説明

超音波診断装置

【課題】 超音波診断装置に関する各種パラメータの値を自動記憶し管理することで、過去の任意のパラメータの値を検索し再現する超音波診断装置を提供する。
【解決手段】 パラメータ管理部29による管理のもと、超音波診断装置の動作に関係する電気的パラメータ、機械的パラメータ、物理的パラメータその他の制御パラメータの値に関する設定指示又は変更指示に応答して、及び任意の時間間隔で定期的に、設定又は変更されたパラメータの値を、指標及び時間情報と関連付けて自動的に記憶部28に記憶する。記憶されたパラメータの値は、所望の指標に基づいてパラメータ管理部29によって検索される。制御プロセッサ27は、検索されたパラメータの値を利用して、過去のパラメータの値を再現する制御を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置の動作において発生する各イベントに関するパラメータの値の記録、読み出しに関するものであり、特に、検査者が意識的にパラメータの値を記録することなく、以前に設定した画像条件等を再設定させることが可能な超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は超音波パルス反射法により、体表から生体内の軟組織の断層像を無侵襲に得る医療用画像機器である。この超音波診断装置は、他の医療用画像機器に比べ、小型で安価、X線などの被爆がなく安全性が高い、血流イメージングが可能等の特長を有し、心臓、腹部、泌尿器、および産婦人科などで広く利用されている。
【0003】
この超音波画像診断装置により撮影する場合や、取得した超音波画像データに基づいて診断画像を表示する場合等においては、種々のパラメータの値を設定する必要がある。
【0004】
例えば、受信するエコー信号はその反射源プローブの送信面から遠ざかるほど減衰等の影響を受けるため、診断部位が深くなればなるほどその超音波画像は暗く表示される傾向がある。また、限られた送信数からの画像生成は画像全体の認識性を下げる。このため、検査者は、検査に適した画像データを取得できるように、装置の送信周波数、受信信号の利得(ゲイン)、STCボリューム、各種フィルタ等のパラメータを調整する。また、画像診断に最適とされる画像は検査者や検査部位、被験者の状態によって様々な変化をしている。従って、検査者は、診断に好適な画質を実現するため、適宜画質を調整するためのパラメータ(画質パラメータ)を調整する。
【0005】
ところで、従来の超音波診断装置において、上記画像撮影段階、画像表示段階のそれぞれにおいて設定されたパラメータの値を記録しておきたい場合には、(1)意識的に所定の操作によって各パラメータの値を記録する。(2)表示された画像(静止画又は所定期間の動画像)を設定されたパラメータの値と共に保存する。といった手法が採用されている。
【0006】
しかしながら、従来の超音波診断装置においては、次の様な問題がある。
【0007】
まず、設定されたパラメータの値を保存するためには、検査者が意図的に所定の操作をしなければならない。従って、撮影や画質調整以外にパラメータの値保存のための操作がさらに必要となり、検査者の作業負担は大きい。
【0008】
また、例えば最適な画像を得ようとパラメータの値を変更した後に、変更前のパラメータの値の方が優れていたと判断した場合、又は過去の画像を呼び出して事後的に観察する場合には、保存の為の操作を実施していなければ、検査者の記憶を頼りに変更前のパラメータの値に戻す以外に方法はない。そのため、操作者は、再度変更前の所望のパラメータの値を検討しなければならず、操作性に欠けることがある。
【0009】
なお、本願に関連する公知文献としては、次の様なものがある。
【特許文献1】特開2000−152928号公報
【特許文献2】特開2001−128969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、超音波診断装置に関する各種パラメータの値を自動的に記憶しこれを管理することで、過去の任意のパラメータの値を検索し再現することができる超音波診断装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
【0012】
本発明の第1の視点は、被検体に対して超音波を送信し、当該送信超音波に基づいて前記被検体から得られるエコー信号を用いて超音波画像を生成する超音波診断装置であって、前記送信超音波に影響を与える電気的パラメータ、機械的パラメータ、物理的パラメータその他の制御パラメータの値、及び前記エコー信号に関する処理に影響を与える電気的パラメータ、機械的パラメータ、物理的パラメータその他の制御パラメータの値の少なくとも一方に関する設定指示又は変更指示を入力するための入力手段と、前記入力手段によるパラメータの値の設定指示又は変更指示を検出する検出手段と、前記検出手段による検出に応答して、前記設定又は変更されたパラメータの値を少なくとも一つの指標及び時間情報と関連付けて記憶する記憶手段と、を具備することを特徴とする超音波診断装置である。
【0013】
本発明の第2の視点は、被検体に対して超音波を送信し、当該送信超音波に基づいて前記被検体から得られるエコー信号を用いて超音波画像を生成する超音波診断装置であって、過去の撮影において使用されたパラメータの値であって、前記送信超音波に影響を与える電気的パラメータ、機械的パラメータ、物理的パラメータその他の制御パラメータの値、及び前記エコー信号に関する処理に影響を与える電気的パラメータ、機械的パラメータ、物理的パラメータその他の制御パラメータの値の少なくとも一方を、少なくとも一つの指標及び時間情報と関連付けて記憶する記憶手段と、所定の操作に応答して、前記少なくとも一つの指標の中から選択された所定の指標に該当するパラメータの値を、前記記憶手段から検索する検索手段と、前記検索の結果、選択された所定の指標に該当する少なくとも一つのパラメータの値が存在する場合には、当該検索された少なくとも一つのパラメータの値を提示する提示手段と、を具備する超音波診断装置である。
【発明の効果】
【0014】
以上本発明によれば、超音波診断装置に関する各種パラメータの値を自動的に記憶しこれを管理することで、過去の任意のパラメータの値を検索し再現することができる超音波診断装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0016】
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置10のブロック構成を示した図である。同図に示すように、本超音波診断装置10は、超音波プローブ12、入力装置13、モニタ14、送受信ユニット21、Bモード処理ユニット22、ドプラ処理ユニット23、画像生成回路25、画像メモリ26、制御プロセッサ27、記憶部28、パラメータ管理部29、インタフェース部30を具備している。以下、個々の構成要素の機能について説明する。
【0017】
超音波プローブ12は、超音波送受信ユニット21からの駆動信号に基づき超音波を発生し、被検体からの反射波を電気信号に変換する複数の圧電振動子、当該圧電振動子に設けられる整合層、当該圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有している。当該超音波プローブ12から被検体Pに超音波が送信されると、当該送信超音波は、体内組織の音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、エコー信号として超音波プローブ12に受信される。このエコー信号の振幅は、反射することになった反射することになった不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。また、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合のエコーは、ドプラ効果により移動体の超音波送信方向の速度成分を依存して、周波数偏移を受ける。
【0018】
入力装置13は、装置本体11に接続され、オペレータからの各種パラメータの値の設定及び変更指示、関心領域(ROI)の設定指示等を装置本体11にとりこむための各種スイッチ、ボタン、トラックボール13s、マウス13c、キーボード13d等を有している。
【0019】
モニタ14は、画像生成回路25からのビデオ信号に基づいて、生体内の形態学的情報や、血流情報を画像として表示する。
【0020】
送受信ユニット21は、図示しないトリガ発生回路、遅延回路およびパルサ回路等を有している。パルサ回路では、所定のレート周波数fr Hz(周期;1/fr秒)で、送信超音波を形成するためのレートパルスが繰り返し発生される。また、遅延回路では、チャンネル毎に超音波をビーム状に集束し且つ送信指向性を決定するのに必要な遅延時間が、各レートパルスに与えられる。トリガ発生回路は、このレートパルスに基づくタイミングで、プローブ12に駆動パルスを印加する。
【0021】
なお、送受信ユニット21は、制御プロセッサ27の指示に従って後述するスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数。送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に送信駆動電圧の変更については、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0022】
また、送受信ユニット21は、図示していないアンプ回路、A/D変換器、加算器等を有している。アンプ回路では、プローブ12を介して取り込まれたエコー信号をチャンネル毎に増幅する。A/D変換器では、増幅されたエコー信号に対し受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与え、その後加算器において加算処理を行う。この加算により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
【0023】
Bモード処理ユニット22は、送受信ユニット21からエコー信号を受け取り、対数増幅、包絡線検波処理などを施し、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータを生成する。このデータは、画像生成回路25に送信され、反射波の強度を輝度にて表したBモード画像としてモニタ14に表示される。
【0024】
ドプラ処理ユニット23は、送受信ユニット21から受け取ったエコー信号から速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の血流情報を多点について求める。得られた血流情報は画像生成回路25に送られ、平均速度画像、分散画像、パワー画像、これらの組み合わせ画像としてモニタ14にカラー表示される。
【0025】
画像生成回路25は、信号処理回路、スキャンコンバータ、イメージフォーマッタ(それぞれ図示せず)を有している。まず、信号処理回路は、超音波スキャンの走査線信号列のレベルで画質を決定するようなフィルタリングを行う。信号処理回路の出力はスキャンコンバータに送られると同時に、画像メモリ26に保存される。スキャンコンバータは、超音波スキャンの走査線信号列から、テレビなどに代表される一般的なビデオフォーマットの走査線信号列に変換する。この出力はイメージフォーマッタへ送られ、ここでは、輝度やコントラストの調整や、空間フィルタなどの画像処理、もしくは種々の設定パラメータの文字情報や目盛などと共に合成され、ビデオ信号としてモニタ14に出力する。
【0026】
画像メモリ26は、画像生成回路25から受信した画像データを格納する記憶メモリから成る。この画像データは、例えば診断の後に操作者が呼び出すことが可能となっており、静止画的に、あるいは複数枚を使って動画的に再生することが可能でなる。
【0027】
制御プロセッサ27は、情報処理装置(計算機)としての機能を持ち、本超音波診断装置本体の動作を静的又は動的に制御する。
【0028】
パラメータ管理部29は、本超音波診断装置において発生するイベントに関するパラメータの値を時間情報と共に自動記憶し、事後的に読み出して再生するパラメータ管理を実行する。このパラメータ管理部29によって実現されるパラメータ管理機能については、後で詳しく説明する。
【0029】
図2は、パラメータ管理部29の構成を示したブロック図である。同図に示すように、パラメータ管理部29は、パラメータ設定モニタリング部291、パラメータ設定検索部293、パラメータ履歴情報記憶部295を有している。
【0030】
パラメータ設定モニタリング部291は、入力装置13からのパラメータ変更操作をモニタリングし、変更操作があった場合には、変更後のパラメータの値をパラメータ履歴情報記憶部295に送り出す。
【0031】
パラメータ履歴情報記憶部295は、パラメータ設定モニタリング部291が変更操作等有りと判定した場合には、所定の指標と関連付けて変更後のパラメータの値を自動的に記憶する。
【0032】
パラメータ設定検索部293は、パラメータ履歴情報記憶部295に格納された情報を、所定の指標及び時間情報に基づいて検索する。
【0033】
インタフェース部30は、入力装置13、ネットワーク、新たな外部記憶装置(図示せず)に関するインタフェースである。当該装置によって得られた超音波画像等のデータや解析結果等は、インタフェース部30よって、ネットワークを介して他の装置に転送可能である。
【0034】
(パラメータ管理機能)
次に、本超音波診断装置10が有するパラメータ管理機能について説明する。本管理機能は、パラメータ設定自動記憶機能と、パラメータ設定検索再現機能とに大きく分類することができる。以下、それぞれについて説明する。
【0035】
a.パラメータ設定自動記憶機能
パラメータ設定自動記憶機能は、所定のパラメータの設定値を、所定の指標と対応付けて自動的に記憶する機能である。記憶の対象となるパラメータ(記憶対象パラメータ)は、当該超音波診断装置の動作制御の際に設定され、且つ超音波画像の画質に影響を与えるもののうち、検査者が選択した任意のパラメータである。具体的には、「超音波送受信に必要とされるパラメータ群」、「信号処理に必要とされるパラメータ群」、「画像表示に必要とされるパラメータ群」等である。また、検査者が自動記憶の対象として選択するパラメータ群は、必要に応じて「送信周波数」、「MI(Mechanical Index)値」、「対象深度(depth)」、「焦点(focus)」「受信信号の利得(gain)」、「STCボリューム」、「各種フィルタ値」といった具合に、記憶対象パラメータをさらに細かい単位で個別に選択することも可能である。
【0036】
また、記憶対象パラメータと対応付けられる指標とは、記憶対象パラメータの検索を目的として体系化するためのものであり、例えば、患者ID、検査者ID、検査番号、検査日時、診療科名、診断部位、疾患名その他の任意の管理上の概念である。検査者は、所望の指標を少なくとも一つ選択することで、記憶対象パラメータを当該指標によって管理することができる。
【0037】
なお、本実施形態においては、説明を具体的にするため、患者毎に実施される超音波診断において、超音波診断装置の動作に必要な全ての機械的若しくは電気的又は物理的パラメータを記憶対象パラメータとする。また、記憶対象パラメータと対応付けられる指標として、患者ID(医師や技師のID)、検査者ID、検査番号、検査日時を選択するものとする。
【0038】
本自動記憶は、スイッチ・ボタン13bのある特定のスイッチやボタン等(例えば、新たな(変更後の)パラメータ値を入力し、その値の確定を指示するための「SET」ボタン等や、検査ルーチンで頻繁に利用される所定のキー等)が押された場合に、これをトリガとして実施される。また、これと合わせて、ある一定の(任意の)時間間隔で定期的に自動記憶する、或いは、所定期間操作パネルのキー入力が実行されない場合には、自動的に記憶する。この様に、スイッチ等の操作とは関係なく定期的な自動記憶を行うことで、パラメータ変更のない撮影中の設定や、検査のために継続して使用されたパラメータの値が、パラメータ履歴情報記憶部295内に順次格納される。
【0039】
図3は、パラメータ履歴情報記憶部295に格納された記憶対象パラメータの一例を示した図である。同図に示すように、送信周波数等の各種パラメータが、所定の指標(患者ID、検査者ID、検査番号、検査日時)と関連付けられ、時間情報と共に記憶される。以下、この様に所定患者の所定の検査において指標と関連付けて記憶された一連の(時系列的な)記憶対象パラメータの設定値を「パラメータ履歴情報」と呼ぶ。
【0040】
なお、必要に応じて、記憶するパラメータの値に対応する超音波画像を、サムネイル画像としてパラメータ履歴情報に含めて記憶する構成であってもよい。
【0041】
図4は、新たなパラメータ値が入力され、その値の確定を指示する操作が実行された場合の自動記憶処理のシーケンス図である。まず、ユーザにより入力装置13から変更されたパラメータ値の確定を指示する入力が実行されると、インタフェース部30は、パラメータ変更イベントを制御プロセッサ27に送信する。制御プロセッサ27は、受信したパラメータ変更イベントに従って、パラメータの値の変更を行うと共に、パラメータの値の変更情報(変更後のパラメータの値)をパラメータ管理部29に、パラメータ変更イベント送信をインタフェース部30に送信する。
【0042】
パラメータ管理部29のパラメータ設定モニタリング部291は、パラメータの値の変更情報を受信し、受信した情報が記憶対象パラメータに該当するか否かを判定する。記憶対象パラメータに該当すると判定した場合には、パラメータ設定モニタリング部291は、パラメータの値の変更情報をパラメータ履歴情報記憶部295に送り出す。パラメータ履歴情報記憶部295は、受け取ったパラメータの値の変更情報を時刻情報及び指標と対応付け、パラメータ履歴情報として保存する。
【0043】
b.パラメータ設定検索及び再現機能
次に、パラメータ履歴情報記憶部295に格納された複数のパラメータの値の中から所望のものを選び出す検索機能、及び選び出されたパラメータの値を再現する再現機能について説明する。
【0044】
まず、検索機能について説明する。本超音波診断装置によれば、所定の指標を利用して、履歴情報記憶部295に格納された複数のパラメータ履歴情報から所望のものを選び出すことができる。検索に利用できる指標は、記憶対象パラメータとの対応付けに使用したもの(本実施形態では、患者ID、検査者ID、検査番号、検査日時)のうちの少なくとも一つ、又はこれらの組み合わせである。
【0045】
図5は、本検索機能において提示される検索画面の一例を示した図である。例えば、「患者ID」を指標として検索する場合には、図5に示す検索画面において「患者ID」の指標に対応するアイコン「Patient Old Setting」をクリックし、所定の患者IDを入力又は選択する。これにより、当該患者(患者ID)について実行された履歴情報記憶部295内の過去のパラメータ履歴情報が検索され、モニタ14に表示される。また、例えば指標を「検査日時」とした検索を行う場合にはアイコン「Time」を、さらに指標「検査番号」とした検索を行う場合にはアイコン「Operation number」をそれぞれクリックし、所定の操作を行うことによって対応するパラメータ履歴情報を検索することができる。
【0046】
なお、この検索は、検索に使用された指標に該当するパラメータ履歴情報を全て提示するように実行される。例えば、「患者ID」を指標とした場合には、検査者や診断部位の違いに関係なく、同一の患者IDに該当するものであれば、それら全てのパラメータ履歴情報が検索され、提示される。さらなる絞り込み検索を希望する場合には、「患者ID及び検査者ID」といった複合的な指標による検索、さらに、特定の「患者ID」に該当するパラメータ履歴情報を検索した後、他の指標による絞込み検索を実行すればよい。
【0047】
この様に所定の指標を用いて検索されたパラメータ履歴情報は、例えば図6に示すように、当該パラメータ履歴情報を構成する一連のパラメータの値が時系列的に配列された形態にて、モニタ14から操作者に提示される。
【0048】
次に、パラメータ設定再現機能について説明する。パラメータ設定再現機能は、検索されたパラメータ履歴情報を構成する各パラメータの値を利用して、過去の任意の時刻におけるパラメータの値を再現するものである。
【0049】
例えば、過去のどの時刻おけるパラメータの値を再現するのか、操作者が予め把握している場合には、例えば図6に示す提示画面において、所望の時刻に対応するアイコン(例えば、2003年7月25日15時10分00秒に対応するアイコン)を選択(クリック)する。これにより、検索されたパラメータ履歴情報に基づき、同時刻に設定されていたパラメータの値が現在の撮影において自動的に設定される。
【0050】
また、各時刻のパラメータの値を確認しながら使用するパラメータの値を選択したい場合、或いは一度選択し再現したパラメータの値を変更したい場合には、例えば図6に示した各時刻でのパラメータの値に対応する各アイコン、又は先送り/逆送り、REDO/UNDOといったアイコンをクリックする。これにより、現在再現中のパラメータの値は、他のパラメータの値、又は一つ前や一つ後の時刻でのパラメータの値(今の場合、一つ前の2003年7月25日15時05分00秒での設定や、一つ後の2003年7月25日15時15分00秒における設定)に変更される。
【0051】
さらに、操作性を向上させる観点から、必要に応じて記憶したパラメータ履歴情報としてのサムネイル画像を表示し、これに基づいて所望のパラメータの値を探し出すようにしてもよい。
【0052】
図7は、サムネイル画像を利用して、検索されたパラメータ履歴情報から所望のパラメータの値を探し出す場合の画面表示例を示した図である。図7に示すように、現在撮影中の超音波画像と同時に、所定のパラメータの値に対応する(例えば、2003年7月25日15時10分00秒に対応する)サムネイル画像を表示する。表示されたサムネイル画像は、先送り/逆送り、REDO/UNDOといったアイコンをクリックすることにより、他の時刻のパラメータの値や、一つ前や一つ後の時刻のパラメータの値に対応するものに変更させることができる。操作者は、このサムネイル画像によって所望のパラメータの値を探し出し、所定の操作を行うことで、選択したサムネイル画像に対応するパラメータの値を、自動的的に現在の撮影におけるパラメータの値に反映させることができる。
【0053】
また、図8に示すように、例えば時系列的に配列された複数のサムネイル画像とスクロールバーとを現在撮影中の画像と共に表示し、スクロールバーによってサムネイル画像をめくり、所望の画像を選び出す構成であってもよい。
【0054】
この手法によれば、検索された各パラメータ履歴情報に対応する設定をひとつひとつ実行せずとも、操作者は対応するサムネイル画像を観察することで、その内容を確認することができる。
【0055】
図9は、パラメータ設定検索及び再現処理のシーケンス図である。まず、ユーザにより入力装置13から、例えば図5に示した所定の指標に対応するアイコンがクリック(選択)されると、インタフェース部30は、当該指標に対応するパラメータ履歴情報の要求をパラメータ管理部29に送信する。
【0056】
パラメータ管理部29のパラメータ設定検索部293は、パラメータ履歴情報記憶部295から選択された指標に該当するパラメータ履歴情報を検索する。検索されたパラメータ履歴情報は読み出され、制御プロセッサ27の制御のもと、モニタ14を介して例えば図6に示す形態にて操作者に提示される。
【0057】
次に、ユーザにより入力装置13から例えば図6に示した所定のパラメータの値に対応するアイコンが選択されると、インタフェース部30は、選択された時刻に対応するパラメータの値の要求をパラメータ管理部29に送信する。
【0058】
パラメータ管理部29は、選択された時刻に対応するパラメータ履歴情報をパラメータ履歴情報記憶部295から読み出し、制御プロセッサ27に送信する。制御プロセッサ27は、読み出されたパラメータの値を受け取り、当該パラメータの値と同一の内容に現在のパラメータの値を変更する(パラメータの値の再現)。
【0059】
(動作)
次に、本超音波診断装置10のパラメータ管理機能を実行する場合の動作について説明する。
【0060】
図10は、本超音波診断装置10のパラメータ管理機能(自動記憶機能)を実行する場合の処理の流れを示したフローチャートである。
【0061】
まず、所定の操作によって本超音波診断装置を起動させ、記憶対象パラメータと対応させる指標を入力する(ステップS1)。指標の入力が実行されると、初期設定がある場合には、当該初期設定が指標と関連付けて時間情報と共に記憶される(ステップS2)。
【0062】
次に、パラメータ設定モニタリング部291は、例えば「SET」等の特定キー操作によるパラメータの値の変更が実行されるか否かをモニタリングし(ステップS3)、変更された場合には、変更後のパラメータの値が記憶対象パラメータであることを確認し、記憶する(ステップS4)。
【0063】
一方、ステップS3において、特定キー操作によるパラメータ変更が実行されない場合、及びステップS4において変更後のパラメータの値を記憶した場合には、パラメータ設定モニタリング部291は、前回のパラメータ変更操作からパラメータ変更がなされていない状態が所定時間(基準時間T)だけ経過したか否かを判定する(ステップS5)。ステップS5において基準時間T経過していると判定した場合には、現在のパラメータの値を自動的に記憶する(ステップS6)。
【0064】
一方、ステップS5において基準時間T経過していないと判定した場合、又はステップS5において現在のパラメータの値を記憶した場合には、撮影動作を終了するか否かを判定し(ステップS7)、撮影を終了しない場合には、ステップS3からの処理が繰り替えされる。
【0065】
図11は、本超音波診断装置10のパラメータ管理機能(検索機能及び再設定機能)を実行する場合の処理の流れを示したフローチャートである。
【0066】
まず、所定の操作によって、検索に利用する指標が選択されると(ステップS11)、パラメータ設定検索部293は、パラメータ履歴情報記憶部295から選択された指標に該当するパラメータ履歴情報を読み出す(ステップS12)。読み出されたパラメータ履歴情報は、例えば図6に示す形態にてモニタ14に表示される(ステップS13)。
【0067】
次に、パラメータ設定モニタリング部291は、検査者より所定の検索キーによる検索操作がなされたか否かを判定する(ステップS14)。ステップS14において検索操作(例えば、所望するパラメータの値に対応するアイコンのクリック)が実行された場合には、パラメータ設定検索部293は、パラメータ履歴情報記憶部295から該当するパラメータの値を読み出す(ステップS15)。制御プロセッサ27は、読み出されたパラメータの値が再現される様に、各ユニットを制御する(ステップS16)。
【0068】
次に、検索/再現処理の終了操作が実行された場合には、当該再現処理を終了し、一方、終了操作が実行されない場合にはステップS13に戻り、同様の処理が繰り返される(ステップS17)。
【0069】
以上述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
【0070】
本超音波診断装置によれば、検査ルーチンで頻繁に利用される所定のキー等が押された場合に、これをトリガとして自動的に現在のパラメータの値を所定の指標及び時間情報と対応付けて記憶することができる。また、これと合わせて、ある一定の時間間隔で定期的に現在のパラメータの値が自動的に記憶される。従って、操作者は、記憶のために特別な操作を行う必要が無いため、パラメータの値の記憶をし忘れをなくすことができ、また、超音波診断における作業負担を軽減することができる。
【0071】
特に、従来の超音波診断装置においては、異なるモードにまたがる操作を行った場合、例えばBモード検査からMモード検査に移行し、再度Bモードに戻った場合には、前回のBモード撮影において利用したパラメータの値は、意識的な記録をしておかないと保存されていない。これに対し、本超音波診断装置では、意識的な記録をしなくても自動的にパラメータの値が記録されるため、これを呼び出すことで、過去の所望のパラメータの値を再現することができる。
【0072】
また、本超音波診断装置によれば、使用したパラメータの値を対応付ける指標を、所望のものに設定することができる。従って、操作者は、記憶された過去のパラメータの値及びパラメータ履歴情報を、所望の指標にて管理することができる。
【0073】
また、本超音波診断装置によれば、記憶された過去のパラメータの値の中から、患者ID、検査者ID、検査番号、検査日時といった任意の指標を利用して、所望のパラメータの値を迅速に検索することができる。検索されたパラメータの値は、クリック等の簡単な操作によって、容易且つ迅速に現在の装置設定に反映させることができる。これにより、過去のパラメータを所望のタイミングで再現することができる。また、同一患者に対し期間を空けて同一症例の検査を行う場合や、同一症例の複数患者を対象とした検査を行う場合等において、作業のスループットを向上させることができ、検査者、被検査者の精神的・身体的負担を軽減させることができる。
【0074】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る超音波診断装置ついて説明する。本超音波診断装置は、現在行っている撮影シーケンスにおいて利用されたパラメータの値を時系列に配列し、検査者に対してパラメータ履歴情報として提供するものである。
【0075】
すなわち、パラメータ設定モニタリング部291は、現在実行中の撮影において、パラメータの値の変更操作に応答して又は定期的に現在のパラメータの値を取得し、これを逐次パラメータ履歴情報記憶部295に送り出す。送り出されたパラメータの値は、時間情報と共にパラメータ履歴情報記憶部295に自動記憶される。
【0076】
従って、例えば検査番号や検査日時等の指標により、現在実行中の撮影に対応するパラメータ履歴情報を検索し表示することで、現在実行中の撮影において用いられた過去のパラメータの値の履歴情報を、例えば図6の形態にて提示させることができる。操作者は、例えば対応するアイコンをクリックするのみで、本撮影における過去のパラメータの値を簡易且つ迅速に復元することができる。
【0077】
また、操作性向上の観点から、現在実行中の撮影においては上記検索動作をせずとも、所定の簡便な操作により、現在実行中の撮影において用いられた過去のパラメータの値の履歴情報を提示できる構成としてもよい。
【0078】
以上述べた構成によれば、現在行っている撮影シーケンスにおいて変更前のパラメータの値に戻したい場合(例えば、操作者が意図せず画質を落とす調整をしてしまった場合等)であっても、簡易な操作を行うのみで、所望のパラメータの値を復元させることができる。従って、操作者は、パラメータ変更による画質低下を意識する必要がなくパラメータの調整を行うことができ、操作者の精神的、作業的負担を軽減することができる。また、必ず過去のパラメータの値を復元できるので、常に一定以上の画質を保証することができ、その結果、好適な診断画像を常に提供することができる。
【0079】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば、従来の超音波診断装置では、頻度の極めて高いパラメータの値をプリセットとして保存することができる。この機能と、本超音波診断装置の自動記憶機能とを組み合わせることにより、任意の過去のパラメータの値をプリセットとして保存できる構成であってもよい。
【0080】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1は、本実施形態に係る超音波診断装置10のブロック構成を示した図である。
【図2】図2は、パラメータ管理部29の構成を示したブロック図である。
【図3】図3は、パラメータ履歴情報記憶部295が記憶するパラメータ履歴情報の一例を示した図である。
【図4】図4は、パラメータ設定自動記憶処理のシーケンス図である。
【図5】図5は、本検索機能において提示される検索画面の一例を示した図である。
【図6】図6は、所定の指標を用いて検索されたパラメータ履歴情報を提示する画面の一例を示した図である。
【図7】図7は、サムネイル画像を利用して所望のパラメータの値を探し出す場合の画面表示例を示した図である。
【図8】図8は、サムネイル画像を利用して所望のパラメータの値を探し出す場合の画面表示の他の例を示した図である。
【図9】図9は、パラメータ設定検索及び再現処理のシーケンス図である。
【図10】図10は、本超音波診断装置10のパラメータ管理機能(自動記憶機能)を実行する場合の処理の流れを示したフローチャートである。
【図11】図11は、本超音波診断装置10のパラメータ管理機能(検索機能及び再設定機能)を実行する場合の処理の流れを示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0082】
10…超音波診断装置、12…超音波プローブ、13…入力装置、14…モニタ、21…送受信ユニット、22…Bモード処理ユニット、23…ドプラ処理ユニット、25…画像生成回路、26…画像メモリ、27…制御プロセッサ、28…記憶部、29…パラメータ管理部、30…インタフェース部、291…パラメータ設定モニタリング部、293…パラメータ設定検索部、295…パラメータ履歴情報記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対して超音波を送信し、当該送信超音波に基づいて前記被検体から得られるエコー信号を用いて超音波画像を生成する超音波診断装置であって、
前記送信超音波に影響を与える電気的パラメータ、機械的パラメータ、物理的パラメータその他の制御パラメータの値、及び前記エコー信号に関する処理に影響を与える電気的パラメータ、機械的パラメータ、物理的パラメータその他の制御パラメータの値の少なくとも一方に関する設定指示又は変更指示を入力するための入力手段と、
前記入力手段によるパラメータの値の設定指示又は変更指示を検出する検出手段と、
前記検出手段による検出に応答して、前記設定又は変更されたパラメータの値を少なくとも一つの指標及び時間情報と関連付けて記憶する記憶手段と、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記記憶手段は、前記検出手段による検出に応答した記憶に加えて、任意の時間間隔で定期的に、前記設定又は変更されたパラメータの値を少なくとも一つの指標及び時間情報と関連付けて記憶することを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記少なくとも一つの指標を指定する指標指定手段をさらに具備し、
前記記憶手段は、前記指標指定手段によって指定された指標と関連づけて、前記設定又は変更されたパラメータの値を記憶することを特徴とする請求項1又は2記載の超音波診断装置。
【請求項4】
所定の操作に応答して、前記少なくとも一つの指標の中から選択された所定の指標に関連付けられたパラメータの値を、前記記憶手段から検索する検索手段と、
前記検索の結果、選択された所定の指標に該当する少なくとも一つのパラメータの値が存在する場合には、当該検索された少なくとも一つのパラメータの値を提示する提示手段と、
を具備することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記入力手段により、前記提示された少なくとも一つのパラメータの値の中から、所定の操作によって所定のパラメータの値が選択された場合には、当該選択された所定のパラメータの値を用いた制御を実行する制御手段をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記入力手段により、現在のパラメータの値を過去の所定時刻におけるパラメータの値に変更するための変更指示が入力された場合には、記憶された前記設定又は変更されたパラメータの値に基づいて、前記過去の所定時刻パラメータの値を用いた制御を実行する制御手段をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項7】
被検体に対して超音波を送信し、当該送信超音波に基づいて前記被検体から得られるエコー信号を用いて超音波画像を生成する超音波診断装置であって、
過去の撮影において使用されたパラメータの値であって、前記送信超音波に影響を与える電気的パラメータ、機械的パラメータ、物理的パラメータその他の制御パラメータの値、及び前記エコー信号に関する処理に影響を与える電気的パラメータ、機械的パラメータ、物理的パラメータその他の制御パラメータの値の少なくとも一方を、少なくとも一つの指標及び時間情報と関連付けて記憶する記憶手段と、
所定の操作に応答して、前記少なくとも一つの指標の中から選択された所定の指標に関連付けられたパラメータの値を、前記記憶手段から検索する検索手段と、
前記検索の結果、選択された所定の指標に該当する少なくとも一つのパラメータの値が存在する場合には、当該検索された少なくとも一つのパラメータの値を提示する提示手段と、
を具備する超音波診断装置。
【請求項8】
前記提示された少なくとも一つのパラメータの値の中から、所望のパラメータの値を選択する選択手段を、
前記選択手段によって選択されたパラメータの値を用いた制御を実行する制御手段と、
をさらに具備することを特徴とする請求項7記載の超音波診断装置。
【請求項9】
現在のパラメータの値を過去の所定時刻におけるパラメータの値に変更するための変更指示を入力するための入力手段と、
前記変更指示に応答して、記憶された前記設定又は変更されたパラメータの値に基づいて、前記過去の所定時刻パラメータの値を用いた制御を実行する制御手段と、
をさらに具備することを特徴とする請求項7記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記指標は、患者ID、検査者ID、検査番号、検査日時、診療科名、診断部位、疾患名、時間情報その他の画像診断における管理項目であることを特徴とする請求項1乃至9のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−255013(P2006−255013A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−73748(P2005−73748)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】