成された画像を表示させる(ステップS110)。
【0060】
その後、歪算出部142bは、速度平均が算出されるか否かを判定する(ステップS111)。ここで、速度平均が算出される場合には(ステップS111肯定)、画像データ生成部150は、ステップS110に戻って、処理を継続する。一方、速度平均が算出されない場合には(ステップS111否定)、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、穿刺針が完全に抜かれたと判定して(ステップS112)、処理を終了する。
【0061】
上述したように、第1の実施形態によれば、歪算出部142bは、超音波画像の画素ごとに、当該超音波画像に描出された被検体の組織の歪を算出する。そして、特徴量算出部142cは、歪算出部142bによって画素ごとに算出された歪が所定の閾値を超えるか否かを判定する。そして、制御部170は、特徴量算出部142cによって歪が所定の閾値を超えたと判定された判定画素の位置に穿刺針を示す情報を表示させる画像を生成する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、標準的な超音波診断装置を用いた検査環境において穿刺針の視認性を向上させることを可能にする。
【0062】
また、第1の実施形態によれば、制御部170は、穿刺針を示す情報として、判定画素の位置を強調させた強調画像、又は、判定画素の位置を強調させるとともに当該判定画素に描出された組織が透過される透過画像を表示させる。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、超音波画像に描出された部位を隠すことなく穿刺針を表示させることを可能にする。
【0063】
また、第1の実施形態によれば、制御部170は、穿刺針を示す情報を表示した直後に、特徴量算出部142cによってすべての歪が所定の閾値を超えていないと判定された場合には、現時点で表示させている穿刺針を示す情報を継続して表示させる。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、穿刺針の進入が停止した場合でも、操作者に穿刺針の位置情報を提供することを可能にする。
【0064】
また、第1の実施形態によれば、特徴量算出部142cは、歪算出部142bによって算出された歪が穿刺針の移動に起因する歪であるか否かをさらに判定し、穿刺針の移動に起因する歪であると判定した場合に、当該歪が所定の閾値を超えるか否かを判定する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、穿刺針の位置を効率よく特定することを可能にする。
【0065】
また、第1の実施形態によれば、制御部170は、過去に表示させた穿刺針を示す情報を継続して表示させた後に、特徴量算出部142cによって歪とは異なる方向の歪が所定の閾値を超えたと判定された場合には、穿刺針の移動量と画像の特徴とに基づいて、現時点で表示させている穿刺針を示す情報の表示を終了させる。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、穿刺針が抜かれる場合でも、操作者に穿刺針の位置情報を提供することを可能にする。
【0066】
(第2の実施形態)
さて、これまで第1の実施形態について説明したが、上述した第1の実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0067】
(1)歪を算出する範囲
上述した第1の実施形態では、フレームにおけるすべてのサンプルの歪を算出する場合について説明した。しかしながら、開示の技術はこれに限定されるものではなく、例えば、操作者によって指定された範囲内のサンプルの歪を算出する場合であってもよい。
【0068】
具体的には、歪算出部142bは、超音波画像の任意の範囲に含まれる所定の領域ごとに、当該所定の領域に描出された組織の歪を算出する。図9は、歪を算出する領域の変形例を説明するための図である。例えば、歪算出部142bは、図9に示すように、穿刺ガイド11cの間の領域11dに含まれる画素に描出された組織の歪を算出する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、穿刺針の位置を特定するための処理負荷を軽減することを可能にする。
【0069】
(2)歪の算出対象となる領域
上述した第1の実施形態では、画素ごとに歪を算出する場合について説明した。しかしながら、開示の技術はこれに限定されるものではなく、例えば、超音波画像の任意の領域ごとに歪みを算出する場合であってもよい。
【0070】
以上説明したとおり、第1の実施形態及び第2の実施形態によれば、本実施形態の超音波診断装置は、標準的な超音波診断装置を用いた検査環境において穿刺針の視認性を向上させることを可能にする。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0072】
1 超音波診断装置
11 超音波プローブ
11a 穿刺アダプタ
11b 穿刺針
12 入力装置
13 モニタ
100 装置本体
142a 速度平均抽出部
142b 歪算出部
142c 特徴量算出部
170 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波画像の所定の領域ごとに、当該超音波画像に描出された被検体の組織の歪を算出する算出手段と、
前記算出手段によって所定の領域ごとに算出された歪が所定の閾値を超えるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって歪が所定の閾値を超えたと判定された判定領域の位置に穿刺針を示す情報を表示させる表示制御手段と、
を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記表示制御手段は、前記穿刺針を示す情報として、前記判定領域の位置を強調させた強調画像、又は、前記判定領域の位置を強調させるとともに当該判定領域に描出された組織が透過される透過画像を表示させることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記算出手段は、組織ドプラ法及び前記超音波画像の特徴比較のどちらか一方を用いて前記歪を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記表示制御手段は、穿刺針を示す情報を表示した直後に、前記判定手段によってすべての歪が前記所定の閾値を超えていないと判定された場合には、現時点で表示させている穿刺針を示す情報を継続して表示させることを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記算出手段によって算出された歪が穿刺針の移動に起因する歪であるか否かをさらに判定し、穿刺針の移動に起因する歪であると判定した場合に、当該歪が所定の閾値を超えるか否かを判定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記表示制御手段は、過去に表示させた穿刺針を示す情報を継続して表示させた後に、前記判定手段によって前記歪とは異なる方向の歪が前記所定の閾値を超えたと判定された場合には、前記穿刺針の移動量と画像の特徴とに基づいて、現時点で表示させている穿刺針を示す情報の表示を終了させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記算出手段は、前記超音波画像の任意の範囲に含まれる前記所定の領域ごとに、当該所定の領域に描出された被検体の組織の歪を算出することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の超音波診断装置。
【請求項8】
超音波画像の所定の領域ごとに、当該超音波画像に描出された被検体の組織の歪を算出する算出手順と、
前記算出手順によって所定の領域ごとに算出された歪が所定の閾値を超えるか否かを判定する判定手順と、
前記判定手順によって歪が所定の閾値を超えたと判定された判定領域の位置に穿刺針を示す情報を表示させる表示制御手順と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする表示制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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