説明

超音波診断装置

【課題】移動中などの商用電源が供給されないときにも、動作可能とする。
【解決手段】蓄電および充電可能な無停電電源部5と、装置を移動可能にするキャスタ8と、前記キャスタが回転することによって発電する発電機6を備え、移動中も発電機6で発電した電力により充電器6を介して無停電電源部5を充電し、単に無停電電源部5のみを備えた装置よりも装置全体に電力を供給できるようにした。
この構成により、移動に際しても、毎回電源のオフ-オンを繰り返す必要がない装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無停電電源装置を接続可能な超音波診断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今の超音波診断装置は、ソフトウエアの高機能化が進んでおり、初期設定などのために装置の電源投入から診断を開始することができるまでに数分を必要とすることが珍しくなくなっている。また、電源オフの場合も終了処理に所定の時間が必要になっている。
【0003】
医療現場においては緊急性が求められることもあり、電源投入から診断までの時間が長いと不便な場合がある。また、病院・医院によっては複数の診察室で1台の診断装置を共用することもあり、電源ケーブル長よりも遠い別の診察室に移動させるめには、一旦電源をオフして、移動後にまた電源を投入することになる。つまり、診察室間の移動が発生する毎に、電源オフの時間とさらに電源投入の時間がかかってしまい、使用者に多大な不愉快(不便さ)を与えることとなる。
【0004】
そこで、無停電電源装置を接続して、電源をオフせずに装置を移動させることも一時的には可能と考えられ、画像診断装置用として、電源供給すべきブロックを限定してできるだけ小さな無停電電源の容量とするようにした装置が提案されている(特許文献1 参照)。
【特許文献1】特開2000−270497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の無停電電源装置を接続した装置では、無停電電源で供給するブロックが限定されてしまうため、すべての機能を保持することができず、すべての機能を保持するためには無停電電源装置が大型化してしまい、移動のためには逆効果となってしまうので、長時間の電源保持は困難であるという問題があった。
【0006】
また、ソフトウエア制御される超音波診断装置では、そのプログラムやデータを格納しておく記憶手段としてハードディスクドライブ(以下HDD)を備えている。
【0007】
HDDは通電中に振動を受けると、データの読み書きが正しく行えなくなったり、データが消失するなどの現象が発生することがある。
【0008】
ここで、無停電電源装置を接続した超音波診断装置を電源オフせずに移動させるとき、搭載されたHDDの通電中に振動が発生し、前述したデータの消失などが発生する頻度が高まるという問題があった。
【0009】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、無停電電源装置によって電源をオフせずに装置を移動させるときに、無停電電源装置の電源容量を増やし、出来るだけ長く装置の電源を維持することができる優れた超音波診断装置を提供することを目的とする。
【0010】
また、無停電電源装置によって電源を入れたまま移動させて振動が発生していても、HDDのデータを保護できるようにする優れた超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の超音波診断装置は、超音波を送受信して得られる情報から画像データを生成して表示する超音波画像処理部と、前記超音波画像処理部の外部から電源を供給する電源部と、蓄電および充電可能な無停電電源部と、前記無停電電源部を充電する充電器と、装置本体を移動可能にするキャスタと、前記キャスタが回転することによって発電する発電機とを備え、前記発電機で発電された電気で前記充電器が前記無停電電源部を充電する構成を有している。
【0012】
この構成により、移動時に発電することができ、無停電電源による電源供給時間を延長させることができることとなる。
【0013】
また、本発明の超音波診断装置は、前記電源部に対する外部からの電源供給が絶たれたことを検出するとともに前記無停電電源部から供給される電源を前記電源部に供給する電源制御部を備え、前記電源制御部は、前記電源部に対する外部からの電源供給が絶たれたことを検出したとき、前記無停電電源部から供給される電源を電源部に供給する構成を有している。
【0014】
この構成により、外部電源が絶たれたときに、発電機で発電した電力を供給することができることとなる。
【0015】
また、本発明の超音波診断装置は、前記キャスタの回転を検知する検知部と、前記検知部の信号から前記装置本体が移動していることを検出する移動検出器とを備え、前記移動検出器が前記装置本体の移動を検出したとき、前記充電器が前記発電機で発電された電力を前記無停電電源部へ供給する構成を有している。
【0016】
この構成により、移動していることを検出したときに発電機で発電した電力を供給することができることとなる。
【0017】
また、本発明の超音波診断装置は、前記装置本体の振動を検出する振動検出器と、前記超音波画像処理部で使用されるプログラムおよびデータの読み書き可能な記憶部と、前記記憶部の制御を行う記憶制御部とを備え、前記振動検出器が振動を検出したとき、前記記憶制御部が前記記憶部の動作を制限する構成を有している。
【0018】
この構成により、無停電電源装置によって通電中に装置を移動させることによって装置が振動してもHDDのデータの破壊・消失などの発生を回避することができることとなる。
【0019】
また、本発明の超音波診断装置は、前記電源制御部が前記電源部に外部からの電源が絶たれたことを検出したとき、前記発電機で発電された電力を前記無停電電源部を介さずに前記電源部に供給する構成とした。
【0020】
この構成により、移動している限り無停電電源部がなくても原電を供給しつづけることができることとなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、移動時のキャスタの回転を利用して発電を行う発電機を備えており、移動時であれば無停電電源装置に電力を供給し続けることができ、より長時間の電源供給が出来るようになるという効果を有する超音波診断装置を提供することができるものである。
【0022】
また、移動によって装置が振動してもHDDのデータの破壊・消失などの発生を回避することができる効果を有する超音波診断装置を提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態の超音波診断装置について、図面を用いて説明する。
【0024】
本発明の第1の実施の形態の超音波診断装置について図1を用いて説明する。
【0025】
図1において、超音波診断装置1は、その装置本体の中に基本的な構成として、超音波画像診断に必要なハードウエアが組み込まれた超音波画像処理部2と、商用電源などから電源プラグ12を介して供給された電源から、装置内で必要とする電源電圧を発生させる電源部3と、電源部3の電圧出力制御などを行う電源制御部4などを備え、さらに外部の商用電源などから電源が供給されなくなったときにも、装置を可動させうる電力を供給する無停電電源部5と、さらに装置本体(装置全体)を移動させるときなどのために装着されているキャスタ8と、キャスタ8の回転によって発電する発電機7と、発電機7で発電された電力によって無停電電源部5を充電する充電器6を備えて構成している。
【0026】
以上のように構成された超音波診断装置について、図1を用いてその動作を説明する。
【0027】
超音波画像処理部2は、被検体に超音波を送信し、被検体内組織から反射してくる超音波を受信して、被検体内組織を画像として表示する機能を持つ。この超音波画像処理部2は電源部3から供給される電源によって動作する。この電源部3は通常は電源プラグ12を介して商用電源から電源を取り込んでいる。
【0028】
電源部3は、電源プラグ12を介して商用電源から電力を取り込み、超音波画像処理部2へ電力を供給し、超音波画像処理部2は電源部3から供給される電力により動作する。
【0029】
無停電電源部5は、停電や装置の移動のために商用電源が供給されなくなったときにも電源部3に電力を供給するためのものであり、充電可能なバッテリーや大容量のコンデンサなどで構成される。
【0030】
また、電源部3は、電源プラグ12を介して供給される商用電源が供給されなくなったとき、それを検出して電源制御部4へ商用電源が供給されなくなったことを示す電源断信号を電源制御部4に出力する。
【0031】
電源制御部4は、電源部3からの電源断信号を受信すると、無停電電源部5からの電力を電源部3へ供給し、電源部3は電源制御部4を介して供給される無停電電源部5からの電力を超音波画像診断部2へ供給することによって、商用電源が供給されなくなったときにも超音波画像処理部2を動作可能にさせる。つまり、商用電源が絶たれたときには、無停電電源部5からの電力に切り替えられることとなる。
【0032】
発電機7は、キャスタ8が回転することによって電力を発生させる発電機であり、超音波診断装置1を移動させるなどしてキャスタ8が回転するときに、発電して電力を供給する。
【0033】
充電器6は、発電機7で発電された電力を無停電電源部5供給して、無停電電源部5を充電する。
【0034】
無停電電源部5は、超音波画像処理部2を動作させる電力を供給することは出来るが、通常の超音波診断装置に搭載できるほどの大きさの無停電電源部であれば、電力を供給できる時間は限られたものである。
【0035】
超音波診断装置1を移動させて別の診察室などで使用する場合、電源プラグ12を外して移動させるときに、別の診察室までは無停電電源部5の容量で超音波画像処理部2に電力を供給し続けることが要求されるが、その距離が遠い場合、別の診察室に到達する前に無停電電源部5の電力が低下して電力を供給できなくなる可能性もある。
【0036】
ここで、移動の際にはキャスタ8が回転するので、その移動の際にキャスタ8が回転することを利用して、キャスタ8に接続された発電機7にて発電し、発電された電力によって無停電電源部5を充電器6が充電するので、移動している限り、無停電電源部5の電力が途絶えるということを避けることが可能となる。
【0037】
また発電機7にて発電された電力を、直接電源制御部4に供給して、無停電電源部5を介することなく電力を供給すれば、移動している限り超音波画像処理部2を動作させることができる。
【0038】
そして、発電された電力を直接電源制御部4に直接供給すると同時に無停電電源部5を充電すれば、移動が停止して発電機7での発電が休止しても、無停電電源部5から電力が供給されるので、直接電源制御部4に直接供給するだけよりも安定して動作を確保することができる。
【0039】
したがって、本発明の第1の実施の形態の超音波診断装置によれば、別の診察室などへの移動において、超音波画像処理部2への電力供給が途絶えることを避けることができ、電源オフ、オンにかかる時間を回避することができるので、特に緊急時において、利便性が格段に向上する。
【0040】
本発明の第2の実施の形態の超音波診断装置について図2を用いて説明する。
【0041】
図2において、超音波診断装置1は、キャスタ8の回転や装置の振動を検出する振動・移動検出器9と、超音波画像処理部2のソフトウエア処理などに必要なデータやプログラムを記憶可能な記憶部11と、記憶部11のアクセス制御などを行う記憶部制御部10と、上記第1の実施の形態でも説明した、無停電電源部5、電源制御部4、電源部3で構成されている。
【0042】
以上のように構成された超音波診断装置について、図2を用いてその動作を説明する。
【0043】
第1の実施の形態の構成と同じ番号のブロックについては、同様の動作をするものとする。
【0044】
電源部3が商用電源が供給されなくなったことを検出したとき、電源制御部4は無停電電源部5からの電力を電源部3へ供給し始めたことを振動・移動検出器9へ通知する。
【0045】
振動・移動検出器9は、キャスタ8が回転していることを検出することによって、装置が移動していることを検出するとともに、振動を検出するセンサを有し、装置が所定の振動パターンで振動していることを検知することによって、装置が移動していることを検出する。
【0046】
振動・移動検出器9は、移動を検出し、かつ電力が無停電電源部5からの供給に切り替わったことが通知されると、移動検出信号を記憶部制御部10、電源制御部4および超音波画像処理部2へ出力する。
【0047】
記憶部11は、プログラムやデータを記憶するもので、HDDなどで構成される。通常状態では超音波画像処理部2の各種処理を行うためのプログラム、データのアクセスが行われる。
【0048】
記憶部制御部10は、記憶部11を制御するもので、振動・移動検出器9が装置の移動を検出した移動検出信号を受信すると、記憶部11の超音波画像処理部2への処理を一旦保留し、動作を停止させる。このとき、プログラム・データなどが破壊されないように、ファイルのクローズ処理などが実行されることは言うまでもない。
【0049】
超音波診断装置1を商用電源から切り離して、別の診察室などに移動させる間、無停電電源部5からの電源供給により、超音波画像処理部に電力が供給されるため、超音波診断装置としての動作を継続できるが、移動中は装置が振動することは避けられない。
【0050】
一方、ハードディスクドライブなどの機器は、特に通電中のアクセス中に所定以上の振動が発生した場合、その振動によってデータが破壊されるなどの故障が発生することがある。
【0051】
すなわち、動作状態で移動が可能になるものの、移動中の振動によりHDDに何らかの異常が発生する可能性があるが、本発明の超音波診断装置によれば、移動中で所定以上の振動が発生したときは、記憶部制御部10がHDDなどの記憶部11の動作を制限して、データの破壊などを未然に防ぐことができる。
【0052】
また、振動を吸収するゴムやダンパーなどを介してHDDを固定すれば、更なる防振効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明にかかる超音波診断装置は、移動時のキャスタの回転を利用して発電を行う発電機を備えており、移動時であれば無停電電源装置に電力を供給し続けることができ、より長時間の電源供給が出来るようになるという効果を有し、また、通電状態での移動によって装置が振動してもハードディスクドライブのデータの破壊・消失などの発生を回避することができる効果を有する超音波診断装置などとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の実施の形態における超音波診断装置の構成を示す図
【図2】本発明の第2の実施の形態における超音波診断装置の構成を示す図
【符号の説明】
【0055】
1 超音波診断装置
2 超音波画像処理部
3 電源部
4 電源制御部
5 無停電電源部
6 充電器
7 発電機
8 キャスタ
9 振動・移動検出器
10 記憶部制御部
11 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送受信して得られる情報から画像データを生成して表示する超音波画像処理部と、前記超音波画像処理部の外部から電源を供給する電源部と、蓄電および充電可能な無停電電源部と、前記無停電電源部を充電する充電器と、装置本体を移動可能にするキャスタと、前記キャスタが回転することによって発電する発電機とを備え、前記発電機で発電された電気で前記充電器が前記無停電電源部を充電することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記電源部に対する外部からの電源供給が絶たれたことを検出するとともに前記無停電電源部から供給される電源を前記電源部に供給する電源制御部を備え、前記電源制御部は、前記電源部に対する外部からの電源供給が絶たれたことを検出したとき、前記無停電電源部から供給される電源を電源部に供給することを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記キャスタの回転を検知する検知部と、前記検知部の信号から前記装置本体が移動していることを検出する移動検出器とを備え、前記移動検出器が前記装置本体の移動を検出したとき、前記充電器が前記発電機で発電された電力を前記無停電電源部へ供給することを特徴とする請求項1または請求項2記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記装置本体の振動を検出する振動検出器と、前記超音波画像処理部で使用されるプログラムおよびデータの読み書き可能な記憶部と、前記記憶部の制御を行う記憶制御部とを備え、前記振動検出器が振動を検出したとき、前記記憶制御部が前記記憶部の動作を制限することを特徴とする請求項1または請求項2記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記電源制御部が前記電源部に外部からの電源が絶たれたことを検出したとき、前記発電機で発電された電力を前記無停電電源部を介さずに前記電源部に供給することを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−34305(P2009−34305A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200489(P2007−200489)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】